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ダウ★ツーマンFES~歌と笑いの90000Hz~」 出演:ダウ90000 / Chilli Beans. / カネヨリマサル @EX THEATER ROPPONGI 2/26

個人的には今自分が大好きなバンドである少年キッズボウイがライブのテーマソングを提供したお笑いユニットという位置付けである、8人組コントグループのダウ90000。そうしたエピソードからもわかるように音楽が大好きなメンバーがおり、テレビ朝日で冠音楽番組をやっているのだが、その番組がTVを飛び出してライブハウスでのイベントに。その番組にも出演したことがある、Chilli Beans.とカネヨリマサルを迎えての開催である。

開演前にはダウ90000のメンバーによる、全く慣れていない感しかないような影アナが流れたりしてから番組の紹介VTRも流れ、開演時間の19時になるとステージには暗幕がかけられた前に出てきたのはダウ90000のメンバーたち。「大学のゼミ仲間たちで音楽フェスに行く」という内容のコントであり、7人が電車に乗って「明日フェス楽しみだね」と言うと、そのうちの1人が「忘れてたから行けない」と言い出し、そこに蓮見が現れてフェスに誘われるのだが「音楽なんか聴いたことない」と言いながらも会話の随所に

「水中、それは苦しい」

「「クロノスタシス」(きのこ帝国)のMVみたいに」

など、音楽が大好きなことを伺わせたために結局行くのか行かないのか…というところで最後に2人になったフェスに行けなくなった中島百依子に蓮見が

「ジンジャーエールの味を再確認する曲」

と言っておススメの曲(あきらかにくるり「ばらの花」)を教えるのだが、中島が「イントロ長っ…」と音楽に全然興味がない人のコメントをして暗転…という音楽ファンからしたら共感しかないというか、自分も学生の頃に同級生たちとフェスに行っていた時はこんな感じだったんだろうかとも思ってしまう。蓮見の普通の人なら絶対使わない音楽ネタのチョイスもわかるがゆえに面白い。


・カネヨリマサル

そうして暗転した瞬間に暗幕の向こう側から重く力強いベースの音が聞こえてきて、暗幕が開くとそこにはすでに演奏しているカネヨリマサルのメンバー3人が。いしはらめいがステージ前に出てきてその力強いベースをさらに観客の近くで聴かせるようにする「ひらりとパーキー」は初期の曲であるために意外に思っていたのだが、この1曲目はダウ90000の蓮見セレクトであるという。それくらいに蓮見は初期からのこのバンドであるらしい。

個人的には新宿のサーキットフェスで観て以来のライブを観る機会だったのだが、ちとせみな(ボーカル&ギター)の少女的な蒼さを感じさせながらも伸びやかな歌唱はもちろん、そのギターの音のシャープさと轟音っぷり、いしはらのベースのうねりっぷり、さらにはもりもとさな(ドラム)のシンプルなようでいて、実はドラムと身体が完全に連動しているかのような綺麗なフォームで刻むビートは、このバンドがポップな曲も生み出しながらもスリーピースバンドとしてのダイナミズムとカッコよさを感じさせてくれるということを「はしる、夜」の疾走感溢れるサウンドが再確認させてくれる。こんなにリズム隊が強いバンドだったかとも思うけれど、それはこのバンドが進化し続けているからそう思えているのだろう。

いしはらが問いかけたところ、この日は8割方くらいがライブを観るのが初めてという状況ではあったけれど、それはダウ90000というお笑いのライブを観れる機会だからということもあるだろうし、そうして普段はなかなか交わらないもの同士が混ざり合うことをメンバーは楽しんでいるかのようだった。

そんなバンドの最新アルバムが今年1月にリリースされたばかりの「昨日を生きない私達へ」であり、その中から早くも1曲目に収録されている「君の恋人になれますように」が披露される。前作のインタビューでちとせは「恋愛しない人なんていないじゃないですか?」と自身がラブソングを綴る理由を口にしていたが(その際に取り上げられていたのは「ラブソングがいらない君へ」という曲であり、ラブソングに共感できない人種としては逆にめちゃ刺さる曲だった)、そのラブソングを再生産するのではなくて、歌詞の表現もサウンドの鋭さも強度をさらに上げていくというものになっていて、とにかく聴いていて「カッコいいな…」と思わざるを得ない。

それは疾走感溢れるストレートなギターロックサウンドの初期曲「ユースオブトゥエンティ」もそうであるのだが、初期曲だからこそシンプルなリズムを刻んでいたもちもとが跳ねるようなビートを鳴らすことによって、そのリズムの強さを改めて感じさせてくれるのが最新作からの「ゆびきりげんまん」と、短い持ち時間の中でこうして初期から最新の曲まで演奏することによって確かなバンドの進化を感じさせてくれる。

そうして初見の人がほとんどという状況の中でもグイグイと引き込んでいくとちとせは

「今日は音楽の人もいればお笑いの人もいる。TVの人もいるだろうし、ライブハウスの人も。一見全然違うように見えるけど、みんな好きなことをやって生きている。その生き方は同じ」

と、ジャンルどころか職業すら違う人たちへの理解を示すのだが、それこそがこのバンドの持つ包容力というか、どんな人をも拒まない音楽とライブになっているかのようですらある。それはちゃんとメンバーの人間性がそのまま音楽になっているというような。

そんなちとせが

「ずっと前から、ガラガラのライブハウスで床しか見えなかった時から歌ってきた曲」

と言って演奏されたのはやはり初期の曲である「もしも」であり、この曲の後半の

「わたしは、強がりなんです」

の後に

「わたしは、嘘つきなんです」

と隠しきれない思いを吐露してしまう歌詞の並べ方は本当に見事だなというか、本当にこう思ってきた経験があったんだろうなと思わせてくれる。きっと今もそうして生きている人もたくさんいるんだろうなということも。

そして最後に演奏されたのは最新作の最後に収録されている「ハッピーニューデイ」であり、いしはらが再び中央に出てきて思いっきりグルーヴしまくるベースを聴かせると、ちとせは

「最後にみんなで歌いたい!」

と言ってタイトルフレーズで観客の合唱を求める。それが曲が進みにつれて大きくなっていく。それはこのバンドがこの日の観客を巻き込むことができた証明だった。自分たちの好きなことを、やりたいことを貫き続けてきたバンドの強さが確かに滲み出ていた。

ライブを観ていて、なんで自分はこのバンドのライブをそんなにたくさん観て来なかったんだろうか?と思っていた。それくらいに自分が好きなサウンドとスタイルを持っているバンド。何よりもライブを観て「カッコいい」が1番最初に浮かぶバンド。だからこそなんだかライブ後には「今まで全然ライブ観てなくてすいませんでした」とすら思ってしまうくらいにカッコよかった。自分が1番好きな、

「私は銀杏BOYZになれない」

という、これは自分のための曲なんじゃないかとすら思った「君が私を」もワンマンに行けば聴けたりするのだろうか。


1.ひらりとパーキー
2.はしる、夜
3.君の恋人になれますように
4.ユースオブトゥエンティ
5.ゆびきりげんまん
6.もしも
7.ハッピーニューデイ


転換中にはダウ90000の上原と園田(この名前をレポで書くのは初めてな気がする)による、この日のイベントグッズ紹介。上原は先行物販で呼び込みもしていたらしく、イベントタオルを持っている人がたくさんいたのはその効果だという。最後には園田がこのイベントのサブタイトルを観客に唱和させるのだが、実に言いづらいタイトルであるために少し失笑気味だった。

さらにはダウ90000のコント2本目はまさかの1本目の続きで、行けなくなったはずの中島も、行かないと言っていた蓮見も会場まで来てしまったことによって、チケットが1枚足りなくなって誰が帰るかを争うことになるのだが、デカい荷物に加えて傘までもをライブハウスに持ち込んでいる園田がチケット代を払ってないというダブルパンチによって帰らされる羽目に。

園田「グッズだけ買って帰る!」

忽那「チケット代払ってないのにグッズは買うのかよ!」

というやり取りを経て、今回も最後に残った中島と蓮見が

中島「もっとおすすめの音楽教えて。あなたが好きなバンドのライブに2人で行きたい!」

という良い感じの雰囲気になるのだが、

蓮見「友達と岩盤浴行くからってフェス断った人と一緒にライブ行くの無理。価値観が違いすぎるから」

と一刀両断するも、

蓮見「こんなに気まずい感じになってもライブは楽しいから!」

と言って終わる。8人もいたら役割がないメンバーばかりになるんじゃ?と思っていたけれど、それぞれにちゃんとキャラがあってそれを活かす内容になっているというのはさすがだ。そんなコントはこの人数で活動しているこのグループにしかできない。わかる音楽ネタを共有していると思えるからこそ、もっといろんなネタを観てみたくなった。


・Chilli Beans.

カネヨリマサルと同様にコントが終わった瞬間に演奏が始まり、暗幕が開くとすでにそこにはメンバーがいるといういつもとは違う形のChilli Beans.。そうしてメンバーの姿が顕になると、この日のドラムはtricotの吉田であることがわかるのだが、サングラスをかけたりなどはしていない剥き出しの表情でのMotoがいつもとは少し違うスタートだからか、少し歌唱は揺らいでいる感じもするけれど、それでも溌剌と飛び跳ねるようにしながら歌う「Welcome」からスタート。カネヨリマサルもそうだったが、この1曲目もまたダウ90000の蓮見のセレクトだという。それなりにライブでは演奏されている曲だが、1曲目というと違う曲のイメージが強いだけにその理由を聞くと納得である。

ワンマンなどの主催ライブでは観客に歌唱を任せる部分も多い「rose」はこの日はさすがにそれはせずにMotoとMaika(ベース&ボーカル)でのツインボーカルという形になるのだが、Motoは早くも動き回りながら歌っていて暑くなったのか、着ていたシャツを脱いでロンTだけになるというやる気に満ち溢れた状態に。

そうして演奏されたのはMaikaがゴリゴリのベースを鳴らしてグルーヴを生み出し、Motoも体をくねらせるようにしながら歌う「See C Love」であり、ライブ1曲目のイメージが強いが故にこの日は演奏されるだろうかと思ってもいたが、この位置で演奏される。初めてこのバンドのライブを観た人はこのグルーヴの強さに驚かされたんじゃないかと思うし、金髪になったLilyがアウトロでは前に出てきて強烈なギターソロを弾きまくるというのもまた驚きだったんじゃないだろうか。

それはこちらもバンド全体のグルーヴの強さを生み出す「aaa」も同じであり、そこにコーラスフレーズの合唱が加わることによって確かにそのグルーヴの中に我々の声が入っていることを感じさせてくれる。Lilyのやはり轟音のギターはクールなようでいてめちゃくちゃ楽しんでいる感情がこもっているし、それは激しく体を動かしまくりながら歌うMotoもまたそうである。

そのMotoがタイトルを口にしてから演奏された「lemonade」ではタイトルに合わせて黄色い照明がステージを照らし、サビではリズムに合わせてメンバーが左右にステップを踏むという光景もおなじみである。しかしこの日は通常のEX THEATERよりもスタンディングエリアが狭くなっている(お笑いとのライブだからか席が多い構造になっている)ことによって、観客はちょっとステップを踏みづらそうな感じだったのもいつもとは違ってまた面白い。最近はもうワンマンもアリーナ規模になっているためにホーム感が強いライブを観る機会が多くなってきているだけにちょっと新鮮な感じがするというか。

おなじみの子供の叫び声が同期で鳴らされたことを合図にするかのようにして、再びここでMaikaの重いベースがイントロから響くのは「105」であり、ポップな「lemonade」の後だからこそそのグルーヴと曲そのものが持つ重さがさらに際立つというか。対照的にMotoの動きながらの歌唱は曲に軽やかさを与えており、その相反する要素が同居しているのがChilli Beans.のライブの魅力であるが、日本武道館ワンマンで聴いた時にはまさかこの曲がこんなにもライブの定番になるとは思っていなかった。

そんな中で間違いなくバンドの新規軸と言えるのは、昨年末にリリースされたアルバム「blue night」に収録された「cyber」だろう。インタビューではMotoが漫画「ダンダダン」から影響を受けたという近未来感やホラー感も混ざり合うサウンドをMaikaがシンセベースを駆使して表現し、サビでは生ベースに戻ってバンド感を生み出すという実に忙しない、だからこそMaikaの器用さを実感できる曲だが、間違いなくこれまでのバンドにはなかったタイプの曲だ。「ダンダダン」のアニメ第2期は是非ともこのバンドにタイアップを…と思ってしまうくらいに絶対に似合うと思うし、作品への愛を持って曲を作ってくれるはずだ。

ここでMaikaが

「番組の第1回のゲストが私達で。蓮見さんが凄く優しかったよね」

と喋るも、2人は水を飲んだりしていて全然会話に参加してこないというのもこのバンドらしい通常運行であるが、ダウ90000のコントを観た後であるために

「みんな今日は誰と来たの?」

と問いかけたりしていた。当然ながら1人で来ていた人もいて、その人の声が1番デカかったような気もするけれど。

そしてMotoがギターを持って鳴らしながら歌うのは最新作の先行曲として配信されていた「Mum」であり、このバンド随一のロックなサウンドだと言っていいだろう。吉田の機材はシンプルではあるが力強いドラムの連打がそのロックさをさらに際立たせているが、こうしてドラマーが変わるとまた曲のイメージも少し変わるなと思うのもまた面白いし、この曲を聴いているとOasisの来日公演のサポートアクトをやってこの曲を鳴らしているのを観たいな、なんて思ってしまう。そのくらいにLilyの鳴らしているギターも本当にカッコいい。

Motoが再びハンドマイクに戻ると、観客に感謝を告げてから演奏されたのは「シェキララ」なのだが、客席ではタオルを振り回している観客たちもいたというあたりにこの曲での楽しみ方もまた新しいものになってきたんだなと思う。それはフェスに出まくったりしてきたことによって生まれたものかもしれないけれど、ステージではMotoがおなじみの爪先でリズムを取るようにして人差し指を掲げるようにして歌っている。この姿は何度観ても我々を最高に楽しくしてくれるものである。

そして最後に演奏されたのは先ほどは観客が振り回していたタオルがコーラスフレーズに合わせてステージに向かって拳のように振り上げられる「you n me」で、煌めくようなサウンドの中でMotoの歌唱が実に伸びやかに響き渡ると、吉田のドラムが曲が進むにつれてさらに強さと激しさを増していく。それに引っ張られるようにしてMotoも歌詞がないアウトロ部分でさらに何か歌うようにしていたのは、もう歌いたくて仕方がないという感情が溢れ出ているかのようだった。

そうしてやはりこのバンドのライブはいつだって最高に「楽しい!」と思わせてくれる。だからこそ、今年も目一杯シェキララしようぜって思うのである。それは今年も行ける限りライブに行きまくるということだ。


1.Welcome
2.rose
3.See C Love
4.aaa
5.lemonade
6.105
7.cyber
8.Mum
9.シェキララ
10.you n me


ライブが終わると吉田だけ先に捌けて、ステージにはダウ90000のメンバーが登場してのエンディングトーク。カネヨリマサルも呼び込むと、両バンドがツアーを行う告知をして、さらにダウ90000もまた4月にこの会場でコントライブをやることを告知してから、全員で記念撮影を行う。人数が多いためにかなりギュッと固まる感じになっていたけれど、またこれからもこのイベントは開催する予定ということで、その時はまた是非参加したいと思ったし、M-1やキングオブコントが始まるはるか前から学生時代には毎週欠かさず「爆笑!オンエアバトル」を録画して観ていて、お笑いライブを観に劇場に行っていたりもしたために、なかなか時間がないけれどまたこうやってお笑いのライブも観に行きたいなと思った。そうしてお笑いと音楽が混ざり合っていくのがこのイベントの目的でもあるだろうから。だからこそいつかもっと大きなフェスになって欲しい。

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ソノダマン

Author:ソノダマン
主に邦ロックバンドのライブに年間100本以上足を運んでいる男による、タイトルそのままのブログ(主にライブレポ)です。
Twitterもやってます。 @yoppeleah で主に音楽のことをつぶやいています。

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