NICO Touches the Walls 1125/2016 @赤坂BLITZ 11/25
- 2016/11/26
- 00:31
11月25日はイイニコの日、ということでこの日はNICO Touches the Wallsのスペシャルライブの日である。かつてのこのイイニコの日にはカップリングのレア曲を連発したりというその日ならではのライブを見せてくれたが、今年はインディーズ時代の通称青盤こと「Wall Is Beginnig」、赤盤こと「ranova × handover」を軸にしたライブであることが事前に発表され、リリース当時は定番曲だった曲たちを久しぶりに聴ける貴重な機会に。
近年は武道館クラスが当たり前という規模のバンドになっているため、今回の会場の赤坂BLITZは今のバンドの状況からするとかなり小さめと言える。そのため、チケットを取れない人も多数おり、会場の中も入りきれないくらいに人で溢れ、ロッカーは全て使用中、普段は閉まっている会場最後方の扉を開けるという状態になっており、この日の特別なライブへの期待感で溢れていると言っていい。
渋めのBGMが会場に流れる中、場内が薄暗くなるとやはり渋めのSE(基本的にこのバンドはSEを使わないことが多い)が流れると、いたってラフな出で立ちのメンバーが登場。光村が
「ようこそ!」
と一言挨拶すると、
「夜明け前を彷徨い行く その足は
幻でも夢遊でもなく 震えてる」
と歌い上げてから始まる、インディーズ期はオープニングナンバーとしておなじみだった「行方」からスタート。近年のフェスなどでのシングル曲連発的なセトリからは正反対だが、腕が上がることもないどころか微動だにしないくらいの客席の様子は当時を思い出させて実に懐かしく感じる。自分が初めてこのバンドのライブを見た2006年の青盤リリース直後のライブもこの曲からスタートしていた。
続いては「ranova × handover」から、初武道館ワンマンで最後に演奏され、バンド名にタイトルが入っていることから初期のバンドのテーマソング的な役割を果たしてきた「壁」。
「ありふれた毎日を その壁は変える」
というフレーズは今となってはまさにNICO Touches the Wallsに出会って少なからず人生が変わったこの場所にいた人々のために響くが、当時は(CDでも)この曲をかなり無理して声を張り上げるように歌っていた光村はもはや易々と歌えるくらいに歌唱力が格段に向上している。ある意味ではこの光村の歌唱力が当時のインディーズバンドから何万人もの人の前でライブができるようになった最大の大衆性と言えるかもしれない。
「今日はインディーズ時代の2枚のミニアルバムの曲を次々に演奏していきますんで、普段のあの曲やこの曲はもちろんやらないと(笑)」
と光村が普段のライブとは全く違う内容になることを告げて歓声が上がると、初期からバンドの必殺バラードであった「梨の花」。当時とは格段に増したバンドの表現力はこの曲をどこか慈悲深さすら感じさせるようになったが、まだこの曲が収録された赤盤が発売される前にこの曲をライブで聴いた時、わざわざ「梨の花」なんてタイトルの曲を作るということは千葉県北西部のバンドに違いないと思ったらやはりその通りだったため、それから今に至るまでより一層この曲に感情移入していくことになった。
光村がアコギに持ち替えて「僕がいなくても地球はまわってる」を歌い始めると、光村がまさかの歌詞が飛ぶという珍しい事態になり、演奏をストップさせる。対馬のドラムセットに4人で集まって何やら会議すると(歌詞を他のメンバーに聞いていたのだろうか)、
「1分前に時間を戻します(笑)」
と言って最初からやり直す。基本的に全く盛り上がることのない曲を続けているためにどこかいつもとは違う緊張感を感じてしまうが、このアクシデントによって、ステージも客席も少しリラックスしたような雰囲気に。
それでもその次に演奏されたのが「幾那由他の砂に成る」というシリアスな曲なだけにすぐに再び緊張感に包まれた中で演奏された「プレイヤ」が素晴らしかった。古村の幻想的なサウンドのギターと対馬の力を込めずに各セットを叩くドラムのリズムが圧倒的な陶酔感を与えてくれる。
そんな中で光村が当時を振り返り、
「この当時はやたら渋いバンドに対バンを申し込まれてたから、なんでだろうなぁって思ってたけど、今はその理由がわかる(笑)
でも当時はこれで100万枚売ってやろうって思ってたからね(笑)」
と笑わせると、古村も
「確かに「梨の花」が出た時とかは言ってた。怖いもの知らずだったよねぇ」
と当時から変わらぬメンバーで同じ時間を共有してきたバンドだからこその相槌を打つ。
そんな100万枚売ろうとしていた中に「病気」「3年目の頭痛薬」のような、通常のポップフォーマットからは逸れまくった曲ばかり入っているのだから当時のメンバーは本当に怖いもの知らずだったのだろう。実際、このあたりの曲をフェスのステージでやれるようになった時も緊張感を全く感じさせないバンドだったし、ひたすらに自分たちの音楽を追求しているように見えた。
しかし今、10年の経験を積んで演奏されるとやはり全くサウンドが違う。このあたりの曲をメンバーが笑顔で余裕を持って演奏している姿など当時は想像だにしなかった。変な曲ばかりやっていたように見えて、近年の曲から比べるとかなりシンプルな(あくまで近年と比べると)、音の隙間の多いアレンジであることも改めてよくわかる。
アウトロでその成長したバンドのアンサンブルを存分に見せつけるようなセッションを展開すると、残響音を残したまま、赤盤リリース時にテレビ東京の音楽ランキング番組「JAPAN COUNTDOWN」(今でこそ日曜の朝に放送しているが、当時は土曜の深夜だった)のテーマソングに使われていた、「アボガド」の強靭なギターリフに変わり、大きな歓声とともにようやくここから客席からは腕が上がり始め、空気が一変。曲中の光村の語りのようなパートでは
「阪神戦が延長して…」
というフレーズに合わせて光村が実にキレイなフォームでスイングしてみせ、
「10年前は野球中継が延長してよくドラマの放送が繰り越しになってました。今は全くそんなことがないんで、若い人は何を言ってるのかわからないでしょう。時代の流れを感じます(笑)
渡る世間は鬼ばかりも終わり、えなりかずきもすっかりバラエティタレントになりました。時代の流れを感じます(笑)」
と2016年の「アボガド」だからこその語りを入れてから対馬のため息を合図に再び演奏へ突入していく。
そこからは初期のキラーチューンが続く。当時からバンドの不穏なグルーヴを最大限に発揮していた「そのTAXI,160km/h」では演奏する姿がコマ切れに見えるかのような照明の中、現在の技術を総結集したかのような極限のバンドアンサンブルと演奏力を見せつけ、「泥んこドビー」では爽やかなギターロックを鳴らしたかと思いきや、突如として光村がハンドマイクになって「転がせろ」のフレーズのコール&レスポンスを行い、
「俺を転がせろ」
と言うとなんとそのまま客席に突入して、まさに観客の上を転がっていく。客席中央と向かって右側に突入し、右側に突入した際には古村も最前列の柵に足をかける。この距離の近さもまたイイニコの日ならではのものだろうか。
「赤坂まだまだ行けますかー!」
と光村が観客に問いかけてこの場所に捧げるように演奏されたのは、会場の近くにある「一ツ木通り」が歌詞に登場する「image training」。インディーズ時代最大のキラーチューンであった曲だが、それは10年経っても変わることはない。このキャッチーさはある意味では今のバンドに最も近い曲というか、この曲の延長線上に今のバンドがあるというか。
青盤と赤盤はともにミニアルバムなためにやっていない曲はあと1曲だけ。なのでこの後はどうなるのかとも思ったが、やはり次で曲で最後の曲というライブの短さに客席から驚きの声が上がる中、光村がギターを爪弾きながら歌い始めたのは「雨のブルース」。今でもたまにライブで演奏されることもあるが、寒いなりにも天気が良かったこの日でさえ、この曲が鳴っている間は雨が降っているかのよう。
「幸せになろう 誰より幸せに」
という光村の優しさすら感じるボーカルが染み渡るように会場に響いた。
アンコールではメンバーが全員この日のライブTシャツに着替えて再登場し、春の大阪城ホールでのワンマンライブが映像化すること、2月から全国ツアー(今回のツアーでバンドは全都道府県でワンマンを行うことになる)が始まることなどの発表をしてこの日集まった観客を喜ばせると、観客の手拍子とともにいよいよ来週に発売が迫った(夏フェスの時点からライブではやっていただけに一層長く感じる)新曲「マシ・マシ」で初期と最新系を一直線につないで見せる。光村も口にしていたが、やはり曲のスタイルが全く違うというか、この曲からは初期の曲のような暗さは全く感じない。それは当然といえば当然で、おそらく初期の曲を作った10代の頃の光村少年にはまだこうして自分たちの作った音楽を聴いてくれる人の顔が見えていなかった。だからひたすらに己の内面をそのまま音楽にしていた。でも今30代になった光村とこのバンドは本当にたくさんの人に愛され、音楽を鳴らすのを望まれている。それがわかった今、こうして開いた曲が増えてくるのは当たり前である。
そして最後の最後に演奏されたのは、古村の力強いリフから始まる、この11月25日にしか聴けない曲「1125のテーマ」。歌詞を「赤坂サカス」に変えたりして「2016年の1125の日」をさらに感じさせてくれるアレンジを見せるが、やはりこの曲はこの日にしか聴けないのはもったいなさ過ぎるくらいに今のNICOのライブの楽しさが詰まった曲なだけに、音源化は無理にしてもライブそのものをフル尺で映像化していただきたいと思わざるを得ない。
演奏が終わるとピックをばら撒いたりしながら、
「またツアーと来年の1125の日に会おうぜ!」
と言ってステージを去っていった。果たして来年はどんなコンセプトのライブを見せてくれるのか。もはや11月25日は何があろうとスケジュールをキープするしかない。
メジャーで長いこと活動してるバンドのインディーズ期の曲を中心にしたライブというとどうしても懐かしさばかりになってしまいがちだが、当時より格段に進化した今の技術と表現力により、回顧と最新が同居するライブとなった。それができるNICO Touches the Wallsは本当にすごいバンドだと、もう何度思わされたかわからないくらいだけど改めて思う。
しかし、00年代後半に同時期にデビューしてこの年代を引っ張ってきた存在である、レーベルメイトで仲の良いチャットモンチー、同じ千葉の高校のバンドであるBase Ball Bear、ボーカル同士が同い年のRADWIMPS 、ともにスペシャ列伝ツアーを廻った9mm Parabellum Bulletらがそれぞれ新しいバンドの形を構築せざるを得ない状況になっている。彼らが共通していたのは、「あのメンバーじゃなくなった時はバンドが終わる時だ」と思うくらいにプレイヤーとしても人間のキャラとしても代わりのきかない存在のメンバーだけで成り立っていたバンドだということ。しかしそれでも彼らは今なお試行錯誤を繰り返しながらバンドを続けている。
そんな中でNICOは10年経っても同じメンバーで続いてる。そんな一見当たり前のように見えることがどれだけ特別で難しいことか…。できれば、10年後もこうして笑い合いながらインディーズ時代の曲を演奏する4人の姿を見ていたい。これまで、お互いにそうやって歳を重ねてきたんだから。
1.行方
2.壁
3.梨の花
4.僕がいなくても地球はまわってる
5.幾那由他の砂に成る
6.プレイヤ
7.病気
8.3年目の頭痛薬
9.アボガド
10.そのTAXI,160km/h
11.泥んこドビー
12.image training
13.雨のブルース
encore
14.マシ・マシ
15.1125のテーマ
マシ・マシ
https://youtu.be/RWyno0gXd7E
Next→ 11/27 Getting Better @新木場STUDIO COAST
近年は武道館クラスが当たり前という規模のバンドになっているため、今回の会場の赤坂BLITZは今のバンドの状況からするとかなり小さめと言える。そのため、チケットを取れない人も多数おり、会場の中も入りきれないくらいに人で溢れ、ロッカーは全て使用中、普段は閉まっている会場最後方の扉を開けるという状態になっており、この日の特別なライブへの期待感で溢れていると言っていい。
渋めのBGMが会場に流れる中、場内が薄暗くなるとやはり渋めのSE(基本的にこのバンドはSEを使わないことが多い)が流れると、いたってラフな出で立ちのメンバーが登場。光村が
「ようこそ!」
と一言挨拶すると、
「夜明け前を彷徨い行く その足は
幻でも夢遊でもなく 震えてる」
と歌い上げてから始まる、インディーズ期はオープニングナンバーとしておなじみだった「行方」からスタート。近年のフェスなどでのシングル曲連発的なセトリからは正反対だが、腕が上がることもないどころか微動だにしないくらいの客席の様子は当時を思い出させて実に懐かしく感じる。自分が初めてこのバンドのライブを見た2006年の青盤リリース直後のライブもこの曲からスタートしていた。
続いては「ranova × handover」から、初武道館ワンマンで最後に演奏され、バンド名にタイトルが入っていることから初期のバンドのテーマソング的な役割を果たしてきた「壁」。
「ありふれた毎日を その壁は変える」
というフレーズは今となってはまさにNICO Touches the Wallsに出会って少なからず人生が変わったこの場所にいた人々のために響くが、当時は(CDでも)この曲をかなり無理して声を張り上げるように歌っていた光村はもはや易々と歌えるくらいに歌唱力が格段に向上している。ある意味ではこの光村の歌唱力が当時のインディーズバンドから何万人もの人の前でライブができるようになった最大の大衆性と言えるかもしれない。
「今日はインディーズ時代の2枚のミニアルバムの曲を次々に演奏していきますんで、普段のあの曲やこの曲はもちろんやらないと(笑)」
と光村が普段のライブとは全く違う内容になることを告げて歓声が上がると、初期からバンドの必殺バラードであった「梨の花」。当時とは格段に増したバンドの表現力はこの曲をどこか慈悲深さすら感じさせるようになったが、まだこの曲が収録された赤盤が発売される前にこの曲をライブで聴いた時、わざわざ「梨の花」なんてタイトルの曲を作るということは千葉県北西部のバンドに違いないと思ったらやはりその通りだったため、それから今に至るまでより一層この曲に感情移入していくことになった。
光村がアコギに持ち替えて「僕がいなくても地球はまわってる」を歌い始めると、光村がまさかの歌詞が飛ぶという珍しい事態になり、演奏をストップさせる。対馬のドラムセットに4人で集まって何やら会議すると(歌詞を他のメンバーに聞いていたのだろうか)、
「1分前に時間を戻します(笑)」
と言って最初からやり直す。基本的に全く盛り上がることのない曲を続けているためにどこかいつもとは違う緊張感を感じてしまうが、このアクシデントによって、ステージも客席も少しリラックスしたような雰囲気に。
それでもその次に演奏されたのが「幾那由他の砂に成る」というシリアスな曲なだけにすぐに再び緊張感に包まれた中で演奏された「プレイヤ」が素晴らしかった。古村の幻想的なサウンドのギターと対馬の力を込めずに各セットを叩くドラムのリズムが圧倒的な陶酔感を与えてくれる。
そんな中で光村が当時を振り返り、
「この当時はやたら渋いバンドに対バンを申し込まれてたから、なんでだろうなぁって思ってたけど、今はその理由がわかる(笑)
でも当時はこれで100万枚売ってやろうって思ってたからね(笑)」
と笑わせると、古村も
「確かに「梨の花」が出た時とかは言ってた。怖いもの知らずだったよねぇ」
と当時から変わらぬメンバーで同じ時間を共有してきたバンドだからこその相槌を打つ。
そんな100万枚売ろうとしていた中に「病気」「3年目の頭痛薬」のような、通常のポップフォーマットからは逸れまくった曲ばかり入っているのだから当時のメンバーは本当に怖いもの知らずだったのだろう。実際、このあたりの曲をフェスのステージでやれるようになった時も緊張感を全く感じさせないバンドだったし、ひたすらに自分たちの音楽を追求しているように見えた。
しかし今、10年の経験を積んで演奏されるとやはり全くサウンドが違う。このあたりの曲をメンバーが笑顔で余裕を持って演奏している姿など当時は想像だにしなかった。変な曲ばかりやっていたように見えて、近年の曲から比べるとかなりシンプルな(あくまで近年と比べると)、音の隙間の多いアレンジであることも改めてよくわかる。
アウトロでその成長したバンドのアンサンブルを存分に見せつけるようなセッションを展開すると、残響音を残したまま、赤盤リリース時にテレビ東京の音楽ランキング番組「JAPAN COUNTDOWN」(今でこそ日曜の朝に放送しているが、当時は土曜の深夜だった)のテーマソングに使われていた、「アボガド」の強靭なギターリフに変わり、大きな歓声とともにようやくここから客席からは腕が上がり始め、空気が一変。曲中の光村の語りのようなパートでは
「阪神戦が延長して…」
というフレーズに合わせて光村が実にキレイなフォームでスイングしてみせ、
「10年前は野球中継が延長してよくドラマの放送が繰り越しになってました。今は全くそんなことがないんで、若い人は何を言ってるのかわからないでしょう。時代の流れを感じます(笑)
渡る世間は鬼ばかりも終わり、えなりかずきもすっかりバラエティタレントになりました。時代の流れを感じます(笑)」
と2016年の「アボガド」だからこその語りを入れてから対馬のため息を合図に再び演奏へ突入していく。
そこからは初期のキラーチューンが続く。当時からバンドの不穏なグルーヴを最大限に発揮していた「そのTAXI,160km/h」では演奏する姿がコマ切れに見えるかのような照明の中、現在の技術を総結集したかのような極限のバンドアンサンブルと演奏力を見せつけ、「泥んこドビー」では爽やかなギターロックを鳴らしたかと思いきや、突如として光村がハンドマイクになって「転がせろ」のフレーズのコール&レスポンスを行い、
「俺を転がせろ」
と言うとなんとそのまま客席に突入して、まさに観客の上を転がっていく。客席中央と向かって右側に突入し、右側に突入した際には古村も最前列の柵に足をかける。この距離の近さもまたイイニコの日ならではのものだろうか。
「赤坂まだまだ行けますかー!」
と光村が観客に問いかけてこの場所に捧げるように演奏されたのは、会場の近くにある「一ツ木通り」が歌詞に登場する「image training」。インディーズ時代最大のキラーチューンであった曲だが、それは10年経っても変わることはない。このキャッチーさはある意味では今のバンドに最も近い曲というか、この曲の延長線上に今のバンドがあるというか。
青盤と赤盤はともにミニアルバムなためにやっていない曲はあと1曲だけ。なのでこの後はどうなるのかとも思ったが、やはり次で曲で最後の曲というライブの短さに客席から驚きの声が上がる中、光村がギターを爪弾きながら歌い始めたのは「雨のブルース」。今でもたまにライブで演奏されることもあるが、寒いなりにも天気が良かったこの日でさえ、この曲が鳴っている間は雨が降っているかのよう。
「幸せになろう 誰より幸せに」
という光村の優しさすら感じるボーカルが染み渡るように会場に響いた。
アンコールではメンバーが全員この日のライブTシャツに着替えて再登場し、春の大阪城ホールでのワンマンライブが映像化すること、2月から全国ツアー(今回のツアーでバンドは全都道府県でワンマンを行うことになる)が始まることなどの発表をしてこの日集まった観客を喜ばせると、観客の手拍子とともにいよいよ来週に発売が迫った(夏フェスの時点からライブではやっていただけに一層長く感じる)新曲「マシ・マシ」で初期と最新系を一直線につないで見せる。光村も口にしていたが、やはり曲のスタイルが全く違うというか、この曲からは初期の曲のような暗さは全く感じない。それは当然といえば当然で、おそらく初期の曲を作った10代の頃の光村少年にはまだこうして自分たちの作った音楽を聴いてくれる人の顔が見えていなかった。だからひたすらに己の内面をそのまま音楽にしていた。でも今30代になった光村とこのバンドは本当にたくさんの人に愛され、音楽を鳴らすのを望まれている。それがわかった今、こうして開いた曲が増えてくるのは当たり前である。
そして最後の最後に演奏されたのは、古村の力強いリフから始まる、この11月25日にしか聴けない曲「1125のテーマ」。歌詞を「赤坂サカス」に変えたりして「2016年の1125の日」をさらに感じさせてくれるアレンジを見せるが、やはりこの曲はこの日にしか聴けないのはもったいなさ過ぎるくらいに今のNICOのライブの楽しさが詰まった曲なだけに、音源化は無理にしてもライブそのものをフル尺で映像化していただきたいと思わざるを得ない。
演奏が終わるとピックをばら撒いたりしながら、
「またツアーと来年の1125の日に会おうぜ!」
と言ってステージを去っていった。果たして来年はどんなコンセプトのライブを見せてくれるのか。もはや11月25日は何があろうとスケジュールをキープするしかない。
メジャーで長いこと活動してるバンドのインディーズ期の曲を中心にしたライブというとどうしても懐かしさばかりになってしまいがちだが、当時より格段に進化した今の技術と表現力により、回顧と最新が同居するライブとなった。それができるNICO Touches the Wallsは本当にすごいバンドだと、もう何度思わされたかわからないくらいだけど改めて思う。
しかし、00年代後半に同時期にデビューしてこの年代を引っ張ってきた存在である、レーベルメイトで仲の良いチャットモンチー、同じ千葉の高校のバンドであるBase Ball Bear、ボーカル同士が同い年のRADWIMPS 、ともにスペシャ列伝ツアーを廻った9mm Parabellum Bulletらがそれぞれ新しいバンドの形を構築せざるを得ない状況になっている。彼らが共通していたのは、「あのメンバーじゃなくなった時はバンドが終わる時だ」と思うくらいにプレイヤーとしても人間のキャラとしても代わりのきかない存在のメンバーだけで成り立っていたバンドだということ。しかしそれでも彼らは今なお試行錯誤を繰り返しながらバンドを続けている。
そんな中でNICOは10年経っても同じメンバーで続いてる。そんな一見当たり前のように見えることがどれだけ特別で難しいことか…。できれば、10年後もこうして笑い合いながらインディーズ時代の曲を演奏する4人の姿を見ていたい。これまで、お互いにそうやって歳を重ねてきたんだから。
1.行方
2.壁
3.梨の花
4.僕がいなくても地球はまわってる
5.幾那由他の砂に成る
6.プレイヤ
7.病気
8.3年目の頭痛薬
9.アボガド
10.そのTAXI,160km/h
11.泥んこドビー
12.image training
13.雨のブルース
encore
14.マシ・マシ
15.1125のテーマ
マシ・マシ
https://youtu.be/RWyno0gXd7E
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