第57回東邦祭 ARTIST LIVE 2018 フジファブリック @東邦大学 スポーツアリーナ 11/18
- 2018/11/18
- 22:20
2年前にはフレデリック、その前には9mm Parabellum Bulletと、9mmのサポートギターを務める武田将幸のいるHEREの対バンと、無料でいいんですか?と思うようなアーティストを招いて学祭ライブを行っている、千葉県の京成大久保駅の近くにある、東邦大学。
今年もフジファブリックのワンマンという無料とは思えない内容。フェスではよくライブを見ているが、今の編成のフジファブリックをこの尺で見るのはもしかしたら初めてかもしれない。
ちなみに先日、フジファブリックを語る座談会を開催し、自分も参加しているのでそちらも読んでいただきたい。
(https://www.ongakunojouhou.com/entry/2018/11/15/195319)
ライブ会場であるスポーツアリーナは近年できたと思われるキレイな体育館で、バスケットゴールなどがあるのを見ると、学校というものの中に入れるのってこういう機会しかないよなぁと思う。メンバーが立つステージもまさに体育館のそれである。
さすが学祭とあって、17:30過ぎという早めの時間に場内が暗転すると、おなじみのSEが流れて、加藤慎一(ベース)を先頭にメンバーがステージに登場。サポートドラマーはおなじみのBOBO。
山内総一郎が
「でやっ!」
的な感じで気合いを入れると、「徒然モノクローム」でライブが始まり、客席から大歓声が上がり、さらにサビではたくさんの腕が上がる。山内は
「東邦祭ー!」
と叫んだが、どうやら東邦大学の学生もおれど、むしろフジファブリックのライブを見るためにここまで来た、普段からフジファブリックのライブに通っているファンの方がはるかに多そうである。
真っ赤な照明がメンバーを照らす「カンヌの休日」は山田孝之をフィーチャーしてシングルリリースされた時はここまでライブで定番曲になると思っていなかった曲。
しかしスピーカーなどをいたるところに組んでいるとはいえ、やはりライブが行われることを想定していない体育館であるために音響はライブハウスと比べてしまうとそこまで良くはないのだが、そんな中でもBOBOのドラムの精密さと手数の多さは群を抜いているし、このリズムが今のフジファブリックを支え、引き締めていると実感する。
スカパーの野球中継のテーマソングとしてプロ野球ファンにはおなじみの「電光石火」はこのバンドにまた新しいライブの大きな武器ができたな、と思うアッパーサイドな曲だが、一転して山内のボーカルが雄大なサウンドに乗って広がっていく「Water Lily Flower」はスケールの大きなミドルテンポと言っていい最新曲。
こうした曲はボーカルの力が最も大事なのだが、山内は本当に歌が上手くなったし、声がしっかり響くようになった。ボーカルになった当初は歌唱力の乏しさを(仕方ないとはいえ)指摘されることも多々あったが、今そんなことを言う人は全くいないだろう、と思うくらいにしっかり「ボーカリスト」という肩書きを全うしている。
しかしながらメンバー紹介も含めたMCは実に緩めで、金澤が
「トイレに行ったら、誰がいたずらしたのか、「人がいなくても水が流れることがあります」の人を犬に変えてた(笑)
理系の大学なのにバカらしいことやってるな〜って(笑)」
と学校のトイレをネタにして笑いを誘うと、4人の中で唯一の大卒であるBOBOも
「この大学ってこの会場もそうだけど、すごくキレイじゃないですか。トイレも新しいから人がトイレに入ると電気が自動で点くっていう感じで。結構トイレで落ち着きたいんで、個室に入ったんですよ。座って携帯見てたら電気消えて(笑)ちょっと動くとまた点いて(笑)」
とやはりトイレネタ。そんな流れに危機感を抱いたのか山内は
「大学っていろんなところから人が来て。年齢も高校とかに比べるとバラバラで。そんな人たちが一致団結してこの学祭を作って、こうして我々を呼んでくれている。歌う場所がなかったら我々は何もできないですから。本当にありがとうございます」
と、この学祭を作っている実行委員たちに真摯に感謝の気持ちを伝えた。
夏が過ぎても心に響く「若者のすべて」のメロディとキーボードの旋律は、山内が
「学校で「若者のすべて」をやるといつも以上になんか感じるものがある」
と言っていたように、この大学の学生たちの青春の1ページとして深く刻まれていくだろう。
軽快なリズムの「LIFE」から、先日の座談会で参加者全員が各々のフジファブリックのベスト10曲の中に入れていたことによって、フジファブリックの代表曲であるということを改めて思い知らされた「銀河」でダンサブルに転じると、金澤がギターを弾く「SUPER!!」では間奏で山内、金澤、加藤の三人がキーボードの前に並んで左右に楽器を振りながら演奏するという実に楽しそうなパフォーマンスを行う。その動きに合わせて観客が手を振るのも実に楽しいが、守りに入ってもおかしくないキャリアと歴史を持つバンドがこうして今でも新たなことに挑戦しているというのは学生たちが見ても大きな刺激になるはずだ。
そしてやはり無料の学祭ライブということで、ワンマンとはいえ尺はそこまで長くない(それでも1時間はやっている)ので、早くもラストへ。
これまでの様々なライブで最後を飾ってきた「虹」で山内が観客にサビを大合唱させ、さらにはアウトロで恒例のメンバーのソロ回しセッションを展開。金澤は自身のキーボードに足を乗せて弾きまくり、加藤のベースソロの際になぜかステージ上を走り回る山内…。その姿はもはやベテランと言っていい年代になった彼らもまだ学生らしさというか、若者の心みたいなものを失っていないのだな、と思わせた。
アンコールでは山内が1月にニューアルバムが出ることを告げ、
「15周年っていうことで、もう、今まではなんだったんだ、っていうくらいのすごい内容になってますから。これまでと地続きではあるんですけども、みなさんも絶対ビックリすると思うんで!」
といつにも増して自信満々なだけに期待は高まる一方なのだが、
「そして実行委員の方々に今一度盛大な拍手をお願いします!」
と自分たちを呼んでくれた実行委員たちに感謝を告げたのだが、その時に山内はしっかり実行委員たちがいる方を見ながらそれを口にしていた。
それが実行委員の人たちはもの凄く嬉しかっただろうな、と思えたのは、実行委員の女の子がライブの冒頭からずっと泣いている姿が見えていたからである。それはライブの内容に直接影響するものではないが、きっとその女の子がフジファブリックが大好きで、自分たちの学校にフジファブリックが来て欲しくて必死にオファーしてこの日のために様々な準備をしてきたんだろうな、と思うと、それはきっとメンバーたちにも伝わってたんじゃないかと思うし、彼女たちにとってこの日は、何年経っても思い出してしまうなぁ、という日になるに違いないし、できれば彼女たちがこの大学を卒業しても音楽に関わっていて欲しいな、と思う。
そして山内は
「自分たちも昔、思い描いた形とは違う形になってしまったりして。きっと僕らもみなさんもいろんな別れがあったと思うし、これからいろんな別れが待ってると思います。そうして会えなくなった人たちへ渡したい手紙のような曲を最後に渡して終わりたいと思います」
と、このバンドの辿ってきた道とこれから学生たちが辿るであろう道を直線上に繋ぎ、
「さよならさえも言えずに時は過ぎるけど
夢と紡いだ音は忘れはしないよ
もう何年も切れたままになった弦を
張り替えたら君ともまた歌えそうな夕暮れ」
という志村正彦のことを思い出さざるを得ない歌詞と、
「離れた街でも大事な友を見つけたよ
じゃれながら笑いながらも同じ夢追いかけて
旅路はこれからもずっと続きそうな夕暮れ」
という大学という場所で出会った友人たちが今後の人生においても必ず大事なものになることをうかがわせる歌詞をまさに手紙のように最後に届けた。
学祭ライブとか無料ライブだからという物足りなさは皆無。そこはさすがプロだし、1ミリ足りとも手を抜いていたりするところが見えないのはさすがフジファブリック。
そんなシチュエーションで代表曲を連発するだけでなく、最新の自分たちの姿をしっかりと見せるものになっていたのが実にフジファブリックらしいな、と思った。他のどんなバンドよりも、新しい曲を作り、それをライブでやるというのが前に進んでいるという姿勢を示すことになるバンドなのだから。
1.徒然モノクローム
2.カンヌの休日
3.電光石火
4.Water Lily Flower
5.若者のすべて
6.LIFE
7.銀河
8.SUPER!!
9.虹
encore
10.手紙
Water Lily Flower
https://youtu.be/4akx4xc9i84
Next→ 11/20 佐々木亮介 × 蒼山幸子 × 村松拓 @千葉LOOK
今年もフジファブリックのワンマンという無料とは思えない内容。フェスではよくライブを見ているが、今の編成のフジファブリックをこの尺で見るのはもしかしたら初めてかもしれない。
ちなみに先日、フジファブリックを語る座談会を開催し、自分も参加しているのでそちらも読んでいただきたい。
(https://www.ongakunojouhou.com/entry/2018/11/15/195319)
ライブ会場であるスポーツアリーナは近年できたと思われるキレイな体育館で、バスケットゴールなどがあるのを見ると、学校というものの中に入れるのってこういう機会しかないよなぁと思う。メンバーが立つステージもまさに体育館のそれである。
さすが学祭とあって、17:30過ぎという早めの時間に場内が暗転すると、おなじみのSEが流れて、加藤慎一(ベース)を先頭にメンバーがステージに登場。サポートドラマーはおなじみのBOBO。
山内総一郎が
「でやっ!」
的な感じで気合いを入れると、「徒然モノクローム」でライブが始まり、客席から大歓声が上がり、さらにサビではたくさんの腕が上がる。山内は
「東邦祭ー!」
と叫んだが、どうやら東邦大学の学生もおれど、むしろフジファブリックのライブを見るためにここまで来た、普段からフジファブリックのライブに通っているファンの方がはるかに多そうである。
真っ赤な照明がメンバーを照らす「カンヌの休日」は山田孝之をフィーチャーしてシングルリリースされた時はここまでライブで定番曲になると思っていなかった曲。
しかしスピーカーなどをいたるところに組んでいるとはいえ、やはりライブが行われることを想定していない体育館であるために音響はライブハウスと比べてしまうとそこまで良くはないのだが、そんな中でもBOBOのドラムの精密さと手数の多さは群を抜いているし、このリズムが今のフジファブリックを支え、引き締めていると実感する。
スカパーの野球中継のテーマソングとしてプロ野球ファンにはおなじみの「電光石火」はこのバンドにまた新しいライブの大きな武器ができたな、と思うアッパーサイドな曲だが、一転して山内のボーカルが雄大なサウンドに乗って広がっていく「Water Lily Flower」はスケールの大きなミドルテンポと言っていい最新曲。
こうした曲はボーカルの力が最も大事なのだが、山内は本当に歌が上手くなったし、声がしっかり響くようになった。ボーカルになった当初は歌唱力の乏しさを(仕方ないとはいえ)指摘されることも多々あったが、今そんなことを言う人は全くいないだろう、と思うくらいにしっかり「ボーカリスト」という肩書きを全うしている。
しかしながらメンバー紹介も含めたMCは実に緩めで、金澤が
「トイレに行ったら、誰がいたずらしたのか、「人がいなくても水が流れることがあります」の人を犬に変えてた(笑)
理系の大学なのにバカらしいことやってるな〜って(笑)」
と学校のトイレをネタにして笑いを誘うと、4人の中で唯一の大卒であるBOBOも
「この大学ってこの会場もそうだけど、すごくキレイじゃないですか。トイレも新しいから人がトイレに入ると電気が自動で点くっていう感じで。結構トイレで落ち着きたいんで、個室に入ったんですよ。座って携帯見てたら電気消えて(笑)ちょっと動くとまた点いて(笑)」
とやはりトイレネタ。そんな流れに危機感を抱いたのか山内は
「大学っていろんなところから人が来て。年齢も高校とかに比べるとバラバラで。そんな人たちが一致団結してこの学祭を作って、こうして我々を呼んでくれている。歌う場所がなかったら我々は何もできないですから。本当にありがとうございます」
と、この学祭を作っている実行委員たちに真摯に感謝の気持ちを伝えた。
夏が過ぎても心に響く「若者のすべて」のメロディとキーボードの旋律は、山内が
「学校で「若者のすべて」をやるといつも以上になんか感じるものがある」
と言っていたように、この大学の学生たちの青春の1ページとして深く刻まれていくだろう。
軽快なリズムの「LIFE」から、先日の座談会で参加者全員が各々のフジファブリックのベスト10曲の中に入れていたことによって、フジファブリックの代表曲であるということを改めて思い知らされた「銀河」でダンサブルに転じると、金澤がギターを弾く「SUPER!!」では間奏で山内、金澤、加藤の三人がキーボードの前に並んで左右に楽器を振りながら演奏するという実に楽しそうなパフォーマンスを行う。その動きに合わせて観客が手を振るのも実に楽しいが、守りに入ってもおかしくないキャリアと歴史を持つバンドがこうして今でも新たなことに挑戦しているというのは学生たちが見ても大きな刺激になるはずだ。
そしてやはり無料の学祭ライブということで、ワンマンとはいえ尺はそこまで長くない(それでも1時間はやっている)ので、早くもラストへ。
これまでの様々なライブで最後を飾ってきた「虹」で山内が観客にサビを大合唱させ、さらにはアウトロで恒例のメンバーのソロ回しセッションを展開。金澤は自身のキーボードに足を乗せて弾きまくり、加藤のベースソロの際になぜかステージ上を走り回る山内…。その姿はもはやベテランと言っていい年代になった彼らもまだ学生らしさというか、若者の心みたいなものを失っていないのだな、と思わせた。
アンコールでは山内が1月にニューアルバムが出ることを告げ、
「15周年っていうことで、もう、今まではなんだったんだ、っていうくらいのすごい内容になってますから。これまでと地続きではあるんですけども、みなさんも絶対ビックリすると思うんで!」
といつにも増して自信満々なだけに期待は高まる一方なのだが、
「そして実行委員の方々に今一度盛大な拍手をお願いします!」
と自分たちを呼んでくれた実行委員たちに感謝を告げたのだが、その時に山内はしっかり実行委員たちがいる方を見ながらそれを口にしていた。
それが実行委員の人たちはもの凄く嬉しかっただろうな、と思えたのは、実行委員の女の子がライブの冒頭からずっと泣いている姿が見えていたからである。それはライブの内容に直接影響するものではないが、きっとその女の子がフジファブリックが大好きで、自分たちの学校にフジファブリックが来て欲しくて必死にオファーしてこの日のために様々な準備をしてきたんだろうな、と思うと、それはきっとメンバーたちにも伝わってたんじゃないかと思うし、彼女たちにとってこの日は、何年経っても思い出してしまうなぁ、という日になるに違いないし、できれば彼女たちがこの大学を卒業しても音楽に関わっていて欲しいな、と思う。
そして山内は
「自分たちも昔、思い描いた形とは違う形になってしまったりして。きっと僕らもみなさんもいろんな別れがあったと思うし、これからいろんな別れが待ってると思います。そうして会えなくなった人たちへ渡したい手紙のような曲を最後に渡して終わりたいと思います」
と、このバンドの辿ってきた道とこれから学生たちが辿るであろう道を直線上に繋ぎ、
「さよならさえも言えずに時は過ぎるけど
夢と紡いだ音は忘れはしないよ
もう何年も切れたままになった弦を
張り替えたら君ともまた歌えそうな夕暮れ」
という志村正彦のことを思い出さざるを得ない歌詞と、
「離れた街でも大事な友を見つけたよ
じゃれながら笑いながらも同じ夢追いかけて
旅路はこれからもずっと続きそうな夕暮れ」
という大学という場所で出会った友人たちが今後の人生においても必ず大事なものになることをうかがわせる歌詞をまさに手紙のように最後に届けた。
学祭ライブとか無料ライブだからという物足りなさは皆無。そこはさすがプロだし、1ミリ足りとも手を抜いていたりするところが見えないのはさすがフジファブリック。
そんなシチュエーションで代表曲を連発するだけでなく、最新の自分たちの姿をしっかりと見せるものになっていたのが実にフジファブリックらしいな、と思った。他のどんなバンドよりも、新しい曲を作り、それをライブでやるというのが前に進んでいるという姿勢を示すことになるバンドなのだから。
1.徒然モノクローム
2.カンヌの休日
3.電光石火
4.Water Lily Flower
5.若者のすべて
6.LIFE
7.銀河
8.SUPER!!
9.虹
encore
10.手紙
Water Lily Flower
https://youtu.be/4akx4xc9i84
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