the telephones 「SUPER DISCO Hits 11!!! 〜3Days Show〜」 YOUNG (2005〜2011) @duo MUSIC EXCHANGE 12/17
- 2020/12/18
- 22:27
昨年、the telephonesは活動休止からの本格的な復活を発表した。復活をしたということは、活動休止前にはおなじみだったライブやツアーもまた開催するということであり、かつてはさいたまスーパーアリーナでも開催された、年末の恒例ワンマン「SUPER DISCO Hits」もついに帰ってきた。
これまでも2daysで開催されてきた年もあったが、今年は渋谷のduo MUSIC EXCHANGEでなんと3days。しかも3日ともに曲被りがない、コンセプトがそれぞれ決められた3日間というファンにとってはたまらない3日間となる。
初日のこの日は「YOUNG」と題され、2005年から2011年までの、今から10年前までの初期の曲で構成されたライブということで、久しくライブでは聴けていないあの曲やこの曲が聴けるという期待が高まる。
検温と手だけならず足(というか靴裏)の消毒をしてから場内に入ると、決してtelephonesにとっては広いとは言えないduoの客席に椅子が敷き詰められている光景に少し驚く。今年リリースしたアルバムのお披露目ライブ的な横浜1000CLUBでも椅子があったので、指定席でtelephonesを観るということにはそこまで違和感を感じてはいないが、キャパが全然違うだけに。
19時を少し過ぎたあたりで場内が暗転すると、おなじみ「Happiness, Happiness, Happiness」のSEが響き、ステージに置かれた、telephonesのライブの象徴的な存在であるミラーボールが回る。ああ、ついにまたSUPER DISCO Hits!!!を見ることができる、その場に居合わせることができるんだな、とそれだけで感慨深くもなるのだが、メンバーがステージに現れるとそんな感慨をある意味では吹っ飛ばすような驚きが。
石毛輝(ボーカル&ギター)が初期のような地味な服装にロン毛、ノブ(シンセ)も黒のVネックTシャツ、長島涼平(ベース)も柄シャツという出で立ちであり、それだけですでに「YOUNG」というバンドの若き姿を表している。
するとステージ真ん中で4人がマスクをして円陣を組み、
「「JAPAN」リリースツアーファイナル以来のduo!5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!」
とノブが普段ならステージに出てくる前にやるのであろう感じで気合いを注入。そのノブの言葉の端々からメンバーと観客の失笑が誘われるというのがYOUNGな頃のノブ-いや、それは今も全然変わらない-を感じさせてくれる。
登場時に4人が被っていたカラフルなアフロカツラを投げ飛ばすと、5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!の幕開けを告げるのは、確かにYOUNGな時代によくライブの1曲目として演奏されていた「D.A.N.C.E to the telephones!!!」。
ノブが真上に放り投げたスティックをキャッチできずに落として最前列の観客に拾ってもらうという決まらなさを見せる中、涼平が見本のように「D.A.N.C.E」を人文字で表現し、観客もそれを真似するという光景も実に久々だ。ギュウギュウのスタンディングライブよりも指定席の方がそれがやりやすいな、ということに今更ながら気付いたりする。
「Ride on time
Ride on music」
というフレーズに合わせるように、声は出せないながらも「D.A.N.C.E to the telephones!!!」の後半部分からはメンバーも暴れるように(特にノブ)演奏し、観客も踊りまくるのだが、そんな客席をさらに踊らせるディスコパンクなtelephonesのど真ん中な「DaDaDa」ではなんと石毛がまだサビじゃない部分でサビを歌ってしまうという展開に。
本人も「やっちまった!」という顔をしていたが、涼平も松本誠治(ドラム)もその姿に爆笑していただけに、それがガッカリするようなミスになるのではなくて、楽しいライブの一幕になるのはtelephonesというバンドのライブやメンバーが持つ空気あってのことだろう。だから観客もついついマスク越しに笑ってしまう。まさに
「too much trouble for everything」
なスタートとなったけれど。
「YOUNG」と題されているだけに、初期曲がメインになるようなイメージを持っていたが、一応「2005〜2011」と年代が区切られているだけに、「White Elephant」はこの「YOUNG」期に入る曲なのか、と思ってしまうが、確かに収録アルバムの「Rock Kingdom」は2011年のリリースであるだけに納得。かつてディファ有明で行われたSUPER DISCO Hits!!!でリリース前の新曲として演奏されていたな、と思い返せるのもまたこの日がSUPER DISCO Hits!!!というタイトルを冠しているライブだからである。
2010年の「We Love telephones!!!」リリース時期にはフェスなどでもよく演奏されていた「I Wanna Die」もこうしてライブで聴くのは実に久しぶりな感じがするが、当時からこんな無邪気に草原を走り回るような楽しいサウンドにこんな暗い歌詞が乗るのはなんでなんだろうか、と思っていた。それは活動休止という選択をし、そこから復活を遂げた今になって聴くからこそ、当時の石毛やメンバーの躁鬱的な心境の反映でもあったんだろうな、と思える。もちろん演奏しているのを聴いている、見ている限りは楽しいという一点に収束していくのだが。
MCでは石毛が早くもミスしたことを謝罪するも、
涼平「先に誰かミスってくれないかなと思っていた(笑)」
と、やはり久しぶりに演奏する曲が多いからこそのプレッシャーを全員が感じていたようだ。
ちなみに1人だけYOUNG期を再現している感じがしない誠治であるが、着ているTシャツが当時石毛らと共に観に行った、The PixiesのZepp Tokyoのライブで買ったものだという。その何とも形容しがたい色合いに
涼平「それは色あせまくったの?もともとその色なの?」
と突っ込まれていたが、少なくとも体型ばかりはYOUNGと言えなくなってきているし、それを自覚しているもう1人の男、石毛は当時を再現するために装着していたロン毛のカツラを「暑いから」という理由で早くも脱着。
普段からよくライブをしているZeppなどとは異なり、久しぶりのライブハウスということで、石毛がミラーボールがどこにあるのか探しながら
「ミラーボールを………ぶっ壊せ!」
と言って始まったディスコパンクな「crashed mirror ball」、この曲までもこの「YOUNG」のセトリに入るのか!と観客を驚かせた、ディズニーコンピレーションアルバムに収録された「Heigh-Ho」と、マスクをして声が出せないながらも思わず一緒に歌いたくなってしまうような曲が続く。「YOUNG」期という縛りがありながらも、本当に選曲の幅が広い。だからこそ次に何の曲が演奏されるのか全く予想がつかなくてワクワクする。
そんな中でも最もバンドの初期、デビュー作である「We are the handcraps E.P.」収録曲の「I and I」という、このかつてと同じ出で立ちで演奏されるからこそより染みるような曲へ。涼平が2コーラス目のサビを歌う中、メロディとサビの飛距離は今聴いてもぶっ飛んでいるというか、その後にリリースされた曲以上にメンバーが憧れていた洋楽的な曲の作り方をしているように感じる。でもそれがまんま洋楽のコピーにはならないのは石毛のハイトーンなボーカルなどの、telephonesだからこその要素があるからだ。見た目も味もイタリア料理であるが、ベースには醤油が使われているようなというか。
さらには「Homunculus」というこれまた初期曲が続く。まるで宇宙空間を漂っているかのような、周りに観客がいるはずなのに暗い宇宙で自分1人しかいないというような世界に没入し、サビではその宇宙空間から地球の美しさを見つめているかのような。そんな感覚をリリースから13年経った今でも感じさせてくれる曲。
ライブに行く前に久しぶりに「We are handcraps E.P.」を聴いていた。かつてメンバーも
「何の音が鳴ってるのかわからないような環境でレコーディングしていた」
と言っていたが、やはり今音源を聴くとサウンドはラフというかローファイというかチープというか、実にデビューしたばかりのインディーバンドらしい音質をしている。
もちろんだからこその良さももちろんあるのだが、その曲を今のメンバーが演奏することによって、曲のクオリティがさらに上がっている。それはバンドとしては活動していなかった期間もあったけれど、メンバーそれぞれがミュージシャンとして様々な場所で音を鳴らし、自身の腕を磨いてきたからこそだろう。何よりもノブの暴れっぷりもそうであるが、メンバー自身が心から笑いながら演奏しているように見える。こういう未来がやってきたことが本当に愛おしく感じる。
なぜか
ノブ「昔はライブハウスはトイレがほとんど和式だった」
誠治「新宿ANTIKNOCKは昔から洋式だった」
とライブハウスのトイレの話でメンバーが盛り上がりながら、このduoでツアーファイナルを行った「JAPAN」のツアーTシャツを着た男性を見つけて、Tシャツ裏のツアースケジュールを確認する一同。
その男性は、本当に昔からtelephonesのライブに行くといつもいた。名前は知らなくても、はっきりと顔は覚えている。きっとそういう人が他にもたくさんいるはずだし、もしかしたら自分もそう思われているかもしれない。そう思えるのはかつても今もこうしてtelephonesのライブにお互いに足を運び続けているから。こんな状況の世の中であっても。
「YOUNG」というタイトルでありながらも、今年リリースしたアルバム「NEW!」の曲も演奏することを宣言。それは「NEW!」の曲にメンバーが心から自信を持っており、聴き手の数だけ思い入れがある過去曲に混ざっても遜色ない曲であるという思いによるものだろう。
そうして演奏された「Light Your Fire」で我々の心をさらに燃やすように火をつけると、ノブがカウベルを打ち鳴らして踊りまくる「It's OK」という「JAPAN」収録曲へ。
今でも昔住んでいた街のCD屋で「JAPAN」を買った時のことを鮮明に覚えている。あれがtelephonesとの出会いだったから。あれから10年以上経って、お互いにいろんなことがあったけれど、さいたまスーパーアリーナのステージに立ったり、12年も経った今でもこのアルバムの曲たちに支えられ、救われているような人生になるなんて、まだあの時は思っていなかった。
2009年に「DANCE FLOOR MONSTERS」がリリースされた直後からしばらくはワンマンでもよく披露され、その際にはよく石毛が
「ズブズブ踊ろうぜ」
と言ってから演奏されていた「Jabberwocky」は今ライブで聴いた方がその言葉の意味がよくわかる。当時はもっと性急なディスコパンクが求められていた空気があったけれど、今はもっと自分自身の中に入り込んで踊れるような。この曲をそうした形で演奏できるようになったメンバーの経験や表現力も深くなったからこそ。
石毛のギターと歌始まりでノブが華麗に舞い踊るという「SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!」では曲の象徴とでも言うような享楽的なシンセサウンドが響く…と思ったら、涼平のベースの音が出ずにすぐさまエフェクターを踏み替えるという、冒頭の石毛に続くミスが起こる。その様にすぐに気付いた誠治は涼平の方を見て爆笑しながらリズムを刻み、涼平は時々顔を手で覆ったりして恥ずかしさを隠すとともに、石毛と向き合った際には冒頭でミスたのを笑ってすいません!とばかりに頭を下げる。そんなメンバーたちの姿が踊りまくる客席をさらに楽しいものに輝かせてくれる。
それでも日を追うごとに状況が悪くなる中、こうして都内のライブハウスに行くことに迷ったり、もしかしたら行くのをやめたという人もいたかもしれない。そうした人たち全員への感謝を告げながら、
「こういう状況になると、音楽は不要不急だって言われる。それでも俺たちは音楽がないと生きていけないんですわ。みんなもそうだといいな」
と石毛は語った。
本当にその通りだから、こうしてこの日ここに来たんだ。音楽がないと生きていけない、ライブがないと日々を生き抜いていく力がなくなってしまうから。telephonesの音楽や曲が好きなのはもちろんのこと、自分はtelephonesのこうした精神性に共鳴してきた。同じことを考えて生きている人間だと言うにはあまりにおこがましいけれども。だからこうしてその姿を追いかけているのかもしれない。
そんな音楽がないと生きていけない人への賛歌として、
「Music make me happy
Music make me sad」
という「Get Away」のフレーズが響く。それは楽しかったことも、活動休止という選択などキツいこともたくさんあった今のtelephonesだからこそ「NEW!」というアルバムに収録することができた曲だ。ノブと涼平によるサビのコーラスを彼らと一緒に歌えるようになるのはいつだろうか。その日が来るまでこうしてライブハウスに通っていられる人生でありたいと心から思う。
石毛がダンディな低音と、これぞtelephonesというハイトーンなボーカルを使い分ける「Beautiful Bitch」は本当に久しぶりの選曲であり、名曲しか入っていない(telephonesの作品は基本的にどれもそうだけど)telephonesの作品の中でも特にキラーチューンだらけで構成された(何よりタイトル曲からして)「Love & DISCO E.P.」の収録曲。このE.P.がリリースされた時に「これはめちゃくちゃ売れるはずだ」と思ったことを思い出すし、結果はどうあれそれは今でも間違っていないと思う。
さらには石毛のハイトーンボイスの変わらぬキレ味の鋭さをデビュー15年経っても感じさせてくれる「fu〜shit!!!」という「JAPAN」収録のレア曲から最新作の「Changes!!!」へと続く流れは、今のtelephonesの「sick rocks」はこれであるということを証明しているかのよう。この曲はBAYCAMPでも演奏されていたし、これから先もライブにおけるキラーチューンとして鳴らされていきそうな予感がしている。
そして石毛が間奏で暴れながらもギターを置いて鮮やかな体操技と変わらぬ身体能力の高さを見せつけてくれる「HABANERO」のストレートなアレンジ(昔はよくアレンジが変わっていた)で踊らせまくり、飛び跳ねさせまくると、実はこの日は1曲もやっていないディスコ曲として演奏されたのは、始まりのディスコ曲こと「urban disco」。そこには確かにこの「YOUNG」な日に演奏される意味があった。たとえ我々が「ディスコ!」と叫ぶことができなくても、ノブがいつものように客席にダイブできないからといって、ステージ上で1人でダイブしていても。
アンコールではこの日来てくれた人への先行情報公開をしてから、今回のSUPER DISCO Hits!!!のアンコールでの特別企画として、会場にいる人を1人指名して、その人がやって欲しい曲を演奏するというもの。
もともとは以前バンドがインスタライブをやった時にコメント欄に流れてきた曲をやるという企画があったのだが、あまりにも曲を覚えていないということで、今回でリベンジすることに。
この日は韓流ドラマの主人公に似ているという男性をノブが指名して、ホワイトボードにやって欲しい曲を3曲書き込む。その3曲のタイトルを見たメンバーは集まって会議をし、どの曲ならできるかをガチで話し合う。石毛は
「歌詞.netとか見ないとわからないかもしれない(笑)」
とまで言う中、この日選ばれたのは「panic disorder」。流行語にもなった大ヒット朝ドラ「あまちゃん」で主人公を務めた能年玲奈の驚いた時の
「じぇじぇじぇ!」
というセリフをあまりにも時代に先駆け過ぎてコーラスに使っていたディスコパンク曲。間違いなくこの「YOUNG」の日に演奏されるべき時期の曲なだけに、選んだ人もバンドもナイスなチョイスである。選ばれなかった「Riot!!!」も「swim,swim,swim」も聞きたかったけれど。
そんな中でもノブは
「なんかずっと焼肉の匂いがしない?」
とこの最後の最後までマイペース。確かにステージ上手のノブ側は換気をしているからか、かなり強烈な焼肉の匂い(duoの裏が焼肉屋らしい)がしていたが、ノブクラスになると、
「匂いが変わったら「ハラミ焼いてるな」って思いながら演奏していた」
と、焼いている部位までわかってしまうらしい。
そして最後に演奏されたのは、てっきり「Love & DISCO」かと思いきや、さすがそこはコアなtelephones peopleのための祭典でもあるSUPER DISCO Hits!!!である。
「「JAPAN」ツアーの初日の新宿MARZで最後にやった曲」
と、やはりYOUNG期を振り返り、そして噛み締めながら演奏されたのは「with one」。
もし自分がアンコールをリクエストできるならば、絶対に3曲の中に入れていた曲。ディスコ曲ではないtelephonesのメロディの良さ、至福感を味合わせてくれるこの曲を聴くといつも泣きそうになってしまう。それは活動休止から明けてからはなおさらだ。こうしてまたライブで大好きなこの曲を演奏しているのを見ることができているのだから。
演奏が終わると石毛が各メンバーを紹介し、観客へ手を振ったりしながらステージを去っていった。5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!はやはり最高に楽しい。初日ながら確かにそれを感じさせるとともに、あと2日もこんなライブを見れるという幸せを噛み締めていた。
こうして初期の曲をたくさん聴けて今でも嬉しいと思えるのは、ただあの頃に騒げればよかったんじゃなくて、今も自分の中で大切なバンドの大切な曲であり続けているから。
この日「Light Your Fire」の前に石毛は
「煉獄さんも言ってたよ。心に火を灯せって」
と、大ヒット中の「鬼滅の刃 無限列車編」の登場人物である、煉獄杏寿郎のセリフを引用していた。
普段はコミカルなようにも見えるが、自分たちの私欲や私腹を肥やすためではなく、人に何と言われようと自分たちにとって大切なものを守っていくために戦い続ける。もちろん大切なものとは音楽やそれにまつわる人たちのこと。telephonesはまるで煉獄さんのようなバンドだ。日本のロックシーンの炎柱。その炎は今も消えることなく燃え続けている。
1.D.A.N.C.E to the telephones!!!
2.DaDaDa
3.White Elephant
4.I Wanna Die
5.crashed mirror ball
6.Heigh-Ho
7.I and I
8.Homunculus
9.Light Your Fire
10.It's OK
11.Jabberwocky
12.SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!
13.Get Away
14.Beautiful Bitch
15.fu〜shit!!!
16.Changes!!!
17.HABANERO
18.urban disco
encore
19.panic disorder
20.with one
これまでも2daysで開催されてきた年もあったが、今年は渋谷のduo MUSIC EXCHANGEでなんと3days。しかも3日ともに曲被りがない、コンセプトがそれぞれ決められた3日間というファンにとってはたまらない3日間となる。
初日のこの日は「YOUNG」と題され、2005年から2011年までの、今から10年前までの初期の曲で構成されたライブということで、久しくライブでは聴けていないあの曲やこの曲が聴けるという期待が高まる。
検温と手だけならず足(というか靴裏)の消毒をしてから場内に入ると、決してtelephonesにとっては広いとは言えないduoの客席に椅子が敷き詰められている光景に少し驚く。今年リリースしたアルバムのお披露目ライブ的な横浜1000CLUBでも椅子があったので、指定席でtelephonesを観るということにはそこまで違和感を感じてはいないが、キャパが全然違うだけに。
19時を少し過ぎたあたりで場内が暗転すると、おなじみ「Happiness, Happiness, Happiness」のSEが響き、ステージに置かれた、telephonesのライブの象徴的な存在であるミラーボールが回る。ああ、ついにまたSUPER DISCO Hits!!!を見ることができる、その場に居合わせることができるんだな、とそれだけで感慨深くもなるのだが、メンバーがステージに現れるとそんな感慨をある意味では吹っ飛ばすような驚きが。
石毛輝(ボーカル&ギター)が初期のような地味な服装にロン毛、ノブ(シンセ)も黒のVネックTシャツ、長島涼平(ベース)も柄シャツという出で立ちであり、それだけですでに「YOUNG」というバンドの若き姿を表している。
するとステージ真ん中で4人がマスクをして円陣を組み、
「「JAPAN」リリースツアーファイナル以来のduo!5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!」
とノブが普段ならステージに出てくる前にやるのであろう感じで気合いを注入。そのノブの言葉の端々からメンバーと観客の失笑が誘われるというのがYOUNGな頃のノブ-いや、それは今も全然変わらない-を感じさせてくれる。
登場時に4人が被っていたカラフルなアフロカツラを投げ飛ばすと、5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!の幕開けを告げるのは、確かにYOUNGな時代によくライブの1曲目として演奏されていた「D.A.N.C.E to the telephones!!!」。
ノブが真上に放り投げたスティックをキャッチできずに落として最前列の観客に拾ってもらうという決まらなさを見せる中、涼平が見本のように「D.A.N.C.E」を人文字で表現し、観客もそれを真似するという光景も実に久々だ。ギュウギュウのスタンディングライブよりも指定席の方がそれがやりやすいな、ということに今更ながら気付いたりする。
「Ride on time
Ride on music」
というフレーズに合わせるように、声は出せないながらも「D.A.N.C.E to the telephones!!!」の後半部分からはメンバーも暴れるように(特にノブ)演奏し、観客も踊りまくるのだが、そんな客席をさらに踊らせるディスコパンクなtelephonesのど真ん中な「DaDaDa」ではなんと石毛がまだサビじゃない部分でサビを歌ってしまうという展開に。
本人も「やっちまった!」という顔をしていたが、涼平も松本誠治(ドラム)もその姿に爆笑していただけに、それがガッカリするようなミスになるのではなくて、楽しいライブの一幕になるのはtelephonesというバンドのライブやメンバーが持つ空気あってのことだろう。だから観客もついついマスク越しに笑ってしまう。まさに
「too much trouble for everything」
なスタートとなったけれど。
「YOUNG」と題されているだけに、初期曲がメインになるようなイメージを持っていたが、一応「2005〜2011」と年代が区切られているだけに、「White Elephant」はこの「YOUNG」期に入る曲なのか、と思ってしまうが、確かに収録アルバムの「Rock Kingdom」は2011年のリリースであるだけに納得。かつてディファ有明で行われたSUPER DISCO Hits!!!でリリース前の新曲として演奏されていたな、と思い返せるのもまたこの日がSUPER DISCO Hits!!!というタイトルを冠しているライブだからである。
2010年の「We Love telephones!!!」リリース時期にはフェスなどでもよく演奏されていた「I Wanna Die」もこうしてライブで聴くのは実に久しぶりな感じがするが、当時からこんな無邪気に草原を走り回るような楽しいサウンドにこんな暗い歌詞が乗るのはなんでなんだろうか、と思っていた。それは活動休止という選択をし、そこから復活を遂げた今になって聴くからこそ、当時の石毛やメンバーの躁鬱的な心境の反映でもあったんだろうな、と思える。もちろん演奏しているのを聴いている、見ている限りは楽しいという一点に収束していくのだが。
MCでは石毛が早くもミスしたことを謝罪するも、
涼平「先に誰かミスってくれないかなと思っていた(笑)」
と、やはり久しぶりに演奏する曲が多いからこそのプレッシャーを全員が感じていたようだ。
ちなみに1人だけYOUNG期を再現している感じがしない誠治であるが、着ているTシャツが当時石毛らと共に観に行った、The PixiesのZepp Tokyoのライブで買ったものだという。その何とも形容しがたい色合いに
涼平「それは色あせまくったの?もともとその色なの?」
と突っ込まれていたが、少なくとも体型ばかりはYOUNGと言えなくなってきているし、それを自覚しているもう1人の男、石毛は当時を再現するために装着していたロン毛のカツラを「暑いから」という理由で早くも脱着。
普段からよくライブをしているZeppなどとは異なり、久しぶりのライブハウスということで、石毛がミラーボールがどこにあるのか探しながら
「ミラーボールを………ぶっ壊せ!」
と言って始まったディスコパンクな「crashed mirror ball」、この曲までもこの「YOUNG」のセトリに入るのか!と観客を驚かせた、ディズニーコンピレーションアルバムに収録された「Heigh-Ho」と、マスクをして声が出せないながらも思わず一緒に歌いたくなってしまうような曲が続く。「YOUNG」期という縛りがありながらも、本当に選曲の幅が広い。だからこそ次に何の曲が演奏されるのか全く予想がつかなくてワクワクする。
そんな中でも最もバンドの初期、デビュー作である「We are the handcraps E.P.」収録曲の「I and I」という、このかつてと同じ出で立ちで演奏されるからこそより染みるような曲へ。涼平が2コーラス目のサビを歌う中、メロディとサビの飛距離は今聴いてもぶっ飛んでいるというか、その後にリリースされた曲以上にメンバーが憧れていた洋楽的な曲の作り方をしているように感じる。でもそれがまんま洋楽のコピーにはならないのは石毛のハイトーンなボーカルなどの、telephonesだからこその要素があるからだ。見た目も味もイタリア料理であるが、ベースには醤油が使われているようなというか。
さらには「Homunculus」というこれまた初期曲が続く。まるで宇宙空間を漂っているかのような、周りに観客がいるはずなのに暗い宇宙で自分1人しかいないというような世界に没入し、サビではその宇宙空間から地球の美しさを見つめているかのような。そんな感覚をリリースから13年経った今でも感じさせてくれる曲。
ライブに行く前に久しぶりに「We are handcraps E.P.」を聴いていた。かつてメンバーも
「何の音が鳴ってるのかわからないような環境でレコーディングしていた」
と言っていたが、やはり今音源を聴くとサウンドはラフというかローファイというかチープというか、実にデビューしたばかりのインディーバンドらしい音質をしている。
もちろんだからこその良さももちろんあるのだが、その曲を今のメンバーが演奏することによって、曲のクオリティがさらに上がっている。それはバンドとしては活動していなかった期間もあったけれど、メンバーそれぞれがミュージシャンとして様々な場所で音を鳴らし、自身の腕を磨いてきたからこそだろう。何よりもノブの暴れっぷりもそうであるが、メンバー自身が心から笑いながら演奏しているように見える。こういう未来がやってきたことが本当に愛おしく感じる。
なぜか
ノブ「昔はライブハウスはトイレがほとんど和式だった」
誠治「新宿ANTIKNOCKは昔から洋式だった」
とライブハウスのトイレの話でメンバーが盛り上がりながら、このduoでツアーファイナルを行った「JAPAN」のツアーTシャツを着た男性を見つけて、Tシャツ裏のツアースケジュールを確認する一同。
その男性は、本当に昔からtelephonesのライブに行くといつもいた。名前は知らなくても、はっきりと顔は覚えている。きっとそういう人が他にもたくさんいるはずだし、もしかしたら自分もそう思われているかもしれない。そう思えるのはかつても今もこうしてtelephonesのライブにお互いに足を運び続けているから。こんな状況の世の中であっても。
「YOUNG」というタイトルでありながらも、今年リリースしたアルバム「NEW!」の曲も演奏することを宣言。それは「NEW!」の曲にメンバーが心から自信を持っており、聴き手の数だけ思い入れがある過去曲に混ざっても遜色ない曲であるという思いによるものだろう。
そうして演奏された「Light Your Fire」で我々の心をさらに燃やすように火をつけると、ノブがカウベルを打ち鳴らして踊りまくる「It's OK」という「JAPAN」収録曲へ。
今でも昔住んでいた街のCD屋で「JAPAN」を買った時のことを鮮明に覚えている。あれがtelephonesとの出会いだったから。あれから10年以上経って、お互いにいろんなことがあったけれど、さいたまスーパーアリーナのステージに立ったり、12年も経った今でもこのアルバムの曲たちに支えられ、救われているような人生になるなんて、まだあの時は思っていなかった。
2009年に「DANCE FLOOR MONSTERS」がリリースされた直後からしばらくはワンマンでもよく披露され、その際にはよく石毛が
「ズブズブ踊ろうぜ」
と言ってから演奏されていた「Jabberwocky」は今ライブで聴いた方がその言葉の意味がよくわかる。当時はもっと性急なディスコパンクが求められていた空気があったけれど、今はもっと自分自身の中に入り込んで踊れるような。この曲をそうした形で演奏できるようになったメンバーの経験や表現力も深くなったからこそ。
石毛のギターと歌始まりでノブが華麗に舞い踊るという「SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!」では曲の象徴とでも言うような享楽的なシンセサウンドが響く…と思ったら、涼平のベースの音が出ずにすぐさまエフェクターを踏み替えるという、冒頭の石毛に続くミスが起こる。その様にすぐに気付いた誠治は涼平の方を見て爆笑しながらリズムを刻み、涼平は時々顔を手で覆ったりして恥ずかしさを隠すとともに、石毛と向き合った際には冒頭でミスたのを笑ってすいません!とばかりに頭を下げる。そんなメンバーたちの姿が踊りまくる客席をさらに楽しいものに輝かせてくれる。
それでも日を追うごとに状況が悪くなる中、こうして都内のライブハウスに行くことに迷ったり、もしかしたら行くのをやめたという人もいたかもしれない。そうした人たち全員への感謝を告げながら、
「こういう状況になると、音楽は不要不急だって言われる。それでも俺たちは音楽がないと生きていけないんですわ。みんなもそうだといいな」
と石毛は語った。
本当にその通りだから、こうしてこの日ここに来たんだ。音楽がないと生きていけない、ライブがないと日々を生き抜いていく力がなくなってしまうから。telephonesの音楽や曲が好きなのはもちろんのこと、自分はtelephonesのこうした精神性に共鳴してきた。同じことを考えて生きている人間だと言うにはあまりにおこがましいけれども。だからこうしてその姿を追いかけているのかもしれない。
そんな音楽がないと生きていけない人への賛歌として、
「Music make me happy
Music make me sad」
という「Get Away」のフレーズが響く。それは楽しかったことも、活動休止という選択などキツいこともたくさんあった今のtelephonesだからこそ「NEW!」というアルバムに収録することができた曲だ。ノブと涼平によるサビのコーラスを彼らと一緒に歌えるようになるのはいつだろうか。その日が来るまでこうしてライブハウスに通っていられる人生でありたいと心から思う。
石毛がダンディな低音と、これぞtelephonesというハイトーンなボーカルを使い分ける「Beautiful Bitch」は本当に久しぶりの選曲であり、名曲しか入っていない(telephonesの作品は基本的にどれもそうだけど)telephonesの作品の中でも特にキラーチューンだらけで構成された(何よりタイトル曲からして)「Love & DISCO E.P.」の収録曲。このE.P.がリリースされた時に「これはめちゃくちゃ売れるはずだ」と思ったことを思い出すし、結果はどうあれそれは今でも間違っていないと思う。
さらには石毛のハイトーンボイスの変わらぬキレ味の鋭さをデビュー15年経っても感じさせてくれる「fu〜shit!!!」という「JAPAN」収録のレア曲から最新作の「Changes!!!」へと続く流れは、今のtelephonesの「sick rocks」はこれであるということを証明しているかのよう。この曲はBAYCAMPでも演奏されていたし、これから先もライブにおけるキラーチューンとして鳴らされていきそうな予感がしている。
そして石毛が間奏で暴れながらもギターを置いて鮮やかな体操技と変わらぬ身体能力の高さを見せつけてくれる「HABANERO」のストレートなアレンジ(昔はよくアレンジが変わっていた)で踊らせまくり、飛び跳ねさせまくると、実はこの日は1曲もやっていないディスコ曲として演奏されたのは、始まりのディスコ曲こと「urban disco」。そこには確かにこの「YOUNG」な日に演奏される意味があった。たとえ我々が「ディスコ!」と叫ぶことができなくても、ノブがいつものように客席にダイブできないからといって、ステージ上で1人でダイブしていても。
アンコールではこの日来てくれた人への先行情報公開をしてから、今回のSUPER DISCO Hits!!!のアンコールでの特別企画として、会場にいる人を1人指名して、その人がやって欲しい曲を演奏するというもの。
もともとは以前バンドがインスタライブをやった時にコメント欄に流れてきた曲をやるという企画があったのだが、あまりにも曲を覚えていないということで、今回でリベンジすることに。
この日は韓流ドラマの主人公に似ているという男性をノブが指名して、ホワイトボードにやって欲しい曲を3曲書き込む。その3曲のタイトルを見たメンバーは集まって会議をし、どの曲ならできるかをガチで話し合う。石毛は
「歌詞.netとか見ないとわからないかもしれない(笑)」
とまで言う中、この日選ばれたのは「panic disorder」。流行語にもなった大ヒット朝ドラ「あまちゃん」で主人公を務めた能年玲奈の驚いた時の
「じぇじぇじぇ!」
というセリフをあまりにも時代に先駆け過ぎてコーラスに使っていたディスコパンク曲。間違いなくこの「YOUNG」の日に演奏されるべき時期の曲なだけに、選んだ人もバンドもナイスなチョイスである。選ばれなかった「Riot!!!」も「swim,swim,swim」も聞きたかったけれど。
そんな中でもノブは
「なんかずっと焼肉の匂いがしない?」
とこの最後の最後までマイペース。確かにステージ上手のノブ側は換気をしているからか、かなり強烈な焼肉の匂い(duoの裏が焼肉屋らしい)がしていたが、ノブクラスになると、
「匂いが変わったら「ハラミ焼いてるな」って思いながら演奏していた」
と、焼いている部位までわかってしまうらしい。
そして最後に演奏されたのは、てっきり「Love & DISCO」かと思いきや、さすがそこはコアなtelephones peopleのための祭典でもあるSUPER DISCO Hits!!!である。
「「JAPAN」ツアーの初日の新宿MARZで最後にやった曲」
と、やはりYOUNG期を振り返り、そして噛み締めながら演奏されたのは「with one」。
もし自分がアンコールをリクエストできるならば、絶対に3曲の中に入れていた曲。ディスコ曲ではないtelephonesのメロディの良さ、至福感を味合わせてくれるこの曲を聴くといつも泣きそうになってしまう。それは活動休止から明けてからはなおさらだ。こうしてまたライブで大好きなこの曲を演奏しているのを見ることができているのだから。
演奏が終わると石毛が各メンバーを紹介し、観客へ手を振ったりしながらステージを去っていった。5年ぶりのSUPER DISCO Hits!!!はやはり最高に楽しい。初日ながら確かにそれを感じさせるとともに、あと2日もこんなライブを見れるという幸せを噛み締めていた。
こうして初期の曲をたくさん聴けて今でも嬉しいと思えるのは、ただあの頃に騒げればよかったんじゃなくて、今も自分の中で大切なバンドの大切な曲であり続けているから。
この日「Light Your Fire」の前に石毛は
「煉獄さんも言ってたよ。心に火を灯せって」
と、大ヒット中の「鬼滅の刃 無限列車編」の登場人物である、煉獄杏寿郎のセリフを引用していた。
普段はコミカルなようにも見えるが、自分たちの私欲や私腹を肥やすためではなく、人に何と言われようと自分たちにとって大切なものを守っていくために戦い続ける。もちろん大切なものとは音楽やそれにまつわる人たちのこと。telephonesはまるで煉獄さんのようなバンドだ。日本のロックシーンの炎柱。その炎は今も消えることなく燃え続けている。
1.D.A.N.C.E to the telephones!!!
2.DaDaDa
3.White Elephant
4.I Wanna Die
5.crashed mirror ball
6.Heigh-Ho
7.I and I
8.Homunculus
9.Light Your Fire
10.It's OK
11.Jabberwocky
12.SAITAMA DANCE MIRROR BALLERS!!!
13.Get Away
14.Beautiful Bitch
15.fu〜shit!!!
16.Changes!!!
17.HABANERO
18.urban disco
encore
19.panic disorder
20.with one
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キュウソネコカミ 東名阪神 ワンマンツアー「キュウキョネコカミ 〜わるあがき〜」 @新木場STUDIO COAST 12/15