YON FES 2023 day1 @愛・地球博記念公園モリコロパーク 4/8
- 2023/04/10
- 19:47
去年、3年ぶりに開催され、小声であっても主催の04 Limited Sazabysのライブで「hello」の合唱が轟いた瞬間の感動は今も忘れられない。そんなYON FESが今年も無事に2年連続で開催。
今年は公園内にジブリパークが竣工して本格稼働を始めたことによって、名古屋から45分ほどのリニアモーターカーの駅を出てからの景色もローソンが公園入り口に出来たりと大幅に変化している。フェスの会場入り口までの動線は去年とは変わらないが、去年は立ち位置が区切られていたスタンディングエリアは完全に区切りがなくなり、去年は隣り合う形で設営されていた2つのステージ、SKY STAGEとSAND STAGEも2019年までの異なるエリアに戻っている。ある意味ではYON FESの完成形と言っていいかもしれない。前日までは降っていたという雨は止んだものの、去年もこんな感じだったな…と思うくらいに風が冷たくて寒い。
11:00〜 キュウソネコカミ [SKY STAGE]
10時20分くらいからすでにサウンドチェックに現れたメンバーたちが曲を演奏し、
ヨコタシンノスケ(キーボード&ボーカル)「リハってワンコーラスしかやらないみたいな感じがあるけど、キュウソはフルでやります!」
と言って他の曲のワンコーラスより短い「家」をフルで演奏したり、「ファントムバイブレーション」でリハから合唱を巻き起こしていた、キュウソネコカミ。しかもヨコタは去り際に
「YON FESが1年間のフェスの始まり。そのトップバッターである俺たちが今年のフェスの始まり。でも今年のフェスがどうなるのかを決めるのは君たちやから!君たちが盛り上がれば、今年は声出しとかもできてフェスって楽しそうだなってなるから!」
と前説まで行ってしまうくらいに気合いが漲っている。
フォーリミのメンバーが登場しての前説には今年は中日ドラゴンズのマスコット、ドアラまでも登場。特に何かをしたわけではないけれど、YON FESが確実に年を経るごとに愛知県の象徴的なフェスになっていることを実感できるようになってきている。
「限りなく2019年までの楽しみ方ができるように」
というGENの言葉からも去年とは全く違う空気感を感じられる。
そんな前説からおなじみのFEVER333のSEでメンバーが本番として登場すると、
「西宮の5人組、キュウソネコカミです」
というヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)の挨拶から、
「YON FES、目が覚めてるのかー!」
と言っておなじみの「MEGA SHAKE IT!!」からスタートすると、客席では野外フェスでは実に久しぶりのサークルモッシュが発生し、曲中のハウスミュージックのくだりでも振り付けを踊るだけではなくて肩を組んで踊っている人たちもたくさんいる。この時点で「ああ、コロナ禍になる前のロックフェスだ…」と思ってしまうくらいに感動してしまったのだが、それは「ビビった」でも同様で、ヨコタが
「開いたの閉じるタイミングわかってるかー!」
と言いながらサークルを作っている客席を指差す。それはつまりサークルができていることがしっかり見えているということであるが、曲中のクソワロダンスではやっぱりキュウソのベースはこの男じゃなくちゃといううねりまくるベースを弾くカワクボタクロウも独特の動きで踊りまくり、久しぶりのこのフェスを楽しんでいることがよくわかるのであるが、確実にそれ以上に観客たちが楽しみまくっている。久しぶりにサークルやモッシュで楽しめるフェスが帰ってきたんだからそれはそうだ。この機会に楽しまないといつ楽しむんだというくらいに。
そのサークルが客席にできるのを予知していたかのように演奏された「KMDT25」ではサークルが肩を組んだ盆踊りサークルへと変化していき、ステージ背面のライトも「DOUTEI」という文字を映し出すという地味ながらも曲に合わせた愛のある演出を見せてくれるのであるが、オカザワカズマ(ギター)も思いっきり体を動かして踊るようにして演奏している。ヨコタが盆踊りの拍子を口にしながら手を叩き、セイヤのボーカルもテンションが上がりまくって前のめりになって叫びまくっている。
するとここでセイヤが特別ゲストを呼び込もうとするのだが、かつての出演時に披露したGENとの「NEKOSAMA」かと思いきや、なんとセイヤが自身のギターを渡して弾いてもらう形でフォーリミのHIROKAZがステージに登場して「家」をコラボする。曲が短すぎるだけに一瞬のコラボだったが、セイヤが2日前にLINEして実現したものらしく、その急造っぷりによってかHIROKAZも少し緊張した面持ちだったのが面白い。
そしてリハ中にも宣言していた通りに「DQNなりたい、40代で死にたい」ではセイヤがステージ前まで出て行って客席の中におなじみの筋斗雲を投げ込む。それはつまりセイヤが客席に突入していくということの合図でもあるのだが、その筋斗雲すら流されてしまうことによって、
「おい、まだ乗ってないぞー!筋斗雲すら支えられないようになっちまったのかー!」
と笑わせながら、ようやく安定した筋斗雲の上に乗っかる。つまりは本当に久しぶりにセイヤが観客の上に降臨するのを見ることができているのだ。それは今までは全くしなかった感動という感情が湧き上がるのは、こんなバカバカしいような光景すらも見ることが出来なかった日々を過ごしてきたからだ。後でフォーリミのメンバーもこの光景を見て感動していたと言っていたが、きっとそう思った人もたくさんいるはずだし、やはり
「ヤンキー怖い」
のフレーズを大合唱できるのも、セイヤが観客の上を転がっていくのも、ステージ横のスクリーンにセイヤに被るようにリフトした観客が映り込みまくるのも、その全てが楽しくて仕方がない。自分はキュウソのファンとしてコロナ禍以降もワンマンなどのツアーに行き続けてきたが、この光景を見て「やっぱりこれだよな」と思った。それくらいにキュウソのライブの本領が発揮されていた。
「もう、懐かしいっていうか新しい!なんか戻ってきたっていうより新しく始まったっていう感じがしてる!お前たちの背中が久しぶりに見れて嬉しかった!」
と、本当に我々の楽しんでる姿を見ているんだなということを感じさせるようなセイヤのMCから、ソゴウタイスケ(ドラム)によるビートのイントロで始まった「The band」ではセイヤが強制的にこのフェスの全出演者への「ありがとう」を観客から伝えさせる。それはやはり我々が一緒に歌うことができるからであるが、ソゴウはマイクを通さなくても歌詞を口にしている。それはそのくらいにこの曲の歌詞をメンバー全員が精神の髄まで共有しているということである。
そんなライブの最後には
「最新にして最強のキュウソ」
を見せるための、リリースされたばかりの最新アルバムのタイトル曲である、不安を抱えていることも率直に口に出しながら前に進んでいく「私飽きぬ私」でキュウソの熱血っぷりをしっかり見せつけながら大合唱を巻き起こす。それは誰しもが不安を抱えながら生きていて、そうしたことから逃れることはできないけれど、それでもライブという場に来ればそれを乗り越える力を貰うことができるということを感じさせてくれた。つまりは今年のフェスは最高に楽しくなることを予感させるどころか確定させてくれるくらいの、フェスの始まりとしてのキュウソのライブだったということだ。
前説でフォーリミも言っていた通りに、「hello」の小声の合唱すら何か言われそうだった緊張感が強かった去年とは変わって今年は2019年までの楽しみ方に戻っている。だからダイブもサークルも起きる。そうした楽しみ方で周りの人たちが笑顔になっていると自分も楽しくなる。だから去年よりも楽しくなることがこのキュウソの時点でハッキリとわかった。それを感じさせてくれるためには、やっぱりキュウソがトップバッターじゃないといけなかった。それを完璧に全うしたライブをやったキュウソの凄さと楽しさはきっとこれから先の状況でもっと多くの人に伝わっていくはず。そうしたフェスで思いやりとマナーを何よりも大切にしていかなければいけないことも。
リハ.推しのいる生活
リハ.家
リハ.ファントムバイブレーション
リハ.住環境
1.MEGA SHAKE IT!!
2.ビビった
3.KMDT25
4.家 w/ HIROKAZ
5.DQNなりたい、40代で死にたい
6.The band
7.私飽きぬ私
11:35〜 See You Smile [LAND STAGE]
昨年の場所から2019年までの位置に戻ったLAND STAGEにトップバッターとして登場するのはSee You Smile。昨年のフォーリミの対バンツアーに呼ばれてから一気にこのフェスへの出演となった。東京の5人組バンドである。
一応バンドのプロフィール的には「TOKYO POP PUNK」ということになっているのだが、自分はむしろFACTが日本でデビューした時に初めてライブを見た時を思い出したのは、コーラスも務める厳つい髭面のEnomotoのベースと常に笑顔なGiriodaのリズムの重さと、ギターを抱えて飛び跳ねまくるAyatoとSeanの音と姿によってそう思えたところもあり、Ruiの人懐っこさを感じさせるボーカルと、観客を全員座らせてから一気に飛び上がらせるというパフォーマンスがアメリカのポップパンクバンドというよりは日本のラウドロックバンドのキャッチーさを抽出しているバンドであるように感じられたからだ。
実際にその「キャッチー」であったり「ポップ」であるというのはハイトーンであるRuiの声質によるところも大きいと思うけれど、そのキャッチーでありながらも激しいサウンドによって観客はダイブしまくりという、距離が近いこのLAND STAGEの特性を最大限に発揮するような光景を生み出している。
そんな光景を見たRuiは
「俺たちにも夢があります。それは俺たちもいつかこういう野外フェスを主催したいっていうこと。今日フォーリミがこのフェスに呼んでくれて、野外フェスっていうのはこういうものだっていうのを俺たちに教えてくれました!」
と自分たちの夢とフォーリミへの感謝を口にしていたが、そうしたMCを聴くとこのフェスを立ち上げた時はまだ若手と言える立ち位置で、このフェスを作ることによってそこから一歩抜け出したフォーリミが今はこうしてカッコいい若手をフックアップする先輩になったのだと感じる。そしてその意思はこうしたバンドたちに受け継がれていく。いつかこのバンドが主催フェスを開催するんなら、どこでどんなバンドが出るフェスになるんだろうか。まだ想像もつかないが、そのフェスの光景がこうした熱狂を生み出すものになることだけはわかる。
12:15〜 My Hair is Bad [SKY STAGE]
このフェス初年度開催時から皆勤出演を続ける、My Hair is Bad。今年ももちろん出演し、今年はこの早い時間である。
サウンドチェックからそのままメンバー3人がステージに居続けて開始時間を迎えると3人が手を合わせて気合いを入れ、
「新潟県上越市My Hair is Badです。フォーリミ、今年もありがとう!」
と椎木知仁(ボーカル&ギター)が口にして「カモフラージュ」からスタートすると、やまじゅんこと山田淳(ドラム)の一打一打がめちゃくちゃ強く、それによって普通ならギターの音量によって感じる爆音っぷりをリズムから感じる。それはバヤリースこと山本大樹のコーラスを重ねながらもステージを激しく動きながら弾くベースもそうであり、マイヘアのライブバンドとしての強さがこのリズム隊によって担保されているものであることがわかる。先日の日本武道館ワンマンでは最新のスピーカーシステムを取り入れて音響も進化させていたが、そうした取り組みは間違いなくフェスにも生きている。
「今の若さが羨ましくなるまで」
などのフレーズから感じられる青春感は春の野外というシチュエーションにこの上なく似合っている。
それはそのまま学生時代の情景を切り取った「サマーインサマー」へと続いていく流れもそうであり、
「「大人になっても、
また今日と同じこの5人でこの海に来ようよ。」」
というフレーズと同じようにこのフェスに来年もみんなで来る約束をしている人たちもたくさんいるんじゃないかと思う。年末には心配な状態にもなってフェス出演をキャンセルした椎木のボーカルも絶好調でしかないくらいに前のめりである。
そんな椎木が
「僕は1992年3月に生まれて、ずっと野球選手になりたかった…」
というおなじみのセリフを口にした後に演奏された「ドラマみたいだ」では、それまでは曇天だった空が「サマーインサマー」で少し青くなってきて、この曲では太陽が出てくるくらいに見事に晴れてくる。それこそがまるで、ドラマみたいだった。
そんな陽の照りつける中で椎木が
「忘れたくないことも覚えてる。失くしてから後悔するようなことを俺はもうしたくない。あの時も今と同じような季節だった」
と言って鳴らされたのは、春に恋に落ちたことを歌った「真赤」。そのノイジーなギターサウンドがこの広大な会場を飲み込み、たくさんの人が腕を挙げるだけではなくてダイバーまで続出している。ミュージックステーション出演時に話題になった曲でもあるが、そうした場所に出て行ってもやはりマイヘアのライブはライブハウスのもののままだということをこの光景が示してくれている。
「みんな一緒に歌ってくれ!」
と椎木が叫びながらバンドきってのグルメである山本がジョッキを持つポーズをしたりする「仕事が終わったら」はヤケクソ的なノリの仕事後の飲酒ソングであるが、個人的にはこの日は気温が寒すぎて全然酒を飲む気にはならなかったのである。
そして椎木のギターのイントロが一気にハードさを増していく「ディアウェンディ」では山本がステージ前に出てきてベースを弾く中で椎木は
「このフェス皆勤賞のMy Hair is Badです!フォーリミの4!4月の4!幸せの4!いろいろあるけど、しいきの4だ!椎木主催のフェスにようこそ!」
と今年も自身の主催フェスにしてしまう椎木であったが、これは間違いなくこのフェスでしか聞けないし、そう言ってしまえるくらいに椎木もこのフェスを愛しているということだ。
そんなハードなサウンドとのコントラストが激しい「味方」はフォーリミやマイヘアを始めとするこのフェスの出演者たちが我々の味方であってくれると思えるように壮大に響くと、
「フォーリミに大歓声と拍手が降り注ぎますように!」
と叫んでから、今や新たなマイヘアの代表曲になった「歓声をさがして」が演奏される。ここにいた人たちの「僕の音楽」もまたフォーリミでありマイヘアであるはずだと思っていたら、最後にトドメとばかりに「告白」を演奏して、やはりダイバーが続出しまくるという光景を生み出してみせた。
ラブソングも多いバンドであるけれど、やっぱりこうした光景を作れるバンドであることはずっと変わらない。ずっと出演してきたこのフェスでそんなバンドの本質を示したような、今年のマイヘアのYON FESでのライブだった。
リハ.アフターアワー
リハ.グッバイマイマリー
1.カモフラージュ
2.サマーインサマー
3.ドラマみたいだ
4.真赤
5.仕事が終わったら
6.ディアウェンディ
7.味方
8.歓声をさがして
9.告白
13:00〜 Age Factory [LAND STAGE]
マイヘアの後のAge Factoryという、ソリッドなサウンドのギターロックバンドが並ぶというこの流れもまたフォーリミが考えたこの1日の作り方であろう。奈良のライブハウスの雄がこのフェスのステージに立つ。
おなじみのサポートギターを加えた4人編成で登場すると、髪をピシッと整えていることによってよりイケメン感が強くなっている清水エイスケ(ボーカル&ギター)が歌い始めたのはアルバムとしては最新作の「Pure Blue」収録の「SKY」であり、マイヘアのライブ時に晴れてきた空がタイトルに合わせるようにさらに晴れ渡って太陽まで出てくる。これまでにも何回か野外フェスでのライブを見ているが、その全てでいつも暑いくらいに晴れていることしかなかっただけに、実はこのバンドは超晴れバンドなのかもしれないと思う。
「今日は歌えるみたいだから、みんなで歌える曲を持ってきたんだよ」
と清水が言うと、まさに観客全員で拳を振り上げて歌う「Dance all night my friends」から増子央人のドラムも、西口直人のベースも一気に力強さを増していく。西口はコーンロウ的な髪型のいかつい出で立ちながらも「Merry go round」「HIGH WAY BEACH」ではキーが高いコーラスを重ねたりと、プレイヤーとしては実に繊細さも備えている。それがリズムに浸って体を揺らす要素になっている。
すると清水とサポートメンバーのギターが一気に激しくなり、叫ぶようにしてタイトルフレーズを歌う「1994」では拳とともにダイバーも続出する。そのサウンドをさらに強く感じさせるのは増子のドラムであり、もはや超人ドラマーの1人と言っていいレベル。ロックバンドに1番大事なのはドラムだととあるバンドも言っていたが、このバンドがカッコいいのは間違いなくその要素によってである。
とはいいながらもそこまで大合唱になるような流れでもなかった(もちろん合唱は起きていたが)のが一変したのは、勇壮なコーラスと合唱が轟きまくる「GOLD」で、それを聴いていて身震いするくらいに大声で歌える、その鳴らしている音の衝動を体で表現できるAge Factoryのライブが戻ってきたのである。清水はもう整えてでてきた髪型が汗でぐちゃぐちゃになっている。
「この青い空に向かって高く飛ぼう!」
と言って放たれたのは季節的にはまだ会場を飛ぶことがない「TONBO」であるが、そのトンボがいない代わりに観客が人の上をガンガン飛びまくっていく。Age Factoryの鳴らしている音の凄まじさが、曲の激しさがそうせざるを得ないくらいの光景を生み出しているのである。
そして
「みんな、駆け抜けるように速く走ろう!」
と清水が言って最後に演奏された「See you in my dream」では超高速サークルモッシュまで起こる。この「GOLD」以降の流れは「Ageのライブってこんなに激しいんだっけ!?」と思ってしまうくらいに、暴動と言えるレベルの熱狂っぷりで、西口のファルセット的なコーラスと増子の一気に加速するビートがそれをさらに煽る。つまりは
「今夜だけは眠れそうさ」
というフレーズの通りの激しさだったのだ。もう改めてAge Factoryってとんでもないバンドだな、とこのメンツの中でも思わされるようなライブ。なんならこのフェスの裏MVPと言ってもいいくらい。これをライブハウスで体感したくなってしまう。
リハ.Everynight
リハ.Feel like shit today
1.SKY
2.Dance all night my friends
3.Merry go round
4.HIGH WAY BEACH
5.1994
6.GOLD
7.TONBO
8.See you in my dream
13:40〜 クリープハイプ [SKY STAGE]
2019年以来の出演となる、クリープハイプ。ここまでの激しい流れとはかなり異なるタイプのバンドであるが、かつて「鬼」のMVにマイヘアの椎木が出演していたこともあり、フォーリミが直系の後輩と言える両者の関係性をわかっているメインステージの流れであると言える。
いつものようにSEもなくふらっとメンバー4人がステージに登場すると、サウンドチェックでは凄まじい迫力の歌唱で「身も蓋もない水槽」を歌っていた尾崎世界観(ボーカル&ギター)がギターを持たずにステージ真ん中に立ち、長谷川カオナシ(ベース)がキーボードを弾く「ナイトオンザプラネット」からスタート。また天気が微妙な曇り空になってきているが、それがむしろこの曲の雰囲気に似合うようにゆったりと体を揺らしながら、曲が描き出す夜の情景に脳内で浸らせてくれる。
尾崎がギター、カオナシがベースに持ち替えると不穏な同期のサウンドが流れて歓声が起こるくらいの人気曲になった「キケンナアソビ」では尾崎がマイクスタンドに腕を乗せて
「危険日でも遊んであげるから」
と歌うことによってさらなる歓声が湧き上がる。このモッシュやダイブとは全く無縁の2曲で完全に会場の空気をクリープハイプのものに塗り替えてしまっている。
「去年の年末に他に何組かバンドがいる中でフェスの打ち上げをやってたんだけど、その時にGENが
「YON FESのブッキングを始めてて、いろんなバンドに電話してるんですよね〜」
って言ってたんだけど、俺には1ヶ月後くらいにLINEが来たのはなんでなんだろうか(笑)」
とブッキングの手法の違いに尾崎が違和感を唱えながら、
「雨が降ったり止んだりでまだ濡れてるだろうからセックスの曲を」
と言うと、カオナシがステージ前に出てきてイントロのベースを弾くのは「HE IS MINE」であり、声を出せることによって思いっきり
「セックスしよう」
の大合唱が起こり、しかもサークルモッシュまでも起こる。それはクリープハイプのライブの強さを示しているかのようですらあるし、メジャーデビュー時くらいまではライブでダイバーが起きていたバンドだということを思い出したりもする。
すると小泉拓(ドラム)がバスドラを踏み、カオナシのベースも重なるライブアレンジのイントロによる「イト」が観客を楽しく踊らせてくれ、小川幸慈も楽しそうにステージ前まで出てきて笑顔でギターを弾きまくっていると、その小川がイントロからさらにギターを弾きまくる「愛の標識」へ。銘菓の部分で歌詞を変えていたのかどうかまではしっかりは聞き取れなかったが(そもそも名古屋銘菓をあまりわからないけれど)、それでもやっぱり尾崎のボーカルはここに来て覚醒を果たしたかのような迫力でもって響いている。
そして尾崎がギターの弾き語りのようにして「栞」のサビを歌い始めるのであるが、普段よりも長くその弾き語り部分を歌うと、
「新しい街に行ってもげん…GEN、来てないな。来て欲しい?来るかどうかわからないけど、やってみましょう」
と言ってからバンドで「栞」を演奏し始めると、やはりステージにGENが走って登場して前回出演時同様の邦ロックシーンハイトーンボーカル2大巨頭のツインボーカルバージョンで「栞」を歌う。だからこそそこにはキーを下げたりという違和感が全くないし、そもそもはGENも参加したFM802の企画で生まれた曲であるために、GENの曲でもあるような感じすらある。演奏が終わってもハグしたり握手をしたりせずに各々がバラバラにステージから去っていく姿は馴れ合いとかではないこの両者の音楽家同士としてのリスペクトであることを今年も感じさせてくれた。このフェスでのクリープハイプのライブはこのフェスでしか見れないものを確かに見せてくれる。だからこそ、また来年以降も是非。
リハ.身も蓋もない水槽
1.ナイトオンザプラネット
2.キケンナアソビ
3.HE IS MINE
4.イト
5.愛の標識
6.栞 w/ GEN
14:25〜 SHANK [LAND STAGE]
マイヘア同様にこちらもこのフェス皆勤賞の SHANK。去年まではメインのSKY STAGEに出演していたが、今年はこのLAND STAGEへの出演となったのはメインステージの出演者の豪華さゆえだろうか。
リハでスカのリズムの曲をやっていただけに、本編は何から?と思っていたら、庵原将平(ボーカル&ギター)が
「長崎、 SHANKよろしくお願いします」
と挨拶する間に松崎兵太(ギター)がイントロを鳴らして「Set the fire」からスタートし、早くもダイバーが続出しまくるのであるが、客席からステージに向かってペットボトルが飛んだことによって庵原は思いっきり客席に向かって中指を立てていた。それは前説でフォーリミが注意事項として言っていたことなので当然ではあるが、続く松崎のイントロのギターがダークさを醸し出す「620」でも今度は松崎の方に向かってペットボトルが飛んできて、またしても庵原は中指を立て、ペットボトルを回収したスタッフもキレ気味だったのはハラハラしてしまった。しかしそこはさすがフォーリミのお祭りだということをよくわかっているメンバーなだけに、決して怒りを口にすることはなかった。これが自分たちの主催フェスのBLAZE UP NAGASAKIとかだったらまた違っていたのだろうけれど、フェスの空気を悪くしないようにしていたであろうメンバーたちは実に大人である。
池本雄季(ドラム)のイントロのキメの連発で観客がそのキメに合わせて腕を挙げる「Good Night Darling」と、庵原のパンクバンドとして理想的な攻撃性を持ったボーカルを生かしたパンクナンバーを連発すると松崎は
「最近、近所のタバコ吸ってる中学生がiQOSに変えてた(笑)中学生はiQOSじゃなくて普通のタバコを吸え!」
とここで言う意味がよくわからないメッセージを放つと「Departure」でさらに加速したかと思ったら、
「SHANKの中で1番人気がない曲を(笑)」
と言って「Karma」が演奏されたのは去年このフェスでホヤホヤの新曲として演奏したら客席が微動だにしないくらいに固まってしまったという苦い記憶があるからだろうか。
しかしそこから「Hope」で再び加速してダイバーの嵐という光景を生み出すことによってタイトル通りにパンク・メロコアシーンに希望が戻ってきていることを感じさせると、
「コロナ禍に作った、光の方へ向かっていこうっていう曲」
と言って演奏された「Bright Side」がやはりその言葉の通りに、この曲が生み出された時の状況を抜けて光の方へ踏み出していることを音と光景によって感じさせてくれる。
すると今までもこのフェスで演奏されては SHANKのライブのハイライトであり、このフェスのハイライトにもなってきた「Wake Up Call」が太陽の光が射す中で演奏される。それが穏やかな曲のサウンドも相まって本当に美しいものとして感じられたし、それはやはり SHANKのメロディの持つ力によってそう感じられるのだ。メロディックパンクのメロディの部分をこのバンドは最大限に体現している。
庵原「フォーリミ、毎年読んでくれてありがとうございます。兵太、言い残したことは?」
松崎「今年もBLAZE UP呼ぶんでよろしくです」
庵原「これを癒着と言います(笑)」
と互いの主催フェスに呼び合うことを告げると、「Honesty」でダイバーを続出させ、30分の持ち時間であるために定番曲が並ばざるを得ない中で歓声が起こるくらいにこの日の中では意外な選曲であった「Two sweet coffees a day」で会場を揺らして締め…かと思いきや最後にはやはりトドメとばかりに「submarine」まで放つ。かつてのように時間が余ってGENのリクエストで「Restart」をやったりという特別さはなかったが、そう感じるくらいにこのフェスにおいてSHANKのライブを見るのが当たり前のことになっているということだ。
去年このフェスにSHANKが出た時は自分たちの普段のライブでもダイブやモッシュなどはもってのほかという状況だった。それは今やハウステンボスという地元長崎最大の観光名所までも自分たちのフェス会場として使えるくらいにいろんな人たちと関わっているからこそ、そうした人たちを裏切ったり悲しませたりできないことをわかっているバンドだからであるが、そうして守るためにパンクを鳴らしてきたSHANKのライブもまた変わりつつある。そうした楽しみ方が戻っても、絶対に自分たちの思うカッコよさの筋は曲げないだろうことがわかるからこそ、音楽はもちろん生き様すらもカッコいいバンドだと思えるのだ。
リハ.Life is…
リハ.Take Me Back
1.Set the fire
2.620
3.Good Night Darling
4.Departure
5.Karma
6.Hope
7.Bright Side
8.Wake Up Call
9.Honesty
10.Two sweet coffees a day
11.submarine
15:05〜 ウルフルズ [SKY STAGE]
今年1番ラインナップの中で違和感がある出演者は間違いなくこのウルフルズだろう。世代的にフォーリミのメンバーたちは大ヒット曲たちを聴いて育ってるとはいえ、なかなか接点らしい接点が思い浮かばない存在であるからだ。
近年お馴染みの桜井秀俊(ギター。真心ブラザーズ)と浦清英(キーボード)というサポート2人を加えた5人編成で登場すると、青いスーツ姿で登場したトータス松本(ボーカル&ギター)がアコギを持って
「イェーイ 君を好きでよかった」
と「バンザイ 〜好きでよかった〜」を歌い始める。その瞬間に巻き起こる大合唱と拍手によって、このバンドがこのフェスのステージに立っているという凄まじい違和感を見事に消し去ってくれる。ワンコーラス終わる度に曲中であっても拍手が起こるというのも時代を超えて聴き継がれてきた名曲の力によるものである。誰しもが知る大ヒット曲の強さをこのフェスでこんなにも感じさせてくれる存在は今までいなかったかもしれない。
さらにはトータスがエレキに持ち替えて、ジョン・B・チョッパー(ベース)とサンコンJr.(ドラム)のコーラスに合わせて観客がタイトルフレーズを合唱する、各々が抱えていたりライブシーン、音楽シーンが直面している問題を全肯定してくれるようなエネルギーに満ちた「ええねん」から、再びトータスがアコギを弾きながら
「悲しけりゃ 泣けばいい また笑えるように」
というフレーズがこの日GENの心にも刺さった「笑えれば」とヒット曲を連発。改めてウルフルズというバンドが30年間に渡ってシーンをサバイブしてきた理由がその楽曲の力によるものであることを感じさせてくれる。
「04 Limited Sazabys、呼んでくれてありがとう〜」
と明らかにバンド名を言い慣れてない感じでトータスが挨拶すると、昨年リリースされた最新アルバム「楽しいお仕事愛好会」収録の、実はウルフルズが本格的なファンクバンドであることをそのサウンドで、30年間続いてきて(活動休止期間もあったけど)なおもこれから先も続いていくことを歌詞で示す「続けるズのテーマ」からはメドレーに突入していく。昨年末のキュウソネコカミとの対バンに出演した時もメドレーを挟んでいたが、そうして短い時間に新作曲を始めとしたあらゆるタイプの曲を詰め込むというのがこのバンドならではのフェスの戦い方だ。ハンドマイクになったトータスが頭の上で腕を素早く左右に振り、それが客席にも伝播していく「バカサバイバー」はコロナ禍を生き延びたサバイバーたる我々のテーマソングのように響き、ジョン・Bとサンコンの会話劇のような掛け合いを曲中に導入した「大阪ストラット」という代表曲までもがこのメドレーの中に入ってきている。
かと思えばシンセの壮大なサウンドが響き渡り、トータスの歌唱力の凄まじさを最大限に体感させてくれる「センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜」あたりではこのバンドが大ヒット曲だけで生きているバンドではないことを示し、トータスと観客がタイトルフレーズに合わせて「A・A・P」と体で文字を作る「A・A・Pのテーマ」で一緒にライブを作る楽しさを感じさせ…と、メドレーとなると基本的には同じようなサウンド、リズムの曲を続けるというパターンが多いものになりがちだが、そうではなくてバンドのあらゆるタイプの曲を繋げて演奏できるというのはウルフルズのライブアレンジ力と演奏力が長い歴史を重ねて育まれてきたことがよくわかるし、代表曲、大ヒット曲はフル尺で、今の自分たちの新しい曲たちはメドレーで、というバランスの取り方もさすがだし、最後に戻ってくる「続けるズのテーマ」でやはりウルフルズのファンクバンド感としてのリズムの跳ね感や強さを感じさせてくれるのだ。
そんな見事なメドレーをやり切ったバンドに惜しみない賛辞の拍手と歓声が送られると、桜井がギターをカッティングして始まったのはもちろん「ガッツだぜ!!」で、この最後に来ての一気に観客を目覚めさせる大名曲の力に唸らされてしまう。それくらいにたくさんの人が腕を挙げてタイトルフレーズを叫んでいたからだ。もはやメンバークラスの貢献度の桜井のギターソロと浦のキーボードソロも見せながら、このフェスとこのフェスに集まった人たち、さらにはこれから先に開催される全てのフェスにガッツを注入するかのようだった。曲がリリースされた時はまだ生まれてなかったであろう少女がめちゃくちゃ嬉しそうに踊っていたのを見て、ウルフルズがこのステージに立った理由が確かにあったと思った。
そうやってずっとウルフルズはたくさんの人を励まし、音楽で力を与え続けてきた。そんなバンドが30周年という大御所のキャリアに突入しながらも、パッと見ではアウェーであろう若手バンド主催フェスに出演するという最前線に立ち続けている。エレファントカシマシもそうであるけれど、ライブで生きるバンドが目指すべき姿をそのステージから見せてくれている。最敬礼。
1.バンザイ 〜好きでよかった〜
2.ええねん
3.笑えれば
4.メドレー
続けるズのテーマ 〜 バカサバイバー 〜 大阪ストラット 〜 センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜 〜 A・A・Pのテーマ 〜 続けるズのテーマ
5.ガッツだぜ!!
15:50〜 FOMARE [LAND STAGE]
同じレーベルのバンドたちが多数出演しているだけにすっかりすでに出演していたような気になっていたが、FOMAREがこのフェス初出演。フォーリミの同世代ではなくて、この日の後輩枠のバンドの筆頭である。
メンバー3人がステージに登場すると、オグラユウタ(ドラム)が立ち上がって客席を眺める中、アマダシンスケ(ボーカル&ベース)がタイトルコールをしてステージ左右に駆け出していく漲る期待をパンクなサウンドとして炸裂させる「Frozen」からスタートするのであるが、ワンコーラス終わったあたりでアマダが
「ちょっとストップストップ!」
とバンドの演奏を止める。あまりにダイバーが続出しまくったこともあってか、客席から×マークを作っている観客の姿が見えていたらしい。そうして一度客席が落ち着くのを確認してから再度最初から演奏を始めるのであるが、この辺りはメンバーがどれだけ客席を見ながら演奏しているか、その客席や観客を気にかけて演奏しているかということを示している。FOMAREの3人が持つ優しさが表れているというか。
その優しさが曲として表れているのは昨年リリースの最新アルバム「midori」収録の、アマダの歌詞の言い回しやタイトルフレーズの使い方が実に上手い「80%」から、タイトル通りに優しさについて歌った「優しさでありますように」という歌モノ曲の流れであり、特に「優しさでありますように」はこうした光景を生み出す激しいノリのフェスだからこそ、そこに優しさを忘れないようにというメッセージとして響いてくる。アマダの歌唱も実に伸びやかである。
このフェスにようやく出演することができた喜びをアマダが語ると、歌い出しから大合唱とともに壁のようなリフトが続出する「Lani」でカマタリョウガのギターも鋭く鳴らされ、アマダはマイクスタンドの向きを動かしながらあらゆる方向の客席を向いて歌う。
その「Lani」もそうであるが、こうして大合唱できることのライブの楽しさや喜びを感じさせてくれるのが、メンバーとともに観客が大合唱する「愛する人」であり、合唱とともにダイブもあり、飛び跳ねまくる人もいて…という光景がステージ横のスクリーンに映ると誰もが笑顔だ。CM曲として地上波でも流れたことによってFOMAREの名前を世の中に知らしめた新たな代表曲でもあるが、やっぱりライブで聴いていると
「当たり前だったその声がただ恋しいだけなんだ」
というフレーズはライブのこの瞬間のことを歌っている曲だと思えるのだ。
するとアマダは自分たちが自主制作CDを作ってリリースツアーを回っていた頃、ファイナルを名古屋で行った翌日にYON FESが初開催されるということで、カマタとともに名古屋の亜熱帯というネカフェに泊まって2人で翌日のフェスに観客として参加したというエピソードを語る。つまりはそれくらいに思い入れがあって出演したかったフェスということだが、その思いを曲として示したのはフォーリミ「monolith」のカバーであり、ワンコーラスのみでさすがにキーも下げていたけれど、続出しまくるダイバーの多さとソリッドなパンクサウンドはこのバンドが間違いなくフォーリミの影響を受けている、パンクシーンから始まったバンドであることを自分たちの音とステージで示していた。この瞬間だけ何故か雨が降り出してきたのも演出かと思えるくらいに。
だからこそ最後に演奏されたのも「Continue」であり、最後にさらなるダイブの嵐を巻き起こしたのだ。このフェスに出るといろんなバンドが持っているパンクさを感じられることが多いけれど、ポップな曲やラブソングの名曲もあるだけに幅広い音楽的趣向を持っているバンドであるFOMAREの軸がパンクにあるということを改めて示してくれるようなYON FES初出演だった。次はもしかしたらSKY STAGEで見れるかもしれないという期待を抱いてしまうくらいに。
リハ.夢から覚めても
リハ.新曲
1.Frozen
2.80%
3.優しさでありますように
4.Lani
5.愛する人
6.monolith
7.Continue
16:30〜 SUPER BEAVER [SKY STAGE]
サウンドチェックでは渋谷龍太(ボーカル)以外の3人が出てきておなじみのセッション的な演奏でグルーヴを高めていく。今やこの2日間で最も動員力のあるバンドになったと言っていいSUPER BEAVERがSKY STAGEのトリ前という位置でオンステージ。
おなじみのSEが流れて柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人が先にステージに登場。藤原が客席を見渡すようにしているとこの日もグラマラスな化粧を施した渋谷がステージに現れて、
「心から心の奥まで…」
と歌い始める「証明」からスタートするのであるが、曲の最後には柳沢が
「YON FES、歌おうぜー!」
と言って
「ないという証明」
のフレーズを合唱させる。その瞬間にこの曲、この日のセトリは観客1人1人とバンドが一緒に歌うためのものになるということがわかる。
するとイントロが鳴り響いた瞬間にたくさんの観客の両腕が上がる「青い春」でもサビではメンバー全員での歌唱に観客1人1人の声が重なっていく。やはりこんなに広い会場でこの景色を見れていることが幸せに感じられるし、この規模での合唱が起こること、一緒に歌えることの尊さをも感じてしまう。
そんな中で演奏されたのはリリースされたばかりの最新曲「グラデーション」であり、バンドの存在をさらに広い場所へと知らしめた「名前を呼ぶよ」に続く「東京リベンジャーズ」とのタッグのこの曲は間違いなく新たなバンドの代表曲になるであろうくらいに、すでにファンから「良すぎる」「今までで1番良い曲」という声さえ寄せられている曲である。抜き差しを心得たサウンドと、
「それはごめんねに似た ありがとうのよう
ありがとうに似た ごめんねのよう」
という実にビーバーらしい筆致(歌詞を書いているのは柳沢だが、柳沢も渋谷のMCなどから歌詞の着想を得ることもあるだけに間違いなくバンドの意思や精神としての歌詞だ)で感情のグラデーションを描くこの曲は実はライブ初披露がこの瞬間だった。大事な仲間、友達のために自分たちの大事な曲の初めてを捧げる。それもまた実にビーバーらしいと思える選択だ。
「フォーリミからもらった俺たちの時間。その俺たちの中にはあなたも入ってます」
というこれまた実にビーバーらしい、バンドだけじゃなくて観客1人1人と一緒にライブを作っているという姿勢を口にすると、さらにはこちらは「僕のヒーローアカデミア」主題歌となった、
「我々の基本姿勢そのものの曲」
という「ひたむき」でも間奏部分では観客が両腕を挙げてコーラスを大合唱する。アニメのオープニングでは流れていなかった部分であるが、個人的にはこここそがこの曲の肝だと思っている。まだ制作期間中は歌うことなんて全くできない世の中の状況だったはずなのに、こうして観客と一緒に歌える日が来ることを信じて作ったコーラスパートなのだろうから。
「声が聞きたいと思ったんだから仕方がないでしょう!」
と渋谷が言うと、さらに「東京流星群」でタイトルフレーズの大合唱を巻き起こす。ついさっきのFOMAREでの雨はなんだったのかというくらいにビーバーのライブ中は晴れて明るくなったことによって星は見えなかったけれど、この曲は名古屋の流星群を降らせる曲を持つフォーリミへの音楽でのリスペクトの示し方だと自分は思った。そこに観客が歌うことができるという環境も合わさった今、この曲はこの日最もビーバーが演奏すべき曲だったんじゃないかとすら思える。
そして本当にあっという間に最後の曲になったのは、藤原が立ち上がってバスドラを踏み、渋谷も柳沢もイントロから煽るようにして観客の合唱を巻き起こした「秘密」。曲中には上杉がステージサイドのカメラに寄ってカメラ目線で演奏する姿がアップで映し出され、メンバー紹介も挟まれる中で渋谷はステージを左右に動き回りながらやはり観客の合唱を求めるようにマイクを高く掲げる。みんなじゃなくて、1人1人の重なり。渋谷もこの日
「ありきたりな一体感じゃなくて、1人と1人が重なって生まれてしまうような一体感を」
と口にしていたが、まさに名前も住んでいる場所も年齢も仕事や学校も知らない人の1人1人が、こうしてこの曲を歌っているということだけは確かな事実であり、そうしてバラバラなものが重なっていく美しさをこの「秘密」の合唱は感じさせてくれる。思えば2019年にビーバーがこのフェスに出演した時もそうだった。客席の形状的に声が降ってくるかのようになるこの感覚を、4年ぶりにこうやって味わうことができた。それは少し忘れかけてすらいたもの。それを確かに呼び覚ましてくれた、2023年のYON FESでのSUPER BEAVERのライブだった。
1.証明
2.青い春
3.グラデーション
4.ひたむき
5.東京流星群
6.秘密
17:15〜 KUZIRA [LAND STAGE]
初日のLAND STAGEのトリはメロディックパンクバンドとしてのフォーリミの正統後継者的な後輩とも言えるKUZIRA。まだ時間的に陽は落ち切ってはいないが、風が強さと冷たさを増してきている。
メンバー3人がステージに登場して挨拶すると、その姿や言葉からはバンド側の並々ならぬ気合いを感じさせるのであるが、1曲目の「Backward」から凄まじい勢いでダイバーが続出していく。というかなんならリハの時点ですでにダイバーが発生していたのであるが、末武竜之介(ボーカル&ギター)の見た目通りの少年感を感じさせるハイトーンなボーカルはこの野外の会場に実によく似合っているし、自分はCDは持っていて曲は聴いていたのだが、ライブを見ると2年前に加入したシャー:Dのドラムがめちゃくちゃ上手くて驚く。個人的には若手では随一だと思っているKOTORIの細川と似たタイプの手数の多さと力強さを併せ持ったというような感じだろうか。それがメロディックパンクバンドとしての曲に熊野和也のベースとともにさらに勢いを与えているし、現状のベストと言っていいようなセトリを作ってきたのは末武が前のめりになって叫ぶようにして
「GEN君の声に似てるとか、0.1 Limited Sazabysとか言われましたけど、ライブハウスで必死にやれば先輩たちが必ず見てくれるってことを俺たちが証明します!」
と、このフェスへの、フォーリミへの思い入れを口にしていたからこそ。フォーリミ直系のバンドだとは思っていたけれど、逆にそれによって悔しい思いもたくさんしてきたんだろうなという感情がその言葉には確かに滲んでいた。
そんなフォーリミへの思いを口にすると、
「この曲、俺たちに似合うと思うんだよね。海を泳ぐクジラ!」
と言って演奏したのはなんとフォーリミ「swim」のカバー。キーを下げることなく、しかもHIROKAZのギターフレーズを弾きながら歌う末武をフレーズによって熊野がボーカルを受け持ってカバーする。しかもフルコーラスで演奏するというあたりにフォーリミへの愛情の強さを感じるし、
「泳いで おいで」
のフレーズで観客が両腕を泳ぐように動かすのも、サビで一気にダイバーが続出するのも完全に本家そのものをスリーピースのギターボーカルがやっていると言っていいくらいのレベルだ。それもやはりメンバーの演奏力があるバンドだからできることである。
そんなある意味ではピークと言っていいようなカバーの後にも盛り上がりっぷりは全く変わることなくダイバーの応酬に次ぐ応酬にサークルを生み出していく。もう俺たちはライブハウスで生きてきたメロディックパンクバンドであり、そこでやってきたことをそのままやるとばかりに「Spin」で末武のギターがさらにシャープさを増していくと、ラストは「In The Deep」までひたすらパンクに一気に駆け抜けた30分間。肌寒くなった会場を熱気で満たしたメンバーも完全に汗にまみれていたが、幼く見えていた末武の表情はライブ前より後の方がはるかに逞しく見えていた。
リハ.Detour
1.Backward
2.Snatch Away
3.Pacific
4.Clown
5.swim
6.A sign of Autumn
7.Spin
8.In The Deep
17:55〜 04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そしていよいよこの日も最後のアクト。かなり風が冷たさを増してきている中で主催バンドのフォーリミが初日を締めるべくステージへ。
おなじみの賑やかなオリジナルSEでメンバーが登場し、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビが手拍子を煽りまくるとGEN(ボーカル&ベース)も登場し、最新アルバム「Harvest」の1曲目に収録されていることによってフォーリミのパンクバンドっぷりを感じさせてくれる「Every」から始まって「Keep going」へとすぐに繋がっていくというのはアルバムの収録曲順通りの流れであり、「Harvest」のツアー通りでもあるオープニングなのだが、その時と全く違うのはやはりダイバーがいきなり続出していることと、何よりもフォーリミがこの日の出演者たちの思いを全て自分たちの力にしているかのように音を鳴らしているところ。だからこそGENのハイトーンボーカルもこの広い会場にいつも以上にしっかりと響き渡る。ここにいる全ての人に伝えるために。
KOUHEI(ドラム)のツービートが疾走する「My HERO」と、ダイブだけではなくてサークルなんかも出現している光景が去年のこのフェスでのフォーリミのライブとは全く違うものを見ているような感覚にさせてくれる。それは「Chicken race」で観客を煽りながら、その観客たちが踊りまくっている光景をRYU-TAが嬉しそうに見ている表情からも明らかだ。
「YON FES、帰ってきました。今日のこの1日をみんなで一緒に完成させましょう!」
とGENが挨拶すると、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビのリズミカルなコーラスが力強くも気持ち良く響く「Jumper」でもサークルが生まれ、サビで弾けまくっている。この曲が生まれた直後に世の中はコロナ禍になってしまったために、この曲でこういう景色が見れるんだな…と噛み締めるように感じていた。
「YON FES、この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
とGENが叫んでから思いっきり腕を振りかぶってからイントロが鳴らされた「monolith」はFOMAREへ本家バージョンの強さを見せつけながらも、RYU-TAも去年とは違い、コロナ禍になる前と同じように何にも遠慮することなく
「かかってこいやー!」
と叫ぶ。それによってさらにモッシュ、ダイブ、サークルという光景が激しくなっていく。もうこの曲で生まれる衝動を我慢しないで、自分たちが感じたままに、好きなように楽しめばいい。そんなロックフェスでのパンクバンドのライブが戻ってきたのである。
そんな感慨の後に演奏された「Galapagos」では間奏の寸劇でRYU-TAがこの会場のマスコットキャラの鳴き声を真似したりするのであるが、そもそも「鳴き声あるのか?」とも突っ込まれていただけに、今回はどこか即興感も強かったようなイメージだ。今やフェスの名物になっているラーメン屋の店主だったりと、このフェスにおいてRYU-TAが負っているものは非常に大きいが、やはり何度聴いてもとんでもない展開と構成の曲だなと思う。
そしてGENは
「生きてると会えなくなっちゃう人がいたり、悲しいこともたくさんあるけど」
と言ったが、それは憧れのバンドのメンバーだったり、仲間のバンドのメンバーだったりという想いが確かに滲んでいた。GENがその人たちのことを思い浮かべているからこそ、こちらにも浮かんでくる顔があるし、こうしてフォーリミのライブが見れていること、このフェスに来ることができていることをこれ以上なく尊く思えるのだ。
そんな思いを込めるようにして真っ暗になったステージでGENがベースを鳴らしながら歌い始めたのは「Grasshopper」であり、緑色の照明がメンバーを照らすのも含めてこの草原が広がる会場にピッタリな曲だ。間奏ではRYU-TAの合図によって高速サークルが起こり、手拍子が響く中でGENが
「明日の自分はどうだ?」
と歌うとサビに突入してダイバーたちが飛んでいく。
「なりたい自分の手を離すな」
というフレーズの通りに誰もが楽しみたいようにこの曲を、このライブを楽しんでいる。
そして今やフォーリミのライブが終わった後のSEとしても流れるくらいになった新たな名曲「Honey」では
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
というBメロで観客が頭の上で指をくるくると回すのももはや恒例であるが、この場で初めて聴くこの曲は、結局ずっとフォーリミが好きと思わせてくれる。それくらいにやっぱりフォーリミの何がそんなに好きかって、曲が好きなんだと思うくらいのメロディの力をこの曲は持っている。
そして他の出演者よりも少し長いとはいえ、トリのライブもあっという間に最後の曲へ。
「再会を願って!」
とGENが言って演奏された「Terminal」は、この日この会場で見れた景色によって、
「最高な世界になったら
きっと愛せるんじゃないか
何処にある ここにある
最後は 君といたいから」
というフレーズの通りの世界にようやくたどり着いたんだと思えた。そのフレーズをGENが思いっきり力と感情を込めるようにして歌っていたからこそ。コロナ禍の中でも大切なものを守るようにして戦い続けてきたフォーリミだからこそ作ることができた世界。そこにいることができる幸せを寒さで震えながらも噛み締めていた。
そんな寒さによってすぐにアンコールでメンバーが再びステージに出てくると、
「ライブハウスツアーをやってきたんだけど、そこで育ててきた曲!」
という「Harvest」が、まさにツアー初日の千葉LOOKではまだライブでの形が変わっていなかったのが、HIROKAZの鳴らすギターとGENのボーカルだけという形から始まり、曲途中からKOUHEIの激しいツービートを基軸にしたパンクバンドサウンドになるという完成形をこのフェスで見せられるようになっていた。去年のこのフェスから今年のこのフェスの間に「Harvest」のリリースとツアーがあったからこそのこの初日のセトリでありライブである。
そんなこの日の締めは新しい自分自身に生まれ変わるための「Squall」。バンドの演奏のキーマンであるKOUHEIの激しいドラムが叩き鳴らされると、このフェス自体も、そこにこうして足を運んでいる我々自身もこの曲を聴いて生まれ変わっていくような。そんな感覚が今年は確かにあった。去年も楽しかったけれど、それとは比べ物にならないくらいに本当に楽しいYON FESの初日はこの曲によって完遂された。それはそのままバンドにとっても我々にとっても翌日への確かな力になっているはずだ。
演奏終了後には出演者総登場での写真撮影。ウルフルズだけはスケジュールの都合でいなかったけれど、代わりに去年「monolith」をネタに使うようにしてやりたい放題やりまくってこのフェスを出禁になったENTHのメンバーがいることをGENがいじっていた。ある意味では出演していなくてもENTHは美味しい立ち位置にいるということであるし、そんな空気こそがYON FESが積み重ねてきたものであると実感した初日だった。
1.Every
2.Keep going
3.My HERO
4.Chicken race
5.Jumper
6.monolith
7.Galapagos
8.Grasshopper
9.Honey
10.Terminal
encore
11.Harvest
12.Squall
今年は公園内にジブリパークが竣工して本格稼働を始めたことによって、名古屋から45分ほどのリニアモーターカーの駅を出てからの景色もローソンが公園入り口に出来たりと大幅に変化している。フェスの会場入り口までの動線は去年とは変わらないが、去年は立ち位置が区切られていたスタンディングエリアは完全に区切りがなくなり、去年は隣り合う形で設営されていた2つのステージ、SKY STAGEとSAND STAGEも2019年までの異なるエリアに戻っている。ある意味ではYON FESの完成形と言っていいかもしれない。前日までは降っていたという雨は止んだものの、去年もこんな感じだったな…と思うくらいに風が冷たくて寒い。
11:00〜 キュウソネコカミ [SKY STAGE]
10時20分くらいからすでにサウンドチェックに現れたメンバーたちが曲を演奏し、
ヨコタシンノスケ(キーボード&ボーカル)「リハってワンコーラスしかやらないみたいな感じがあるけど、キュウソはフルでやります!」
と言って他の曲のワンコーラスより短い「家」をフルで演奏したり、「ファントムバイブレーション」でリハから合唱を巻き起こしていた、キュウソネコカミ。しかもヨコタは去り際に
「YON FESが1年間のフェスの始まり。そのトップバッターである俺たちが今年のフェスの始まり。でも今年のフェスがどうなるのかを決めるのは君たちやから!君たちが盛り上がれば、今年は声出しとかもできてフェスって楽しそうだなってなるから!」
と前説まで行ってしまうくらいに気合いが漲っている。
フォーリミのメンバーが登場しての前説には今年は中日ドラゴンズのマスコット、ドアラまでも登場。特に何かをしたわけではないけれど、YON FESが確実に年を経るごとに愛知県の象徴的なフェスになっていることを実感できるようになってきている。
「限りなく2019年までの楽しみ方ができるように」
というGENの言葉からも去年とは全く違う空気感を感じられる。
そんな前説からおなじみのFEVER333のSEでメンバーが本番として登場すると、
「西宮の5人組、キュウソネコカミです」
というヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)の挨拶から、
「YON FES、目が覚めてるのかー!」
と言っておなじみの「MEGA SHAKE IT!!」からスタートすると、客席では野外フェスでは実に久しぶりのサークルモッシュが発生し、曲中のハウスミュージックのくだりでも振り付けを踊るだけではなくて肩を組んで踊っている人たちもたくさんいる。この時点で「ああ、コロナ禍になる前のロックフェスだ…」と思ってしまうくらいに感動してしまったのだが、それは「ビビった」でも同様で、ヨコタが
「開いたの閉じるタイミングわかってるかー!」
と言いながらサークルを作っている客席を指差す。それはつまりサークルができていることがしっかり見えているということであるが、曲中のクソワロダンスではやっぱりキュウソのベースはこの男じゃなくちゃといううねりまくるベースを弾くカワクボタクロウも独特の動きで踊りまくり、久しぶりのこのフェスを楽しんでいることがよくわかるのであるが、確実にそれ以上に観客たちが楽しみまくっている。久しぶりにサークルやモッシュで楽しめるフェスが帰ってきたんだからそれはそうだ。この機会に楽しまないといつ楽しむんだというくらいに。
そのサークルが客席にできるのを予知していたかのように演奏された「KMDT25」ではサークルが肩を組んだ盆踊りサークルへと変化していき、ステージ背面のライトも「DOUTEI」という文字を映し出すという地味ながらも曲に合わせた愛のある演出を見せてくれるのであるが、オカザワカズマ(ギター)も思いっきり体を動かして踊るようにして演奏している。ヨコタが盆踊りの拍子を口にしながら手を叩き、セイヤのボーカルもテンションが上がりまくって前のめりになって叫びまくっている。
するとここでセイヤが特別ゲストを呼び込もうとするのだが、かつての出演時に披露したGENとの「NEKOSAMA」かと思いきや、なんとセイヤが自身のギターを渡して弾いてもらう形でフォーリミのHIROKAZがステージに登場して「家」をコラボする。曲が短すぎるだけに一瞬のコラボだったが、セイヤが2日前にLINEして実現したものらしく、その急造っぷりによってかHIROKAZも少し緊張した面持ちだったのが面白い。
そしてリハ中にも宣言していた通りに「DQNなりたい、40代で死にたい」ではセイヤがステージ前まで出て行って客席の中におなじみの筋斗雲を投げ込む。それはつまりセイヤが客席に突入していくということの合図でもあるのだが、その筋斗雲すら流されてしまうことによって、
「おい、まだ乗ってないぞー!筋斗雲すら支えられないようになっちまったのかー!」
と笑わせながら、ようやく安定した筋斗雲の上に乗っかる。つまりは本当に久しぶりにセイヤが観客の上に降臨するのを見ることができているのだ。それは今までは全くしなかった感動という感情が湧き上がるのは、こんなバカバカしいような光景すらも見ることが出来なかった日々を過ごしてきたからだ。後でフォーリミのメンバーもこの光景を見て感動していたと言っていたが、きっとそう思った人もたくさんいるはずだし、やはり
「ヤンキー怖い」
のフレーズを大合唱できるのも、セイヤが観客の上を転がっていくのも、ステージ横のスクリーンにセイヤに被るようにリフトした観客が映り込みまくるのも、その全てが楽しくて仕方がない。自分はキュウソのファンとしてコロナ禍以降もワンマンなどのツアーに行き続けてきたが、この光景を見て「やっぱりこれだよな」と思った。それくらいにキュウソのライブの本領が発揮されていた。
「もう、懐かしいっていうか新しい!なんか戻ってきたっていうより新しく始まったっていう感じがしてる!お前たちの背中が久しぶりに見れて嬉しかった!」
と、本当に我々の楽しんでる姿を見ているんだなということを感じさせるようなセイヤのMCから、ソゴウタイスケ(ドラム)によるビートのイントロで始まった「The band」ではセイヤが強制的にこのフェスの全出演者への「ありがとう」を観客から伝えさせる。それはやはり我々が一緒に歌うことができるからであるが、ソゴウはマイクを通さなくても歌詞を口にしている。それはそのくらいにこの曲の歌詞をメンバー全員が精神の髄まで共有しているということである。
そんなライブの最後には
「最新にして最強のキュウソ」
を見せるための、リリースされたばかりの最新アルバムのタイトル曲である、不安を抱えていることも率直に口に出しながら前に進んでいく「私飽きぬ私」でキュウソの熱血っぷりをしっかり見せつけながら大合唱を巻き起こす。それは誰しもが不安を抱えながら生きていて、そうしたことから逃れることはできないけれど、それでもライブという場に来ればそれを乗り越える力を貰うことができるということを感じさせてくれた。つまりは今年のフェスは最高に楽しくなることを予感させるどころか確定させてくれるくらいの、フェスの始まりとしてのキュウソのライブだったということだ。
前説でフォーリミも言っていた通りに、「hello」の小声の合唱すら何か言われそうだった緊張感が強かった去年とは変わって今年は2019年までの楽しみ方に戻っている。だからダイブもサークルも起きる。そうした楽しみ方で周りの人たちが笑顔になっていると自分も楽しくなる。だから去年よりも楽しくなることがこのキュウソの時点でハッキリとわかった。それを感じさせてくれるためには、やっぱりキュウソがトップバッターじゃないといけなかった。それを完璧に全うしたライブをやったキュウソの凄さと楽しさはきっとこれから先の状況でもっと多くの人に伝わっていくはず。そうしたフェスで思いやりとマナーを何よりも大切にしていかなければいけないことも。
リハ.推しのいる生活
リハ.家
リハ.ファントムバイブレーション
リハ.住環境
1.MEGA SHAKE IT!!
2.ビビった
3.KMDT25
4.家 w/ HIROKAZ
5.DQNなりたい、40代で死にたい
6.The band
7.私飽きぬ私
11:35〜 See You Smile [LAND STAGE]
昨年の場所から2019年までの位置に戻ったLAND STAGEにトップバッターとして登場するのはSee You Smile。昨年のフォーリミの対バンツアーに呼ばれてから一気にこのフェスへの出演となった。東京の5人組バンドである。
一応バンドのプロフィール的には「TOKYO POP PUNK」ということになっているのだが、自分はむしろFACTが日本でデビューした時に初めてライブを見た時を思い出したのは、コーラスも務める厳つい髭面のEnomotoのベースと常に笑顔なGiriodaのリズムの重さと、ギターを抱えて飛び跳ねまくるAyatoとSeanの音と姿によってそう思えたところもあり、Ruiの人懐っこさを感じさせるボーカルと、観客を全員座らせてから一気に飛び上がらせるというパフォーマンスがアメリカのポップパンクバンドというよりは日本のラウドロックバンドのキャッチーさを抽出しているバンドであるように感じられたからだ。
実際にその「キャッチー」であったり「ポップ」であるというのはハイトーンであるRuiの声質によるところも大きいと思うけれど、そのキャッチーでありながらも激しいサウンドによって観客はダイブしまくりという、距離が近いこのLAND STAGEの特性を最大限に発揮するような光景を生み出している。
そんな光景を見たRuiは
「俺たちにも夢があります。それは俺たちもいつかこういう野外フェスを主催したいっていうこと。今日フォーリミがこのフェスに呼んでくれて、野外フェスっていうのはこういうものだっていうのを俺たちに教えてくれました!」
と自分たちの夢とフォーリミへの感謝を口にしていたが、そうしたMCを聴くとこのフェスを立ち上げた時はまだ若手と言える立ち位置で、このフェスを作ることによってそこから一歩抜け出したフォーリミが今はこうしてカッコいい若手をフックアップする先輩になったのだと感じる。そしてその意思はこうしたバンドたちに受け継がれていく。いつかこのバンドが主催フェスを開催するんなら、どこでどんなバンドが出るフェスになるんだろうか。まだ想像もつかないが、そのフェスの光景がこうした熱狂を生み出すものになることだけはわかる。
12:15〜 My Hair is Bad [SKY STAGE]
このフェス初年度開催時から皆勤出演を続ける、My Hair is Bad。今年ももちろん出演し、今年はこの早い時間である。
サウンドチェックからそのままメンバー3人がステージに居続けて開始時間を迎えると3人が手を合わせて気合いを入れ、
「新潟県上越市My Hair is Badです。フォーリミ、今年もありがとう!」
と椎木知仁(ボーカル&ギター)が口にして「カモフラージュ」からスタートすると、やまじゅんこと山田淳(ドラム)の一打一打がめちゃくちゃ強く、それによって普通ならギターの音量によって感じる爆音っぷりをリズムから感じる。それはバヤリースこと山本大樹のコーラスを重ねながらもステージを激しく動きながら弾くベースもそうであり、マイヘアのライブバンドとしての強さがこのリズム隊によって担保されているものであることがわかる。先日の日本武道館ワンマンでは最新のスピーカーシステムを取り入れて音響も進化させていたが、そうした取り組みは間違いなくフェスにも生きている。
「今の若さが羨ましくなるまで」
などのフレーズから感じられる青春感は春の野外というシチュエーションにこの上なく似合っている。
それはそのまま学生時代の情景を切り取った「サマーインサマー」へと続いていく流れもそうであり、
「「大人になっても、
また今日と同じこの5人でこの海に来ようよ。」」
というフレーズと同じようにこのフェスに来年もみんなで来る約束をしている人たちもたくさんいるんじゃないかと思う。年末には心配な状態にもなってフェス出演をキャンセルした椎木のボーカルも絶好調でしかないくらいに前のめりである。
そんな椎木が
「僕は1992年3月に生まれて、ずっと野球選手になりたかった…」
というおなじみのセリフを口にした後に演奏された「ドラマみたいだ」では、それまでは曇天だった空が「サマーインサマー」で少し青くなってきて、この曲では太陽が出てくるくらいに見事に晴れてくる。それこそがまるで、ドラマみたいだった。
そんな陽の照りつける中で椎木が
「忘れたくないことも覚えてる。失くしてから後悔するようなことを俺はもうしたくない。あの時も今と同じような季節だった」
と言って鳴らされたのは、春に恋に落ちたことを歌った「真赤」。そのノイジーなギターサウンドがこの広大な会場を飲み込み、たくさんの人が腕を挙げるだけではなくてダイバーまで続出している。ミュージックステーション出演時に話題になった曲でもあるが、そうした場所に出て行ってもやはりマイヘアのライブはライブハウスのもののままだということをこの光景が示してくれている。
「みんな一緒に歌ってくれ!」
と椎木が叫びながらバンドきってのグルメである山本がジョッキを持つポーズをしたりする「仕事が終わったら」はヤケクソ的なノリの仕事後の飲酒ソングであるが、個人的にはこの日は気温が寒すぎて全然酒を飲む気にはならなかったのである。
そして椎木のギターのイントロが一気にハードさを増していく「ディアウェンディ」では山本がステージ前に出てきてベースを弾く中で椎木は
「このフェス皆勤賞のMy Hair is Badです!フォーリミの4!4月の4!幸せの4!いろいろあるけど、しいきの4だ!椎木主催のフェスにようこそ!」
と今年も自身の主催フェスにしてしまう椎木であったが、これは間違いなくこのフェスでしか聞けないし、そう言ってしまえるくらいに椎木もこのフェスを愛しているということだ。
そんなハードなサウンドとのコントラストが激しい「味方」はフォーリミやマイヘアを始めとするこのフェスの出演者たちが我々の味方であってくれると思えるように壮大に響くと、
「フォーリミに大歓声と拍手が降り注ぎますように!」
と叫んでから、今や新たなマイヘアの代表曲になった「歓声をさがして」が演奏される。ここにいた人たちの「僕の音楽」もまたフォーリミでありマイヘアであるはずだと思っていたら、最後にトドメとばかりに「告白」を演奏して、やはりダイバーが続出しまくるという光景を生み出してみせた。
ラブソングも多いバンドであるけれど、やっぱりこうした光景を作れるバンドであることはずっと変わらない。ずっと出演してきたこのフェスでそんなバンドの本質を示したような、今年のマイヘアのYON FESでのライブだった。
リハ.アフターアワー
リハ.グッバイマイマリー
1.カモフラージュ
2.サマーインサマー
3.ドラマみたいだ
4.真赤
5.仕事が終わったら
6.ディアウェンディ
7.味方
8.歓声をさがして
9.告白
13:00〜 Age Factory [LAND STAGE]
マイヘアの後のAge Factoryという、ソリッドなサウンドのギターロックバンドが並ぶというこの流れもまたフォーリミが考えたこの1日の作り方であろう。奈良のライブハウスの雄がこのフェスのステージに立つ。
おなじみのサポートギターを加えた4人編成で登場すると、髪をピシッと整えていることによってよりイケメン感が強くなっている清水エイスケ(ボーカル&ギター)が歌い始めたのはアルバムとしては最新作の「Pure Blue」収録の「SKY」であり、マイヘアのライブ時に晴れてきた空がタイトルに合わせるようにさらに晴れ渡って太陽まで出てくる。これまでにも何回か野外フェスでのライブを見ているが、その全てでいつも暑いくらいに晴れていることしかなかっただけに、実はこのバンドは超晴れバンドなのかもしれないと思う。
「今日は歌えるみたいだから、みんなで歌える曲を持ってきたんだよ」
と清水が言うと、まさに観客全員で拳を振り上げて歌う「Dance all night my friends」から増子央人のドラムも、西口直人のベースも一気に力強さを増していく。西口はコーンロウ的な髪型のいかつい出で立ちながらも「Merry go round」「HIGH WAY BEACH」ではキーが高いコーラスを重ねたりと、プレイヤーとしては実に繊細さも備えている。それがリズムに浸って体を揺らす要素になっている。
すると清水とサポートメンバーのギターが一気に激しくなり、叫ぶようにしてタイトルフレーズを歌う「1994」では拳とともにダイバーも続出する。そのサウンドをさらに強く感じさせるのは増子のドラムであり、もはや超人ドラマーの1人と言っていいレベル。ロックバンドに1番大事なのはドラムだととあるバンドも言っていたが、このバンドがカッコいいのは間違いなくその要素によってである。
とはいいながらもそこまで大合唱になるような流れでもなかった(もちろん合唱は起きていたが)のが一変したのは、勇壮なコーラスと合唱が轟きまくる「GOLD」で、それを聴いていて身震いするくらいに大声で歌える、その鳴らしている音の衝動を体で表現できるAge Factoryのライブが戻ってきたのである。清水はもう整えてでてきた髪型が汗でぐちゃぐちゃになっている。
「この青い空に向かって高く飛ぼう!」
と言って放たれたのは季節的にはまだ会場を飛ぶことがない「TONBO」であるが、そのトンボがいない代わりに観客が人の上をガンガン飛びまくっていく。Age Factoryの鳴らしている音の凄まじさが、曲の激しさがそうせざるを得ないくらいの光景を生み出しているのである。
そして
「みんな、駆け抜けるように速く走ろう!」
と清水が言って最後に演奏された「See you in my dream」では超高速サークルモッシュまで起こる。この「GOLD」以降の流れは「Ageのライブってこんなに激しいんだっけ!?」と思ってしまうくらいに、暴動と言えるレベルの熱狂っぷりで、西口のファルセット的なコーラスと増子の一気に加速するビートがそれをさらに煽る。つまりは
「今夜だけは眠れそうさ」
というフレーズの通りの激しさだったのだ。もう改めてAge Factoryってとんでもないバンドだな、とこのメンツの中でも思わされるようなライブ。なんならこのフェスの裏MVPと言ってもいいくらい。これをライブハウスで体感したくなってしまう。
リハ.Everynight
リハ.Feel like shit today
1.SKY
2.Dance all night my friends
3.Merry go round
4.HIGH WAY BEACH
5.1994
6.GOLD
7.TONBO
8.See you in my dream
13:40〜 クリープハイプ [SKY STAGE]
2019年以来の出演となる、クリープハイプ。ここまでの激しい流れとはかなり異なるタイプのバンドであるが、かつて「鬼」のMVにマイヘアの椎木が出演していたこともあり、フォーリミが直系の後輩と言える両者の関係性をわかっているメインステージの流れであると言える。
いつものようにSEもなくふらっとメンバー4人がステージに登場すると、サウンドチェックでは凄まじい迫力の歌唱で「身も蓋もない水槽」を歌っていた尾崎世界観(ボーカル&ギター)がギターを持たずにステージ真ん中に立ち、長谷川カオナシ(ベース)がキーボードを弾く「ナイトオンザプラネット」からスタート。また天気が微妙な曇り空になってきているが、それがむしろこの曲の雰囲気に似合うようにゆったりと体を揺らしながら、曲が描き出す夜の情景に脳内で浸らせてくれる。
尾崎がギター、カオナシがベースに持ち替えると不穏な同期のサウンドが流れて歓声が起こるくらいの人気曲になった「キケンナアソビ」では尾崎がマイクスタンドに腕を乗せて
「危険日でも遊んであげるから」
と歌うことによってさらなる歓声が湧き上がる。このモッシュやダイブとは全く無縁の2曲で完全に会場の空気をクリープハイプのものに塗り替えてしまっている。
「去年の年末に他に何組かバンドがいる中でフェスの打ち上げをやってたんだけど、その時にGENが
「YON FESのブッキングを始めてて、いろんなバンドに電話してるんですよね〜」
って言ってたんだけど、俺には1ヶ月後くらいにLINEが来たのはなんでなんだろうか(笑)」
とブッキングの手法の違いに尾崎が違和感を唱えながら、
「雨が降ったり止んだりでまだ濡れてるだろうからセックスの曲を」
と言うと、カオナシがステージ前に出てきてイントロのベースを弾くのは「HE IS MINE」であり、声を出せることによって思いっきり
「セックスしよう」
の大合唱が起こり、しかもサークルモッシュまでも起こる。それはクリープハイプのライブの強さを示しているかのようですらあるし、メジャーデビュー時くらいまではライブでダイバーが起きていたバンドだということを思い出したりもする。
すると小泉拓(ドラム)がバスドラを踏み、カオナシのベースも重なるライブアレンジのイントロによる「イト」が観客を楽しく踊らせてくれ、小川幸慈も楽しそうにステージ前まで出てきて笑顔でギターを弾きまくっていると、その小川がイントロからさらにギターを弾きまくる「愛の標識」へ。銘菓の部分で歌詞を変えていたのかどうかまではしっかりは聞き取れなかったが(そもそも名古屋銘菓をあまりわからないけれど)、それでもやっぱり尾崎のボーカルはここに来て覚醒を果たしたかのような迫力でもって響いている。
そして尾崎がギターの弾き語りのようにして「栞」のサビを歌い始めるのであるが、普段よりも長くその弾き語り部分を歌うと、
「新しい街に行ってもげん…GEN、来てないな。来て欲しい?来るかどうかわからないけど、やってみましょう」
と言ってからバンドで「栞」を演奏し始めると、やはりステージにGENが走って登場して前回出演時同様の邦ロックシーンハイトーンボーカル2大巨頭のツインボーカルバージョンで「栞」を歌う。だからこそそこにはキーを下げたりという違和感が全くないし、そもそもはGENも参加したFM802の企画で生まれた曲であるために、GENの曲でもあるような感じすらある。演奏が終わってもハグしたり握手をしたりせずに各々がバラバラにステージから去っていく姿は馴れ合いとかではないこの両者の音楽家同士としてのリスペクトであることを今年も感じさせてくれた。このフェスでのクリープハイプのライブはこのフェスでしか見れないものを確かに見せてくれる。だからこそ、また来年以降も是非。
リハ.身も蓋もない水槽
1.ナイトオンザプラネット
2.キケンナアソビ
3.HE IS MINE
4.イト
5.愛の標識
6.栞 w/ GEN
14:25〜 SHANK [LAND STAGE]
マイヘア同様にこちらもこのフェス皆勤賞の SHANK。去年まではメインのSKY STAGEに出演していたが、今年はこのLAND STAGEへの出演となったのはメインステージの出演者の豪華さゆえだろうか。
リハでスカのリズムの曲をやっていただけに、本編は何から?と思っていたら、庵原将平(ボーカル&ギター)が
「長崎、 SHANKよろしくお願いします」
と挨拶する間に松崎兵太(ギター)がイントロを鳴らして「Set the fire」からスタートし、早くもダイバーが続出しまくるのであるが、客席からステージに向かってペットボトルが飛んだことによって庵原は思いっきり客席に向かって中指を立てていた。それは前説でフォーリミが注意事項として言っていたことなので当然ではあるが、続く松崎のイントロのギターがダークさを醸し出す「620」でも今度は松崎の方に向かってペットボトルが飛んできて、またしても庵原は中指を立て、ペットボトルを回収したスタッフもキレ気味だったのはハラハラしてしまった。しかしそこはさすがフォーリミのお祭りだということをよくわかっているメンバーなだけに、決して怒りを口にすることはなかった。これが自分たちの主催フェスのBLAZE UP NAGASAKIとかだったらまた違っていたのだろうけれど、フェスの空気を悪くしないようにしていたであろうメンバーたちは実に大人である。
池本雄季(ドラム)のイントロのキメの連発で観客がそのキメに合わせて腕を挙げる「Good Night Darling」と、庵原のパンクバンドとして理想的な攻撃性を持ったボーカルを生かしたパンクナンバーを連発すると松崎は
「最近、近所のタバコ吸ってる中学生がiQOSに変えてた(笑)中学生はiQOSじゃなくて普通のタバコを吸え!」
とここで言う意味がよくわからないメッセージを放つと「Departure」でさらに加速したかと思ったら、
「SHANKの中で1番人気がない曲を(笑)」
と言って「Karma」が演奏されたのは去年このフェスでホヤホヤの新曲として演奏したら客席が微動だにしないくらいに固まってしまったという苦い記憶があるからだろうか。
しかしそこから「Hope」で再び加速してダイバーの嵐という光景を生み出すことによってタイトル通りにパンク・メロコアシーンに希望が戻ってきていることを感じさせると、
「コロナ禍に作った、光の方へ向かっていこうっていう曲」
と言って演奏された「Bright Side」がやはりその言葉の通りに、この曲が生み出された時の状況を抜けて光の方へ踏み出していることを音と光景によって感じさせてくれる。
すると今までもこのフェスで演奏されては SHANKのライブのハイライトであり、このフェスのハイライトにもなってきた「Wake Up Call」が太陽の光が射す中で演奏される。それが穏やかな曲のサウンドも相まって本当に美しいものとして感じられたし、それはやはり SHANKのメロディの持つ力によってそう感じられるのだ。メロディックパンクのメロディの部分をこのバンドは最大限に体現している。
庵原「フォーリミ、毎年読んでくれてありがとうございます。兵太、言い残したことは?」
松崎「今年もBLAZE UP呼ぶんでよろしくです」
庵原「これを癒着と言います(笑)」
と互いの主催フェスに呼び合うことを告げると、「Honesty」でダイバーを続出させ、30分の持ち時間であるために定番曲が並ばざるを得ない中で歓声が起こるくらいにこの日の中では意外な選曲であった「Two sweet coffees a day」で会場を揺らして締め…かと思いきや最後にはやはりトドメとばかりに「submarine」まで放つ。かつてのように時間が余ってGENのリクエストで「Restart」をやったりという特別さはなかったが、そう感じるくらいにこのフェスにおいてSHANKのライブを見るのが当たり前のことになっているということだ。
去年このフェスにSHANKが出た時は自分たちの普段のライブでもダイブやモッシュなどはもってのほかという状況だった。それは今やハウステンボスという地元長崎最大の観光名所までも自分たちのフェス会場として使えるくらいにいろんな人たちと関わっているからこそ、そうした人たちを裏切ったり悲しませたりできないことをわかっているバンドだからであるが、そうして守るためにパンクを鳴らしてきたSHANKのライブもまた変わりつつある。そうした楽しみ方が戻っても、絶対に自分たちの思うカッコよさの筋は曲げないだろうことがわかるからこそ、音楽はもちろん生き様すらもカッコいいバンドだと思えるのだ。
リハ.Life is…
リハ.Take Me Back
1.Set the fire
2.620
3.Good Night Darling
4.Departure
5.Karma
6.Hope
7.Bright Side
8.Wake Up Call
9.Honesty
10.Two sweet coffees a day
11.submarine
15:05〜 ウルフルズ [SKY STAGE]
今年1番ラインナップの中で違和感がある出演者は間違いなくこのウルフルズだろう。世代的にフォーリミのメンバーたちは大ヒット曲たちを聴いて育ってるとはいえ、なかなか接点らしい接点が思い浮かばない存在であるからだ。
近年お馴染みの桜井秀俊(ギター。真心ブラザーズ)と浦清英(キーボード)というサポート2人を加えた5人編成で登場すると、青いスーツ姿で登場したトータス松本(ボーカル&ギター)がアコギを持って
「イェーイ 君を好きでよかった」
と「バンザイ 〜好きでよかった〜」を歌い始める。その瞬間に巻き起こる大合唱と拍手によって、このバンドがこのフェスのステージに立っているという凄まじい違和感を見事に消し去ってくれる。ワンコーラス終わる度に曲中であっても拍手が起こるというのも時代を超えて聴き継がれてきた名曲の力によるものである。誰しもが知る大ヒット曲の強さをこのフェスでこんなにも感じさせてくれる存在は今までいなかったかもしれない。
さらにはトータスがエレキに持ち替えて、ジョン・B・チョッパー(ベース)とサンコンJr.(ドラム)のコーラスに合わせて観客がタイトルフレーズを合唱する、各々が抱えていたりライブシーン、音楽シーンが直面している問題を全肯定してくれるようなエネルギーに満ちた「ええねん」から、再びトータスがアコギを弾きながら
「悲しけりゃ 泣けばいい また笑えるように」
というフレーズがこの日GENの心にも刺さった「笑えれば」とヒット曲を連発。改めてウルフルズというバンドが30年間に渡ってシーンをサバイブしてきた理由がその楽曲の力によるものであることを感じさせてくれる。
「04 Limited Sazabys、呼んでくれてありがとう〜」
と明らかにバンド名を言い慣れてない感じでトータスが挨拶すると、昨年リリースされた最新アルバム「楽しいお仕事愛好会」収録の、実はウルフルズが本格的なファンクバンドであることをそのサウンドで、30年間続いてきて(活動休止期間もあったけど)なおもこれから先も続いていくことを歌詞で示す「続けるズのテーマ」からはメドレーに突入していく。昨年末のキュウソネコカミとの対バンに出演した時もメドレーを挟んでいたが、そうして短い時間に新作曲を始めとしたあらゆるタイプの曲を詰め込むというのがこのバンドならではのフェスの戦い方だ。ハンドマイクになったトータスが頭の上で腕を素早く左右に振り、それが客席にも伝播していく「バカサバイバー」はコロナ禍を生き延びたサバイバーたる我々のテーマソングのように響き、ジョン・Bとサンコンの会話劇のような掛け合いを曲中に導入した「大阪ストラット」という代表曲までもがこのメドレーの中に入ってきている。
かと思えばシンセの壮大なサウンドが響き渡り、トータスの歌唱力の凄まじさを最大限に体感させてくれる「センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜」あたりではこのバンドが大ヒット曲だけで生きているバンドではないことを示し、トータスと観客がタイトルフレーズに合わせて「A・A・P」と体で文字を作る「A・A・Pのテーマ」で一緒にライブを作る楽しさを感じさせ…と、メドレーとなると基本的には同じようなサウンド、リズムの曲を続けるというパターンが多いものになりがちだが、そうではなくてバンドのあらゆるタイプの曲を繋げて演奏できるというのはウルフルズのライブアレンジ力と演奏力が長い歴史を重ねて育まれてきたことがよくわかるし、代表曲、大ヒット曲はフル尺で、今の自分たちの新しい曲たちはメドレーで、というバランスの取り方もさすがだし、最後に戻ってくる「続けるズのテーマ」でやはりウルフルズのファンクバンド感としてのリズムの跳ね感や強さを感じさせてくれるのだ。
そんな見事なメドレーをやり切ったバンドに惜しみない賛辞の拍手と歓声が送られると、桜井がギターをカッティングして始まったのはもちろん「ガッツだぜ!!」で、この最後に来ての一気に観客を目覚めさせる大名曲の力に唸らされてしまう。それくらいにたくさんの人が腕を挙げてタイトルフレーズを叫んでいたからだ。もはやメンバークラスの貢献度の桜井のギターソロと浦のキーボードソロも見せながら、このフェスとこのフェスに集まった人たち、さらにはこれから先に開催される全てのフェスにガッツを注入するかのようだった。曲がリリースされた時はまだ生まれてなかったであろう少女がめちゃくちゃ嬉しそうに踊っていたのを見て、ウルフルズがこのステージに立った理由が確かにあったと思った。
そうやってずっとウルフルズはたくさんの人を励まし、音楽で力を与え続けてきた。そんなバンドが30周年という大御所のキャリアに突入しながらも、パッと見ではアウェーであろう若手バンド主催フェスに出演するという最前線に立ち続けている。エレファントカシマシもそうであるけれど、ライブで生きるバンドが目指すべき姿をそのステージから見せてくれている。最敬礼。
1.バンザイ 〜好きでよかった〜
2.ええねん
3.笑えれば
4.メドレー
続けるズのテーマ 〜 バカサバイバー 〜 大阪ストラット 〜 センチメンタルフィーバー 〜あなたが好きだから〜 〜 A・A・Pのテーマ 〜 続けるズのテーマ
5.ガッツだぜ!!
15:50〜 FOMARE [LAND STAGE]
同じレーベルのバンドたちが多数出演しているだけにすっかりすでに出演していたような気になっていたが、FOMAREがこのフェス初出演。フォーリミの同世代ではなくて、この日の後輩枠のバンドの筆頭である。
メンバー3人がステージに登場すると、オグラユウタ(ドラム)が立ち上がって客席を眺める中、アマダシンスケ(ボーカル&ベース)がタイトルコールをしてステージ左右に駆け出していく漲る期待をパンクなサウンドとして炸裂させる「Frozen」からスタートするのであるが、ワンコーラス終わったあたりでアマダが
「ちょっとストップストップ!」
とバンドの演奏を止める。あまりにダイバーが続出しまくったこともあってか、客席から×マークを作っている観客の姿が見えていたらしい。そうして一度客席が落ち着くのを確認してから再度最初から演奏を始めるのであるが、この辺りはメンバーがどれだけ客席を見ながら演奏しているか、その客席や観客を気にかけて演奏しているかということを示している。FOMAREの3人が持つ優しさが表れているというか。
その優しさが曲として表れているのは昨年リリースの最新アルバム「midori」収録の、アマダの歌詞の言い回しやタイトルフレーズの使い方が実に上手い「80%」から、タイトル通りに優しさについて歌った「優しさでありますように」という歌モノ曲の流れであり、特に「優しさでありますように」はこうした光景を生み出す激しいノリのフェスだからこそ、そこに優しさを忘れないようにというメッセージとして響いてくる。アマダの歌唱も実に伸びやかである。
このフェスにようやく出演することができた喜びをアマダが語ると、歌い出しから大合唱とともに壁のようなリフトが続出する「Lani」でカマタリョウガのギターも鋭く鳴らされ、アマダはマイクスタンドの向きを動かしながらあらゆる方向の客席を向いて歌う。
その「Lani」もそうであるが、こうして大合唱できることのライブの楽しさや喜びを感じさせてくれるのが、メンバーとともに観客が大合唱する「愛する人」であり、合唱とともにダイブもあり、飛び跳ねまくる人もいて…という光景がステージ横のスクリーンに映ると誰もが笑顔だ。CM曲として地上波でも流れたことによってFOMAREの名前を世の中に知らしめた新たな代表曲でもあるが、やっぱりライブで聴いていると
「当たり前だったその声がただ恋しいだけなんだ」
というフレーズはライブのこの瞬間のことを歌っている曲だと思えるのだ。
するとアマダは自分たちが自主制作CDを作ってリリースツアーを回っていた頃、ファイナルを名古屋で行った翌日にYON FESが初開催されるということで、カマタとともに名古屋の亜熱帯というネカフェに泊まって2人で翌日のフェスに観客として参加したというエピソードを語る。つまりはそれくらいに思い入れがあって出演したかったフェスということだが、その思いを曲として示したのはフォーリミ「monolith」のカバーであり、ワンコーラスのみでさすがにキーも下げていたけれど、続出しまくるダイバーの多さとソリッドなパンクサウンドはこのバンドが間違いなくフォーリミの影響を受けている、パンクシーンから始まったバンドであることを自分たちの音とステージで示していた。この瞬間だけ何故か雨が降り出してきたのも演出かと思えるくらいに。
だからこそ最後に演奏されたのも「Continue」であり、最後にさらなるダイブの嵐を巻き起こしたのだ。このフェスに出るといろんなバンドが持っているパンクさを感じられることが多いけれど、ポップな曲やラブソングの名曲もあるだけに幅広い音楽的趣向を持っているバンドであるFOMAREの軸がパンクにあるということを改めて示してくれるようなYON FES初出演だった。次はもしかしたらSKY STAGEで見れるかもしれないという期待を抱いてしまうくらいに。
リハ.夢から覚めても
リハ.新曲
1.Frozen
2.80%
3.優しさでありますように
4.Lani
5.愛する人
6.monolith
7.Continue
16:30〜 SUPER BEAVER [SKY STAGE]
サウンドチェックでは渋谷龍太(ボーカル)以外の3人が出てきておなじみのセッション的な演奏でグルーヴを高めていく。今やこの2日間で最も動員力のあるバンドになったと言っていいSUPER BEAVERがSKY STAGEのトリ前という位置でオンステージ。
おなじみのSEが流れて柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人が先にステージに登場。藤原が客席を見渡すようにしているとこの日もグラマラスな化粧を施した渋谷がステージに現れて、
「心から心の奥まで…」
と歌い始める「証明」からスタートするのであるが、曲の最後には柳沢が
「YON FES、歌おうぜー!」
と言って
「ないという証明」
のフレーズを合唱させる。その瞬間にこの曲、この日のセトリは観客1人1人とバンドが一緒に歌うためのものになるということがわかる。
するとイントロが鳴り響いた瞬間にたくさんの観客の両腕が上がる「青い春」でもサビではメンバー全員での歌唱に観客1人1人の声が重なっていく。やはりこんなに広い会場でこの景色を見れていることが幸せに感じられるし、この規模での合唱が起こること、一緒に歌えることの尊さをも感じてしまう。
そんな中で演奏されたのはリリースされたばかりの最新曲「グラデーション」であり、バンドの存在をさらに広い場所へと知らしめた「名前を呼ぶよ」に続く「東京リベンジャーズ」とのタッグのこの曲は間違いなく新たなバンドの代表曲になるであろうくらいに、すでにファンから「良すぎる」「今までで1番良い曲」という声さえ寄せられている曲である。抜き差しを心得たサウンドと、
「それはごめんねに似た ありがとうのよう
ありがとうに似た ごめんねのよう」
という実にビーバーらしい筆致(歌詞を書いているのは柳沢だが、柳沢も渋谷のMCなどから歌詞の着想を得ることもあるだけに間違いなくバンドの意思や精神としての歌詞だ)で感情のグラデーションを描くこの曲は実はライブ初披露がこの瞬間だった。大事な仲間、友達のために自分たちの大事な曲の初めてを捧げる。それもまた実にビーバーらしいと思える選択だ。
「フォーリミからもらった俺たちの時間。その俺たちの中にはあなたも入ってます」
というこれまた実にビーバーらしい、バンドだけじゃなくて観客1人1人と一緒にライブを作っているという姿勢を口にすると、さらにはこちらは「僕のヒーローアカデミア」主題歌となった、
「我々の基本姿勢そのものの曲」
という「ひたむき」でも間奏部分では観客が両腕を挙げてコーラスを大合唱する。アニメのオープニングでは流れていなかった部分であるが、個人的にはこここそがこの曲の肝だと思っている。まだ制作期間中は歌うことなんて全くできない世の中の状況だったはずなのに、こうして観客と一緒に歌える日が来ることを信じて作ったコーラスパートなのだろうから。
「声が聞きたいと思ったんだから仕方がないでしょう!」
と渋谷が言うと、さらに「東京流星群」でタイトルフレーズの大合唱を巻き起こす。ついさっきのFOMAREでの雨はなんだったのかというくらいにビーバーのライブ中は晴れて明るくなったことによって星は見えなかったけれど、この曲は名古屋の流星群を降らせる曲を持つフォーリミへの音楽でのリスペクトの示し方だと自分は思った。そこに観客が歌うことができるという環境も合わさった今、この曲はこの日最もビーバーが演奏すべき曲だったんじゃないかとすら思える。
そして本当にあっという間に最後の曲になったのは、藤原が立ち上がってバスドラを踏み、渋谷も柳沢もイントロから煽るようにして観客の合唱を巻き起こした「秘密」。曲中には上杉がステージサイドのカメラに寄ってカメラ目線で演奏する姿がアップで映し出され、メンバー紹介も挟まれる中で渋谷はステージを左右に動き回りながらやはり観客の合唱を求めるようにマイクを高く掲げる。みんなじゃなくて、1人1人の重なり。渋谷もこの日
「ありきたりな一体感じゃなくて、1人と1人が重なって生まれてしまうような一体感を」
と口にしていたが、まさに名前も住んでいる場所も年齢も仕事や学校も知らない人の1人1人が、こうしてこの曲を歌っているということだけは確かな事実であり、そうしてバラバラなものが重なっていく美しさをこの「秘密」の合唱は感じさせてくれる。思えば2019年にビーバーがこのフェスに出演した時もそうだった。客席の形状的に声が降ってくるかのようになるこの感覚を、4年ぶりにこうやって味わうことができた。それは少し忘れかけてすらいたもの。それを確かに呼び覚ましてくれた、2023年のYON FESでのSUPER BEAVERのライブだった。
1.証明
2.青い春
3.グラデーション
4.ひたむき
5.東京流星群
6.秘密
17:15〜 KUZIRA [LAND STAGE]
初日のLAND STAGEのトリはメロディックパンクバンドとしてのフォーリミの正統後継者的な後輩とも言えるKUZIRA。まだ時間的に陽は落ち切ってはいないが、風が強さと冷たさを増してきている。
メンバー3人がステージに登場して挨拶すると、その姿や言葉からはバンド側の並々ならぬ気合いを感じさせるのであるが、1曲目の「Backward」から凄まじい勢いでダイバーが続出していく。というかなんならリハの時点ですでにダイバーが発生していたのであるが、末武竜之介(ボーカル&ギター)の見た目通りの少年感を感じさせるハイトーンなボーカルはこの野外の会場に実によく似合っているし、自分はCDは持っていて曲は聴いていたのだが、ライブを見ると2年前に加入したシャー:Dのドラムがめちゃくちゃ上手くて驚く。個人的には若手では随一だと思っているKOTORIの細川と似たタイプの手数の多さと力強さを併せ持ったというような感じだろうか。それがメロディックパンクバンドとしての曲に熊野和也のベースとともにさらに勢いを与えているし、現状のベストと言っていいようなセトリを作ってきたのは末武が前のめりになって叫ぶようにして
「GEN君の声に似てるとか、0.1 Limited Sazabysとか言われましたけど、ライブハウスで必死にやれば先輩たちが必ず見てくれるってことを俺たちが証明します!」
と、このフェスへの、フォーリミへの思い入れを口にしていたからこそ。フォーリミ直系のバンドだとは思っていたけれど、逆にそれによって悔しい思いもたくさんしてきたんだろうなという感情がその言葉には確かに滲んでいた。
そんなフォーリミへの思いを口にすると、
「この曲、俺たちに似合うと思うんだよね。海を泳ぐクジラ!」
と言って演奏したのはなんとフォーリミ「swim」のカバー。キーを下げることなく、しかもHIROKAZのギターフレーズを弾きながら歌う末武をフレーズによって熊野がボーカルを受け持ってカバーする。しかもフルコーラスで演奏するというあたりにフォーリミへの愛情の強さを感じるし、
「泳いで おいで」
のフレーズで観客が両腕を泳ぐように動かすのも、サビで一気にダイバーが続出するのも完全に本家そのものをスリーピースのギターボーカルがやっていると言っていいくらいのレベルだ。それもやはりメンバーの演奏力があるバンドだからできることである。
そんなある意味ではピークと言っていいようなカバーの後にも盛り上がりっぷりは全く変わることなくダイバーの応酬に次ぐ応酬にサークルを生み出していく。もう俺たちはライブハウスで生きてきたメロディックパンクバンドであり、そこでやってきたことをそのままやるとばかりに「Spin」で末武のギターがさらにシャープさを増していくと、ラストは「In The Deep」までひたすらパンクに一気に駆け抜けた30分間。肌寒くなった会場を熱気で満たしたメンバーも完全に汗にまみれていたが、幼く見えていた末武の表情はライブ前より後の方がはるかに逞しく見えていた。
リハ.Detour
1.Backward
2.Snatch Away
3.Pacific
4.Clown
5.swim
6.A sign of Autumn
7.Spin
8.In The Deep
17:55〜 04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そしていよいよこの日も最後のアクト。かなり風が冷たさを増してきている中で主催バンドのフォーリミが初日を締めるべくステージへ。
おなじみの賑やかなオリジナルSEでメンバーが登場し、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビが手拍子を煽りまくるとGEN(ボーカル&ベース)も登場し、最新アルバム「Harvest」の1曲目に収録されていることによってフォーリミのパンクバンドっぷりを感じさせてくれる「Every」から始まって「Keep going」へとすぐに繋がっていくというのはアルバムの収録曲順通りの流れであり、「Harvest」のツアー通りでもあるオープニングなのだが、その時と全く違うのはやはりダイバーがいきなり続出していることと、何よりもフォーリミがこの日の出演者たちの思いを全て自分たちの力にしているかのように音を鳴らしているところ。だからこそGENのハイトーンボーカルもこの広い会場にいつも以上にしっかりと響き渡る。ここにいる全ての人に伝えるために。
KOUHEI(ドラム)のツービートが疾走する「My HERO」と、ダイブだけではなくてサークルなんかも出現している光景が去年のこのフェスでのフォーリミのライブとは全く違うものを見ているような感覚にさせてくれる。それは「Chicken race」で観客を煽りながら、その観客たちが踊りまくっている光景をRYU-TAが嬉しそうに見ている表情からも明らかだ。
「YON FES、帰ってきました。今日のこの1日をみんなで一緒に完成させましょう!」
とGENが挨拶すると、HIROKAZとRYU-TAのギターコンビのリズミカルなコーラスが力強くも気持ち良く響く「Jumper」でもサークルが生まれ、サビで弾けまくっている。この曲が生まれた直後に世の中はコロナ禍になってしまったために、この曲でこういう景色が見れるんだな…と噛み締めるように感じていた。
「YON FES、この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
とGENが叫んでから思いっきり腕を振りかぶってからイントロが鳴らされた「monolith」はFOMAREへ本家バージョンの強さを見せつけながらも、RYU-TAも去年とは違い、コロナ禍になる前と同じように何にも遠慮することなく
「かかってこいやー!」
と叫ぶ。それによってさらにモッシュ、ダイブ、サークルという光景が激しくなっていく。もうこの曲で生まれる衝動を我慢しないで、自分たちが感じたままに、好きなように楽しめばいい。そんなロックフェスでのパンクバンドのライブが戻ってきたのである。
そんな感慨の後に演奏された「Galapagos」では間奏の寸劇でRYU-TAがこの会場のマスコットキャラの鳴き声を真似したりするのであるが、そもそも「鳴き声あるのか?」とも突っ込まれていただけに、今回はどこか即興感も強かったようなイメージだ。今やフェスの名物になっているラーメン屋の店主だったりと、このフェスにおいてRYU-TAが負っているものは非常に大きいが、やはり何度聴いてもとんでもない展開と構成の曲だなと思う。
そしてGENは
「生きてると会えなくなっちゃう人がいたり、悲しいこともたくさんあるけど」
と言ったが、それは憧れのバンドのメンバーだったり、仲間のバンドのメンバーだったりという想いが確かに滲んでいた。GENがその人たちのことを思い浮かべているからこそ、こちらにも浮かんでくる顔があるし、こうしてフォーリミのライブが見れていること、このフェスに来ることができていることをこれ以上なく尊く思えるのだ。
そんな思いを込めるようにして真っ暗になったステージでGENがベースを鳴らしながら歌い始めたのは「Grasshopper」であり、緑色の照明がメンバーを照らすのも含めてこの草原が広がる会場にピッタリな曲だ。間奏ではRYU-TAの合図によって高速サークルが起こり、手拍子が響く中でGENが
「明日の自分はどうだ?」
と歌うとサビに突入してダイバーたちが飛んでいく。
「なりたい自分の手を離すな」
というフレーズの通りに誰もが楽しみたいようにこの曲を、このライブを楽しんでいる。
そして今やフォーリミのライブが終わった後のSEとしても流れるくらいになった新たな名曲「Honey」では
「くるくるくるくる
回り続ける意味の螺旋
ぐるぐるぐるぐる
探り続ける日々に」
というBメロで観客が頭の上で指をくるくると回すのももはや恒例であるが、この場で初めて聴くこの曲は、結局ずっとフォーリミが好きと思わせてくれる。それくらいにやっぱりフォーリミの何がそんなに好きかって、曲が好きなんだと思うくらいのメロディの力をこの曲は持っている。
そして他の出演者よりも少し長いとはいえ、トリのライブもあっという間に最後の曲へ。
「再会を願って!」
とGENが言って演奏された「Terminal」は、この日この会場で見れた景色によって、
「最高な世界になったら
きっと愛せるんじゃないか
何処にある ここにある
最後は 君といたいから」
というフレーズの通りの世界にようやくたどり着いたんだと思えた。そのフレーズをGENが思いっきり力と感情を込めるようにして歌っていたからこそ。コロナ禍の中でも大切なものを守るようにして戦い続けてきたフォーリミだからこそ作ることができた世界。そこにいることができる幸せを寒さで震えながらも噛み締めていた。
そんな寒さによってすぐにアンコールでメンバーが再びステージに出てくると、
「ライブハウスツアーをやってきたんだけど、そこで育ててきた曲!」
という「Harvest」が、まさにツアー初日の千葉LOOKではまだライブでの形が変わっていなかったのが、HIROKAZの鳴らすギターとGENのボーカルだけという形から始まり、曲途中からKOUHEIの激しいツービートを基軸にしたパンクバンドサウンドになるという完成形をこのフェスで見せられるようになっていた。去年のこのフェスから今年のこのフェスの間に「Harvest」のリリースとツアーがあったからこそのこの初日のセトリでありライブである。
そんなこの日の締めは新しい自分自身に生まれ変わるための「Squall」。バンドの演奏のキーマンであるKOUHEIの激しいドラムが叩き鳴らされると、このフェス自体も、そこにこうして足を運んでいる我々自身もこの曲を聴いて生まれ変わっていくような。そんな感覚が今年は確かにあった。去年も楽しかったけれど、それとは比べ物にならないくらいに本当に楽しいYON FESの初日はこの曲によって完遂された。それはそのままバンドにとっても我々にとっても翌日への確かな力になっているはずだ。
演奏終了後には出演者総登場での写真撮影。ウルフルズだけはスケジュールの都合でいなかったけれど、代わりに去年「monolith」をネタに使うようにしてやりたい放題やりまくってこのフェスを出禁になったENTHのメンバーがいることをGENがいじっていた。ある意味では出演していなくてもENTHは美味しい立ち位置にいるということであるし、そんな空気こそがYON FESが積み重ねてきたものであると実感した初日だった。
1.Every
2.Keep going
3.My HERO
4.Chicken race
5.Jumper
6.monolith
7.Galapagos
8.Grasshopper
9.Honey
10.Terminal
encore
11.Harvest
12.Squall
YON FES 2023 day2 @愛・地球博記念公園モリコロパーク 4/9 ホーム
ヤバイTシャツ屋さん "Tank-top Flower for Friends" ONE-MAN HALL TOUR 2023 @LINE CUBE SHIBUYA 4/7