THE BAWDIES 「デビュー15周年記念日「THANKSGIVING!」POPCORN Release Party」 @下北沢SHELTER 4/22
- 2024/04/23
- 18:10
この日4月22日はTHE BAWDIESの最新アルバム「POPCORN」の発売日であり、メジャーデビュー15周年記念日でもある。ということでそんな記念すべき日にスペシャルワンマン「THANKSGIVING!」を下北沢SHELTERで開催。THE BAWDIESを下北沢SHELTERで観るのはgo!go!vanillasが元々ここでワンマンをやるはずだったのが長谷川"プリティ"敬祐の交通事故によってライブが出来なくなって急遽代打でワンマンを行った「代打屋THE BAWDIES」の時以来である。
当然のようにソールドアウトで超満員の客席は始まる前から熱気が凄まじいのであるが、そんな中で遅めの開演時間の20時(生配信もあるからという時間設定だろうか)になると、いつもとは全く違う、初めて聴くようなインストのSEが流れてメンバー4人が原点回帰を思わせる(1stアルバム「THIS IS MY STORY」のジャケットを彷彿とさせる)ような黒のスーツでステージに登場すると、MARCY(ドラム)は金髪、TAXMAN(ギター&ボーカル)も金髪混じりであるが、それよりも口髭を蓄えているのがこれまでとは全く違う新鮮さを感じさせるのであるが、かつて髭を生やしていた時期もあったJIM(ギター)はそれ以外の期間と全く変わらない長い髪、ROY(ボーカル&ベース)もだいぶ大人しめの髪色になったことによってさらに若々しさが増している中で、MARCYが性急なビートを叩き出す中で
「今日はお祭りですよ!準備いいですか!」
と言ってからROYがベースを鳴らして始まったのは、15年前のこの日にリリースされたメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」の1曲目収録の「EMOTION POTION」であり、そのMARCYの力強いビートも、JIMのジャンプしながら弾くギターも、ROYのロックンロールをやるために生まれ持った声も、そこに重なるTAXMANのコーラスとギターも、15年前にこの曲でこのバンドに出会った時の衝撃が蘇ってくる。それはラスサビ前でROYが思いっきりシャウトしてからサビに入っていくのをライブで観た時の衝撃をも。
「今日はお祭りですよ!お祭りに必要なのはなんですか!?打上花火ですよ!あなた自身が打上花火になってください!」
とROYが言って始まったのは、そのリズムに合わせて観客が飛び跳ねまくる「YOU GOTTA DANCE」であり、TAXMANも飛び跳ねまくりながら、JIMはステージ前に出てきて観客を煽るようにしてギターを弾きまくるのであるが、やはりSHELTERはその音が本当に近く感じられる。だからこそその観客が飛び跳ねまくることによる熱気もいつも以上にダイレクトに感じられるのである。
早くも汗を流しまくっているJIMが
「今日はYouTubeで生配信もやってるけど、画面の向こうで観ている人をライブハウスに連れて来れるかどうかはここにいる人の盛り上がりにかかってるから!」
と熱く言ったことにより、ROYも「全部言われた」みたいな感じになる中で演奏されたのは、その観客の合唱がROYの声に重なっていく「SING YOUR SONG」であり、やはりそのイントロから観客が飛び跳ねまくる音の熱気はもちろんのこと、JIMは自身のマイクスタンドを客席側に向けて合唱を煽るのであるが、最終的には自身もその観客側に向けたマイクに向かって(つまり客席に背を向けるようにして)コーラスをしている。そんな姿もロックンロールの魂が燃え盛りまくっているのである。
するとこの日はかねてからシークレットゲストが登場するということも告知されていた。個人的には「POPCORN」収録曲に参加している松尾レミ(GLIM SPANKY)とオカモトショウ(OKAMOTO'S)が出てきて収録曲をやって…ということになるのかと思っていたのだが、ここで呼び込まれた最初のゲストはまさのthe telephonesのドラマーの松本誠治。確かにその後に話していた通りに、the telephonesと THE BAWDIESはデビュー同期バンドであり、共に共同イベント「KINGS」を開催してきた盟友であるのだが、それにしても誠治が出てきて何をするんだ?と思っていたら、マイクを渡された状態で「JUST BE COOL」の演奏が始まっても誠治は全く歌うことができずにすぐに演奏を止められ、
ROY&TAXMAN「歌えないなら何しに来たんだ!」
と散々いじられ、
誠治「段取り聞いても誰も教えてくれないのはこういうことか〜!(笑)」
と、自らがドッキリ要員(昔は長島涼平がTOTALFATにドッキリを仕掛けられていたことを思い出す)であることを悟ると、やはり誠治ではなくて石毛輝に交代する。おなじみのサングラス姿というこの祭りにふさわしい姿の石毛はかつて2007年にTHE BAWDIESの主催イベントに出演した時以来のSHELTERのステージであることを感慨深く語るのであるが、
ROY「我々、telephonesが活動休止する時のライブにも出たじゃないですか。その時に涙ぐみながら「telephonesが帰ってくるまで俺たちが音を鳴らし続けて場所を守ってる」って言ったんだけど、割とすぐに帰ってきて(笑)あの涙を返してよ」
という軽口を叩けるのも両者の関係性があるからだろうけれど、そうして改めて石毛が歌う「JUST BE COOL」は石毛の独特のハイトーンボイスが実にお祭りらしさを感じさせるものになっている。歌唱のスタイルとしては対極とも言える両者なのに違和感が全くないのはやはり今でもその意志が通じている両者だからだろう。あの頃「KINGS」を一緒にやっていたのはどちらのバンドも明確にシーンを変えようとしていたからだ。
そうしてゲストの石毛がステージから去ると、
「今度はあなたたちが歌う番ですよ!」
とROYが観客を煽るようにしてTAXMANがギターを鳴らして始まったのは「LET'S GO BACK」であり、サビではメンバー全員の歌唱に観客の合唱が重なっていく。それが毎回感動してしまうのは、そこにロックンロールの楽しさが確かに詰まっているからである。特にJIMはやはりマイクスタンドを観客の近くへと向けるように曲げてから、そこに向かって思いっきり声を張り上げて歌っている。
するとTAXMANが
「せっかくだから僕も歌っていいですかー!」
と言ってROYがベースでイントロを鳴らして始まるのはTAXMANメインボーカル曲の中で随一のロックンロールさを持つ「SO LONG SO LONG」であり、歌唱をしないからこそROYのベースの重さを改めて感じられるとともに、間奏ではぶっ叩きまくるMARCYのドラムの強さをも最大限に感じることができる曲である。それは今でもTHE BAWDIESが進化し続け、音の強さを増し続けているということをも感じさせてくれる。
ここで呼び込まれた2組目のゲストは、かつて新宿紅布で互いに凌ぎを削っていた、ドレスコーズ(かつては毛皮のマリーズだったけれど)の志磨遼平であり、その端正な姿であるが故にステージに出てきた瞬間に大きな歓声が上がるのであるが、当時は
ROY「互いに尖り散らかしていた頃だったから、目も合わせないし会話もしないっていう感じだった。リハも聴いてるんだけど、観てないみたいなフリをしてて」
という関係性だったという。それが後にROYはSMAPへの提供曲を共作し、今でも互いの周年ライブにこうして参加するという関係になっているというあたりはやはり同じライブハウスから出てきたという意識も強いのだろう。
そんな志磨が歌うのはTAXMANが情感を込めたギターを鳴らして始まる「LEMONADE」であるのだが、TAXMANのコーラスと志磨の歌唱が合っていないために、志磨が歌詞をちゃんと覚えてないのかと思ったのだが、よくよく聴いたら何と志磨はおそらく自作であろう日本語歌詞で歌っていたのである。そこにはTHE BAWDIESが英語でロックンロールを歌い続けてきたのに対し、自身がずっと日本語でロックンロールを歌ってきたという自負のようなものもあるのだろうし、何よりもTHE BAWDIESの曲を自分なりの形で歌うという志磨なりのBAWDIESへの愛情の示し方だ。いつかこの志磨の日本語歌唱バージョンが音源になってくれないだろうかとすら思う素晴らしさだったし、JIMから「POPCORN」の音源を貰ってすでに聴いていた志磨は
「メンバーの関係性含めて、今のTHE BAWDIESが1番良い」
と言っていたのも、ずっとこのバンドを見てきた人だからこその言葉だ。
そうして志磨が去った後にMARCYが曲間をビートで繋ぐようにして始まったのはTHE BAWDIESのソウルミュージックへの憧憬がとびきりのラブソング(特定の誰かにではなくて、全人類と音楽に対しての)として表れた「KEEP YOU HAPPY」であり、やはりこの曲はいつどんな時にどんな場所で聴いても我々を最高に幸せな気持ちにしてくれる。それはやはりメンバー自身が本当に楽しそうな笑顔でこの曲を鳴らしているからこそそう感じられる部分は間違いなくあるし、この多幸感は明日からも日々の生活に愛と優しさを持って生きていけるような感覚すらも与えてくれるのである。
ここまでの選曲を見てもわかるように、「POPCORN」のリリース日でありながらもむしろメジャーデビューから15年、結成から20年という歴史をゲストも含めて総浚いするような内容になっているのだが、それを自身の口で言おうとしたTAXMANは最終的には何が言いたいのかよくわからない感じになってしまい、しかも
ROY「お前、髭を生やしてる理由は言わなくていいのかよ」
JIM「ツアーのチケット買った人が見たら「思ってた見た目と違う」って言ってクーリングオフされるかもしれないよ(笑)」
といじられまくり、
TAXMAN「こいつら、本当に中学生みたいにちょっと髪染めたりするだけでも「ちゃんと許可取ってやったのか?」って聞いてくるんですよ!」
と、その微笑ましい関係性が今でも全く変わっていないということを語る。
そんなTHE BAWDIESの最新作である「POPCORN」の発売日がこの日ということで、ライブ初披露となる新曲「SUGAR PUFF」も演奏されるのであるが、MUSICAでの鹿野淳のインタビューで最後にメンバーが「この曲を語りたい!」とばかりに尺内に捩じ込んで話をしたくらいに自信があるという曲であり、その自信はメロディの甘さに表れている。「LEMONADE」の系譜にあたる曲であるが、それを今のTHE BAWDIESがやっているというような進化をも感じさせるし、そこにはやはり新曲だからライブ慣れしていないという感じは全くない。代表曲ばかりのこの日のセトリの中に入っても全く違和感がないあたりはさすがである。
すると真っ赤な照明がメンバーを照らす中でイントロのギターリフが鳴らされたのはドラマ主題歌としてTHE BAWDIESの名前を世の中に知らしめた(ドラマ内にちょっとだけメンバーも出演するというくらいにその存在は完全にお茶の間にも浸透していた)「ROCK ME BABY」ももちろん演奏されるのであるが、逆に普段のイベントやフェスではあんまりセトリに入ってこないというのはこうした大事な場面で演奏するみたいな意識がある曲だったりするのだろうか。やはりサビでのそのグルーヴの凄まじい強さには飛び跳ねざるを得ないし、そのロックンロールの強度はマスな場所に行っても全く薄まることがないことを証明した曲でもある。
そしてここで再びゲストを招く。最後のゲストは近年までも含めてこれまでにも何度となく対バンを繰り広げてきた盟友バンド、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎。革ジャンを着たロックンロールスタイルの出で立ちで、髪型は少しさっぱりしているのであるが、出てきた瞬間からの下手側の観客たちの大歓声は明らかにROYよりも大きく、
「今日はTHE BAWDIESのライブだぞ!(笑)」
と言われてしまうくらい。
TAXMANもデビュー当時の「客席よりもメンバーが暴れ狂っていた頃 by卓郎」の9mmのライブは衝撃的だったようで、だからこそ「シングルのB面にライブ音源を丸々入れるとか、9mmがやってたことを俺たちは結構パクってる」ということを告白するのであるが、ROYが忘れられないのは一緒にツアーを回っていた時の「VAAM事件」であり、その内容は
ROY「当時、9mmがライブ前にメンバー全員でアスリートが飲むようなスポーツドリンクのVAAMってやつを一気飲みするってのをやってて。ライブ前に僕が共用のライブハウスの冷蔵庫を開けたら、中にVAAMが4本入ってて。1本飲んじゃったんですよ(笑)
そしたらライブ前に9mmのメンバーが「1本足りない」って言い始めて。その時は「誰か飲めないやつが出るな。しめしめ」くらいに思ってたんだけど(笑)、卓郎が
「全員分ないんなら今日はみんな飲まないで行こう!」
って言って(笑)それ聞いた瞬間に膝ガクガク震え始めて、後から思い出して追求されたら嫌だから、残りの3本も9mmのライブ中に全部飲んだ(笑)」
というROYのいたずらっ子っぷりが逆に9mmのカッコよさを引き出してしまったという爆笑のエピソード。
しかし卓郎は
「そんなVAAMの話なんかしてももう手遅れなんですよ」
と言ったところでメンバーも一気に演奏のスイッチが入る。それは全く段取りを決めていないにも関わらず、卓郎が自身が歌う曲へとさりげなく繋ぐパスを放ったからであり、実際にTHE BAWDIESのロックンロールのグルーヴの極みと言えるような「IT'S TOO LATE」を一緒に歌うのであるが、その際の卓郎は本当にはちきれんばかりの笑顔で、卓郎は本当にTHE BAWDIESというバンドとその音楽が大好きで仕方ないんだろうなと思えるものだったし、9mmではさすがにここまで笑顔全開にはそうそうならないのはやはり少なからずフロントマンとして背負っているものもあるんだろうなとも思った。そして曲最後に放たれたROYの超ロングシャウトはやはり何度聞いても体も心も震えるくらいのカッコよさ。こんなことができるボーカリストは日本に他にいないと思っているからこそ、THE BAWDIESのライブに行き続けているのだ。
そんな卓郎は帰り際にメンバーと手を合わせたりするのであるが、
TAXMAN「卓郎がグータッチしようとしてきたのに俺はパーを出しちゃって、ROYの時は卓郎がパーだったのにこいつがグータッチして、JIMは卓郎がハイタッチしようとしたのにハグしてた。誰も全く噛み合ってない!(笑)」
と去り際までも笑わせてくれる。
そして
「今度は皆さんが歌う番ですよ!」
と言って演奏されたのは、音源ではオカモトショウが参加している「GIMME GIMME」であるのだが、ショウの歌唱部分自体は基本的にはROYが全て歌うというバンド単体でのバージョンになっているのであるが、サビのコーラスフレーズではもちろん観客の大合唱が重なっていく。それは歌詞がないというくらいに簡単なフレーズであり、何よりもこのバンドのロックンロールがみんなで歌って踊れるというキャッチー極まりないものであるからだ。それはやはりこのバンドが今でも選ばれたバンドにしかかからないロックンロールの魔法を体現し続けていると思わざるを得ない。
そんな記念日であるこの日のライブの最後に演奏されたのは、THE BAWDIES始まりの曲とも言える「I BEG YOU」であり、ROY、TAXMAN、JIMが楽器のヘッドを合わせるようにしてイントロを鳴らす姿は本当に初めてライブを観た時(2009年の「KINGS」で初めて観たのは今でも忘れられない)のことを思い出すくらいに、本当に全く変わっていないなと思う。それはその姿のカッコよさも、メンバーの楽しそうな笑顔も、その姿が我々を笑顔にしてくれるのも全て含めて。そしてそれはこれからもずっと変わることがないはずだと思えるのだ。
アンコールでは先にTAXMAN、JIM、MARCYの3人がステージに現れると、ふらっと志磨遼平がステージを横切る。TAXMANとJIMがバンド好きの女性という設定で握手を求め、それは菅原卓郎も続くのであるが、最後に石毛輝とともにROYがステージに現れると、2人は石毛にだけ握手と写真を求めて、ROYがTHE BAWDIESのボーカルであるということには全く気付かず、しかも石毛が時間がないと言って去ってしまった怒りをROYにぶつけるのだが、ROYはソーセージとパンを取り出して
「これでわかるでしょ!」
と言うことによって、これがゲストも交えてのおなじみの劇場であるということがわかる。つまりはここで「HOT DOG」が演奏されるのであるが、そうしてゲストが再び登場したことでも湧いていただけに、演奏が始まるとさらに会場に熱気が満ちていく。JIMもステージから身を乗り出すようにしてギターソロを弾きまくると、最後にはカウントに合わせて観客たちが一斉に飛び上がる。そうすることによってさらに熱気が倍増していく中でROYはシャウトをしまくる。こんな楽しさと熱さはTHE BAWDIESのライブでのこの曲を演奏している時にしか体感できないものだろうといつも思うし、この問答無用でその場にいる人たち全員をぶち上げられる力もTHE BAWDIESだからこそ持ち得るものである。
そんな「HOT DOG」劇場も最初はROY1人だけで始まってからもう10年くらい続けているということで、この後から始まる「POPCORN」のリリースツアーでは
ROY「今までにやってきた劇場の中でもう1回見たいっていうアンコール劇場をやるのもありかな」
と構想を口にするのであるが、JIMとTAXMANからは
「お前はあれにめちゃ労力を使ってるけど、みんなそんなに内容覚えてないと思うよ」
と一刀両断されてしまう。個人的にはアムロがぶたれる名場面を取り入れたガンダムバージョンで「HOT DOG、いきまーす!」と言って始まるやつがもう一度見たいのだが、そもそも覚えている人がいるだろうかとも思う。
そんな愉快なトークもありながらもROYは最後に
「なんか足りないな、寂しいなって思ったら我々の前に来てください!画面の向こうで観ているあなたも!我々のロックンロールで全て埋めて、生きる力を与えますから!」
と口にする。そう、それこそがTHE BAWDIESのロックンロールの、ライブの力だ。そうやって転がり続けるバンドの姿を見て力をもらって、自分自身も人生を転がってきたのだし、この楽しさを知ったらもう抜け出すことはできないとも思っている。
そうして最後に演奏されたのはもちろん転がり続ける意志を鳴らす「KEEP ON ROCKIN'」であり、TAXMANが背中から客席に倒れ込むようにして観客に支えられながらギターを弾くという、距離が近いSHELTERだからこそ、観客を信頼しているからこそのパフォーマンスを見せると、間奏ではおなじみの手拍子とコール&レスポンスが展開され、観客が大きな声でレスポンスするのであるが、ROYは
「いやいやいや!」
と言って演奏を止めてTAXMANとともにキメ顔をする。それは
「会場の皆さんはすごい良かった。でも画面の向こうのあなた!ちゃんと声を出してください!見えてますからね!(笑)」
と配信で観ている人にもレスポンスを求めるようにしてもう一度コール&レスポンスをすると、会場の人たちもさらに大きな声でレスポンスを返す。そうして突入したラスサビはもはや祭りの極地というような熱狂っぷりで、JIMも客席に身を乗り出すようにしてスピーカーの上に立ってギターを鳴らし、ROYはシャウトを決める。本当にこれ以上ないくらいのデビュー15周年の始まりと言えるようなライブだった。
演奏が終わるともちろん若大将ことTAXMANによる「わっしょい」が執り行われるのであるが、今回はメンバー3人におなじみの法被を配って着させるも、自分だけ新たなバージョンの法被を着ており、
「「2019年 日本武道館公演記念」って書いてあるやつをいつまで着てるんだ!(笑)」
と言い、その矛先は客席の法被を着ていた人にまで向けられてしまう。それだけに観客からはツアーでその新たな法被の販売を望む声があがり、TAXMANは
「俺が掛け合ってみよう!」
と大将らしさを見せていたが、ツアーが5月11日から始まるという日程であるだけにそこに間に合うのだろうか。
そうして「わっしょい」をしようとするのであるが、せっかくなのでゲストたちも一緒にということで順番に呼び込むのであるが、telephonesの誠治がまさかの電話中ということで最後になりながらもステージに全員集結。もちろん全員ちゃんと段取りをわかっているということで練習なしの一発本番での「わっしょい」をしっかり決め、去り際にはTAXMANもJIMも観客とハイタッチしながらステージを去って行った。
そのゲストたちの本当に楽しそうな姿を見ていても、THE BAWDIESはバンドマンにも愛されてるし(メジャーデビューした当時に本当にたくさんのバンドが「THE BAWDIESがカッコいい」という話をしていた)、ファンにも愛されているし、ロックンロールにも愛されている。それを改めて確認したような1日だった。
しかしながら「THIS IS MY STORY」から15年も経ったとは思えないくらいに、THE BAWDIESのメンバーたちは全然変わらないように見える。でもそれはそんな変わらないメンバーたちのバンドに出会った自分もそうなのかもしれない。このバンドのロックンロールをずっとカッコよくて楽しいと思って、ライブハウスに通い続けている。それは出会った15年前から全く変わっていないことだから。
1.EMOTION POTION
2.YOU GOTTA DANCE
3.SING YOUR SONG
4.JUST BE COOL w/ 石毛輝,松本誠治 (the telephones)
5.LET'S GO BACK
6.SO LONG SO LONG
7.LEMONADE w/ 志磨遼平 (ドレスコーズ)
8.KEEP YOU HAPPY
9.SUGAR PUFF
10.ROCK ME BABY
11.IT'S TOO LATE w/ 菅原卓郎 (9mm Parabellum Bullet)
12.GIMME GIMME
13.I BEG YOU
encore
14.HOT DOG
15.KEEP ON ROCKIN'
当然のようにソールドアウトで超満員の客席は始まる前から熱気が凄まじいのであるが、そんな中で遅めの開演時間の20時(生配信もあるからという時間設定だろうか)になると、いつもとは全く違う、初めて聴くようなインストのSEが流れてメンバー4人が原点回帰を思わせる(1stアルバム「THIS IS MY STORY」のジャケットを彷彿とさせる)ような黒のスーツでステージに登場すると、MARCY(ドラム)は金髪、TAXMAN(ギター&ボーカル)も金髪混じりであるが、それよりも口髭を蓄えているのがこれまでとは全く違う新鮮さを感じさせるのであるが、かつて髭を生やしていた時期もあったJIM(ギター)はそれ以外の期間と全く変わらない長い髪、ROY(ボーカル&ベース)もだいぶ大人しめの髪色になったことによってさらに若々しさが増している中で、MARCYが性急なビートを叩き出す中で
「今日はお祭りですよ!準備いいですか!」
と言ってからROYがベースを鳴らして始まったのは、15年前のこの日にリリースされたメジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」の1曲目収録の「EMOTION POTION」であり、そのMARCYの力強いビートも、JIMのジャンプしながら弾くギターも、ROYのロックンロールをやるために生まれ持った声も、そこに重なるTAXMANのコーラスとギターも、15年前にこの曲でこのバンドに出会った時の衝撃が蘇ってくる。それはラスサビ前でROYが思いっきりシャウトしてからサビに入っていくのをライブで観た時の衝撃をも。
「今日はお祭りですよ!お祭りに必要なのはなんですか!?打上花火ですよ!あなた自身が打上花火になってください!」
とROYが言って始まったのは、そのリズムに合わせて観客が飛び跳ねまくる「YOU GOTTA DANCE」であり、TAXMANも飛び跳ねまくりながら、JIMはステージ前に出てきて観客を煽るようにしてギターを弾きまくるのであるが、やはりSHELTERはその音が本当に近く感じられる。だからこそその観客が飛び跳ねまくることによる熱気もいつも以上にダイレクトに感じられるのである。
早くも汗を流しまくっているJIMが
「今日はYouTubeで生配信もやってるけど、画面の向こうで観ている人をライブハウスに連れて来れるかどうかはここにいる人の盛り上がりにかかってるから!」
と熱く言ったことにより、ROYも「全部言われた」みたいな感じになる中で演奏されたのは、その観客の合唱がROYの声に重なっていく「SING YOUR SONG」であり、やはりそのイントロから観客が飛び跳ねまくる音の熱気はもちろんのこと、JIMは自身のマイクスタンドを客席側に向けて合唱を煽るのであるが、最終的には自身もその観客側に向けたマイクに向かって(つまり客席に背を向けるようにして)コーラスをしている。そんな姿もロックンロールの魂が燃え盛りまくっているのである。
するとこの日はかねてからシークレットゲストが登場するということも告知されていた。個人的には「POPCORN」収録曲に参加している松尾レミ(GLIM SPANKY)とオカモトショウ(OKAMOTO'S)が出てきて収録曲をやって…ということになるのかと思っていたのだが、ここで呼び込まれた最初のゲストはまさのthe telephonesのドラマーの松本誠治。確かにその後に話していた通りに、the telephonesと THE BAWDIESはデビュー同期バンドであり、共に共同イベント「KINGS」を開催してきた盟友であるのだが、それにしても誠治が出てきて何をするんだ?と思っていたら、マイクを渡された状態で「JUST BE COOL」の演奏が始まっても誠治は全く歌うことができずにすぐに演奏を止められ、
ROY&TAXMAN「歌えないなら何しに来たんだ!」
と散々いじられ、
誠治「段取り聞いても誰も教えてくれないのはこういうことか〜!(笑)」
と、自らがドッキリ要員(昔は長島涼平がTOTALFATにドッキリを仕掛けられていたことを思い出す)であることを悟ると、やはり誠治ではなくて石毛輝に交代する。おなじみのサングラス姿というこの祭りにふさわしい姿の石毛はかつて2007年にTHE BAWDIESの主催イベントに出演した時以来のSHELTERのステージであることを感慨深く語るのであるが、
ROY「我々、telephonesが活動休止する時のライブにも出たじゃないですか。その時に涙ぐみながら「telephonesが帰ってくるまで俺たちが音を鳴らし続けて場所を守ってる」って言ったんだけど、割とすぐに帰ってきて(笑)あの涙を返してよ」
という軽口を叩けるのも両者の関係性があるからだろうけれど、そうして改めて石毛が歌う「JUST BE COOL」は石毛の独特のハイトーンボイスが実にお祭りらしさを感じさせるものになっている。歌唱のスタイルとしては対極とも言える両者なのに違和感が全くないのはやはり今でもその意志が通じている両者だからだろう。あの頃「KINGS」を一緒にやっていたのはどちらのバンドも明確にシーンを変えようとしていたからだ。
そうしてゲストの石毛がステージから去ると、
「今度はあなたたちが歌う番ですよ!」
とROYが観客を煽るようにしてTAXMANがギターを鳴らして始まったのは「LET'S GO BACK」であり、サビではメンバー全員の歌唱に観客の合唱が重なっていく。それが毎回感動してしまうのは、そこにロックンロールの楽しさが確かに詰まっているからである。特にJIMはやはりマイクスタンドを観客の近くへと向けるように曲げてから、そこに向かって思いっきり声を張り上げて歌っている。
するとTAXMANが
「せっかくだから僕も歌っていいですかー!」
と言ってROYがベースでイントロを鳴らして始まるのはTAXMANメインボーカル曲の中で随一のロックンロールさを持つ「SO LONG SO LONG」であり、歌唱をしないからこそROYのベースの重さを改めて感じられるとともに、間奏ではぶっ叩きまくるMARCYのドラムの強さをも最大限に感じることができる曲である。それは今でもTHE BAWDIESが進化し続け、音の強さを増し続けているということをも感じさせてくれる。
ここで呼び込まれた2組目のゲストは、かつて新宿紅布で互いに凌ぎを削っていた、ドレスコーズ(かつては毛皮のマリーズだったけれど)の志磨遼平であり、その端正な姿であるが故にステージに出てきた瞬間に大きな歓声が上がるのであるが、当時は
ROY「互いに尖り散らかしていた頃だったから、目も合わせないし会話もしないっていう感じだった。リハも聴いてるんだけど、観てないみたいなフリをしてて」
という関係性だったという。それが後にROYはSMAPへの提供曲を共作し、今でも互いの周年ライブにこうして参加するという関係になっているというあたりはやはり同じライブハウスから出てきたという意識も強いのだろう。
そんな志磨が歌うのはTAXMANが情感を込めたギターを鳴らして始まる「LEMONADE」であるのだが、TAXMANのコーラスと志磨の歌唱が合っていないために、志磨が歌詞をちゃんと覚えてないのかと思ったのだが、よくよく聴いたら何と志磨はおそらく自作であろう日本語歌詞で歌っていたのである。そこにはTHE BAWDIESが英語でロックンロールを歌い続けてきたのに対し、自身がずっと日本語でロックンロールを歌ってきたという自負のようなものもあるのだろうし、何よりもTHE BAWDIESの曲を自分なりの形で歌うという志磨なりのBAWDIESへの愛情の示し方だ。いつかこの志磨の日本語歌唱バージョンが音源になってくれないだろうかとすら思う素晴らしさだったし、JIMから「POPCORN」の音源を貰ってすでに聴いていた志磨は
「メンバーの関係性含めて、今のTHE BAWDIESが1番良い」
と言っていたのも、ずっとこのバンドを見てきた人だからこその言葉だ。
そうして志磨が去った後にMARCYが曲間をビートで繋ぐようにして始まったのはTHE BAWDIESのソウルミュージックへの憧憬がとびきりのラブソング(特定の誰かにではなくて、全人類と音楽に対しての)として表れた「KEEP YOU HAPPY」であり、やはりこの曲はいつどんな時にどんな場所で聴いても我々を最高に幸せな気持ちにしてくれる。それはやはりメンバー自身が本当に楽しそうな笑顔でこの曲を鳴らしているからこそそう感じられる部分は間違いなくあるし、この多幸感は明日からも日々の生活に愛と優しさを持って生きていけるような感覚すらも与えてくれるのである。
ここまでの選曲を見てもわかるように、「POPCORN」のリリース日でありながらもむしろメジャーデビューから15年、結成から20年という歴史をゲストも含めて総浚いするような内容になっているのだが、それを自身の口で言おうとしたTAXMANは最終的には何が言いたいのかよくわからない感じになってしまい、しかも
ROY「お前、髭を生やしてる理由は言わなくていいのかよ」
JIM「ツアーのチケット買った人が見たら「思ってた見た目と違う」って言ってクーリングオフされるかもしれないよ(笑)」
といじられまくり、
TAXMAN「こいつら、本当に中学生みたいにちょっと髪染めたりするだけでも「ちゃんと許可取ってやったのか?」って聞いてくるんですよ!」
と、その微笑ましい関係性が今でも全く変わっていないということを語る。
そんなTHE BAWDIESの最新作である「POPCORN」の発売日がこの日ということで、ライブ初披露となる新曲「SUGAR PUFF」も演奏されるのであるが、MUSICAでの鹿野淳のインタビューで最後にメンバーが「この曲を語りたい!」とばかりに尺内に捩じ込んで話をしたくらいに自信があるという曲であり、その自信はメロディの甘さに表れている。「LEMONADE」の系譜にあたる曲であるが、それを今のTHE BAWDIESがやっているというような進化をも感じさせるし、そこにはやはり新曲だからライブ慣れしていないという感じは全くない。代表曲ばかりのこの日のセトリの中に入っても全く違和感がないあたりはさすがである。
すると真っ赤な照明がメンバーを照らす中でイントロのギターリフが鳴らされたのはドラマ主題歌としてTHE BAWDIESの名前を世の中に知らしめた(ドラマ内にちょっとだけメンバーも出演するというくらいにその存在は完全にお茶の間にも浸透していた)「ROCK ME BABY」ももちろん演奏されるのであるが、逆に普段のイベントやフェスではあんまりセトリに入ってこないというのはこうした大事な場面で演奏するみたいな意識がある曲だったりするのだろうか。やはりサビでのそのグルーヴの凄まじい強さには飛び跳ねざるを得ないし、そのロックンロールの強度はマスな場所に行っても全く薄まることがないことを証明した曲でもある。
そしてここで再びゲストを招く。最後のゲストは近年までも含めてこれまでにも何度となく対バンを繰り広げてきた盟友バンド、9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎。革ジャンを着たロックンロールスタイルの出で立ちで、髪型は少しさっぱりしているのであるが、出てきた瞬間からの下手側の観客たちの大歓声は明らかにROYよりも大きく、
「今日はTHE BAWDIESのライブだぞ!(笑)」
と言われてしまうくらい。
TAXMANもデビュー当時の「客席よりもメンバーが暴れ狂っていた頃 by卓郎」の9mmのライブは衝撃的だったようで、だからこそ「シングルのB面にライブ音源を丸々入れるとか、9mmがやってたことを俺たちは結構パクってる」ということを告白するのであるが、ROYが忘れられないのは一緒にツアーを回っていた時の「VAAM事件」であり、その内容は
ROY「当時、9mmがライブ前にメンバー全員でアスリートが飲むようなスポーツドリンクのVAAMってやつを一気飲みするってのをやってて。ライブ前に僕が共用のライブハウスの冷蔵庫を開けたら、中にVAAMが4本入ってて。1本飲んじゃったんですよ(笑)
そしたらライブ前に9mmのメンバーが「1本足りない」って言い始めて。その時は「誰か飲めないやつが出るな。しめしめ」くらいに思ってたんだけど(笑)、卓郎が
「全員分ないんなら今日はみんな飲まないで行こう!」
って言って(笑)それ聞いた瞬間に膝ガクガク震え始めて、後から思い出して追求されたら嫌だから、残りの3本も9mmのライブ中に全部飲んだ(笑)」
というROYのいたずらっ子っぷりが逆に9mmのカッコよさを引き出してしまったという爆笑のエピソード。
しかし卓郎は
「そんなVAAMの話なんかしてももう手遅れなんですよ」
と言ったところでメンバーも一気に演奏のスイッチが入る。それは全く段取りを決めていないにも関わらず、卓郎が自身が歌う曲へとさりげなく繋ぐパスを放ったからであり、実際にTHE BAWDIESのロックンロールのグルーヴの極みと言えるような「IT'S TOO LATE」を一緒に歌うのであるが、その際の卓郎は本当にはちきれんばかりの笑顔で、卓郎は本当にTHE BAWDIESというバンドとその音楽が大好きで仕方ないんだろうなと思えるものだったし、9mmではさすがにここまで笑顔全開にはそうそうならないのはやはり少なからずフロントマンとして背負っているものもあるんだろうなとも思った。そして曲最後に放たれたROYの超ロングシャウトはやはり何度聞いても体も心も震えるくらいのカッコよさ。こんなことができるボーカリストは日本に他にいないと思っているからこそ、THE BAWDIESのライブに行き続けているのだ。
そんな卓郎は帰り際にメンバーと手を合わせたりするのであるが、
TAXMAN「卓郎がグータッチしようとしてきたのに俺はパーを出しちゃって、ROYの時は卓郎がパーだったのにこいつがグータッチして、JIMは卓郎がハイタッチしようとしたのにハグしてた。誰も全く噛み合ってない!(笑)」
と去り際までも笑わせてくれる。
そして
「今度は皆さんが歌う番ですよ!」
と言って演奏されたのは、音源ではオカモトショウが参加している「GIMME GIMME」であるのだが、ショウの歌唱部分自体は基本的にはROYが全て歌うというバンド単体でのバージョンになっているのであるが、サビのコーラスフレーズではもちろん観客の大合唱が重なっていく。それは歌詞がないというくらいに簡単なフレーズであり、何よりもこのバンドのロックンロールがみんなで歌って踊れるというキャッチー極まりないものであるからだ。それはやはりこのバンドが今でも選ばれたバンドにしかかからないロックンロールの魔法を体現し続けていると思わざるを得ない。
そんな記念日であるこの日のライブの最後に演奏されたのは、THE BAWDIES始まりの曲とも言える「I BEG YOU」であり、ROY、TAXMAN、JIMが楽器のヘッドを合わせるようにしてイントロを鳴らす姿は本当に初めてライブを観た時(2009年の「KINGS」で初めて観たのは今でも忘れられない)のことを思い出すくらいに、本当に全く変わっていないなと思う。それはその姿のカッコよさも、メンバーの楽しそうな笑顔も、その姿が我々を笑顔にしてくれるのも全て含めて。そしてそれはこれからもずっと変わることがないはずだと思えるのだ。
アンコールでは先にTAXMAN、JIM、MARCYの3人がステージに現れると、ふらっと志磨遼平がステージを横切る。TAXMANとJIMがバンド好きの女性という設定で握手を求め、それは菅原卓郎も続くのであるが、最後に石毛輝とともにROYがステージに現れると、2人は石毛にだけ握手と写真を求めて、ROYがTHE BAWDIESのボーカルであるということには全く気付かず、しかも石毛が時間がないと言って去ってしまった怒りをROYにぶつけるのだが、ROYはソーセージとパンを取り出して
「これでわかるでしょ!」
と言うことによって、これがゲストも交えてのおなじみの劇場であるということがわかる。つまりはここで「HOT DOG」が演奏されるのであるが、そうしてゲストが再び登場したことでも湧いていただけに、演奏が始まるとさらに会場に熱気が満ちていく。JIMもステージから身を乗り出すようにしてギターソロを弾きまくると、最後にはカウントに合わせて観客たちが一斉に飛び上がる。そうすることによってさらに熱気が倍増していく中でROYはシャウトをしまくる。こんな楽しさと熱さはTHE BAWDIESのライブでのこの曲を演奏している時にしか体感できないものだろうといつも思うし、この問答無用でその場にいる人たち全員をぶち上げられる力もTHE BAWDIESだからこそ持ち得るものである。
そんな「HOT DOG」劇場も最初はROY1人だけで始まってからもう10年くらい続けているということで、この後から始まる「POPCORN」のリリースツアーでは
ROY「今までにやってきた劇場の中でもう1回見たいっていうアンコール劇場をやるのもありかな」
と構想を口にするのであるが、JIMとTAXMANからは
「お前はあれにめちゃ労力を使ってるけど、みんなそんなに内容覚えてないと思うよ」
と一刀両断されてしまう。個人的にはアムロがぶたれる名場面を取り入れたガンダムバージョンで「HOT DOG、いきまーす!」と言って始まるやつがもう一度見たいのだが、そもそも覚えている人がいるだろうかとも思う。
そんな愉快なトークもありながらもROYは最後に
「なんか足りないな、寂しいなって思ったら我々の前に来てください!画面の向こうで観ているあなたも!我々のロックンロールで全て埋めて、生きる力を与えますから!」
と口にする。そう、それこそがTHE BAWDIESのロックンロールの、ライブの力だ。そうやって転がり続けるバンドの姿を見て力をもらって、自分自身も人生を転がってきたのだし、この楽しさを知ったらもう抜け出すことはできないとも思っている。
そうして最後に演奏されたのはもちろん転がり続ける意志を鳴らす「KEEP ON ROCKIN'」であり、TAXMANが背中から客席に倒れ込むようにして観客に支えられながらギターを弾くという、距離が近いSHELTERだからこそ、観客を信頼しているからこそのパフォーマンスを見せると、間奏ではおなじみの手拍子とコール&レスポンスが展開され、観客が大きな声でレスポンスするのであるが、ROYは
「いやいやいや!」
と言って演奏を止めてTAXMANとともにキメ顔をする。それは
「会場の皆さんはすごい良かった。でも画面の向こうのあなた!ちゃんと声を出してください!見えてますからね!(笑)」
と配信で観ている人にもレスポンスを求めるようにしてもう一度コール&レスポンスをすると、会場の人たちもさらに大きな声でレスポンスを返す。そうして突入したラスサビはもはや祭りの極地というような熱狂っぷりで、JIMも客席に身を乗り出すようにしてスピーカーの上に立ってギターを鳴らし、ROYはシャウトを決める。本当にこれ以上ないくらいのデビュー15周年の始まりと言えるようなライブだった。
演奏が終わるともちろん若大将ことTAXMANによる「わっしょい」が執り行われるのであるが、今回はメンバー3人におなじみの法被を配って着させるも、自分だけ新たなバージョンの法被を着ており、
「「2019年 日本武道館公演記念」って書いてあるやつをいつまで着てるんだ!(笑)」
と言い、その矛先は客席の法被を着ていた人にまで向けられてしまう。それだけに観客からはツアーでその新たな法被の販売を望む声があがり、TAXMANは
「俺が掛け合ってみよう!」
と大将らしさを見せていたが、ツアーが5月11日から始まるという日程であるだけにそこに間に合うのだろうか。
そうして「わっしょい」をしようとするのであるが、せっかくなのでゲストたちも一緒にということで順番に呼び込むのであるが、telephonesの誠治がまさかの電話中ということで最後になりながらもステージに全員集結。もちろん全員ちゃんと段取りをわかっているということで練習なしの一発本番での「わっしょい」をしっかり決め、去り際にはTAXMANもJIMも観客とハイタッチしながらステージを去って行った。
そのゲストたちの本当に楽しそうな姿を見ていても、THE BAWDIESはバンドマンにも愛されてるし(メジャーデビューした当時に本当にたくさんのバンドが「THE BAWDIESがカッコいい」という話をしていた)、ファンにも愛されているし、ロックンロールにも愛されている。それを改めて確認したような1日だった。
しかしながら「THIS IS MY STORY」から15年も経ったとは思えないくらいに、THE BAWDIESのメンバーたちは全然変わらないように見える。でもそれはそんな変わらないメンバーたちのバンドに出会った自分もそうなのかもしれない。このバンドのロックンロールをずっとカッコよくて楽しいと思って、ライブハウスに通い続けている。それは出会った15年前から全く変わっていないことだから。
1.EMOTION POTION
2.YOU GOTTA DANCE
3.SING YOUR SONG
4.JUST BE COOL w/ 石毛輝,松本誠治 (the telephones)
5.LET'S GO BACK
6.SO LONG SO LONG
7.LEMONADE w/ 志磨遼平 (ドレスコーズ)
8.KEEP YOU HAPPY
9.SUGAR PUFF
10.ROCK ME BABY
11.IT'S TOO LATE w/ 菅原卓郎 (9mm Parabellum Bullet)
12.GIMME GIMME
13.I BEG YOU
encore
14.HOT DOG
15.KEEP ON ROCKIN'
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