RADWIMPS FOREVER IN THE DAZE TOUR 2021-2022 @幕張メッセ 1/9
- 2022/01/10
- 20:42
前日に続いてのRADWIMPSの幕張メッセ2daysの2日目。そしてこの後のスケジュール的にもこの日が今回のツアーでは参加できる最後の公演であるだけに、より一層噛み締めて見なければという思いが強くなる。
前日の幕張メッセ初日のレポ
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-988.html?sp)
12月のぴあアリーナ2日目のレポ
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-973.html?sp)
この日は前日より少し早めの17時30分開演であるのだが、時間的には17時45分前くらいだろうか、ステージ方向から円陣を組んだメンバーの気合いの入った声が聞こえてくると場内が暗転してステージ背面のスクリーンに「RADWIMPS」の文字が現れてサポート含めたメンバーが登場して「TWILIGHT」の煌びやかなシンセの音をマスダミズキ(ギター&シンセ)が鳴らして始まるというのはこの日も同じというか、基本的な流れや野田洋次郎(ボーカル)の出で立ちなどは前日と変わらないだけに、変わったところや改めて感じたところを中心としたい。
このツアーは昨年のアルバム「FOREVER DAZE」のリリースを受けてのものであるが、そのアルバムの中でほぼ唯一と言っていいギターロックサウンドの「桃源郷」においてはイントロでサポートギタリストのTAIKING(Suchmos)が手拍子を煽って始まるというのがおなじみになっているのだが、その煽る姿がどんどんバンドやライブ自体を引っ張っていくような力強いものになっている。それはすでにこのツアー前からおなじみの存在である森瑞希とエノマサフミというドラマーと、前述の「TWILIGHT」をはじめとしてシンセやキーボードも演奏し、コーラスまでも務めるマルチプレイヤーとしての貢献が非常に大きいマスダも含めて、サポートという立ち位置でありながらも完全に洋次郎と武田祐介(ベース)とその4人でのRADWIMPSというバンドであるというのがライブを重ねるごとに強まっているのがわかる。「カタルシスト」の最後のサビでサイドの花道に駆け出して行って演奏するのも含めて単に演奏するだけじゃなくて、そうなってくれるメンバーをバンドが求めたということでもある。
早くも銀テープが客席に放たれ、洋次郎がピアノを弾きながら歌ったかと思ったら花道に歩き出しながら歌う「ドリーマーズ・ハイ」を終えた後の洋次郎の挨拶も簡潔なものになっており、この日はとにかく曲を早く演奏したいというような、演奏するのが楽しくて仕方ないという雰囲気もまた前日以上に強く感じたのだが、洋次郎のボーカルは2days、しかも2時間半くらいの長丁場のライブを前日にやった後の2日目とは思えないくらいに伸びやかであり、それは洋次郎が登場時に着用していたハットとジャケットを取り払って涼しげになってからメンバーのソロ回しも取り入れた「DARMA GRAND PRIX」からの、幻想的な映像がとにかく印象的な「MAKAFUKA」という、先月のぴあアリーナ2daysの時には歌い切れていないように感じた曲を完璧に、前日のように歌詞が飛ぶこともなく歌いこなしていることからもよくわかる。
「この宇宙が今まで観てきた悲しみや痛みのすべてを
知ってるかのような君のその涙はなに
この宇宙が今まで見つめた喜びのすべて足しても
追いつかないほどの君のその笑顔はなに」
というこの曲のサビの歌詞などは本当に洋次郎節というか、この男以外の誰も描くことができないものだと聴く度に思う。
そんな洋次郎は
「初めて俺たちのライブに来た人は分からないだろうけど、俺たちのライブはお客さんが日本で1番やかましいんじゃないかと思うほどで、こんなに誰も何も言わないような時間はコロナ禍じゃなきゃあり得ないから(笑)」
と言って、曲に入る前の沈黙を敢えて楽しもうとしていたりしたのだが、一方で武田はともにリズムを担うサポートドラマー2人を
「エノ君はしゃこ、ミッキー(森)は鰤」
と、それぞれの好きな寿司ネタで紹介し、その独特の落ち着いているというか、ライブのMCっぽくない語り口が洋次郎は大好きだという。ちなみにその武田によって、1月にライブをやるのはRADWIMPSの歴史上初めてであるということも明かされる。
そんなMCからの「DADA」→「おしゃかしゃま」という流れはもはやクライマックスという感すらあるのだが、「おしゃかしゃま」の間奏でのセッションでは前日までとドラム2人のバトル的な演奏(叩いているフレーズは前日までと明らかに異なっている)から武田、TAIKING、マスダが楽器を持って花道に出て行ってソロ回しをするのだが、この日は武田のうねりまくるようなベースから、TAIKINGが突如としてDeep Purple「Smoke On The Water」のリフを弾くというこれまで全くやってこなかったサプライズ的な演奏を挟んでくる。これには曲を弾いている際のギターはブルース色が強い彼のルーツにハードロックが存在しているということがわかるものであり、このソロ回しは日によって各々が好きなように演奏している即興性の強いものであるということもわかる。
そのTAIKINGの演奏を受けてのマスダのフライングVでのギターソロも前日までよりもハードロックさを強めたものになっており、そうした演奏の変化の面白さが桑原がいないという寂しさを忘れさせてくれる。それこそがRADWIMPSがただ代わりのギタリストを入れるのではなくてこの2人にツアーへの参加を依頼した理由でもあるだろう。
洋次郎が花道の先でレーザーのカーテンに包まれるという、こうしたアリーナ規模だからこそできる演出を必要としたであろう「匿名希望」を終えると、この日はここまで挨拶的なMCのみと言っていいくらいにしか喋らなかった洋次郎が、
「寂しいけれどライブはもう終わりに向かっていっている。でも終わるからこそ、また新しく始められることがある」
と、確かにこの幕張メッセでの2daysはこの日で終わってしまうけれど、まだまだツアーは中盤と言っていいのにもはやファイナルのようなことを口にするのだが、それはRADWIMPSがどのライブもそうした意識で向き合ってきたからこそだろう。
そんなMCからのマスダがシンセを演奏する「NEVER EVER ENDER」は武田が手を叩きながら軽やかにステージ上を舞うようにして飛び跳ねる。正月に太ってしまったというカロリーもここで一気に消費されただろうけれど、一転して洋次郎がギターを弾きながら
「ロックバンドなんてもんを やっていてよかった
間違ってなんかいない
そんなふうに今はただ思えるよ」
という「トアルハルノヒ」のサビのフレーズを弾き語りのようにして歌うと、その段階で大きな拍手が起こり、洋次郎も歌い終わった後にその思いに応えるように、
「ロックバンドなんてもんを好きでいてくれてありがとう」
と口にする。それはどんなにロックバンドらしからぬサウンドを取り入れたとしてもRADWIMPSがロックバンドであるということを観客の目の前で改めて宣言するかのようであったし、それを見て、聞いていた観客もみんな「ロックバンドなんてもんを好きでいて良かった」と思ったはずだ。今目の前にこんなにカッコいいロックバンドがいて、どんなことがあっても止まらずに音を鳴らし続けてくれているのだから。
ぴあアリーナでの2daysの時は各々のスケジュールの都合によってか、それぞれの日で1人ずつだったゲストボーカルはこの日も2人登場。
洋次郎が自身の育った東京への微妙かつ複雑な感情を口にしてからステージに呼び込み、ハグしたiriとの「Tokyo」のクールかつ揺蕩うようなサウンドに浸らせると、洋次郎はまたこれから先の互いの活動の先でこうして交わることを楽しみにしているという言葉をiriに送り、直後に歌い始めた「SHIWAKUCHA」ではラップパートでAwichが花道の先端に登場するのだが、前日は黒のショーパンという出で立ちだったのがこの日はベージュっぽい色のジャケットとパンツというフォーマルな出で立ちにドラスティックに変化している。そのどちらも似合ってしまうスタイルも、ラップと歌唱も本当にカッコいい存在であるということは今回のアルバムとツアーでRADWIMPSのファンにも伝わったんじゃないかと思う。
洋次郎がAwichとハグしてステージから送り出すと、そのままメンバー全員が手拍子をして始まる「いいんですか?」では洋次郎がTAIKINGと肩を組むようにして歌ったりしながら、かつての観客の大合唱パートで録音された観客の合唱が流れるのを聴くと、花道の先端で観客に
「愛してるよー!」
と伝える。やっぱりこの瞬間ほどRADWIMPSのライブに来て良かったなと思うものはないし、この言葉を口にする時の洋次郎の表情と純粋さは2007年にこの曲がライブで演奏され始めた頃から全く変わっていない。同じように歳を重ねてきた我々もそうだったらいいなって思う。
すると洋次郎はメインステージのピアノに座り、もうこの日のライブが終わってしまうことを口にすると、
「まだ言えないことだらけなんだけど、今年も新しい作品をまさに今作っていたり、コラボレーションをしていたりします。それがあなたの人生を彩るものになりますように。それをもってまた会えますように」
と、すでに新たな制作を行なっており、今年はこのツアーが終わっても様々な楽しいことを計画していることを告げる。RADWIMPSはツアーが終わると次のライブまでに間が開くことも多々あるペースのバンドであるが、このツアーが終わってもまたすぐにRADWIMPSに会える、そんな予感しかしていないし、コラボレーションの相手はBAD HOPとかだったりするのだろうかとも思う。
それがそのまま洋次郎のピアノ弾き語りという形からバンドサウンドに発展していく「鋼の羽根」の
「揺るぎないものがほしかった 壊れない意志がほしかった」
「枯れない夢がほしかった 「僕」という意味がほしかった」
というサビのフレーズに洋次郎の生き様として重なっていく。バンドが演奏に加わって、花道へ歩き出しながら歌うその歌声はここでさらにまたスイッチが入るというか、ボーカリストとして覚醒を果たしたように感じた。それはマイクを持って歌っている際に演奏してくれる仲間がいるから。
「それを君と二人ならば 見つけられる気がしたんだ」
というフレーズは洋次郎の中ではすでにそれがなんなのかという答えが見つかっているように感じた。
そして洋次郎が
「また夏にでも会えますように」
と言うと、無数のミラーボールが煌めくダンスチューン「SUMMER DAZE 2021」がこのライブのエンドロールであるかのように流れる。
野外ワンマンだったなら嬉しいけれど、昨年出演するはずだったけれど開催できなかった、ロッキンなどの各地のフェスでもいい。その時に様々な感情を抱くことになった「2021」と題されたこの曲が演奏されていて、それを聞いてそれぞれが自由に踊りながら、去年とは違う夏を過ごせていますように。そんな思いをそれぞれ1人1人の心の中に刻み込むかのようだった。
アンコールではそれぞれがこのツアーTシャツに着替えてから登場してから先に写真撮影をしたのだが、ここまでに見た2公演では洋次郎は花道の先のミニステージに移動していたのが、この日はそれがなく、ステージ上のピアノに座ると
「今回のツアーでここまで1回も演奏してない曲を」
と言ってピアノを弾きながら歌い始めたのは
「ねぇ、僕は人間じゃないんです ほんとにごめんなさい
そっくりにできてるもんで よく間違われるのです」
と歌われる「棒人間」であり、この曲が演奏されるとは思っていなかったであろう観客たちは歌い出しから拍手でこの曲を歓迎するのだが、それはサポートメンバーたちが公演ごとに変わるアンコール演奏曲を完璧に覚えてくれているからだ。本当にそこには最大限の感謝と敬意を示したい。それは自分自身もこの曲がこうやって聴けるとは思ってなかったからである。
そして
「もう1曲、ピアノに座ったままで」
と言って「君の名は。」に収録されたピアノによるインスト曲「三葉のテーマ」をイントロ的に弾き始める。
「アドリブで弾いた」
というのが間違いないのは、前日はこのイントロ的な演奏はなかったからであり、その演奏から「スパークル」へと繋がっていき、スクリーンには星が夜空に煌めく映像が映し出される…という完璧かつ最高にドラマチックな形で演奏されたこの曲で、なんと洋次郎は早々と歌詞を間違えて曲を止めるというハプニングに。前日も歌詞が飛ぶところは多かったが、それでも曲を止めるまでは行かなかっただけに、これはかなり珍しいことであるのだが、洋次郎はやはり完璧な形で曲に入っただけに、
「やっぱりこうなるのが俺たちなんだよな〜」
と悔やんでいたのだが、もう1回やり直すにあたってこの2分間くらいの記憶を観客に消させてから、再び「三葉のテーマ」から演奏しようとするも、客席から笑い声が上がったことに反応してそのイントロの演奏をカットしてそのまま「スパークル」を演奏する。まさかこんなにシリアスな曲でそうした空気になるとは思わなかったが、それによって前日も演奏されたこの曲が全く違った形として聞こえた。何というか、洋次郎の人間らしさを強く感じられた瞬間だったのだ。
そんなライブは洋次郎が
「生きてまた必ず会いましょう」
と再会を約束してからの「君と羊と青」で大団円を迎える。今はドラムのキメに合わせてベースを抱えて飛び跳ねまくる武田が担っているこの曲のコーラスをまた観客全員で思いっきり大合唱できるような未来がやってくることを想像しながら。またアウトロを何回も何回も高速化しながら演奏するRADWIMPSの4人での姿を見れる未来が来ることも想像しながら。
演奏が終わるとステージに前にメンバーが一列に並んで一礼し、さらに花道の先まで全員で出てきて一礼する。その姿は本来のRADWIMPSのものではないけれど、今しか見れないこの6人での、紛れもなくRADWIMPSでしかないものだった。それを何回も見ることができて本当に幸せだと思っていた。
去年から、なかなかRADWIMPSのファンでいることによって精神が抉られるような出来事もいろいろあった。完全に一部の人からしたら「敵」であり「叩けるだけ叩いてもいい」という存在として捉えられているんだろうと思う。
そういう報道などが出る度に、「「君の名は。」であんなにたくさんの人に知られるような存在にならなければ…」と思ったりもしたけれど、あれがあったから、きっと今もRADWIMPSがこうしてアリーナ規模でライブをしているのを見ることができている。
同世代として同じものを同じ時期に見たり聴いたりして、それについて考えるタイミングも同じだったからこそ、「この人がこう言ってるからそれが正しい」という盲目的なファンでもないし、言動や行動に「それはどうだろうか」って思うこともある。でもRADWIMPSの音楽を聴くことすらなくバンドや洋次郎を叩いている奴よりもどういうことを考えて活動しているのかをわかっているという自負もある。
何よりも自分と同世代で、学生時代にすでにアリーナに立つようなモンスターバンドとなった姿を見ては、いつだって自分自身を奮い立たせてもらってきた。それはかつての「同世代でこんな凄いことをしてる人がいるのに我々ときたら…」という絶望感や嫉妬心すらあった当時とは明らかに感じ方が違ってきている。
それは今もこうしてアリーナ規模の会場でライブを見れていること、何よりもバンドが続いているということがどれだけ難しくてどれだけ奇跡的なことなのかということを、RADWIMPSと出会って以降の15年間ほどで思い知らされるようなことが本当にたくさんあったからだ。
そんな特別な思いを抱いているバンドだからこそ、どんなに形が変わったり外野から叩かれるようなことがあったりしても、その音楽とライブがこうして「やっぱり凄いバンドだよな」って感じられるものである限りは自分から離れていくことは絶対にない。
これから先何十年経ってもこうやってライブを観続けることができて、そう思い続けていられますように。RADWIMPSが改めてそう思えるバンドであることがわかった、自分にとっての「FOREVER IN THE DAZE TOUR」だった。
1.TWILIGHT
2.桃源郷
3.ドリーマーズ・ハイ
4.海馬
5.カタルシスト
6.DARMA GRAND PRIX
7.MAKAFUKA
8.うたかた歌
9.DADA
10.おしゃかしゃま
11.セツナレンサ
12.匿名希望
13.NEVER EVER ENDER
14.トアルハルノヒ
15.Tokyo feat.iri
16.SHIWAKUCHA feat.Awich
17.いいんですか?
18.鋼の羽根
19.SUMMER DAZE 2021
encore
20.棒人間
21.スパークル
22.君と羊と青
前日の幕張メッセ初日のレポ
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-988.html?sp)
12月のぴあアリーナ2日目のレポ
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-973.html?sp)
この日は前日より少し早めの17時30分開演であるのだが、時間的には17時45分前くらいだろうか、ステージ方向から円陣を組んだメンバーの気合いの入った声が聞こえてくると場内が暗転してステージ背面のスクリーンに「RADWIMPS」の文字が現れてサポート含めたメンバーが登場して「TWILIGHT」の煌びやかなシンセの音をマスダミズキ(ギター&シンセ)が鳴らして始まるというのはこの日も同じというか、基本的な流れや野田洋次郎(ボーカル)の出で立ちなどは前日と変わらないだけに、変わったところや改めて感じたところを中心としたい。
このツアーは昨年のアルバム「FOREVER DAZE」のリリースを受けてのものであるが、そのアルバムの中でほぼ唯一と言っていいギターロックサウンドの「桃源郷」においてはイントロでサポートギタリストのTAIKING(Suchmos)が手拍子を煽って始まるというのがおなじみになっているのだが、その煽る姿がどんどんバンドやライブ自体を引っ張っていくような力強いものになっている。それはすでにこのツアー前からおなじみの存在である森瑞希とエノマサフミというドラマーと、前述の「TWILIGHT」をはじめとしてシンセやキーボードも演奏し、コーラスまでも務めるマルチプレイヤーとしての貢献が非常に大きいマスダも含めて、サポートという立ち位置でありながらも完全に洋次郎と武田祐介(ベース)とその4人でのRADWIMPSというバンドであるというのがライブを重ねるごとに強まっているのがわかる。「カタルシスト」の最後のサビでサイドの花道に駆け出して行って演奏するのも含めて単に演奏するだけじゃなくて、そうなってくれるメンバーをバンドが求めたということでもある。
早くも銀テープが客席に放たれ、洋次郎がピアノを弾きながら歌ったかと思ったら花道に歩き出しながら歌う「ドリーマーズ・ハイ」を終えた後の洋次郎の挨拶も簡潔なものになっており、この日はとにかく曲を早く演奏したいというような、演奏するのが楽しくて仕方ないという雰囲気もまた前日以上に強く感じたのだが、洋次郎のボーカルは2days、しかも2時間半くらいの長丁場のライブを前日にやった後の2日目とは思えないくらいに伸びやかであり、それは洋次郎が登場時に着用していたハットとジャケットを取り払って涼しげになってからメンバーのソロ回しも取り入れた「DARMA GRAND PRIX」からの、幻想的な映像がとにかく印象的な「MAKAFUKA」という、先月のぴあアリーナ2daysの時には歌い切れていないように感じた曲を完璧に、前日のように歌詞が飛ぶこともなく歌いこなしていることからもよくわかる。
「この宇宙が今まで観てきた悲しみや痛みのすべてを
知ってるかのような君のその涙はなに
この宇宙が今まで見つめた喜びのすべて足しても
追いつかないほどの君のその笑顔はなに」
というこの曲のサビの歌詞などは本当に洋次郎節というか、この男以外の誰も描くことができないものだと聴く度に思う。
そんな洋次郎は
「初めて俺たちのライブに来た人は分からないだろうけど、俺たちのライブはお客さんが日本で1番やかましいんじゃないかと思うほどで、こんなに誰も何も言わないような時間はコロナ禍じゃなきゃあり得ないから(笑)」
と言って、曲に入る前の沈黙を敢えて楽しもうとしていたりしたのだが、一方で武田はともにリズムを担うサポートドラマー2人を
「エノ君はしゃこ、ミッキー(森)は鰤」
と、それぞれの好きな寿司ネタで紹介し、その独特の落ち着いているというか、ライブのMCっぽくない語り口が洋次郎は大好きだという。ちなみにその武田によって、1月にライブをやるのはRADWIMPSの歴史上初めてであるということも明かされる。
そんなMCからの「DADA」→「おしゃかしゃま」という流れはもはやクライマックスという感すらあるのだが、「おしゃかしゃま」の間奏でのセッションでは前日までとドラム2人のバトル的な演奏(叩いているフレーズは前日までと明らかに異なっている)から武田、TAIKING、マスダが楽器を持って花道に出て行ってソロ回しをするのだが、この日は武田のうねりまくるようなベースから、TAIKINGが突如としてDeep Purple「Smoke On The Water」のリフを弾くというこれまで全くやってこなかったサプライズ的な演奏を挟んでくる。これには曲を弾いている際のギターはブルース色が強い彼のルーツにハードロックが存在しているということがわかるものであり、このソロ回しは日によって各々が好きなように演奏している即興性の強いものであるということもわかる。
そのTAIKINGの演奏を受けてのマスダのフライングVでのギターソロも前日までよりもハードロックさを強めたものになっており、そうした演奏の変化の面白さが桑原がいないという寂しさを忘れさせてくれる。それこそがRADWIMPSがただ代わりのギタリストを入れるのではなくてこの2人にツアーへの参加を依頼した理由でもあるだろう。
洋次郎が花道の先でレーザーのカーテンに包まれるという、こうしたアリーナ規模だからこそできる演出を必要としたであろう「匿名希望」を終えると、この日はここまで挨拶的なMCのみと言っていいくらいにしか喋らなかった洋次郎が、
「寂しいけれどライブはもう終わりに向かっていっている。でも終わるからこそ、また新しく始められることがある」
と、確かにこの幕張メッセでの2daysはこの日で終わってしまうけれど、まだまだツアーは中盤と言っていいのにもはやファイナルのようなことを口にするのだが、それはRADWIMPSがどのライブもそうした意識で向き合ってきたからこそだろう。
そんなMCからのマスダがシンセを演奏する「NEVER EVER ENDER」は武田が手を叩きながら軽やかにステージ上を舞うようにして飛び跳ねる。正月に太ってしまったというカロリーもここで一気に消費されただろうけれど、一転して洋次郎がギターを弾きながら
「ロックバンドなんてもんを やっていてよかった
間違ってなんかいない
そんなふうに今はただ思えるよ」
という「トアルハルノヒ」のサビのフレーズを弾き語りのようにして歌うと、その段階で大きな拍手が起こり、洋次郎も歌い終わった後にその思いに応えるように、
「ロックバンドなんてもんを好きでいてくれてありがとう」
と口にする。それはどんなにロックバンドらしからぬサウンドを取り入れたとしてもRADWIMPSがロックバンドであるということを観客の目の前で改めて宣言するかのようであったし、それを見て、聞いていた観客もみんな「ロックバンドなんてもんを好きでいて良かった」と思ったはずだ。今目の前にこんなにカッコいいロックバンドがいて、どんなことがあっても止まらずに音を鳴らし続けてくれているのだから。
ぴあアリーナでの2daysの時は各々のスケジュールの都合によってか、それぞれの日で1人ずつだったゲストボーカルはこの日も2人登場。
洋次郎が自身の育った東京への微妙かつ複雑な感情を口にしてからステージに呼び込み、ハグしたiriとの「Tokyo」のクールかつ揺蕩うようなサウンドに浸らせると、洋次郎はまたこれから先の互いの活動の先でこうして交わることを楽しみにしているという言葉をiriに送り、直後に歌い始めた「SHIWAKUCHA」ではラップパートでAwichが花道の先端に登場するのだが、前日は黒のショーパンという出で立ちだったのがこの日はベージュっぽい色のジャケットとパンツというフォーマルな出で立ちにドラスティックに変化している。そのどちらも似合ってしまうスタイルも、ラップと歌唱も本当にカッコいい存在であるということは今回のアルバムとツアーでRADWIMPSのファンにも伝わったんじゃないかと思う。
洋次郎がAwichとハグしてステージから送り出すと、そのままメンバー全員が手拍子をして始まる「いいんですか?」では洋次郎がTAIKINGと肩を組むようにして歌ったりしながら、かつての観客の大合唱パートで録音された観客の合唱が流れるのを聴くと、花道の先端で観客に
「愛してるよー!」
と伝える。やっぱりこの瞬間ほどRADWIMPSのライブに来て良かったなと思うものはないし、この言葉を口にする時の洋次郎の表情と純粋さは2007年にこの曲がライブで演奏され始めた頃から全く変わっていない。同じように歳を重ねてきた我々もそうだったらいいなって思う。
すると洋次郎はメインステージのピアノに座り、もうこの日のライブが終わってしまうことを口にすると、
「まだ言えないことだらけなんだけど、今年も新しい作品をまさに今作っていたり、コラボレーションをしていたりします。それがあなたの人生を彩るものになりますように。それをもってまた会えますように」
と、すでに新たな制作を行なっており、今年はこのツアーが終わっても様々な楽しいことを計画していることを告げる。RADWIMPSはツアーが終わると次のライブまでに間が開くことも多々あるペースのバンドであるが、このツアーが終わってもまたすぐにRADWIMPSに会える、そんな予感しかしていないし、コラボレーションの相手はBAD HOPとかだったりするのだろうかとも思う。
それがそのまま洋次郎のピアノ弾き語りという形からバンドサウンドに発展していく「鋼の羽根」の
「揺るぎないものがほしかった 壊れない意志がほしかった」
「枯れない夢がほしかった 「僕」という意味がほしかった」
というサビのフレーズに洋次郎の生き様として重なっていく。バンドが演奏に加わって、花道へ歩き出しながら歌うその歌声はここでさらにまたスイッチが入るというか、ボーカリストとして覚醒を果たしたように感じた。それはマイクを持って歌っている際に演奏してくれる仲間がいるから。
「それを君と二人ならば 見つけられる気がしたんだ」
というフレーズは洋次郎の中ではすでにそれがなんなのかという答えが見つかっているように感じた。
そして洋次郎が
「また夏にでも会えますように」
と言うと、無数のミラーボールが煌めくダンスチューン「SUMMER DAZE 2021」がこのライブのエンドロールであるかのように流れる。
野外ワンマンだったなら嬉しいけれど、昨年出演するはずだったけれど開催できなかった、ロッキンなどの各地のフェスでもいい。その時に様々な感情を抱くことになった「2021」と題されたこの曲が演奏されていて、それを聞いてそれぞれが自由に踊りながら、去年とは違う夏を過ごせていますように。そんな思いをそれぞれ1人1人の心の中に刻み込むかのようだった。
アンコールではそれぞれがこのツアーTシャツに着替えてから登場してから先に写真撮影をしたのだが、ここまでに見た2公演では洋次郎は花道の先のミニステージに移動していたのが、この日はそれがなく、ステージ上のピアノに座ると
「今回のツアーでここまで1回も演奏してない曲を」
と言ってピアノを弾きながら歌い始めたのは
「ねぇ、僕は人間じゃないんです ほんとにごめんなさい
そっくりにできてるもんで よく間違われるのです」
と歌われる「棒人間」であり、この曲が演奏されるとは思っていなかったであろう観客たちは歌い出しから拍手でこの曲を歓迎するのだが、それはサポートメンバーたちが公演ごとに変わるアンコール演奏曲を完璧に覚えてくれているからだ。本当にそこには最大限の感謝と敬意を示したい。それは自分自身もこの曲がこうやって聴けるとは思ってなかったからである。
そして
「もう1曲、ピアノに座ったままで」
と言って「君の名は。」に収録されたピアノによるインスト曲「三葉のテーマ」をイントロ的に弾き始める。
「アドリブで弾いた」
というのが間違いないのは、前日はこのイントロ的な演奏はなかったからであり、その演奏から「スパークル」へと繋がっていき、スクリーンには星が夜空に煌めく映像が映し出される…という完璧かつ最高にドラマチックな形で演奏されたこの曲で、なんと洋次郎は早々と歌詞を間違えて曲を止めるというハプニングに。前日も歌詞が飛ぶところは多かったが、それでも曲を止めるまでは行かなかっただけに、これはかなり珍しいことであるのだが、洋次郎はやはり完璧な形で曲に入っただけに、
「やっぱりこうなるのが俺たちなんだよな〜」
と悔やんでいたのだが、もう1回やり直すにあたってこの2分間くらいの記憶を観客に消させてから、再び「三葉のテーマ」から演奏しようとするも、客席から笑い声が上がったことに反応してそのイントロの演奏をカットしてそのまま「スパークル」を演奏する。まさかこんなにシリアスな曲でそうした空気になるとは思わなかったが、それによって前日も演奏されたこの曲が全く違った形として聞こえた。何というか、洋次郎の人間らしさを強く感じられた瞬間だったのだ。
そんなライブは洋次郎が
「生きてまた必ず会いましょう」
と再会を約束してからの「君と羊と青」で大団円を迎える。今はドラムのキメに合わせてベースを抱えて飛び跳ねまくる武田が担っているこの曲のコーラスをまた観客全員で思いっきり大合唱できるような未来がやってくることを想像しながら。またアウトロを何回も何回も高速化しながら演奏するRADWIMPSの4人での姿を見れる未来が来ることも想像しながら。
演奏が終わるとステージに前にメンバーが一列に並んで一礼し、さらに花道の先まで全員で出てきて一礼する。その姿は本来のRADWIMPSのものではないけれど、今しか見れないこの6人での、紛れもなくRADWIMPSでしかないものだった。それを何回も見ることができて本当に幸せだと思っていた。
去年から、なかなかRADWIMPSのファンでいることによって精神が抉られるような出来事もいろいろあった。完全に一部の人からしたら「敵」であり「叩けるだけ叩いてもいい」という存在として捉えられているんだろうと思う。
そういう報道などが出る度に、「「君の名は。」であんなにたくさんの人に知られるような存在にならなければ…」と思ったりもしたけれど、あれがあったから、きっと今もRADWIMPSがこうしてアリーナ規模でライブをしているのを見ることができている。
同世代として同じものを同じ時期に見たり聴いたりして、それについて考えるタイミングも同じだったからこそ、「この人がこう言ってるからそれが正しい」という盲目的なファンでもないし、言動や行動に「それはどうだろうか」って思うこともある。でもRADWIMPSの音楽を聴くことすらなくバンドや洋次郎を叩いている奴よりもどういうことを考えて活動しているのかをわかっているという自負もある。
何よりも自分と同世代で、学生時代にすでにアリーナに立つようなモンスターバンドとなった姿を見ては、いつだって自分自身を奮い立たせてもらってきた。それはかつての「同世代でこんな凄いことをしてる人がいるのに我々ときたら…」という絶望感や嫉妬心すらあった当時とは明らかに感じ方が違ってきている。
それは今もこうしてアリーナ規模の会場でライブを見れていること、何よりもバンドが続いているということがどれだけ難しくてどれだけ奇跡的なことなのかということを、RADWIMPSと出会って以降の15年間ほどで思い知らされるようなことが本当にたくさんあったからだ。
そんな特別な思いを抱いているバンドだからこそ、どんなに形が変わったり外野から叩かれるようなことがあったりしても、その音楽とライブがこうして「やっぱり凄いバンドだよな」って感じられるものである限りは自分から離れていくことは絶対にない。
これから先何十年経ってもこうやってライブを観続けることができて、そう思い続けていられますように。RADWIMPSが改めてそう思えるバンドであることがわかった、自分にとっての「FOREVER IN THE DAZE TOUR」だった。
1.TWILIGHT
2.桃源郷
3.ドリーマーズ・ハイ
4.海馬
5.カタルシスト
6.DARMA GRAND PRIX
7.MAKAFUKA
8.うたかた歌
9.DADA
10.おしゃかしゃま
11.セツナレンサ
12.匿名希望
13.NEVER EVER ENDER
14.トアルハルノヒ
15.Tokyo feat.iri
16.SHIWAKUCHA feat.Awich
17.いいんですか?
18.鋼の羽根
19.SUMMER DAZE 2021
encore
20.棒人間
21.スパークル
22.君と羊と青
THE SUN ALSO RISES vol.116 -avengers in sci-fi / キツネツキ- @F.A.D YOKOHAMA 1/10 ホーム
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