Base Ball Bear Tour「バンドBのすべて 2016-2017」 @Zepp Tokyo
- 2017/03/30
- 00:32
昨年のまさかのギタリスト湯浅将平の電撃的な脱退劇以降もバンドは全く立ち止まらず、フルカワユタカ、石毛輝、ハヤシヒロユキ、田渕ひさ子という、かつて脱退や活動休止、解散を経験したことのある凄腕ギタリスト達の力を借りてライブを行っていた、Base Ball Bear。
昨年から始まったこのツアーではキリンジなどで活動している弓木英梨乃を迎え、さらにはファンからの人気投票で上位にランクインした曲をセトリに反映するという、このバンドらしからぬサービス精神旺盛な企画を行いながらのツアーとなっている。
開演前の場内には、高校時代にバンドがコピーしていた、スーパーカーの曲がひたすら流れているというインディーズ時代の総括的なミニアルバムのタイトルを彷彿とさせるツアータイトルにも通じる原点回帰ぶりで、最大の代表曲「YUMEGIWA LAST BOY」が流れる途中で場内が暗転し、おなじみXTCのSEでサポートギタリストの弓木を含めたメンバーが登場。
堀之内のドラムセットの周りに他の3人が集まって気合いを入れるという恒例の儀式は編成に変化があっても変わらず、小出がマイクスタンドを前にすると同時にギターの音と歌を発する、近年もCMでオンエアされていた「BREEEEZE GIRL」でいきなり爽やかな風を吹かせて、一気に会場の空気が夏に変わる。続く「senkou_hanabi」も夏の曲なだけに、ベボベ=夏バンドというかつてのイメージを改めて浮き彫りにしてくれる立ち上がり。小出はこの段階ではファルセット部分がまだちょっとキツそうでもある。
早くもこのタイミングで始まったMCでは、サポートの弓木の紹介をしつつ、
「我々はどの曲にも順列はつけたくないんですが、今日はみなさんが順位をつけた曲をふんだんに反映したセットリストになっております(笑)
普段カーストやヒエラルキー的なものを嫌いながらも、こうして曲にはカーストを作るっていうね(笑)
だから今日やる曲たちは部活で言ったらサッカー部とかテニス部みたいな曲ばかりですよ(笑)
こんがり日焼けして腕にミサンガつけてるみたいな(笑)」
と早くも小出ならではの皮肉っぷりを炸裂させて笑わせるのだが、いちいち
「こっちが投票してくれってお願いしてるんだよ!」
「個人の主観が入っております」
とツッコミを入れる堀之内も地味に面白い。しかしこの2人、東京でのワンマンが去年の日比谷野音以来だと思い込んでおり、このツアー初日の下北沢でのワンマンを完全に忘れ去っていて、観客に突っ込まれていた。小出いわく、
「もうおっさんになったから、昔のことの方がよく覚えている」
とのこと。
ファン投票で2位にランクインした、初期からの人気曲であり続けている「彼氏彼女の関係」で小出が軽快なカッティングギターを鳴らすと、「ストレンジダンサー」からは普段のライブではなかなか聴くことができないカップリング曲を連発。
中でも人気投票5位になった「BOYS MAY CRY」(自分はこの曲が1位になると思っていた)「SCHOOL GIRL FANTASY」という選曲はファンにはたまらないものがある。個人的に今活動しているバンドの中で最もカップリングが良い曲を生み出しているのは、このベボベと、盟友的な存在のバンドであるチャットモンチーだと思っているのだが(チャットモンチーで1番好きなアルバムはカップリングアルバムの「表情」)、なぜこの曲をシングルのタイトル曲にしなかったんだろう?と思うくらいに名曲揃いだし、それらの曲をバンドの中の隠れた名曲という位置にしておくにはあまりにももったいなさ過ぎるので、今後もこうしてライブで演奏し続けて欲しい次第である。
「BOYS MAY CRY」の
「BOYS MAY CRY 辛かったら俺の胸で泣いたっていいよ
BOYS MAY CRY いつの日か 見せてくれ そのスマイル」
という歌詞は今となっては曲の対象にいるのは湯浅なんじゃないだろうかと思ってしまうけれど。
ツアーの振り返りMCでは、ツアー中にメンバーの衣装が縮んで着れなくなり、関根は常時下着丸見え状態になってしまうほどだったこと(その状態を見たのは弓木だけらしいが)、ツアー中の高知と熊本で珍しくメンバー全員で打ち上げに行き(しかも小出が主導)、部屋飲みまでして小出は泥酔、弓木は動物の図鑑をコンビニで堀之内に買わせたのに、翌朝になったらなぜその図鑑を自分が持っているのか全くわかっていない、などの爆笑エピソードが次々に投下される。
何気ないツアーのエピソードだが、これまでプライベートでメンバーがつるむようなイメージが一切ない(実際にメンバーで部屋飲みしたのは初めてだという)このバンドが、デビューから10年を超えてこうした結束を見せているというのも、ずっと一緒にやっていくと思っていたメンバーの脱退という初めての事態を経たからというのがわかる貴重なトークである。
「切ない曲」と紹介されて始まったのは「Transfer Girl」で、「short hair」と続けて演奏されることによって歌詞と曲のストーリーが繋がっていくような感覚になるが、こうした人気投票企画ではライブ定番の曲は得てして票が伸びない(投票しなくてもライブで聴けるから)傾向にあるが、完全にライブ定番曲である「short hair」が人気投票で7位に入っているというのは、この曲がそうしたライブ定番だから、とかいう次元すら超えた、いついかなるライブでも聴きたくなる名曲であることを示している。
しかしこのツアーの見どころの一つは間違いなくサポートギター、弓木の存在とギタープレイである。このバンドを見てきた誰もが間違いなく未だに湯浅の幻影を引きずっているであろうだけに、ただ曲をなぞるようなギターでは「やっぱり前の方が良かった」と思ってしまう。
しかしながら割と体の高い位置でテクニカルなギターを弾くという、最近ではKEYTALKの小野武正あたりに通じるスタイルで序盤から曲の原形は保ちながらも、弓木なりのエッセンスを導入したギターソロを弾きまくっていたが、人気投票で4位という好結果を得た「初恋」では「この曲こんなに激しい曲だっけ!?」とビックリしてしまうくらいに弓木のギターがバンド全体の熱量や勢いを牽引し、アウトロでのタッピングまで軽々と弾きこなすギターソロはもはや彼女の独壇場である。
その弓木に対して、ツアーに参加してくれた感謝と、自分たちの中に入って本当に彼女のキャリアとして良かったのか?という逡巡が混じったコメントを述べつつ、
「弓木さんはプロのギタリストだから、普段からいろんな現場を渡り歩きながらギターを弾いているけど、バンドで演奏する楽しみを少しでも感じてくれたら、我々としても本当に嬉しい」
と、メンバーが抜けてもあくまでステージに立っている人だけで音を出すという美学に基づいたバンドであろうとしたベボベならではの言葉でこのツアーをともにした感謝を告げ、
「去年の野音のワンマンではいろんなギタリストに出てもらってっていうバンドとしては歪な形のライブを見せたかもしれない。でも我々としては去年ああしてメンバーが抜けて、一旦休んで作品を作ってから復帰するっていう選択肢もあった中で、それは我々らしくないと、その歪な姿も見てもらいたかったし、今こうしてこの編成でライブをしている姿も見てもらいたかった。そうしてライブをしながら作ったアルバムが来月出ます。もう聴いてもらえればわかるようなアルバムになったと思う。だからみなさん、これからも我々Base Ball Bearをよろしくお願いします」
と来てくれた観客に今後の決意表明を語り、その原点とも言える「17才」を未だに変わらぬ青きポップさで鳴らすと、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れた前作「C2」からの「曖してる」では観客の盛り上がりぶりに呼応するかのように、あまりにもバンドの演奏が速く&激しくなっていく。
それを牽引しているのはやはり弓木のギターであるというのは、かつての編成ではここまで演奏が速く激しくなることはなかったということでわかるが、「yoakemae」「Tabibito In The Dark」というギターらしからぬサウンドが求められる曲でも弓木は対応しながらもソロで誰よりも目を惹く弾きまくりっぷりを見せ、堀之内のドラムのアタック感もさらに強く、関根もステージを動き回りながらリズムを刻み、小出は「yoakemae」のラストサビに入る前に思いっきりタメて煽る。
そのバンドの演奏が極致に達したのは「海になりたい part.2」。やはり全員が速くなりまくり、激しくなりまくりな中、アウトロを任された弓木のあらゆる技術を総動員したようなギタープレイは、一瞬なんの曲を聴いているのかわからなくなるほど。かなり長いソロになったのだが、それでももっと聴いていたくなる。小出がCOUNTDOWN JAPAN出演時に
「このフェスの出演者で1番ギターが上手い」
と言っていたのが、その時よりも本当によくわかった。
そしてラストは熱さから青さに揺り戻すように「PERFECT BLUE」で観客を飛ばせて終了した。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて登場し、アルバムリリース直後の6月にまた全国ツアーがスタートすること、9月30日に今年も日比谷野音でワンマンが開催されること、そのツアーのギターは弓木が担当することを発表し、会場は大きな拍手に包まれる。かつてのツアーよりも、明らかに今こうして来ている人たちの方が、ベボベのライブを求めている。もう若手から中堅になり、関根は結婚し、かつてほどガンガンイベントなどに出まくるわけではなくなったし、音楽性も、何よりメンバーも変わった。そうして離れていく理由や要因はいくつもあったにもかかわらず、決して離れることなく、ベボベとともにこれからも歳を重ねていこうとしている人たちだからである。
そして新作からは「SHINE」を披露。ベボベならではのフレーズも数多く並ぶ、王道と言ってもいいギターロックチューン。「逆バタフライエフェクト」もそうだが、正直、曲制作に関しては制約がなくなっただけに、もっとこれまでとは違うタイプの曲が増えるのかと思ったが、「光源」というタイトルを象徴するようなタイトルの曲がこうしたタイプであるので、どうやらそういうわけでもないようだ。すでにサビを覚えている観客がたくさんいたのは、ツアーの他の会場に参加している人たちだろうか。
そして最後にイントロが鳴らされたのは、「The Cut」のフレーズ。「え?RHYMESTER出てこないし、DJセットもないぞ?」と思っていたら、小出がハンドマイク状態で歌丸とMummy-Dのパートも全て歌い切った。そのボーカル力とラップスキルの高さにも感嘆だが、かつてはライブでやたらと歌詞が飛んでいた小出がこの言葉数の多さを完璧に歌い切るというのにも驚いた。このバージョンでできるならば、これからライブ定番になってほしいと思うくらいに、この曲は意外なコラボレーションが生み出した奇跡のカッコよさである。
演奏が終わるといつものようにメンバーがそれぞれ礼をし、写真を撮ったりとかステージに長居することなく去っていった。最後の堀之内の笑顔もいつものように。
あの4人でのライブをずっと見てきたから、感傷的になるのは仕方ない。しかしスーパーギタリスト、弓木英梨乃の技量をフルに発揮して明らかに速すぎ&激しすぎになった後半の演奏と、ライブの凄さで過去の幻影を消し去った。10年以上見ていてもまだ想像の上を行く。ベボベは本当に恐ろしいバンドだ。
今ベボベはもう同じメンバーでずっと続けていくという、いわばエレカシが歩んでいるような道はもう歩けなくなった。しかし前に小出が言っていたように、3人になったからこそ、目の前には今まで見ていた道とは違う、新しい道が見えている。そしてこれからバンドが歩むその道は間違いなく光を放っている。
決してファンに媚びたりとか、必要以上に寄り添ったりはしないバンドだけど、その距離感が気持ち悪くて気持ち良い。これからも、ずっとそうやって一緒に。
1.BREEEEZE GIRL
2.senkou_hanabi
3.彼氏彼女の関係
4.ストレンジダンサー
5.BOYS MAY CRY
6.SCHOOL GIRL FANTASY
7.Transfer Girl
8.short hair
9.初恋
10.17才
11.曖してる
12.Tabibito In The Dark
13.yoakemae
14.海になりたい part.2
15.PERFECT BLUE
encore
16.SHINE
17.The Cut
The Cut
https://youtu.be/_gzOzwaRA2E
Next→ 4/2 NICO Touches the Walls @NHKホール
昨年から始まったこのツアーではキリンジなどで活動している弓木英梨乃を迎え、さらにはファンからの人気投票で上位にランクインした曲をセトリに反映するという、このバンドらしからぬサービス精神旺盛な企画を行いながらのツアーとなっている。
開演前の場内には、高校時代にバンドがコピーしていた、スーパーカーの曲がひたすら流れているというインディーズ時代の総括的なミニアルバムのタイトルを彷彿とさせるツアータイトルにも通じる原点回帰ぶりで、最大の代表曲「YUMEGIWA LAST BOY」が流れる途中で場内が暗転し、おなじみXTCのSEでサポートギタリストの弓木を含めたメンバーが登場。
堀之内のドラムセットの周りに他の3人が集まって気合いを入れるという恒例の儀式は編成に変化があっても変わらず、小出がマイクスタンドを前にすると同時にギターの音と歌を発する、近年もCMでオンエアされていた「BREEEEZE GIRL」でいきなり爽やかな風を吹かせて、一気に会場の空気が夏に変わる。続く「senkou_hanabi」も夏の曲なだけに、ベボベ=夏バンドというかつてのイメージを改めて浮き彫りにしてくれる立ち上がり。小出はこの段階ではファルセット部分がまだちょっとキツそうでもある。
早くもこのタイミングで始まったMCでは、サポートの弓木の紹介をしつつ、
「我々はどの曲にも順列はつけたくないんですが、今日はみなさんが順位をつけた曲をふんだんに反映したセットリストになっております(笑)
普段カーストやヒエラルキー的なものを嫌いながらも、こうして曲にはカーストを作るっていうね(笑)
だから今日やる曲たちは部活で言ったらサッカー部とかテニス部みたいな曲ばかりですよ(笑)
こんがり日焼けして腕にミサンガつけてるみたいな(笑)」
と早くも小出ならではの皮肉っぷりを炸裂させて笑わせるのだが、いちいち
「こっちが投票してくれってお願いしてるんだよ!」
「個人の主観が入っております」
とツッコミを入れる堀之内も地味に面白い。しかしこの2人、東京でのワンマンが去年の日比谷野音以来だと思い込んでおり、このツアー初日の下北沢でのワンマンを完全に忘れ去っていて、観客に突っ込まれていた。小出いわく、
「もうおっさんになったから、昔のことの方がよく覚えている」
とのこと。
ファン投票で2位にランクインした、初期からの人気曲であり続けている「彼氏彼女の関係」で小出が軽快なカッティングギターを鳴らすと、「ストレンジダンサー」からは普段のライブではなかなか聴くことができないカップリング曲を連発。
中でも人気投票5位になった「BOYS MAY CRY」(自分はこの曲が1位になると思っていた)「SCHOOL GIRL FANTASY」という選曲はファンにはたまらないものがある。個人的に今活動しているバンドの中で最もカップリングが良い曲を生み出しているのは、このベボベと、盟友的な存在のバンドであるチャットモンチーだと思っているのだが(チャットモンチーで1番好きなアルバムはカップリングアルバムの「表情」)、なぜこの曲をシングルのタイトル曲にしなかったんだろう?と思うくらいに名曲揃いだし、それらの曲をバンドの中の隠れた名曲という位置にしておくにはあまりにももったいなさ過ぎるので、今後もこうしてライブで演奏し続けて欲しい次第である。
「BOYS MAY CRY」の
「BOYS MAY CRY 辛かったら俺の胸で泣いたっていいよ
BOYS MAY CRY いつの日か 見せてくれ そのスマイル」
という歌詞は今となっては曲の対象にいるのは湯浅なんじゃないだろうかと思ってしまうけれど。
ツアーの振り返りMCでは、ツアー中にメンバーの衣装が縮んで着れなくなり、関根は常時下着丸見え状態になってしまうほどだったこと(その状態を見たのは弓木だけらしいが)、ツアー中の高知と熊本で珍しくメンバー全員で打ち上げに行き(しかも小出が主導)、部屋飲みまでして小出は泥酔、弓木は動物の図鑑をコンビニで堀之内に買わせたのに、翌朝になったらなぜその図鑑を自分が持っているのか全くわかっていない、などの爆笑エピソードが次々に投下される。
何気ないツアーのエピソードだが、これまでプライベートでメンバーがつるむようなイメージが一切ない(実際にメンバーで部屋飲みしたのは初めてだという)このバンドが、デビューから10年を超えてこうした結束を見せているというのも、ずっと一緒にやっていくと思っていたメンバーの脱退という初めての事態を経たからというのがわかる貴重なトークである。
「切ない曲」と紹介されて始まったのは「Transfer Girl」で、「short hair」と続けて演奏されることによって歌詞と曲のストーリーが繋がっていくような感覚になるが、こうした人気投票企画ではライブ定番の曲は得てして票が伸びない(投票しなくてもライブで聴けるから)傾向にあるが、完全にライブ定番曲である「short hair」が人気投票で7位に入っているというのは、この曲がそうしたライブ定番だから、とかいう次元すら超えた、いついかなるライブでも聴きたくなる名曲であることを示している。
しかしこのツアーの見どころの一つは間違いなくサポートギター、弓木の存在とギタープレイである。このバンドを見てきた誰もが間違いなく未だに湯浅の幻影を引きずっているであろうだけに、ただ曲をなぞるようなギターでは「やっぱり前の方が良かった」と思ってしまう。
しかしながら割と体の高い位置でテクニカルなギターを弾くという、最近ではKEYTALKの小野武正あたりに通じるスタイルで序盤から曲の原形は保ちながらも、弓木なりのエッセンスを導入したギターソロを弾きまくっていたが、人気投票で4位という好結果を得た「初恋」では「この曲こんなに激しい曲だっけ!?」とビックリしてしまうくらいに弓木のギターがバンド全体の熱量や勢いを牽引し、アウトロでのタッピングまで軽々と弾きこなすギターソロはもはや彼女の独壇場である。
その弓木に対して、ツアーに参加してくれた感謝と、自分たちの中に入って本当に彼女のキャリアとして良かったのか?という逡巡が混じったコメントを述べつつ、
「弓木さんはプロのギタリストだから、普段からいろんな現場を渡り歩きながらギターを弾いているけど、バンドで演奏する楽しみを少しでも感じてくれたら、我々としても本当に嬉しい」
と、メンバーが抜けてもあくまでステージに立っている人だけで音を出すという美学に基づいたバンドであろうとしたベボベならではの言葉でこのツアーをともにした感謝を告げ、
「去年の野音のワンマンではいろんなギタリストに出てもらってっていうバンドとしては歪な形のライブを見せたかもしれない。でも我々としては去年ああしてメンバーが抜けて、一旦休んで作品を作ってから復帰するっていう選択肢もあった中で、それは我々らしくないと、その歪な姿も見てもらいたかったし、今こうしてこの編成でライブをしている姿も見てもらいたかった。そうしてライブをしながら作ったアルバムが来月出ます。もう聴いてもらえればわかるようなアルバムになったと思う。だからみなさん、これからも我々Base Ball Bearをよろしくお願いします」
と来てくれた観客に今後の決意表明を語り、その原点とも言える「17才」を未だに変わらぬ青きポップさで鳴らすと、ブラックミュージックのエッセンスを取り入れた前作「C2」からの「曖してる」では観客の盛り上がりぶりに呼応するかのように、あまりにもバンドの演奏が速く&激しくなっていく。
それを牽引しているのはやはり弓木のギターであるというのは、かつての編成ではここまで演奏が速く激しくなることはなかったということでわかるが、「yoakemae」「Tabibito In The Dark」というギターらしからぬサウンドが求められる曲でも弓木は対応しながらもソロで誰よりも目を惹く弾きまくりっぷりを見せ、堀之内のドラムのアタック感もさらに強く、関根もステージを動き回りながらリズムを刻み、小出は「yoakemae」のラストサビに入る前に思いっきりタメて煽る。
そのバンドの演奏が極致に達したのは「海になりたい part.2」。やはり全員が速くなりまくり、激しくなりまくりな中、アウトロを任された弓木のあらゆる技術を総動員したようなギタープレイは、一瞬なんの曲を聴いているのかわからなくなるほど。かなり長いソロになったのだが、それでももっと聴いていたくなる。小出がCOUNTDOWN JAPAN出演時に
「このフェスの出演者で1番ギターが上手い」
と言っていたのが、その時よりも本当によくわかった。
そしてラストは熱さから青さに揺り戻すように「PERFECT BLUE」で観客を飛ばせて終了した。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて登場し、アルバムリリース直後の6月にまた全国ツアーがスタートすること、9月30日に今年も日比谷野音でワンマンが開催されること、そのツアーのギターは弓木が担当することを発表し、会場は大きな拍手に包まれる。かつてのツアーよりも、明らかに今こうして来ている人たちの方が、ベボベのライブを求めている。もう若手から中堅になり、関根は結婚し、かつてほどガンガンイベントなどに出まくるわけではなくなったし、音楽性も、何よりメンバーも変わった。そうして離れていく理由や要因はいくつもあったにもかかわらず、決して離れることなく、ベボベとともにこれからも歳を重ねていこうとしている人たちだからである。
そして新作からは「SHINE」を披露。ベボベならではのフレーズも数多く並ぶ、王道と言ってもいいギターロックチューン。「逆バタフライエフェクト」もそうだが、正直、曲制作に関しては制約がなくなっただけに、もっとこれまでとは違うタイプの曲が増えるのかと思ったが、「光源」というタイトルを象徴するようなタイトルの曲がこうしたタイプであるので、どうやらそういうわけでもないようだ。すでにサビを覚えている観客がたくさんいたのは、ツアーの他の会場に参加している人たちだろうか。
そして最後にイントロが鳴らされたのは、「The Cut」のフレーズ。「え?RHYMESTER出てこないし、DJセットもないぞ?」と思っていたら、小出がハンドマイク状態で歌丸とMummy-Dのパートも全て歌い切った。そのボーカル力とラップスキルの高さにも感嘆だが、かつてはライブでやたらと歌詞が飛んでいた小出がこの言葉数の多さを完璧に歌い切るというのにも驚いた。このバージョンでできるならば、これからライブ定番になってほしいと思うくらいに、この曲は意外なコラボレーションが生み出した奇跡のカッコよさである。
演奏が終わるといつものようにメンバーがそれぞれ礼をし、写真を撮ったりとかステージに長居することなく去っていった。最後の堀之内の笑顔もいつものように。
あの4人でのライブをずっと見てきたから、感傷的になるのは仕方ない。しかしスーパーギタリスト、弓木英梨乃の技量をフルに発揮して明らかに速すぎ&激しすぎになった後半の演奏と、ライブの凄さで過去の幻影を消し去った。10年以上見ていてもまだ想像の上を行く。ベボベは本当に恐ろしいバンドだ。
今ベボベはもう同じメンバーでずっと続けていくという、いわばエレカシが歩んでいるような道はもう歩けなくなった。しかし前に小出が言っていたように、3人になったからこそ、目の前には今まで見ていた道とは違う、新しい道が見えている。そしてこれからバンドが歩むその道は間違いなく光を放っている。
決してファンに媚びたりとか、必要以上に寄り添ったりはしないバンドだけど、その距離感が気持ち悪くて気持ち良い。これからも、ずっとそうやって一緒に。
1.BREEEEZE GIRL
2.senkou_hanabi
3.彼氏彼女の関係
4.ストレンジダンサー
5.BOYS MAY CRY
6.SCHOOL GIRL FANTASY
7.Transfer Girl
8.short hair
9.初恋
10.17才
11.曖してる
12.Tabibito In The Dark
13.yoakemae
14.海になりたい part.2
15.PERFECT BLUE
encore
16.SHINE
17.The Cut
The Cut
https://youtu.be/_gzOzwaRA2E
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