昨年は地元江戸川でバンド編成でワンマンを行った、中村一義が今年は盟友町田昌弘と2人で弾き語りツアーを敢行。編成もコンパクトであるため、地方まで廻った今回のツアーのファイナルにして東京公演は東京キネマ倶楽部。
これまでに何度も来ている場所であるが、1階部分まで椅子が置かれて指定席になっているのは初めて。席と席の間隔がやたら狭くて、東京ドームの内野席で野球を見ているような気分になるが、会場BGMで延々The Beatlesが流れているのは中村一義のライブならでは。
19:30を少し過ぎた頃、ステージのスクリーンに映像が映し出されると、まずは町田昌弘が登場。挨拶がてらに少ししゃべり、観客の歓声に応えると、中村一義を呼び込み、キネマ倶楽部のステージ下手にある階段の上の踊り場から、帽子を被った中村一義が登場。
2人がステージの椅子に腰掛け、町田がギターを弾き始めると、最初はベストアルバム「最高宝」に収録された「愛すべき天使たちへ」。さらに、武道館でのライブで共演した、くるりの岸田繁が、歌詞の「解放記念日」というフレーズをベタ褒めしていた「ここにいる」。
しかし、弾き語りスタイルだとイントロを聴いてもどの曲だかすぐにはわからない。中村一義が歌い始めてようやく、これか!とわかる。それだけに、アコースティックでやると思わなかった「Honeycom.ware」「メキシコ」というあたりは実に意外でビックリ。
そして何より、中村一義の声が本当に良く出ている。近年はかつてのファルセットなどの高音部分を歌いきれない場面が多々あったが、ツアーを経てきた成果なのか、今が最盛期ですか?ってくらいに声が伸びているし、聴いていて、上手いって思う。これからもこのレベルのボーカルのクオリティはキープしていて欲しいところ。
するとここで、今回のツアーのメイン企画である、新曲「スカイライン」の披露と、観客によるコーラス部分のレコーディング。町田の指導と中村一義の茶々もありながら、最初に2人で全編スクリーンに歌詞付きで演奏→コーラス部分を練習→観客だけで歌ってレコーディングという流れ。
合間合間に町田のレコーディング雑学や普段のレコーディングの手法なども語られながら、
「「モノアイ」の「まだまだ」というフレーズは1人で120テイクくらい録ったやつを重ねている」
などの中村一義の裏話なども開陳される。
今回のツアーは小規模会場がメインだったため、この日が最大キャパである。それだけに2人はこれまでより時間がかかると思っていたようだが、これまでの人生で散々中村一義の曲を聴き、歌ってきた(あるいはすでにツアーの他の場所に参加してきた人もいたのか)人たちなだけに、実に曲のコツを掴むのが早く、本番1回と保険1回の計2回だけで、2箇所のコーラスのレコーディングは終了。
さらに「イェー!」と「フー!」という掛け声もレコーディング。「イェー!」は曲中にあるフレーズだが、「フー!」はないため、他の曲に使われる可能性が高いとのこと。
そのレコーディングを踏まえた上で、もう一度「スカイライン」を演奏。今度は当然観客もコーラス部分を歌うのだが、ここまではずっと座っていた観客を立たせて振り付けまでやらせる。一応強制ではなく自由参加ということだが、ほぼ全ての人がやっていた。
肝心の曲の中身はというと、中村一義本人が、
「「対音楽」を作り終えて、自分の音楽人生の前半が終わった感じ。この曲が後半の始まり」
というように、ここからもう一度行くぞ、という意気込みが伝わってくるような前向きな曲。そこに観客の勇壮なコーラスが乗ることにより、早くもリリース前からこの場のアンセムとなっている。
ちなみに「スカイライン」というタイトルは「キャノンボール」を作った時に浮かんだタイトル案で、ここぞというタイミングの曲の時まで取っておいたとのこと。結果的に15年くらい寝かしたことになったが。
そこからは観客も中村一義も立ったまま、今度は手拍子と足踏みの音で観客が参加する、まちなかオンリー!のために作った新曲「魔法をかけてやる!!」。これも「スカイライン」同様にスクリーンに歌詞が出たのだが、
「街中で」
というフレーズがあったりと、まさにこのための曲というのがよくわかる。
そのまま「君ノ声」、「1,2,3」ではコーラスを観客に歌わせるという、全く動いてないのに体が熱くなってきたところで終了。
曲数少ないな、と思ったが、すでに1時間半を過ぎていた。そのうち半分くらいは新曲のレコーディングに費やしていたが。
アンコールでは町田がライブの物販Tシャツに着替え、物販紹介をしてから、新作のレコーディングが始まること、秋にバンド編成でツアーが行われることが発表される。
合間にはまだやるには危険なチャゲアスネタのやり取りで爆笑を誘う。
「最新の曲をやったんで、1番古い、デビュー曲を!」
と言って演奏されたのはもちろん「犬と猫」。
「どう?どう?」
のフレーズと、本来は町田が担うコーラス部分は全て観客に委ねると、
「この曲をこんなにたくさんの人たちと歌えるようになるなんて、作った時は全く想像していなかった」
と中村一義が感慨深そうに語り、
「そんなみんなが死ぬように生きているはずがない!まだあの曲やってないよね!」
と言うと、ラストの「キャノンボール」でもサビの
「そこで愛が待つゆえに」
のフレーズでは大合唱が巻き起こった。
曲を終えると、写真撮影。キネマ倶楽部は横に長い会場なので、左右で半分に分けて2回。最後、中村一義は
「ヤバい!泣きそう!」
と言いながら、再会を約束してステージを去って行った。
アコースティックとこのキャパならではの、実に観客との距離が近い、アットホームな暖かいライブであった。曲数が少ないのはちょっと物足りなかったが、新曲のレコーディングがメインということを考えると仕方のないところだろうか。
そのぶん、秋のバンドツアーではいろんな曲が聴けるのを期待。もちろんこれからレコーディングするという新曲もやるだろう。もしかしたらツアー前に配信とかでリリースがあるかもしれないが。
1.愛すべき天使たちへ
2.ここにいる
3.セブンスター
4.Honeycom.ware
5.メキシコ
6.スカイライン
7.魔法をかけてやる!!
8.君ノ声
9.1,2,3
encore
10.犬と猫
11.キャノンボール
犬と猫
http://youtu.be/oo1aKT8m1DA
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