amazarashi あまざらし プレミアムライブ 千分の一夜物語「スターライト」 @TOKYO DOME CITY HALL 9/9
- 2014/09/09
- 23:27
これまでにすでに数々の「歌詞を見ながら聴きたい」名盤を世に送り出し、ライブを行えば毎回ソールドアウトという、秋田ひろむを中心にしたプロジェクト、amazarashi。
そのamazarashiが、アルバムリリースを控えた中、「あまざらし」名義での一夜限りのプレミアムライブを開催。大箱と言えるTOKYO DOME CITY HALLでも当然のようにチケットはソールドアウト。果たしてどんなライブになるのか。
19時過ぎ、会場が暗転すると、ステージ後ろのスクリーン(いつもamazarashiのライブはステージ前に幕が張られ、そこに映像が投射されるが、この日、その幕には映像は一切映らず、照明の光が映し出されるだけ)に、銀河鉄道を思わせる映像が映し出される。次々に浮かび上がる星座。まさに「スターライト」そのもの。女性が歌っているBGMは誰のなんという曲なのだろうか。
ステージ前の幕に映像が映らないので、メンバーが登場する姿、そして演奏する姿がこれまでにないくらいによく見えたのだが、最初は椅子に座った秋田ひろむによる朗読。この日のライブを「物語」たらしめた、「ヨハン」と「トマーゾ」という男2人が、北極星に向かって旅をしていく話。最初はそのオープニング。そしてこのオープニングがエンディングになるとは、まだこの時点では全く予想だにできなかった。
序盤は秋田はギターを弾かずに歌唱のみ。ピアノはもちろんメンバーの豊川真奈美で、プロデューサーでもある出羽良彰も序盤はキーボード。途中からはギターも担当する。そこにドラムと、エレキベースではなくコントラバスというバンド編成だが、この日がこれまでのライブと最も違ったのは、ヴァイオリンなどのストリングスメンバー4人がいたこと。ほとんど全曲に渡って演奏に参加し、もとより壮大なamazarashiの曲をさらに壮大にアレンジしていく。
2篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが白鳥を探しに森の中に入っていく話。そこで出会った少女、かつてトマーゾが一緒に暮らしていたというその少女こそが白鳥で…。ここではまだまだこの物語がどんな結末を迎えるのかはわからない。
そのあとの曲目は「隅田川」「さくら」「ドブネズミ」と、amazarashi屈指の名曲が並ぶ。どの曲も大切な存在を歌った曲なのは前の朗読の内容に合わせたものかもしれないが、1番印象的だったのは、現状の最新作である「あんたへ」収録の「ドブネズミ」。自分は前回のZeppでのライブでこの曲を聴いて、「まるでブルーハーツのような美しさだ」と評した。それはもちろん「ドブネズミ」というタイトルであってこそだが、この日、秋田は曲の間で
「ドブネズミみたいに 美しくなりたい
写真には映らない 美しさがあるから」
と、ブルーハーツの「リンダリンダ」のフレーズを歌った。やはりそうだった。音楽性こそ全く違うが、やはりamazarashi、というより秋田ひろむの根底にはブルーハーツがいるのだ。
3篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが「光を工場で生産して周りの星に売って生計を立てる星」を訪れた話。その星では遮光眼鏡をかけなければならず、星に住む人々はみな防護服のような出で立ちをしている。2人が歩いていると、急に轟音が鳴り、空が光る。
しかしそれは光を生産する工場で事故が起きたもので、事故が起きたら工場にいる人間は全員死んでしまうという。そんな星を故郷と呼び、故郷や仲間を捨てられないとして星から出ていけない人々。
自分はこれは「原発」の比喩であると感じた。そのあとに演奏された
「僕らの愛する故郷が 殺されてしまうかもしれない」
というフレーズがサビの「古いSF映画」はまさにそういう曲。秋田ひろむの故郷である青森県には、六ヶ所村がある。
また、「つじつま合わせに生まれた僕ら」の前には20台ほどのメトロノームがバラバラに鳴り出し、曲が終わるとすべてのメトロノームのリズムが揃っているという演出。
「カルマ」では秋田以外のメンバーがいったんステージから去り、炎の柱が出現する中、秋田の弾き語りという形で演奏された。
4篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが小さな街に辿り着くと、葬列の集団に出くわす。葬儀が行われている祭壇にトマーゾが進むと、その祭壇の遺影にはヨハンの顔が写っており、トマーゾは嗚咽する。
という友人を亡くしたエピソードのあとに演奏された、秋田の歌唱と豊川のピアノだけで演奏された新曲「ひろ」は、まさにその「友人を亡くした」歌詞そのものの曲。
しかし、トマーゾ=秋田と考えると、ヨハンは歌詞に出てくる亡くなった友人だと思われるが、「ひろ」というタイトルは秋田ひろむのことだと思っていただけに、これはじっくりと歌詞を熟読しながら聴きたい曲である。
「夏を待っていました」「美しき思い出」も「友人」がテーマの曲。原曲よりだいぶテンポを落とした「夏を待っていました」は非常に新鮮なアレンジだった。
最後の朗読は、これまでの朗読の種明かしのようなもの。トマーゾそのものである、物語を綴る引きこもりの青年が外の世界に出て行き…そしてそのまま演奏されたのは、このライブの直後にPVが公開された「スターライト」。きらめくようなサウンドで、スクリーンには虹色の列車が銀河鉄道を走っていく。
これまでの今夜の物語はこの曲に辿り着くためにあり、また、amazarashiのこれまでもが、この曲に辿り着くためにあったと言っていい、1回聴いただけでこれまでのどの曲よりも素晴らしいとわかる曲。
演奏が終わり、メンバーがステージを去ると、まるで映画のように、スクリーンにこの日のメンバー、スタッフの名前がエンドロールとして流れ、その間、拍手が鳴り止むことはなかった。
今回のライブは収録撮影が入っていたが、10月発売のアルバムのDVDに収録されるのなら、是非とも朗読を全編収録していただきたい。それほどまでに素晴らしい内容だったし、一回きりではもったいない。
そしてこのamazarashiの歩みそのもののような物語を綴ったこの一夜を経て、amazarashiはこれまでとは変わる気がする。それは間違いなく「スターライト」をライブで聴いて思ったこと。これまでは「負け組の音楽」と揶揄されることもあったamazarashiだが、これから秋田はもっと希望を歌うようになるんじゃないだろうかという予感がしている。
-朗読①-
1.光、再考
2.ムカデ
3.空っぽの空に潰される
-朗読②-
4.隅田川
5.さくら
6.ドブネズミ
-朗読③-
7.つじつま合わせに生まれた僕ら
8.古いSF映画
9.カルマ
-朗読④-
10.ひろ
11.夏を待っていました
12.美しき思い出
-朗読⑤-
13.スターライト
スターライト
http://youtu.be/dQ5Vs4dHmWw
そのamazarashiが、アルバムリリースを控えた中、「あまざらし」名義での一夜限りのプレミアムライブを開催。大箱と言えるTOKYO DOME CITY HALLでも当然のようにチケットはソールドアウト。果たしてどんなライブになるのか。
19時過ぎ、会場が暗転すると、ステージ後ろのスクリーン(いつもamazarashiのライブはステージ前に幕が張られ、そこに映像が投射されるが、この日、その幕には映像は一切映らず、照明の光が映し出されるだけ)に、銀河鉄道を思わせる映像が映し出される。次々に浮かび上がる星座。まさに「スターライト」そのもの。女性が歌っているBGMは誰のなんという曲なのだろうか。
ステージ前の幕に映像が映らないので、メンバーが登場する姿、そして演奏する姿がこれまでにないくらいによく見えたのだが、最初は椅子に座った秋田ひろむによる朗読。この日のライブを「物語」たらしめた、「ヨハン」と「トマーゾ」という男2人が、北極星に向かって旅をしていく話。最初はそのオープニング。そしてこのオープニングがエンディングになるとは、まだこの時点では全く予想だにできなかった。
序盤は秋田はギターを弾かずに歌唱のみ。ピアノはもちろんメンバーの豊川真奈美で、プロデューサーでもある出羽良彰も序盤はキーボード。途中からはギターも担当する。そこにドラムと、エレキベースではなくコントラバスというバンド編成だが、この日がこれまでのライブと最も違ったのは、ヴァイオリンなどのストリングスメンバー4人がいたこと。ほとんど全曲に渡って演奏に参加し、もとより壮大なamazarashiの曲をさらに壮大にアレンジしていく。
2篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが白鳥を探しに森の中に入っていく話。そこで出会った少女、かつてトマーゾが一緒に暮らしていたというその少女こそが白鳥で…。ここではまだまだこの物語がどんな結末を迎えるのかはわからない。
そのあとの曲目は「隅田川」「さくら」「ドブネズミ」と、amazarashi屈指の名曲が並ぶ。どの曲も大切な存在を歌った曲なのは前の朗読の内容に合わせたものかもしれないが、1番印象的だったのは、現状の最新作である「あんたへ」収録の「ドブネズミ」。自分は前回のZeppでのライブでこの曲を聴いて、「まるでブルーハーツのような美しさだ」と評した。それはもちろん「ドブネズミ」というタイトルであってこそだが、この日、秋田は曲の間で
「ドブネズミみたいに 美しくなりたい
写真には映らない 美しさがあるから」
と、ブルーハーツの「リンダリンダ」のフレーズを歌った。やはりそうだった。音楽性こそ全く違うが、やはりamazarashi、というより秋田ひろむの根底にはブルーハーツがいるのだ。
3篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが「光を工場で生産して周りの星に売って生計を立てる星」を訪れた話。その星では遮光眼鏡をかけなければならず、星に住む人々はみな防護服のような出で立ちをしている。2人が歩いていると、急に轟音が鳴り、空が光る。
しかしそれは光を生産する工場で事故が起きたもので、事故が起きたら工場にいる人間は全員死んでしまうという。そんな星を故郷と呼び、故郷や仲間を捨てられないとして星から出ていけない人々。
自分はこれは「原発」の比喩であると感じた。そのあとに演奏された
「僕らの愛する故郷が 殺されてしまうかもしれない」
というフレーズがサビの「古いSF映画」はまさにそういう曲。秋田ひろむの故郷である青森県には、六ヶ所村がある。
また、「つじつま合わせに生まれた僕ら」の前には20台ほどのメトロノームがバラバラに鳴り出し、曲が終わるとすべてのメトロノームのリズムが揃っているという演出。
「カルマ」では秋田以外のメンバーがいったんステージから去り、炎の柱が出現する中、秋田の弾き語りという形で演奏された。
4篇目の朗読は、ヨハンとトマーゾが小さな街に辿り着くと、葬列の集団に出くわす。葬儀が行われている祭壇にトマーゾが進むと、その祭壇の遺影にはヨハンの顔が写っており、トマーゾは嗚咽する。
という友人を亡くしたエピソードのあとに演奏された、秋田の歌唱と豊川のピアノだけで演奏された新曲「ひろ」は、まさにその「友人を亡くした」歌詞そのものの曲。
しかし、トマーゾ=秋田と考えると、ヨハンは歌詞に出てくる亡くなった友人だと思われるが、「ひろ」というタイトルは秋田ひろむのことだと思っていただけに、これはじっくりと歌詞を熟読しながら聴きたい曲である。
「夏を待っていました」「美しき思い出」も「友人」がテーマの曲。原曲よりだいぶテンポを落とした「夏を待っていました」は非常に新鮮なアレンジだった。
最後の朗読は、これまでの朗読の種明かしのようなもの。トマーゾそのものである、物語を綴る引きこもりの青年が外の世界に出て行き…そしてそのまま演奏されたのは、このライブの直後にPVが公開された「スターライト」。きらめくようなサウンドで、スクリーンには虹色の列車が銀河鉄道を走っていく。
これまでの今夜の物語はこの曲に辿り着くためにあり、また、amazarashiのこれまでもが、この曲に辿り着くためにあったと言っていい、1回聴いただけでこれまでのどの曲よりも素晴らしいとわかる曲。
演奏が終わり、メンバーがステージを去ると、まるで映画のように、スクリーンにこの日のメンバー、スタッフの名前がエンドロールとして流れ、その間、拍手が鳴り止むことはなかった。
今回のライブは収録撮影が入っていたが、10月発売のアルバムのDVDに収録されるのなら、是非とも朗読を全編収録していただきたい。それほどまでに素晴らしい内容だったし、一回きりではもったいない。
そしてこのamazarashiの歩みそのもののような物語を綴ったこの一夜を経て、amazarashiはこれまでとは変わる気がする。それは間違いなく「スターライト」をライブで聴いて思ったこと。これまでは「負け組の音楽」と揶揄されることもあったamazarashiだが、これから秋田はもっと希望を歌うようになるんじゃないだろうかという予感がしている。
-朗読①-
1.光、再考
2.ムカデ
3.空っぽの空に潰される
-朗読②-
4.隅田川
5.さくら
6.ドブネズミ
-朗読③-
7.つじつま合わせに生まれた僕ら
8.古いSF映画
9.カルマ
-朗読④-
10.ひろ
11.夏を待っていました
12.美しき思い出
-朗読⑤-
13.スターライト
スターライト
http://youtu.be/dQ5Vs4dHmWw
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