様々なフェスでおなじみの片平実を中心としたロックDJチーム、Getting Betterが20周年を迎え、恒例の周年記念ツアーとライブを開催。東京は新木場STUDIO COASTでバンドからこの日ならではの弾き語りコラボ、さらにはゲストDJと合計3ステージを使っての20周年に相応しい豪華版。
14:00~ パノラマパナマタウン [Getting Stage]
メインステージのGetting Stageのトップバッターは、今年の夏に様々なフェスに初出演した神戸の4人組バンド、パノラマパナマタウン。
先にボーカル岩渕以外の演奏陣が登場すると、黒い丸型サングラスをかけた浪越がギターをかき鳴らすと岩渕が走って登場し、
「ヒップホップはこういうノリ方(手を挙げて上下させる)をするんですよ!やっていただけますか!」
とヒップホップのノリ方を伝授し、まさにヒップホップの影響の強い言葉数の多い「世界最後になる歌は」でスタートするといきなり岩渕がガラガラ状態の客席に飛び降りてフロアを歩きながら歌い、フロアにある柵に立ち上がったりするなど、まだ人数は少ないながらもほとんどの人が初見であったであろうこの場の空気を完全に掌握。
自己紹介的な「パノラマパナマタウンのテーマ」ではヒップホップ要素の強い前半から後半で一気にギターロックに展開していく。「シェルター」でも岩渕の言葉数は非常に多く、ギターロックのフォーマットでありながらここまでヒップホップの影響を強く感じさせるのは珍しいが、それは田野(ベース)と田村(ドラム)のリズム隊のグルーヴによるものが大きい。それが勝手に体が踊り出してしまう要素になっている。
「今、僕は21歳なんですけど、Getting Betterは今年で20周年。生まれてからの年数が近いからこそ祝えることがあると思う」
と頼もしく語った岩渕。その若さからも今後のさらなる成長に期待したくなるし、ダンスロックバンドともギターロックバンドともヒップホップバンドとも言えないようなその独特のサウンドはどこか新世代感を感じさせる。もしかしたらこれから一気にさらにデカいところまで行くかも。
シェルター
https://youtu.be/CfXBKNejrVY
ライブとライブの転換の間にDJがあることにより、常に音が鳴り止まないのがGetting Betterならでは。Getting Betterレギュラー陣の中で最も若手の斎藤雄は「自分がGetting Betterに入るきっかけになった曲」と言ってThe Mirraz「CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい」を最初にかけ、ドラマ主題歌である星野源の曲では客席の女性が揃って逃げ恥ダンスを踊っていた。
14:55~ フレンズ [Getting Stage]
リハでブラックビスケッツ「タイミング」を演奏して世代を感じさせたのは、ベースがtelephonesの長島涼平、ドラムが元The Mirrazの関口塁、ギターが元HOLIDAYS OF SEVENTEENの三浦太郎、ボーカルが元THEラブ人間のおかもとえみと、nicotenのひろせひろせという、音楽好きなら誰かしらは一度は見たことがあるようなメンバーが集まって結成されたバンドである。
サングラスをかけたひろせひろせが
「今日は11月27日ですけどどうですか!?通信制限かかってますか!?僕はかかってます!昼ですけどダンスしましょう!」
と笑わせてから「夜にダンス」でスタート。それぞれのこれまでのメンバーのキャリアを全て足しても全くこういうサウンドになるのがイメージできない、アーバンな空気のポップソング。そこにはこんなにもボーカリストとして強い存在感と歌唱力を持っているとは思えなかった、おかもとえみによるものが大きい。(THEラブ人間在籍時もたまにボーカルをやっていたが、基本はベーシストだった)
さらにはミイラズ時代の直線的なドラムとは打って変って軽やかなリズムを紡ぐ関口塁、HOLIDAYS OF SEVENTEENとは全く異なるカッティングギターとハイトーンコーラスで曲にメロウさを与える三浦太郎、そして何よりtelephonesのように速い曲が全くないにもかかわらず、グルーヴの核となっている涼平のベース。もともと涼平はtelephones時代からtelephonesの踊れるサウンドの核を担っていたが、これだけ音楽性が違うにもかかわらずそこは変わらないあたりは改めて涼平の技術の高さと引き出しの多さを感じさせる。
お祝い担当大臣こと三浦が超ハイトーンボイスでGetting Betterにハッピーバースデーを贈ると、コール&レスポンスを経て披露された新曲はおかもとえみとひろせひろせの振り付けも楽しいカラフルなポップソング。基本的にこのバンドの曲には強いメッセージや自己主張はなく、ただこの場を楽しもうぜというものだが、それが良く現れた曲であると言える。
おかもとえみが噛んだことをバスケ部出身のひろせひろせが「口のトラベリング」と上手いこと言って爆笑を起こしたりと曲もMCもとにかく楽しく、メンバーも常に笑顔で演奏しており(ミイラズ時代の塁はこんなに笑顔で演奏するような男じゃなかった)、実に楽しい空間を作り出していたが、やはり涼平が石毛やノブと別々に出ているのはどこか寂しいな、と思っていたら、最後にはlovefilmとして出番を控えていた石毛輝が飛び入りでステージに登場してコーラスをするというサプライズ。
それぞれが前にやっていたバンドのイメージが強すぎるが故にかなりバンドとしてのハードルが高いが、そのハードルを横からすり抜けるように全く違う音楽性でシーンに打って出るフレンズ。ライブを見たのは初めてだったが、本当にいいバンドだと思う。
1.夜にダンス
2.DIVER
3.ビビビ
4.塩と砂糖
5.Love,ya!
ビビビ
https://youtu.be/SkQllxIM5ko
15:00~ 中村和彦 (9mm Parabellum Bullet) [RIGHTZZA TENT]
Getting Betterのイベントでは裏レギュラー的な位置でおはじみの存在となりつつある、9mm Parabellum Bulletの中村和彦。Primal Scream「ROCKS」から始まってひたすらに洋楽を深く掘っていく選曲。普段のメタル曲連発よりはロック寄りな選曲であったが。最後にはX JAPAN「Rusty Nail」をかけながら、
「次はかみじょうちひろです(笑)」
と嘘をつきながら、次のDJピエール中野に勝手に交代(笑)
16:00~ DJピエール中野 [RIGHTZZA TENT]
そうして中村和彦からバトンを渡された、ピエール中野。もはや凛として時雨のドラマーというよりも面白いDJの人というイメージになりつつあるが、「A.RA.SHI」からスタートすると観客に振り付けを踊らせながら、本人も熱唱。
仲間のバンドや自身が影響を受けたバンドなどもかけながら、J-POPの名曲もかけるあたりはこの男のリスナーとしての幅広さを物語っている。さらにはピコ太郎など流行りものも取り入れるが、「チョコレイト・ディスコ」では叫びすぎて声がひっくり返るというペース配分のできなさ(笑)
しかしながらPerfumeはすでにこの男のイメージになりつつあるし、ヤバイTシャツ屋さんが現在大ブレイクしているのはこの男がDJで毎回かけているからという後押しもあると思う。
「女々しくて」でも再びダンスを踊らせまくるなど、この日も「他人の曲で大盛り上がり」な状況を生み出しながら、最後にかけてのはBEAT CRUSADERS初期の名曲「EYES IN THE SKY」。もはやビークルの現役時代を知らない若い人も多くなってきている中、こうしてバンドの存在と曲を知って聴き始める人もきっといると思う。
1.A.RA.SHI / 嵐
2.Psychopolis / 9mm Parabellum Bullet
3.ジターバグ / ELLEGARDEN
4.SHAKE / SMAP
5.チョコレイト・ディスコ / Perfume
6.PPAP / ピコ太郎
7.Monkey Discooooooo / the telephones
8.良いDJ / キュウソネコカミ
9.あつまれ!パーティーピーポー / ヤバイTシャツ屋さん
10.女々しくて / ゴールデンボンバー
11.EYES IN THE SKY / BEAT CRUSADERS
16:40~ やついいちろう (エレキコミック) [RIGHTZZA TENT]
ダイノジとともにお笑い界の2大ロックDJとして君臨する、やついいちろう。片平実に20周年のお祝いをしながら、「ダイハツ!」とCMタイアップとして大量オンエア中のレキシ「きらきら武士」をかけたりしていたら、RADWIMPS「前前前世」をかけると突如として
「今回のCOUNTDOWN JAPAN、RADWIMPSと被ってるんだよ!今年のRADWIMPSとか無理でしょ!誰も勝てないよ!年末に今年最大の地獄だよ!今イェーイって言ってる奴らもどうせ見にこないんだろ!」
と嘆きながら、
「来世は東京のイケメン高校生に生まれ変わりたいー!」
とこの曲がテーマソングである映画「君の名は。」の名セリフを叫ぶ。
「いやー、やっぱり俺もRADWIMPS見たいな~!」
と言うとさらにRADWIMPS「ふたりごと」をかけ、
「良い曲だわ~」
としみじみしながら、レキシが手がけた自身のオリジナル曲「トロピカル源氏」をかけると全く盛り上がらない客席に
「本人の曲が1番盛り上がらないってどういうことだよ!」
と客席に怒りを向け、レミオロメン「粉雪」では「サビ前にやついと観客がディスり合いまくるもサビでみんなで大合唱」、「サビ前に観客がみんな帰ってしまうもサビになると一気に戻ってきてみんなで大合唱」というさすが芸人という全員参加のコントを演出。
やはりこの楽しさはさすがと言えるが、本人が懸念していたCDJでは果たしてどんな結果になるんだろうか。
1.うれしい!たのしい!大好き! / DREAMS COME TRUE
2.きらきら武士 / レキシ
3.前前前世 / RADWIMPS
4.ふたりごと / RADWIMPS
5.Ultra Soul / B'z
6.トロピカル源氏 / エレキシ (DJやついいちろう×レキシ)
7.粉雪 / レミオロメン
8.Good Time / Owl City & Carly Rae Jepsen
9.Sex On The Beach / SPANKERS
17:20~ ホリエアツシ × 村松徳一 [Better STAGE]
今回の目玉である弾き語りコラボ。まずはストレイテナーのホリエアツシと、岩手のシンガー村松徳一とのコラボ。
まずはホリエが1人で登場し、弾き語りで
「徳一が岩手の人なんで、岩手の空を思い描きながら書いた、ストレイテナーの曲を」
と言って弾き語りで「彩雲」、さらにホリエのソロプロジェクトであるentが1月にリリースする5年ぶりの新作から、
「失ってから初めて大事なものだった、って気づくってよくいうけど、大事なものっていうことに気づいた時になぜか悲しくなる、そんな曲」
と解説された「悲しみが生まれた場所」を披露。entはどちらかというと歌があまり入らないエレクトロニカ的なイメージが強いが、次の作品は逆にホリエの歌を前面に押し出したものになるということだろうか。
するといったんホリエと入れ替わりで村松徳一が登場。自身の持ち曲を天性とも言える綺麗な歌声と英語の発音を生かして披露。
「みんなでホリエさんを呼び込みましょう。本人も喜ぶと思うんで」
と言ってホリエをみんなで呼び込むと笑顔で走って登場するというテンションの高さ。
ここからは2人でボーカルを分け合う形で歌うのだが、ストレイテナーの「WHITE ROOM BLACK STAR」、村松徳一の「Song for」を歌うと、ホリエが帰ろうとするのを村松が
「いやいや!もう1曲あるから!(笑)」
と制して、もう1曲あるのをすっかり忘れていたホリエとともに「ROCKSTEADY」。なんでよりによってこの曲をやるのを忘れていたんだ?という感じしかしないが、ホリエも実に楽しそうだったし、ホリエと一緒にライブをやることで村松徳一という本当に歌が上手いシンガーの存在をしっかりと客席にいた人たちに知らしめることになった。
1.彩雲
2.悲しみが生まれた場所 (entの新曲)
3.WHITE ROOM BLACK STAR
4.Song for (村松徳一の曲)
5.ROCKSTEADY
ROCKSTEADY
https://youtu.be/QmmGPDzVvys
17:55~ avengers in sci-fi [Getting Stage]
リハの段階から轟音でサウンドチェックを行っていた、avengers in sci-fi。ライブを見るのはやや久しぶりだが、また一段と機材が増えたように見える。そのせいかかなりサウンドチェックに時間がかかってもいたが。
かつてはthe telephonesらとともに高速ダンスロックバンドという見られ方をしていたが、シーン全体がそういう方向にシフトしていくにつれてバンド自身はそうした音楽性から遠ざかり、ネットの発達を揶揄するかのような歌詞の1曲目の「No Pain, No Youth」から、グランジバンドのような木幡太郎の轟音ギターが会場を支配する。もはや耳が痛いくらいの轟音かつ爆音っぷりである。
バンド最初期からの代表曲である「NAYUTANIZED」では木幡が華麗なステップで踊りながら演奏し、曲後半ではDaft Punkの「One More Time」をミックスし、ヴォコーダー越しに「片平実」という単語を発したりして、Getting Betterの20周年をこのバンドなりのやり方で祝う。
このバンドを人力バンドたらしめているエンジンである超人ドラマー長谷川正法がデジドラでパーカッションの音を連打する「Tokyo Techtonix」から、
「Getting Better20周年おめでとうございます。Getting Betterにロックな曲を捧げます」
と木幡が言って演奏されたのは、最新アルバムのタイトルチューンである「Dune」。轟音ギターがディストピアな風景を描き出し、ライブならではのバンドのセッション的な演奏を繰り広げてから
「バージョンアップしてパーティー謳歌しろ」
とこのパーティーのために鳴らされたかのような「Citizen Song」で終了。
かつてのこのバンドが持っていた曲の即効性はもはや全くと言っていいくらいになくなるほどに音楽性は深化した。だからこそもはやこういうフェスやイベントの30分くらいの時間では真価が伝わらないような気もする。もともとアルバムではコンセプチュアルな作品を作ってきたバンドでもあるので、やはりある程度は曲の振れ幅が持てるような時間でライブを見たくなる。
1.No Pain, No Youth
2.NAYUTANIZED
3.Tokyo Techtonix
4.Dune
5.Citizen Song
Dune
https://youtu.be/9FbLu6jN0Is
18:30~ 木下理樹(ART-SCHOOL) × 小林祐介(THE NOVEMBERS) [Better STAGE]
続いての弾き語りコラボはロック界の暗黒王子同士の組み合わせ。ともに椅子に座っての弾き語りをするタイプなだけに準備しているところも見づらい中、特になんの前触れも挨拶もなくいきなり小林が歌い始めるという形でスタート。この2人はともにギターを弾き、持ち曲は本人が歌い、もう1人はギター&コーラスというスタイル。
THE NOVEMBERSの「あなたを愛したい」もART-SCHOOLの「フリージア」も弾き語りで聴くとより幽玄さが際立つ中、小林に言わされるような形で木下が
「Getting Better20周年おめでとうございます。片平くん、これからも友達でいてください(笑)」
と、友達が少ない人ならではの祝いコメント。ちなみにこの2人と片平実の3人で飲んでいる時に木下が
「音で空間を振動させるっていう意味では、僕らバンドもDJも同じ存在」
という名言を残したことを小林が語るが、言ったはずの木下は全くそのことを覚えていないというまさかの事態に小林も動揺を隠せない。
そんな似ているようで人間性はあまり似ていない2人だが、最も異なるのは歌唱力。小林が片平実が好きな曲だという「Misstopia」でファルセットも使った美しい歌声で会場を神聖な空気で包むと、木下はART-SCHOOLのライブでおなじみの「SWAN SONG」でいつにも増して声が出ていなかった。まぁそれも慣れたものだし、それも木下らしいのだが。
1.あなたを愛したい
2.フリージア
3.Misstopia
4.SWAN SONG
Misstopia
https://youtu.be/mStdR4BujZQ
フリージア
https://youtu.be/AKGjQHKiW8c
19:05~ lovefilm [Getting STAGE]
先日、ワンマンツアーファイナルを終えたばかりのlovefilm。すでに石毛はこの日、telephonesのメンバーである涼平のいるフレンズのライブに飛び入りしている。
もはやおなじみのSEでメンバーが登場すると、1曲目から新曲。先日のワンマンでも新曲をガンガンやっていたが、その中の1曲で江夏詩織がメインボーカルのラブソングの曲。しかしサウンドチェック中から江夏はあまり他の音が聞こえないとスタッフに言っていたが、先日のワンマンに比べるとややボーカルが小さめなように感じた。
2曲目も新曲だが、こちらは夏フェスからすでにやっていた曲というのもあり、かなり聴き馴染んできた感じもするし、バンドも演奏するのに慣れているイメージ。相変わらずタイトルはわからないが。
さらに新曲は続き、同期を使った浮遊感のある曲、石毛がメインボーカルのロマンチックな曲、そして曲中で劇的な展開を見せる曲と、結果的にはワンマンで披露した新曲5曲をすべてやるというセトリになった。それについては石毛が、
「俺とノブはGetting Betterとは10年近くの付き合いになるんだけど、新曲作ってて行き詰まったりした時にGetting Betterに遊びに行って、いろいろ話して意見をもらったりして」
と説明し、最後にはこの日唯一の既発曲である「Kiss」を演奏。やはり新曲に比べると演奏も歌も慣れているだけに、出来という意味ではこの曲が1番良かったが、初ライブから半年ちょっとでバンドはすでに新たなフェーズに突入していることを示した。果たして年末にかけてのフェスではどんなセトリで挑んでくるのか。
1.新曲
2.新曲
3.新曲
4.新曲
5.新曲
6.Kiss
Kiss
https://youtu.be/YsopBGIO2Bg
19:40~ 佐々木亮介(a flood of circle) × 氏原ワタル(DOES) × 小林要司(Large House Satisfaction) [Better STAGE]
この日の弾き語りコラボのラストを飾るのは、a flood of circle、DOES、Large House Satisfactionという日本のロックンロールを引っ張ってきた3バンドのボーカルたちのコラボ。
lovefilmのライブが終わってすぐさま3人がステージに現れると、こちらも椅子に座っての弾き語りというスタイルで、ワタルが
「佐々木亮介、すでに日本酒を5杯も飲んでいます(笑)」
といつもより亮介が顔が赤くなっている理由を明かすと、3人が一斉にギターを弾き始め、ボブ・ディランの「風に吹かれて」を要司→亮介→ワタルの順番で歌う。ちなみに要司と亮介は海外のアーティストの曲をカバーする時は日本語にしてから歌うので、ワタルだけ原曲の英語で歌うことに。そのワタルは被っているハットの両サイドから長い髪が見えており、どことなくボブ・ディランに似ているように見える。
するとここからは3人のうちの2人が一緒に歌うというスタイルに。まずは亮介と要司。要司が亮介がすでに飲みまくっていることにツッコミを入れながら、片平実のリクエストによりa flood of circle「Boy」を弾き語りコラボ。もともと非常に近い立ち位置にいる両バンドなだけに、要司がフラッドの曲を歌うのも全く違和感がない。
次はワタルと要司。しかしワタルもビールを飲み始め、まだ飲んでいない要司は呆れ顔。ここも片平実のリクエストによりLarge House Satisfactionの「phantom」をやろうとするのだが、
「弾き語りでできっこない曲をリクエストしてきやがったけど、ワタル先生が華麗なアレンジをしてくれました」
と言うように要司はタンバリンを叩きながら歌い、ワタルのどこかスパニッシュな要素も感じさせるギターのアレンジで見事に弾き語り対応に。すると亮介が要司の兄である賢司(すでに飲みまくっている)をステージに引っ張り出し、コーラス部分では賢司が観客を煽りまくる。出演者じゃないのに実に楽しそうである。
そして要司もビールを手にすると、今度はワタルと亮介。ワタルが最近キックボクシングの入場曲を作ったりしていることを告知しながら、
ワタル「この2人は骨格が似てるからね。兄弟説が出てるくらいに。でも母親は違いますからね(笑)」
亮介「なんか父親は同じみたいに聞こえるんですけど(笑)」
ワタル「あとは綾野剛君にも似てるって言われるよね。この間一緒に飲んだんだけど」
亮介「マジですか。芸能人じゃないですか」
と酔っ払いトークをしながら歌い始めたのはDOES「世界の果て」。DOESは先日無期限活動休止となっただけに、こうしてDOESの曲を歌うワタルの姿を見れるのもこれからは貴重な機会になってしまうのかもしれない。本人は新しいバンドをやると言っているが、そこでDOESの曲をやるかどうかはまだわからないし。
しかしDOESといえばやはり「修羅」「曇天」「バクチダンサー」というアニメタイアップの大ヒット曲を真っ先に思い浮かべがちだが、こうして弾き語りでできるようなタイプの曲ももっと評価されて欲しかったと思う。実際、詩人としてのワタルの才はこうした曲の方が感じられる。
そして最後は3人で、
ワタル「さっき世界の果てっていう曲をやったことだし…」
亮介「この前、今からやる曲を作った人が「もっとカバーしてくれよ~」ってベロンベロンになりながら言ってましたよ(笑)」
というやり取りを経て、ミッシェル・ガン・エレファント「世界の終わり」のカバー。ボーカルだけでなくアベフトシが弾いていたリフも3人が弾き分け、ステージには賢司はもちろん、片平実もエアギター要員として登場。
やはりこの曲は日本のロックンロール史で最も重要な曲であると実感するのは、今に至るまでロックンロールシーンの最前線を走る3組のバンドの最も大きなルーツであるから。
あまりに息がぴったり合いすぎなこの先輩と後輩のコラボ。この日だけというのが勿体なさすぎるくらいに楽しいかつ素晴らしかっただけに、またこのコラボが見れる日が来るのを、「待ち焦がれている」。
1.風に吹かれて (ボブ・ディランのカバー)
2.Boy (亮介&要司)
3.phantom (要司&ワタル)
4. 世界の果て (ワタル&亮介)
5. 世界の終わり (ミッシェルのカバー)
世界の終わり
https://youtu.be/PImjio4EPgw
20:15~ Garas [Getting STAGE]
今回の出演者の中でも最もGetting Betterらしいというか、Getting BetterじゃなきゃありえないアクトがこのGaras。片平実のオリジナル曲のためのプロジェクトである。
元はOCEANLANEの武井創をボーカルとしていたが、今回はボーカルにasobiusの甲斐一斗、ドラムにLITEの山本晃紀をレギュラーメンバーとし、最初の曲ではavengers in sci-fiの木幡太郎が、ギターレスの2曲目を挟んだ3曲目ではホリエアツシとlovefilmの石毛輝がギターを弾くという、まさにGetting Betterでないと集結しないメンバーによるバンドになっている。
ボーカルが甲斐なのでやはり歌は壮大かつ神聖な空気を帯び、木幡のスペーシーなギターにDJまでも入れたサウンドに実によく似合う。英語なのもまた甲斐のボーカルを引き立てている。
片平実はまさかのアコギでの参加となっていたが、ベーシストがいないだけに曲の骨格となる山本のドラムの凄さが非常によくわかる。歌のないバンドLITEで叩いてるだけあり、上手いだけでなく、ドラムパッドなど様々な機材を使い、曲の表現力も実に豊か。
石毛とホリエが同じステージでギターを弾いているというのもたまらないものがあるが(あくまで目立ちすぎないようなギターに徹していた)、最後にはここまでアコギを弾いていた片平実がボーカルに。DJとドラムだけというシンプルな編成で英語の発音も良くて普通に歌が上手い(さすがに甲斐とは比べられないが)ボーカルを披露すると、甲斐、木幡、石毛、ホリエに加えて手拍子要員としてピエール中野までがステージに集結し、もはやこれでイベントが終わるんじゃないかというくらいの大団円的な雰囲気になった。
Garas
https://youtu.be/Hjqr5HhUMPQ
20:40~ 片平実 [Better STAGE]
Garasでのライブを終えたばかりの片平実、すぐさま隣のステージのDJブースに移動。ビール片手に現在のロックシーン最強のキラーチューンを畳み掛けていき、「Kick&Spin」をかけた際には
「[Alexandros]、お花贈ってくれてありがとうー!」
と仲間への感謝とその仲間が作った音楽へのリスペクトは忘れない。
しかしながらここまででイベント全体が30分ほど押していたため、おそらくかなり曲数を減らして調整したであろうことがわかるくらいの短い時間(基本的にミックス仕様だから1曲あたりの時間もフル尺ではないし)になってしまっていたのはちょっと残念だった。Hi-STANDARD「STAY GOLD」の盛り上がりっぷりはやはりすごいものがあったが。
1.アルクアラウンド / サカナクション
2.Kick&Spin / [Alexandros]
3.恋のメガラバ / マキシマム ザ ホルモン
4.百合の咲く場所で / Dragon Ash
5.goes on / 10-FEET
6.STAY GOLD / Hi-STANDARD
21:20~ PENPALS [Getting STAGE]
そして主催の片平実の後にこの日のトリを務めるのは、PENPALS。COUNTDOWN JAPAN 05/06のGALAXY STAGEのトリを最後に解散するも、2011年に復活。その後は各メンバーそれぞれの活動と並行しながらマイペースに活動している。
3人全員がキャップを被った、キッズそのままのようなスタイルで登場すると、林宗應(ベース&ボーカル)がメインボーカルの代表曲「TELL ME WHY」でスタートし、「AMERICAMAN」以降の曲もまるで初期のベスト盤みたいなセトリ。林はぴょんぴょん飛び跳ねながらベースを弾き、泣きのメロディを奏でる上条盛也(ギター&ボーカル)と曲によってボーカルをスイッチ。結成から20年経つが、林のちょっと気だるいボーカルと盛也の爽やかなボーカルの対比という構図は変わらない。
そしてPENPALSはサウンドは歴史を重ねるごとに変遷を重ねてきたが、初期の曲ばかりだったこの日は本当にパンクだった。むしろ20年近く前の音源よりもメンバー全員が40代になった今の方がはるかにパンク。それによってこのバンドのライブを待ち望んでいたファンは続々と最前ブロックに突入して、後半には客席にかなり隙間があるにもかかわらず無理矢理ダイブするような観客も出現する。
「今日は40分の持ち時間で何曲できるかという挑戦」
と林が言ったようにMCを殆ど挟まずに名曲を連発したことにより、この日はここまでは全くと言っていいほどになかった汗の匂いが会場に充満していくと、終盤には
「俺たち20年…正確には今年で21年目なんだけど、そういうお祝いみたいなことはなんもやらなかった。だから今日、Getting Betterと一緒にお祝いできたらいいな、って思ったんだよね」
と片平実が「1度は断られた」と言っていたこの日のライブに出演しようとした理由を林が語るも、客席からは
「はやく曲やれよー!」
というヤジが飛ぶ。その声の主はLarge House Satisfactionの小林賢司で、賢司はライブ中に普通にモッシュピットの中で笑顔でライブを楽しんでいた。本当に好きなバンドだからこそもっとたくさん曲を聴きたいという愛あるヤジ。(実際、メンバー同士は知り合いである)
「Days Gone By」「LOVE SONG」という日本語歌詞の名曲も披露すると、最後は上条欣也の4つ打ちのリズムから始まった「MORE FUN?」で観客を飛び跳ねさせ、まるでこのパーティーのテーマソングのように鳴らされていた。
解散前の4人編成とは異なる、オリジナルメンバーでのシンプルなスリーピースのパンク、ロック。だからこそメロディの良さが際立っていたが、かつてのキッズのようだったメンバーの顔はすっかりおじさんになっていた。でも一度音を鳴らせば、メンバーもファンも少年のようにキラキラしていた。いつまで経っても大人になりきれないような人たちで溢れた空間だった。
あまりガンガン活動するようなタイプのバンドではなくなっているが、ライブを見たら04 Limited SazabysやSHANKのライブに行っているような若い人たちにも響くような気がする。かつてはアジカンのメンバーもこのバンドからの多大な影響を公言していたし、こうしてまた活動してるんだからもうちょっと評価されて欲しいと思う。
1.TELL ME WHY
2.AMERICAMAN
3.70 TIMES
4.ASTRO MOTEL
5.CARS
6.LONELY DAYS
7.I wanna know
8.RIGHT NOW
9.Jumpin' The Gun
10.No R&R RADIO
11.Days Gone By
12.LOVE SONG
13.MORE FUN?
MORE FUN?
https://youtu.be/hkQamvIlgiI
この日の出演者はPENPALS以外は若手バンドばかり。豪華さという面では例年とは違うし、COASTの規模的には正直、集客は厳しかった。でも出演したバンドのライブやDJのかける曲に触れて、来た人が昨日までより少しでも好きな音楽が増えるのがGetting Betterが1番嬉しいことだろうと考えるとこのラインアップは決して間違いじゃなかった。実際、やっぱり常にどこかでいろんな音楽が鳴っている空間は他の何よりも楽しい。
「20年もこんなパーティーやり続けてるとか本当にイかれてる(笑)」(佐々木亮介)
そのイかれた人たちのパーティーがこれから先もずっと続いてたら、ずっとこうして足を運んで楽しんでいたい。
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