RADWIMPS Human Bloom Tour 2017 @さいたまスーパーアリーナ 4/30
- 2017/04/30
- 23:59
昨年リリースの最新アルバム「人間開花」を引っさげたRADWIMPSのツアー「Human Bloom Tour」も終盤。すでに全国の各地を巡り、この土日はさいたまスーパーアリーナでの2daysであり、この日は2日目。すでにバンドの始まりの地である先月の横浜アリーナでツアーを目撃しているが、ライブの内容が素晴らしかったこと、それからニューシングルのリリースが発表されていることも含め、実に楽しみなライブ。(横浜アリーナのレポート:http://rocknrollisnotdead.blog.fc2.com/blog-entry-387.html?spも参考にしつつ)
世間的にはすでにゴールデンウィークに突入している人もいるということで、さいたまスーパーアリーナの前のけやき広場では、連休中に開催されるVIVA LA ROCKの飲食スペースであるVIVA LA GARDENがオープンしており、多数の飲食店がすでに営業し、DJも行われていて賑わっている。
そんな賑わいを見せる屋外同様に会場内もアリーナスタンディングはもちろん、最上階の最上段まで超満員状態で、観客が今か今かと待ちわびる中、場内が暗転すると、もはや怒号のような歓声が響く中、ステージにかぶさるように下がったLEDに光の粒がはじけるような映像が流れ、その奥にはうっすらとメンバーのシルエットが…というオープニングなのだが、この日はかなり上方の真横と言っていいような席だったため、LEDに隠されることなくメンバーの姿が見える。洋次郎は真っ白のロングコートの上にグレーのコートを羽織り、横浜の時はわからなかったが、1曲目の「Lights go out」で洋次郎がピンボーカルからピアノに移動する姿すらもよく見える。そしてサビ前にはLEDだけならず、会場全体が光の粒子に包まれる。早くも大会場ならではの演出に震わされる。
RADWIMPSをたくさんの人に再発見させた映画「君の名は。」のオープニングテーマ的な位置だった「夢灯籠」ではひときわ大きな歓声が上がり、「光」では桑原と武田がそれぞれ左右の花道に駆け出していく。もうメンバーは30歳を超えたが、この姿を見ると、今でも自分がこのバンドと出会った10代の頃から全く変わっていないように見える。桑原の体型以外は。
しかし「光」はアルバムのリードトラックであると同時に「人間開花」の開かれたモードを象徴する曲でもあるが、「前前前世」と最後まで「君の名は。」のメインテーマソングとして悩んだ曲と語っているだけあり、聴けば聴くほど「この曲がテーマソングだったらどうなっていただろう?」と想像してしまう。
「今すぐ逃げろ さもないと消える」
というフレーズも、映画の中の重要なシーンに合わせて書いたんじゃないかとも思ってしまう。
洋次郎がハンドマイクで動き回りながら歌い、武田がシンセベースを操る、「人間開花」の中では最もドロドロした内面の吐露が歌詞とサウンドにそのまま現れている「AADAAKOODAA」ではステージ中央から伸びた花道の先端に洋次郎が立つと、そのまま床が上昇していく。
「みんな最初から調子良すぎじゃない!?ここに来る前にカラオケでも行ってきたの?(笑)」
と観客の熱さに驚きながらも、洋次郎の声は序盤から本当に伸びやかで、刃田と森のツインドラムも含め、ツアー終盤にありがちなこなれた感じやマンネリ感は一切なく、むしろ今まで以上にエネルギッシュ。
それがよくわかるのが、ツアーでは日替わり枠(横浜アリーナの2日目はここは「ハイパーペンチレイション」だった)である「05410-(ん)」。もはや10年前の曲であるということに驚きを禁じ得ないが、ツインドラムという新たな空気を吹き込まれたからか、過去最高レベルにエモーショナルな、今になって青春性を強く感じさせるようになっている。この曲でそれを象徴するのが桑原で、ステージ上を激しく動き回りながらギターを掻き鳴らすと、最後には中央の花道まで駆け出して行き、何度も高くジャンプをキメる。「アルトコロニーの定理」期の不振っぷりはもう完全に過去の話と言っていいくらいに、桑原は今ギタリストとして絶頂期にいる。
刃田がグロッケンを叩いたりと様々な楽器のサウンドがメロディを彩る「アイアンバイブル」では洋次郎がハンドマイクで歌いながらサビのコーラス部分で観客の合唱を煽り、最終的には下手側の通路の先に置かれたピアノを弾くというめまぐるしいパートチェンジが行われ、改めてRADWIMPSのマルチプレイヤーっぷりに唸らされると、同じタイプの曲と言える「人間開花」の「O&O」では洋次郎が座り込みながらハンドマイクで歌うという自由っぷり。
その洋次郎がギターを弾きながら歌う姿のみに最初はスポットライトが当たり、照明が雨のように降り注ぐ「アメノヒニキク」では最終的にはステージ全体のLEDから雨が降るという土砂降り状態に。キックの4つ打ちの音が「ザンザカザン」と降る雨の音をより際立たせている。
「ミサイルが降ってきても、弾き返そうぜ!」
と洋次郎が前日に北朝鮮が発射したと言われているミサイルについて触れると、
「ロックバンドなんてもんを やっていて良かった」
のフレーズを弾き語り的に歌ってから「トアルハルノヒ」へ。バンドのこれまでの歩みを綴った曲であるが、ミサイルが日本に落ちてきていたら、こうしてロックバンドを続けていられなかったと思うと、より一層歌詞に説得力が増してくる。
洋次郎がツインドラムの間に置かれたピアノに座ると、
「みんなもうゴールデンウィーク?」
「埼玉に住んでる人?関東に住んでる人?」
と観客に語りかけ、広い会場でありながらも観客と近い距離でのコミュニケーションを図り、
「時間の流れっていうのは残酷なもので、早く過ぎないかなと思う時ほど遅く感じるし、早く過ぎないでくれっていう時ほどあっという間に過ぎてしまう。
でも俺は時間が経って30歳を過ぎても、あんまり変わってないんじゃないかなって。今でも俺はすぐあんなこと言わなけりゃ良かったな、とか後悔してしまうんだけど、みんなもそうだと思う。そんな棒人間のみんなに」
と言って演奏されたのは、今やドラマ主題歌になった「棒人間」。実に洋次郎らしい歌詞の曲だが、ピアノがメインの割と軽快とも言えるサウンドにこうした歌詞が載るのが面白い。
桑原と武田による演奏のインタールード的な「Bring me the morning」から、洋次郎が下手のピアノに移動し、「君の名は。」のサントラの「三葉のテーマ」をピアノで弾き、そのまま「スパークル」へ。横浜アリーナの時もそうだったが、この曲を聴いていると、否が応でも「君の名は。」の名シーンが頭をよぎるし、最後のサビで会場いっぱいに広がる美しい星たちは、映画の中で三葉たちの住む糸守に降り注いだ流星群のよう。
そんな染み入るような雰囲気をリセットするかのように、
「今、トイレ行くチャンスだから(笑)」
と緩いMCタイムになるも、
「RADWIMPSから離れて行った人もたくさんいるだろうし、みんなもいつか離れて行く時が来るかもしれない。でも、俺たちは自分たちが作りたい音楽しか作れないし、今までも出したい曲しか出してこなかった。だからこれからどんな曲を作るかはわからないし、「洋次郎、この新曲なんなんだよ~」って思うこともあるかもしれないけど(笑)、もし気に入ったらまたこうやってライブに来て欲しい」
と最後には自分たちの確固たる活動スタイルを改めて提示し、桑原によるサポートドラマー紹介から、「DADA」から一気にアッパーなモードへ。洋次郎もハンドマイクで歌いながら、マイクを客席に向けてガンガン観客に歌わせまくり、武田もゴリゴリのベースを弾きながら動き回り、中央の花道にまで駆け出してくる。
このツアーでは定番になっている「セツナレンサ」から、「おしゃかしゃま」では恒例のセッションを展開。桑原と武田、刃田と森を交互に指差して演奏させ、音量を洋次郎がコントロールする部分では小さな音で演奏をキープする部分をいつにも増して長めにし、客席からはどよめきが起こる。このセッションはツアーを経るたびに進化しているし、毎回どこかしら違うという部分ではこのライブがこの日限りであるということを実感させてくれる。
武田が腕を上げて観客の「オイ!オイ!」という煽りを促す「ます。」では、洋次郎が
「あなたと1人と他全人類どちらか一つ救うとしたらどっちだろかな」
のフレーズを、右手の人差し指をピンと上に挙げた状態で歌い、直後の
「迷わずYOU!」
のフレーズではこの日も大合唱を起こし、武田の挨拶的なMCから
「埼玉、最後までもっと盛り上がっていけますか!?」
の問いかけにあまり勢いよく返ってこなかったことに洋次郎が拗ねてしまい、泣きのもう1回で大歓声を浴びると、「君と羊と青」とキラーチューンを続け、アウトロを観客の煽りに応じて何度も繰り返す。明らかに横浜の時より回数が増えており、最後には力尽きたとばかりに桑原が倒れこむも、それでもさらにもう1回演奏させるという洋次郎のドSっぷり。
そして
「みんな、知ってたら歌ってください!」
と言っての「前前前世」では当然のように大合唱が起こるが、この曲でRADWIMPSを知ってこのライブに来た人もたくさんいるだろうし、10年以上前から聴いていた人もたくさんいるだろう。しかし、そうした全てのRADWIMPSファンの中の、バンドの代表曲が今ではもう完全にこの曲である。かつては「有心論」だったり「ふたりごと」だったりと人によって違っていただろうが、この曲と「君の名は。」の大ヒットはそうした過去の代表曲たちを一瞬で通り越して言った。過去の曲たちも本当にバケモノみたいな名曲だったが、それらを追い越してしまったこの曲の力が本当にすごいというのがライブで聴くとよくわかる。
そして洋次郎がピアノに移動すると、
「さっきミサイルが来たら弾き返そうって言ったけど、警戒レベルが高くなってたら、昨日ライブが出来なくなってたかもしれなくて。みんな人それぞれが役割を持って一生懸命生きてるのにさ、全然関係ないやつのせいでその人たちがいなくなっちゃうって、そんな理不尽なことはないよ。俺はやっぱりそういう理不尽なことが許せないんだ。やられたら絶対やり返しちゃうだろうし。
それは子供の喧嘩と全く変わらない論理で戦争になってるんだけど、でも日本はこの70年、戦争をしてこなかった。これまでの歴史上では50年に1度は戦争をしてきたのに。これは本当にすごいことだし、俺はそれをこれからも守りたい。それはここにいる人たちからだけでも始めればなんか変わると思ってる。
ご飯食べに行こう、とかそういう小さな約束。そういう約束を少しずつ増やして、未来に繋げていこう。約束すれば、それを守ればまた会えるから。だから、生きてまた何処かで会うって約束しよう」
と語った。理不尽なことで人がいなくなってしまうことについては震災後も口にしていたし、実際にバンドは「糸色」というサイトを作ったりして、いち早く行動を始め、東北で大規模なワンマンをしたりもした。しかし、自然というどうしようもない現象だった震災とは違い、今回のミサイルには憎むべき対象が確かに存在している。その事実は洋次郎にこれまでと違う曲を書かせるきっかけになるかもしれない。
そして「人間開花」の最後に収録されている「告白」を洋次郎のピアノ弾き語りから徐々にメンバーが演奏に参加していくという形で披露し、5人はステージを去って行った。
おなじみの「もしも」の大合唱と、スマホのライトがアンコールを待つ新たなサインとなる中、洋次郎がアリーナ最後方から登場すると、アリーナCブロックのPAブースに作られたミニステージに上がり、ピアノの前に座ると、
「個人的にやりたいだけの曲をやっていい?」
と言い、ハナレグミに提供した「おあいこ」を弾き語ると、もう1曲何を歌うか思案している中、客席から「オーダーメイド」というリクエストを受けてやろうとするも、「トレモロ」を求める声が大きくなり、結局
「「オーダーメイド」が負けたみたいになったけど(笑)」
と言いながら、「トレモロ」を弾き語り。しかしこの曲はバンド編成で聴きたかったというのが正直なところでもあるが。
すると桑原と武田もミニステージに登場し、なぜかツアーでは恒例になった、メンバーの穿いてるパンツの色を報告するという緩いトークから、
「昔、アマチュアの頃にはよく、すぐ近くのさいたま新都心HEAVEN'S ROCKでライブをやってて。客は20人とかだったけど、それでも多い方で。1人しか客がいなかった時とかは終わった後にその1人を俺たち4人が囲んでCDを買って貰おうとしたりして(笑)」
と埼玉だからこその過去を回想し、「いいんですか」を演奏しながらミニステージを降りてメインステージに向かって歩き出すと、いつの間にかメインステージですでにスタンバイしていた頼れるサポートドラマーも演奏に加わり、手拍子と合唱が鳴り響くという一体感に包まれる。
メインステージに戻ると洋次郎がギターを手にし、「前前前世」とともに映画「君の名は。」でフィーチャーされた「なんでもないや」を観客に大合唱させながら歌う。バラードという合唱が成立しにくいタイプであるにもかかわらず大合唱になる辺りは本当に名曲だと思わざるを得ないし、本当に美しい曲。
そしてリリースが発表され、すでにCMでもオンエアされている新曲「サイハテアイニ」を披露。「前前前世」をさらにアップデートさせたと言ってもいい曲だが、ほとんどの人が初めてライブで聴くとは思えない盛り上がりっぷりとアクエリアスのCMソングらしい爽やかさ。この曲をこうして聴くと、RADWIMPSの今の状況というのは「君の名は。」により瞬間的な効果ではなく、これからもずっと続いていくのだ、と確信させられた。
これで終わりかと思いきや、
「もう1曲!もう1曲やらせて!みんなのゴールデンウィークが、これからの人生が素晴らしいものになりますように!」
と言って最後に演奏されたのは「会心の一撃」。本当にタイトル通りにこの曲が最後に演奏されたことによって、スカッと爽やかな気分でライブが終わることができた。その気分というのは、明日からもまた頑張れる、という希望を抱かせるものに他ならないし、そう思えるのはこのライブが本当に良いライブだったということ。
そんなライブをやり切った5人は「ありがとうー!」という声に包まれながら、花道に並んで手を繋いで一礼してから、本人たちも「本当にやりやすい場所」というこのさいたまスーパーアリーナに別れを告げた。
洋次郎はこの日、最後に
「次に会うときは今よりも幸せになれよ!」
と言った。これは近年最後に言うお決まりのセリフになりつつあるが、RADWIMPSを初めて聴いてから12年あまり。ライブが良くない時期もあったし、この5人編成になるまでには智史の離脱という悲しいこともあった。しかし、こうしてお互いに歳を重ねて30歳を超えた今でもこうしてライブが観れて、それが過去最高クラスに素晴らしいものになっている。それだけで本当に幸せなんだから、次に見る時にはもっと幸せな気分にさせてくれるんだろう。
1.Lights go out
2.夢灯籠
3.光
4.AADAAKOODAA
5.05410-(ん)
6.アイアンバイブル
7.O&O
8.アメノヒニキク
9.トアルハルノヒ
10.棒人間
11.Bring me the morning
12.三葉のテーマ
13.スパークル
14.DADA
15.セツナレンサ
16.おしゃかしゃま
17.ます。
18.君と羊と青
19.前前前世
20.告白
encore
21.おあいこ
22.トレモロ
23.糸守高校
24.いいんですか?
25.なんでもないや
26.サイハテアイニ
27.会心の一撃
前前前世
https://youtu.be/PDSkFeMVNFs
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世間的にはすでにゴールデンウィークに突入している人もいるということで、さいたまスーパーアリーナの前のけやき広場では、連休中に開催されるVIVA LA ROCKの飲食スペースであるVIVA LA GARDENがオープンしており、多数の飲食店がすでに営業し、DJも行われていて賑わっている。
そんな賑わいを見せる屋外同様に会場内もアリーナスタンディングはもちろん、最上階の最上段まで超満員状態で、観客が今か今かと待ちわびる中、場内が暗転すると、もはや怒号のような歓声が響く中、ステージにかぶさるように下がったLEDに光の粒がはじけるような映像が流れ、その奥にはうっすらとメンバーのシルエットが…というオープニングなのだが、この日はかなり上方の真横と言っていいような席だったため、LEDに隠されることなくメンバーの姿が見える。洋次郎は真っ白のロングコートの上にグレーのコートを羽織り、横浜の時はわからなかったが、1曲目の「Lights go out」で洋次郎がピンボーカルからピアノに移動する姿すらもよく見える。そしてサビ前にはLEDだけならず、会場全体が光の粒子に包まれる。早くも大会場ならではの演出に震わされる。
RADWIMPSをたくさんの人に再発見させた映画「君の名は。」のオープニングテーマ的な位置だった「夢灯籠」ではひときわ大きな歓声が上がり、「光」では桑原と武田がそれぞれ左右の花道に駆け出していく。もうメンバーは30歳を超えたが、この姿を見ると、今でも自分がこのバンドと出会った10代の頃から全く変わっていないように見える。桑原の体型以外は。
しかし「光」はアルバムのリードトラックであると同時に「人間開花」の開かれたモードを象徴する曲でもあるが、「前前前世」と最後まで「君の名は。」のメインテーマソングとして悩んだ曲と語っているだけあり、聴けば聴くほど「この曲がテーマソングだったらどうなっていただろう?」と想像してしまう。
「今すぐ逃げろ さもないと消える」
というフレーズも、映画の中の重要なシーンに合わせて書いたんじゃないかとも思ってしまう。
洋次郎がハンドマイクで動き回りながら歌い、武田がシンセベースを操る、「人間開花」の中では最もドロドロした内面の吐露が歌詞とサウンドにそのまま現れている「AADAAKOODAA」ではステージ中央から伸びた花道の先端に洋次郎が立つと、そのまま床が上昇していく。
「みんな最初から調子良すぎじゃない!?ここに来る前にカラオケでも行ってきたの?(笑)」
と観客の熱さに驚きながらも、洋次郎の声は序盤から本当に伸びやかで、刃田と森のツインドラムも含め、ツアー終盤にありがちなこなれた感じやマンネリ感は一切なく、むしろ今まで以上にエネルギッシュ。
それがよくわかるのが、ツアーでは日替わり枠(横浜アリーナの2日目はここは「ハイパーペンチレイション」だった)である「05410-(ん)」。もはや10年前の曲であるということに驚きを禁じ得ないが、ツインドラムという新たな空気を吹き込まれたからか、過去最高レベルにエモーショナルな、今になって青春性を強く感じさせるようになっている。この曲でそれを象徴するのが桑原で、ステージ上を激しく動き回りながらギターを掻き鳴らすと、最後には中央の花道まで駆け出して行き、何度も高くジャンプをキメる。「アルトコロニーの定理」期の不振っぷりはもう完全に過去の話と言っていいくらいに、桑原は今ギタリストとして絶頂期にいる。
刃田がグロッケンを叩いたりと様々な楽器のサウンドがメロディを彩る「アイアンバイブル」では洋次郎がハンドマイクで歌いながらサビのコーラス部分で観客の合唱を煽り、最終的には下手側の通路の先に置かれたピアノを弾くというめまぐるしいパートチェンジが行われ、改めてRADWIMPSのマルチプレイヤーっぷりに唸らされると、同じタイプの曲と言える「人間開花」の「O&O」では洋次郎が座り込みながらハンドマイクで歌うという自由っぷり。
その洋次郎がギターを弾きながら歌う姿のみに最初はスポットライトが当たり、照明が雨のように降り注ぐ「アメノヒニキク」では最終的にはステージ全体のLEDから雨が降るという土砂降り状態に。キックの4つ打ちの音が「ザンザカザン」と降る雨の音をより際立たせている。
「ミサイルが降ってきても、弾き返そうぜ!」
と洋次郎が前日に北朝鮮が発射したと言われているミサイルについて触れると、
「ロックバンドなんてもんを やっていて良かった」
のフレーズを弾き語り的に歌ってから「トアルハルノヒ」へ。バンドのこれまでの歩みを綴った曲であるが、ミサイルが日本に落ちてきていたら、こうしてロックバンドを続けていられなかったと思うと、より一層歌詞に説得力が増してくる。
洋次郎がツインドラムの間に置かれたピアノに座ると、
「みんなもうゴールデンウィーク?」
「埼玉に住んでる人?関東に住んでる人?」
と観客に語りかけ、広い会場でありながらも観客と近い距離でのコミュニケーションを図り、
「時間の流れっていうのは残酷なもので、早く過ぎないかなと思う時ほど遅く感じるし、早く過ぎないでくれっていう時ほどあっという間に過ぎてしまう。
でも俺は時間が経って30歳を過ぎても、あんまり変わってないんじゃないかなって。今でも俺はすぐあんなこと言わなけりゃ良かったな、とか後悔してしまうんだけど、みんなもそうだと思う。そんな棒人間のみんなに」
と言って演奏されたのは、今やドラマ主題歌になった「棒人間」。実に洋次郎らしい歌詞の曲だが、ピアノがメインの割と軽快とも言えるサウンドにこうした歌詞が載るのが面白い。
桑原と武田による演奏のインタールード的な「Bring me the morning」から、洋次郎が下手のピアノに移動し、「君の名は。」のサントラの「三葉のテーマ」をピアノで弾き、そのまま「スパークル」へ。横浜アリーナの時もそうだったが、この曲を聴いていると、否が応でも「君の名は。」の名シーンが頭をよぎるし、最後のサビで会場いっぱいに広がる美しい星たちは、映画の中で三葉たちの住む糸守に降り注いだ流星群のよう。
そんな染み入るような雰囲気をリセットするかのように、
「今、トイレ行くチャンスだから(笑)」
と緩いMCタイムになるも、
「RADWIMPSから離れて行った人もたくさんいるだろうし、みんなもいつか離れて行く時が来るかもしれない。でも、俺たちは自分たちが作りたい音楽しか作れないし、今までも出したい曲しか出してこなかった。だからこれからどんな曲を作るかはわからないし、「洋次郎、この新曲なんなんだよ~」って思うこともあるかもしれないけど(笑)、もし気に入ったらまたこうやってライブに来て欲しい」
と最後には自分たちの確固たる活動スタイルを改めて提示し、桑原によるサポートドラマー紹介から、「DADA」から一気にアッパーなモードへ。洋次郎もハンドマイクで歌いながら、マイクを客席に向けてガンガン観客に歌わせまくり、武田もゴリゴリのベースを弾きながら動き回り、中央の花道にまで駆け出してくる。
このツアーでは定番になっている「セツナレンサ」から、「おしゃかしゃま」では恒例のセッションを展開。桑原と武田、刃田と森を交互に指差して演奏させ、音量を洋次郎がコントロールする部分では小さな音で演奏をキープする部分をいつにも増して長めにし、客席からはどよめきが起こる。このセッションはツアーを経るたびに進化しているし、毎回どこかしら違うという部分ではこのライブがこの日限りであるということを実感させてくれる。
武田が腕を上げて観客の「オイ!オイ!」という煽りを促す「ます。」では、洋次郎が
「あなたと1人と他全人類どちらか一つ救うとしたらどっちだろかな」
のフレーズを、右手の人差し指をピンと上に挙げた状態で歌い、直後の
「迷わずYOU!」
のフレーズではこの日も大合唱を起こし、武田の挨拶的なMCから
「埼玉、最後までもっと盛り上がっていけますか!?」
の問いかけにあまり勢いよく返ってこなかったことに洋次郎が拗ねてしまい、泣きのもう1回で大歓声を浴びると、「君と羊と青」とキラーチューンを続け、アウトロを観客の煽りに応じて何度も繰り返す。明らかに横浜の時より回数が増えており、最後には力尽きたとばかりに桑原が倒れこむも、それでもさらにもう1回演奏させるという洋次郎のドSっぷり。
そして
「みんな、知ってたら歌ってください!」
と言っての「前前前世」では当然のように大合唱が起こるが、この曲でRADWIMPSを知ってこのライブに来た人もたくさんいるだろうし、10年以上前から聴いていた人もたくさんいるだろう。しかし、そうした全てのRADWIMPSファンの中の、バンドの代表曲が今ではもう完全にこの曲である。かつては「有心論」だったり「ふたりごと」だったりと人によって違っていただろうが、この曲と「君の名は。」の大ヒットはそうした過去の代表曲たちを一瞬で通り越して言った。過去の曲たちも本当にバケモノみたいな名曲だったが、それらを追い越してしまったこの曲の力が本当にすごいというのがライブで聴くとよくわかる。
そして洋次郎がピアノに移動すると、
「さっきミサイルが来たら弾き返そうって言ったけど、警戒レベルが高くなってたら、昨日ライブが出来なくなってたかもしれなくて。みんな人それぞれが役割を持って一生懸命生きてるのにさ、全然関係ないやつのせいでその人たちがいなくなっちゃうって、そんな理不尽なことはないよ。俺はやっぱりそういう理不尽なことが許せないんだ。やられたら絶対やり返しちゃうだろうし。
それは子供の喧嘩と全く変わらない論理で戦争になってるんだけど、でも日本はこの70年、戦争をしてこなかった。これまでの歴史上では50年に1度は戦争をしてきたのに。これは本当にすごいことだし、俺はそれをこれからも守りたい。それはここにいる人たちからだけでも始めればなんか変わると思ってる。
ご飯食べに行こう、とかそういう小さな約束。そういう約束を少しずつ増やして、未来に繋げていこう。約束すれば、それを守ればまた会えるから。だから、生きてまた何処かで会うって約束しよう」
と語った。理不尽なことで人がいなくなってしまうことについては震災後も口にしていたし、実際にバンドは「糸色」というサイトを作ったりして、いち早く行動を始め、東北で大規模なワンマンをしたりもした。しかし、自然というどうしようもない現象だった震災とは違い、今回のミサイルには憎むべき対象が確かに存在している。その事実は洋次郎にこれまでと違う曲を書かせるきっかけになるかもしれない。
そして「人間開花」の最後に収録されている「告白」を洋次郎のピアノ弾き語りから徐々にメンバーが演奏に参加していくという形で披露し、5人はステージを去って行った。
おなじみの「もしも」の大合唱と、スマホのライトがアンコールを待つ新たなサインとなる中、洋次郎がアリーナ最後方から登場すると、アリーナCブロックのPAブースに作られたミニステージに上がり、ピアノの前に座ると、
「個人的にやりたいだけの曲をやっていい?」
と言い、ハナレグミに提供した「おあいこ」を弾き語ると、もう1曲何を歌うか思案している中、客席から「オーダーメイド」というリクエストを受けてやろうとするも、「トレモロ」を求める声が大きくなり、結局
「「オーダーメイド」が負けたみたいになったけど(笑)」
と言いながら、「トレモロ」を弾き語り。しかしこの曲はバンド編成で聴きたかったというのが正直なところでもあるが。
すると桑原と武田もミニステージに登場し、なぜかツアーでは恒例になった、メンバーの穿いてるパンツの色を報告するという緩いトークから、
「昔、アマチュアの頃にはよく、すぐ近くのさいたま新都心HEAVEN'S ROCKでライブをやってて。客は20人とかだったけど、それでも多い方で。1人しか客がいなかった時とかは終わった後にその1人を俺たち4人が囲んでCDを買って貰おうとしたりして(笑)」
と埼玉だからこその過去を回想し、「いいんですか」を演奏しながらミニステージを降りてメインステージに向かって歩き出すと、いつの間にかメインステージですでにスタンバイしていた頼れるサポートドラマーも演奏に加わり、手拍子と合唱が鳴り響くという一体感に包まれる。
メインステージに戻ると洋次郎がギターを手にし、「前前前世」とともに映画「君の名は。」でフィーチャーされた「なんでもないや」を観客に大合唱させながら歌う。バラードという合唱が成立しにくいタイプであるにもかかわらず大合唱になる辺りは本当に名曲だと思わざるを得ないし、本当に美しい曲。
そしてリリースが発表され、すでにCMでもオンエアされている新曲「サイハテアイニ」を披露。「前前前世」をさらにアップデートさせたと言ってもいい曲だが、ほとんどの人が初めてライブで聴くとは思えない盛り上がりっぷりとアクエリアスのCMソングらしい爽やかさ。この曲をこうして聴くと、RADWIMPSの今の状況というのは「君の名は。」により瞬間的な効果ではなく、これからもずっと続いていくのだ、と確信させられた。
これで終わりかと思いきや、
「もう1曲!もう1曲やらせて!みんなのゴールデンウィークが、これからの人生が素晴らしいものになりますように!」
と言って最後に演奏されたのは「会心の一撃」。本当にタイトル通りにこの曲が最後に演奏されたことによって、スカッと爽やかな気分でライブが終わることができた。その気分というのは、明日からもまた頑張れる、という希望を抱かせるものに他ならないし、そう思えるのはこのライブが本当に良いライブだったということ。
そんなライブをやり切った5人は「ありがとうー!」という声に包まれながら、花道に並んで手を繋いで一礼してから、本人たちも「本当にやりやすい場所」というこのさいたまスーパーアリーナに別れを告げた。
洋次郎はこの日、最後に
「次に会うときは今よりも幸せになれよ!」
と言った。これは近年最後に言うお決まりのセリフになりつつあるが、RADWIMPSを初めて聴いてから12年あまり。ライブが良くない時期もあったし、この5人編成になるまでには智史の離脱という悲しいこともあった。しかし、こうしてお互いに歳を重ねて30歳を超えた今でもこうしてライブが観れて、それが過去最高クラスに素晴らしいものになっている。それだけで本当に幸せなんだから、次に見る時にはもっと幸せな気分にさせてくれるんだろう。
1.Lights go out
2.夢灯籠
3.光
4.AADAAKOODAA
5.05410-(ん)
6.アイアンバイブル
7.O&O
8.アメノヒニキク
9.トアルハルノヒ
10.棒人間
11.Bring me the morning
12.三葉のテーマ
13.スパークル
14.DADA
15.セツナレンサ
16.おしゃかしゃま
17.ます。
18.君と羊と青
19.前前前世
20.告白
encore
21.おあいこ
22.トレモロ
23.糸守高校
24.いいんですか?
25.なんでもないや
26.サイハテアイニ
27.会心の一撃
前前前世
https://youtu.be/PDSkFeMVNFs
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