WANIMA JUICE UP!! TOUR FINAL ”ワンマン” @さいたまスーパーアリーナ 3/19
- 2017/03/20
- 19:00
デビュー以降、怒涛の快進撃を続け、もはやパンクシーンどころかロックシーンすらも跳び超えたバズを起こしまくっている、PIZZA OF DEATH RECORDS所属のスリーピースバンド、WANIMA。
その勢いを象徴するかのように、ツアーファイナルの会場になったのは、ワンマンでは最大キャパを何倍にも更新する、さいたまスーパーアリーナ。しかしながらチケットは即完、手に入らずにいけない人もたくさんいるという、想像をはるかに超えた人気を示す状況になっている。
良くも悪くも当日の物販は前日の段階から様々な憶測を含んだ情報が飛び交い、開演前には売り切れも続出しているというのはもはやこのバンドにおいては慣れたものである。
客席はアリーナスタンディングはもちろん、スタンド席の最上階まで完全に満員状態。チケットが手に入らないというのも納得せざるを得ない客入りっぷりである。
ステージはさすがにアリーナ、大型ビジョンはもちろん、ステージをぐるっと囲む円形の照明のアーチ、そしてなぜかステージ上にはドラムセットの上に米俵が積まれ、上手にはミリタリー風、下手はバーテンダー風のローディーが待機している。
16時半過ぎというあまりにもワンマンにしては早すぎる開演時間(メンバーなりの全国から来る観客への配慮だと思われるが)を少し過ぎると、「JUICE UP!!」ツアーのテーマが流れ出してからメンバーが登場するのだが、もはやSEが鳴った段階でモッシュが起こるというとんでもない客席の期待度の先走りっぷり。
例によって健太(ベース&ボーカル)は観客に手を振らせたりジャンプさせたりする中、光真の髪の色がギターに合わせた鮮やかな緑になっているのが目を惹く。藤原(ドラム)はドラムセットに座る前にSEに合わせて軽快なダンスを見せる。
「日本で1番、WANIMAが好きー!WANIMA、JUICE UP!! TOURファイナル、さいたまスーパーアリーナ、開催しまーす!」
と健太が叫ぶといきなり銀テープが噴射され、「Hey Lady」の大合唱からスタートし、アリーナでは次々とダイバーが転がっていく。
歌い出しで健太が弾き語りのように伸びやかな声を響かせるアレンジが施された「雨あがり」、健太と光真がそれぞれ左右に伸びた花道を歩き、両サイドのスタンド席からごく近い場所で演奏された「つづくもの」と、序盤はバンドがシーンに登場し、衝撃を与えたデビュー作「Can Not Behaved!!」収録曲を連発。リリースから2年半ほど経っているものの、全く古びることも飽きることもない。常に最大限の熱量を放っている。それはこれから先もずっとそうなんだろう。
健太の挨拶的なMCからは「Hi-STANDARD」などのフレーズが登場し、バンドのルーツをうかがわせる「Japanese Pride」、バンドの大事な一面であるエロい面の曲である「1CHANCE」、一転して爽やかな「エル」と、パンクにとどまらず、スカやヒップホップ、ギターロックなど様々な要素を消化して自身の音楽に昇華した曲が続くが、PIZZA OF DEATH所属ということもあり、正統派なパンクバンドと見られることが多いWANIMAだが、実はかなり器用なバンドだし、決してパンクだけを聴いてきたメンバーたちではないことがよくわかる。
すると場内がいきなり暗転し、
「WANIMAのメンバーにビデオメッセージが届いています」
というアナウンスの後に大型ビジョンに映し出されたのは、まさかの元大関、把瑠都。WANIMAのメンバーと親交があり、この日もライブを見に行きたかったが、仕事で行けないために、隣にいる弟子2人を代わりに行かせる、というのはまだわかるが、なぜか
「では次の曲聴いてください、昨日の歌」
と曲フリまでやってしまう。その「昨日の歌」の演奏中に映像に出ていた弟子2人がスタンド席最前列で盛り上がりまくっている様子が映し出されたのは場内爆笑だった。
「今年の夏はどんな夏になるかな~!」
と健太が言ってから歌い出すのはもちろん「夏の面影」なのだが、健太が歌い出しでもったいぶってタメまくるので、歌が全然始まらないという焦らしプレイを展開し、藤原の体型通りに力強いドラムプレイが炸裂するエロサイドの「BIG UP」と盛り上がりっぷりは止まるところを知らない。
しかしここでその藤原がサングラスをかけると、おなじみの長渕剛のモノマネコーナーに突入するのだが、上空からステージ前に通路が出現し、その通路を歩いて客席真ん中のサブステージに「乾杯」を歌いながら向かうという小芝居を見せる。電飾がついていたのもあって、やはりこの通路はかなり金がかかっているらしい。
「乾杯」を歌い切ると、藤原が2人をサブステージに招き、健太と光真が手を繋いでサブステージを歩く。途中で健太は藤原がツアーの全箇所の地名を完璧に言えた要因であるカンペを没収して、客席に投げ込むのかと思いきや全然投げないというこれまた焦らしプレイを見せる。
かなり長い演出だったし、もはやおなじみになっている(ツアー全てに長渕剛が帯同したことになってた)が、モノマネのクオリティはもちろん、藤原の歌唱力が飛躍的に向上しているのにビックリさせられる。インタビューでも健太はバンドがなかなかいい状態にならなかったのは、ドラマーが決まらなかったからだと言っていた。それから藤原に出会い、加入したことによってバンドが本格的に回り始めたとも。
以前、[Alexandros]の川上洋平も、「バンドはドラマーがしっかりしていればなんとかなる」と言っていた。実際に[Alexandros]も現在のサトヤスが加入してから快進撃が始まったわけだが、WANIMAがここまで来れたのも間違いなく藤原のパワードラムとこうしたキャラクターがあってこそである。
3人がサブステージに集結すると、
「普段はなかなかできなかったり、歌詞を覚えられなかったりする曲があるんやけど(笑)、こういう時じゃないとできない曲をやるけん!」
と言って、アコースティック編成に。最初は健太がハンドマイクでサブステージを歩きながら歌う、財津和夫のカバー曲であり、車のCMタイアップとして大量オンエアされていた「切手のないおくりもの」。どちらかというと聴かせるタイプの原曲も、WANIMAにかかれば大合唱ナンバーになる。しかしながら健太は歌詞に合わせて抑えて歌ったりという抑揚もつける。こうしたボーカルとしての表現力はこうした大会場でライブをやる上では重要な能力である。
波のたゆたうサウンドに導かれての「SLOW」、アコースティックの終わりはライブ後半戦の始まりであることを告げる「終わりのはじまり」と、計3曲をアコースティックで演奏したわけだが、カバーもあったとはいえ、WANIMAの曲はパンクアレンジではなく、こうした削ぎ落としまくったアレンジで聴いてもやはり本当に良い曲だと思える。それはきっと他の曲をこうしたアコースティックアレンジや弾き語りで聴いてもそう思うのは間違いないし、だからこそ自分は今活動しているバンドの中で最も良いメロディを書いているのはこのWANIMAだと本気で思っているし、こうしてライブでみんなが歌っているのを見ると、それは間違ってないと思える。
3人が客席の間を通って、アリーナから通路へ移動(VIVA LA ROCKで言うとメインステージのアリーナから他のステージに移動する通路のあたり)しつつ、健太は子供の観客に先ほどの藤原が使ったカンペをあげると、なぜかメンバーが拉致られたあげくに自衛隊よろしくな迷彩服を着せられ、訓練と称してアスレチックに連れて行かれたり、バンジージャンプをさせられたりという映像が流れる。藤原はバンジージャンプを1人だけめちゃくちゃ嫌がっていた。
映像が終わると3人が迷彩服を着てステージに戻るのだが、迷彩服をすぐさま破り捨てて、新しい衣装に。そんな笑える流れなのにもかかわらず、
「これからも、みんなとともに生きていきたいから!」
とここにいる全ての人の背中を押すように、去年の夏の一大アンセム「ともに」を演奏。駆け抜けるようなビートの中で歌われる、
「生きていれば… 命さえあれば…」
というフレーズにはいつもドキッとさせられる。彼らの地元の熊本では大きな地震があったし、その前には東日本大震災もあった。ともに生きていきたかった人でも、いきなりいなくなってしまうことがあるということ。ただ無責任に背中を押しまくるだけじゃなく、WANIMAの曲にはそうした喪失感を感じることで説得力が増すものが多い。
ステージ前方から火柱が上がりまくる、見た目も曲も熱い「リベンジ」からは「Hey yo…」でじっくりと健太の伸びやかなボーカルを聴かせ、SMAP「夜空ノムコウ」を歌ったかと思えばいきなり「1106」へ。「ともに」でも感じさせられた喪失感を最も感じさせる、健太がおじいちゃんを思って書いた曲。サウンドは激しめとはいえ、この曲の時はダイブをすることもなく、しっかりとみんな腕を上げながら曲に向き合う。曲だけでなく、この目の前の光景がより一層涙腺を刺激してくる。
しかしながらそんな感動的な場面を振り切るかのように、
「あれ?そろそろ、オドルヨルじゃない!?」
と終盤になり、もはや時間的にも夜ということでダンサブルな「オドルヨル」、歌詞はエロ方向に振り切っているのにキャッチーでしかないメロディの「いいから」と、ミラーボールの輝きがよく似合う2曲を続けると、
「みんなが昨日の夜から並んでくれてるのも知ってる!本当にありがとう!これからもWANIMAはみんなのことを応援してるけん!」
と観客に感謝の言葉とともに感謝の気持ちを曲でも伝える「THANX」で「歌え!」というまでもなく、最初から最後まで大合唱。もうこの曲とかは本当に音楽の教科書に載っててもおかしくないくらいの曲。自分が中学生で歌うのが恥ずかしいような年齢だったとしても、この曲だったら大きな声で歌いたくなるはず。
そしてラストにこれも感謝の歌である「For you」をまさに一人一人の心の中に届くように歌う。ロックスターではなく、まるで友達のように同じ目線で歌う健太であり、WANIMAだからこそこうした曲は聴き手の背中を押してくれる。そうした人間性が音楽に直結しているから、たとえ誰しもが歌えるような曲であっても、WANIMAの曲は健太が歌うのが最も説得力がある。
アンコールを待つ間、暗くなった会場の中に光るのは観客たちのスマホのライト。再登場したメンバーもその光のキレイさに驚きながら、その光を使ったウェーブをさせ、この会場だから見れる美しい瞬間を作り出してみせる。
すると重大発表があると言って藤原がドラムロールを鳴らすのだが、健太がもったいぶって全然言わず、3回目のドラムロールでようやく、5月にニューシングルをリリースすることを発表する。しかしながらリリース元はPIZZA OF DEATHではなく、ワーナーミュージック内のレーベル、unBORDEから。(きゃりーぱみゅぱみゅや高橋優、パスピエなどが所属するレーベル。ゲスの極み乙女。も所属していた。レーベル所属アーティストによるイベントもよく行われている)
そのレーベルが変わったことに関しては特に理由などは言わなかったが、[Alexandros]がUK PROJECTからユニバーサルに変わったように、さらに広いところに出るためという要素が大きい気がする。さすがに今後さらにデカくなってドームツアーでもやるようになったら(このままいけばやるようになる)、PIZZAではマネジメントしきれないだろうし。
そしてそのシングルに収録される新曲「CHARM」を披露。
「みんなのお守りになるような曲」
と健太が言った通り、卒業など別れの季節である今にぴったりな歌詞がビジョンに映し出される、実にWANIMAらしい曲。リリースこそ5月だが、これは今の時期に聴いたら、これからの生活を前向きに生きていける人もたくさんいるはず。
そして、「そういえばまだやってなかったな」と思った「TRACE」、年明けからauの三太郎のCMで大量オンエアされている「やってみよう」も演奏。さすがにあれだけCMで流れただけはあり、盛り上がりっぷりも合唱っぷりも他の曲と全く引けを取らないし、この歌詞はWANIMAだからだよなぁと思う。
そしてラストは
「はじまる ここから 旅立ちにいらない不安なら
まだまだ これから 笑い飛ばせない日がきたら」
というフレーズからはじまる「ここから」。ラストによく演奏される曲だが、はじまりの曲っぽいのにもかかわらず、いつも演奏されるのは最後。それはここからがまた新しいはじまりであり、さいたまスーパーアリーナのキャパに達しても、WANIMAの勢いはまだまだここからだとすら感じさせるから。
演奏が終わるとメンバーがバズーカでグッズを客席にぶっ放し、あらゆる方向に感謝を伝えながら、最後は写真撮影。元自衛隊員である光真の希望で敬礼バージョン、さらには3人がジャンプするバージョンも撮り、終演SEの「また逢える日まで」すらも大合唱が起きるという、最後まで笑顔と合唱に包まれた1日だった。懸念された時間も、なんやかんやで2時間半もやっていた。
ライブで周りの人が歌うのを嫌がる人も多いし、クリープハイプの尾崎世界観みたいに、自分の歌を聴いてほしいという人もいる。それもスタイルや楽しみ方として全く間違ってない。だがWANIMAはとにかく歌わせるし、健太が言わなくても観客は大合唱する。MONGOL800が「小さな恋のうた」をほとんど観客に歌わせるように、もうWANIMAの曲もWANIMAだけのものではなく、みんなの歌になっている。そしてその大合唱がどれだけ感動的な空間を生み出すかということをメンバーは絶対にわかっているはず。
パンクをきっかけに音楽に目覚めて、それからも人生の中で最も大切なバンドは自分の世代はGOING STEADYだったし、一つ上の世代はHi-STANDARDだっただろうし、さらに上はブルーハーツだっただろう。そして今、その系譜にいるのは間違いなくWANIMA。
でも、WANIMAはPIZZA OF DEATHのバンドでありながら、ハイスタみたいに周りのバンドを巻き込んでフェスをやってシーンを作り出すようなバンドではないし、(どちらかというとそれは同世代の仲間であり、好敵手のフォーリミの方が近い)ブルーハーツのように「ロクデナシ」を、GOING STEADYのように「童貞」を救うための曲は作っていない。むしろ毎日を戦っている全ての人に響く音楽を作っているから、これだけたくさんの人の支持をすでに得ている。
こうしてパンクバンドのライブをこれだけたくさんの人と見れて、みんなで歌えて、かつて見てきたパンクバンドたちが見せてくれたのを上回るくらいの素晴らしい景色が見れる。こんな最高なことはない。
1.Hey Lady
2.雨あがり
3.つづくもの
4.Japanese Pride
5.1CHANCE
6.エル
7.昨日の歌
8.夏の面影
9.BIG UP
10.切手のないおくりもの (アコースティック)
11.SLOW (アコースティック)
12.終わりのはじまり (アコースティック)
13.ともに
14.リベンジ
15.Hey yo…
16.1106
17.オドルヨル
18.いいから
19.THANX
20.For you
encore
21.CHARM (新曲)
22.TRACE
23.やってみよう
24.ここから
ともに
https://youtu.be/qag4ewos4TE
やってみよう
https://youtu.be/UzMamUEdlMI
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その勢いを象徴するかのように、ツアーファイナルの会場になったのは、ワンマンでは最大キャパを何倍にも更新する、さいたまスーパーアリーナ。しかしながらチケットは即完、手に入らずにいけない人もたくさんいるという、想像をはるかに超えた人気を示す状況になっている。
良くも悪くも当日の物販は前日の段階から様々な憶測を含んだ情報が飛び交い、開演前には売り切れも続出しているというのはもはやこのバンドにおいては慣れたものである。
客席はアリーナスタンディングはもちろん、スタンド席の最上階まで完全に満員状態。チケットが手に入らないというのも納得せざるを得ない客入りっぷりである。
ステージはさすがにアリーナ、大型ビジョンはもちろん、ステージをぐるっと囲む円形の照明のアーチ、そしてなぜかステージ上にはドラムセットの上に米俵が積まれ、上手にはミリタリー風、下手はバーテンダー風のローディーが待機している。
16時半過ぎというあまりにもワンマンにしては早すぎる開演時間(メンバーなりの全国から来る観客への配慮だと思われるが)を少し過ぎると、「JUICE UP!!」ツアーのテーマが流れ出してからメンバーが登場するのだが、もはやSEが鳴った段階でモッシュが起こるというとんでもない客席の期待度の先走りっぷり。
例によって健太(ベース&ボーカル)は観客に手を振らせたりジャンプさせたりする中、光真の髪の色がギターに合わせた鮮やかな緑になっているのが目を惹く。藤原(ドラム)はドラムセットに座る前にSEに合わせて軽快なダンスを見せる。
「日本で1番、WANIMAが好きー!WANIMA、JUICE UP!! TOURファイナル、さいたまスーパーアリーナ、開催しまーす!」
と健太が叫ぶといきなり銀テープが噴射され、「Hey Lady」の大合唱からスタートし、アリーナでは次々とダイバーが転がっていく。
歌い出しで健太が弾き語りのように伸びやかな声を響かせるアレンジが施された「雨あがり」、健太と光真がそれぞれ左右に伸びた花道を歩き、両サイドのスタンド席からごく近い場所で演奏された「つづくもの」と、序盤はバンドがシーンに登場し、衝撃を与えたデビュー作「Can Not Behaved!!」収録曲を連発。リリースから2年半ほど経っているものの、全く古びることも飽きることもない。常に最大限の熱量を放っている。それはこれから先もずっとそうなんだろう。
健太の挨拶的なMCからは「Hi-STANDARD」などのフレーズが登場し、バンドのルーツをうかがわせる「Japanese Pride」、バンドの大事な一面であるエロい面の曲である「1CHANCE」、一転して爽やかな「エル」と、パンクにとどまらず、スカやヒップホップ、ギターロックなど様々な要素を消化して自身の音楽に昇華した曲が続くが、PIZZA OF DEATH所属ということもあり、正統派なパンクバンドと見られることが多いWANIMAだが、実はかなり器用なバンドだし、決してパンクだけを聴いてきたメンバーたちではないことがよくわかる。
すると場内がいきなり暗転し、
「WANIMAのメンバーにビデオメッセージが届いています」
というアナウンスの後に大型ビジョンに映し出されたのは、まさかの元大関、把瑠都。WANIMAのメンバーと親交があり、この日もライブを見に行きたかったが、仕事で行けないために、隣にいる弟子2人を代わりに行かせる、というのはまだわかるが、なぜか
「では次の曲聴いてください、昨日の歌」
と曲フリまでやってしまう。その「昨日の歌」の演奏中に映像に出ていた弟子2人がスタンド席最前列で盛り上がりまくっている様子が映し出されたのは場内爆笑だった。
「今年の夏はどんな夏になるかな~!」
と健太が言ってから歌い出すのはもちろん「夏の面影」なのだが、健太が歌い出しでもったいぶってタメまくるので、歌が全然始まらないという焦らしプレイを展開し、藤原の体型通りに力強いドラムプレイが炸裂するエロサイドの「BIG UP」と盛り上がりっぷりは止まるところを知らない。
しかしここでその藤原がサングラスをかけると、おなじみの長渕剛のモノマネコーナーに突入するのだが、上空からステージ前に通路が出現し、その通路を歩いて客席真ん中のサブステージに「乾杯」を歌いながら向かうという小芝居を見せる。電飾がついていたのもあって、やはりこの通路はかなり金がかかっているらしい。
「乾杯」を歌い切ると、藤原が2人をサブステージに招き、健太と光真が手を繋いでサブステージを歩く。途中で健太は藤原がツアーの全箇所の地名を完璧に言えた要因であるカンペを没収して、客席に投げ込むのかと思いきや全然投げないというこれまた焦らしプレイを見せる。
かなり長い演出だったし、もはやおなじみになっている(ツアー全てに長渕剛が帯同したことになってた)が、モノマネのクオリティはもちろん、藤原の歌唱力が飛躍的に向上しているのにビックリさせられる。インタビューでも健太はバンドがなかなかいい状態にならなかったのは、ドラマーが決まらなかったからだと言っていた。それから藤原に出会い、加入したことによってバンドが本格的に回り始めたとも。
以前、[Alexandros]の川上洋平も、「バンドはドラマーがしっかりしていればなんとかなる」と言っていた。実際に[Alexandros]も現在のサトヤスが加入してから快進撃が始まったわけだが、WANIMAがここまで来れたのも間違いなく藤原のパワードラムとこうしたキャラクターがあってこそである。
3人がサブステージに集結すると、
「普段はなかなかできなかったり、歌詞を覚えられなかったりする曲があるんやけど(笑)、こういう時じゃないとできない曲をやるけん!」
と言って、アコースティック編成に。最初は健太がハンドマイクでサブステージを歩きながら歌う、財津和夫のカバー曲であり、車のCMタイアップとして大量オンエアされていた「切手のないおくりもの」。どちらかというと聴かせるタイプの原曲も、WANIMAにかかれば大合唱ナンバーになる。しかしながら健太は歌詞に合わせて抑えて歌ったりという抑揚もつける。こうしたボーカルとしての表現力はこうした大会場でライブをやる上では重要な能力である。
波のたゆたうサウンドに導かれての「SLOW」、アコースティックの終わりはライブ後半戦の始まりであることを告げる「終わりのはじまり」と、計3曲をアコースティックで演奏したわけだが、カバーもあったとはいえ、WANIMAの曲はパンクアレンジではなく、こうした削ぎ落としまくったアレンジで聴いてもやはり本当に良い曲だと思える。それはきっと他の曲をこうしたアコースティックアレンジや弾き語りで聴いてもそう思うのは間違いないし、だからこそ自分は今活動しているバンドの中で最も良いメロディを書いているのはこのWANIMAだと本気で思っているし、こうしてライブでみんなが歌っているのを見ると、それは間違ってないと思える。
3人が客席の間を通って、アリーナから通路へ移動(VIVA LA ROCKで言うとメインステージのアリーナから他のステージに移動する通路のあたり)しつつ、健太は子供の観客に先ほどの藤原が使ったカンペをあげると、なぜかメンバーが拉致られたあげくに自衛隊よろしくな迷彩服を着せられ、訓練と称してアスレチックに連れて行かれたり、バンジージャンプをさせられたりという映像が流れる。藤原はバンジージャンプを1人だけめちゃくちゃ嫌がっていた。
映像が終わると3人が迷彩服を着てステージに戻るのだが、迷彩服をすぐさま破り捨てて、新しい衣装に。そんな笑える流れなのにもかかわらず、
「これからも、みんなとともに生きていきたいから!」
とここにいる全ての人の背中を押すように、去年の夏の一大アンセム「ともに」を演奏。駆け抜けるようなビートの中で歌われる、
「生きていれば… 命さえあれば…」
というフレーズにはいつもドキッとさせられる。彼らの地元の熊本では大きな地震があったし、その前には東日本大震災もあった。ともに生きていきたかった人でも、いきなりいなくなってしまうことがあるということ。ただ無責任に背中を押しまくるだけじゃなく、WANIMAの曲にはそうした喪失感を感じることで説得力が増すものが多い。
ステージ前方から火柱が上がりまくる、見た目も曲も熱い「リベンジ」からは「Hey yo…」でじっくりと健太の伸びやかなボーカルを聴かせ、SMAP「夜空ノムコウ」を歌ったかと思えばいきなり「1106」へ。「ともに」でも感じさせられた喪失感を最も感じさせる、健太がおじいちゃんを思って書いた曲。サウンドは激しめとはいえ、この曲の時はダイブをすることもなく、しっかりとみんな腕を上げながら曲に向き合う。曲だけでなく、この目の前の光景がより一層涙腺を刺激してくる。
しかしながらそんな感動的な場面を振り切るかのように、
「あれ?そろそろ、オドルヨルじゃない!?」
と終盤になり、もはや時間的にも夜ということでダンサブルな「オドルヨル」、歌詞はエロ方向に振り切っているのにキャッチーでしかないメロディの「いいから」と、ミラーボールの輝きがよく似合う2曲を続けると、
「みんなが昨日の夜から並んでくれてるのも知ってる!本当にありがとう!これからもWANIMAはみんなのことを応援してるけん!」
と観客に感謝の言葉とともに感謝の気持ちを曲でも伝える「THANX」で「歌え!」というまでもなく、最初から最後まで大合唱。もうこの曲とかは本当に音楽の教科書に載っててもおかしくないくらいの曲。自分が中学生で歌うのが恥ずかしいような年齢だったとしても、この曲だったら大きな声で歌いたくなるはず。
そしてラストにこれも感謝の歌である「For you」をまさに一人一人の心の中に届くように歌う。ロックスターではなく、まるで友達のように同じ目線で歌う健太であり、WANIMAだからこそこうした曲は聴き手の背中を押してくれる。そうした人間性が音楽に直結しているから、たとえ誰しもが歌えるような曲であっても、WANIMAの曲は健太が歌うのが最も説得力がある。
アンコールを待つ間、暗くなった会場の中に光るのは観客たちのスマホのライト。再登場したメンバーもその光のキレイさに驚きながら、その光を使ったウェーブをさせ、この会場だから見れる美しい瞬間を作り出してみせる。
すると重大発表があると言って藤原がドラムロールを鳴らすのだが、健太がもったいぶって全然言わず、3回目のドラムロールでようやく、5月にニューシングルをリリースすることを発表する。しかしながらリリース元はPIZZA OF DEATHではなく、ワーナーミュージック内のレーベル、unBORDEから。(きゃりーぱみゅぱみゅや高橋優、パスピエなどが所属するレーベル。ゲスの極み乙女。も所属していた。レーベル所属アーティストによるイベントもよく行われている)
そのレーベルが変わったことに関しては特に理由などは言わなかったが、[Alexandros]がUK PROJECTからユニバーサルに変わったように、さらに広いところに出るためという要素が大きい気がする。さすがに今後さらにデカくなってドームツアーでもやるようになったら(このままいけばやるようになる)、PIZZAではマネジメントしきれないだろうし。
そしてそのシングルに収録される新曲「CHARM」を披露。
「みんなのお守りになるような曲」
と健太が言った通り、卒業など別れの季節である今にぴったりな歌詞がビジョンに映し出される、実にWANIMAらしい曲。リリースこそ5月だが、これは今の時期に聴いたら、これからの生活を前向きに生きていける人もたくさんいるはず。
そして、「そういえばまだやってなかったな」と思った「TRACE」、年明けからauの三太郎のCMで大量オンエアされている「やってみよう」も演奏。さすがにあれだけCMで流れただけはあり、盛り上がりっぷりも合唱っぷりも他の曲と全く引けを取らないし、この歌詞はWANIMAだからだよなぁと思う。
そしてラストは
「はじまる ここから 旅立ちにいらない不安なら
まだまだ これから 笑い飛ばせない日がきたら」
というフレーズからはじまる「ここから」。ラストによく演奏される曲だが、はじまりの曲っぽいのにもかかわらず、いつも演奏されるのは最後。それはここからがまた新しいはじまりであり、さいたまスーパーアリーナのキャパに達しても、WANIMAの勢いはまだまだここからだとすら感じさせるから。
演奏が終わるとメンバーがバズーカでグッズを客席にぶっ放し、あらゆる方向に感謝を伝えながら、最後は写真撮影。元自衛隊員である光真の希望で敬礼バージョン、さらには3人がジャンプするバージョンも撮り、終演SEの「また逢える日まで」すらも大合唱が起きるという、最後まで笑顔と合唱に包まれた1日だった。懸念された時間も、なんやかんやで2時間半もやっていた。
ライブで周りの人が歌うのを嫌がる人も多いし、クリープハイプの尾崎世界観みたいに、自分の歌を聴いてほしいという人もいる。それもスタイルや楽しみ方として全く間違ってない。だがWANIMAはとにかく歌わせるし、健太が言わなくても観客は大合唱する。MONGOL800が「小さな恋のうた」をほとんど観客に歌わせるように、もうWANIMAの曲もWANIMAだけのものではなく、みんなの歌になっている。そしてその大合唱がどれだけ感動的な空間を生み出すかということをメンバーは絶対にわかっているはず。
パンクをきっかけに音楽に目覚めて、それからも人生の中で最も大切なバンドは自分の世代はGOING STEADYだったし、一つ上の世代はHi-STANDARDだっただろうし、さらに上はブルーハーツだっただろう。そして今、その系譜にいるのは間違いなくWANIMA。
でも、WANIMAはPIZZA OF DEATHのバンドでありながら、ハイスタみたいに周りのバンドを巻き込んでフェスをやってシーンを作り出すようなバンドではないし、(どちらかというとそれは同世代の仲間であり、好敵手のフォーリミの方が近い)ブルーハーツのように「ロクデナシ」を、GOING STEADYのように「童貞」を救うための曲は作っていない。むしろ毎日を戦っている全ての人に響く音楽を作っているから、これだけたくさんの人の支持をすでに得ている。
こうしてパンクバンドのライブをこれだけたくさんの人と見れて、みんなで歌えて、かつて見てきたパンクバンドたちが見せてくれたのを上回るくらいの素晴らしい景色が見れる。こんな最高なことはない。
1.Hey Lady
2.雨あがり
3.つづくもの
4.Japanese Pride
5.1CHANCE
6.エル
7.昨日の歌
8.夏の面影
9.BIG UP
10.切手のないおくりもの (アコースティック)
11.SLOW (アコースティック)
12.終わりのはじまり (アコースティック)
13.ともに
14.リベンジ
15.Hey yo…
16.1106
17.オドルヨル
18.いいから
19.THANX
20.For you
encore
21.CHARM (新曲)
22.TRACE
23.やってみよう
24.ここから
ともに
https://youtu.be/qag4ewos4TE
やってみよう
https://youtu.be/UzMamUEdlMI
Next→ 3/29 Base Ball Bear @Zepp Tokyo
