ヤバイTシャツ屋さん "Tank-top Flower for Friends" ONE-MAN HALL TOUR 2023 @LINE CUBE SHIBUYA 4/7
- 2023/04/08
- 19:31
3月に待望のフルアルバム「Tank-top Flower for Friends」をリリースしたヤバイTシャツ屋さんの、アルバムがリリースされる前から始まったツアーはホールツアー。ひたすらにライブハウスでライブをやってきたイメージが強いヤバTもコロナ禍になってからは日本武道館や大阪城ホールというアリーナに加え、すでにメンバーの地元である宇治、高槻、浜松という会場のホールでもライブをしてきた。つまりはコロナ禍になってからタンクトップの種を植えてきたヤバTの活動が花開くのがこのツアーなのである。まだアルバムが出たばかりという感じもするが、早くもこの日はツアーファイナルである。
春の嵐というような天候の渋谷の街中を抜けてLINE CUBEに到着すると、大阪城ホールや武道館の時もそうだったがホールということもあるのか、ヤバTの客席の年齢層が本当に幅広い。ヤバTのグッズを身に纏った子供が親と一緒に観に来ている姿などはそれだけでグッと来るというか、少し羨ましくすらなる、ヤバTのライブならではの光景である。
平日ではあるがホールということもあってか少し早めの18時30分に場内が暗転すると観客が一斉に立ち上がり、おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEでメンバーがタンクトップくんが花束を抱えたアルバムのビジュアルのバックドロップが聳えるステージに登場。こやまたくや(ボーカル&ギター)は髪の長さも毛量もツアーを回ってさらに増した感じだが、対照的にしばたありぼぼ(ベース&ボーカル)は前髪をパツっとした感じに短く切り揃えている。もりもりもと(ドラム)はいつもと変わらぬ長髪にキッズ的な出で立ちで、こやまが
「3年分の溜まったものを大きな声で叫んでくれー!」
と叫び、その時点で、というかメンバーが登場した時点で観客からは大きな歓声が飛んでいたのであるが、その思いをぶつける1曲目が、なんと3度目の料金改定によって音源の390円から100円も高い490円に歌詞が変わった「喜志駅周辺なんもない」というあたりが実にヤバTであるが、それはこの曲は間奏でバンドと観客によるコール&レスポンスが行われる曲だからであろう。そのコール&レスポンスで観客がタイトルや
「あべのハルカスめっちゃ高い」
に続き、
「ヤバTのお客さんセンス良い」
「ヤバTのお客さん優しい」
など顧客(ヤバTファンの総称)に媚びを売り、もりもとがツッコミを入れるというやりとりを自分が体感するのも本当に久しぶりである。この1曲目の段階で最高に楽しいヤバTのライブがついに戻ってきたんだなと実感せざるを得ない。
その感覚をさらに強く感じさせてくれるのはバンドのサウンドがツアーを回ってきたこと、しかも今までとは違うホールツアーを回ってきたことによってバンドサウンドの響かせ方がさらに力強く感じられるようになっているからだ。「無線LANばり便利」での疾走するツービートはまさにそれを証明しているが、こやまは
「Wi-Fiあるし」
のフレーズの後に
「アルフィー THE ALFEE」
と小ネタを挟むことも忘れないのであるが、しばたは対照的に思いっきり感情を込めて叫ぶようにして歌う場面が早くも見られたのは、観客の合唱を聞けて昂った部分も間違いなくあるはずだ。デビュー時から最も歌唱と演奏に安定感があって、バンドのライブの音としてのクオリティを担保していたのは紛れもなくしばたの存在であったが、それがもはや凄みを感じるオーラすら放つようになっている。もちろん曲中には観客を座らせてから一気に飛び上がらせるくだりもあるのだが、椅子があるホールということですぐに観客が座ることができるし、やはり
「無線LAN有線LANよりばり便利」
のフレーズではこやまがマイクスタンドから離れてステージ前に出てきて観客の声を求める。それに応えるように大合唱が響く。もうこの時点で「やっぱりこれだ」と思った。これが何よりも楽しくて、生きている、メンバーや会場にいる顧客たちと一緒にライブをやっている実感を与えてくれるヤバTのライブなのだ。
こやまがラウドなギターを掻き鳴らし、
「オイ!オイ!」
ともりもとが煽って観客が拳を振り上げまくる声もしっかりと戻ってきたイントロによる「Tank-top Festival 2019」では
「タンクトップの世界から 未だ 抜け出せないんだ」
のフレーズがコロナ禍という逆風を経てもなお今も我々がこうしてヤバTのタンクトップ(=パンクロック)を求め続けているということを実感させてくれるし、やはりそのパンクバンドとしての演奏は年数、月日、ライブ、ツアーを重ねるたびに逞しくなっている。数あるタンクトップ曲の中でこの曲が演奏されたのはまだコロナ禍になる前の2019年の状況が戻ってきているからだろうか、なんてことも思ってしまう。
すると背面のタンクトップくんに照明とともに、その横には曲の歌詞が映し出されるという、ライブハウスでのものと変わらない、最低限にして最大級の効果をもたらす演出によって演奏されたのは、「Tank-top Flower for Friends」の最後に収録されている、ヤバTのストレートな応援ソング「hurray」。アルバム最後の曲であるだけに、てっきりライブでも最後に演奏されるものだと思っていたのだが、早くもこの序盤で演奏されるというのは驚きである。
個人的にはこの曲が配信された時に1回聴いてすぐに泣いてしまったというくらいの名曲である。今まではひねくれたりした歌詞をたくさん作ってきて、その中に悔しさや悲しさを滲ませるような曲をあくまでヤバTらしく作ってきた積み重ねがこの曲の歌詞に説得力を持たせている。それは決して「頑張れ」的なことを素直にスッと言うようなバンドではないけれど、それでもメンバーの優しさを感じられる瞬間をたくさん見てきたからこそ滲んで見えてくるもの。そんな曲をライブで聴いたら、やっぱり感動せずにはいられなかった。
「心配ない!なんて嘘や 一緒にいるからお前は大丈夫や もう」
というフレーズは本当にヤバTらしいなと思うし、こうしてこの曲を聴いている瞬間こそ、何歳になっても青春と呼ぶんじゃないかと思う。
そうしてキラーチューンを次々に生み出してきたバンドであるからこそ、それが更新されまくった結果としてなんと「あつまれ!パーティーピーポー」までもがこの序盤に演奏される。
「しゃっ!しゃっ!」
のフレーズがタンクトップくんの横に映し出される中、もちろん
「えっびっばーっでぃっ!」
のフレーズも大合唱が響く。サビでは観客が腕を左右に振るという光景も合わせて、それが最高に楽しいということを思い出させてくれる。そうして叫びまくり、踊りまくることによってもはや熱気はホールでありながらもライブハウスのレベルであるし、最新アルバムのリリースツアーでありながらも、こうしてみんなで歌うということの尊さを思い出し、取り戻すかのようなセトリだ。それはこやまのインタビューでも語られていたとおりに、このツアーからきっと声が出せるようになるという予測が見事に的中したからでもあるだろう。
最初のMCではこやまが
「1階席ー!3階席ー!」
とひたすらに2階席を無視するコール&レスポンスを行うというもはや公開パワハラとしばたにツッコミを入れられるやり取りで自身の好感度を下げながら、
「渋谷と言えばSUPER BEAVER(渋谷龍太)、ビーバーと言えばフォーリンラブ(お笑いコンビ)、フォーリンラブと言えば爆笑レッドカーペット、爆笑レッドカーペットと言えば満点大笑い、満点大笑いと言えば、満天の空に君の声が…」
とRADWIMPS「トレモロ」をしばたとともに歌い始め、その合唱が観客にも広がっていくのであるが、こやまも観客も(しばたは割とちゃんと覚えていたし、やはり歌がめちゃくちゃ上手い)うろ覚え気味であったことによってしばたから説教されるのであるが、5年前のROCK IN JAPAN FES.ではタイムテーブルが丸かぶり(しかもRADWIMPSは「トレモロ」をアンコールで演奏していた)だったけれど、こうして即座に出て来るくらいに好きなRADWIMPSのライブを3人も見たかったんじゃないかと思う。
「このツアーはアルバムのリリースツアーだけど、結構レア曲もやってて。でもツアーでレア曲はあらかたやり尽くしてもうやれるレア曲がないから、今日はみんなが知らん曲、自主制作の頃のCDに入ってた曲をやります!」
と言って演奏されたのは実に久しぶりの「天王寺経由してなんば」であり、サビでは観客が一斉に両腕を上下させる、こやまいわく「気持ち悪い」光景が生まれるのであるが、しばたはもちろんもりもとまで曲中にその動きをすることによってドラムのリズムがバスドラだけになり、
「いや、ドラムはちゃんと叩いて!」
とこやまにツッコミを入れられる面白さも実にヤバTらしいが、この曲を作った学生時代からすでに他の人が絶対に歌詞にしない(そもそもそうしようと思いつかない)ような自分の生活環境のことを歌詞にする発想力があったことがよくわかる。
そんな最古レベルの曲からここからは一気に新作モードへ。英語歌詞のカッコいいメロコアサウンドかと思いきや、よくよく聴いていくとタイトル通りに1日に2回も職質されることを歌った「職質 〜1日に2回も〜」はヤバTの歌詞の発想力だからこそのサウンドとのギャップが面白い曲であり、ライブではしばたが開放弦を駆使した奏法によってサウンドも演奏する姿も軽やかさを感じさせてくれる。
するとムーディーなイントロのサウンドが流れると客席から歓声が上がり、この曲がここまで人気のある曲になるとはと思った「dabscription」は元は変名ユニットBuyer Clientとしてリリースされた曲であり、当初はタンクトップで顔を隠しながら歌っていたのだが、武道館ライブでの種明かしがあったことによってヤバTの曲として顔を出したまま歌うようになっている。
「今日はチルな夜にしようぜ渋谷〜」
とこやまが呼びかけた通りに、最初は同期のサウンドが流れることによってこやまとしばたがハンドマイクでステージを左右に動きながら歌い、もりもとはシンバルをターンテーブルのように擦ったりするのであるが、曲途中からは楽器を手にして一気にパンクサウンドになるという展開もライブで演奏してきたことによってか一層スムーズになっている感すらある。この曲も含めてヤバTの音楽は自分にとってはBGMとして聴き流せるものではなくて、しっかり向き合って楽しむためのものである。
その向き合って楽しむというのがあらぬ角度から発生してくるのはアルバムリリース前から新曲として演奏していた「ダックスフンドにシンパシー」であり、歌詞は足に比して胴が長い自身をダックスフンドに擬えたものであるのだが、サビでは
「ワン!」「ワンワンワン!」
とメンバーも観客も犬の鳴き声を叫びまくる。そのバカバカしさにはついつい笑ってしまうのであるが、そうして曲を聴いて自然に笑顔になってしまうというのもヤバTの音楽の持つ力である。ある意味では全世代がフラットな形で歌える曲であるというのも含めて。
そんな新曲たちの後にはこちらも早くも「ハッピーウエディング前ソング」が演奏されるのであるが、持ち時間が長く、たくさん曲ができるワンマンだからこそこうしてこれまでのキラーチューンたちをフェスのように後半に固めるのではなくて散らばる形で演奏できるのであるが、やはりこの曲の
「キッス!」「入籍!」
のコールもみんなで腕を振り上げながら歌えるのが最高に楽しい。その楽しさを思いっきり歌声に込めるようなしばたの歌唱とともに観客の歌声も伸びていくのであるが、こやまは早くも
「ツアーファイナル、ありがとうございました!」
とフェス並みの持ち時間でライブを終わらせようとしていた。確かにこれまでに数え切れないくらいにその位置を担ってきた曲であるけれど。
「ハウ前ソでもう終わったみたいな感じになったでしょ?でもまだ終わらんから。まだ半分もいってないから(笑)」
とやはりこれで終わるわけもなく、このツアーでは各地で観客にその土地のローカルCMの曲を歌ってもらい、その曲を知らないメンバーが聴くという、観客が声を出せるからこそのコーナーを設けてきたらしいが、東京ではローカルCMがないということで、ファイナルでは逆にヤバTが観客に大阪の人はみんな知っているというたこ焼き屋「たこ昌」のCMソングを歌わせようとするのだが、案の定ほとんどの人が曲を知らないために最初は全く合唱が起こらない。(当たり前である)
それでもこやまとしばたに怒られながらも何回も繰り返すことによって曲を覚えた観客がしっかり合唱を起こすのだが、
「じゃあ次の曲、歌ってください」
とこやまが言うと、何の曲をやるのかわからない観客は再び「たこ昌」の曲を歌い始め、
「「たこ昌」の曲がアルバムに入ってましたか?ボーナストラックですか?BUMP OF CHICKENのCDケースの黒い部分を外すみたいにしたら「たこ昌」の曲の歌詞が書いてあるんですか?(笑)」
とやはり怒るような口調でありながらも共感度が高いネタで笑わせてくれるというあたりはさすがとしか言えない。
そんなやり取りの後に演奏されたのは「もし僕が石油王やったら」であり、こやまがアコギを弾きながら歌うという新境地的な形の曲でもある。小学生くらいの時に誰もが夢想したであろうことを今になってもこんなにキャッチーな形で音楽にできるというあたりもさすがヤバTであるが、音に埋め尽くされないアコギのサウンドだからこそ、しばたのハイトーンなボーカルがより映えているのがよくわかる。
さらにはこやまならではの切ない(と言っていいのか?)歌詞が背面のタンクトップくんの周りに映し出されていくことによってその切なさをここにいる誰もが噛みしめざるを得ない「俺の友達が俺抜きで俺の友達と遊ぶ」は今まで数々のあるあるソングを生み出してきたヤバTの最高峰と言っていいような曲だろう。その歌詞が乗るメロディーもどこか切なさを感じさせるものになっているというあたりが笑ってしまうようでありながらもやはり曲が抜群に良いというヤバTらしさが揺らがないことがよくわかるのである。それは実体験であるからこそリアルな感情を込めることができるこやまの歌唱も含めて。
さらには元々はカップリングであったことによってアルバムの中に収録されたことが若干意外でもあった「ZORORI ROCK!!!」でも照明によってタンクトップくんの頭上に「かいけつゾロリ」のゾロリなどのキャラクターが映し出されるというさりげないコラボが果たされる。それはアニメや原作を見ていた人にとっては嬉しい(子供などは特に)ものだっただろうけれど、インタビューでこやまも言っていた通りに、幼稚園や小学生くらいの子供がアニメを見て、完全にパンクでしかないサウンドのこの曲に触れるというのは完全なるパンク英才教育であると言っていいだろう。大阪城ホールワンマンの時に会場にいた幼い子供たちがこの曲が演奏されて楽しそうにはしゃいでいたり踊っていたのがスクリーンに映っていたことは今も忘れられないが、そうしたスクリーンなどはなくてもこの日も会場にそうした子供はたくさんいたはずだ。
そんな新作収録曲が続く中で演奏された、最新のタンクトップ曲シリーズが「Blooming the Tank-top」であり、
「冬はもういっぱいタンクトップの種を植えよ! 種を植えよ!」
というしばたのボーカルも実にキャッチーな曲であるが、
「黙りたくねえ お前認めたくねえ 気持ちのやり場がねえ
絶対許さん!許さん!!許さん!!!許さん!!!!
っていう時ないですか?僕はまだあります!」
というこやまらしさしかないフレーズにはやはり根底に悔しさという感情があるからこそであるし、今こうして我々がヤバTのライブに来て大きな声で歌えているというのはコロナ禍になってからもすぐに全国各地へ赴いてライブをやりまくってきたヤバTの蒔いてきた種が開花したからと言っていい。とびっきりキャッチーなこの曲はそんな今この瞬間への祝福の曲として鳴っていたのだ。
そんな声を出して歌うことができる喜びを高速パンクサウンドに乗った
「オイ!オイ!」
という声が重なることによって感じさせてくれるのは「ヤバみ」であり、ツアーを重ねてバンドサウンドがさらにたくましくなったことによってこの曲に宿るパンクさも、こやまとしばたの歌唱の強さもさらに増し、それがさらに観客を熱くさせる。それはこやまが曲中に
「まだまだいけるやろー!」
など、煽りを繰り返すことによってさらに観客を熱くしていたことによるものかもしれないが、その煽りがダイレクトに声になって返ってくるのだからそれは煽りたくなるだろう。
するとここでワンマンではおなじみの「年確」コーナーとして、会場にいる人の年齢を聞いていくのであるが、やはり20代がメイン層(10代は意外なくらいに少ないが個々の声が大きいから目立つ)であるが、40代、50代はもちろん60代以上の人までいて、その人たちが元気よく声を上げているというあたりがヤバTが全年齢対応のパンクバンドであるという所以であるし、そうした年代の人たちがこうしてまだライブに来ているというのは個人的にも本当に励みになる。自分もあのくらいの年齢になってもまだまだライブに行けるなって。
その年確では子供もたくさんいたことによって、こやまは子供に
「ゾロリの曲嬉しかった?俺らゾロリの声優やったこともあんで。はらゆたか先生に会ったこともあんで」
と子供相手にマウントを取りまくるのであるが、
「子供ははらゆたか先生とか言われてもわからんから!」
というもりもとの的確なツッコミも冴え渡っている。
そんなMCから終盤の口火を切るのは壮大なオーケストラサウンドが同期として流れる「肩have a good day」で、プロ野球ファンの自分としてはこの曲を聴いて真っ先に頭の中に浮かぶのは前中日ドラゴンズ監督の与田剛だったりするのであるが、間奏ではもりもとの口笛ソロに歓声が上がり、最後にはこやまが感極まって歌えなくなってしまうのを観客とメンバーが励ますというおなじみの小芝居も観客がお決まり的に「頑張れー!」と声を出して励ますことによってよりライブでのこの曲の楽しさを感じさせてくれる。
さらにはこやまのリアル先輩である岡崎体育とのコラボ曲でもある「Beats Per Minute 220」はレッドブルの対バン企画によって生まれたものでもあるためにこやまが
「みんなに翼を授けよう!」
と言ってから演奏され、しかもステージを赤と青の照明が彩るという演出もレッドブル仕様。曲中にはデジタルサウンドが流れてこやまがデスボイス、しばたがラップ的な歌唱を見せるというあたりも岡崎体育とのコラボ曲だからこその両者のサウンドの融合であるが、そんな曲をバンドだけでも演奏するくらいにヤバTは愛している。その対バンライブに行けなかっただけに、またいつか岡崎体育と対バンしてこの曲をコラボするのも見てみたいと、突き抜けるように高らかなサビを聴いていると思う。
そんな新作曲もありながら、こやまが序盤で言っていたようにレア曲も交えるというのがここに来て実感できるのは疾走するパンクなツービートによって始まり、Bメロでは観客が飛び跳ねまくる「とりあえず噛む」であるのだが、やはりプロ野球の千葉ロックマリーンズのファンとしてはロッテのタイアップとして作られたことで、リリース当時はマリンスタジアムでもよく流れていたこの曲がライブで聴けるのは実に嬉しいし、
「考えすぎるのはやめろって
悩みすぎるのはやめろって」
というさりげなくタイアップ元の企業の名前を歌詞に盛り込むというこやまの天才っぷりが遺憾なく発揮されている曲だと実感することができるのである。
「飛び跳ねてばっかりだけど大丈夫!?次も飛び跳ねる曲やからー!」
と言って演奏された「メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲」ではしばたが演奏しながらステージを歩き回る中、観客はやはりリズムに合わせて飛び跳ねまくる。自分の席が決まっているホールだからこそ隣の人とぶつかったりもするだろうけれど、それは隣にも名前も知らないヤバTを好きな人がいるということでもある。間奏ではこの日2回目の観客を椅子に座らせてからジャンプさせるというのがすぐさまできるのもホールだからこそである。
ここまでは5の倍数の曲順でおなじみのキラーチューンを演奏して、その後にMCを入れる流れになっている。その倍数の20曲目で演奏されたのは新作収録曲でありながらも昨年の夏フェスなどでも演奏されまくってきた「ちらばれ!サマーピーポー」で、すでにこの曲がそうした位置の曲になっていることを示すかのようにしばたの声に合わせて観客も声を出して腕を振り上げる。さりげなくタンクトップくんがクーラーに直接当たったり、麦わら帽子を被ってサングラスをかけていたりする映像が映し出されるのも目が離せないが、この曲を聴くと早く今年も野外フェスの大きなステージでヤバTを見たくなる。この曲は晴れた青空の下が似合う曲であるが、JAPAN JAMでは今年はついにトリとして夜のステージに立つ。どんなライブを見せてくれるのか今からもう楽しみで仕方がない。
そしてこやまはもうあと2曲であることを告げると観客から「えー!?」という声が返ってくるというやり取りも楽しむようにしながら、
「もう何の不安もない、この先の未来に」
と確信を持った表情で言った。
「これからまたワチャ系の逆襲が始まるから。コロナ禍になってから存在価値が危ぶまれた、俺たちやキュウソネコカミや四星球やバックドロップシンデレラみたいなバンドの逆襲がこれから、今この瞬間から始まる!ヤバTもこれからだから。これから来る、今年来るバンドだから、10代の子とか学校で「今年はヤバTが来る」って友達とかに言いや!」
と、ライブハウスでぐちゃぐちゃになって熱狂を生み出してきた盟友たちの名前を挙げながら、これから先の未来がもっと楽しくなるということを感じさせてくれた。それはこの日のヤバTのライブの楽しさが証明していたことでもある。ホールでこんなに暑いんならライブハウスではもっと…と思ってしまうくらいに。またきっとすぐにコロナ禍になる前のヤバTのライブに、なんなら次にライブハウスでワンマンをやる時に戻れるような気しかしていない。
そんな願いをヤバTはコロナ禍以降もずっと曲に、音に込めて鳴らしてきた。だからこそこの終盤に演奏されるのはそのコロナ禍にリリースされて、ずっと制限がある中でもタンクトップ(=パンクロック)の力を信じ続けてきた「Give me the Tank-top」でなければいけなかった。激しく疾走するもりもとのビートが牽引するこの曲はこれまでにも音楽を、ライブを、ライブハウスを信じてきた我々を照らし出してきてくれたけれど、今まで以上に圧倒的に強い光を放っているように感じられた。
「さあ 取り戻せ自尊心よ 笑いながら泣いた日よ
取り戻せ Come back kids, and our life」
という日が戻ってきているからこそ、
「やっぱ俺らまだ逃れられませんわ
ほらまた帰っといで 激しく飛び込め
いつだって 優しく包み込む Tank-top again」
と心から思える。この日最も感動的な瞬間をこの曲が描き出していたのは、この曲が最大の力を発揮できるタイミングがついに訪れたということだからだ。
その曲の本来持っている力を最大限に発揮するという意味では最後に演奏された「NO MONEY DANCE」もそうである。こんなにもみんなで声を出して歌えるフレーズのオンパレードな曲にもかかわらず、これまでは我々は歌うことはできなかった。この曲を歌うことができないのが普通だと思ってしまうようになるくらいに、ヤバTはコロナ禍以降もライブをやりまくってきた。まだ当時は全然ライブをやらないバンドもたくさんいた中で。そうしてヤバTが日本のどこかでライブをやってくれていて、Zepp Tokyoでの10公演で5回も見れたのがあのまだコロナ禍の重たい空気が強かった頃の自分を支えてくれていた。
その時には歌えなかった曲が、今こうやってついにメンバーと一緒に歌えるようになった。この曲、歌おうとするとこんなに思いっきり声が出てしまうくらいに叫んでしまうくらいの曲なんだということに気付く。明日喉が潰れたり、声が涸れていてももうしょうがないと思うくらいに。そうして一緒に歌うことによって、リリースされてからずっとライブで演奏され続けてきたこの曲がついにバンドだけじゃなくて、我々顧客みんなの曲になったのだと思えた瞬間だった。
アンコールではもりもとが元気良くステージを端から端まで走り回り、中央で手拍子を仕切るようにしてポーズを取ると、それをドラムセットのライザーの上に座って冷めた目で眺めていたこやまとしばたの間に座ろうとするのだが、もりもとが座ろうとした瞬間に2人が立ち上がるというあたりもまた実にヤバTらしいやり取りである。
そんなずっと変わらないヤバTも今年は10周年イヤーであるということで、10周年を祝して作ったという曲が、こやまがキーボード、しばたともりもとがボーカルで、
こやま「用意するのが大変やから、今後はピアノがある会場でしかやらへん。もしくはフェスでYOSHIKI(X JAPAN)と一緒になった時。透明のグランドピアノ(笑)」
しばた&もりもと「YOSHIKIさんや!」
というやり取りからもわかるようにレア曲になるのがすでに確定している新作収録曲の「インターネットだいすきマン」であり、背面にはパソコンの画面に打ち込んだように歌詞が映し出されるのであるが、その歌詞をメインボーカルとして歌うしばたの敢えて子供っぽく歌う歌唱は実はしばたのボーカリストとしての表現力の幅広さを感じさせてくれる曲だ。隣のもりもとの得意のステップによるダンスはさておき、つまりは「インターネット」という単語がゲシュタルト崩壊しそうにすらなる中、インターネットやSNSが大好きなメンバーからの
「もうみんないいおとななんだから
じょうほうのしゅしゃせんたくを
しっかりしよう インターネット だいすき!」
というメッセージの曲であるということである。それはいつも笑顔なメンバーも心ないことを言われまくったりしてきたんだろうなとも思ってしまうことだけれど。
すぐにキーボードが撤収されて通常のバンド編成に戻ると、
「最近やってなかった曲やけど、この会場はNHKが近いから、NHKの「おかあさんといっしょ」で子供たちがサークルモッシュする曲!」
という理由で「スプラッピ スプラッパ」が演奏され、さすがにサークルモッシュもできないし、その場でグルグル回る人もいなかったけれど、それは次にこの曲をやる時にはそうした景色が見れるようにという願いを込めたものでもあったはずだ。正直言って、ヤバTがカバーしてCDに収録されるまで原曲を全く知らなかったのだけど、今聞いてもNHKはめちゃくちゃ攻めてるしキャッチーだなとも思う。NHKの単語を出した時はNHKの近くで癒着するための「案外悪ないNHK」を演奏するかとも思ったけれど。
そしていよいよ最後の曲へ。25曲というボリュームを全く感じさせないくらいにあっという間だった(多分ちょうどこの辺りで2時間くらい)ライブの最後を担うのはここまで演奏されていなかったキラーチューンにして代表曲の「かわE」であり、こやまは曲中に歌詞の代わりに
「もう終わっちゃうよ〜!」
と言ってしまうくらいにこのライブ、このツアーが終わってしまうことを惜しむようにというか、明らかに終わって欲しくないかのように演奏していた。そんなこやまの、メンバーの思いに応えるかのように客席からは「やんけ!」の大合唱が起こり、こやまも
「よくできました〜!」
と言って最後のサビに突入していく。それをちゃんと声のやり取りによってできるようになった。それはまさに、たのC越してたのDやんけな瞬間だった。そんなヤバTのライブがついに戻ってきたのだ。
ツアーファイナルということで演奏後にはメンバー一人一人のコメントが。
「みんなに色々お願いしながらも、僕らが頑張っていくだけなんで応援よろしくお願いします!」
と実に真摯なもりもと、
「初日の愛媛だけがまだ声出しが出来なかったのが愛媛の人に本当に申し訳ない」
とツアーを終えても、声出しができないタイミングになってしまった初日の愛媛に来てくれた人への想いを口にしたしばた、そして
「今回はこうやってホールでもツアーをやったけど、俺たちはライブハウスが大好きで、ライブハウスで育ててもらったバンドやから。だからライブハウスでこれからもガンガンライブやっていくし、コロナ禍で溜まったフラストレーションを発散する場所ってどこ?ライブハウスでしょ!ライブハウスで強いバンドって誰?ヤバTでしょ!これからワチャ系の時代がまた来るから!」
とライブハウスへの想い、そこでこれからも生きていく意思を口にしたこやま。
「10周年イヤーだから、今年は俺たちライブハウスでめちゃくちゃライブやるから。みんなが想像してるくらいの倍くらいライブやりまくるから!」
と、さらなるこの先の楽しみが待っていることを告知すると、こやまのピックやもりもとのスティック、さらにはメンバーが使っていたタオルまでもが客席に投げ入れられた。そうしたくなるくらいにメンバーも楽しくて仕方なかったのだろう。そんなライブの最後にこやまが口にしたのは、
「ライブハウスに帰ります!」
だった。その瞬間にかつてELLEGARDENが幕張メッセでワンマンをやった時に細美武士が最後に口にしたのも
「さあ、ライブハウスに帰ろう!」
だったことを思い出した。どんなに巨大な存在になって、広い会場でライブができるようになっても軸足はずっとライブハウスにある。ライブハウスに行けば会える。そこでライブを見ることで生きる力を与えてくれる。ヤバTはもうそんなパンク・ロックシーンのレジェンドに連なる存在になっていると自分は思っている。つまりはヤバTはかっこE越してかっこFやんけ。それはライブ後に終演SEとして流れた「ハム太郎とっとこのうた」までも大合唱したくらいに楽しみまくっていた、ヤバTの顧客たちも含めて。
1.喜志駅周辺なんもない
2.無線LANばり便利
3.Tank-top Festival 2019
4.hurray
5.あつまれ!パーティーピーポー
6.天王寺経由してなんば
7.職質 〜1日に2回も〜
8.dabscription
9.ダックスフンドにシンパシー
10.ハッピーウエディング前ソング
11.もし僕が石油王やったら
12.俺の友達が俺抜きで俺の友達と遊ぶ
13.ZORORI ROCK!!!
14.Blooming the Tank-top
15.ヤバみ
16.肩have a good day
17.Beats Per Minute 220
18.とりあえず噛む
19.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
20.ちらばれ!サマーピーポー
21.Give me the Tank-top
22.NO MONEY DANCE
encore
23.インターネットだいすきマン
24.スプラッピ スプラッパ
25.かわE
春の嵐というような天候の渋谷の街中を抜けてLINE CUBEに到着すると、大阪城ホールや武道館の時もそうだったがホールということもあるのか、ヤバTの客席の年齢層が本当に幅広い。ヤバTのグッズを身に纏った子供が親と一緒に観に来ている姿などはそれだけでグッと来るというか、少し羨ましくすらなる、ヤバTのライブならではの光景である。
平日ではあるがホールということもあってか少し早めの18時30分に場内が暗転すると観客が一斉に立ち上がり、おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEでメンバーがタンクトップくんが花束を抱えたアルバムのビジュアルのバックドロップが聳えるステージに登場。こやまたくや(ボーカル&ギター)は髪の長さも毛量もツアーを回ってさらに増した感じだが、対照的にしばたありぼぼ(ベース&ボーカル)は前髪をパツっとした感じに短く切り揃えている。もりもりもと(ドラム)はいつもと変わらぬ長髪にキッズ的な出で立ちで、こやまが
「3年分の溜まったものを大きな声で叫んでくれー!」
と叫び、その時点で、というかメンバーが登場した時点で観客からは大きな歓声が飛んでいたのであるが、その思いをぶつける1曲目が、なんと3度目の料金改定によって音源の390円から100円も高い490円に歌詞が変わった「喜志駅周辺なんもない」というあたりが実にヤバTであるが、それはこの曲は間奏でバンドと観客によるコール&レスポンスが行われる曲だからであろう。そのコール&レスポンスで観客がタイトルや
「あべのハルカスめっちゃ高い」
に続き、
「ヤバTのお客さんセンス良い」
「ヤバTのお客さん優しい」
など顧客(ヤバTファンの総称)に媚びを売り、もりもとがツッコミを入れるというやりとりを自分が体感するのも本当に久しぶりである。この1曲目の段階で最高に楽しいヤバTのライブがついに戻ってきたんだなと実感せざるを得ない。
その感覚をさらに強く感じさせてくれるのはバンドのサウンドがツアーを回ってきたこと、しかも今までとは違うホールツアーを回ってきたことによってバンドサウンドの響かせ方がさらに力強く感じられるようになっているからだ。「無線LANばり便利」での疾走するツービートはまさにそれを証明しているが、こやまは
「Wi-Fiあるし」
のフレーズの後に
「アルフィー THE ALFEE」
と小ネタを挟むことも忘れないのであるが、しばたは対照的に思いっきり感情を込めて叫ぶようにして歌う場面が早くも見られたのは、観客の合唱を聞けて昂った部分も間違いなくあるはずだ。デビュー時から最も歌唱と演奏に安定感があって、バンドのライブの音としてのクオリティを担保していたのは紛れもなくしばたの存在であったが、それがもはや凄みを感じるオーラすら放つようになっている。もちろん曲中には観客を座らせてから一気に飛び上がらせるくだりもあるのだが、椅子があるホールということですぐに観客が座ることができるし、やはり
「無線LAN有線LANよりばり便利」
のフレーズではこやまがマイクスタンドから離れてステージ前に出てきて観客の声を求める。それに応えるように大合唱が響く。もうこの時点で「やっぱりこれだ」と思った。これが何よりも楽しくて、生きている、メンバーや会場にいる顧客たちと一緒にライブをやっている実感を与えてくれるヤバTのライブなのだ。
こやまがラウドなギターを掻き鳴らし、
「オイ!オイ!」
ともりもとが煽って観客が拳を振り上げまくる声もしっかりと戻ってきたイントロによる「Tank-top Festival 2019」では
「タンクトップの世界から 未だ 抜け出せないんだ」
のフレーズがコロナ禍という逆風を経てもなお今も我々がこうしてヤバTのタンクトップ(=パンクロック)を求め続けているということを実感させてくれるし、やはりそのパンクバンドとしての演奏は年数、月日、ライブ、ツアーを重ねるたびに逞しくなっている。数あるタンクトップ曲の中でこの曲が演奏されたのはまだコロナ禍になる前の2019年の状況が戻ってきているからだろうか、なんてことも思ってしまう。
すると背面のタンクトップくんに照明とともに、その横には曲の歌詞が映し出されるという、ライブハウスでのものと変わらない、最低限にして最大級の効果をもたらす演出によって演奏されたのは、「Tank-top Flower for Friends」の最後に収録されている、ヤバTのストレートな応援ソング「hurray」。アルバム最後の曲であるだけに、てっきりライブでも最後に演奏されるものだと思っていたのだが、早くもこの序盤で演奏されるというのは驚きである。
個人的にはこの曲が配信された時に1回聴いてすぐに泣いてしまったというくらいの名曲である。今まではひねくれたりした歌詞をたくさん作ってきて、その中に悔しさや悲しさを滲ませるような曲をあくまでヤバTらしく作ってきた積み重ねがこの曲の歌詞に説得力を持たせている。それは決して「頑張れ」的なことを素直にスッと言うようなバンドではないけれど、それでもメンバーの優しさを感じられる瞬間をたくさん見てきたからこそ滲んで見えてくるもの。そんな曲をライブで聴いたら、やっぱり感動せずにはいられなかった。
「心配ない!なんて嘘や 一緒にいるからお前は大丈夫や もう」
というフレーズは本当にヤバTらしいなと思うし、こうしてこの曲を聴いている瞬間こそ、何歳になっても青春と呼ぶんじゃないかと思う。
そうしてキラーチューンを次々に生み出してきたバンドであるからこそ、それが更新されまくった結果としてなんと「あつまれ!パーティーピーポー」までもがこの序盤に演奏される。
「しゃっ!しゃっ!」
のフレーズがタンクトップくんの横に映し出される中、もちろん
「えっびっばーっでぃっ!」
のフレーズも大合唱が響く。サビでは観客が腕を左右に振るという光景も合わせて、それが最高に楽しいということを思い出させてくれる。そうして叫びまくり、踊りまくることによってもはや熱気はホールでありながらもライブハウスのレベルであるし、最新アルバムのリリースツアーでありながらも、こうしてみんなで歌うということの尊さを思い出し、取り戻すかのようなセトリだ。それはこやまのインタビューでも語られていたとおりに、このツアーからきっと声が出せるようになるという予測が見事に的中したからでもあるだろう。
最初のMCではこやまが
「1階席ー!3階席ー!」
とひたすらに2階席を無視するコール&レスポンスを行うというもはや公開パワハラとしばたにツッコミを入れられるやり取りで自身の好感度を下げながら、
「渋谷と言えばSUPER BEAVER(渋谷龍太)、ビーバーと言えばフォーリンラブ(お笑いコンビ)、フォーリンラブと言えば爆笑レッドカーペット、爆笑レッドカーペットと言えば満点大笑い、満点大笑いと言えば、満天の空に君の声が…」
とRADWIMPS「トレモロ」をしばたとともに歌い始め、その合唱が観客にも広がっていくのであるが、こやまも観客も(しばたは割とちゃんと覚えていたし、やはり歌がめちゃくちゃ上手い)うろ覚え気味であったことによってしばたから説教されるのであるが、5年前のROCK IN JAPAN FES.ではタイムテーブルが丸かぶり(しかもRADWIMPSは「トレモロ」をアンコールで演奏していた)だったけれど、こうして即座に出て来るくらいに好きなRADWIMPSのライブを3人も見たかったんじゃないかと思う。
「このツアーはアルバムのリリースツアーだけど、結構レア曲もやってて。でもツアーでレア曲はあらかたやり尽くしてもうやれるレア曲がないから、今日はみんなが知らん曲、自主制作の頃のCDに入ってた曲をやります!」
と言って演奏されたのは実に久しぶりの「天王寺経由してなんば」であり、サビでは観客が一斉に両腕を上下させる、こやまいわく「気持ち悪い」光景が生まれるのであるが、しばたはもちろんもりもとまで曲中にその動きをすることによってドラムのリズムがバスドラだけになり、
「いや、ドラムはちゃんと叩いて!」
とこやまにツッコミを入れられる面白さも実にヤバTらしいが、この曲を作った学生時代からすでに他の人が絶対に歌詞にしない(そもそもそうしようと思いつかない)ような自分の生活環境のことを歌詞にする発想力があったことがよくわかる。
そんな最古レベルの曲からここからは一気に新作モードへ。英語歌詞のカッコいいメロコアサウンドかと思いきや、よくよく聴いていくとタイトル通りに1日に2回も職質されることを歌った「職質 〜1日に2回も〜」はヤバTの歌詞の発想力だからこそのサウンドとのギャップが面白い曲であり、ライブではしばたが開放弦を駆使した奏法によってサウンドも演奏する姿も軽やかさを感じさせてくれる。
するとムーディーなイントロのサウンドが流れると客席から歓声が上がり、この曲がここまで人気のある曲になるとはと思った「dabscription」は元は変名ユニットBuyer Clientとしてリリースされた曲であり、当初はタンクトップで顔を隠しながら歌っていたのだが、武道館ライブでの種明かしがあったことによってヤバTの曲として顔を出したまま歌うようになっている。
「今日はチルな夜にしようぜ渋谷〜」
とこやまが呼びかけた通りに、最初は同期のサウンドが流れることによってこやまとしばたがハンドマイクでステージを左右に動きながら歌い、もりもとはシンバルをターンテーブルのように擦ったりするのであるが、曲途中からは楽器を手にして一気にパンクサウンドになるという展開もライブで演奏してきたことによってか一層スムーズになっている感すらある。この曲も含めてヤバTの音楽は自分にとってはBGMとして聴き流せるものではなくて、しっかり向き合って楽しむためのものである。
その向き合って楽しむというのがあらぬ角度から発生してくるのはアルバムリリース前から新曲として演奏していた「ダックスフンドにシンパシー」であり、歌詞は足に比して胴が長い自身をダックスフンドに擬えたものであるのだが、サビでは
「ワン!」「ワンワンワン!」
とメンバーも観客も犬の鳴き声を叫びまくる。そのバカバカしさにはついつい笑ってしまうのであるが、そうして曲を聴いて自然に笑顔になってしまうというのもヤバTの音楽の持つ力である。ある意味では全世代がフラットな形で歌える曲であるというのも含めて。
そんな新曲たちの後にはこちらも早くも「ハッピーウエディング前ソング」が演奏されるのであるが、持ち時間が長く、たくさん曲ができるワンマンだからこそこうしてこれまでのキラーチューンたちをフェスのように後半に固めるのではなくて散らばる形で演奏できるのであるが、やはりこの曲の
「キッス!」「入籍!」
のコールもみんなで腕を振り上げながら歌えるのが最高に楽しい。その楽しさを思いっきり歌声に込めるようなしばたの歌唱とともに観客の歌声も伸びていくのであるが、こやまは早くも
「ツアーファイナル、ありがとうございました!」
とフェス並みの持ち時間でライブを終わらせようとしていた。確かにこれまでに数え切れないくらいにその位置を担ってきた曲であるけれど。
「ハウ前ソでもう終わったみたいな感じになったでしょ?でもまだ終わらんから。まだ半分もいってないから(笑)」
とやはりこれで終わるわけもなく、このツアーでは各地で観客にその土地のローカルCMの曲を歌ってもらい、その曲を知らないメンバーが聴くという、観客が声を出せるからこそのコーナーを設けてきたらしいが、東京ではローカルCMがないということで、ファイナルでは逆にヤバTが観客に大阪の人はみんな知っているというたこ焼き屋「たこ昌」のCMソングを歌わせようとするのだが、案の定ほとんどの人が曲を知らないために最初は全く合唱が起こらない。(当たり前である)
それでもこやまとしばたに怒られながらも何回も繰り返すことによって曲を覚えた観客がしっかり合唱を起こすのだが、
「じゃあ次の曲、歌ってください」
とこやまが言うと、何の曲をやるのかわからない観客は再び「たこ昌」の曲を歌い始め、
「「たこ昌」の曲がアルバムに入ってましたか?ボーナストラックですか?BUMP OF CHICKENのCDケースの黒い部分を外すみたいにしたら「たこ昌」の曲の歌詞が書いてあるんですか?(笑)」
とやはり怒るような口調でありながらも共感度が高いネタで笑わせてくれるというあたりはさすがとしか言えない。
そんなやり取りの後に演奏されたのは「もし僕が石油王やったら」であり、こやまがアコギを弾きながら歌うという新境地的な形の曲でもある。小学生くらいの時に誰もが夢想したであろうことを今になってもこんなにキャッチーな形で音楽にできるというあたりもさすがヤバTであるが、音に埋め尽くされないアコギのサウンドだからこそ、しばたのハイトーンなボーカルがより映えているのがよくわかる。
さらにはこやまならではの切ない(と言っていいのか?)歌詞が背面のタンクトップくんの周りに映し出されていくことによってその切なさをここにいる誰もが噛みしめざるを得ない「俺の友達が俺抜きで俺の友達と遊ぶ」は今まで数々のあるあるソングを生み出してきたヤバTの最高峰と言っていいような曲だろう。その歌詞が乗るメロディーもどこか切なさを感じさせるものになっているというあたりが笑ってしまうようでありながらもやはり曲が抜群に良いというヤバTらしさが揺らがないことがよくわかるのである。それは実体験であるからこそリアルな感情を込めることができるこやまの歌唱も含めて。
さらには元々はカップリングであったことによってアルバムの中に収録されたことが若干意外でもあった「ZORORI ROCK!!!」でも照明によってタンクトップくんの頭上に「かいけつゾロリ」のゾロリなどのキャラクターが映し出されるというさりげないコラボが果たされる。それはアニメや原作を見ていた人にとっては嬉しい(子供などは特に)ものだっただろうけれど、インタビューでこやまも言っていた通りに、幼稚園や小学生くらいの子供がアニメを見て、完全にパンクでしかないサウンドのこの曲に触れるというのは完全なるパンク英才教育であると言っていいだろう。大阪城ホールワンマンの時に会場にいた幼い子供たちがこの曲が演奏されて楽しそうにはしゃいでいたり踊っていたのがスクリーンに映っていたことは今も忘れられないが、そうしたスクリーンなどはなくてもこの日も会場にそうした子供はたくさんいたはずだ。
そんな新作収録曲が続く中で演奏された、最新のタンクトップ曲シリーズが「Blooming the Tank-top」であり、
「冬はもういっぱいタンクトップの種を植えよ! 種を植えよ!」
というしばたのボーカルも実にキャッチーな曲であるが、
「黙りたくねえ お前認めたくねえ 気持ちのやり場がねえ
絶対許さん!許さん!!許さん!!!許さん!!!!
っていう時ないですか?僕はまだあります!」
というこやまらしさしかないフレーズにはやはり根底に悔しさという感情があるからこそであるし、今こうして我々がヤバTのライブに来て大きな声で歌えているというのはコロナ禍になってからもすぐに全国各地へ赴いてライブをやりまくってきたヤバTの蒔いてきた種が開花したからと言っていい。とびっきりキャッチーなこの曲はそんな今この瞬間への祝福の曲として鳴っていたのだ。
そんな声を出して歌うことができる喜びを高速パンクサウンドに乗った
「オイ!オイ!」
という声が重なることによって感じさせてくれるのは「ヤバみ」であり、ツアーを重ねてバンドサウンドがさらにたくましくなったことによってこの曲に宿るパンクさも、こやまとしばたの歌唱の強さもさらに増し、それがさらに観客を熱くさせる。それはこやまが曲中に
「まだまだいけるやろー!」
など、煽りを繰り返すことによってさらに観客を熱くしていたことによるものかもしれないが、その煽りがダイレクトに声になって返ってくるのだからそれは煽りたくなるだろう。
するとここでワンマンではおなじみの「年確」コーナーとして、会場にいる人の年齢を聞いていくのであるが、やはり20代がメイン層(10代は意外なくらいに少ないが個々の声が大きいから目立つ)であるが、40代、50代はもちろん60代以上の人までいて、その人たちが元気よく声を上げているというあたりがヤバTが全年齢対応のパンクバンドであるという所以であるし、そうした年代の人たちがこうしてまだライブに来ているというのは個人的にも本当に励みになる。自分もあのくらいの年齢になってもまだまだライブに行けるなって。
その年確では子供もたくさんいたことによって、こやまは子供に
「ゾロリの曲嬉しかった?俺らゾロリの声優やったこともあんで。はらゆたか先生に会ったこともあんで」
と子供相手にマウントを取りまくるのであるが、
「子供ははらゆたか先生とか言われてもわからんから!」
というもりもとの的確なツッコミも冴え渡っている。
そんなMCから終盤の口火を切るのは壮大なオーケストラサウンドが同期として流れる「肩have a good day」で、プロ野球ファンの自分としてはこの曲を聴いて真っ先に頭の中に浮かぶのは前中日ドラゴンズ監督の与田剛だったりするのであるが、間奏ではもりもとの口笛ソロに歓声が上がり、最後にはこやまが感極まって歌えなくなってしまうのを観客とメンバーが励ますというおなじみの小芝居も観客がお決まり的に「頑張れー!」と声を出して励ますことによってよりライブでのこの曲の楽しさを感じさせてくれる。
さらにはこやまのリアル先輩である岡崎体育とのコラボ曲でもある「Beats Per Minute 220」はレッドブルの対バン企画によって生まれたものでもあるためにこやまが
「みんなに翼を授けよう!」
と言ってから演奏され、しかもステージを赤と青の照明が彩るという演出もレッドブル仕様。曲中にはデジタルサウンドが流れてこやまがデスボイス、しばたがラップ的な歌唱を見せるというあたりも岡崎体育とのコラボ曲だからこその両者のサウンドの融合であるが、そんな曲をバンドだけでも演奏するくらいにヤバTは愛している。その対バンライブに行けなかっただけに、またいつか岡崎体育と対バンしてこの曲をコラボするのも見てみたいと、突き抜けるように高らかなサビを聴いていると思う。
そんな新作曲もありながら、こやまが序盤で言っていたようにレア曲も交えるというのがここに来て実感できるのは疾走するパンクなツービートによって始まり、Bメロでは観客が飛び跳ねまくる「とりあえず噛む」であるのだが、やはりプロ野球の千葉ロックマリーンズのファンとしてはロッテのタイアップとして作られたことで、リリース当時はマリンスタジアムでもよく流れていたこの曲がライブで聴けるのは実に嬉しいし、
「考えすぎるのはやめろって
悩みすぎるのはやめろって」
というさりげなくタイアップ元の企業の名前を歌詞に盛り込むというこやまの天才っぷりが遺憾なく発揮されている曲だと実感することができるのである。
「飛び跳ねてばっかりだけど大丈夫!?次も飛び跳ねる曲やからー!」
と言って演奏された「メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲」ではしばたが演奏しながらステージを歩き回る中、観客はやはりリズムに合わせて飛び跳ねまくる。自分の席が決まっているホールだからこそ隣の人とぶつかったりもするだろうけれど、それは隣にも名前も知らないヤバTを好きな人がいるということでもある。間奏ではこの日2回目の観客を椅子に座らせてからジャンプさせるというのがすぐさまできるのもホールだからこそである。
ここまでは5の倍数の曲順でおなじみのキラーチューンを演奏して、その後にMCを入れる流れになっている。その倍数の20曲目で演奏されたのは新作収録曲でありながらも昨年の夏フェスなどでも演奏されまくってきた「ちらばれ!サマーピーポー」で、すでにこの曲がそうした位置の曲になっていることを示すかのようにしばたの声に合わせて観客も声を出して腕を振り上げる。さりげなくタンクトップくんがクーラーに直接当たったり、麦わら帽子を被ってサングラスをかけていたりする映像が映し出されるのも目が離せないが、この曲を聴くと早く今年も野外フェスの大きなステージでヤバTを見たくなる。この曲は晴れた青空の下が似合う曲であるが、JAPAN JAMでは今年はついにトリとして夜のステージに立つ。どんなライブを見せてくれるのか今からもう楽しみで仕方がない。
そしてこやまはもうあと2曲であることを告げると観客から「えー!?」という声が返ってくるというやり取りも楽しむようにしながら、
「もう何の不安もない、この先の未来に」
と確信を持った表情で言った。
「これからまたワチャ系の逆襲が始まるから。コロナ禍になってから存在価値が危ぶまれた、俺たちやキュウソネコカミや四星球やバックドロップシンデレラみたいなバンドの逆襲がこれから、今この瞬間から始まる!ヤバTもこれからだから。これから来る、今年来るバンドだから、10代の子とか学校で「今年はヤバTが来る」って友達とかに言いや!」
と、ライブハウスでぐちゃぐちゃになって熱狂を生み出してきた盟友たちの名前を挙げながら、これから先の未来がもっと楽しくなるということを感じさせてくれた。それはこの日のヤバTのライブの楽しさが証明していたことでもある。ホールでこんなに暑いんならライブハウスではもっと…と思ってしまうくらいに。またきっとすぐにコロナ禍になる前のヤバTのライブに、なんなら次にライブハウスでワンマンをやる時に戻れるような気しかしていない。
そんな願いをヤバTはコロナ禍以降もずっと曲に、音に込めて鳴らしてきた。だからこそこの終盤に演奏されるのはそのコロナ禍にリリースされて、ずっと制限がある中でもタンクトップ(=パンクロック)の力を信じ続けてきた「Give me the Tank-top」でなければいけなかった。激しく疾走するもりもとのビートが牽引するこの曲はこれまでにも音楽を、ライブを、ライブハウスを信じてきた我々を照らし出してきてくれたけれど、今まで以上に圧倒的に強い光を放っているように感じられた。
「さあ 取り戻せ自尊心よ 笑いながら泣いた日よ
取り戻せ Come back kids, and our life」
という日が戻ってきているからこそ、
「やっぱ俺らまだ逃れられませんわ
ほらまた帰っといで 激しく飛び込め
いつだって 優しく包み込む Tank-top again」
と心から思える。この日最も感動的な瞬間をこの曲が描き出していたのは、この曲が最大の力を発揮できるタイミングがついに訪れたということだからだ。
その曲の本来持っている力を最大限に発揮するという意味では最後に演奏された「NO MONEY DANCE」もそうである。こんなにもみんなで声を出して歌えるフレーズのオンパレードな曲にもかかわらず、これまでは我々は歌うことはできなかった。この曲を歌うことができないのが普通だと思ってしまうようになるくらいに、ヤバTはコロナ禍以降もライブをやりまくってきた。まだ当時は全然ライブをやらないバンドもたくさんいた中で。そうしてヤバTが日本のどこかでライブをやってくれていて、Zepp Tokyoでの10公演で5回も見れたのがあのまだコロナ禍の重たい空気が強かった頃の自分を支えてくれていた。
その時には歌えなかった曲が、今こうやってついにメンバーと一緒に歌えるようになった。この曲、歌おうとするとこんなに思いっきり声が出てしまうくらいに叫んでしまうくらいの曲なんだということに気付く。明日喉が潰れたり、声が涸れていてももうしょうがないと思うくらいに。そうして一緒に歌うことによって、リリースされてからずっとライブで演奏され続けてきたこの曲がついにバンドだけじゃなくて、我々顧客みんなの曲になったのだと思えた瞬間だった。
アンコールではもりもとが元気良くステージを端から端まで走り回り、中央で手拍子を仕切るようにしてポーズを取ると、それをドラムセットのライザーの上に座って冷めた目で眺めていたこやまとしばたの間に座ろうとするのだが、もりもとが座ろうとした瞬間に2人が立ち上がるというあたりもまた実にヤバTらしいやり取りである。
そんなずっと変わらないヤバTも今年は10周年イヤーであるということで、10周年を祝して作ったという曲が、こやまがキーボード、しばたともりもとがボーカルで、
こやま「用意するのが大変やから、今後はピアノがある会場でしかやらへん。もしくはフェスでYOSHIKI(X JAPAN)と一緒になった時。透明のグランドピアノ(笑)」
しばた&もりもと「YOSHIKIさんや!」
というやり取りからもわかるようにレア曲になるのがすでに確定している新作収録曲の「インターネットだいすきマン」であり、背面にはパソコンの画面に打ち込んだように歌詞が映し出されるのであるが、その歌詞をメインボーカルとして歌うしばたの敢えて子供っぽく歌う歌唱は実はしばたのボーカリストとしての表現力の幅広さを感じさせてくれる曲だ。隣のもりもとの得意のステップによるダンスはさておき、つまりは「インターネット」という単語がゲシュタルト崩壊しそうにすらなる中、インターネットやSNSが大好きなメンバーからの
「もうみんないいおとななんだから
じょうほうのしゅしゃせんたくを
しっかりしよう インターネット だいすき!」
というメッセージの曲であるということである。それはいつも笑顔なメンバーも心ないことを言われまくったりしてきたんだろうなとも思ってしまうことだけれど。
すぐにキーボードが撤収されて通常のバンド編成に戻ると、
「最近やってなかった曲やけど、この会場はNHKが近いから、NHKの「おかあさんといっしょ」で子供たちがサークルモッシュする曲!」
という理由で「スプラッピ スプラッパ」が演奏され、さすがにサークルモッシュもできないし、その場でグルグル回る人もいなかったけれど、それは次にこの曲をやる時にはそうした景色が見れるようにという願いを込めたものでもあったはずだ。正直言って、ヤバTがカバーしてCDに収録されるまで原曲を全く知らなかったのだけど、今聞いてもNHKはめちゃくちゃ攻めてるしキャッチーだなとも思う。NHKの単語を出した時はNHKの近くで癒着するための「案外悪ないNHK」を演奏するかとも思ったけれど。
そしていよいよ最後の曲へ。25曲というボリュームを全く感じさせないくらいにあっという間だった(多分ちょうどこの辺りで2時間くらい)ライブの最後を担うのはここまで演奏されていなかったキラーチューンにして代表曲の「かわE」であり、こやまは曲中に歌詞の代わりに
「もう終わっちゃうよ〜!」
と言ってしまうくらいにこのライブ、このツアーが終わってしまうことを惜しむようにというか、明らかに終わって欲しくないかのように演奏していた。そんなこやまの、メンバーの思いに応えるかのように客席からは「やんけ!」の大合唱が起こり、こやまも
「よくできました〜!」
と言って最後のサビに突入していく。それをちゃんと声のやり取りによってできるようになった。それはまさに、たのC越してたのDやんけな瞬間だった。そんなヤバTのライブがついに戻ってきたのだ。
ツアーファイナルということで演奏後にはメンバー一人一人のコメントが。
「みんなに色々お願いしながらも、僕らが頑張っていくだけなんで応援よろしくお願いします!」
と実に真摯なもりもと、
「初日の愛媛だけがまだ声出しが出来なかったのが愛媛の人に本当に申し訳ない」
とツアーを終えても、声出しができないタイミングになってしまった初日の愛媛に来てくれた人への想いを口にしたしばた、そして
「今回はこうやってホールでもツアーをやったけど、俺たちはライブハウスが大好きで、ライブハウスで育ててもらったバンドやから。だからライブハウスでこれからもガンガンライブやっていくし、コロナ禍で溜まったフラストレーションを発散する場所ってどこ?ライブハウスでしょ!ライブハウスで強いバンドって誰?ヤバTでしょ!これからワチャ系の時代がまた来るから!」
とライブハウスへの想い、そこでこれからも生きていく意思を口にしたこやま。
「10周年イヤーだから、今年は俺たちライブハウスでめちゃくちゃライブやるから。みんなが想像してるくらいの倍くらいライブやりまくるから!」
と、さらなるこの先の楽しみが待っていることを告知すると、こやまのピックやもりもとのスティック、さらにはメンバーが使っていたタオルまでもが客席に投げ入れられた。そうしたくなるくらいにメンバーも楽しくて仕方なかったのだろう。そんなライブの最後にこやまが口にしたのは、
「ライブハウスに帰ります!」
だった。その瞬間にかつてELLEGARDENが幕張メッセでワンマンをやった時に細美武士が最後に口にしたのも
「さあ、ライブハウスに帰ろう!」
だったことを思い出した。どんなに巨大な存在になって、広い会場でライブができるようになっても軸足はずっとライブハウスにある。ライブハウスに行けば会える。そこでライブを見ることで生きる力を与えてくれる。ヤバTはもうそんなパンク・ロックシーンのレジェンドに連なる存在になっていると自分は思っている。つまりはヤバTはかっこE越してかっこFやんけ。それはライブ後に終演SEとして流れた「ハム太郎とっとこのうた」までも大合唱したくらいに楽しみまくっていた、ヤバTの顧客たちも含めて。
1.喜志駅周辺なんもない
2.無線LANばり便利
3.Tank-top Festival 2019
4.hurray
5.あつまれ!パーティーピーポー
6.天王寺経由してなんば
7.職質 〜1日に2回も〜
8.dabscription
9.ダックスフンドにシンパシー
10.ハッピーウエディング前ソング
11.もし僕が石油王やったら
12.俺の友達が俺抜きで俺の友達と遊ぶ
13.ZORORI ROCK!!!
14.Blooming the Tank-top
15.ヤバみ
16.肩have a good day
17.Beats Per Minute 220
18.とりあえず噛む
19.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
20.ちらばれ!サマーピーポー
21.Give me the Tank-top
22.NO MONEY DANCE
encore
23.インターネットだいすきマン
24.スプラッピ スプラッパ
25.かわE
YON FES 2023 day1 @愛・地球博記念公園モリコロパーク 4/8 ホーム
若者のすべて -YOUNG, ALIVE, IN LOVE MUSIC- #04 出演:Chilli Beans. / Tele / NEE / ねぐせ。 / マルシィ / ヤユヨ @日比谷野外大音楽堂 4/2