YON FES 2023 day2 @愛・地球博記念公園モリコロパーク 4/9
- 2023/04/11
- 22:58
2日目。前日の曇り空とは異なって雲ひとつないレベルの快晴。確かにラインナップを見るとこれまでに数々の野外フェスを晴させてきた晴れバンドたちが名を連ねている。
11:00〜 KEYTALK [SKY STAGE]
去年はバンドとしては出演していなかったのに、小野武正(ギター)が単独で遊びに来て前説に参加していたKEYTALK。武正はそれくらいフォーリミのことが大好きということであるが、今年はしっかりバンドとしてこのフェスに帰還し、リハの段階からメンバーたちは「大森」「吉留」とフォーリミメンバーを苗字で呼んでいる。
リハ後のフォーリミメンバーによる前説ではこの日はこの公園のマスコットキャラのモリゾーとキッコロもステージに登場し、
「昨日ペットボトルがステージに向かって飛んでて。邪魔なものを外に出そうとしてるんだろうけど、ドラフトにかかった方がいいくらいに肩が強い奴がいて(笑) SHANKの将平さん(庵原)がキレてたから、ペットボトル投げるのはやめて」
と改めて注意喚起をする。その甲斐あってかこの日はペットボトルが飛ぶことはなかった。
本編ではフォーリミ「Honey」のSEでメンバーが登場し、武正が曲の歌詞に合わせてフォーリミへの愛情を伝えようとするのであるが、その時にはすでにSEが終わってしまっていて焦っていたのがなんだかKEYTALKらしくて笑ってしまうのだが、昨年リリースのEP収録の「夜の蝶」でスタートし、タイトル通りにどこか大人の余裕を感じさせるような夜の情景を快晴の朝一から示していく。
すると「sympathy」では一気に軽やかな四つ打ちのダンスロックを鳴らす、数々のフェスを躍らせてきたKEYTALKらしさを感じさせると、こちらも新たな夏の覇者バンドとして数々のサマーアンセムを生み出してきたKEYTALKの最新系と言える「君とサマー」がこの快晴の空に実によく似合う。まだ季節的には全然夏とは呼べないが、これまでもずっとそうだったようにKEYTALKがフェスで夏の曲を鳴らせばそこはすぐに夏になるのである。
それは手拍子が鳴り響いて始まった「Summer Venus」もそうであり、曲中のEDMパートでは立ち上がっている八木優樹(ドラム)を筆頭にメンバー全員が1番踊ってるんじゃないかというくらいに踊りまくる。武正もその姿を見ていると少し痩せたんじゃないかと思えてくる。首藤義勝(ボーカル&ベース)が
「忘れられないフェスにしようぜ」
と歌詞を変えて歌うその時点でやはりこの日が忘れられないものになるのは決まっているのだ。
すると巨匠こと寺中知将(ボーカル&ギター)が
「YON FES、お前たちのパンクさを見せてくれー!」
と言ってKEYTALKのパンクさを示すかのように演奏された「夕映えの街、今」ではここぞとばかりにダイバーが続出すると、巨匠自身もステージを飛び降りて客席に突入しながら歌う。その姿は紛れもなくパンクであり、何故フォーリミとKEYTALKが通じ合っているのかということがわかるし、きっとKEYTALKもこういうライブがやりたくてうずうずしていたんだろうなと思う。
それくらいにはっちゃけているのであるが、それは「MONSTER DANCE」でさらに爆発する。巨匠はマイクスタンドごと持ち上げて歌う中、今度は武正がステージを飛び降りて走り回り、なんと客席の中まで走りながらギターを弾きまくる。もう楽しくて仕方がないという感じが溢れ出して炸裂しているのであるが、武正の姿を追っていると踊るどころではなくなってしまう。最後にはしっかりステージ上に戻ってきていたが。
しかもこれだけでは終わらず、最後にはフォーリミのKOUHEIを招くというこのフェス出演時にはおなじみのコラボとなるのだが、KOUHEIは
「あの端の人(義勝)だけLINEしてくれなかった。友達だと思ってたけど、実は友達じゃなかったのかな」
と巨匠、武正、八木はLINEをしてくれたことを明かすと、義勝は
「俺LINEやってないから。カカオトークしかやってない(笑)」
と言ってメンバーまでも笑わせるという返しの反射神経はさすがである。
そしてKOUHEIが八木に変わってドラムを叩くのはこの晴れた空にピッタリの「太陽系リフレイン」であるのだが、KOUHEIの細かくハイハットを刻むというダンスロック的なアプローチのドラムはフォーリミではまず見られないものであるのだが、そんなリズムを極めてシャープかつタイトに刻むKOUHEIはこの1曲のコラボだけでやっぱりとんでもないドラマーだなと思う。この日も朝から拡声器を持って入場列の横を歩き回っていただけに体力も凄いが、ドラムを叩かない八木はステージ上で飛び跳ねまくっていたかと思ったらやはりステージを飛び降りて客席の前を駆け回っている。それでも最後にはステージに戻ってきてキメで大ジャンプを見せ、KEYTALKのライブの楽しさとともに、KEYTALKがどれだけフォーリミのことが大好きなのかということを示した、久しぶりのYON FES出演だった。もちろん最後は初年度に巨匠が考案したのが今も続いている
「1,2,3,YON FESー!」
のコールで締める。間違いなく、忘れられないフェスにするためのライブだった。
リハ.BUBBLE-GUM MAGIC
リハ.パラレル
1.夜の蝶
2.sympathy
3.君とサマー
4.Summer Venus
5.夕映えの街、今
6.MONSTER DANCE
7.太陽系リフレイン w/ KOUHEI
11:35〜 TENDOUJI [LAND STAGE]
この2日間で1番嬉しかったラインナップは千葉県松戸市から生まれたこの4人組バンド、TENDOUJIが出演していること。すぐ近くで生活しているものとしてはどこか一緒にこのフェスに千葉からやってきたような感覚がある。
おなじみのサッカーのチャント的なSEでメンバー4人がステージに登場すると、ヨシダタカマサ(ベース)は上半身裸にオーバーホール、アサノケンジ(ギター&ボーカル)はピンクの短パンという、見慣れてる側からすればいつも通りではあるが、初めて見た人からはキワモノ集団のバンドだと思われないかが若干不安な中で「COCO」のご機嫌なロックサウンドが鳴らされて始まると、いきなり間奏ではアサノがステージ中央でギターソロを弾きまくるのであるが、その様を何故かステージ下のカメラが股間を狙うように撮影して、それがスクリーンにアップで映るという危うい映像に。ある意味ではTENDOUJIらしさをわかっているとも言えるけれど。
モリタナオヒコ(ボーカル&ギター)の滑らかな英語歌詞をキャッチーなメロディに乗せた歌唱にヨシダ、アサノ、オオイナオユキ(ドラム)がコーラスを重ねることによってキャッチーさが倍増する「Killing Heads」と続くと、朝からたくさんの人が集まってくれたことにモリタが感謝を告げながら、
「この曲のメロディめちゃくちゃ簡単だから、いけるなと思ったら歌ってくれ!」
とアサノが呼びかけて始まった「FIREBALL」はそのアサノが務めるメインボーカルにキーが低めではあるけれど一度聴いたら絶対歌えるようなキャッチーなコーラスの合唱が重なっていく。
さらにはこのバンドのパンクさと、パンクであるからこそのメロディのキャッチーさを感じさせてくれる「HEARTBEAT」のアンセム感の強さたるや。それは「Stupid!!!」もそうであるが、メンバーの人懐っこい人間性がそのままこのバンドの音楽になっている。だから実は飛び道具的な武器やアレンジはないけれど、ただ曲を鳴らして、それを聴いているだけで最高に楽しくなれる。それが朝から感じられるのがより幸せに思えるだけに、この順番は間違いのないものだ。
そしてその楽しさは快晴であるからでもあるのだが、
モリタ「俺たちも「OTENTO」っていう名前のフェスをやってて。そのタイトル通りに俺たち超晴れバンドだから。フォーリミは色々運営とかで忙しいと思うから、天気は俺たちが受け持つんで」
アサノ「なんか水欲しいなって思ったら雨とか降らせるから(笑)」
モリタ「もうそれ神様じゃん(笑)」
というやり取りからも滲み出る明るい人間性によってその天気はもたらされているのだろうが、「Peace Bomb」では間奏でモリタが
「俺たち英語でわけわからないこと歌ってるし、それについてくるファンもアホばっかりですけど、この曲、誰でも歌えるような歌詞にしたんですよ。1,2,3,4,5,6,7,8ってただ数字を数えるだけ。意味なんかない。ただみんなで歌いたいっていうそれだけ。YON FES、一緒に歌ってくれ!」
と叫ぶとそのカウントのフレーズでは合唱が起こり、ただ面白いだけではなくて熱い魂を持ったロックバンドであることを示すと、最後に演奏された「GROUPEEEEE」がやはり最大限にキャッチーに響き、初めて見た人の中にも確実に「このバンド良いな」と思った人はたくさんいるはず。つまりは強者しかいないこのフェスの中でTENDOUJIは確かに爪痕を残したのだ。
ただできるなら、今年は平日に昼から開催されたOTENTOを次は土日にやってくれないだろうかと思う。そうしたら絶対行くので。
1.COCO
2.Killing Heads
3.FIREBALL
4.HEARTBEAT
5.Stupid!!!
6.Peace Bomb
7.GROUPEEEEE
12:15〜 緑黄色社会 [SKY STAGE]
前日のウルフルズとは違ってレジェンドではなくてむしろフォーリミの後輩という年齢と経歴ではあるのだが、この2日目の中では最も意外な出演者である緑黄色社会。もちろんこのフェス初出演である。
メンバー4人とおなじみのサポートドラマーの比田井修(ex. school food punishment)がステージに登場すると、長屋晴子(ボーカル&ギター)がエレアコのギターを弾きながら歌う「時のいたずら」でスタートし、控えめなバンドサウンドの演奏だからこそその歌声の美しさを堪能できるのであるが、長屋は身振り手振りを加えて歌うことによってそこに感情を込めるようにしている。だからこそ美しいとなると繊細さを感じてしまいがちであるが、長屋の歌声は実にパワフルであり、この広い会場の隅々にまでしっかりと響き渡っている。
すると長屋がエレキに持ち替えての「始まりの歌」では小林壱誓(ギター)も穴見真吾(ベース)もステージ前に出てきて演奏し、手拍子をしたりして観客を煽ることによって、一気にバンド持ち前のポップさが全開になっていく。長屋の歌声だけではなくてバンドの演奏も実に力強いというのはこうしてライブを見るからこそわかることである。
そんなバンドは実は愛知県出身であり、そういう意味でもフォーリミの後輩バンドであるのだが、それを名古屋のこのフェスで証明するように名古屋のローカルCM曲を口ずさんだりするのであるが、関東育ちの身としてはマジで何を言ってるのか全くわからないくらいのレベルであり、それがメンバーたちが本当に名古屋で生活してきたことを感じさせてくれる。
そんな名古屋MCもありながらも、ダークな入りから一気にポップに開けていくような「Shout Baby」から、
「私たちもYON FESのヒーローになりたい!」
と長屋が高らかに告げてから演奏された「Mela!」ではハンドマイクを持って歌う長屋がpeppe(キーボード)の椅子に背中合わせで座って歌ったり、スティックを持って比田井のフロアタムを連打したり、かと思えば小林と穴見はステージ前で向かい合うようにして演奏したりと、まさにヒーローたるロックバンドとしての姿を見せてくれる。この辺りの曲でこのバンドのことを知った人も多いだろうけれど、ライブでこんなにロックに鳴らされるというのは音源だけを聴いていたらわからない。やはりこうしてこのフェスに出てくるということからも、このバンドもライブバンドなのだ。自分が初めてこのバンドを見たのも渋谷のサーキットフェスで小さなライブハウスに出演していた時だった。
再び名古屋のローカルCM曲(さっきとは違う曲)を口ずさみながら、
「私たちが大学生の時にこのYON FESが始まって。同級生には実際に観に行った人もたくさんいて。そういうフェスだからこそいつか私たちも出たいと思っていた」
と、名古屋の1人の大学生だったからこそのこのフェスへの憧れを口にすると、長屋による
「誰だってneed youだ」
というフレーズがこの上なくキャッチーに響く「キャラクター」から、最後はやはり長屋がギターを弾きながらも感情を込めるように身振り手振りをしながら歌う、peppeのキーボードのメロディも流麗に響く「これからのこと、それからのこと」で、スクリーンにアップで映る長屋の表情はやっぱりめちゃ美人だなとも思うのだけど、それを超えるくらいの音の、ライブのインパクトを確かに刻み込んだYON FES初出演だった。
このフェスだからといって何か特別なことをやるわけでもなければ、戦い方を変えるわけでもない。いつもと同じように、今の自分たちの持つ最大の武器や魅力を全力で見せる。それこそがこのバンドらしさをこのフェスで最も伝えられる方法。それはやっぱりポップシーンにもいられることによって、ライブハウス以外にもいろんな場所でライブをやってきたこのバンドだからこそ出来ることである。
リハ.sabotage
1.時のいたずら
2.始まりの歌
3.Shout Baby
4.Mela!
5.キャラクター
6.これからのこと、それからのこと
13:00〜 Paledusk [LAND STAGE]
この緑黄色社会からPaleduskへという両極端な流れをGENも「地上から地下へ、みたいな感じ」と言っていたが、リハの時点でKaito(ボーカル)が
「2日間で1番激しいバンド」
と口にしていたように、今年のラウドロック代表と言えるPaleduskもまたこのフェス初出演である。
サポートドラマーのSeiyaが先にステージに登場して思いっきり観客を煽るようにして同期の音を鳴らし始めると、長身のTsubasa、昨年の京都大作戦でライブを見た時とは髪型がまるっきり変わってサイドが長めの金髪になっているDaisukeのギターコンビの後にKaitoがサングラス着用で登場するのだが、そのKaitoが「BLACK ICE」と曲タイトルを口にした瞬間にまだイントロとは思えないくらいの勢いでダイバーが続出していく。もうこのバンドのライブの楽しみ方を熟知している人が前方エリアに集結しているのがわかるし、「9 SMILES」「AREA PD」と続くことによる音の重さと、Daisukeのギターを抱えながら舞いまくるようなアクションの激しさ。それはただ激しいだけではなくて、演奏力が格段に上手くないと絶対に出来ないことだ。音の重さと威力も然り、このバンドが達人の集団であることがライブを見ればすぐにわかるし、ステージ中央でシャウトをしまくるKaitoの放つオーラの凄まじさはこのバンドがラウドシーンの未来を切り開いていく存在のバンドであることをその音と姿で感じさせてくれる。
「俺とGEN君が個人的に仲が良いことを知ってる人もいると思うし、だから俺たちがこうやってこのフェスに出てるんだけど… やっぱりENTHはいないんだね(笑)まぁこのフェスに来てる奴の中にENTHを好きな人はいないでしょ(笑)でも出てないのにいじられてフィードバックされてるのあいつらくらいだよな(笑)」
と、やはり仲間であるENTHをいじるのであるが、まさに言う通りに出演していないのにこれだけいじられるバンドはENTHくらいであろう。
するとステージにはポップな電子音の同期が流れる「HAPPY TALK」からは重いラウドサウンドの中に光るこのバンドのメロディのキャッチーさを確かに感じさせてくれる。というかただ単に激しいだけのバンドだったらこんなに人気にはなっていないはずであるし、それはライブ初披露の曲とKaitoが言って演奏された「LEAVE ME OUT」の重いサウンドの中からも確かに感じられるものである。激しさだけに特化していきそうなライブという場であっても。
するとサングラスを外して、少し親しみやすい感じの目元をあらわにしたKaitoは最前の観客に向かって
「まだいけるか!?YES or NOで答えろ!」
と問いかけ、その観客がしっかり「NO!」と叫んだことによってそのタイトルの曲に突入していくというそのライブの流れの作り方とコミュニケーション力も実に見事だ。キャッチーなギターフレーズを担うTsubasaもステージ上を走り回り、時にはDaisukeと位置を入れ替わりながらコーラスをしていたりと、やはりただ激しいだけのバンドではないことが、激しいアクションのステージと激しい盛り上がりの客席からもわかる。
そして「SLAY!!」でDaisukeがさらにギターを抱えたままで回転したり舞いまくると、ラストの「LIGHTS」ではKaitoが客席に突入していき、そのKaito目がけてダイバーが続出していく。そのダイバーたちと時には拳を合わせたりしながら送り出していくKaitoが最前の観客に足を支えられながら立つ姿はこのフェスに現れた新たな鬼と言っていいものだった。間違いなくそれは今年のこのフェスのハイライトの一つと言っていい瞬間だった。
GENも言っていたように、緑黄色社会からPaleduskへという流れは、ポップシーンとアンダーグラウンドなシーンのどちらも行き来できる、どちらのバンドとも対バンすることができるフォーリミのフェスだからこそのものである。その地下の部分を担うこのバンドのDaisukeはこの後のDragon Ashのライブを自分のすぐ近くでライブ中同様の鋭い眼光で見ていた。彼はそこから何を得て自分たちの音楽やライブに還元していくのだろうか。去年京都大作戦で見た時よりもはるかにこのバンドの音楽や存在が好きになっている。
1.BLACK ICE
2.9 SMILES
3.AREA PD
4.HAPPY TALK
5.LEAVE ME OUT
6.NO!
7.SLAY!!
8.LIGHTS
13:40〜 HEY-SMITH [SKY STAGE]
いわゆるTRIPLE AXE勢の中で今年唯一このフェスへの出演となったのがこのHEY-SMITHである。割と猪狩秀平(ボーカル&ギター)がGENとよく一緒にいるイメージもあるけれど、このフェスに出るのはこれが2回目である。
ステージサイドのスクリーンに紹介映像が映るというのは今はこのバンドが出演するどのフェスでもお馴染みであるが、今回のこのフェスではそうして映像を使うのがこのバンドだけだっただけに特別感を感じる中でメンバーがステージに登場すると、イイカワケン(トランペット)とかなす(トロンボーン)、満(サックス)のホーン隊のサウンドが高らかに鳴り響く「Endless Sorrow」でスタートし、やはりダイバーもサークルも続出するのであるが、この曲の中の
「No more war」
のフレーズ部分ではダイバーが落ち着きを見せていたのはバンドのメッセージを弁えている部分も、その後の大サビに向けて温存していた部分もあるのだろう。
すると猪狩からYUJI(ベース&ボーカル)へとボーカルがスイッチする「2nd Youth」では少年性が強い見た目と声質によるYUJIが歌うからこそ、よりタイトル通りに誰もが青春真っ只中にいるということを感じさせてくれると、ストレートなパンクチューンの「I'M IN DREAM」が駆け抜けるように演奏され、乗り遅れないようにダイバーも次々と飛んでいく。その、このバンドのライブの光景としては当たり前のものが見れていることによって猪狩も実に良い表情をしているのであるが、
「YON FES出るの2回目!もう仲間やな!」
と言ってその言葉通りに仲間の曲である「Fellowship Anthem」を演奏するのであるが、何故か今まではそんなことが一切なかったのに、猪狩が喋るとスクリーンの映像が乱れて映らなくなるのは猪狩がこれまでに放送できないことを数々口にしてきただけに存在がセンシティブ認定されているのか、あるいはヘイスミはどこか磁場を狂わせるような力を持っているのだろうか。
そんなトラブルというほどのことではないけれど、少し違う出来事もありつつ、「We Sing Our Song」からは再び高らかにホーンのサウンドが鳴り響きながらパンクに突っ走り、YUJIボーカル曲の中では随一のハードさを感じさせる「Be The One」とライブ定番の鉄壁の曲たちが続いていく。だからこそこうしてとめどないくらいにモッシュ、ダイブ、サークルが起き続けているのである。
何回MVを見ても自分は全く振り付けを覚えられない昨年リリースの「Inside of Me」もさすがにヘイスミTシャツを着た人がたくさんいるだけに、至る所で完コピしたダンスを踊る人が続出すると、そんな自由な楽しみ方をする観客を見た猪狩は
「俺たちは今年も夏にハジマザやるわ!そうやってやりたいことをやって生きていくから、お前たちも自分のやりたいことをやれ!
今日は4月やから2023年のフェスの始まりみたいなとこあるやん!でも今日で今年は明るいものになるって思いました!半年前に炎上した甲斐がありました!(笑)」
と、去年の主催フェスのハジマザが炎上したことをネタにできるようになっている中、YUJIの爽やかなボーカルが快晴の空に向かって響き渡る「Summer Breeze」、対照的に猪狩の男らしいボーカルもまた空に向かって響き渡り、この暑くもなく寒くもない気持ちの良い気候も相まってこの愛知県がアメリカ西海岸のように感じられる「California」と、ここでは激しく盛り上がるというよりもこのバンドの持つメロディのキャッチーさを感じさせてくれ、だからこそ観客も一緒に思いっきり合唱することができるのであるが、やはり猪狩が喋るとスクリーンの映像が乱れるのはフェス側が敢えてやってるのかと思ってしまうくらいだ。
そして再びホーン隊のサウンドがダンサブルに響き渡り、ツーステを踏む人もたくさん出現する「Dandadan」から、ラストはやはりこうした楽しみ方ができるようになったことによって巨大サークルが出現して観客が走り回る「come back my dog」。でもそんな激しさの中でも観客たちは本当にみんな笑顔だった。こうした楽しみ方ができる喜びを噛み締めていた。それはこれからいろんなフェスで味わうことができるようになる。もちろんこのヘイスミ主催のハジマザも含めて。もう今年からは炎上することを心配したり、ライブの在り方について悩んだりしなくていいはずだ。
1.Endless Sorrow
2.2nd Youth
3.I'M IN DREAM
4.Fellowship Anthem
5.We Sing Our Song
6.Be The One
7.Inside of Me
8.Summer Breeze
9.California
10.Dandadan
11.come back my dog
14:25〜 dustbox [LAND STAGE]
前日のこのステージのトリのKUZIRAがフォーリミ直系の後輩だとしたら、フォーリミ直系の先輩に当たるメロディックパンクバンドがdustboxである。こちらもリハの段階からダイバーが出現し、JOJI(ベース)は
「うちらの客はヤカラしかいねーのか!」
と言いながらも実に嬉しそうである。
おなじみの「New Cosmos」のSEでメンバー3人がステージに登場すると、JOJI、SUGA(ボーカル&ギター)とともに観客も一緒にカウントダウンをし、0になった瞬間にSUGAがギターを掻き鳴らして始まったのは「Riot」であり、やはりいきなりのモッシュとダイブの嵐となるのであるが、曲最後のタイトルフレーズ部分では思いっきりジャンプしながら観客がみんなで叫ぶ。世代的にこのフェスの観客からしたらあまり存在も曲も知らない人もいるんじゃないかと思ったりもしたが、それは全くの杞憂であり、最初から完全にホームだ。それはフォーリミのファンも自分たちが好きなバンドのルーツを聴いているということでもあるかもしれない。
最新シングル曲「Emotions」で変わることのないバンドのメロコア魂を示すと、JOJIもステージ上でそうしているように観客が両腕を左右に上げる光景が見ていて楽しい「Bitter Sweet」がまさにスイートに響く。それはSUGAのメロディックパンク初代ハイトーンと言ってもいいくらいのボーカルあってこそであるが、他のジャンルやサウンドに振れることなく、ただひたすらにメロディックパンクを研ぎ澄ませてきたバンドだからこそのグッドメロディをベテランになった今でも実感させてくれる。
するとSUGAが
「去年、 SHANKのフェスで会った時かな?GENちゃんがこの曲を好きって言ってくれて。でもギターでコピーしようとしたら弾き方がわからないって言ってた(笑)久しぶりにその曲をやります!」
というGENのリクエストをしっかり覚えていたあたりからも先輩としての優しさを感じさせる「Smile like a child」を袖にいるGENにギターの弾き方を見せるようにしてSUGAは演奏していた。やはりフォーリミはdustboxからの影響を強く受けているバンドであることがわかるし、タイトル通りにそのパンクサウンドはここにいる人たちみんなを子供のような笑顔にしてくれる。
しかしおなじみのSUGAが溜めて溜めてから歌う「Here Comes A Miracle」ではJOJIが
「今日は尺ないから急いで(笑)」
と何故かタイムキーパーとして持ち時間の管理をし始めることによって、SUGAのギターがイントロを鳴らし始めた瞬間に巨大サークルが発生して高速で走り回る「Hurdle Race」もテンポ速めとなり、サークル自体も高速になるのが面白い。今まではこの曲でもその場で楽しむしかなかったのが、こうしてまさにレースをしているように走り回るような楽しみ方が戻ってきたのだ。
すると
「ドラムを叩きたいっていう人がいるんだって。俺たちの曲に青春の曲があるって」
とSUGAが言ってステージに迎え入れたのはこの日2ステージ目となるKOUHEIなのだが、YU-KI(ドラム)がKOUHEIにセッティングを教えている間もタイムキーパーJOJIは時間を気にして急かすと、
「俺の青春の曲、「Try My Luck」!」
とKOUHEIがタイトルコールをして「Try My Luck」が演奏されるのであるが、KOUHEIのドラムは完全に原曲完コピであり、本当にこの曲が好きで叩いていたんだろうなということがよくわかるし、フォーリミには最後に加入したKOUHEIもやはりパンクに影響を受けてバンドをやってきたということがよくわかる。これ、音だけ聴いてYU-KIじゃない人が叩いてるってわかる人がいるのだろうかというくらいに。
「KOUHEIありがと!じゃあ次の人!(笑)」
とやはりめちゃくちゃ急ぎながらJOJIが自身のベースを渡したのはなんとRYU-TAであり、自身がメインボーカルを務める「Neo Chavez 400」のベースをRYU-TAに任せるのであるが、その際の客席の高速サークルっぷりもまた凄まじく、そこにRYU-TAはコーラスでも参加することによってバンドだけで演奏するよりも確実にさらに激しさを増していた。やはり時間ギリギリだったらしく、バタバタとステージから去って行ったけれど。
GENが好きな曲を演奏し、KOUHEIの青春の曲で本人たちと一緒に演奏し、RYU-TAにもベースを弾いてもらう。フォーリミがdustboxに求めるものを全て叶えてくれる。だからdustboxのパンクは本当に優しい。普段フェスではやっている曲を省いてまでそうしたコラボをやって、フォーリミのために尽くしてくれる。それはdustboxが自分たちのバトンをフォーリミに手渡しで渡した瞬間を見れたということでもある。それでもdustboxもまだまだ走り続ける。
「What's waiting for me next!?」
と歌い続けているバンドだから。
リハ.RIGHT NOW
リハ.Bird Of Passage
1.Riot
2.Emotions
3.Bitter Sweet
4.Smile like a child
5.Here Comes A Miracle
6.Hurdle Race
7.Try My Luck w/ KOUHEI
8.Neo Chavez 400 w/ RYU-TA
15:05〜 Dragon Ash [SKY STAGE]
こちらもフォーリミの先輩であり、もはや生きるレジェンドと言っていい存在のDragon Ash。一見音楽性は離れているように感じるが、今年リリースされたDragon Ashのトリビュートアルバムにフォーリミがラテン期の「crash the window」で参加していることからも、フォーリミがDragon Ashの音楽だけではなくて精神性に強い影響を受けていることがわかる。
先にBOTS(DJ)がステージに登場して音を鳴らし始めると、そこに柄シャツを着たkj(ボーカル)がステージ上を舞うように登場して「Entertain」を歌い始める。そこにHIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井誠(ドラム)とメンバーが1人ずつ加わっていくことによって音が重なっていくというのは近年おなじみのオープニングであるが、
「退屈は嫌いだ 心を殺す
音楽は偉大だ 炎を灯す
体を解く だからこそ僕や君の拠り所になって
また音を望む」
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に 聴かせて」
という、コロナ禍にDragon Ashが祈りを込めるようにして書いた歌詞が観客の合唱という形で返ってくるようになったのが感慨深いし、その声を聞くことができたkjやメンバーたちは嬉しそうな笑顔を浮かべている。
するといきなり同期の音が流れて大歓声と手拍子が鳴り響くのは「百合が咲く場所で」であり、その手拍子が起こるメロ部分が静だとしたら、一気にダイバーが続出してサークルが弾け飛ぶサビは動。その曲のコントラストが爆発力を際立たせているのであるが、そんな客席の光景を見たkjは曲終わりで幸せそうにダブルピースをしたりしているのが実にお茶目で可愛らしい。
さらには神聖さを感じさせるようなサウンドから一気にHIROKIの轟音ギターサウンドが会場を埋め尽くしていくような「New Era」、前述のトリビュートアルバムにバンドの新曲として収録された「VOX」と続いていくのであるが、決して激しかったりラウドだったりするわけではない曲たちだけれど、バンドの精神的な強さを感じさせてくれるような曲である。そこに宿る説得力は長い歴史の中でいろんなことを乗り越えてきて、あらゆるジャンルのサウンドを自分のものにしてきたDragon Ashだからこそだ。
「バンドマンがステージに立ってやることって35分でどれだけエンターテインさせられるかってことでしかない。35分でこのフェス選んで良かったって思えるように」
とkjがこうしてこのフェスのステージに立っていることの矜持を語ると、デジタルサウンドとラウドロックを融合させるというDragon Ashなりの形でのhideのカバー「ROCKET DIVE」でタイトル通りにダイバーが続出する。もしかしたらフォーリミのファンには原曲の存在を知らない人もいるかもしれないが、こうしてDragon Ashが演奏することによって曲に、hideの存在に触れることができる。それもまた様々な音楽の影響を受けながら時代の革命家となったDragon Ashだからこそだ。曲終わりではkjが桜井のことを笑いながら指差していたのは桜井が何らか締めを間違えたりしていたのだろうか。
そんな中でBOTSがパーカッションを打ち鳴らすラテンフレーバーを感じさせるのは、まさにこうしたスタンディングのロックフェスの客席のことを歌った「For divers erea」であり、間奏ではサンバ的なサウンドに合わせてメンバーもステップを踏みながら演奏して観客も踊りまくる。
そしてイントロの一音が鳴るだけで大歓声が起こり、
「誰が1番頭悪いか大会ね!俺も負けないからな!」
と言って演奏されたのはもちろん「Fantasista」であり、コーラス部分では大合唱を巻き起こし、間奏ではPay money To my Pain、The BONEZの名前を出しながら紹介したT$UYO$HIのベースソロも披露されると、kjはちゃんとスタッフに確認しながらステージを飛び降りて客席に突入し、ダイバーにまみれながら歌うのであるが、代わりにステージにはGENが登場してT$UYO$HIのマイクスタンドで歌い、KOUHEIもその様子を撮影するカメラマンとしてステージに登場する中でkjは
「服引っ張るなって!」
とダイバーに注意しつつ、最後の言葉はなんと
「メガネ落としてますよ!」
とダイバーが落としていったメガネを気遣うという実にkjらしいものだった。そうしたパフォーマンスをバンドができて、観客もスポーツをしているかのようにダイブをしたりという楽しみ方をすることができる。演奏終了後にステージ前に並んで笑顔を浮かべていたメンバーたちはkjが
「3年間我慢したバンドマンと君たちに拍手!」
と言っていたように、我慢から解放されたような笑顔を浮かべていた。それを見ることができて、この日、このフェスを選んで本当に良かったと思えた。
Dragon Ashは「フェスキング」とも呼ばれている。フェスに出ればその日をかっさらっていってしまうくらいに凄まじいライブをすることによってついた通り名であるのだが、それは25周年という大ベテランの域に入っても全く変わることはない。これからもあらゆるフェスでそのキングっぷりを見せつけるようなライブをやり続けて生きていくはずだ。
1.Entertain
2.百合の咲く場所で
3.New Era
4.VOX
5.ROCKET DIVE
6.For divers erea
7.Fantasista w/ GEN, KOUHEI
15:50〜 Wienners [LAND STAGE]
昨年出演時に
「初年度に出演してから全く呼ばれなくなったから忘れられたのかと思った」
と言っていたが、今年は2年連続出演となったWienners。それは去年のライブが素晴らしいものだったことの結果の証明でもある。
メンバー4人がステージに登場すると、玉屋2060%(ボーカル&ギター)はピンクの長い髪、前日にすでに会場でフォーリミのライブを客席から見ていた560(ベース)は髭が緑色、アサミサエ(キーボード)は赤い中華服のような服装、KOZO(ドラム)は髪を結いているという4者4様な出立ちの中で玉屋は
「夢にまで見たDragon Ashからのバトンを受け取って、Wienners始めます!」
と憧れのDragon Ashの後という夢がこのフェスで叶ったことを喜びとともに口にしてから、夕方という時間であってもまだ明るいからこそピッタリ似合う「SOLAR KIDS」でスタートし、パンクを軸にしながらもあらゆるジャンル、サウンドを飲み込んだWiennersサウンドが鳴らされ、去年とは全く違って早くもダイブ、モッシュの応酬に。やはりこのバンドのライブもそうして楽しむものでもあるけれど、明らかに去年よりもこのバンドを見ている観客の数が圧倒的に多い。それは去年のこのフェスでライブを見た人も多ければ、見てはいないけれど去年のライブの噂を聞いて見ているという人もたくさんいるはず。KEYTALK、TENDOUJI、Dragon Ashと晴れバンドが居並ぶこの日であるが、このタイトルの曲を持っているだけにこのバンドの晴れバンドとしての力も間違いなくそこに合わさっているはずだ。
「音楽の神様、どうかこのフェスを守ってください!」
という願いをパンクサウンドに込めた「GOD SAVE THE MUSIC」は玉屋とアサミの男女ツインボーカルが、アイドルグループにも曲を提供しているこのバンドの楽曲のキャッチーさをより際立たせている。
すると玉屋が
「でもまだ足りないんだよなぁ。特にKOZOさんの気合いが足りてない!」
と言い始めてメンバー同士の言い合いになってから演奏されたのは去年の「Galapagos」に続くフォーリミカバーシリーズ「Galapagos II」であり、ただカバーするだけではなくてGENのキーに合わせてアサミがメインボーカルを担い、そのキーボードのサウンドがWiennersとしてのカバーになっている。音源になるわけでもなければ、これから先に何回も演奏するわけでもない。この日だけのためのカバー。それをここまで高いクオリティで演奏してくれるという愛情を見せてくれるバンドは他にいない。本当に凄いバンドだと改めて思うし、それこそがこのバンドならではの呼んでくれたフォーリミへの愛の返し方である。一気に前方へ押し寄せてダイブやモッシュを繰り広げるというのもそんなバンドへのこのフェスの観客からの愛の返し方である。
そんなWiennersとしての完璧な「Galapagos II」のカバーから、メンバーがタイトルに合わせて忍者のようなポーズを取ってから演奏された「SHINOBI TOP SECRET」と、昨年リリースした最新アルバム「TREASURE」の曲たちが早くもライブの主軸を担う曲になっているのも、バンドがリリースしてからひたすらライブハウスで曲を鍛え上げてきたからこそだ。
そして今年もカバーだけではなくて特別ゲストとして招かれたのはKOUHEIであり、KOZOが横でパーカッションを叩きながら、3ステージ目(Dragon Ashのカメラ撮影を含めたら4ステージ目)ではKEYTALKやdustboxよりもはるかにシンプルなドラムセットで「TRADITIONAL」に参加するのであるが、その手数の多さによって全く違和感がない演奏になっているし、3ステージ全く違うバンド、違うジャンル、違うドラムセットでここまで見事な演奏を見せてくれるKOUHEIのスーパードラマーっぷりを示す1日になっている。それはWiennersの音楽に通じるところがあるからだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのはこのバンドのアンセムであり、サビで満員の観客が腕を左右に振るのが壮観の「蒼天ディライト」であり、アサミのボーカルフレーズでリズムに合わせてたくさんの人が合いの手的な手拍子を打つのはもうこのバンドにとってこのフェスが完全にホームであることを示していた。
しかしそれだけでは終わらず、ファストコアパンクからの影響も強いこのバンドだからこそのショートチューン「Cult pop suicide」で締め…かと思いきや、さらに
「まだもうちょっと時間あるっしょ!?」
と、最新作収録のショートチューン「よろこびのうた」までも追加して演奏するというのは本当にさすがだ。これこそがWiennersのフェスの戦い方。ずっとライブハウスで生きてきたバンドとしての強さが確かにそこには刻まれていた。
こんなにフォーリミへの愛の溢れたカバーとKOUHEIとのコラボ。それは2年連続でありながらも同じではなくてアップデートされたものになっている。もはやこのバンドはこのフェスがホームのバンドではなくて、このフェスにはなくてはならないバンドだ。だからこそ来年もまたこのフェスで、この場所で観たいし、そうでないところでもたくさんライブを観たいと思う。
アーティスト主催ライブの主役はその主催アーティストであって、他の出演バンドがそれを超えるようなことは基本的にはできない。でも今年も去年もこのフェスでそこに1番近づいたのはWiennersだったと自分は思っている。
リハ.よろこびのうた
リハ.恋のバングラビート
リハ.おおるないとじゃっぷせっしょん
1.SOLAR KIDS
2.GOD SAVE THE MUSIC
3.Galapagos II
4.SHINOBI TOP SECRET
5.TRADITIONAL w/ KOUHEI
6.蒼天ディライト
7.Cult pop suicide
8.よろこびのうた
16:30〜 フレデリック [SKY STAGE]
今年のこのフェスの2日目のトリ前という大事な位置を任されたのはフォーリミと同世代のバンドである、フレデリック。この出演者たちの中でそこを任されたことは間違いなくメンバーを燃え上がらせているはずだ。
実際にダンサブルなSEでメンバーが登場すると、黄色いジャケットを着た三原健司(ボーカル&ギター)が気合い溢れるように5年ぶりのこのフェスへの出演となったこととともに
「名古屋の人を全員掻っ攫いに来ました」
と強気に挨拶をすると、いきなりの「ジャンキー」で踊らせまくる。去年のいろんなフェスでは最後に演奏していたこの曲を最初に持ってこれるようになったのは本当にデカいし、健司はやはり声に気合いが入りまくっているのがわかるくらいに語尾を思いっきり張り上げるように伸ばすのはこの出演者の中でトリ前を任されたことがプレッシャーではなくて自分たちの力になっているからだろう。
健司がギターを持つと、体だけではなくて心までをもさらに踊らせまくる「YONA YONA DANCE」で高橋武のドラムと三原康司のベースによるキメのリズムの力強さを感じさせてくれるのであるが、曲中の手拍子を打つタイミングで客席から大きな手拍子が鳴るというあたりはさすがにこの曲を知っている人がたくさん集まっているということである。
さらにはこのフェスを最後まで遊び切るためのテーマである「KITAKU BEATS」では高橋が「ここでこんなにも!?」と思ってしまうくらいに思いっきり手数を増やしてドラムを叩きまくる。どうやらやはりトリ前を任された気合いは健司だけではなくてバンド全体で共有されているものであることがわかる。個人的には2週間前にNHKホールでワンマンを観たばかりというタイミングであってもその気合い漲る演奏には驚かされてしまう。
すると健司は
「もう9年前、2014年に名古屋で開催されていたミソフェスっていうフェスに出た時にelectric ladylandっていう500人くらいのキャパのライブハウスでオーラルの拓也にGEN君を紹介してもらった。そしたらGEN君に「気持ち悪くて好きです」って言われた(笑)
あの時はまだそのキャパがギリギリソールドアウトするかしないかっていうところでライブをしていた我々がこんなに大きな会場でフォーリミがフェスをやるようになって、そこに出ている。だから誰も知らなくてもいい、気持ち悪くて好きですって言ってくれたあの4人だけに届けるつもりで次の曲を演奏します」
とフォーリミとの出会いを今でも鮮明に覚えていることを感じさせてくれるMCの後に演奏されたのは、当時のフレデリックのキラーチューンだった「SPAM生活」であるのだが、赤頭隆児によるギターサウンドがさらにサイケデリックさを感じさせるという今だからこその表現になっているのであるが、それがより曲の気持ち悪さを引き出すようなアレンジになっている。その気持ち悪さには
「死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない」
と繰り返されるサビのフレーズも確かに含まれているだろうけれど、自分自身この曲が出た当時にフレデリックと出会ったのだが、当時はこんなにシュール極まりないバンドがこんなに大きなステージに立つようになるなんて全く想像していなかった。フレデリックもフォーリミもそんな我々が想像できるようなところのはるか先まで音楽の、曲の力によって辿り着いたのである。
そんな振り返りもありながらも、健司が再びハンドマイクになっての「Wake Me Up」が曲の後半になるにつれて音の激しさを増していくという形で観客をさらに踊らせながら赤頭もステージ上を駆け回ったりとメンバーも踊るように演奏すると、
「名古屋のお客さん全部俺たちが掻っ攫います!」
と、バンドがイントロのライブアレンジを演奏する中で再び気合いを入れるように健司が叫んでから演奏された「オドループ」はやはり会場の空気を一変させる。前日に見たウルフルズの大ヒット曲と同じような感覚が確かにあった。イントロが流れた段階で客席が目醒めていくかのような感覚が。だからこそ手拍子も完璧に鳴り響くし、腕を上げたりMVの振り付けを踊ったりと思い思いに楽しむ客席の中にはサークルまでもが出現。フレデリックのライブでこんな光景が見れるのはこのフェスくらいだろうが、健司の逞しい歌唱や赤頭の思いっきり体を逸らして弾くギターソロがそうした衝動的な楽しみ方をさらに煽ってくれる。
そんなライブの最後に演奏されたのはフレデリックのスタンスとして最新作の曲「スパークルダンサー」で再び健司はハンドマイクになって歌うのであるが、ボートレースのCM曲として大量にオンエアされているだけに三原兄弟による
「乗ってけ 乗ってけ」
という中毒性抜群のフレーズを聴いて「この曲知ってる!」となった人がたくさんいたのか、客席ではサークルが発生するのであるが、1コーラス目では明らかにサビが来るタイミングがわかっていない感じでサークルが弾けてしまい、
「やるんならカッコよくやってくれやー!」
と健司に言われてしまうのであるが、それでもその普段の自分たちのライブでは起こらない楽しみ方も否定しないのがフレデリックであり、2コーラス目では健司が
「はい、サビ来ますよ!」
と言って丁寧にカウントダウンまでしてサークルにタイミングを指南する。ハンドマイクで歩き回りながら歌っているというのもあるが、健司は本当にちゃんと客席をよく見ているし、そこを気にかけている。それでも最後の歌唱を思いっきり声を張り上げて歌う瞬間だけは、全ての意識を100%その歌唱に込めているかのような凄まじさだった。
この日はサークルが出来たりしていたが、フレデリックの音楽にはモッシュやダイブができる曲は全くない。それは踊らせるバンドだから当たり前なのであるが、でもモッシュやダイブで楽しむパンクバンドたちがライブをやりまくって生きているのと同じくらいに、フレデリックもひたすらライブをやりまくって生きてきたバンドだ。ツアーが終わればまたすぐに次のツアーが始まって、フェスやイベントも出れるだけ出まくる。そうやってライブをやりまくって生きてきたバンドの強さが、モッシュやダイブがなくても確かに現れていた。サークルが出来ていたのはそうした楽しみ方をしたい人たちをフレデリックの音楽が動かした証拠。文句なしのトリ前でのフレデリックのライブだった。
リハ.リリリピート
リハ.ナイトステップ
1.ジャンキー
2.YONA YONA DANCE
3.KITAKU BEATS
4.SPAM生活
5.Wake Me Up
6.オドループ
7.スパークルダンサー
17:15〜 Maki [LAND STAGE]
若手からベテランまで様々なキャリア、音楽性のアーティストたちが出演してきたこのLAND STAGE。今年最後にこのステージに立つのはMaki。名古屋のバンドということもあり、フォーリミの主催するこのフェスのこのステージを締めるにこれ以上ないくらいにふさわしい存在である。個人的にはフォーリミの「Harvest Tour」の初日の千葉LOOKの対バンとして出演していたのだが、到着が遅れてライブが見れなかったために同じフォーリミのライブでのリベンジでもある。
サウンドチェックの段階でメンバー3人がステージに登場して演奏を始めると、その音圧が明らかにリハというレベルのものではなく、山本響(ボーカル&ベース)も
「ロックバンドにリハなんかないから!いつだって本番!」
と叫んでフル尺でまさに本番と変わらないくらいの激情のギターロックを鳴らしてダイバーが続出していく。
それは本番でも変わらず、
「名古屋のバンド、Makiです!」
と挨拶すると、まっち(ドラム)の一音が実に重いビートと、一本だけでこの会場内を埋め尽くすかのような佳大のノイジーなギターサウンドが響く「ストレンジ」からスタートし、やはりのっけからダイバーの嵐。正直、「こんなにも!?」と思うくらいに観客のノリの激しさに驚いたのは確かにパンクな要素もあるけれど、むしろeastern youthやblood thirsty butchersの系譜にいるエモーショナルギターロックバンドというイメージが強かったからである。
そう感じるのはその文学を愛してきたことがわかる日本語の使い方のタイトルや歌詞にもある。山本の逞しく太い歌声はしっかりその美しい日本語の連なりによる歌詞を噛み締めさせてくれるし、「春と修羅」なんかはタイトルからして間違いなく宮沢賢治から取られているだろうけれど、
「春と言えばYON FESだと思ってます!」
と言ってから演奏されただけに、この曲を春のこのフェスで鳴らせることの喜びを感じさせてくれる。
リハでも演奏していた「斜陽」を本編でも演奏するというあたりからはさすがにリハと本編の境がないバンドであるが、
「もうフォーリミは向こうのステージでセッティングしたりしてる。だから向こうのステージまで響くようにこの会場の地面を揺らそうぜ!もうみんな今の曲覚えたでしょ!」
と言ってもう一回演奏するというあたりは面白くもあるけれど、ちゃんと言葉で説明するあたりにウケ狙いの2回連続じゃなくてそこに意図や理由がちゃんとあることを感じさせてくれる。この曲を聴いている時に少しずつ陽が傾いてきていたのも自然でありながら素晴らしい演出である。
そんなバンドの最新リリース曲「Lucky」はここまでの激情っぷりから一転するような、音に身を委ねて体を揺らせるようなタイプの曲だ。
「つまらない上司を殴っちゃおう」
というフレーズにはハッとさせられるというか、いやいや、さすがにそれはできないって…と思ってしまうのであるが、
「明日にはきっと晴れるだろう」
という締めのフレーズは天候だけではなくて、そうしてストレスを吹っ飛ばした聴き手の心模様のことでもあるはずだ。
「フォーリミに会ったのは恵比寿のライブハウスで。ライブ終わった後に呼ばれて、怒られるのかな?と思ったらこのフェスのオファーだった(笑)
そうやってこのフェスに出れることになって、何をしようかなとも考えたんだけど、フォーリミと出会ったのはライブハウスだったから、ライブハウスでやってることをそのままやります!」
と言って「平凡の愛し方」で
「どうかまた 歓びを
どうかまた 歌うから」
というサビのフレーズではダイバーとともに拳を振り上げてのシンガロングが起こるのであるが、このバンドはそうしてサビでキャッチーなフレーズを繰り返すことによって合唱を起こすという曲の作り方、構成の作り方が本当に上手い。だからライブを見るのが初めてであっても周りの人と同じように曲に向き合うことができる。
それは「憧憬へ」での
「また君に会えたら」
というフレーズのインパクトの強さもまた然りである。ただひたすらに音楽の力、ライブの力でそれを感じさせてくれるこのバンドは山本も口にしていたように、フォーリミの次に名古屋を担う存在になるんじゃないかと思う。
またこのバンドに会えたら、その時はライブハウスで歌えるように、と思いながら、今年のYON FESがもう終わっていってしまうという寂しさも同時に噛み締めていた。
リハ.フタリ
リハ.斜陽
1.ストレンジ
2.シモツキ
3.春と修羅
4.斜陽
5.斜陽
6.Lucky
7.平凡の愛し方
8.憧憬へ
17:55〜 04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そして2023年のこのフェスもいよいよ最後のアクト。主催者のフォーリミが今年のこのフェスを締めるべくステージに立つ。その瞬間まで、今年ここまでに見てきた素晴らしいライブの数々が走馬灯のように頭の中を駆け巡っていく。
おなじみのSEで登場した4人は疲れもあるだろうけれど、全くそんな素振りは見せない。むしろ出演者や観客、スタッフなどからもらったものを自分たちの力に変えるようにして、いきなりのHIROKAZのギターが煌めき、RYU-TA(ギター)が「オイ!オイ!」と煽りまくる「swim」からスタートすると、GEN(ボーカル&ベース)も振り絞るようでもありながらも実に伸びやかにそのハイトーンボーカルを響かせる。たくさんの観客が一斉に泳ぐように両手を動かす仕草すらもなんだか愛しく思えてきてしまう。
基本的にYON FESでは毎年2日間でフォーリミはガラッとセトリを変える。なのでこの日も「swim」もそうだが「Kitchen」も前日は演奏されていなかった曲だ。曲中の手拍子も完璧に決まると、サビではサークルが弾けたり、腕を上げて踊ったりと、それぞれがそれぞれの楽しみ方でこのライブを楽しんでいる。そこには間違いなくフォーリミへの愛情がある。
すると前日は初代が演奏された「Galapagos II」はこの日はWiennersがカバーしていただけに本家バージョンを見せつけるようなものであるのだが、やはり本家バージョンを聴いても同じ曲とは思えないくらいにイントロ、Aメロ、Bメロ、サビが激しく展開していく。それでもキャッチーというのが全編に渡って貫かれているあたりがさすがフォーリミである。
「まだこの時間でもこんなに明るい。東京ならぬ、名古屋の流星群を持ってきました!」
と言って演奏された「midnight cruising」はGENの言葉通りに天気が良かったためにまだ明るい空の下でSUPER BEAVERの曲タイトルに合わせるようにして披露されたのであるが、この日実に4ステージ目という鉄人ドラマーKOUHEIはカメラに向かっておなじみの変顔をするとそれがスクリーンにアップで映り、RYU-TAは間奏で
「またこの景色が見れて本当に嬉しい!お前たちありがとうー!」
と感情を爆発させる。本当にフォーリミが作りたかったフェスの光景がここに広がっていることを実感させてくれる。
「一緒に今年のYON FESを完成させましょう!」
とGENが気合いを入れるようにして呼びかけると、そのGENがハイトーンと声量の限界に挑み、それを突破していくような「fade」から、薄暗くなってきたステージから鮮やかな色の照明が光り、HIROKAZがイントロで煽りまくる「fiction」、さらには曲はじまりのメンバーの歌唱から始まるハードなサウンドが今のフォーリミによる「fiction」であるかのような最新アルバム収録の「Finder」と、アルファベットのFから始まるフォーリミのライブ定番曲にして名曲が連発されていく。それはフォーリミの鳴らしている音の力強さを改めて感じさせてくれるようなセクションになっている。
するとここでスペシャルゲストとして招かれたのはDragon Ashのkjであり、ということは演奏されるのはもちろんDragon Ashのトリビュートアルバムにフォーリミが参加した「crash the window」なのだが、GENが
「この曲はハンドマイクで歌いたいんだよな〜」
と言うとベーシストとしてWiennersの玉屋2060%までもステージに招く。Dragon Ashの大ファンである玉屋としてはkjの歌うDragon Ashの曲で演奏できるというのは夢みたいな出来事だと思われるが、力強いkjとハイトーンのGENのボーカルによる、フォーリミなりのパンクなこの曲のカバーをライブで見れる機会はもう今後そうそうないだろう。それだけでもこの日このフェスでこのライブを見れたことを本当に幸せに思う。
そんなコラボの後にはGENが、
「ライブシーンっていうのは一回完全に壊れてしまったと思ってる。だから戻すんじゃなくて、新しいものを作っていくつもりで」
と新たな決意を語ると、このフェスを始めた2016年のことを振り返り、
「俺たちのライブでセキュリティをずっとやってくれていた人が、本当なら2016年の3月で引退するって言ってたんだけど、俺たちが4月にYON FESをやるって聞いて、そこを最後にしたいって言って引退をそこまで延ばしてくれて。俺たちの活動が誰かの人生に影響を与えていることができているんだなって」
と当時のセキュリティの人とのエピソードを語るGENはどこか涙を堪えながら喋っているかのようだった。コロナ禍で最初に名古屋のアリーナでワンマンを開催した時もGENはMCで涙ぐむようにしていて喋っていた。人の気持ちや感情をちゃんと受け止めることができる人たちだからこそ、フォーリミのパンクからは激しさの中にも優しさや温かさを感じる。それはやはりdustboxたちから受け継いだものでもあるのだろう。
そんなYON FESの歴史とフォーリミが築いてきたものを感じさせるMCの後に爽やかな風を吹かせるようにHIROKAZがギターを鳴らし始めたのは「hello」。去年、まだライブシーン全体が声出しができない中でGENが
「みんなの声が聞きたいなぁ」
と言って話し声程度の声量で合唱が起きた曲。その光景は今でも目に焼き付いている。恐る恐る声を出す観客たちの姿も。あれからもう1年経った。同じ季節、同じ会場、同じ時間、同じ曲。でもその光景は全く違っていた。GENが言わなくてもサビでは観客が何も後ろめたい思いをすることなく合唱をしている。メンバーが笑顔でその光景を見ている。1年前の光景を見てきたからこそ、確実にこのフェスが、ロックフェスが、ライブが前に進んでいることを実感できる。去年とは全く違う形で涙が出てきてしまったのは、フォーリミが守るために戦ってきて、我々を前に進ませてくれる場所を作ってきたからだ。去年だけで特別な存在になったこの曲が、今年でさらに特別なものになった。
そんな光景も引っくるめてさらに前に。自分たちだけじゃなくて、周りにいるバンドや自分たちが出演するフェスもそうでないフェスも、何よりも目の前にいる我々や関わる全ての人も。そんな思いを乗せるかのようにして演奏された「Feel」が
「ただ先へ進め」
というフレーズと、ダイブやサークルが起きている客席の光景が本当に先に進めていることを実感させてくれた。この感触は、きっと肌にこびりついて取れそうもない。
アンコールでは制限時間が迫っていることもあり、
「Dragon Ashのライブをみんなで袖で見ている時にdustboxのSUGAさんがコーラを爆発させたのがこの2日間のハイライト(笑)」
とだけ言って笑わせると、壊れてしまったものを再び一つに集めるための曲「Buster call」の歌い出しをGENが光が射し込むような神々しさでもって歌うと、
「怪我すんなよ!でも怪我するギリギリまで行けよ!」
と煽る。去年までは決して言えなかったその言葉に応じるように観客が次々にステージの方に向かって飛んでいく。コロナ禍になってから一時期は演奏されなくなり、通常のバンド形態では去年のこのフェスで封印を解くようにして演奏されたこの曲が、今年はこうしてかつてと同じメッセージを持って鳴らされ、同じ光景を見せてくれている。それを見て、本当の意味でフォーリミのライブが戻ってきたんだと思った。
そんなライブの最後には
「1年後の未来からの、message!」
と言って高速ショートパンクチューンの「message」が鳴らされ、やはりダイブとサークルの嵐に。でもその中にいる人たちはみんな笑顔だった。コロナ禍でのライブは快適だったかもしれない。ぶつかったり、広がってきたりすることもない、じっくりライブを見れたから。でもやっぱりライブに行き始めてからこの景色をずっと見てきた。それが見れない寂しさがずっとあった。それをきっとこれからも見続けることができる。「ロックバンドのライブってこんなに凄いんだ!」と10代の時に思った光景を、きっと来年もこのフェスで見ることができる。出演者全員での集合写真撮影を終えてからスクリーンに映った
「See you next year」
の文字と終演SEの「Honey」が流れる中で笑顔でその画面を撮影している観客たちの姿は、また来年もここに来ることができる実感を確かに感じさせてくれた。
1.swim
2.Kitchen
3.Galapagos II
4.midnight cruising
5.fade
6.fiction
7.Finder
8.crash the window w/ kj,玉屋2060%
9.hello
10.Feel
encore
11.Buster call
12.message
キュウソやヘイスミなどの出演者が言っていたように、このフェスは今年の野外フェスの始まり。そこで去年気にしていた、「マスクしてない人がいたらどうしよう…」とか「声を出してしまう人がいたらどうしよう…」とかいろんなことを気にせずに誰もが好きなように楽しんでいる。去年よりも参加者がみんな笑顔になっている。それは今年これから開催されるフェスがどれも去年よりも楽しくなるということ。
このフェスが今年の最初で本当に良かった。そう思えるフェスを作ってくれたバンドなのだから、結局ずっとフォーリミが好き。
11:00〜 KEYTALK [SKY STAGE]
去年はバンドとしては出演していなかったのに、小野武正(ギター)が単独で遊びに来て前説に参加していたKEYTALK。武正はそれくらいフォーリミのことが大好きということであるが、今年はしっかりバンドとしてこのフェスに帰還し、リハの段階からメンバーたちは「大森」「吉留」とフォーリミメンバーを苗字で呼んでいる。
リハ後のフォーリミメンバーによる前説ではこの日はこの公園のマスコットキャラのモリゾーとキッコロもステージに登場し、
「昨日ペットボトルがステージに向かって飛んでて。邪魔なものを外に出そうとしてるんだろうけど、ドラフトにかかった方がいいくらいに肩が強い奴がいて(笑) SHANKの将平さん(庵原)がキレてたから、ペットボトル投げるのはやめて」
と改めて注意喚起をする。その甲斐あってかこの日はペットボトルが飛ぶことはなかった。
本編ではフォーリミ「Honey」のSEでメンバーが登場し、武正が曲の歌詞に合わせてフォーリミへの愛情を伝えようとするのであるが、その時にはすでにSEが終わってしまっていて焦っていたのがなんだかKEYTALKらしくて笑ってしまうのだが、昨年リリースのEP収録の「夜の蝶」でスタートし、タイトル通りにどこか大人の余裕を感じさせるような夜の情景を快晴の朝一から示していく。
すると「sympathy」では一気に軽やかな四つ打ちのダンスロックを鳴らす、数々のフェスを躍らせてきたKEYTALKらしさを感じさせると、こちらも新たな夏の覇者バンドとして数々のサマーアンセムを生み出してきたKEYTALKの最新系と言える「君とサマー」がこの快晴の空に実によく似合う。まだ季節的には全然夏とは呼べないが、これまでもずっとそうだったようにKEYTALKがフェスで夏の曲を鳴らせばそこはすぐに夏になるのである。
それは手拍子が鳴り響いて始まった「Summer Venus」もそうであり、曲中のEDMパートでは立ち上がっている八木優樹(ドラム)を筆頭にメンバー全員が1番踊ってるんじゃないかというくらいに踊りまくる。武正もその姿を見ていると少し痩せたんじゃないかと思えてくる。首藤義勝(ボーカル&ベース)が
「忘れられないフェスにしようぜ」
と歌詞を変えて歌うその時点でやはりこの日が忘れられないものになるのは決まっているのだ。
すると巨匠こと寺中知将(ボーカル&ギター)が
「YON FES、お前たちのパンクさを見せてくれー!」
と言ってKEYTALKのパンクさを示すかのように演奏された「夕映えの街、今」ではここぞとばかりにダイバーが続出すると、巨匠自身もステージを飛び降りて客席に突入しながら歌う。その姿は紛れもなくパンクであり、何故フォーリミとKEYTALKが通じ合っているのかということがわかるし、きっとKEYTALKもこういうライブがやりたくてうずうずしていたんだろうなと思う。
それくらいにはっちゃけているのであるが、それは「MONSTER DANCE」でさらに爆発する。巨匠はマイクスタンドごと持ち上げて歌う中、今度は武正がステージを飛び降りて走り回り、なんと客席の中まで走りながらギターを弾きまくる。もう楽しくて仕方がないという感じが溢れ出して炸裂しているのであるが、武正の姿を追っていると踊るどころではなくなってしまう。最後にはしっかりステージ上に戻ってきていたが。
しかもこれだけでは終わらず、最後にはフォーリミのKOUHEIを招くというこのフェス出演時にはおなじみのコラボとなるのだが、KOUHEIは
「あの端の人(義勝)だけLINEしてくれなかった。友達だと思ってたけど、実は友達じゃなかったのかな」
と巨匠、武正、八木はLINEをしてくれたことを明かすと、義勝は
「俺LINEやってないから。カカオトークしかやってない(笑)」
と言ってメンバーまでも笑わせるという返しの反射神経はさすがである。
そしてKOUHEIが八木に変わってドラムを叩くのはこの晴れた空にピッタリの「太陽系リフレイン」であるのだが、KOUHEIの細かくハイハットを刻むというダンスロック的なアプローチのドラムはフォーリミではまず見られないものであるのだが、そんなリズムを極めてシャープかつタイトに刻むKOUHEIはこの1曲のコラボだけでやっぱりとんでもないドラマーだなと思う。この日も朝から拡声器を持って入場列の横を歩き回っていただけに体力も凄いが、ドラムを叩かない八木はステージ上で飛び跳ねまくっていたかと思ったらやはりステージを飛び降りて客席の前を駆け回っている。それでも最後にはステージに戻ってきてキメで大ジャンプを見せ、KEYTALKのライブの楽しさとともに、KEYTALKがどれだけフォーリミのことが大好きなのかということを示した、久しぶりのYON FES出演だった。もちろん最後は初年度に巨匠が考案したのが今も続いている
「1,2,3,YON FESー!」
のコールで締める。間違いなく、忘れられないフェスにするためのライブだった。
リハ.BUBBLE-GUM MAGIC
リハ.パラレル
1.夜の蝶
2.sympathy
3.君とサマー
4.Summer Venus
5.夕映えの街、今
6.MONSTER DANCE
7.太陽系リフレイン w/ KOUHEI
11:35〜 TENDOUJI [LAND STAGE]
この2日間で1番嬉しかったラインナップは千葉県松戸市から生まれたこの4人組バンド、TENDOUJIが出演していること。すぐ近くで生活しているものとしてはどこか一緒にこのフェスに千葉からやってきたような感覚がある。
おなじみのサッカーのチャント的なSEでメンバー4人がステージに登場すると、ヨシダタカマサ(ベース)は上半身裸にオーバーホール、アサノケンジ(ギター&ボーカル)はピンクの短パンという、見慣れてる側からすればいつも通りではあるが、初めて見た人からはキワモノ集団のバンドだと思われないかが若干不安な中で「COCO」のご機嫌なロックサウンドが鳴らされて始まると、いきなり間奏ではアサノがステージ中央でギターソロを弾きまくるのであるが、その様を何故かステージ下のカメラが股間を狙うように撮影して、それがスクリーンにアップで映るという危うい映像に。ある意味ではTENDOUJIらしさをわかっているとも言えるけれど。
モリタナオヒコ(ボーカル&ギター)の滑らかな英語歌詞をキャッチーなメロディに乗せた歌唱にヨシダ、アサノ、オオイナオユキ(ドラム)がコーラスを重ねることによってキャッチーさが倍増する「Killing Heads」と続くと、朝からたくさんの人が集まってくれたことにモリタが感謝を告げながら、
「この曲のメロディめちゃくちゃ簡単だから、いけるなと思ったら歌ってくれ!」
とアサノが呼びかけて始まった「FIREBALL」はそのアサノが務めるメインボーカルにキーが低めではあるけれど一度聴いたら絶対歌えるようなキャッチーなコーラスの合唱が重なっていく。
さらにはこのバンドのパンクさと、パンクであるからこそのメロディのキャッチーさを感じさせてくれる「HEARTBEAT」のアンセム感の強さたるや。それは「Stupid!!!」もそうであるが、メンバーの人懐っこい人間性がそのままこのバンドの音楽になっている。だから実は飛び道具的な武器やアレンジはないけれど、ただ曲を鳴らして、それを聴いているだけで最高に楽しくなれる。それが朝から感じられるのがより幸せに思えるだけに、この順番は間違いのないものだ。
そしてその楽しさは快晴であるからでもあるのだが、
モリタ「俺たちも「OTENTO」っていう名前のフェスをやってて。そのタイトル通りに俺たち超晴れバンドだから。フォーリミは色々運営とかで忙しいと思うから、天気は俺たちが受け持つんで」
アサノ「なんか水欲しいなって思ったら雨とか降らせるから(笑)」
モリタ「もうそれ神様じゃん(笑)」
というやり取りからも滲み出る明るい人間性によってその天気はもたらされているのだろうが、「Peace Bomb」では間奏でモリタが
「俺たち英語でわけわからないこと歌ってるし、それについてくるファンもアホばっかりですけど、この曲、誰でも歌えるような歌詞にしたんですよ。1,2,3,4,5,6,7,8ってただ数字を数えるだけ。意味なんかない。ただみんなで歌いたいっていうそれだけ。YON FES、一緒に歌ってくれ!」
と叫ぶとそのカウントのフレーズでは合唱が起こり、ただ面白いだけではなくて熱い魂を持ったロックバンドであることを示すと、最後に演奏された「GROUPEEEEE」がやはり最大限にキャッチーに響き、初めて見た人の中にも確実に「このバンド良いな」と思った人はたくさんいるはず。つまりは強者しかいないこのフェスの中でTENDOUJIは確かに爪痕を残したのだ。
ただできるなら、今年は平日に昼から開催されたOTENTOを次は土日にやってくれないだろうかと思う。そうしたら絶対行くので。
1.COCO
2.Killing Heads
3.FIREBALL
4.HEARTBEAT
5.Stupid!!!
6.Peace Bomb
7.GROUPEEEEE
12:15〜 緑黄色社会 [SKY STAGE]
前日のウルフルズとは違ってレジェンドではなくてむしろフォーリミの後輩という年齢と経歴ではあるのだが、この2日目の中では最も意外な出演者である緑黄色社会。もちろんこのフェス初出演である。
メンバー4人とおなじみのサポートドラマーの比田井修(ex. school food punishment)がステージに登場すると、長屋晴子(ボーカル&ギター)がエレアコのギターを弾きながら歌う「時のいたずら」でスタートし、控えめなバンドサウンドの演奏だからこそその歌声の美しさを堪能できるのであるが、長屋は身振り手振りを加えて歌うことによってそこに感情を込めるようにしている。だからこそ美しいとなると繊細さを感じてしまいがちであるが、長屋の歌声は実にパワフルであり、この広い会場の隅々にまでしっかりと響き渡っている。
すると長屋がエレキに持ち替えての「始まりの歌」では小林壱誓(ギター)も穴見真吾(ベース)もステージ前に出てきて演奏し、手拍子をしたりして観客を煽ることによって、一気にバンド持ち前のポップさが全開になっていく。長屋の歌声だけではなくてバンドの演奏も実に力強いというのはこうしてライブを見るからこそわかることである。
そんなバンドは実は愛知県出身であり、そういう意味でもフォーリミの後輩バンドであるのだが、それを名古屋のこのフェスで証明するように名古屋のローカルCM曲を口ずさんだりするのであるが、関東育ちの身としてはマジで何を言ってるのか全くわからないくらいのレベルであり、それがメンバーたちが本当に名古屋で生活してきたことを感じさせてくれる。
そんな名古屋MCもありながらも、ダークな入りから一気にポップに開けていくような「Shout Baby」から、
「私たちもYON FESのヒーローになりたい!」
と長屋が高らかに告げてから演奏された「Mela!」ではハンドマイクを持って歌う長屋がpeppe(キーボード)の椅子に背中合わせで座って歌ったり、スティックを持って比田井のフロアタムを連打したり、かと思えば小林と穴見はステージ前で向かい合うようにして演奏したりと、まさにヒーローたるロックバンドとしての姿を見せてくれる。この辺りの曲でこのバンドのことを知った人も多いだろうけれど、ライブでこんなにロックに鳴らされるというのは音源だけを聴いていたらわからない。やはりこうしてこのフェスに出てくるということからも、このバンドもライブバンドなのだ。自分が初めてこのバンドを見たのも渋谷のサーキットフェスで小さなライブハウスに出演していた時だった。
再び名古屋のローカルCM曲(さっきとは違う曲)を口ずさみながら、
「私たちが大学生の時にこのYON FESが始まって。同級生には実際に観に行った人もたくさんいて。そういうフェスだからこそいつか私たちも出たいと思っていた」
と、名古屋の1人の大学生だったからこそのこのフェスへの憧れを口にすると、長屋による
「誰だってneed youだ」
というフレーズがこの上なくキャッチーに響く「キャラクター」から、最後はやはり長屋がギターを弾きながらも感情を込めるように身振り手振りをしながら歌う、peppeのキーボードのメロディも流麗に響く「これからのこと、それからのこと」で、スクリーンにアップで映る長屋の表情はやっぱりめちゃ美人だなとも思うのだけど、それを超えるくらいの音の、ライブのインパクトを確かに刻み込んだYON FES初出演だった。
このフェスだからといって何か特別なことをやるわけでもなければ、戦い方を変えるわけでもない。いつもと同じように、今の自分たちの持つ最大の武器や魅力を全力で見せる。それこそがこのバンドらしさをこのフェスで最も伝えられる方法。それはやっぱりポップシーンにもいられることによって、ライブハウス以外にもいろんな場所でライブをやってきたこのバンドだからこそ出来ることである。
リハ.sabotage
1.時のいたずら
2.始まりの歌
3.Shout Baby
4.Mela!
5.キャラクター
6.これからのこと、それからのこと
13:00〜 Paledusk [LAND STAGE]
この緑黄色社会からPaleduskへという両極端な流れをGENも「地上から地下へ、みたいな感じ」と言っていたが、リハの時点でKaito(ボーカル)が
「2日間で1番激しいバンド」
と口にしていたように、今年のラウドロック代表と言えるPaleduskもまたこのフェス初出演である。
サポートドラマーのSeiyaが先にステージに登場して思いっきり観客を煽るようにして同期の音を鳴らし始めると、長身のTsubasa、昨年の京都大作戦でライブを見た時とは髪型がまるっきり変わってサイドが長めの金髪になっているDaisukeのギターコンビの後にKaitoがサングラス着用で登場するのだが、そのKaitoが「BLACK ICE」と曲タイトルを口にした瞬間にまだイントロとは思えないくらいの勢いでダイバーが続出していく。もうこのバンドのライブの楽しみ方を熟知している人が前方エリアに集結しているのがわかるし、「9 SMILES」「AREA PD」と続くことによる音の重さと、Daisukeのギターを抱えながら舞いまくるようなアクションの激しさ。それはただ激しいだけではなくて、演奏力が格段に上手くないと絶対に出来ないことだ。音の重さと威力も然り、このバンドが達人の集団であることがライブを見ればすぐにわかるし、ステージ中央でシャウトをしまくるKaitoの放つオーラの凄まじさはこのバンドがラウドシーンの未来を切り開いていく存在のバンドであることをその音と姿で感じさせてくれる。
「俺とGEN君が個人的に仲が良いことを知ってる人もいると思うし、だから俺たちがこうやってこのフェスに出てるんだけど… やっぱりENTHはいないんだね(笑)まぁこのフェスに来てる奴の中にENTHを好きな人はいないでしょ(笑)でも出てないのにいじられてフィードバックされてるのあいつらくらいだよな(笑)」
と、やはり仲間であるENTHをいじるのであるが、まさに言う通りに出演していないのにこれだけいじられるバンドはENTHくらいであろう。
するとステージにはポップな電子音の同期が流れる「HAPPY TALK」からは重いラウドサウンドの中に光るこのバンドのメロディのキャッチーさを確かに感じさせてくれる。というかただ単に激しいだけのバンドだったらこんなに人気にはなっていないはずであるし、それはライブ初披露の曲とKaitoが言って演奏された「LEAVE ME OUT」の重いサウンドの中からも確かに感じられるものである。激しさだけに特化していきそうなライブという場であっても。
するとサングラスを外して、少し親しみやすい感じの目元をあらわにしたKaitoは最前の観客に向かって
「まだいけるか!?YES or NOで答えろ!」
と問いかけ、その観客がしっかり「NO!」と叫んだことによってそのタイトルの曲に突入していくというそのライブの流れの作り方とコミュニケーション力も実に見事だ。キャッチーなギターフレーズを担うTsubasaもステージ上を走り回り、時にはDaisukeと位置を入れ替わりながらコーラスをしていたりと、やはりただ激しいだけのバンドではないことが、激しいアクションのステージと激しい盛り上がりの客席からもわかる。
そして「SLAY!!」でDaisukeがさらにギターを抱えたままで回転したり舞いまくると、ラストの「LIGHTS」ではKaitoが客席に突入していき、そのKaito目がけてダイバーが続出していく。そのダイバーたちと時には拳を合わせたりしながら送り出していくKaitoが最前の観客に足を支えられながら立つ姿はこのフェスに現れた新たな鬼と言っていいものだった。間違いなくそれは今年のこのフェスのハイライトの一つと言っていい瞬間だった。
GENも言っていたように、緑黄色社会からPaleduskへという流れは、ポップシーンとアンダーグラウンドなシーンのどちらも行き来できる、どちらのバンドとも対バンすることができるフォーリミのフェスだからこそのものである。その地下の部分を担うこのバンドのDaisukeはこの後のDragon Ashのライブを自分のすぐ近くでライブ中同様の鋭い眼光で見ていた。彼はそこから何を得て自分たちの音楽やライブに還元していくのだろうか。去年京都大作戦で見た時よりもはるかにこのバンドの音楽や存在が好きになっている。
1.BLACK ICE
2.9 SMILES
3.AREA PD
4.HAPPY TALK
5.LEAVE ME OUT
6.NO!
7.SLAY!!
8.LIGHTS
13:40〜 HEY-SMITH [SKY STAGE]
いわゆるTRIPLE AXE勢の中で今年唯一このフェスへの出演となったのがこのHEY-SMITHである。割と猪狩秀平(ボーカル&ギター)がGENとよく一緒にいるイメージもあるけれど、このフェスに出るのはこれが2回目である。
ステージサイドのスクリーンに紹介映像が映るというのは今はこのバンドが出演するどのフェスでもお馴染みであるが、今回のこのフェスではそうして映像を使うのがこのバンドだけだっただけに特別感を感じる中でメンバーがステージに登場すると、イイカワケン(トランペット)とかなす(トロンボーン)、満(サックス)のホーン隊のサウンドが高らかに鳴り響く「Endless Sorrow」でスタートし、やはりダイバーもサークルも続出するのであるが、この曲の中の
「No more war」
のフレーズ部分ではダイバーが落ち着きを見せていたのはバンドのメッセージを弁えている部分も、その後の大サビに向けて温存していた部分もあるのだろう。
すると猪狩からYUJI(ベース&ボーカル)へとボーカルがスイッチする「2nd Youth」では少年性が強い見た目と声質によるYUJIが歌うからこそ、よりタイトル通りに誰もが青春真っ只中にいるということを感じさせてくれると、ストレートなパンクチューンの「I'M IN DREAM」が駆け抜けるように演奏され、乗り遅れないようにダイバーも次々と飛んでいく。その、このバンドのライブの光景としては当たり前のものが見れていることによって猪狩も実に良い表情をしているのであるが、
「YON FES出るの2回目!もう仲間やな!」
と言ってその言葉通りに仲間の曲である「Fellowship Anthem」を演奏するのであるが、何故か今まではそんなことが一切なかったのに、猪狩が喋るとスクリーンの映像が乱れて映らなくなるのは猪狩がこれまでに放送できないことを数々口にしてきただけに存在がセンシティブ認定されているのか、あるいはヘイスミはどこか磁場を狂わせるような力を持っているのだろうか。
そんなトラブルというほどのことではないけれど、少し違う出来事もありつつ、「We Sing Our Song」からは再び高らかにホーンのサウンドが鳴り響きながらパンクに突っ走り、YUJIボーカル曲の中では随一のハードさを感じさせる「Be The One」とライブ定番の鉄壁の曲たちが続いていく。だからこそこうしてとめどないくらいにモッシュ、ダイブ、サークルが起き続けているのである。
何回MVを見ても自分は全く振り付けを覚えられない昨年リリースの「Inside of Me」もさすがにヘイスミTシャツを着た人がたくさんいるだけに、至る所で完コピしたダンスを踊る人が続出すると、そんな自由な楽しみ方をする観客を見た猪狩は
「俺たちは今年も夏にハジマザやるわ!そうやってやりたいことをやって生きていくから、お前たちも自分のやりたいことをやれ!
今日は4月やから2023年のフェスの始まりみたいなとこあるやん!でも今日で今年は明るいものになるって思いました!半年前に炎上した甲斐がありました!(笑)」
と、去年の主催フェスのハジマザが炎上したことをネタにできるようになっている中、YUJIの爽やかなボーカルが快晴の空に向かって響き渡る「Summer Breeze」、対照的に猪狩の男らしいボーカルもまた空に向かって響き渡り、この暑くもなく寒くもない気持ちの良い気候も相まってこの愛知県がアメリカ西海岸のように感じられる「California」と、ここでは激しく盛り上がるというよりもこのバンドの持つメロディのキャッチーさを感じさせてくれ、だからこそ観客も一緒に思いっきり合唱することができるのであるが、やはり猪狩が喋るとスクリーンの映像が乱れるのはフェス側が敢えてやってるのかと思ってしまうくらいだ。
そして再びホーン隊のサウンドがダンサブルに響き渡り、ツーステを踏む人もたくさん出現する「Dandadan」から、ラストはやはりこうした楽しみ方ができるようになったことによって巨大サークルが出現して観客が走り回る「come back my dog」。でもそんな激しさの中でも観客たちは本当にみんな笑顔だった。こうした楽しみ方ができる喜びを噛み締めていた。それはこれからいろんなフェスで味わうことができるようになる。もちろんこのヘイスミ主催のハジマザも含めて。もう今年からは炎上することを心配したり、ライブの在り方について悩んだりしなくていいはずだ。
1.Endless Sorrow
2.2nd Youth
3.I'M IN DREAM
4.Fellowship Anthem
5.We Sing Our Song
6.Be The One
7.Inside of Me
8.Summer Breeze
9.California
10.Dandadan
11.come back my dog
14:25〜 dustbox [LAND STAGE]
前日のこのステージのトリのKUZIRAがフォーリミ直系の後輩だとしたら、フォーリミ直系の先輩に当たるメロディックパンクバンドがdustboxである。こちらもリハの段階からダイバーが出現し、JOJI(ベース)は
「うちらの客はヤカラしかいねーのか!」
と言いながらも実に嬉しそうである。
おなじみの「New Cosmos」のSEでメンバー3人がステージに登場すると、JOJI、SUGA(ボーカル&ギター)とともに観客も一緒にカウントダウンをし、0になった瞬間にSUGAがギターを掻き鳴らして始まったのは「Riot」であり、やはりいきなりのモッシュとダイブの嵐となるのであるが、曲最後のタイトルフレーズ部分では思いっきりジャンプしながら観客がみんなで叫ぶ。世代的にこのフェスの観客からしたらあまり存在も曲も知らない人もいるんじゃないかと思ったりもしたが、それは全くの杞憂であり、最初から完全にホームだ。それはフォーリミのファンも自分たちが好きなバンドのルーツを聴いているということでもあるかもしれない。
最新シングル曲「Emotions」で変わることのないバンドのメロコア魂を示すと、JOJIもステージ上でそうしているように観客が両腕を左右に上げる光景が見ていて楽しい「Bitter Sweet」がまさにスイートに響く。それはSUGAのメロディックパンク初代ハイトーンと言ってもいいくらいのボーカルあってこそであるが、他のジャンルやサウンドに振れることなく、ただひたすらにメロディックパンクを研ぎ澄ませてきたバンドだからこそのグッドメロディをベテランになった今でも実感させてくれる。
するとSUGAが
「去年、 SHANKのフェスで会った時かな?GENちゃんがこの曲を好きって言ってくれて。でもギターでコピーしようとしたら弾き方がわからないって言ってた(笑)久しぶりにその曲をやります!」
というGENのリクエストをしっかり覚えていたあたりからも先輩としての優しさを感じさせる「Smile like a child」を袖にいるGENにギターの弾き方を見せるようにしてSUGAは演奏していた。やはりフォーリミはdustboxからの影響を強く受けているバンドであることがわかるし、タイトル通りにそのパンクサウンドはここにいる人たちみんなを子供のような笑顔にしてくれる。
しかしおなじみのSUGAが溜めて溜めてから歌う「Here Comes A Miracle」ではJOJIが
「今日は尺ないから急いで(笑)」
と何故かタイムキーパーとして持ち時間の管理をし始めることによって、SUGAのギターがイントロを鳴らし始めた瞬間に巨大サークルが発生して高速で走り回る「Hurdle Race」もテンポ速めとなり、サークル自体も高速になるのが面白い。今まではこの曲でもその場で楽しむしかなかったのが、こうしてまさにレースをしているように走り回るような楽しみ方が戻ってきたのだ。
すると
「ドラムを叩きたいっていう人がいるんだって。俺たちの曲に青春の曲があるって」
とSUGAが言ってステージに迎え入れたのはこの日2ステージ目となるKOUHEIなのだが、YU-KI(ドラム)がKOUHEIにセッティングを教えている間もタイムキーパーJOJIは時間を気にして急かすと、
「俺の青春の曲、「Try My Luck」!」
とKOUHEIがタイトルコールをして「Try My Luck」が演奏されるのであるが、KOUHEIのドラムは完全に原曲完コピであり、本当にこの曲が好きで叩いていたんだろうなということがよくわかるし、フォーリミには最後に加入したKOUHEIもやはりパンクに影響を受けてバンドをやってきたということがよくわかる。これ、音だけ聴いてYU-KIじゃない人が叩いてるってわかる人がいるのだろうかというくらいに。
「KOUHEIありがと!じゃあ次の人!(笑)」
とやはりめちゃくちゃ急ぎながらJOJIが自身のベースを渡したのはなんとRYU-TAであり、自身がメインボーカルを務める「Neo Chavez 400」のベースをRYU-TAに任せるのであるが、その際の客席の高速サークルっぷりもまた凄まじく、そこにRYU-TAはコーラスでも参加することによってバンドだけで演奏するよりも確実にさらに激しさを増していた。やはり時間ギリギリだったらしく、バタバタとステージから去って行ったけれど。
GENが好きな曲を演奏し、KOUHEIの青春の曲で本人たちと一緒に演奏し、RYU-TAにもベースを弾いてもらう。フォーリミがdustboxに求めるものを全て叶えてくれる。だからdustboxのパンクは本当に優しい。普段フェスではやっている曲を省いてまでそうしたコラボをやって、フォーリミのために尽くしてくれる。それはdustboxが自分たちのバトンをフォーリミに手渡しで渡した瞬間を見れたということでもある。それでもdustboxもまだまだ走り続ける。
「What's waiting for me next!?」
と歌い続けているバンドだから。
リハ.RIGHT NOW
リハ.Bird Of Passage
1.Riot
2.Emotions
3.Bitter Sweet
4.Smile like a child
5.Here Comes A Miracle
6.Hurdle Race
7.Try My Luck w/ KOUHEI
8.Neo Chavez 400 w/ RYU-TA
15:05〜 Dragon Ash [SKY STAGE]
こちらもフォーリミの先輩であり、もはや生きるレジェンドと言っていい存在のDragon Ash。一見音楽性は離れているように感じるが、今年リリースされたDragon Ashのトリビュートアルバムにフォーリミがラテン期の「crash the window」で参加していることからも、フォーリミがDragon Ashの音楽だけではなくて精神性に強い影響を受けていることがわかる。
先にBOTS(DJ)がステージに登場して音を鳴らし始めると、そこに柄シャツを着たkj(ボーカル)がステージ上を舞うように登場して「Entertain」を歌い始める。そこにHIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井誠(ドラム)とメンバーが1人ずつ加わっていくことによって音が重なっていくというのは近年おなじみのオープニングであるが、
「退屈は嫌いだ 心を殺す
音楽は偉大だ 炎を灯す
体を解く だからこそ僕や君の拠り所になって
また音を望む」
「さあ逆襲の時だ ほら
その声を僕に 聴かせて」
という、コロナ禍にDragon Ashが祈りを込めるようにして書いた歌詞が観客の合唱という形で返ってくるようになったのが感慨深いし、その声を聞くことができたkjやメンバーたちは嬉しそうな笑顔を浮かべている。
するといきなり同期の音が流れて大歓声と手拍子が鳴り響くのは「百合が咲く場所で」であり、その手拍子が起こるメロ部分が静だとしたら、一気にダイバーが続出してサークルが弾け飛ぶサビは動。その曲のコントラストが爆発力を際立たせているのであるが、そんな客席の光景を見たkjは曲終わりで幸せそうにダブルピースをしたりしているのが実にお茶目で可愛らしい。
さらには神聖さを感じさせるようなサウンドから一気にHIROKIの轟音ギターサウンドが会場を埋め尽くしていくような「New Era」、前述のトリビュートアルバムにバンドの新曲として収録された「VOX」と続いていくのであるが、決して激しかったりラウドだったりするわけではない曲たちだけれど、バンドの精神的な強さを感じさせてくれるような曲である。そこに宿る説得力は長い歴史の中でいろんなことを乗り越えてきて、あらゆるジャンルのサウンドを自分のものにしてきたDragon Ashだからこそだ。
「バンドマンがステージに立ってやることって35分でどれだけエンターテインさせられるかってことでしかない。35分でこのフェス選んで良かったって思えるように」
とkjがこうしてこのフェスのステージに立っていることの矜持を語ると、デジタルサウンドとラウドロックを融合させるというDragon Ashなりの形でのhideのカバー「ROCKET DIVE」でタイトル通りにダイバーが続出する。もしかしたらフォーリミのファンには原曲の存在を知らない人もいるかもしれないが、こうしてDragon Ashが演奏することによって曲に、hideの存在に触れることができる。それもまた様々な音楽の影響を受けながら時代の革命家となったDragon Ashだからこそだ。曲終わりではkjが桜井のことを笑いながら指差していたのは桜井が何らか締めを間違えたりしていたのだろうか。
そんな中でBOTSがパーカッションを打ち鳴らすラテンフレーバーを感じさせるのは、まさにこうしたスタンディングのロックフェスの客席のことを歌った「For divers erea」であり、間奏ではサンバ的なサウンドに合わせてメンバーもステップを踏みながら演奏して観客も踊りまくる。
そしてイントロの一音が鳴るだけで大歓声が起こり、
「誰が1番頭悪いか大会ね!俺も負けないからな!」
と言って演奏されたのはもちろん「Fantasista」であり、コーラス部分では大合唱を巻き起こし、間奏ではPay money To my Pain、The BONEZの名前を出しながら紹介したT$UYO$HIのベースソロも披露されると、kjはちゃんとスタッフに確認しながらステージを飛び降りて客席に突入し、ダイバーにまみれながら歌うのであるが、代わりにステージにはGENが登場してT$UYO$HIのマイクスタンドで歌い、KOUHEIもその様子を撮影するカメラマンとしてステージに登場する中でkjは
「服引っ張るなって!」
とダイバーに注意しつつ、最後の言葉はなんと
「メガネ落としてますよ!」
とダイバーが落としていったメガネを気遣うという実にkjらしいものだった。そうしたパフォーマンスをバンドができて、観客もスポーツをしているかのようにダイブをしたりという楽しみ方をすることができる。演奏終了後にステージ前に並んで笑顔を浮かべていたメンバーたちはkjが
「3年間我慢したバンドマンと君たちに拍手!」
と言っていたように、我慢から解放されたような笑顔を浮かべていた。それを見ることができて、この日、このフェスを選んで本当に良かったと思えた。
Dragon Ashは「フェスキング」とも呼ばれている。フェスに出ればその日をかっさらっていってしまうくらいに凄まじいライブをすることによってついた通り名であるのだが、それは25周年という大ベテランの域に入っても全く変わることはない。これからもあらゆるフェスでそのキングっぷりを見せつけるようなライブをやり続けて生きていくはずだ。
1.Entertain
2.百合の咲く場所で
3.New Era
4.VOX
5.ROCKET DIVE
6.For divers erea
7.Fantasista w/ GEN, KOUHEI
15:50〜 Wienners [LAND STAGE]
昨年出演時に
「初年度に出演してから全く呼ばれなくなったから忘れられたのかと思った」
と言っていたが、今年は2年連続出演となったWienners。それは去年のライブが素晴らしいものだったことの結果の証明でもある。
メンバー4人がステージに登場すると、玉屋2060%(ボーカル&ギター)はピンクの長い髪、前日にすでに会場でフォーリミのライブを客席から見ていた560(ベース)は髭が緑色、アサミサエ(キーボード)は赤い中華服のような服装、KOZO(ドラム)は髪を結いているという4者4様な出立ちの中で玉屋は
「夢にまで見たDragon Ashからのバトンを受け取って、Wienners始めます!」
と憧れのDragon Ashの後という夢がこのフェスで叶ったことを喜びとともに口にしてから、夕方という時間であってもまだ明るいからこそピッタリ似合う「SOLAR KIDS」でスタートし、パンクを軸にしながらもあらゆるジャンル、サウンドを飲み込んだWiennersサウンドが鳴らされ、去年とは全く違って早くもダイブ、モッシュの応酬に。やはりこのバンドのライブもそうして楽しむものでもあるけれど、明らかに去年よりもこのバンドを見ている観客の数が圧倒的に多い。それは去年のこのフェスでライブを見た人も多ければ、見てはいないけれど去年のライブの噂を聞いて見ているという人もたくさんいるはず。KEYTALK、TENDOUJI、Dragon Ashと晴れバンドが居並ぶこの日であるが、このタイトルの曲を持っているだけにこのバンドの晴れバンドとしての力も間違いなくそこに合わさっているはずだ。
「音楽の神様、どうかこのフェスを守ってください!」
という願いをパンクサウンドに込めた「GOD SAVE THE MUSIC」は玉屋とアサミの男女ツインボーカルが、アイドルグループにも曲を提供しているこのバンドの楽曲のキャッチーさをより際立たせている。
すると玉屋が
「でもまだ足りないんだよなぁ。特にKOZOさんの気合いが足りてない!」
と言い始めてメンバー同士の言い合いになってから演奏されたのは去年の「Galapagos」に続くフォーリミカバーシリーズ「Galapagos II」であり、ただカバーするだけではなくてGENのキーに合わせてアサミがメインボーカルを担い、そのキーボードのサウンドがWiennersとしてのカバーになっている。音源になるわけでもなければ、これから先に何回も演奏するわけでもない。この日だけのためのカバー。それをここまで高いクオリティで演奏してくれるという愛情を見せてくれるバンドは他にいない。本当に凄いバンドだと改めて思うし、それこそがこのバンドならではの呼んでくれたフォーリミへの愛の返し方である。一気に前方へ押し寄せてダイブやモッシュを繰り広げるというのもそんなバンドへのこのフェスの観客からの愛の返し方である。
そんなWiennersとしての完璧な「Galapagos II」のカバーから、メンバーがタイトルに合わせて忍者のようなポーズを取ってから演奏された「SHINOBI TOP SECRET」と、昨年リリースした最新アルバム「TREASURE」の曲たちが早くもライブの主軸を担う曲になっているのも、バンドがリリースしてからひたすらライブハウスで曲を鍛え上げてきたからこそだ。
そして今年もカバーだけではなくて特別ゲストとして招かれたのはKOUHEIであり、KOZOが横でパーカッションを叩きながら、3ステージ目(Dragon Ashのカメラ撮影を含めたら4ステージ目)ではKEYTALKやdustboxよりもはるかにシンプルなドラムセットで「TRADITIONAL」に参加するのであるが、その手数の多さによって全く違和感がない演奏になっているし、3ステージ全く違うバンド、違うジャンル、違うドラムセットでここまで見事な演奏を見せてくれるKOUHEIのスーパードラマーっぷりを示す1日になっている。それはWiennersの音楽に通じるところがあるからだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのはこのバンドのアンセムであり、サビで満員の観客が腕を左右に振るのが壮観の「蒼天ディライト」であり、アサミのボーカルフレーズでリズムに合わせてたくさんの人が合いの手的な手拍子を打つのはもうこのバンドにとってこのフェスが完全にホームであることを示していた。
しかしそれだけでは終わらず、ファストコアパンクからの影響も強いこのバンドだからこそのショートチューン「Cult pop suicide」で締め…かと思いきや、さらに
「まだもうちょっと時間あるっしょ!?」
と、最新作収録のショートチューン「よろこびのうた」までも追加して演奏するというのは本当にさすがだ。これこそがWiennersのフェスの戦い方。ずっとライブハウスで生きてきたバンドとしての強さが確かにそこには刻まれていた。
こんなにフォーリミへの愛の溢れたカバーとKOUHEIとのコラボ。それは2年連続でありながらも同じではなくてアップデートされたものになっている。もはやこのバンドはこのフェスがホームのバンドではなくて、このフェスにはなくてはならないバンドだ。だからこそ来年もまたこのフェスで、この場所で観たいし、そうでないところでもたくさんライブを観たいと思う。
アーティスト主催ライブの主役はその主催アーティストであって、他の出演バンドがそれを超えるようなことは基本的にはできない。でも今年も去年もこのフェスでそこに1番近づいたのはWiennersだったと自分は思っている。
リハ.よろこびのうた
リハ.恋のバングラビート
リハ.おおるないとじゃっぷせっしょん
1.SOLAR KIDS
2.GOD SAVE THE MUSIC
3.Galapagos II
4.SHINOBI TOP SECRET
5.TRADITIONAL w/ KOUHEI
6.蒼天ディライト
7.Cult pop suicide
8.よろこびのうた
16:30〜 フレデリック [SKY STAGE]
今年のこのフェスの2日目のトリ前という大事な位置を任されたのはフォーリミと同世代のバンドである、フレデリック。この出演者たちの中でそこを任されたことは間違いなくメンバーを燃え上がらせているはずだ。
実際にダンサブルなSEでメンバーが登場すると、黄色いジャケットを着た三原健司(ボーカル&ギター)が気合い溢れるように5年ぶりのこのフェスへの出演となったこととともに
「名古屋の人を全員掻っ攫いに来ました」
と強気に挨拶をすると、いきなりの「ジャンキー」で踊らせまくる。去年のいろんなフェスでは最後に演奏していたこの曲を最初に持ってこれるようになったのは本当にデカいし、健司はやはり声に気合いが入りまくっているのがわかるくらいに語尾を思いっきり張り上げるように伸ばすのはこの出演者の中でトリ前を任されたことがプレッシャーではなくて自分たちの力になっているからだろう。
健司がギターを持つと、体だけではなくて心までをもさらに踊らせまくる「YONA YONA DANCE」で高橋武のドラムと三原康司のベースによるキメのリズムの力強さを感じさせてくれるのであるが、曲中の手拍子を打つタイミングで客席から大きな手拍子が鳴るというあたりはさすがにこの曲を知っている人がたくさん集まっているということである。
さらにはこのフェスを最後まで遊び切るためのテーマである「KITAKU BEATS」では高橋が「ここでこんなにも!?」と思ってしまうくらいに思いっきり手数を増やしてドラムを叩きまくる。どうやらやはりトリ前を任された気合いは健司だけではなくてバンド全体で共有されているものであることがわかる。個人的には2週間前にNHKホールでワンマンを観たばかりというタイミングであってもその気合い漲る演奏には驚かされてしまう。
すると健司は
「もう9年前、2014年に名古屋で開催されていたミソフェスっていうフェスに出た時にelectric ladylandっていう500人くらいのキャパのライブハウスでオーラルの拓也にGEN君を紹介してもらった。そしたらGEN君に「気持ち悪くて好きです」って言われた(笑)
あの時はまだそのキャパがギリギリソールドアウトするかしないかっていうところでライブをしていた我々がこんなに大きな会場でフォーリミがフェスをやるようになって、そこに出ている。だから誰も知らなくてもいい、気持ち悪くて好きですって言ってくれたあの4人だけに届けるつもりで次の曲を演奏します」
とフォーリミとの出会いを今でも鮮明に覚えていることを感じさせてくれるMCの後に演奏されたのは、当時のフレデリックのキラーチューンだった「SPAM生活」であるのだが、赤頭隆児によるギターサウンドがさらにサイケデリックさを感じさせるという今だからこその表現になっているのであるが、それがより曲の気持ち悪さを引き出すようなアレンジになっている。その気持ち悪さには
「死んだサカナのような眼をしたサカナのような生き方はしない」
と繰り返されるサビのフレーズも確かに含まれているだろうけれど、自分自身この曲が出た当時にフレデリックと出会ったのだが、当時はこんなにシュール極まりないバンドがこんなに大きなステージに立つようになるなんて全く想像していなかった。フレデリックもフォーリミもそんな我々が想像できるようなところのはるか先まで音楽の、曲の力によって辿り着いたのである。
そんな振り返りもありながらも、健司が再びハンドマイクになっての「Wake Me Up」が曲の後半になるにつれて音の激しさを増していくという形で観客をさらに踊らせながら赤頭もステージ上を駆け回ったりとメンバーも踊るように演奏すると、
「名古屋のお客さん全部俺たちが掻っ攫います!」
と、バンドがイントロのライブアレンジを演奏する中で再び気合いを入れるように健司が叫んでから演奏された「オドループ」はやはり会場の空気を一変させる。前日に見たウルフルズの大ヒット曲と同じような感覚が確かにあった。イントロが流れた段階で客席が目醒めていくかのような感覚が。だからこそ手拍子も完璧に鳴り響くし、腕を上げたりMVの振り付けを踊ったりと思い思いに楽しむ客席の中にはサークルまでもが出現。フレデリックのライブでこんな光景が見れるのはこのフェスくらいだろうが、健司の逞しい歌唱や赤頭の思いっきり体を逸らして弾くギターソロがそうした衝動的な楽しみ方をさらに煽ってくれる。
そんなライブの最後に演奏されたのはフレデリックのスタンスとして最新作の曲「スパークルダンサー」で再び健司はハンドマイクになって歌うのであるが、ボートレースのCM曲として大量にオンエアされているだけに三原兄弟による
「乗ってけ 乗ってけ」
という中毒性抜群のフレーズを聴いて「この曲知ってる!」となった人がたくさんいたのか、客席ではサークルが発生するのであるが、1コーラス目では明らかにサビが来るタイミングがわかっていない感じでサークルが弾けてしまい、
「やるんならカッコよくやってくれやー!」
と健司に言われてしまうのであるが、それでもその普段の自分たちのライブでは起こらない楽しみ方も否定しないのがフレデリックであり、2コーラス目では健司が
「はい、サビ来ますよ!」
と言って丁寧にカウントダウンまでしてサークルにタイミングを指南する。ハンドマイクで歩き回りながら歌っているというのもあるが、健司は本当にちゃんと客席をよく見ているし、そこを気にかけている。それでも最後の歌唱を思いっきり声を張り上げて歌う瞬間だけは、全ての意識を100%その歌唱に込めているかのような凄まじさだった。
この日はサークルが出来たりしていたが、フレデリックの音楽にはモッシュやダイブができる曲は全くない。それは踊らせるバンドだから当たり前なのであるが、でもモッシュやダイブで楽しむパンクバンドたちがライブをやりまくって生きているのと同じくらいに、フレデリックもひたすらライブをやりまくって生きてきたバンドだ。ツアーが終わればまたすぐに次のツアーが始まって、フェスやイベントも出れるだけ出まくる。そうやってライブをやりまくって生きてきたバンドの強さが、モッシュやダイブがなくても確かに現れていた。サークルが出来ていたのはそうした楽しみ方をしたい人たちをフレデリックの音楽が動かした証拠。文句なしのトリ前でのフレデリックのライブだった。
リハ.リリリピート
リハ.ナイトステップ
1.ジャンキー
2.YONA YONA DANCE
3.KITAKU BEATS
4.SPAM生活
5.Wake Me Up
6.オドループ
7.スパークルダンサー
17:15〜 Maki [LAND STAGE]
若手からベテランまで様々なキャリア、音楽性のアーティストたちが出演してきたこのLAND STAGE。今年最後にこのステージに立つのはMaki。名古屋のバンドということもあり、フォーリミの主催するこのフェスのこのステージを締めるにこれ以上ないくらいにふさわしい存在である。個人的にはフォーリミの「Harvest Tour」の初日の千葉LOOKの対バンとして出演していたのだが、到着が遅れてライブが見れなかったために同じフォーリミのライブでのリベンジでもある。
サウンドチェックの段階でメンバー3人がステージに登場して演奏を始めると、その音圧が明らかにリハというレベルのものではなく、山本響(ボーカル&ベース)も
「ロックバンドにリハなんかないから!いつだって本番!」
と叫んでフル尺でまさに本番と変わらないくらいの激情のギターロックを鳴らしてダイバーが続出していく。
それは本番でも変わらず、
「名古屋のバンド、Makiです!」
と挨拶すると、まっち(ドラム)の一音が実に重いビートと、一本だけでこの会場内を埋め尽くすかのような佳大のノイジーなギターサウンドが響く「ストレンジ」からスタートし、やはりのっけからダイバーの嵐。正直、「こんなにも!?」と思うくらいに観客のノリの激しさに驚いたのは確かにパンクな要素もあるけれど、むしろeastern youthやblood thirsty butchersの系譜にいるエモーショナルギターロックバンドというイメージが強かったからである。
そう感じるのはその文学を愛してきたことがわかる日本語の使い方のタイトルや歌詞にもある。山本の逞しく太い歌声はしっかりその美しい日本語の連なりによる歌詞を噛み締めさせてくれるし、「春と修羅」なんかはタイトルからして間違いなく宮沢賢治から取られているだろうけれど、
「春と言えばYON FESだと思ってます!」
と言ってから演奏されただけに、この曲を春のこのフェスで鳴らせることの喜びを感じさせてくれる。
リハでも演奏していた「斜陽」を本編でも演奏するというあたりからはさすがにリハと本編の境がないバンドであるが、
「もうフォーリミは向こうのステージでセッティングしたりしてる。だから向こうのステージまで響くようにこの会場の地面を揺らそうぜ!もうみんな今の曲覚えたでしょ!」
と言ってもう一回演奏するというあたりは面白くもあるけれど、ちゃんと言葉で説明するあたりにウケ狙いの2回連続じゃなくてそこに意図や理由がちゃんとあることを感じさせてくれる。この曲を聴いている時に少しずつ陽が傾いてきていたのも自然でありながら素晴らしい演出である。
そんなバンドの最新リリース曲「Lucky」はここまでの激情っぷりから一転するような、音に身を委ねて体を揺らせるようなタイプの曲だ。
「つまらない上司を殴っちゃおう」
というフレーズにはハッとさせられるというか、いやいや、さすがにそれはできないって…と思ってしまうのであるが、
「明日にはきっと晴れるだろう」
という締めのフレーズは天候だけではなくて、そうしてストレスを吹っ飛ばした聴き手の心模様のことでもあるはずだ。
「フォーリミに会ったのは恵比寿のライブハウスで。ライブ終わった後に呼ばれて、怒られるのかな?と思ったらこのフェスのオファーだった(笑)
そうやってこのフェスに出れることになって、何をしようかなとも考えたんだけど、フォーリミと出会ったのはライブハウスだったから、ライブハウスでやってることをそのままやります!」
と言って「平凡の愛し方」で
「どうかまた 歓びを
どうかまた 歌うから」
というサビのフレーズではダイバーとともに拳を振り上げてのシンガロングが起こるのであるが、このバンドはそうしてサビでキャッチーなフレーズを繰り返すことによって合唱を起こすという曲の作り方、構成の作り方が本当に上手い。だからライブを見るのが初めてであっても周りの人と同じように曲に向き合うことができる。
それは「憧憬へ」での
「また君に会えたら」
というフレーズのインパクトの強さもまた然りである。ただひたすらに音楽の力、ライブの力でそれを感じさせてくれるこのバンドは山本も口にしていたように、フォーリミの次に名古屋を担う存在になるんじゃないかと思う。
またこのバンドに会えたら、その時はライブハウスで歌えるように、と思いながら、今年のYON FESがもう終わっていってしまうという寂しさも同時に噛み締めていた。
リハ.フタリ
リハ.斜陽
1.ストレンジ
2.シモツキ
3.春と修羅
4.斜陽
5.斜陽
6.Lucky
7.平凡の愛し方
8.憧憬へ
17:55〜 04 Limited Sazabys [SKY STAGE]
そして2023年のこのフェスもいよいよ最後のアクト。主催者のフォーリミが今年のこのフェスを締めるべくステージに立つ。その瞬間まで、今年ここまでに見てきた素晴らしいライブの数々が走馬灯のように頭の中を駆け巡っていく。
おなじみのSEで登場した4人は疲れもあるだろうけれど、全くそんな素振りは見せない。むしろ出演者や観客、スタッフなどからもらったものを自分たちの力に変えるようにして、いきなりのHIROKAZのギターが煌めき、RYU-TA(ギター)が「オイ!オイ!」と煽りまくる「swim」からスタートすると、GEN(ボーカル&ベース)も振り絞るようでもありながらも実に伸びやかにそのハイトーンボーカルを響かせる。たくさんの観客が一斉に泳ぐように両手を動かす仕草すらもなんだか愛しく思えてきてしまう。
基本的にYON FESでは毎年2日間でフォーリミはガラッとセトリを変える。なのでこの日も「swim」もそうだが「Kitchen」も前日は演奏されていなかった曲だ。曲中の手拍子も完璧に決まると、サビではサークルが弾けたり、腕を上げて踊ったりと、それぞれがそれぞれの楽しみ方でこのライブを楽しんでいる。そこには間違いなくフォーリミへの愛情がある。
すると前日は初代が演奏された「Galapagos II」はこの日はWiennersがカバーしていただけに本家バージョンを見せつけるようなものであるのだが、やはり本家バージョンを聴いても同じ曲とは思えないくらいにイントロ、Aメロ、Bメロ、サビが激しく展開していく。それでもキャッチーというのが全編に渡って貫かれているあたりがさすがフォーリミである。
「まだこの時間でもこんなに明るい。東京ならぬ、名古屋の流星群を持ってきました!」
と言って演奏された「midnight cruising」はGENの言葉通りに天気が良かったためにまだ明るい空の下でSUPER BEAVERの曲タイトルに合わせるようにして披露されたのであるが、この日実に4ステージ目という鉄人ドラマーKOUHEIはカメラに向かっておなじみの変顔をするとそれがスクリーンにアップで映り、RYU-TAは間奏で
「またこの景色が見れて本当に嬉しい!お前たちありがとうー!」
と感情を爆発させる。本当にフォーリミが作りたかったフェスの光景がここに広がっていることを実感させてくれる。
「一緒に今年のYON FESを完成させましょう!」
とGENが気合いを入れるようにして呼びかけると、そのGENがハイトーンと声量の限界に挑み、それを突破していくような「fade」から、薄暗くなってきたステージから鮮やかな色の照明が光り、HIROKAZがイントロで煽りまくる「fiction」、さらには曲はじまりのメンバーの歌唱から始まるハードなサウンドが今のフォーリミによる「fiction」であるかのような最新アルバム収録の「Finder」と、アルファベットのFから始まるフォーリミのライブ定番曲にして名曲が連発されていく。それはフォーリミの鳴らしている音の力強さを改めて感じさせてくれるようなセクションになっている。
するとここでスペシャルゲストとして招かれたのはDragon Ashのkjであり、ということは演奏されるのはもちろんDragon Ashのトリビュートアルバムにフォーリミが参加した「crash the window」なのだが、GENが
「この曲はハンドマイクで歌いたいんだよな〜」
と言うとベーシストとしてWiennersの玉屋2060%までもステージに招く。Dragon Ashの大ファンである玉屋としてはkjの歌うDragon Ashの曲で演奏できるというのは夢みたいな出来事だと思われるが、力強いkjとハイトーンのGENのボーカルによる、フォーリミなりのパンクなこの曲のカバーをライブで見れる機会はもう今後そうそうないだろう。それだけでもこの日このフェスでこのライブを見れたことを本当に幸せに思う。
そんなコラボの後にはGENが、
「ライブシーンっていうのは一回完全に壊れてしまったと思ってる。だから戻すんじゃなくて、新しいものを作っていくつもりで」
と新たな決意を語ると、このフェスを始めた2016年のことを振り返り、
「俺たちのライブでセキュリティをずっとやってくれていた人が、本当なら2016年の3月で引退するって言ってたんだけど、俺たちが4月にYON FESをやるって聞いて、そこを最後にしたいって言って引退をそこまで延ばしてくれて。俺たちの活動が誰かの人生に影響を与えていることができているんだなって」
と当時のセキュリティの人とのエピソードを語るGENはどこか涙を堪えながら喋っているかのようだった。コロナ禍で最初に名古屋のアリーナでワンマンを開催した時もGENはMCで涙ぐむようにしていて喋っていた。人の気持ちや感情をちゃんと受け止めることができる人たちだからこそ、フォーリミのパンクからは激しさの中にも優しさや温かさを感じる。それはやはりdustboxたちから受け継いだものでもあるのだろう。
そんなYON FESの歴史とフォーリミが築いてきたものを感じさせるMCの後に爽やかな風を吹かせるようにHIROKAZがギターを鳴らし始めたのは「hello」。去年、まだライブシーン全体が声出しができない中でGENが
「みんなの声が聞きたいなぁ」
と言って話し声程度の声量で合唱が起きた曲。その光景は今でも目に焼き付いている。恐る恐る声を出す観客たちの姿も。あれからもう1年経った。同じ季節、同じ会場、同じ時間、同じ曲。でもその光景は全く違っていた。GENが言わなくてもサビでは観客が何も後ろめたい思いをすることなく合唱をしている。メンバーが笑顔でその光景を見ている。1年前の光景を見てきたからこそ、確実にこのフェスが、ロックフェスが、ライブが前に進んでいることを実感できる。去年とは全く違う形で涙が出てきてしまったのは、フォーリミが守るために戦ってきて、我々を前に進ませてくれる場所を作ってきたからだ。去年だけで特別な存在になったこの曲が、今年でさらに特別なものになった。
そんな光景も引っくるめてさらに前に。自分たちだけじゃなくて、周りにいるバンドや自分たちが出演するフェスもそうでないフェスも、何よりも目の前にいる我々や関わる全ての人も。そんな思いを乗せるかのようにして演奏された「Feel」が
「ただ先へ進め」
というフレーズと、ダイブやサークルが起きている客席の光景が本当に先に進めていることを実感させてくれた。この感触は、きっと肌にこびりついて取れそうもない。
アンコールでは制限時間が迫っていることもあり、
「Dragon Ashのライブをみんなで袖で見ている時にdustboxのSUGAさんがコーラを爆発させたのがこの2日間のハイライト(笑)」
とだけ言って笑わせると、壊れてしまったものを再び一つに集めるための曲「Buster call」の歌い出しをGENが光が射し込むような神々しさでもって歌うと、
「怪我すんなよ!でも怪我するギリギリまで行けよ!」
と煽る。去年までは決して言えなかったその言葉に応じるように観客が次々にステージの方に向かって飛んでいく。コロナ禍になってから一時期は演奏されなくなり、通常のバンド形態では去年のこのフェスで封印を解くようにして演奏されたこの曲が、今年はこうしてかつてと同じメッセージを持って鳴らされ、同じ光景を見せてくれている。それを見て、本当の意味でフォーリミのライブが戻ってきたんだと思った。
そんなライブの最後には
「1年後の未来からの、message!」
と言って高速ショートパンクチューンの「message」が鳴らされ、やはりダイブとサークルの嵐に。でもその中にいる人たちはみんな笑顔だった。コロナ禍でのライブは快適だったかもしれない。ぶつかったり、広がってきたりすることもない、じっくりライブを見れたから。でもやっぱりライブに行き始めてからこの景色をずっと見てきた。それが見れない寂しさがずっとあった。それをきっとこれからも見続けることができる。「ロックバンドのライブってこんなに凄いんだ!」と10代の時に思った光景を、きっと来年もこのフェスで見ることができる。出演者全員での集合写真撮影を終えてからスクリーンに映った
「See you next year」
の文字と終演SEの「Honey」が流れる中で笑顔でその画面を撮影している観客たちの姿は、また来年もここに来ることができる実感を確かに感じさせてくれた。
1.swim
2.Kitchen
3.Galapagos II
4.midnight cruising
5.fade
6.fiction
7.Finder
8.crash the window w/ kj,玉屋2060%
9.hello
10.Feel
encore
11.Buster call
12.message
キュウソやヘイスミなどの出演者が言っていたように、このフェスは今年の野外フェスの始まり。そこで去年気にしていた、「マスクしてない人がいたらどうしよう…」とか「声を出してしまう人がいたらどうしよう…」とかいろんなことを気にせずに誰もが好きなように楽しんでいる。去年よりも参加者がみんな笑顔になっている。それは今年これから開催されるフェスがどれも去年よりも楽しくなるということ。
このフェスが今年の最初で本当に良かった。そう思えるフェスを作ってくれたバンドなのだから、結局ずっとフォーリミが好き。