東京初期衝動 「サマーツアー2021」あなたと行った恵比寿のbar今は誰と行ってるの? 〜切ない夏の夜空編〜 @恵比寿LIQUIDROOM 7/30
- 2021/07/31
- 00:20
昨年もちょうどこの時期だった。まだコロナ禍の中でどうやってライブをやっていくべきかを業界やシーン全体が模索し、アーティストによっては全席指定のアコースティックライブをやったりもしていたが、東京初期衝動は元々予定されていたライブハウスのキャパを感染症対策のガイドラインの一環として減らすのならばと、予定よりもはるかに大きいキャパの恵比寿LIQUIDROOMでライブを、しかもまだ当時はほとんど行われていなかったスタンディングという形で開催した。
それは同時に当時の4人での東京初期衝動の終わりでもあったわけだが、あさか(ベース)加入後もできる限りライブをやりまくるという姿勢は全く変わらず、5月の千葉LOOKから始まったこのツアーはしーなちゃん(ボーカル&ギター)が愛する地である沖縄こそ延期になってしまったが、こうして去年立ったLIQUIDROOMに帰還を果たす。しかし去年よりも今の方が状況が悪くなるだなんて誰が思っていただろうか。
開演時間が19時30分のこの日であるが、仕事が長引いてしまい、自分が会場について検温や消毒をして入場した時点ですでに「BABY DON'T CRY」が始まっていて、やはり最初の数曲を見逃してしまったことを悔やむ。おそらくはツアー初日の千葉LOOKでも序盤に演奏されていた「再生ボタン」は聴けなかったんだろうなぁと。
しーなちゃんは赤いジャージを履き、「うちのカレピに手を出すな」で思いっきり立ち位置が区切られたスタンディング制の観客を煽り、そこに希(ギター)とあさかのコーラスが加わる。観客は腕を上げて応えているが、元々パワフルだったなおのドラムも含めて、バンドの鳴らしている音は確実に強くなっている。あさかが加入後、小さいライブハウスからアリーナまで様々な会場でライブをやり、それを続けてきた成果が確実に出ていることを実感する。
希のキャッチーなギターリフが印象的な「流星」では歌い始める前にしーなちゃんが客席へ投げキス。ライブ自体はまだ序盤だと思われるが、観客への向き合い方、ライブそのものへの向き合い方も間違いなくメンバーの中で変わってきていることがわかる。そのしーなちゃんはマイクスタンドをぐるっと回して観客により近い位置でギターを弾きながら歌うという姿からもそれは感じられる。きっとそれはバンド名の通りに衝動的にやっている部分も多分にあるのだろうけれど。
淡い照明が暑さを忘れさせるくらいに季節を巻き戻すような「春」は、ツアー初日の5月の段階ではギリギリこの曲に見合う季節だったな、と思っていたことを思い出す。2ヶ月という期間は本当にあっという間であるし、こんなにも気候がガラッと変わる期間であるということも、この時期に聴くことで改めて実感する。こうして春から夏だけではなく、秋から冬にかけてもこうしてこのバンドのライブを見ていたいということも。
しーなちゃんの弾き語りのように始まり、バンドの演奏が合流するという形の「中央線」からタイトル通りに青く暗めの照明とともにしーなちゃんの歌詞の言い回しの巧さが光る「blue moon」という流れは性急な衝動に任せたパンクだけではないこのバンドの持つ切なさを感じさせる流れであるが、こうした曲でのしーなちゃんの歌の表現力が本当に凄まじいものになっている。曲の力、メロディの力をフルに発揮させるどころか、それをさらに倍増させるかのようですらある。ライブをやり続け、歌を歌い続けてきたことによってそうした術を自然に身につけてきたのかもしれないし、その声や姿はハッキリと目の前にいる人に対して歌っていると感じるものだった。
希のギターリフがシンセのサウンドのようですらある「愛のむきだし」では今度はしーなちゃんの歌声がそれまでの切なさだけではなく妖艶さすら感じさせるようになっているが、それを支えるあさかとなおのリズム隊を軸にしたグルーヴもリリース時にはっきりと新規軸であると感じさせたこの曲で得たものだろう。
そこから一気にロックでありながらも美しいメロディとメンバーのコーラスワークによる「STAND BY ME」でしーなちゃんがラスサビで膝から崩れ落ちるようにしながらも歌い続ける様が神々しくすら見える中、「黒ギャルのケツは煮卵に似てる」でしーなちゃんはギターをスタッフに渡してハンドマイクを持ち、ステージを駆け回るどころかステージを降りて柵の上に立って歌う(今の状況的に客席の中には突入しないのはさすがだ)のだが、さらにはTシャツを脱ぎ捨ててスポブラ?(言い方がわからない)姿になると、コーラス部分ではあさかに
「あさか、もっと!」
と大きな声で歌うように指示する。間奏などのベースが目立つところでは台の上に立って演奏するという姿を見せるようになっているあさかも本当に楽しそうに演奏し、コーラスを歌っている。このツアーを経てきて完全に東京初期衝動のベースはこの人でないといけないという存在になっている。
さらにしーなちゃんがそのままハンドマイクで歌う「兆楽」でもやはり柵の上に立って歌うのだが、おそらく映像収録をしているであろうに、履いているジャージをずり下げようとする場面もあって思わずドキリとしてしまう。確かに歌詞(音源でもピー音が入っている)を考えるとそうしたパフォーマンスにピッタリな曲であるのだが。
しーなちゃんがすぐさまギターを持つと、メンバー4人がドラムセットの方を向いて轟音、爆音を鳴らす「ロックン・ロール」へ。ライブの終わりを告げてしまう曲でもあるのだが、ライブがほとんどなかった去年のこの時期よりもはるかに悪化してしまっているような感覚になるし、それはきっとライブやフェスというものを疎ましくすら思っているであろう人がたくさんいるということをこの1年の間に知ってしまったからだ。
それでも、今この瞬間、ライブハウスで爆音のロックンロールが鳴らされているのを目の当たりにしている。
「ロックンロールは鳴り止まないって誰かが言ってた」
という神聖かまってちゃんが生み出した名曲を引用した歌詞を、そのバンドに、その曲に影響を受けたであろうこのバンドがまさにロックンロールが鳴り止まないということを体現している。どんな状況であってもこうしてロックンロールが鳴り止まないでいて欲しい。そう思わせてくれる轟音は感動的なくらいに本当に美しいものだった。
MCなしで駆け抜けるというスタイルのバンドであるだけにあっという間に本編を終えると、アンコールで再びメンバーが登場。しーなちゃんが全く着替えていないところを見ると、少しだけメンバー間で話し合ってすぐに出てきたのだろう。
もう明らかに前へ前へ、先へ先へ、という気持ちが走り過ぎて1コーラス目はメロディとリズムがズレるパンクっぷりをメンバーが顔を見合わせての間奏で見事に修正してみせた「Because あいらぶゆー」から、「ロックン・ロール」同様にメンバーがドラムセットで向かい合って音を鳴らす際のしーなちゃんの背中が美し過ぎて仕方がない轟音「東京初期衝動」ではもはやコーラスというよりも叫びと言ってもいいくらいに、そのバンド名を冠した曲にふさわしい衝動っぷりを見せる。
「いつかの僕らの初期衝動」
ではあるけれど、こうしてライブを見ているとこのバンドの初期衝動はこれから先も全く変わらないんじゃないかとすら思える。
そしてまさかの「Love Music」初出演も果たした曲である「さまらぶ♡」では、世の中の状況は本当に厳しいものになってきていても、希がこのライブハウスの中だけはまさにアゲアゲな夏を謳歌させてくれるようなリフを奏で、間奏では希とあさかがステップを踏むようにしてしーなちゃんの方に寄っていき、しーなちゃんとあさかは一つのマイクで「グイグイ!」のコーラスを歌い、さらには希とあさかはステージ上を走って位置を入れ替わる。これはツアー初日から見れたパフォーマンスであるが、かつてライブを初めて見た時には観客すらも戦う相手だと思っているかのような緊張感に満ちたライブをしていたバンドとは思えないくらいにメンバーも観客も笑顔にしてくれる。ライブは戦う場所でもありながらも楽しい場所であり、今この4人でライブをやること、バンドでいれていることが本当に楽しいんだろうなと思う。
それはきっとこうしてライブに来てくれている人たちが自分たちの音楽や人間性を心から愛してくれていることがわかるようになったからこそ、そういう人たちを楽しませたいと思ってのパフォーマンスだと思うけれど、おそらくはかつての10代の頃の自分と同じように1人で部屋で銀杏BOYZを聴いていたであろう人が(GOING STEADYと銀杏BOYZに人生を狂わされた人はきっとそういう経験をしているはず)、こんなにも生き生きと楽しそうに音楽を鳴らしていて、それがたくさんの人を笑顔にしている。どんなミュージシャンよりも自分と同じような人のバンドだと思っているからこそ、その姿から計り知れないくらいの力をもらえるし、その姿を見ていて泣きそうになってしまう。
そしてこの日の締めは本編同様に「ロックン・ロール」。それはそのままどんな状況であろうと自分たちはロックを鳴らすのをやめないという宣誓でもあると同時に、本編よりもさらに轟音にその感情がこもっているように感じたのだが、演奏前に
「最後の曲」
と言っていたはずのしーなちゃんが、
「なおさん行ける?」
と尋ねると、なおが超ハイスピードでドラムを連打し始めたのは爆速バージョンの「高円寺ブス集合」。もはや速すぎ&ラウド過ぎでハードコアと言えるようなレベルになっているのだが、早口すぎて聞き取れないレベルの歌唱のしーなちゃんがハンドマイクでステージを転げ回る姿がより一層強くそう思わせる。こんなに速いテンポの「バニラの求人」のメロディを歌ったことのある人がこのメンバー以外にこの世に存在しているんだろうか、と思うし、これを平気で叩けるなおは本当に凄い。
しかししーなちゃんがなおに何やら話しかけたので、どうやらまだ終わらないようだ。
「「流星」と「再生ボタン」が納得いかなかったからもう一回やろう」
と言ってまさかのこの日2回目の「流星」へ。本編で演奏された時も全然悪くないどころか、むしろ素晴らしいものであったけれど、それでもこうしてもう1回演奏したということは、この日のライブが終わって欲しくなかったんだろう。それくらいに楽しい、ずっと続いて欲しい瞬間の連続だった。それは我々も、きっとメンバーたちも。
しーなちゃんは自身のマイクスタンドをぶっ倒してしまったので、希のマイクスタンドを自分のところに移動させて歌い、当然希はコーラスが出来なくなるのだか、さらにしーなちゃんはギターもスタッフに預けてハンドマイクとなって「再生ボタン」へ。
遅刻してしまったため、この日はこの曲は聴けないと思っていた。しかしそれをこうして最後の最後、本当に持ち得る全ての力を解放するかのような形での演奏で聴けたのはこの会場で僕だけが止まった気がしただけに本当に嬉しかったし、MC全くなしで突っ走るというスタイルは初めて見た時と変わらないけれど、間違いなくその頃とは変わったと思った。言葉ではなく、ひたすら音楽で我々とコミュニケーションを取るバンドの姿がそこにはあった。我々は声で返すことはできないけれど、確かに想いが通じあっているような、これまでにないような感覚が残っているのを自分の中で大事に確かめていた。
演奏が終わってメンバーがステージを去ると、おなじみの終演BGMである森田童子「ぼくたちのしっぱい」が流れ、しーなちゃんとあさかが観客に感謝を伝えるためにステージに戻ってきて、しーなちゃんはそのまま流れる曲に合わせて歌おうとしたが、歌詞を得る覚え気味だった。いつかライブ本編だけじゃなくて、ライブが終わった後にこの曲をしーなちゃんと観客全員で合唱できる日が来るように。そんなことを願っていた。
1年前のこの会場でのライブレポで自分は
「このライブはコロナ禍で行われた中で伝説のライブと語り継がれていくのかもしれない」
と書いた。それはきっとあの日この会場にいた人たちにとって本当に久しぶりのライブであり、ライブハウスで爆音のロックを聴くという感覚を取り戻せた日という要素も含めてのものだったが、きっとコロナであろうとなかろうと、この日のライブはあの日を上回る、ただただ素晴らしいライブだった。東京初期衝動は早くもそう感じさせるライブをやるバンドになっている。そんなバンドはこれからもずっとライブハウスでどんな状況だろうとロックを鳴らすだろう。
「きみを待ってる ここで待ってる いつかきっと」
と歌っているバンドなのだから。
BABY DON'T CRY
うちのカレピに手を出すな
流星
春
中央線
blue moon
愛のむきだし
STAND BY ME
黒ギャルのケツは煮卵に似てる
兆楽
ロックン・ロール
encore
Because あいらぶゆー
東京初期衝動
さまらぶ♡
ロックン・ロール
高円寺ブス集合 (爆速ver.)
流星
再生ボタン
それは同時に当時の4人での東京初期衝動の終わりでもあったわけだが、あさか(ベース)加入後もできる限りライブをやりまくるという姿勢は全く変わらず、5月の千葉LOOKから始まったこのツアーはしーなちゃん(ボーカル&ギター)が愛する地である沖縄こそ延期になってしまったが、こうして去年立ったLIQUIDROOMに帰還を果たす。しかし去年よりも今の方が状況が悪くなるだなんて誰が思っていただろうか。
開演時間が19時30分のこの日であるが、仕事が長引いてしまい、自分が会場について検温や消毒をして入場した時点ですでに「BABY DON'T CRY」が始まっていて、やはり最初の数曲を見逃してしまったことを悔やむ。おそらくはツアー初日の千葉LOOKでも序盤に演奏されていた「再生ボタン」は聴けなかったんだろうなぁと。
しーなちゃんは赤いジャージを履き、「うちのカレピに手を出すな」で思いっきり立ち位置が区切られたスタンディング制の観客を煽り、そこに希(ギター)とあさかのコーラスが加わる。観客は腕を上げて応えているが、元々パワフルだったなおのドラムも含めて、バンドの鳴らしている音は確実に強くなっている。あさかが加入後、小さいライブハウスからアリーナまで様々な会場でライブをやり、それを続けてきた成果が確実に出ていることを実感する。
希のキャッチーなギターリフが印象的な「流星」では歌い始める前にしーなちゃんが客席へ投げキス。ライブ自体はまだ序盤だと思われるが、観客への向き合い方、ライブそのものへの向き合い方も間違いなくメンバーの中で変わってきていることがわかる。そのしーなちゃんはマイクスタンドをぐるっと回して観客により近い位置でギターを弾きながら歌うという姿からもそれは感じられる。きっとそれはバンド名の通りに衝動的にやっている部分も多分にあるのだろうけれど。
淡い照明が暑さを忘れさせるくらいに季節を巻き戻すような「春」は、ツアー初日の5月の段階ではギリギリこの曲に見合う季節だったな、と思っていたことを思い出す。2ヶ月という期間は本当にあっという間であるし、こんなにも気候がガラッと変わる期間であるということも、この時期に聴くことで改めて実感する。こうして春から夏だけではなく、秋から冬にかけてもこうしてこのバンドのライブを見ていたいということも。
しーなちゃんの弾き語りのように始まり、バンドの演奏が合流するという形の「中央線」からタイトル通りに青く暗めの照明とともにしーなちゃんの歌詞の言い回しの巧さが光る「blue moon」という流れは性急な衝動に任せたパンクだけではないこのバンドの持つ切なさを感じさせる流れであるが、こうした曲でのしーなちゃんの歌の表現力が本当に凄まじいものになっている。曲の力、メロディの力をフルに発揮させるどころか、それをさらに倍増させるかのようですらある。ライブをやり続け、歌を歌い続けてきたことによってそうした術を自然に身につけてきたのかもしれないし、その声や姿はハッキリと目の前にいる人に対して歌っていると感じるものだった。
希のギターリフがシンセのサウンドのようですらある「愛のむきだし」では今度はしーなちゃんの歌声がそれまでの切なさだけではなく妖艶さすら感じさせるようになっているが、それを支えるあさかとなおのリズム隊を軸にしたグルーヴもリリース時にはっきりと新規軸であると感じさせたこの曲で得たものだろう。
そこから一気にロックでありながらも美しいメロディとメンバーのコーラスワークによる「STAND BY ME」でしーなちゃんがラスサビで膝から崩れ落ちるようにしながらも歌い続ける様が神々しくすら見える中、「黒ギャルのケツは煮卵に似てる」でしーなちゃんはギターをスタッフに渡してハンドマイクを持ち、ステージを駆け回るどころかステージを降りて柵の上に立って歌う(今の状況的に客席の中には突入しないのはさすがだ)のだが、さらにはTシャツを脱ぎ捨ててスポブラ?(言い方がわからない)姿になると、コーラス部分ではあさかに
「あさか、もっと!」
と大きな声で歌うように指示する。間奏などのベースが目立つところでは台の上に立って演奏するという姿を見せるようになっているあさかも本当に楽しそうに演奏し、コーラスを歌っている。このツアーを経てきて完全に東京初期衝動のベースはこの人でないといけないという存在になっている。
さらにしーなちゃんがそのままハンドマイクで歌う「兆楽」でもやはり柵の上に立って歌うのだが、おそらく映像収録をしているであろうに、履いているジャージをずり下げようとする場面もあって思わずドキリとしてしまう。確かに歌詞(音源でもピー音が入っている)を考えるとそうしたパフォーマンスにピッタリな曲であるのだが。
しーなちゃんがすぐさまギターを持つと、メンバー4人がドラムセットの方を向いて轟音、爆音を鳴らす「ロックン・ロール」へ。ライブの終わりを告げてしまう曲でもあるのだが、ライブがほとんどなかった去年のこの時期よりもはるかに悪化してしまっているような感覚になるし、それはきっとライブやフェスというものを疎ましくすら思っているであろう人がたくさんいるということをこの1年の間に知ってしまったからだ。
それでも、今この瞬間、ライブハウスで爆音のロックンロールが鳴らされているのを目の当たりにしている。
「ロックンロールは鳴り止まないって誰かが言ってた」
という神聖かまってちゃんが生み出した名曲を引用した歌詞を、そのバンドに、その曲に影響を受けたであろうこのバンドがまさにロックンロールが鳴り止まないということを体現している。どんな状況であってもこうしてロックンロールが鳴り止まないでいて欲しい。そう思わせてくれる轟音は感動的なくらいに本当に美しいものだった。
MCなしで駆け抜けるというスタイルのバンドであるだけにあっという間に本編を終えると、アンコールで再びメンバーが登場。しーなちゃんが全く着替えていないところを見ると、少しだけメンバー間で話し合ってすぐに出てきたのだろう。
もう明らかに前へ前へ、先へ先へ、という気持ちが走り過ぎて1コーラス目はメロディとリズムがズレるパンクっぷりをメンバーが顔を見合わせての間奏で見事に修正してみせた「Because あいらぶゆー」から、「ロックン・ロール」同様にメンバーがドラムセットで向かい合って音を鳴らす際のしーなちゃんの背中が美し過ぎて仕方がない轟音「東京初期衝動」ではもはやコーラスというよりも叫びと言ってもいいくらいに、そのバンド名を冠した曲にふさわしい衝動っぷりを見せる。
「いつかの僕らの初期衝動」
ではあるけれど、こうしてライブを見ているとこのバンドの初期衝動はこれから先も全く変わらないんじゃないかとすら思える。
そしてまさかの「Love Music」初出演も果たした曲である「さまらぶ♡」では、世の中の状況は本当に厳しいものになってきていても、希がこのライブハウスの中だけはまさにアゲアゲな夏を謳歌させてくれるようなリフを奏で、間奏では希とあさかがステップを踏むようにしてしーなちゃんの方に寄っていき、しーなちゃんとあさかは一つのマイクで「グイグイ!」のコーラスを歌い、さらには希とあさかはステージ上を走って位置を入れ替わる。これはツアー初日から見れたパフォーマンスであるが、かつてライブを初めて見た時には観客すらも戦う相手だと思っているかのような緊張感に満ちたライブをしていたバンドとは思えないくらいにメンバーも観客も笑顔にしてくれる。ライブは戦う場所でもありながらも楽しい場所であり、今この4人でライブをやること、バンドでいれていることが本当に楽しいんだろうなと思う。
それはきっとこうしてライブに来てくれている人たちが自分たちの音楽や人間性を心から愛してくれていることがわかるようになったからこそ、そういう人たちを楽しませたいと思ってのパフォーマンスだと思うけれど、おそらくはかつての10代の頃の自分と同じように1人で部屋で銀杏BOYZを聴いていたであろう人が(GOING STEADYと銀杏BOYZに人生を狂わされた人はきっとそういう経験をしているはず)、こんなにも生き生きと楽しそうに音楽を鳴らしていて、それがたくさんの人を笑顔にしている。どんなミュージシャンよりも自分と同じような人のバンドだと思っているからこそ、その姿から計り知れないくらいの力をもらえるし、その姿を見ていて泣きそうになってしまう。
そしてこの日の締めは本編同様に「ロックン・ロール」。それはそのままどんな状況であろうと自分たちはロックを鳴らすのをやめないという宣誓でもあると同時に、本編よりもさらに轟音にその感情がこもっているように感じたのだが、演奏前に
「最後の曲」
と言っていたはずのしーなちゃんが、
「なおさん行ける?」
と尋ねると、なおが超ハイスピードでドラムを連打し始めたのは爆速バージョンの「高円寺ブス集合」。もはや速すぎ&ラウド過ぎでハードコアと言えるようなレベルになっているのだが、早口すぎて聞き取れないレベルの歌唱のしーなちゃんがハンドマイクでステージを転げ回る姿がより一層強くそう思わせる。こんなに速いテンポの「バニラの求人」のメロディを歌ったことのある人がこのメンバー以外にこの世に存在しているんだろうか、と思うし、これを平気で叩けるなおは本当に凄い。
しかししーなちゃんがなおに何やら話しかけたので、どうやらまだ終わらないようだ。
「「流星」と「再生ボタン」が納得いかなかったからもう一回やろう」
と言ってまさかのこの日2回目の「流星」へ。本編で演奏された時も全然悪くないどころか、むしろ素晴らしいものであったけれど、それでもこうしてもう1回演奏したということは、この日のライブが終わって欲しくなかったんだろう。それくらいに楽しい、ずっと続いて欲しい瞬間の連続だった。それは我々も、きっとメンバーたちも。
しーなちゃんは自身のマイクスタンドをぶっ倒してしまったので、希のマイクスタンドを自分のところに移動させて歌い、当然希はコーラスが出来なくなるのだか、さらにしーなちゃんはギターもスタッフに預けてハンドマイクとなって「再生ボタン」へ。
遅刻してしまったため、この日はこの曲は聴けないと思っていた。しかしそれをこうして最後の最後、本当に持ち得る全ての力を解放するかのような形での演奏で聴けたのはこの会場で僕だけが止まった気がしただけに本当に嬉しかったし、MC全くなしで突っ走るというスタイルは初めて見た時と変わらないけれど、間違いなくその頃とは変わったと思った。言葉ではなく、ひたすら音楽で我々とコミュニケーションを取るバンドの姿がそこにはあった。我々は声で返すことはできないけれど、確かに想いが通じあっているような、これまでにないような感覚が残っているのを自分の中で大事に確かめていた。
演奏が終わってメンバーがステージを去ると、おなじみの終演BGMである森田童子「ぼくたちのしっぱい」が流れ、しーなちゃんとあさかが観客に感謝を伝えるためにステージに戻ってきて、しーなちゃんはそのまま流れる曲に合わせて歌おうとしたが、歌詞を得る覚え気味だった。いつかライブ本編だけじゃなくて、ライブが終わった後にこの曲をしーなちゃんと観客全員で合唱できる日が来るように。そんなことを願っていた。
1年前のこの会場でのライブレポで自分は
「このライブはコロナ禍で行われた中で伝説のライブと語り継がれていくのかもしれない」
と書いた。それはきっとあの日この会場にいた人たちにとって本当に久しぶりのライブであり、ライブハウスで爆音のロックを聴くという感覚を取り戻せた日という要素も含めてのものだったが、きっとコロナであろうとなかろうと、この日のライブはあの日を上回る、ただただ素晴らしいライブだった。東京初期衝動は早くもそう感じさせるライブをやるバンドになっている。そんなバンドはこれからもずっとライブハウスでどんな状況だろうとロックを鳴らすだろう。
「きみを待ってる ここで待ってる いつかきっと」
と歌っているバンドなのだから。
BABY DON'T CRY
うちのカレピに手を出すな
流星
春
中央線
blue moon
愛のむきだし
STAND BY ME
黒ギャルのケツは煮卵に似てる
兆楽
ロックン・ロール
encore
Because あいらぶゆー
東京初期衝動
さまらぶ♡
ロックン・ロール
高円寺ブス集合 (爆速ver.)
流星
再生ボタン
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