VIVA LA ROCK 2017 @さいたまスーパーアリーナ 5/3
- 2017/05/05
- 19:09
音楽雑誌MUSICAを発行している会社の社長である鹿野淳が「埼玉を活性化する」という名目のもとに立ち上げたロックフェス、VIVA LA ROCK。去年は会場であるさいたまスーパーアリーナが改修期間であったため、ゴールデンウィークに開催できなかったが、今年は例年通りにゴールデンウィークでの開催。この日は初日。
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
というステージ構成も完全に固まり、GARDEN STAGEの周りのけやき広場を使ったフードエリアは数日前から営業していて、フェスとしての基盤は出来上がったと言えるが、この日は珍しくチケットがソールドアウトしているということで、物販エリアなどが混雑を極めている。導線がかなり心配になる状況である。
10:30~ Base Ball Bear [VIVA! STAGE]
去年はセカンドステージであるこのVIVA! STAGEのトリとして、3人編成になってもバンドの健在ぶりとこれからの活動への意欲と期待を見せつけた、Base Ball Bear。今年は初日のトップバッターという、かつてデビュー当時によくフェスで任されていた位置での出演である。
おなじみのXTCのSEで3人とサポートギタリストの弓木英梨乃が登場すると、リリースされたばかりにして、MUSICAの月間ベストアルバムを獲得した「光源」収録の、
「ある日突然 幽霊にされた
僕を置き去りに教室は進む」
という小出の生々しい学生時代の実体験が綴られた、なかなかフェスという祝祭空間には似つかわしくない歌詞である「すべては君のせいで」からスタート。弓木は早くもそのギターの腕前を存分に発揮すると、
「こんにちは、Base Ball Bearです」
という小出の挨拶から、バンドの代表曲中の代表曲と言っていい「changes」で、初めは大人しかったというか、様子見的な感じだった客席も一気に熱を帯びてくる。
「光源」からは「逆バタフライエフェクト」も披露されるという完全に新作モードだが、「C2」で獲得した黒いグルーヴは確実に新作にも生かされており、関根と堀之内のリズムはギターロック的な勢いだけでなく、横に揺れる心地良さも味あわせてくれる。
「バンドマンというのは元来夜行性なものなので、夜になるにつれて調子が出てくる。君たちもまだ爆音に慣れていない時間なので、夜になるにつれて調子が出てくるという(笑)」
と小出が朝イチの出番であることについて自虐的に語ると、弓木を
「今日の出演者をザッと見ましたけど、今日のギタリストの中で弓木さんが1番上手いです。まぁそれぞれの良さはあるけどね!(笑)
だから調子はフェスが進むにつれて出てくるけど、ギタリスト的には今がピークですから(笑)」
とかなりハードルを上げる紹介をしたのだが、続く「十字架You and I」では間奏部分で「ダンス湯浅将平」がないという事実に改めて寂しさを一瞬感じてしまったが、その上手すぎる弓木がギターソロを炸裂させ、弾き終わると大きな拍手が自然と発生するくらいに本当に上手い。
上手いし、かつては違う形で披露されていた曲が、弓木の力によって新たな生命を宿している。デビュー当時からずっとライブを見てきたバンドであり、たまに飽きるような時すらあるくらいに聴いた曲もある。(それがいかに特別なものだったかということに、湯浅がいなくなるまで気付かなかった)
しかし、そうしてライブを見まくっていた時期よりも、今の方がはるかにこのバンドのライブを見たい。他のいろんな曲が、この編成になってどんな変化を遂げるのか。それが見てみたいし、今なら絶対それは期待を裏切らないものになるとわかっているから。
RHYMESTERとのコラボ曲である「The Cut」をツアー同様に小出がハンドマイク状態でラップを全てやってみせるのも、ギターを弓木に全て任せられるというのが大きいのだろう。(ラップと歌を1人でやるというのは本当にため息が出るくらいにすごいが)
そしてラストはフェスのベボベの最後の曲といえばもちろんこれ、「祭りのあと」で最後に再び弓木が強烈なノイズを含んだギターソロを炸裂させた。
あのまま4人で続いた方が間違いなく美しかったけれど、それが欠けてしまい、離れる理由としては充分な(そのメンバーでしかあり得ないと思っていたバンドならなおさら)状況だが、むしろあのままの時よりもこのバンドに期待できている。ただ続けるんじゃなくて、しっかり期待以上のものを見せながら続けていく。今のベボベにはその明確な意志と、それを実践できる力がある。今年の野音ワンマンも今から本当に楽しみだ。
1.すべては君のせいで
2.changes
3.逆バタフライエフェクト
4.十字架You and I
5.The Cut
6.祭りのあと
すべては君のせいで
https://youtu.be/er800teuY4U
11:05~ 04 Limited Sazabys [STAR STAGE]
2年前の初出演時、すでにフォーリミはブレイクしたと言ってもいい状態になっていた。そんなバンドが出演するのは1番小さいCAVE STAGEということで、発表時から「絶対無理」「入り切れるわけがない」と言われまくり、異例の「入りきれないだろうから、翌日にVIVA! STAGEにも出演」という、一年で2日連続出演を果たした。それから2年、ついにSTAR STAGEへ進出し、そのトップバッターを務める。
ライブの始まりに相応しい、壮大な景色を喚起させる「Horizon」でスタートすると、アリーナ超満員の客席は「monolith」からはモッシュとダイブの嵐。
「fiction」ではアリーナならではのド派手なレーザー光線が飛び交いまくり、炎までも上がるという特効使いまくりの演出にメインステージに上がったからこそという感慨も浮かぶが、
「鹿野さんの前説が長すぎる(笑)」
「早起きしたくないからバンドマンになったのに、トップバッターだと早起きしなくちゃいけない(笑)」
とMCはいたって通常営業。
RYU-TAがステージを移動したり踊りながらギターを弾く「Warp」からバンドの突き進む意志を示した「climb」、フェスでやるのが少し意外ではあるがサビの擬音のフレーズが楽しい「Drops」では曲中にコーラスも展開と、常にいろんなフェスに出ても毎回セトリを変えるというフォーリミならではの観客を飽きさせない工夫がふんだんに感じられる。
自身もフェスをやっている(4月に名古屋で開催されたYON FES)からこその、このフェスが顔の見える人によって作られている信頼できるものであると讃えると、再会の歌こと「Terminal」、そして
「みんなに光が射しますように!VIVA LA ROCKの未来に光が射しますように!日本の音楽シーンの未来に光が射しますように!」
と言って「swim」では最後にGENの声がより一層伸びて終了…と思いきや、
「まだ時間あるみたいだからもう1曲!」
と言ってショートチューン「Remember」を追加し、「midnight cruising」も「chicken race」もないというセトリでメインステージのトップバッターを務め上げた。
しかし本人たちは「ようやくメインステージに出れて~」と言っていたが、もはやバンドの纏うオーラは紛れもなくこうしたアリーナでワンマンをやっているバンドのそれである。それはやはりYON FESという、このフェスと規模がほとんど変わらないようなフェスをこのバンドが運営しているというのが大きい。この世代、今のバンドシーンを引っ張る存在として、このキャパでワンマンで見れる日もすぐ来そうな気もする。本人はかつてthe telephonesをここで見たり、3月にもWANIMAを見に来たらしいが。
1.Horizon
2.monolith
3.fiction
4.cubic
5.Warp
6.climb
7.Drops
8.Terminal
9.swim
10.Remember
swim
https://youtu.be/447cO8LTq9A
11:45~ アルカラ [VIVA! STAGE]
意外にも初出演である。ライブハウスシーンの良心と言ってもいいバンド、アルカラ。
「キャッチーを科学する」で冒頭から盛り上がりは最高潮に達すると、
「最高なこのVIVA LA ROCK!何かが足りない!アブノーマルが足りない!」
と「アブノーマルが足りない」さらに「チクショー」とキラーチューンを連発し、田原は長い髪を振り乱しながらギターを弾き、下上はベースを振り回しながら高音コーラスも務める。
しかしながら凄まじいテンションとそれぞれのサウンドの一体っぷりである。ライブやってない期間がないくらいにライブハウスに棲息しているバンドだけはあるというか、良くなかったライブがないくらいにライブの平均点が異様に高い。この日も序盤からすごいライブであることがすぐわかる。
するとピックを投げても全然客席まで届かないくらいに投げるのが下手なボーカルの稲村がスマホを取り出して観客の写真を撮るのかと思いきや、
「このフェスの主催者の鹿野さんがVIVA LA TVっていうやつで各バンドの紹介コメントをしてくれてるんやけど、再生回数千回くらいやから誰も見てへんやろ?(笑)
だから今、このスピーカーを通して、その3分間のコメントを流します(笑)」
と言って本当に鹿野淳のアルカラの紹介コメントを流すという、前代未聞な時間の使い方をしたのだが、さすがに非常に上手くこのバンドのことをまとめており、いつも稲村に会うと酔っ払っているため、95%は適当なことしか言わないが、残りの5%は真理みたいなことを言う、などメンバーの人間性にも触れてくれた紹介が稲村はすごく嬉しかったんじゃないかと思う。
アルカラはいろんなバンドから多大なリスペクトを寄せられており、鹿野もフレデリックやパノラマパナマタウンなどの神戸のバンドはアルカラがいなかったら出てこなかったかもしれない、とすら言っていた。バンドが地元の神戸でサーキットフェスをやっていることから、バンド自体がメディア的な役割を果たしてもいるが、アルカラ自身のインタビューや作品についてはあまりメディアで見ることがないだけに嬉しさもひとしおだったんじゃないかと。
そして15周年記念日である7月26日には15年目で初めての(!)フルアルバムのリリースも決定。ネットではなくて現場で発表したいというのもライブという現場で生きてきたこのバンドだからこそだし、
「CD屋に、現場に足を運んで買ってくれ。俺は発売日にはいろんな店に行って弾き語りするから」
というのも、自分たちがいろんな音楽に触れるきっかけになったCDショップへの恩返し的な意味もあると思う。このフェスについても触れていたが、自分は行ったことはないが、バンドが主催するネコフェスもメンバーの体温が感じられる、現場に行くからこそわかることがたくさんあるフェスなのだろう。
そしてその告知したアルバムに入る、情報量多め、キメ多め、ロックンロールでありパンクでありハードロックであり…というアルカラでしかないような新曲を披露すると、ラストは「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」でバンドの15周年のさらにその先へ新たな期待を抱かせた。
自身のフェスはもちろん、MURO FESなど、このバンドには背負っているものがたくさんある。15年目にしての初出演で立ったこのステージもこれからそうなっていくのだろうか。
1.キャッチーを科学する
2.アブノーマルが足りない
3.チクショー
4.新曲
5.水曜日のマネキンは笑う
6.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
アブノーマルが足りない
https://youtu.be/dFeb2LLMp4A
12:20~ SHISHAMO [STAR STAGE]
初出演は初年度のCAVE STAGE。それから2年連続のVIVA! STAGE出演を経て、4年目でついにSTAR STAGE出演を果たした、SHISHAMO。
メインステージになってもいつもと全く変わらない3人が登場すると、
「ビバラ行けるか!」
と宮崎がいきなり煽りまくり、最新アルバム「SHISHAMO4」収録の「好き好き!」からスタート。「量産型彼氏」ではステージ上の巨大ビジョンに、明らに事前に作られたであろう編集された映像とバンドの演奏の映像がコラボし、このバンドがどれだけこのフェスに愛されているかがよくわかる。
客席からは手拍子が鳴り響く「僕に彼女ができたんだ」からアジカンの影響受けまくりなのがギターのイントロからわかる「きっとあの漫画のせい」と新旧の曲を並べつつ、宮崎は「男子!」「女子!」「大人!」「専門学生!」などかなり細かく分けたコール&レスポンスを展開し、「カップルで来た人!」で上がった手に対しては舌打ちし、「1人で来た人!?」は
「よく手を挙げれるな(笑)」
と容赦なく言い放つ。すると吉川と松岡は
「前日の前夜祭のゆるキャラショーでゆるキャラの中身を演じた」
という衝撃のカミングアウトをし、吉川は
「人生であんなに可愛いって言われたことがない」
と自虐。
バンドの代表曲「君と夏フェス」ならアニメーションの映像とともに客席のタオルが回りまくる「タオル」、そしてラストは「SHISHAMO4」の最後の曲である「明日も」の華やかなサウンドで短い時間の中でバンドの幅を示した。
自分が初めてこのバンドのライブを見たのは、初年度の開催前のプレイベントにて。その時にまだ高校生だったメンバーは大人のラブソングや大人の視点の歌詞になっている曲を作ったりするようになるなどすっかり年齢的には大人だが、少女そのものな見た目は全然変わらない。だが、見た目に反してバンドのスキルは見違えるほど上達しており、危なっかしかった当時から、各メンバーがソロを担えるくらいにまでになった。そしてそれはこのアリーナ規模でライブをやるためには必ず必要なものであり、ちゃんとこのバンドは立つべくしてこのアリーナのステージに立っている。
1.好き好き!
2.量産型彼氏
3.僕に彼女ができたんだ
4.きっとあの漫画のせい
5.君と夏フェス
6.タオル
7.明日も
明日も
https://youtu.be/zhCtzmDWsN0
このあとすぐさまVIVA! STAGEへ移動してgo!go!vanillasを見ようとしていたのだが、SHISHAMOを終わりまで見ていたら、なぜかアリーナ後方の出口が封鎖されており、アリーナから一度スタンド席を登って200LVまで行き、それから100LVまで降りてステージへ行くという経路を取らされたため、当然スタンドで見てた人とアリーナで見てた人が合流して一気に200LVから100LVへの階段に詰めかけたため、混雑し過ぎて全く進まず、半分くらい見れなかった。鹿野淳は前説で「混雑緩和を目指す」と言っていたが、わざわざ出口を封鎖して出口を減らすというのは混雑緩和に有効な手段だとは全く思えない。アリーナ後方の出口が開いていればすぐ他のステージに移動できるのに。
それで半分くらいしか見れなかったgo!go!vanillas、初年度にCAVE STAGEに出た際はそのキャパですらガラガラだったのに、今やVIVA! STAGEが満員になるくらいになっていた。もはやワンマンではZepp Tokyoすらも埋めているバンドだが、その当時やKANA-BOONやSHISHAMOとともにスペシャ列伝ツアーを廻っていた時は、ここまで来るとは全く想像できなかった。しかし近年のアルバムもシングルもキラーチューン連発、THE BAWDIESとのスプリットツアーを経てさらに熱さを増したライブを見ていると、その勢いはこれからまだまだ増して行きそうな気がする。そんなライブを全部見れなかったのが本当に残念。
13:35~ THE ORAL CIGARETTES [STAR STAGE]
今年リリースした最新アルバム「UNOFFICIAL」が大ヒットし、堂々このメインステージへ進出となった、THE ORAL CIGARETTES。その勢いを示すように、アリーナもスタンドもすでに超満員。
その「UNOFFICIAL」からの「リコリス」、コーラス部分は大合唱の「Shala la」と、冒頭から完全に新作モードだが、アルバムが大ヒットしたこともあり、歓迎っぷりがすごい。
山中がハンドマイクで歌う「CATCH ME」ではその山中特有の艶のある声がさらに生き、鈴木とあきらかにあきらの2人もド派手なアクションを交えながら演奏するという、山中だけを見ていられない華を備えている。
「STAR STAGEですが、我々はスターではありません。ですが、スターになりたいとは思っております!」
と山中が語り始めると、新曲がCDリリース前に物販で買えることを告知し、
「先に売ったら、みんながそれを周りのみんなに渡してCD出した時に売れなくなるかもしれん。それも考えたけど、俺たちはお前らのこと信用してるから!そうやって先に出すのは、出来た曲そのままをすぐ聴いて欲しいから。そうやって我々は変革を起こしていきたい!」
と語る。変革を起こすという意志は尊重するが、今やミュージシャンが配信サイトを自分で作る時代ですらあるだけに、変革の内容がこれではちょっとインパクトは薄い。もちろんメジャーに所属するがゆえにできることは限られているだろうが、こうしたことは他にやっているバンドもたくさんいる。きっとオーラルはシーンを引っ張るバンドになりたいと思っているはずだが、現状ではこうしたアイデア面ではすでにフェスを主催しているフォーリミがその部分の一番手と言ってもいい状態だ。
じゃあオーラルはどうすればいいのかというと、まずはひたすらに良い曲を作るという正攻法でシーンの頂点を目指すべきだと思うのだが、新曲「ONE’S AGAIN」は完全にアリーナどころかスタジアムで鳴ってもおかしくないようなスケールのアンセム。イントロの観客の大コーラスもそのスケールを作り出す要素になっている。
終盤は山中が華麗なステップを踏みながらハンドマイクで歌う「カンタンナコト」からもはや「キラーチューン祭り」と宣言する必要のないくらいのキラーチューンを連発し、
「新しい夢ができました。いつかここでワンマンやってみたいです!」
と宣言。初めて見るアリーナの景色が山中にそう言わせたのだと思うが、今のバンドの状況を考えると、今すぐやってもこのキャパが埋められる気すらする。そしてリリースを重ねるたびに急激に支持を増やしてきたバンドなだけに、次のアルバムが出る時には、このさいたまスーパーアリーナよりさらに上の景色すらも射程に入っていそうな恐ろしさすらある。
1.リコリス
2.Shala La
3.CATCH ME
4.ONE'S AGAIN
5.カンタンナコト
6.狂乱Hey Kids!!
7.5150
ONE'S AGAIN
https://youtu.be/T6z8MiYSqjk
14:15~ SUPER BEAVER [VIVA! STAGE]
先日は日比谷野音でのワンマンを行なったSUPER BEAVER、2年ぶりの出演は前回よりも大きなVIVA! STAGE。
SEもなしにメンバーが登場すると、最後に出てきたボーカル・渋谷が
「1年のブランクを置いて、VIVA! STAGE、SUPER BEAVERです、よろしくどうぞ」
と挨拶し、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と、数多くのロックスターたちが亡くなった27歳に自分自身がなったことを歌う「27」でスタートする(メンバーの出で立ちからはもっと上に見える)のだが、渋谷のボーカルにバンドのブレーンである柳沢、上杉と藤原のリズム隊もコーラスを重ねるのだが、見るたびにその渋谷以外のメンバーの声に力強さが増している。それはこうしてコーラスをする曲、パートが増えてきているからだろう。
とびきりポップな「秘密」、代表曲である「歓びの明日に」と、ラウドバンドやパンクバンドともよく対バンしているだけに、そうしたバンドと渡り合える力強いサウンドを持ちながらも、やはりど真ん中にあるのは渋谷の歌。だから満員の観客も盛り上がったり踊ったりするよりはじっと聴き入るという場面の方が多い。
その渋谷はもはや落語家かというくらいに次々と言葉を発しながら客席に突入するも、最前の観客が倒れてしまい、起き上がるまでずっと待ち、何度も「ごめんな」と声をかけていた。その姿はバンドの姿勢や渋谷の言葉のイメージと全く同じものである。
「我々の音楽は日常のつらいことを忘れさせるようなものではないかもしれないが、今日信頼できるライターがいる会社が作っているこのフェスにこれだけたくさんの人がいてくれる。みんなで声を出して、手を叩いたりするだけで、何か変わるものがあるんじゃないかと俺は思うわけです」
と語りかけると、観客の手拍子から曲が始まることにより、観ている側もバンドの発する音の一部になれたかのような気持ちになる「美しい日」、観客全員が両手を高くあげて合唱する三拍子の「青い春」と、近年のバンドの代表曲と言ってもいい曲たちが、たくさんの人の力をもらってより輝きを増す。
そして
「去年はなぜか呼ばれませんでした(笑)」
と自虐しながらも、
「これが我々の決意表明そのもののような曲だと思っております」
と言って最後に演奏されたのは、
「信じ続けるしかないじゃないか
愛し続けるしかないじゃないか」
「カッコ悪い人にはなりたくないじゃないか
人として 人として かっこよく生きていたいじゃないか」
というフレーズが、メジャーデビュー後にバンド崩壊の危機を迎え、それでも諦めることなく、メンバー同士と目の前にいる人を信じ続けてきたこのバンドの意志そのもののような「人として」。アッパーな曲でも盛り上がる曲でもないので、フェス向きな曲ではないかもしれない。しかし、この曲を最後にやる意味がしっかりある。
それと同様に、SUPER BEAVERのライブには一音一音、一言一言に「音楽をやる」「このバンドである」「このステージに立つ」という意志がある。だからこそ渋谷の言葉にもその確固たる意志が見えるし、本当に音を聴くだけで涙が出そうになる。この全てが意志の塊で作られているようなバンドの作る音楽は、これからもっとたくさんの人の人生を救い、心に突き刺さるはず。特別なことは何もしていない、特別なバンド。
1.27
2.秘密
3.歓びの明日に
4.美しい日
5.青い春
6.人として
美しい日
https://youtu.be/RF8mlN45vOQ
14:55~ KEYTALK [STAR STAGE]
THE ORAL CIGARETTES同様に、今年リリースのアルバム「PARADISE」が大ヒットを記録している、KEYTALK。すでに去年の段階で様々なフェスのメインステージを任されるようになったが、このフェスでも当たり前のようにメインステージに登場。
おなじみのオリジナルSEに乗ってメンバーがステージに登場すると、義勝がいきなり歌い始める、春フェスというこの時期にピッタリの「桜花爛漫」からスタートし、巨匠もその伸びのある声で義勝との対比を見せると、武正のギターがきらめく流星のように走り抜ける「ASTRO」で一気にテンポアップし、バンドの代名詞的な曲である「MONSTER DANCE」を早くも演奏。1万人以上の人がいっせいにMVのダンスを踊りだすのは実に壮観である。
「PARADISE」からはツインボーカルバンドならではのスイッチングを見せる疾走感溢れる「STAY」を披露し、「YURAMEKI SUMMER」で一足早く夏モードに転ずると、武正が自身と義勝は埼玉県民であるためにこのステージに立てるのが本当に嬉しいと語り、八木は「都民だけど、最寄駅が埼玉の新座駅」という埼玉ラバーっぷりをアピール。ちなみにすでにアナウンスされている新曲のリリースについても語ったが、この日は演奏されず。
MCでは熊本出身のためにやや蚊帳の外状態だった巨匠は、「PARADISE」からの「Summer Venus」の間奏でEDM調に大胆に変調すると、「結果にコミットする」とレンズにかかれた、自身もチャレンジしたライザップのサングラスをいきなり着用。これはビール一気飲みに変わる新たなパフォーマンスになるのだろうか。
今回のセトリの中では最も古い曲である「sympathy」が、前の曲の展開の多さのおかげでより一層ストレートに聴こえると、ポップなラブソング「Love me」から、ラストはリリース以降やらなかったライブはないというくらいに現在のバンド最大のキラーチューンに成長した「MATSURI BAYASHI」で義勝がスラップベースを決め、一大ダンスフロアを生み出して終了した。
こうして演奏した曲について書いていくと、その振れ幅と引き出しの多さには改めて驚かされる。4つ打ちロックバンド的なイメージの象徴として語られることも多いバンドだが、ストレートなロックンロールやポップなラブソング、EDMまで取り入れた曲など、フェスでやるような曲ですらここまで多岐にわたる。
それに加え、「PARADISE」では武正と八木も曲を作っており、さらに振れ幅が広くなっている。もちろんダンスアンセム的な曲が強いのは間違いないが、もはやこのバンドはそうした曲だけのバンドではないし、そうした様々なタイプの曲をできる地力の強さがある。今回のツアーで横浜アリーナワンマンを行えるくらいの存在になったのも当然といっていいだけに、アリーナもスタンドも超満員だったのも納得せざるを得ない。
1.桜花爛漫
2.ASTRO
3.MONSTER DANCE
4.STAY
5.YURAMEKI SUMMER
6.Summer Venus
7.sympathy
8.Love me
9.MATSURI BAYASHI
Summer Venus
https://youtu.be/SkGhyHGH3-g
15:40~ フレデリック [VIVA! STAGE]
去年に続いてVIVA! STAGEに登場し、去年に続いて満員御礼のフレデリック。
「オンリーワンダー」で冒頭から踊らせまくるも、ただ踊るだけではなく、MVのやや複雑なダンスを完壁にマスターしている人がたくさんいるのは、ここまでこのバンドの存在とこの曲が浸透しているのかと驚く。
「VIVA LA ROCKのオンリーワンを取りに来ました、フレデリックです」
と健司が宣言し、まだこのタイミングで聴くのが早い気しかしない「KITAKU BEATS」「ナイトステップ」という、昨年リリースのフルアルバム「フレデリズム」収録曲を畳み掛けると、
「去年を超えるために新曲を持ってきました!」
と言って披露されたのは、赤頭のギターがまるでシンセのようなサウンドで踊らせまくる、タイトル通りにシュールな歌詞、というフレデリック印100%の新曲「かなしいうれしい」。ただ、この曲はどうやら昔からある曲であり、それを再構築したらしい。フレデリックにはすでに廃盤になっている昔のCDもあるが、そこに収録されていた曲たちもこうして現在のバンドの力量でアップデートされた形で聴ける日がくるかもしれない。
しかしながらやはり新曲よりも知っている曲の方が踊れるのは間違いなく、音楽への愛を高速ダンスビートに乗せた「リリリピート」で踊りまくると、「オワラセナイト」では満員の観客が交互に腕を上下させるMVのダンスを一斉にする様がシュール極まりない。
そして最後はみんなお待ちかねの「オドループ」でダンス天国となって終了…と思いきや、最後のサビ前にバンドがぴたりと演奏を止め、
「踊ってない夜が気に入らないと歌ってますが、このフェスでそう歌うのは、STAR STAGEの夜の時間、トリをやる時まで取っておこうと思います!なので、みなさん今日は最後に「踊ってないビバラ気に入らない」と歌っていただいてもよろしいでしょうか!」
と健司がさらなる目標を掲げ、ダンスだけでなく
「踊ってないビバラ気に入らない」
の大合唱まで起きるラストとなった。
ただ1番有名な曲を最後にやるというのではなく、最後にやる理由をしっかり作った上で最後にやる。このバンドはイメージ以上にはるかに逞しく、力強くこのシーンを駆け上がろうとしている。トリはまだにしても、STAR STAGEに立つ姿は近い将来必ず見れるはず。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.ナイトステップ
4.かなしいうれしい (新曲)
5.リリリピート
6.オワラセナイト
7.オドループ
オドループ
https://youtu.be/PCp2iXA1uLE
16:35~ yonige [CAVE STAGE]
以前、このバンドのワンマンを渋谷のO-Crestで見た時、自分は「革命前夜感に溢れている」と書いたが、このフェス初出演にしてyonigeはCAVE STAGEを入場規制にするほどの人を集めてみせた。ものすごく演者が見づらいステージにもかかわらず。
おなじみのThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEで牛丸とごっきんの2人に加えてサポートドラムのkomaki(ex.tricot)が登場すると、
「大阪、寝屋川のyonigeです、よろしく」
とだけ言って「センチメンタルシスター」からスタート。
リリースしたばかりの「Neyagawa City Pop」がオリコンデイリーチャートでTOP10に入ってブレイクを確定づけたが、その新作からリードトラックの「さよならプリズナー」と「our time city」を披露。どちらも聴き心地はこれまでの曲の中で最も良い、語弊を恐れずに言えばポップな曲。そしてこの曲たちはこれまでのような生々しい恋愛ソングではなく、今この時代を生きる若者である2人が主人公の曲。つまりこれまで以上に受け入れられるべくして受け入れられた曲といえる。
「いやー、クリープハイプとyonigeを丸かぶりさせたVIVA LA ROCK最高ー!(笑)」
と、およそ最高とは思っていないだろう感じで牛丸が叫ぶ(クリープハイプの尾崎世界観も同じようなことを言っていたらしい)と、「さよならアイデンティティー」でポップな空気から一気にエモーショナルに振り切る。しかし「さよならアイデンティティー」「さよならバイバイ」「さよならプリズナー」と、本当に別れを経験しまくっているバンドである。
人気音楽番組・関ジャムにて、チャットモンチーや9mm Parabellum Bulletのプロデューサーを務めた、いしわたり淳治氏が歌詞を絶賛して地上波で流れた「アボカド」もkomakiのドラムでより安定感が増し、曲間全くなしにつながる「バイマイサイ」と、徐々に「メンヘラロック」と形容されることもあるようにダークな心象風景を描いた曲が中心になっていくと、そのトドメとばかりにラストに演奏されたのは、
「いっそこのまま死んでしまおうかな
そんな勇気もないのに呟く」
と歌ってから「死に損ない」と連呼される「恋と退屈」で負のエモーションを爆発させ、ビバラ初陣を飾った。
スペシャ列伝ツアーやアジカントリビュートへの参加もあり、元来の曲と歌詞のクオリティから考えるとブレイクするとは思っていたが、まさかこんなに早いタイミングでこうまでなるとは思っていなかった。この紛れもなく敗者側の歌である「恋と退屈」や「アボカド」がさらに大きなステージで鳴らされる瞬間は本当に爽快な気分になると思うだけに、是非ともそこを狙っていって欲しいし、すでにそこに手をかけている状態まで来ている気がする。
1.センチメンタルシスター
2.さよならプリズナー
3.our time city
4.さよならアイデンティティー
5.アボカド
6.バイマイサイ
7.最近のこと
8.恋と退屈
さよならプリズナー
https://youtu.be/ZPjzVpS_R30
17:50~ SiM [STAR STAGE]
このフェスでは皆勤賞のSiM。朝イチなどもあったが、横浜アリーナワンマンなども経た今年はトリ前というスロットでの登場である。
炎の特効が立ち上る中、メンバーが登場すると、
「ここまでの楽しいこと、全部忘れろー!SiMのワンマンへようこそー!」
とMAHが叫び、大喝采に包まれる中、いきなりの「KiLLiNG ME」スタートで客席は早くもモッシュ、ダイブ、左回りのサークルなどが発生して、一気に景色が塗り替わる。
「宇宙人を信じますかー!?」
と問いかけておきながら
「俺はどうでもいい!」
と突き放す「Boring People,Fucking Grays」、激しい全力ダッシュの左回りのサークルが発生しまくる「Faster Than The Clock」、SHOW-HATEがシンセで奏でる電子音の中でモンキーダンスさせる「GUNSHOTS」とライブでおなじみの曲たちを畳み掛けると、
「もうこっちからそっちの姿は全然見えない!でも声から聴こえるだろう!」
と言ってマイクを通さずに叫んでアリーナ最上段までMAHが声を届けると、観客にも声を求めた「CROWS」でさらに熱狂させつつ、「Life is Beautiful」では一転してじっくり聴かせる。ラウドバンドだからといってひたすらラウドな曲ばかりやるのではなく、この辺りの押し引きのバランスがこのバンドは非常に上手い。
SHOW-HATEもSINも楽器をぶん回したりというド派手なパフォーマンスを展開すると、この手のバンドでは珍しいくらいにレーザー光線もド派手に飛びまくる。この辺りはさすがにアリーナですでにワンマンをやっているバンド。
観客からの声に応えて、MAHが結婚したことにも触れると、目を覚ませとばかりに「Get Up,Get Up」、そして大合唱を巻き起こした「Blah Blah Blah」とこの日はライブアンセム続き。ラストは「f.a.i.t.h」で今年も巨大ウォールオブデスを発生させると、
「モッシュとかダイブがいろいろ言われている時代です!思いやりをもって当たってください!」
と最初はキュウソネコカミのようなことを言ったMAHだが、すぐさま
「嘘です!殺す気で行けー!」
と撤回して、このバンドでしか見れない景色を作り出した。
音の強度、メンバーのオーラ、ライブパフォーマンス、曲のスケールとどれを取っても見た目通りにバケモノのようなバンド。だからこそ今やすっかりメインストリームになったラウドロックの大ボス的な存在になったのも納得できるが、結婚して守るべきものができたのか、MAHはカリスマ性だけでなく、どこか包容力のようなものを感じさせるようになった。だからこそ、
「音楽を力にして、強く!強く生きてくれ!」
という願いがこの上なく説得力を持って響いた。
そしてロッキンオンのフェスなどには出ないので、なかなか首都圏のフェスで見れる機会は限られているバンドだが、こうして毎年このステージで見ることができるという点ではこのフェスに感謝しなくてはならない。
1.KiLLiNG ME
2.Boring People,Fucking Grays
3.Faster Than The Clock
4.GUNSHOTS
5.Amy
6.CROWS
7.Life is Beautiful
8.MAKE ME DEAD!
9.Get Up,Get Up
10.Blah Blah Blah
11.f.a.i.t.h
KiLLiNG ME
https://youtu.be/vyUMYYc8lxU
18:45~ BRADIO [CAVE STAGE]
初日のCAVE STAGEのトリは、前日に前夜祭にも出演したため、2日連続でこのフェスでライブをすることになったBRADIO。
賑々しいSEでメンバーが登場すると、さすがにすでに中野サンプラザをワンマンで埋めているバンド、すでに超満員(BLUE ENCOUNTの裏だというのに)で、しかもメンバーを迎える歓声が期待感に満ち溢れている。これからどんだけ楽しませてくれるんだろうか、というような。
アフロヘアが存在感ありまくる真行寺がステージに登場すると、セッション的な演奏で期待を煽りながら、早くも観客が歌える「Revolution」からスタート。ものすごく削ぎ落とされたアレンジのソウルナンバーだが、そうしたアレンジだからこそ観客の声が入る余地がある。
華やかなシンセサウンドの「スパイシーマドンナ」ではお決まりの振り付けをすでに会場にいるほとんどの人がマスターしているという浸透っぷりに驚きを隠しきれない。
「VIVA LA ROCKの大本命、BRADIOだー!」
という真行寺の挨拶から、リズム隊がファンキーなグルーヴを刻み始めると、真行寺がそのグルーヴに合わせた振り付けを伝授。基本的にこうした振り付けやコール&レスポンスが随所に挟まれるため、持ち時間は長くても曲数は少なくなりがち。しかしながらそうした時間がより一層の一体感を生み出している。
その振り付けを使うのは、最新アルバム「FREEDOM」のオープニングナンバー「Back To The Funk」。ワンマンなどでは黒人女性コーラスを迎える時もあるが、この日は真行寺がフルにファルセットボイスで、振り付けを自ら実践しながら歌い切る。素晴らしい歌唱力であり、見た目通りのソウルフルかつファンキーさ。
ここでバラードと言ってもいい「Overnight Superster」でさらに真行寺の歌声に聴き入ると、「FREEDOM」のタイトルナンバーである「Freedom」で踊らせまくると、4つ打ちをファンクと融合させた「Flayers」で観客は忙しなく腕を左右に挙げ続ける。
「パーティーはどこへ行った?
最初からずっとここにあったんだ」 (「Freedom」)
と歌われているように、完全にライブというよりもパーティーのごとき楽しさ。
真行寺が音楽の素晴らしさをみんなで分かち合いたいと真摯に説くと、ラストに演奏されたのはまたしてもバラード曲、しかも内容的には冬のバラードである「Colors」。
若手バンドの中には、フェスでバラードをやるのは盛り上がらないから怖いというバンドもいるらしい。しかしながらBRADIOは一切恐れることなく、7曲のうちに2曲もバラードを入れてくる。これは自身の曲と、見に来てくれる人たちへの絶大な信頼がないと絶対できない。しかしフェスでこういう曲をやるからこそ、ただ単に踊って楽しいバンド、というだけのイメージにはならない。そこをわかっているだけに、このバンドは演奏力と表現力と構成力が実に高いバンドであることを実感させてくれる。
アルバム「FREEDOM」はもはや日本のファンクの新たな金字塔と言ってもいいくらいの名盤である。だからこそもはやこのステージのキャパでは曲のスケールの大きさに全くついていけていない。真行寺は
「来年は向こうのデカいステージで待ってるからな!」
と言っていたが、それは確実に現実になる。
そしてファーストアルバムリリース時には「自分が聴くにはちょっと濃すぎる」としてスルーしていた自分自身を土下座させたいくらいに、このバンドに対する自分の評価は「FREEDOM」リリース以降急上昇している。ここまで本格的にファンクやソウルを軸にしながら、メインストリームに切り込んでいけそうなバンドはそうそういない。
1.Revolution
2.スパイシーマドンナ
3.Back To The Funk
4.Overnight Superster
5.Freedom
6.Flayers
7.Colors
Freedom
https://youtu.be/n0AkKVDmdtM
19:30~ KANA-BOON [STAR STAGE]
この日のトリはKANA-BOON。初年度の5月3日にもVIVA! STAGEのトリを務めているが、今年の5月3日にはついにSTAR STAGEのトリを務める。それはこの5月3日がボーカル・谷口鮪の誕生日であるということもあるだろう。
メンバーが登場すると、いきなりの「ないものねだり」で踊らせまくり、さらに「ワールド」鮪の言葉数の多い歌詞がリズミカルに放たれていく「盛者必衰の理、お断り」と初期曲が続く。
自身の誕生日であることをアピールしつつ、
「めしださん、元気ですか?」
と色々な報道があったベースのめしだをチラッといじりながら、最新シングル「Fighter」へ。これまでのKANA-BOONとはかなり毛色の違う、タイアップ先のアニメに寄せた、シリアスな歌詞とムードの曲だが、そのタイアップのタイトルやテーマをさりげなく歌詞に入れつつも、タイアップを全く知らなくても聴けるというこの絶妙なバランスはこれまでのタイアップ同様に鮪の作家性の高さを感じさせる。アニメのファンの一部からはやはり「声が合わない」という意見もあったようだが。
めしだ「5月3日ってゴミの日やな(笑)」
といじられながら、
「5月3日生まれの運勢を調べたら、60代になったら運気が急上昇するって書いてあって(笑)
遅いわ!と(笑) そこまでやってるかわからへんし(笑)」
と自らも自虐する鮪が、歌詞が飛んで「イェーイ!」と勢いでごまかした「フルドライブ」では、歌詞を飛ばした直後に恥ずかしくて後ろを向いてしまった鮪を、「あれ?歌詞飛ばしたよな?」とばかりに覗き込む古賀とめしだという構造が実に微笑ましいし、メンバーの変わらぬ関係を垣間見せてくれる。
「MUSiC」、さらには「さくらのうた」と徹底した初期曲の連発っぷりには驚いてしまうと同時に久しぶりに聴けるという嬉しさもあるが、その初期の名曲たちの後に演奏されたのは、現在アニメのタイアップとしてオンエアされている新曲「バトンロード」。「NARUTO」シリーズのタイアップということですでにバンドとの相性の良さは実証済みだが、やはり血生臭いアニメよりも、こうした「勝利・友情・努力」という少年ジャンプの世界観の方がこのバンドにはあっていると感じる。それはバンドが活動している中でそのテーマを体現しているというのもあると思うが。
そしてあっという間のラストはかつて「NARUTO」の主題歌だった「シルエット」。初期曲の名曲っぷりに光が当たるようなセトリだったが、割と近年の曲であるこの曲ももはやバンドの代表曲と言っていいくらいで、やはりこのバンドの持つメロディの良さは曲の構造が変わっても変わることはないと思わせてくれる。
観客がスマホのライトを点灯させてアンコールを待つ中でメンバーが登場すると、鮪がおもむろに口を開き、
「いろいろお騒がせもしましたけど、俺たちは音楽がとにかく大好きで、ずっとそれだけをやってきたし、これからもこのメンバーでずっと大好きな音楽をやっていきたい。さっき60代までやってるかわからへんって言ったけど、できればそのくらいまで。
このメンバーはずっと友達やし、もう家族みたいなもんやから。だからずっと一緒に、また1からやっていきます」
と、清水富美加とめしだとの報道の後に休んだりすることなく音楽を鳴らすことを選んだ姿勢について語る。
いつまで経っても予備校生のようなルックスも相まって、KANA-BOONはとかくナメられやすいというか、甘く見られがちなバンドである。その上で今回のニュースがあった。もしかしたら野次を飛ばされたりするかもしれないような状況でも、彼らはステージに立ち、そのニュースのことにも触れるMCをした。我々が思っている以上に、もう音楽でしか、このバンドでしか生きていくことができない男たちであるということがこの短いメッセージから伝わってきた。本当に芯がある、というか見た目以上にはるかに男らしいロックバンドだ。
そして
「ちょっとゆったりした曲をやってもいいですか?」
と言って最後に演奏されたのは、まさかの「眠れぬ森の君のため」。バンドの楽曲人気投票で1位になったのは知っていたが、まさかワンマンではないフェスの場でこの曲を聴けるとは。
この曲が演奏されたことで、鮪の「また1からやっていく」という発言の真意も、この日のセトリが初期曲ばかりだったのもすべて納得がいった。この曲は本当にデビューする前、まだバンドがゼロ地点にいた頃を描いた曲だから。
「あの夜僕はフェスに出たいと話した」
そう歌い始めた鮪は、今こんなに大きなフェスに出て、トリを務めるくらいの存在になった。夢を叶えたというのは短絡的だが、それくらい感動的なシーンであったし(ビジョンに映った最前列の女子はみんな泣いていた)、この歌詞は本当にフェスが音楽を始めた時から身近にあったこの世代以降じゃないと書けない歌詞であり、それを最初に、こんなに美しいメロディの名曲にしたのがKANA-BOONであった。
演奏が終わると、メンバーの元に誕生日ケーキを持った鹿野淳が登場し、鮪の27歳の誕生日を盛大に祝った。
タイムテーブルが発表されて、KANA-BOONがトリとわかった時、不安だった。あのニュースがあったから、見ないで帰る人がいっぱいいるんじゃないかと。(実際にツイッターとかでは「もうファンをやめる」と言っていた女子もいた)
でも蓋を開けたらアリーナもスタンドも超満員だった。あのニュースを忘れるくらい、もっと良い曲、すごいライブを。この景色を見たら、それを叶えてくれそうな予感がしている。
1.ないものねだり
2.ワールド
3.盛者必衰の理、お断り
4.Fighter
5.フルドライブ
6.MUSiC
7.さくらのうた
8.バトンロード (新曲)
9.シルエット
encore
10.眠れぬ森の君のため
Fighter
https://youtu.be/X9-ouDEL_-U
基本的に自分はこのフェスの主催者の鹿野淳を非常に信頼している。それはまだ鹿野淳がロッキンオンにいた時代から、彼がレコメンドする音楽、インタビューしてきたバンドたちの音を聴き、それが自分の人生の中で大事なバンドになってきたからだし、このフェスやその前に鹿野淳が作ったROCKS TOKYOでも楽しい思いをさせてもらったからである。
だが、今回は苦言を呈したいのは、go!go!vanillasを見れなかった要因である、導線問題である。鹿野淳はSTAR STAGEの前説で、「混雑緩和を目指して」と言っていた。しかし結果的にはその混雑緩和を目指した施策のせいで自分はバニラズを見れなかった。混雑緩和を目指すのに、なぜわざわざ通路を封鎖するのか。あのアリーナ後方の通路が通れれば確実にバニラズに間に合っていたし、アリーナ後方の観客たちはスムーズに他のステージに移動できたはず。
ましてや、自分もそうだがアリーナ後方で見ている人というのは往々にして、終わった後すぐに次のステージに移動したいので、抜けやすい後方で見ているものである。それなのにわざわざスタンドの通路を歩かされたら、ただ単に遠いところで立って見ていた、というだけである。
そこは非常に心の中がモヤモヤしてしまっていたが、このフェスは初年度から来ている大事なフェスであり、銀杏BOYZを2年連続で見せてくれたフェスでもある。なので、来年以降も行けるのなら行きたいし、行くからには音楽を目一杯楽しみたい。出ているバンド、鳴っている音は最高なのはわかっている。だからこそ、その最高な音楽が見えない、聴けないという事態は本当にキツい。
「この会場はフェスで使うための会場ではないんです」
とも鹿野淳は言っていたが、わざわざ完成形になっていた、新木場でのROCKS TOKYOを終わらせてまで、この会場にこだわって始めたフェス。ならばこの会場を可能な限りストレスなく楽しめるフェスの会場にして欲しい。
2日目、参加した人たちに話を聞いたら、初日より人が少なかったというのもあったが、導線は初日ほど悪くはなかったと言っていた。自分と同じことを言っていた人も多かっただけに、その声が届いていたんだろうか。
Next→ 5/6 JAPAN JAM 2017 @蘇我スポーツ公園
STAR STAGE
VIVA! STAGE
CAVE STAGE
GARDEN STAGE
というステージ構成も完全に固まり、GARDEN STAGEの周りのけやき広場を使ったフードエリアは数日前から営業していて、フェスとしての基盤は出来上がったと言えるが、この日は珍しくチケットがソールドアウトしているということで、物販エリアなどが混雑を極めている。導線がかなり心配になる状況である。
10:30~ Base Ball Bear [VIVA! STAGE]
去年はセカンドステージであるこのVIVA! STAGEのトリとして、3人編成になってもバンドの健在ぶりとこれからの活動への意欲と期待を見せつけた、Base Ball Bear。今年は初日のトップバッターという、かつてデビュー当時によくフェスで任されていた位置での出演である。
おなじみのXTCのSEで3人とサポートギタリストの弓木英梨乃が登場すると、リリースされたばかりにして、MUSICAの月間ベストアルバムを獲得した「光源」収録の、
「ある日突然 幽霊にされた
僕を置き去りに教室は進む」
という小出の生々しい学生時代の実体験が綴られた、なかなかフェスという祝祭空間には似つかわしくない歌詞である「すべては君のせいで」からスタート。弓木は早くもそのギターの腕前を存分に発揮すると、
「こんにちは、Base Ball Bearです」
という小出の挨拶から、バンドの代表曲中の代表曲と言っていい「changes」で、初めは大人しかったというか、様子見的な感じだった客席も一気に熱を帯びてくる。
「光源」からは「逆バタフライエフェクト」も披露されるという完全に新作モードだが、「C2」で獲得した黒いグルーヴは確実に新作にも生かされており、関根と堀之内のリズムはギターロック的な勢いだけでなく、横に揺れる心地良さも味あわせてくれる。
「バンドマンというのは元来夜行性なものなので、夜になるにつれて調子が出てくる。君たちもまだ爆音に慣れていない時間なので、夜になるにつれて調子が出てくるという(笑)」
と小出が朝イチの出番であることについて自虐的に語ると、弓木を
「今日の出演者をザッと見ましたけど、今日のギタリストの中で弓木さんが1番上手いです。まぁそれぞれの良さはあるけどね!(笑)
だから調子はフェスが進むにつれて出てくるけど、ギタリスト的には今がピークですから(笑)」
とかなりハードルを上げる紹介をしたのだが、続く「十字架You and I」では間奏部分で「ダンス湯浅将平」がないという事実に改めて寂しさを一瞬感じてしまったが、その上手すぎる弓木がギターソロを炸裂させ、弾き終わると大きな拍手が自然と発生するくらいに本当に上手い。
上手いし、かつては違う形で披露されていた曲が、弓木の力によって新たな生命を宿している。デビュー当時からずっとライブを見てきたバンドであり、たまに飽きるような時すらあるくらいに聴いた曲もある。(それがいかに特別なものだったかということに、湯浅がいなくなるまで気付かなかった)
しかし、そうしてライブを見まくっていた時期よりも、今の方がはるかにこのバンドのライブを見たい。他のいろんな曲が、この編成になってどんな変化を遂げるのか。それが見てみたいし、今なら絶対それは期待を裏切らないものになるとわかっているから。
RHYMESTERとのコラボ曲である「The Cut」をツアー同様に小出がハンドマイク状態でラップを全てやってみせるのも、ギターを弓木に全て任せられるというのが大きいのだろう。(ラップと歌を1人でやるというのは本当にため息が出るくらいにすごいが)
そしてラストはフェスのベボベの最後の曲といえばもちろんこれ、「祭りのあと」で最後に再び弓木が強烈なノイズを含んだギターソロを炸裂させた。
あのまま4人で続いた方が間違いなく美しかったけれど、それが欠けてしまい、離れる理由としては充分な(そのメンバーでしかあり得ないと思っていたバンドならなおさら)状況だが、むしろあのままの時よりもこのバンドに期待できている。ただ続けるんじゃなくて、しっかり期待以上のものを見せながら続けていく。今のベボベにはその明確な意志と、それを実践できる力がある。今年の野音ワンマンも今から本当に楽しみだ。
1.すべては君のせいで
2.changes
3.逆バタフライエフェクト
4.十字架You and I
5.The Cut
6.祭りのあと
すべては君のせいで
https://youtu.be/er800teuY4U
11:05~ 04 Limited Sazabys [STAR STAGE]
2年前の初出演時、すでにフォーリミはブレイクしたと言ってもいい状態になっていた。そんなバンドが出演するのは1番小さいCAVE STAGEということで、発表時から「絶対無理」「入り切れるわけがない」と言われまくり、異例の「入りきれないだろうから、翌日にVIVA! STAGEにも出演」という、一年で2日連続出演を果たした。それから2年、ついにSTAR STAGEへ進出し、そのトップバッターを務める。
ライブの始まりに相応しい、壮大な景色を喚起させる「Horizon」でスタートすると、アリーナ超満員の客席は「monolith」からはモッシュとダイブの嵐。
「fiction」ではアリーナならではのド派手なレーザー光線が飛び交いまくり、炎までも上がるという特効使いまくりの演出にメインステージに上がったからこそという感慨も浮かぶが、
「鹿野さんの前説が長すぎる(笑)」
「早起きしたくないからバンドマンになったのに、トップバッターだと早起きしなくちゃいけない(笑)」
とMCはいたって通常営業。
RYU-TAがステージを移動したり踊りながらギターを弾く「Warp」からバンドの突き進む意志を示した「climb」、フェスでやるのが少し意外ではあるがサビの擬音のフレーズが楽しい「Drops」では曲中にコーラスも展開と、常にいろんなフェスに出ても毎回セトリを変えるというフォーリミならではの観客を飽きさせない工夫がふんだんに感じられる。
自身もフェスをやっている(4月に名古屋で開催されたYON FES)からこその、このフェスが顔の見える人によって作られている信頼できるものであると讃えると、再会の歌こと「Terminal」、そして
「みんなに光が射しますように!VIVA LA ROCKの未来に光が射しますように!日本の音楽シーンの未来に光が射しますように!」
と言って「swim」では最後にGENの声がより一層伸びて終了…と思いきや、
「まだ時間あるみたいだからもう1曲!」
と言ってショートチューン「Remember」を追加し、「midnight cruising」も「chicken race」もないというセトリでメインステージのトップバッターを務め上げた。
しかし本人たちは「ようやくメインステージに出れて~」と言っていたが、もはやバンドの纏うオーラは紛れもなくこうしたアリーナでワンマンをやっているバンドのそれである。それはやはりYON FESという、このフェスと規模がほとんど変わらないようなフェスをこのバンドが運営しているというのが大きい。この世代、今のバンドシーンを引っ張る存在として、このキャパでワンマンで見れる日もすぐ来そうな気もする。本人はかつてthe telephonesをここで見たり、3月にもWANIMAを見に来たらしいが。
1.Horizon
2.monolith
3.fiction
4.cubic
5.Warp
6.climb
7.Drops
8.Terminal
9.swim
10.Remember
swim
https://youtu.be/447cO8LTq9A
11:45~ アルカラ [VIVA! STAGE]
意外にも初出演である。ライブハウスシーンの良心と言ってもいいバンド、アルカラ。
「キャッチーを科学する」で冒頭から盛り上がりは最高潮に達すると、
「最高なこのVIVA LA ROCK!何かが足りない!アブノーマルが足りない!」
と「アブノーマルが足りない」さらに「チクショー」とキラーチューンを連発し、田原は長い髪を振り乱しながらギターを弾き、下上はベースを振り回しながら高音コーラスも務める。
しかしながら凄まじいテンションとそれぞれのサウンドの一体っぷりである。ライブやってない期間がないくらいにライブハウスに棲息しているバンドだけはあるというか、良くなかったライブがないくらいにライブの平均点が異様に高い。この日も序盤からすごいライブであることがすぐわかる。
するとピックを投げても全然客席まで届かないくらいに投げるのが下手なボーカルの稲村がスマホを取り出して観客の写真を撮るのかと思いきや、
「このフェスの主催者の鹿野さんがVIVA LA TVっていうやつで各バンドの紹介コメントをしてくれてるんやけど、再生回数千回くらいやから誰も見てへんやろ?(笑)
だから今、このスピーカーを通して、その3分間のコメントを流します(笑)」
と言って本当に鹿野淳のアルカラの紹介コメントを流すという、前代未聞な時間の使い方をしたのだが、さすがに非常に上手くこのバンドのことをまとめており、いつも稲村に会うと酔っ払っているため、95%は適当なことしか言わないが、残りの5%は真理みたいなことを言う、などメンバーの人間性にも触れてくれた紹介が稲村はすごく嬉しかったんじゃないかと思う。
アルカラはいろんなバンドから多大なリスペクトを寄せられており、鹿野もフレデリックやパノラマパナマタウンなどの神戸のバンドはアルカラがいなかったら出てこなかったかもしれない、とすら言っていた。バンドが地元の神戸でサーキットフェスをやっていることから、バンド自体がメディア的な役割を果たしてもいるが、アルカラ自身のインタビューや作品についてはあまりメディアで見ることがないだけに嬉しさもひとしおだったんじゃないかと。
そして15周年記念日である7月26日には15年目で初めての(!)フルアルバムのリリースも決定。ネットではなくて現場で発表したいというのもライブという現場で生きてきたこのバンドだからこそだし、
「CD屋に、現場に足を運んで買ってくれ。俺は発売日にはいろんな店に行って弾き語りするから」
というのも、自分たちがいろんな音楽に触れるきっかけになったCDショップへの恩返し的な意味もあると思う。このフェスについても触れていたが、自分は行ったことはないが、バンドが主催するネコフェスもメンバーの体温が感じられる、現場に行くからこそわかることがたくさんあるフェスなのだろう。
そしてその告知したアルバムに入る、情報量多め、キメ多め、ロックンロールでありパンクでありハードロックであり…というアルカラでしかないような新曲を披露すると、ラストは「ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト」でバンドの15周年のさらにその先へ新たな期待を抱かせた。
自身のフェスはもちろん、MURO FESなど、このバンドには背負っているものがたくさんある。15年目にしての初出演で立ったこのステージもこれからそうなっていくのだろうか。
1.キャッチーを科学する
2.アブノーマルが足りない
3.チクショー
4.新曲
5.水曜日のマネキンは笑う
6.ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト
アブノーマルが足りない
https://youtu.be/dFeb2LLMp4A
12:20~ SHISHAMO [STAR STAGE]
初出演は初年度のCAVE STAGE。それから2年連続のVIVA! STAGE出演を経て、4年目でついにSTAR STAGE出演を果たした、SHISHAMO。
メインステージになってもいつもと全く変わらない3人が登場すると、
「ビバラ行けるか!」
と宮崎がいきなり煽りまくり、最新アルバム「SHISHAMO4」収録の「好き好き!」からスタート。「量産型彼氏」ではステージ上の巨大ビジョンに、明らに事前に作られたであろう編集された映像とバンドの演奏の映像がコラボし、このバンドがどれだけこのフェスに愛されているかがよくわかる。
客席からは手拍子が鳴り響く「僕に彼女ができたんだ」からアジカンの影響受けまくりなのがギターのイントロからわかる「きっとあの漫画のせい」と新旧の曲を並べつつ、宮崎は「男子!」「女子!」「大人!」「専門学生!」などかなり細かく分けたコール&レスポンスを展開し、「カップルで来た人!」で上がった手に対しては舌打ちし、「1人で来た人!?」は
「よく手を挙げれるな(笑)」
と容赦なく言い放つ。すると吉川と松岡は
「前日の前夜祭のゆるキャラショーでゆるキャラの中身を演じた」
という衝撃のカミングアウトをし、吉川は
「人生であんなに可愛いって言われたことがない」
と自虐。
バンドの代表曲「君と夏フェス」ならアニメーションの映像とともに客席のタオルが回りまくる「タオル」、そしてラストは「SHISHAMO4」の最後の曲である「明日も」の華やかなサウンドで短い時間の中でバンドの幅を示した。
自分が初めてこのバンドのライブを見たのは、初年度の開催前のプレイベントにて。その時にまだ高校生だったメンバーは大人のラブソングや大人の視点の歌詞になっている曲を作ったりするようになるなどすっかり年齢的には大人だが、少女そのものな見た目は全然変わらない。だが、見た目に反してバンドのスキルは見違えるほど上達しており、危なっかしかった当時から、各メンバーがソロを担えるくらいにまでになった。そしてそれはこのアリーナ規模でライブをやるためには必ず必要なものであり、ちゃんとこのバンドは立つべくしてこのアリーナのステージに立っている。
1.好き好き!
2.量産型彼氏
3.僕に彼女ができたんだ
4.きっとあの漫画のせい
5.君と夏フェス
6.タオル
7.明日も
明日も
https://youtu.be/zhCtzmDWsN0
このあとすぐさまVIVA! STAGEへ移動してgo!go!vanillasを見ようとしていたのだが、SHISHAMOを終わりまで見ていたら、なぜかアリーナ後方の出口が封鎖されており、アリーナから一度スタンド席を登って200LVまで行き、それから100LVまで降りてステージへ行くという経路を取らされたため、当然スタンドで見てた人とアリーナで見てた人が合流して一気に200LVから100LVへの階段に詰めかけたため、混雑し過ぎて全く進まず、半分くらい見れなかった。鹿野淳は前説で「混雑緩和を目指す」と言っていたが、わざわざ出口を封鎖して出口を減らすというのは混雑緩和に有効な手段だとは全く思えない。アリーナ後方の出口が開いていればすぐ他のステージに移動できるのに。
それで半分くらいしか見れなかったgo!go!vanillas、初年度にCAVE STAGEに出た際はそのキャパですらガラガラだったのに、今やVIVA! STAGEが満員になるくらいになっていた。もはやワンマンではZepp Tokyoすらも埋めているバンドだが、その当時やKANA-BOONやSHISHAMOとともにスペシャ列伝ツアーを廻っていた時は、ここまで来るとは全く想像できなかった。しかし近年のアルバムもシングルもキラーチューン連発、THE BAWDIESとのスプリットツアーを経てさらに熱さを増したライブを見ていると、その勢いはこれからまだまだ増して行きそうな気がする。そんなライブを全部見れなかったのが本当に残念。
13:35~ THE ORAL CIGARETTES [STAR STAGE]
今年リリースした最新アルバム「UNOFFICIAL」が大ヒットし、堂々このメインステージへ進出となった、THE ORAL CIGARETTES。その勢いを示すように、アリーナもスタンドもすでに超満員。
その「UNOFFICIAL」からの「リコリス」、コーラス部分は大合唱の「Shala la」と、冒頭から完全に新作モードだが、アルバムが大ヒットしたこともあり、歓迎っぷりがすごい。
山中がハンドマイクで歌う「CATCH ME」ではその山中特有の艶のある声がさらに生き、鈴木とあきらかにあきらの2人もド派手なアクションを交えながら演奏するという、山中だけを見ていられない華を備えている。
「STAR STAGEですが、我々はスターではありません。ですが、スターになりたいとは思っております!」
と山中が語り始めると、新曲がCDリリース前に物販で買えることを告知し、
「先に売ったら、みんながそれを周りのみんなに渡してCD出した時に売れなくなるかもしれん。それも考えたけど、俺たちはお前らのこと信用してるから!そうやって先に出すのは、出来た曲そのままをすぐ聴いて欲しいから。そうやって我々は変革を起こしていきたい!」
と語る。変革を起こすという意志は尊重するが、今やミュージシャンが配信サイトを自分で作る時代ですらあるだけに、変革の内容がこれではちょっとインパクトは薄い。もちろんメジャーに所属するがゆえにできることは限られているだろうが、こうしたことは他にやっているバンドもたくさんいる。きっとオーラルはシーンを引っ張るバンドになりたいと思っているはずだが、現状ではこうしたアイデア面ではすでにフェスを主催しているフォーリミがその部分の一番手と言ってもいい状態だ。
じゃあオーラルはどうすればいいのかというと、まずはひたすらに良い曲を作るという正攻法でシーンの頂点を目指すべきだと思うのだが、新曲「ONE’S AGAIN」は完全にアリーナどころかスタジアムで鳴ってもおかしくないようなスケールのアンセム。イントロの観客の大コーラスもそのスケールを作り出す要素になっている。
終盤は山中が華麗なステップを踏みながらハンドマイクで歌う「カンタンナコト」からもはや「キラーチューン祭り」と宣言する必要のないくらいのキラーチューンを連発し、
「新しい夢ができました。いつかここでワンマンやってみたいです!」
と宣言。初めて見るアリーナの景色が山中にそう言わせたのだと思うが、今のバンドの状況を考えると、今すぐやってもこのキャパが埋められる気すらする。そしてリリースを重ねるたびに急激に支持を増やしてきたバンドなだけに、次のアルバムが出る時には、このさいたまスーパーアリーナよりさらに上の景色すらも射程に入っていそうな恐ろしさすらある。
1.リコリス
2.Shala La
3.CATCH ME
4.ONE'S AGAIN
5.カンタンナコト
6.狂乱Hey Kids!!
7.5150
ONE'S AGAIN
https://youtu.be/T6z8MiYSqjk
14:15~ SUPER BEAVER [VIVA! STAGE]
先日は日比谷野音でのワンマンを行なったSUPER BEAVER、2年ぶりの出演は前回よりも大きなVIVA! STAGE。
SEもなしにメンバーが登場すると、最後に出てきたボーカル・渋谷が
「1年のブランクを置いて、VIVA! STAGE、SUPER BEAVERです、よろしくどうぞ」
と挨拶し、
「ロックスターは死んだ でも僕は生きてる」
と、数多くのロックスターたちが亡くなった27歳に自分自身がなったことを歌う「27」でスタートする(メンバーの出で立ちからはもっと上に見える)のだが、渋谷のボーカルにバンドのブレーンである柳沢、上杉と藤原のリズム隊もコーラスを重ねるのだが、見るたびにその渋谷以外のメンバーの声に力強さが増している。それはこうしてコーラスをする曲、パートが増えてきているからだろう。
とびきりポップな「秘密」、代表曲である「歓びの明日に」と、ラウドバンドやパンクバンドともよく対バンしているだけに、そうしたバンドと渡り合える力強いサウンドを持ちながらも、やはりど真ん中にあるのは渋谷の歌。だから満員の観客も盛り上がったり踊ったりするよりはじっと聴き入るという場面の方が多い。
その渋谷はもはや落語家かというくらいに次々と言葉を発しながら客席に突入するも、最前の観客が倒れてしまい、起き上がるまでずっと待ち、何度も「ごめんな」と声をかけていた。その姿はバンドの姿勢や渋谷の言葉のイメージと全く同じものである。
「我々の音楽は日常のつらいことを忘れさせるようなものではないかもしれないが、今日信頼できるライターがいる会社が作っているこのフェスにこれだけたくさんの人がいてくれる。みんなで声を出して、手を叩いたりするだけで、何か変わるものがあるんじゃないかと俺は思うわけです」
と語りかけると、観客の手拍子から曲が始まることにより、観ている側もバンドの発する音の一部になれたかのような気持ちになる「美しい日」、観客全員が両手を高くあげて合唱する三拍子の「青い春」と、近年のバンドの代表曲と言ってもいい曲たちが、たくさんの人の力をもらってより輝きを増す。
そして
「去年はなぜか呼ばれませんでした(笑)」
と自虐しながらも、
「これが我々の決意表明そのもののような曲だと思っております」
と言って最後に演奏されたのは、
「信じ続けるしかないじゃないか
愛し続けるしかないじゃないか」
「カッコ悪い人にはなりたくないじゃないか
人として 人として かっこよく生きていたいじゃないか」
というフレーズが、メジャーデビュー後にバンド崩壊の危機を迎え、それでも諦めることなく、メンバー同士と目の前にいる人を信じ続けてきたこのバンドの意志そのもののような「人として」。アッパーな曲でも盛り上がる曲でもないので、フェス向きな曲ではないかもしれない。しかし、この曲を最後にやる意味がしっかりある。
それと同様に、SUPER BEAVERのライブには一音一音、一言一言に「音楽をやる」「このバンドである」「このステージに立つ」という意志がある。だからこそ渋谷の言葉にもその確固たる意志が見えるし、本当に音を聴くだけで涙が出そうになる。この全てが意志の塊で作られているようなバンドの作る音楽は、これからもっとたくさんの人の人生を救い、心に突き刺さるはず。特別なことは何もしていない、特別なバンド。
1.27
2.秘密
3.歓びの明日に
4.美しい日
5.青い春
6.人として
美しい日
https://youtu.be/RF8mlN45vOQ
14:55~ KEYTALK [STAR STAGE]
THE ORAL CIGARETTES同様に、今年リリースのアルバム「PARADISE」が大ヒットを記録している、KEYTALK。すでに去年の段階で様々なフェスのメインステージを任されるようになったが、このフェスでも当たり前のようにメインステージに登場。
おなじみのオリジナルSEに乗ってメンバーがステージに登場すると、義勝がいきなり歌い始める、春フェスというこの時期にピッタリの「桜花爛漫」からスタートし、巨匠もその伸びのある声で義勝との対比を見せると、武正のギターがきらめく流星のように走り抜ける「ASTRO」で一気にテンポアップし、バンドの代名詞的な曲である「MONSTER DANCE」を早くも演奏。1万人以上の人がいっせいにMVのダンスを踊りだすのは実に壮観である。
「PARADISE」からはツインボーカルバンドならではのスイッチングを見せる疾走感溢れる「STAY」を披露し、「YURAMEKI SUMMER」で一足早く夏モードに転ずると、武正が自身と義勝は埼玉県民であるためにこのステージに立てるのが本当に嬉しいと語り、八木は「都民だけど、最寄駅が埼玉の新座駅」という埼玉ラバーっぷりをアピール。ちなみにすでにアナウンスされている新曲のリリースについても語ったが、この日は演奏されず。
MCでは熊本出身のためにやや蚊帳の外状態だった巨匠は、「PARADISE」からの「Summer Venus」の間奏でEDM調に大胆に変調すると、「結果にコミットする」とレンズにかかれた、自身もチャレンジしたライザップのサングラスをいきなり着用。これはビール一気飲みに変わる新たなパフォーマンスになるのだろうか。
今回のセトリの中では最も古い曲である「sympathy」が、前の曲の展開の多さのおかげでより一層ストレートに聴こえると、ポップなラブソング「Love me」から、ラストはリリース以降やらなかったライブはないというくらいに現在のバンド最大のキラーチューンに成長した「MATSURI BAYASHI」で義勝がスラップベースを決め、一大ダンスフロアを生み出して終了した。
こうして演奏した曲について書いていくと、その振れ幅と引き出しの多さには改めて驚かされる。4つ打ちロックバンド的なイメージの象徴として語られることも多いバンドだが、ストレートなロックンロールやポップなラブソング、EDMまで取り入れた曲など、フェスでやるような曲ですらここまで多岐にわたる。
それに加え、「PARADISE」では武正と八木も曲を作っており、さらに振れ幅が広くなっている。もちろんダンスアンセム的な曲が強いのは間違いないが、もはやこのバンドはそうした曲だけのバンドではないし、そうした様々なタイプの曲をできる地力の強さがある。今回のツアーで横浜アリーナワンマンを行えるくらいの存在になったのも当然といっていいだけに、アリーナもスタンドも超満員だったのも納得せざるを得ない。
1.桜花爛漫
2.ASTRO
3.MONSTER DANCE
4.STAY
5.YURAMEKI SUMMER
6.Summer Venus
7.sympathy
8.Love me
9.MATSURI BAYASHI
Summer Venus
https://youtu.be/SkGhyHGH3-g
15:40~ フレデリック [VIVA! STAGE]
去年に続いてVIVA! STAGEに登場し、去年に続いて満員御礼のフレデリック。
「オンリーワンダー」で冒頭から踊らせまくるも、ただ踊るだけではなく、MVのやや複雑なダンスを完壁にマスターしている人がたくさんいるのは、ここまでこのバンドの存在とこの曲が浸透しているのかと驚く。
「VIVA LA ROCKのオンリーワンを取りに来ました、フレデリックです」
と健司が宣言し、まだこのタイミングで聴くのが早い気しかしない「KITAKU BEATS」「ナイトステップ」という、昨年リリースのフルアルバム「フレデリズム」収録曲を畳み掛けると、
「去年を超えるために新曲を持ってきました!」
と言って披露されたのは、赤頭のギターがまるでシンセのようなサウンドで踊らせまくる、タイトル通りにシュールな歌詞、というフレデリック印100%の新曲「かなしいうれしい」。ただ、この曲はどうやら昔からある曲であり、それを再構築したらしい。フレデリックにはすでに廃盤になっている昔のCDもあるが、そこに収録されていた曲たちもこうして現在のバンドの力量でアップデートされた形で聴ける日がくるかもしれない。
しかしながらやはり新曲よりも知っている曲の方が踊れるのは間違いなく、音楽への愛を高速ダンスビートに乗せた「リリリピート」で踊りまくると、「オワラセナイト」では満員の観客が交互に腕を上下させるMVのダンスを一斉にする様がシュール極まりない。
そして最後はみんなお待ちかねの「オドループ」でダンス天国となって終了…と思いきや、最後のサビ前にバンドがぴたりと演奏を止め、
「踊ってない夜が気に入らないと歌ってますが、このフェスでそう歌うのは、STAR STAGEの夜の時間、トリをやる時まで取っておこうと思います!なので、みなさん今日は最後に「踊ってないビバラ気に入らない」と歌っていただいてもよろしいでしょうか!」
と健司がさらなる目標を掲げ、ダンスだけでなく
「踊ってないビバラ気に入らない」
の大合唱まで起きるラストとなった。
ただ1番有名な曲を最後にやるというのではなく、最後にやる理由をしっかり作った上で最後にやる。このバンドはイメージ以上にはるかに逞しく、力強くこのシーンを駆け上がろうとしている。トリはまだにしても、STAR STAGEに立つ姿は近い将来必ず見れるはず。
1.オンリーワンダー
2.KITAKU BEATS
3.ナイトステップ
4.かなしいうれしい (新曲)
5.リリリピート
6.オワラセナイト
7.オドループ
オドループ
https://youtu.be/PCp2iXA1uLE
16:35~ yonige [CAVE STAGE]
以前、このバンドのワンマンを渋谷のO-Crestで見た時、自分は「革命前夜感に溢れている」と書いたが、このフェス初出演にしてyonigeはCAVE STAGEを入場規制にするほどの人を集めてみせた。ものすごく演者が見づらいステージにもかかわらず。
おなじみのThe SALOVERS「ビオトープ -生物生育空間-」のSEで牛丸とごっきんの2人に加えてサポートドラムのkomaki(ex.tricot)が登場すると、
「大阪、寝屋川のyonigeです、よろしく」
とだけ言って「センチメンタルシスター」からスタート。
リリースしたばかりの「Neyagawa City Pop」がオリコンデイリーチャートでTOP10に入ってブレイクを確定づけたが、その新作からリードトラックの「さよならプリズナー」と「our time city」を披露。どちらも聴き心地はこれまでの曲の中で最も良い、語弊を恐れずに言えばポップな曲。そしてこの曲たちはこれまでのような生々しい恋愛ソングではなく、今この時代を生きる若者である2人が主人公の曲。つまりこれまで以上に受け入れられるべくして受け入れられた曲といえる。
「いやー、クリープハイプとyonigeを丸かぶりさせたVIVA LA ROCK最高ー!(笑)」
と、およそ最高とは思っていないだろう感じで牛丸が叫ぶ(クリープハイプの尾崎世界観も同じようなことを言っていたらしい)と、「さよならアイデンティティー」でポップな空気から一気にエモーショナルに振り切る。しかし「さよならアイデンティティー」「さよならバイバイ」「さよならプリズナー」と、本当に別れを経験しまくっているバンドである。
人気音楽番組・関ジャムにて、チャットモンチーや9mm Parabellum Bulletのプロデューサーを務めた、いしわたり淳治氏が歌詞を絶賛して地上波で流れた「アボカド」もkomakiのドラムでより安定感が増し、曲間全くなしにつながる「バイマイサイ」と、徐々に「メンヘラロック」と形容されることもあるようにダークな心象風景を描いた曲が中心になっていくと、そのトドメとばかりにラストに演奏されたのは、
「いっそこのまま死んでしまおうかな
そんな勇気もないのに呟く」
と歌ってから「死に損ない」と連呼される「恋と退屈」で負のエモーションを爆発させ、ビバラ初陣を飾った。
スペシャ列伝ツアーやアジカントリビュートへの参加もあり、元来の曲と歌詞のクオリティから考えるとブレイクするとは思っていたが、まさかこんなに早いタイミングでこうまでなるとは思っていなかった。この紛れもなく敗者側の歌である「恋と退屈」や「アボカド」がさらに大きなステージで鳴らされる瞬間は本当に爽快な気分になると思うだけに、是非ともそこを狙っていって欲しいし、すでにそこに手をかけている状態まで来ている気がする。
1.センチメンタルシスター
2.さよならプリズナー
3.our time city
4.さよならアイデンティティー
5.アボカド
6.バイマイサイ
7.最近のこと
8.恋と退屈
さよならプリズナー
https://youtu.be/ZPjzVpS_R30
17:50~ SiM [STAR STAGE]
このフェスでは皆勤賞のSiM。朝イチなどもあったが、横浜アリーナワンマンなども経た今年はトリ前というスロットでの登場である。
炎の特効が立ち上る中、メンバーが登場すると、
「ここまでの楽しいこと、全部忘れろー!SiMのワンマンへようこそー!」
とMAHが叫び、大喝采に包まれる中、いきなりの「KiLLiNG ME」スタートで客席は早くもモッシュ、ダイブ、左回りのサークルなどが発生して、一気に景色が塗り替わる。
「宇宙人を信じますかー!?」
と問いかけておきながら
「俺はどうでもいい!」
と突き放す「Boring People,Fucking Grays」、激しい全力ダッシュの左回りのサークルが発生しまくる「Faster Than The Clock」、SHOW-HATEがシンセで奏でる電子音の中でモンキーダンスさせる「GUNSHOTS」とライブでおなじみの曲たちを畳み掛けると、
「もうこっちからそっちの姿は全然見えない!でも声から聴こえるだろう!」
と言ってマイクを通さずに叫んでアリーナ最上段までMAHが声を届けると、観客にも声を求めた「CROWS」でさらに熱狂させつつ、「Life is Beautiful」では一転してじっくり聴かせる。ラウドバンドだからといってひたすらラウドな曲ばかりやるのではなく、この辺りの押し引きのバランスがこのバンドは非常に上手い。
SHOW-HATEもSINも楽器をぶん回したりというド派手なパフォーマンスを展開すると、この手のバンドでは珍しいくらいにレーザー光線もド派手に飛びまくる。この辺りはさすがにアリーナですでにワンマンをやっているバンド。
観客からの声に応えて、MAHが結婚したことにも触れると、目を覚ませとばかりに「Get Up,Get Up」、そして大合唱を巻き起こした「Blah Blah Blah」とこの日はライブアンセム続き。ラストは「f.a.i.t.h」で今年も巨大ウォールオブデスを発生させると、
「モッシュとかダイブがいろいろ言われている時代です!思いやりをもって当たってください!」
と最初はキュウソネコカミのようなことを言ったMAHだが、すぐさま
「嘘です!殺す気で行けー!」
と撤回して、このバンドでしか見れない景色を作り出した。
音の強度、メンバーのオーラ、ライブパフォーマンス、曲のスケールとどれを取っても見た目通りにバケモノのようなバンド。だからこそ今やすっかりメインストリームになったラウドロックの大ボス的な存在になったのも納得できるが、結婚して守るべきものができたのか、MAHはカリスマ性だけでなく、どこか包容力のようなものを感じさせるようになった。だからこそ、
「音楽を力にして、強く!強く生きてくれ!」
という願いがこの上なく説得力を持って響いた。
そしてロッキンオンのフェスなどには出ないので、なかなか首都圏のフェスで見れる機会は限られているバンドだが、こうして毎年このステージで見ることができるという点ではこのフェスに感謝しなくてはならない。
1.KiLLiNG ME
2.Boring People,Fucking Grays
3.Faster Than The Clock
4.GUNSHOTS
5.Amy
6.CROWS
7.Life is Beautiful
8.MAKE ME DEAD!
9.Get Up,Get Up
10.Blah Blah Blah
11.f.a.i.t.h
KiLLiNG ME
https://youtu.be/vyUMYYc8lxU
18:45~ BRADIO [CAVE STAGE]
初日のCAVE STAGEのトリは、前日に前夜祭にも出演したため、2日連続でこのフェスでライブをすることになったBRADIO。
賑々しいSEでメンバーが登場すると、さすがにすでに中野サンプラザをワンマンで埋めているバンド、すでに超満員(BLUE ENCOUNTの裏だというのに)で、しかもメンバーを迎える歓声が期待感に満ち溢れている。これからどんだけ楽しませてくれるんだろうか、というような。
アフロヘアが存在感ありまくる真行寺がステージに登場すると、セッション的な演奏で期待を煽りながら、早くも観客が歌える「Revolution」からスタート。ものすごく削ぎ落とされたアレンジのソウルナンバーだが、そうしたアレンジだからこそ観客の声が入る余地がある。
華やかなシンセサウンドの「スパイシーマドンナ」ではお決まりの振り付けをすでに会場にいるほとんどの人がマスターしているという浸透っぷりに驚きを隠しきれない。
「VIVA LA ROCKの大本命、BRADIOだー!」
という真行寺の挨拶から、リズム隊がファンキーなグルーヴを刻み始めると、真行寺がそのグルーヴに合わせた振り付けを伝授。基本的にこうした振り付けやコール&レスポンスが随所に挟まれるため、持ち時間は長くても曲数は少なくなりがち。しかしながらそうした時間がより一層の一体感を生み出している。
その振り付けを使うのは、最新アルバム「FREEDOM」のオープニングナンバー「Back To The Funk」。ワンマンなどでは黒人女性コーラスを迎える時もあるが、この日は真行寺がフルにファルセットボイスで、振り付けを自ら実践しながら歌い切る。素晴らしい歌唱力であり、見た目通りのソウルフルかつファンキーさ。
ここでバラードと言ってもいい「Overnight Superster」でさらに真行寺の歌声に聴き入ると、「FREEDOM」のタイトルナンバーである「Freedom」で踊らせまくると、4つ打ちをファンクと融合させた「Flayers」で観客は忙しなく腕を左右に挙げ続ける。
「パーティーはどこへ行った?
最初からずっとここにあったんだ」 (「Freedom」)
と歌われているように、完全にライブというよりもパーティーのごとき楽しさ。
真行寺が音楽の素晴らしさをみんなで分かち合いたいと真摯に説くと、ラストに演奏されたのはまたしてもバラード曲、しかも内容的には冬のバラードである「Colors」。
若手バンドの中には、フェスでバラードをやるのは盛り上がらないから怖いというバンドもいるらしい。しかしながらBRADIOは一切恐れることなく、7曲のうちに2曲もバラードを入れてくる。これは自身の曲と、見に来てくれる人たちへの絶大な信頼がないと絶対できない。しかしフェスでこういう曲をやるからこそ、ただ単に踊って楽しいバンド、というだけのイメージにはならない。そこをわかっているだけに、このバンドは演奏力と表現力と構成力が実に高いバンドであることを実感させてくれる。
アルバム「FREEDOM」はもはや日本のファンクの新たな金字塔と言ってもいいくらいの名盤である。だからこそもはやこのステージのキャパでは曲のスケールの大きさに全くついていけていない。真行寺は
「来年は向こうのデカいステージで待ってるからな!」
と言っていたが、それは確実に現実になる。
そしてファーストアルバムリリース時には「自分が聴くにはちょっと濃すぎる」としてスルーしていた自分自身を土下座させたいくらいに、このバンドに対する自分の評価は「FREEDOM」リリース以降急上昇している。ここまで本格的にファンクやソウルを軸にしながら、メインストリームに切り込んでいけそうなバンドはそうそういない。
1.Revolution
2.スパイシーマドンナ
3.Back To The Funk
4.Overnight Superster
5.Freedom
6.Flayers
7.Colors
Freedom
https://youtu.be/n0AkKVDmdtM
19:30~ KANA-BOON [STAR STAGE]
この日のトリはKANA-BOON。初年度の5月3日にもVIVA! STAGEのトリを務めているが、今年の5月3日にはついにSTAR STAGEのトリを務める。それはこの5月3日がボーカル・谷口鮪の誕生日であるということもあるだろう。
メンバーが登場すると、いきなりの「ないものねだり」で踊らせまくり、さらに「ワールド」鮪の言葉数の多い歌詞がリズミカルに放たれていく「盛者必衰の理、お断り」と初期曲が続く。
自身の誕生日であることをアピールしつつ、
「めしださん、元気ですか?」
と色々な報道があったベースのめしだをチラッといじりながら、最新シングル「Fighter」へ。これまでのKANA-BOONとはかなり毛色の違う、タイアップ先のアニメに寄せた、シリアスな歌詞とムードの曲だが、そのタイアップのタイトルやテーマをさりげなく歌詞に入れつつも、タイアップを全く知らなくても聴けるというこの絶妙なバランスはこれまでのタイアップ同様に鮪の作家性の高さを感じさせる。アニメのファンの一部からはやはり「声が合わない」という意見もあったようだが。
めしだ「5月3日ってゴミの日やな(笑)」
といじられながら、
「5月3日生まれの運勢を調べたら、60代になったら運気が急上昇するって書いてあって(笑)
遅いわ!と(笑) そこまでやってるかわからへんし(笑)」
と自らも自虐する鮪が、歌詞が飛んで「イェーイ!」と勢いでごまかした「フルドライブ」では、歌詞を飛ばした直後に恥ずかしくて後ろを向いてしまった鮪を、「あれ?歌詞飛ばしたよな?」とばかりに覗き込む古賀とめしだという構造が実に微笑ましいし、メンバーの変わらぬ関係を垣間見せてくれる。
「MUSiC」、さらには「さくらのうた」と徹底した初期曲の連発っぷりには驚いてしまうと同時に久しぶりに聴けるという嬉しさもあるが、その初期の名曲たちの後に演奏されたのは、現在アニメのタイアップとしてオンエアされている新曲「バトンロード」。「NARUTO」シリーズのタイアップということですでにバンドとの相性の良さは実証済みだが、やはり血生臭いアニメよりも、こうした「勝利・友情・努力」という少年ジャンプの世界観の方がこのバンドにはあっていると感じる。それはバンドが活動している中でそのテーマを体現しているというのもあると思うが。
そしてあっという間のラストはかつて「NARUTO」の主題歌だった「シルエット」。初期曲の名曲っぷりに光が当たるようなセトリだったが、割と近年の曲であるこの曲ももはやバンドの代表曲と言っていいくらいで、やはりこのバンドの持つメロディの良さは曲の構造が変わっても変わることはないと思わせてくれる。
観客がスマホのライトを点灯させてアンコールを待つ中でメンバーが登場すると、鮪がおもむろに口を開き、
「いろいろお騒がせもしましたけど、俺たちは音楽がとにかく大好きで、ずっとそれだけをやってきたし、これからもこのメンバーでずっと大好きな音楽をやっていきたい。さっき60代までやってるかわからへんって言ったけど、できればそのくらいまで。
このメンバーはずっと友達やし、もう家族みたいなもんやから。だからずっと一緒に、また1からやっていきます」
と、清水富美加とめしだとの報道の後に休んだりすることなく音楽を鳴らすことを選んだ姿勢について語る。
いつまで経っても予備校生のようなルックスも相まって、KANA-BOONはとかくナメられやすいというか、甘く見られがちなバンドである。その上で今回のニュースがあった。もしかしたら野次を飛ばされたりするかもしれないような状況でも、彼らはステージに立ち、そのニュースのことにも触れるMCをした。我々が思っている以上に、もう音楽でしか、このバンドでしか生きていくことができない男たちであるということがこの短いメッセージから伝わってきた。本当に芯がある、というか見た目以上にはるかに男らしいロックバンドだ。
そして
「ちょっとゆったりした曲をやってもいいですか?」
と言って最後に演奏されたのは、まさかの「眠れぬ森の君のため」。バンドの楽曲人気投票で1位になったのは知っていたが、まさかワンマンではないフェスの場でこの曲を聴けるとは。
この曲が演奏されたことで、鮪の「また1からやっていく」という発言の真意も、この日のセトリが初期曲ばかりだったのもすべて納得がいった。この曲は本当にデビューする前、まだバンドがゼロ地点にいた頃を描いた曲だから。
「あの夜僕はフェスに出たいと話した」
そう歌い始めた鮪は、今こんなに大きなフェスに出て、トリを務めるくらいの存在になった。夢を叶えたというのは短絡的だが、それくらい感動的なシーンであったし(ビジョンに映った最前列の女子はみんな泣いていた)、この歌詞は本当にフェスが音楽を始めた時から身近にあったこの世代以降じゃないと書けない歌詞であり、それを最初に、こんなに美しいメロディの名曲にしたのがKANA-BOONであった。
演奏が終わると、メンバーの元に誕生日ケーキを持った鹿野淳が登場し、鮪の27歳の誕生日を盛大に祝った。
タイムテーブルが発表されて、KANA-BOONがトリとわかった時、不安だった。あのニュースがあったから、見ないで帰る人がいっぱいいるんじゃないかと。(実際にツイッターとかでは「もうファンをやめる」と言っていた女子もいた)
でも蓋を開けたらアリーナもスタンドも超満員だった。あのニュースを忘れるくらい、もっと良い曲、すごいライブを。この景色を見たら、それを叶えてくれそうな予感がしている。
1.ないものねだり
2.ワールド
3.盛者必衰の理、お断り
4.Fighter
5.フルドライブ
6.MUSiC
7.さくらのうた
8.バトンロード (新曲)
9.シルエット
encore
10.眠れぬ森の君のため
Fighter
https://youtu.be/X9-ouDEL_-U
基本的に自分はこのフェスの主催者の鹿野淳を非常に信頼している。それはまだ鹿野淳がロッキンオンにいた時代から、彼がレコメンドする音楽、インタビューしてきたバンドたちの音を聴き、それが自分の人生の中で大事なバンドになってきたからだし、このフェスやその前に鹿野淳が作ったROCKS TOKYOでも楽しい思いをさせてもらったからである。
だが、今回は苦言を呈したいのは、go!go!vanillasを見れなかった要因である、導線問題である。鹿野淳はSTAR STAGEの前説で、「混雑緩和を目指して」と言っていた。しかし結果的にはその混雑緩和を目指した施策のせいで自分はバニラズを見れなかった。混雑緩和を目指すのに、なぜわざわざ通路を封鎖するのか。あのアリーナ後方の通路が通れれば確実にバニラズに間に合っていたし、アリーナ後方の観客たちはスムーズに他のステージに移動できたはず。
ましてや、自分もそうだがアリーナ後方で見ている人というのは往々にして、終わった後すぐに次のステージに移動したいので、抜けやすい後方で見ているものである。それなのにわざわざスタンドの通路を歩かされたら、ただ単に遠いところで立って見ていた、というだけである。
そこは非常に心の中がモヤモヤしてしまっていたが、このフェスは初年度から来ている大事なフェスであり、銀杏BOYZを2年連続で見せてくれたフェスでもある。なので、来年以降も行けるのなら行きたいし、行くからには音楽を目一杯楽しみたい。出ているバンド、鳴っている音は最高なのはわかっている。だからこそ、その最高な音楽が見えない、聴けないという事態は本当にキツい。
「この会場はフェスで使うための会場ではないんです」
とも鹿野淳は言っていたが、わざわざ完成形になっていた、新木場でのROCKS TOKYOを終わらせてまで、この会場にこだわって始めたフェス。ならばこの会場を可能な限りストレスなく楽しめるフェスの会場にして欲しい。
2日目、参加した人たちに話を聞いたら、初日より人が少なかったというのもあったが、導線は初日ほど悪くはなかったと言っていた。自分と同じことを言っていた人も多かっただけに、その声が届いていたんだろうか。
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