キュウソネコカミ DMCC REAL ONEMAN TOUR2018 -EXTRA!!- 〜PAINT IT WHITE!!〜 @新木場STUDIO COAST 11/21
- 2018/11/22
- 08:10
アルバム発売を2週間後に控えた状態でのツアーというよくわからないタイミングである。
なので、新譜収録曲先行披露ワンマンとして廻る、キュウソネコカミの東名阪ツアー。その初日がこの日の新木場STUDIO COAST。
今回のツアーは「ドレスコードが白」ということが先にアナウンスされており、それに合わせて物販にも白いTシャツが多く販売されており、さらに入場時には懐かしの赤白帽が配られる。客席が白い服、白い帽子を被った人ばかりというのは異様な光景である。
SPEED「White Love」、サカナクション「白波トップウォーター」などの「白」がタイトルに入っている曲ばかりが流れる会場に、まずはライブプロデューサーのP青木が上下ともに真っ白な服を着て、しっかりと帽子を被って登場。
「男女の見分けがつかない(笑)」
という中でおなじみの噛み噛みの生前説をすると、少し経って暗転するとステージを覆う暗幕の向こう側からバンドの鳴らす音が聞こえ、暗幕が開くとやはりすでにメンバーが演奏を始めており、「GALAXY」からスタートするというワンマンならではの展開。
メンバーもやはり上下ともに白の服で統一されており、ヨコタはメガネのフレームやキーボードの色までも白になっているという徹底っぷり。セイヤは間奏に入る前に
「白いなー!」
と思わず叫んだが、小さいライブハウスからフジロックのステージ、さらにはアジアのライブハウスまで、ありとあらゆる会場でライブをやってきたキュウソと言えども、この景色はさすがに衝撃なのだろう。
「ちゃんと(ドレスコードを)守ってきたお前ら、超可愛い!そんなお前らは、メンヘラちゃん!」
と「メンヘラちゃん」につなげ、セリフ部分でアドリブっぽく歌うセイヤに対して回答する側のヨコタが思わず笑ってしまっていた「NO MORE 劣化実写化」、セイヤがONE PIECEの海軍の「正義」と背中に書かれたジャケットを羽織って(これもやはり白だ)演奏した「邪邪邪 VS ジャスティス」と、冒頭はライブ定番曲の連発で、早くもどんどんCOASTのフロアは熱気に満ちていく。
するとここからはレア曲ゾーンへ。一応昨年リリースのアルバム「にゅ〜うぇいぶ」収録であるが早くもレア曲扱いされている、スカっぽいリズムや転調が新鮮な「☆断捨離☆」、5〜6年ぶりに演奏したというインディーズ時代の超レア曲「フェス行きたい」と、メンバーがやりたくなった曲なのかな?としか最初は思えない選曲だったが、実は
「真っ白な部屋でひとりきり」(☆断捨離☆)
「白い壁に一人で何かを喋りだす」(フェス行きたい)
と、この日のコンセプトに合わせて「白」というフレーズが歌詞に入っている曲を選んだという。自分たちの作ったものとはいえ、こうした曲を思いつく反射神経の良さと、久しぶりとは思えないくらいにライブで毎回やってるかのように演奏できるキュウソのバンドとしての地力の強さを思い知らされる。それはこうしてフェスだけでなくワンマンに足を運ばないとなかなか見えない部分であるが。
すると改めて今回のライブのコンセプトというかテーマである「リリース直前のアルバムの曲をライブで披露する」という新曲演奏コーナーに突入。
最初に演奏された「ピクピク」はコミュニケーションをテーマにしていると思われる歌詞(「繋がりたい」的なフレーズが繰り返される)の曲で、そういう面では「こみゅ力」に近いものがあるが、この曲ではバンドのキメを多く活かしているイメージで、それはカワクボとソゴウの地味に見えて実はめちゃくちゃ安定感と力強さを備えているリズム隊によるものが大きい。
続く「ギリ昭和」はアルバムタイトル「ギリ平成」のタイトルチューン的な位置付けの曲で、ギリギリ昭和生まれであるキュウソのメンバーたちが歌う昭和、そして終わりゆく平成という時代。例えば平成生まれのgo! go! vanillasは「平成ペイン」という曲で終わりゆく平成の時代を歌ったが、この曲では
「未だに元号性なのは日本だけ」
というフレーズで締められるのは実にキュウソならではの斜めからの視点というか。
すでにライブでもおなじみになっている「推しのいる生活」はもはや新曲とは思えないくらいの浸透度で、早くも「わっしょい!わっしょい!」の大合唱が起こる。サウンドもキュウソの王道と言ってもいいようなディスコパンクであり、この曲はこれから長い時間我々ファンと一緒に年月を重ねていく曲になりそうだ。
すでに3曲も新曲をやっているにもかかわらず、まだ新曲祭りは終わらない。セイヤが
「なんで白い服を着てもらって、白い帽子まで被っているのか!それは君たちを白米に見立てているからです!」
と言うと、ステージに炊飯器が持ち込まれ、1合分の米と水をセットすると、炊飯器が炊飯開始を知らせる「きらきら星」のメロディーを奏で始める。これはセイヤが普段使っている炊飯器と同じブランドのものであり、セイヤがこの炊飯器から着想を得たという「炊き上がれ召し上がれ」は「きらきら星」のメロディーをラウドかつ凶悪なバンドサウンドで鳴らすファストチューン。炊いているはずなのに、セイヤのシャウトが
「ボイル!ボイル!」
と茹で上げているものなのはよくわからないが、久々にウォールオブデスが客席で炸裂する景色が頭にあったからこそのラウドっぷり。さらには観客が頭の上で三角を作ることにより、さらに米らしさを増す。
今回の白のドレスコードはこの曲の演奏中にMVを撮影するためのものであるため、曲を覚えた状態でもう一度、ということで2回目の演奏。普通はこうしたMV撮影という要素をライブに持ち込むと、ついつい間延びしてしまったり、テンポが悪くなってしまったりしがちなのだが、キュウソのライブにはそうしたものは一切ない。むしろ
「炊いてー!」
とまるで「抱いてー!」みたいな歓声を白米になり切って叫ぶというくらいの観客のリテラシーの高さ。これにはセイヤも思わずビックリしていたが、それ以上に嬉しそうだった。
最後の新曲「米米米米」は「ベイマイベイベー」と読むという、COMPLEX「BE MY BABY」を彷彿とさせるタイトルだが、つまり「炊き上がれ召し上がれ」がショートチューンであるのはこの曲の壮大なイントロということでもある。実際にすでに発表されている「ギリ平成」の曲順もこの2曲は続いている。
しかしながら続く「家」を全て「米」(まい)に変えて歌い切るという部分を含めて、「日本の米」というキラーチューンを持つ打首獄門同好会もビックリするであろう、なぜか今になってからの「米」ネタ連発っぷり。その尽きることのない発想力はもちろん、それを自らの音楽に昇華できるセンスと技術。そこには改めて驚かされるし、シーン登場時の面白さゆえの衝撃から「すぐ消える」と一部から言われていたこのバンドが消えるどころか、この大きなライブハウスを埋め続け、様々なフェスでメインステージに立つような存在にまで成長を続けている。こんな凄いバンドがそうそう容易く消えるわけがない。
新曲もひと段落し、今度はレア曲ならぬ不遇の曲コーナー。確かに全くライブでやらなくなった「なんまんだ」、「にゅ〜うぇいぶ」のボーナストラックという位置付けゆえに自ら不遇な立ち位置にしているような気もする「オーガニック狂いVS添加物オバケ」というレア曲を続けるのだが、「なんまんだ」では観客が両手を合わせて踊ったり、「オーガニック〜」ではその歌詞の面白さを噛みしめるように聴いたりと、レア曲がしっかり求められていることを感じさせた。
キュウソはフェスで話題になって一気にデカくなったバンドであるがゆえに、フェスで定番の曲だけが聴ければいいと思われているところもあると思うし、実際にそういう曲で盛り上がりたいという人もいるだろうけれど、こうしてワンマンにも足を運んでいる人たちはそうした定番曲だけでなく、こうしてこの日演奏されたレア曲も普段からしっかり聴いていて、だからこそこうして実際にライブで聴けると本当に嬉しそうにしている。面白いネタやMCではなくて、しっかりと音楽の力で繋がっているバンドとファンだからこそ。
セイヤがこの日初めて客席に飛び込んだ「TOSHI-LOWさん」では最前ブロックの観客が倒れてしまうという状況になってしまったのだが、いったん間奏を演奏しながら観客が全員立ち上がるのを待つメンバー一同。中でもメンバーの中で唯一マイクを使わないカワクボが台の上に乗って観客に「後ろ下がって」「立たせて立たせて」というように指示をしていたのが印象的。
「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」
というのがキュウソのライブのモットーであるが、それをメンバーが率先して見せているからこそ、曲間で靴を落とした人を探したりと、ファン同士の助け合いが自発的に発生している。それを見たセイヤとヨコタは
「激しいバンドのライブの時でも、そういう風に周りの人を思いやってやっていこうや。俺たちのお客さんからそれを広げていこう!」
と言っていたが、それはメンバーの持つ空気によってもたらされていると言っても過言ではない。
原曲よりもはるかにテンポアップし、盆踊りのかけ声にもより一層の気合いが宿る「KMDT25」、そして先ほどのお米も炊き上がると、「MEGA SHAKE IT!!」からは終盤戦へ。
「30分の持ち時間のフェスのつもりでやる」
という気合いの入りっぷりで、ゴム製のアヒルボートとともにセイヤが入浴するかのごとく客席に突入した「OS」含め、次々と定番曲であり「ヒット曲ではないけどキラーチューン」を連発していくのだが、明らかにこのあたりではバンドの空気や観客の空気がそれまでとは変わっていて、とりわけ
「友達だけれど保護者みたいな お前らに恵まれ」
「でも不思議とイラつかない お前ら愛してる!!」
と歌詞を変えて観客への愛を表明した「ハッピーポンコツ」、
「なめんじゃねー!」
の大合唱が巻き起こった「ビビった」と、コンセプトやテーマを遂行していくための冷静さや戦略、面白いネタを連発するサービス精神よりも、ひたすらに熱いロックバンドとしてのライブに染まっていっていた。それはもうキュウソがそういう男たちによるそういうバンドだからであるし、本質的にはキュウソの最大の魅力はそこなのである。だからライブを見ていて感動するし、
「明日からも仕事や学校に負けんなよ!」
という言葉以上に、その姿から明日への力をもらえる。そしてその説得力は年々増してきている。
アンコールではすでに決まっている来年のアルバムリリースツアーに加え、5月からは対バンツアーが開催されることが発表される。関東は川崎と新木場の変則2daysということ。キュウソはよく新木場→Zeppという2daysもやっていたが、同じ会場でやる方が楽なはずなのに、敢えて違う会場でやるというのは、セイヤが言っていたように「いろんな会場でやりたいから」だろうし、それは確実にバンドを強くする力になっている。
さらにアルバムの会場限定予約特典の説明を含め、サブスクリプションなどで音楽の聴き方が広がってきている中で、キュウソは「どうやったらCDを手に取ってもらえるか、CDを買ってくれた人に満足してもらえるか」というところにも今回のアルバムでさらに向き合っている模様。実際に手にするまではわからないが、この日演奏された新曲とともに、そうしたアートワークなり、CDを買った人だけが楽しめるという部分にも期待が高まる。
そしてセイヤが曲中に炊き上がったばかりのご飯をかっこむというパフォーマンスの「KMTR645」、そしてラストはキュウソ史上最もエモーショナルな「The band」。
「やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね
音源じゃ伝わりきらない 細かい感動がそこにはあるからだ!!」
というフレーズが今、ここをこれ以上ないくらいに実感させてくれるし、そう思わせてくれるバンドとしての強さをキュウソが持っているからより一層そう実感する。
何よりも、
「新曲ありがとぉぉぉ!!!」
というセイヤの叫びは、この日こうしてキュウソの新曲を聴くことができた我々の心境を代弁していた。
ライブが終わると恒例の記念撮影。おなじみのカメラマンのViolaも白い服で統一されているという徹底っぷりで、写真撮影が終わると「米米米米」が流れる中でメンバーははしゃぎまくりながらステージを去っていった。
フェスで大きくなったバンドであればあるほど、フェスでやるような曲が強ければ強いバンドであるほど、レア曲や新曲をライブで演奏すると、観客は棒立ち、という場面も目にすることが増える。
キュウソはフェスで大きくなったバンドだし、フェスでキラーチューンを連発するバンドだけど、やはりそれだけのバンドではなかった。代表曲はもちろん押さえながらも、こうして普段のライブではあり得ないようなセトリのライブでも本当に観客がみんな楽しそうにしていて、何よりも新曲やレア曲を待っている。
コンセプトライブという試みの向こうに見えたのは、ファンによるキュウソネコカミというバンドと、キュウソの曲への大きな愛情だった。それがしっかり見えてるから、それを受け取ったバンドはもっともっと強くなっていく。
1.GALAXY
2.メンヘラちゃん
3.NO MORE 劣化実写化
4.邪邪邪 VS ジャスティス
5.☆断捨離☆
6.フェス行きたい
7.ピクピク
8.ギリ昭和
9.推しのいる生活
10.炊き上がれ召し上がれ
11.炊き上がれ召し上がれ
12.米米米米
13.米
14.なんまんだ
15.オーガニック狂いVS添加物オバケ
16.TOSHI-LOWさん
17.KMDT25
18.MEGA SHAKE IT!!
19.ファントムバイブレーション
20.OS
21.DQNなりたい、40代で死にたい
22.ハッピーポンコツ
23.ビビった
encore
24.KMTR645
25.The band
推しのいる生活
https://youtu.be/wKiaze13E2c
Next→ 11/23 The Mirraz @club sonic Mito
なので、新譜収録曲先行披露ワンマンとして廻る、キュウソネコカミの東名阪ツアー。その初日がこの日の新木場STUDIO COAST。
今回のツアーは「ドレスコードが白」ということが先にアナウンスされており、それに合わせて物販にも白いTシャツが多く販売されており、さらに入場時には懐かしの赤白帽が配られる。客席が白い服、白い帽子を被った人ばかりというのは異様な光景である。
SPEED「White Love」、サカナクション「白波トップウォーター」などの「白」がタイトルに入っている曲ばかりが流れる会場に、まずはライブプロデューサーのP青木が上下ともに真っ白な服を着て、しっかりと帽子を被って登場。
「男女の見分けがつかない(笑)」
という中でおなじみの噛み噛みの生前説をすると、少し経って暗転するとステージを覆う暗幕の向こう側からバンドの鳴らす音が聞こえ、暗幕が開くとやはりすでにメンバーが演奏を始めており、「GALAXY」からスタートするというワンマンならではの展開。
メンバーもやはり上下ともに白の服で統一されており、ヨコタはメガネのフレームやキーボードの色までも白になっているという徹底っぷり。セイヤは間奏に入る前に
「白いなー!」
と思わず叫んだが、小さいライブハウスからフジロックのステージ、さらにはアジアのライブハウスまで、ありとあらゆる会場でライブをやってきたキュウソと言えども、この景色はさすがに衝撃なのだろう。
「ちゃんと(ドレスコードを)守ってきたお前ら、超可愛い!そんなお前らは、メンヘラちゃん!」
と「メンヘラちゃん」につなげ、セリフ部分でアドリブっぽく歌うセイヤに対して回答する側のヨコタが思わず笑ってしまっていた「NO MORE 劣化実写化」、セイヤがONE PIECEの海軍の「正義」と背中に書かれたジャケットを羽織って(これもやはり白だ)演奏した「邪邪邪 VS ジャスティス」と、冒頭はライブ定番曲の連発で、早くもどんどんCOASTのフロアは熱気に満ちていく。
するとここからはレア曲ゾーンへ。一応昨年リリースのアルバム「にゅ〜うぇいぶ」収録であるが早くもレア曲扱いされている、スカっぽいリズムや転調が新鮮な「☆断捨離☆」、5〜6年ぶりに演奏したというインディーズ時代の超レア曲「フェス行きたい」と、メンバーがやりたくなった曲なのかな?としか最初は思えない選曲だったが、実は
「真っ白な部屋でひとりきり」(☆断捨離☆)
「白い壁に一人で何かを喋りだす」(フェス行きたい)
と、この日のコンセプトに合わせて「白」というフレーズが歌詞に入っている曲を選んだという。自分たちの作ったものとはいえ、こうした曲を思いつく反射神経の良さと、久しぶりとは思えないくらいにライブで毎回やってるかのように演奏できるキュウソのバンドとしての地力の強さを思い知らされる。それはこうしてフェスだけでなくワンマンに足を運ばないとなかなか見えない部分であるが。
すると改めて今回のライブのコンセプトというかテーマである「リリース直前のアルバムの曲をライブで披露する」という新曲演奏コーナーに突入。
最初に演奏された「ピクピク」はコミュニケーションをテーマにしていると思われる歌詞(「繋がりたい」的なフレーズが繰り返される)の曲で、そういう面では「こみゅ力」に近いものがあるが、この曲ではバンドのキメを多く活かしているイメージで、それはカワクボとソゴウの地味に見えて実はめちゃくちゃ安定感と力強さを備えているリズム隊によるものが大きい。
続く「ギリ昭和」はアルバムタイトル「ギリ平成」のタイトルチューン的な位置付けの曲で、ギリギリ昭和生まれであるキュウソのメンバーたちが歌う昭和、そして終わりゆく平成という時代。例えば平成生まれのgo! go! vanillasは「平成ペイン」という曲で終わりゆく平成の時代を歌ったが、この曲では
「未だに元号性なのは日本だけ」
というフレーズで締められるのは実にキュウソならではの斜めからの視点というか。
すでにライブでもおなじみになっている「推しのいる生活」はもはや新曲とは思えないくらいの浸透度で、早くも「わっしょい!わっしょい!」の大合唱が起こる。サウンドもキュウソの王道と言ってもいいようなディスコパンクであり、この曲はこれから長い時間我々ファンと一緒に年月を重ねていく曲になりそうだ。
すでに3曲も新曲をやっているにもかかわらず、まだ新曲祭りは終わらない。セイヤが
「なんで白い服を着てもらって、白い帽子まで被っているのか!それは君たちを白米に見立てているからです!」
と言うと、ステージに炊飯器が持ち込まれ、1合分の米と水をセットすると、炊飯器が炊飯開始を知らせる「きらきら星」のメロディーを奏で始める。これはセイヤが普段使っている炊飯器と同じブランドのものであり、セイヤがこの炊飯器から着想を得たという「炊き上がれ召し上がれ」は「きらきら星」のメロディーをラウドかつ凶悪なバンドサウンドで鳴らすファストチューン。炊いているはずなのに、セイヤのシャウトが
「ボイル!ボイル!」
と茹で上げているものなのはよくわからないが、久々にウォールオブデスが客席で炸裂する景色が頭にあったからこそのラウドっぷり。さらには観客が頭の上で三角を作ることにより、さらに米らしさを増す。
今回の白のドレスコードはこの曲の演奏中にMVを撮影するためのものであるため、曲を覚えた状態でもう一度、ということで2回目の演奏。普通はこうしたMV撮影という要素をライブに持ち込むと、ついつい間延びしてしまったり、テンポが悪くなってしまったりしがちなのだが、キュウソのライブにはそうしたものは一切ない。むしろ
「炊いてー!」
とまるで「抱いてー!」みたいな歓声を白米になり切って叫ぶというくらいの観客のリテラシーの高さ。これにはセイヤも思わずビックリしていたが、それ以上に嬉しそうだった。
最後の新曲「米米米米」は「ベイマイベイベー」と読むという、COMPLEX「BE MY BABY」を彷彿とさせるタイトルだが、つまり「炊き上がれ召し上がれ」がショートチューンであるのはこの曲の壮大なイントロということでもある。実際にすでに発表されている「ギリ平成」の曲順もこの2曲は続いている。
しかしながら続く「家」を全て「米」(まい)に変えて歌い切るという部分を含めて、「日本の米」というキラーチューンを持つ打首獄門同好会もビックリするであろう、なぜか今になってからの「米」ネタ連発っぷり。その尽きることのない発想力はもちろん、それを自らの音楽に昇華できるセンスと技術。そこには改めて驚かされるし、シーン登場時の面白さゆえの衝撃から「すぐ消える」と一部から言われていたこのバンドが消えるどころか、この大きなライブハウスを埋め続け、様々なフェスでメインステージに立つような存在にまで成長を続けている。こんな凄いバンドがそうそう容易く消えるわけがない。
新曲もひと段落し、今度はレア曲ならぬ不遇の曲コーナー。確かに全くライブでやらなくなった「なんまんだ」、「にゅ〜うぇいぶ」のボーナストラックという位置付けゆえに自ら不遇な立ち位置にしているような気もする「オーガニック狂いVS添加物オバケ」というレア曲を続けるのだが、「なんまんだ」では観客が両手を合わせて踊ったり、「オーガニック〜」ではその歌詞の面白さを噛みしめるように聴いたりと、レア曲がしっかり求められていることを感じさせた。
キュウソはフェスで話題になって一気にデカくなったバンドであるがゆえに、フェスで定番の曲だけが聴ければいいと思われているところもあると思うし、実際にそういう曲で盛り上がりたいという人もいるだろうけれど、こうしてワンマンにも足を運んでいる人たちはそうした定番曲だけでなく、こうしてこの日演奏されたレア曲も普段からしっかり聴いていて、だからこそこうして実際にライブで聴けると本当に嬉しそうにしている。面白いネタやMCではなくて、しっかりと音楽の力で繋がっているバンドとファンだからこそ。
セイヤがこの日初めて客席に飛び込んだ「TOSHI-LOWさん」では最前ブロックの観客が倒れてしまうという状況になってしまったのだが、いったん間奏を演奏しながら観客が全員立ち上がるのを待つメンバー一同。中でもメンバーの中で唯一マイクを使わないカワクボが台の上に乗って観客に「後ろ下がって」「立たせて立たせて」というように指示をしていたのが印象的。
「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」
というのがキュウソのライブのモットーであるが、それをメンバーが率先して見せているからこそ、曲間で靴を落とした人を探したりと、ファン同士の助け合いが自発的に発生している。それを見たセイヤとヨコタは
「激しいバンドのライブの時でも、そういう風に周りの人を思いやってやっていこうや。俺たちのお客さんからそれを広げていこう!」
と言っていたが、それはメンバーの持つ空気によってもたらされていると言っても過言ではない。
原曲よりもはるかにテンポアップし、盆踊りのかけ声にもより一層の気合いが宿る「KMDT25」、そして先ほどのお米も炊き上がると、「MEGA SHAKE IT!!」からは終盤戦へ。
「30分の持ち時間のフェスのつもりでやる」
という気合いの入りっぷりで、ゴム製のアヒルボートとともにセイヤが入浴するかのごとく客席に突入した「OS」含め、次々と定番曲であり「ヒット曲ではないけどキラーチューン」を連発していくのだが、明らかにこのあたりではバンドの空気や観客の空気がそれまでとは変わっていて、とりわけ
「友達だけれど保護者みたいな お前らに恵まれ」
「でも不思議とイラつかない お前ら愛してる!!」
と歌詞を変えて観客への愛を表明した「ハッピーポンコツ」、
「なめんじゃねー!」
の大合唱が巻き起こった「ビビった」と、コンセプトやテーマを遂行していくための冷静さや戦略、面白いネタを連発するサービス精神よりも、ひたすらに熱いロックバンドとしてのライブに染まっていっていた。それはもうキュウソがそういう男たちによるそういうバンドだからであるし、本質的にはキュウソの最大の魅力はそこなのである。だからライブを見ていて感動するし、
「明日からも仕事や学校に負けんなよ!」
という言葉以上に、その姿から明日への力をもらえる。そしてその説得力は年々増してきている。
アンコールではすでに決まっている来年のアルバムリリースツアーに加え、5月からは対バンツアーが開催されることが発表される。関東は川崎と新木場の変則2daysということ。キュウソはよく新木場→Zeppという2daysもやっていたが、同じ会場でやる方が楽なはずなのに、敢えて違う会場でやるというのは、セイヤが言っていたように「いろんな会場でやりたいから」だろうし、それは確実にバンドを強くする力になっている。
さらにアルバムの会場限定予約特典の説明を含め、サブスクリプションなどで音楽の聴き方が広がってきている中で、キュウソは「どうやったらCDを手に取ってもらえるか、CDを買ってくれた人に満足してもらえるか」というところにも今回のアルバムでさらに向き合っている模様。実際に手にするまではわからないが、この日演奏された新曲とともに、そうしたアートワークなり、CDを買った人だけが楽しめるという部分にも期待が高まる。
そしてセイヤが曲中に炊き上がったばかりのご飯をかっこむというパフォーマンスの「KMTR645」、そしてラストはキュウソ史上最もエモーショナルな「The band」。
「やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね
音源じゃ伝わりきらない 細かい感動がそこにはあるからだ!!」
というフレーズが今、ここをこれ以上ないくらいに実感させてくれるし、そう思わせてくれるバンドとしての強さをキュウソが持っているからより一層そう実感する。
何よりも、
「新曲ありがとぉぉぉ!!!」
というセイヤの叫びは、この日こうしてキュウソの新曲を聴くことができた我々の心境を代弁していた。
ライブが終わると恒例の記念撮影。おなじみのカメラマンのViolaも白い服で統一されているという徹底っぷりで、写真撮影が終わると「米米米米」が流れる中でメンバーははしゃぎまくりながらステージを去っていった。
フェスで大きくなったバンドであればあるほど、フェスでやるような曲が強ければ強いバンドであるほど、レア曲や新曲をライブで演奏すると、観客は棒立ち、という場面も目にすることが増える。
キュウソはフェスで大きくなったバンドだし、フェスでキラーチューンを連発するバンドだけど、やはりそれだけのバンドではなかった。代表曲はもちろん押さえながらも、こうして普段のライブではあり得ないようなセトリのライブでも本当に観客がみんな楽しそうにしていて、何よりも新曲やレア曲を待っている。
コンセプトライブという試みの向こうに見えたのは、ファンによるキュウソネコカミというバンドと、キュウソの曲への大きな愛情だった。それがしっかり見えてるから、それを受け取ったバンドはもっともっと強くなっていく。
1.GALAXY
2.メンヘラちゃん
3.NO MORE 劣化実写化
4.邪邪邪 VS ジャスティス
5.☆断捨離☆
6.フェス行きたい
7.ピクピク
8.ギリ昭和
9.推しのいる生活
10.炊き上がれ召し上がれ
11.炊き上がれ召し上がれ
12.米米米米
13.米
14.なんまんだ
15.オーガニック狂いVS添加物オバケ
16.TOSHI-LOWさん
17.KMDT25
18.MEGA SHAKE IT!!
19.ファントムバイブレーション
20.OS
21.DQNなりたい、40代で死にたい
22.ハッピーポンコツ
23.ビビった
encore
24.KMTR645
25.The band
推しのいる生活
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