優しさで救われるような世界で在ってほしいな 〜Mrs. GREEN APPLEの5人を見てきた5年間〜
- 2020/07/09
- 20:59
高校生の頃からずっとrockin' on JAPANを読んでいるのだが、「NEW COMER!」という新人紹介コーナーに載るアーティストは毎回必ず曲をチェックするようにしている。
もちろんそこに載る全てのアーティストの曲が自分にハマるわけではないし、そのタイミングで聴いてそれっきり、というアーティストもたくさんいる。
そんな中で2015年2月、ミニアルバム「Progressive」リリース時にそのコーナーで紹介された、Mrs. GREEN APPLEは一聴して衝撃を受ける出会いだった。
「Progressive」はサウンド自体はストレートなギターロック。しかし大森元貴の歌唱力、バンドの演奏力とアレンジ、それらの複合による完成度の高さとバンドから漲る瑞々しさはいわゆるスタンダードなギターロックバンドとは全く違って聴こえた。
何よりも大森の描く、彼の持つ死生観を強く感じさせる歌詞は当時の彼が18歳であることを知ってあまりに驚いてしまった。一体どんな人生を歩んできたらこんな歌詞が書ける18歳になれるのかと。
その歌詞に関しては後に大森のこれまでの人生についてのインタビューを読んで納得のいく部分もあったが、それでもやはり彼よりも長い年月を生きてきた己の人生がいかに何にも考えていなかったものかと痛感させられるくらいに、語彙力や裏側に含まれているであろう意味を含めて、ミセスの歌詞は本当に衝撃的だった。
その衝撃に突き動かされるようにすぐさますでにリリースされていた「Introduction」を購入し(収録曲は後に再収録されることになるが、メジャーデビュー後には早くも手に入れることが出来なくなり、たくさんのファンの方々が欲しがっているのをよく見た)、彼らのライブに足を運ぶようになる。
初めての彼らのライブは2015年3月26日の新代田FEVERでの自主企画ライブ。ARCHAIC RAG STORE、Chapter Lineというインディーズ期のミセスがよく対バンしていた2組を迎えてのライブはすでに超満員であったが、その後に見るライブとこの日が少し違ったのは、まだそこまで観客が若い人ばかりではなかったということ。今になって思うと自分よりはるかに年上の人が多かったのはメンバーの親だったのかもしれないが。
そのライブ(自分の書いたレポ: http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-168.html)で音源で聴いた時の完成度の高さをさらに上回るようなライブの素晴らしさに完全に撃ち抜かれてしまった。大森のあまりにもうますぎるボーカルとメンバーの演奏。大森の歌はこの後にさらに超絶進化していくことになるのだが、全てが10代の少年を中心にしたバンドのクオリティとは思えないものだった。
その演奏が素晴らしかったのは、大森という唯一無二のボーカリストがいるにもかかわらず1人も埋もれることのないキャラクターの強さを持ったメンバー個々の演奏力の高さはもちろん、後にメンバーが課題に挙げることになる「アンサンブルの強さ」だった。
(だからこそ「ENSEMBLE」で「アンサンブルが弱いよね」と大森が言っていた時は「どこがだよ!めちゃ強いじゃん!」とツッコミを入れたものだが、大森の思い描く理想とはこの時はまだ遠かったのだろう)
「元貴の歌詞をメンバー全員で読み込んで、意味や思いを理解してからレコーディングするようにしている」
ということを常にメンバー全員で行っているからこそ、全員が同じ気持ちを持って音を鳴らすことができるし、温度差がそれぞれにない。
自分はそこまで曲や歌詞を全員で共有しているというバンドを他に知らないし、それこそがミセスのアンサンブルを強靭なものにしているのだと思った。
この日はタイミング的には「Progressive」のリリースライブであり、セトリも「Progressive」と「Introduction」をメインとしたものであったが、この時にすでに後に「TWELVE」に収録されることになる「愛情と矛先」、さらにはこの日のアンコールにメジャーデビューを発表し、そのリード曲になる「StaRt」も演奏されたが、「Progressive」と「Introduction」だけでも名曲しかないのに、さらにこのクオリティの未発表曲がある。一体このバンドはなんなんだろうか。こんな小さいライブハウスなのに、すでにアリーナでワンマンをやっている姿が簡単に頭の中に思い描ける。あまりにもとんでもないバンドすぎるんじゃないだろうか。その1日だけでそこまで思わされた。だからこそ、それからもライブに通い続けることになったのだ。
そんなミセスの初のワンマンはその年の9月の渋谷WWWだった。まだメジャーデビュー直後とはいえ、バンドの力と曲のクオリティからしたらもう2,3段飛ばしで大きい会場でやってもいいとも思っていたけれど、ミセスは今に至るまでずっと一歩ずつ階段を登ってきた。だからこそ我々はミセスの立ついろんな景色を見ることができたのだ。
そのワンマンのライブ後。普段ならごった返すドリンクカウンターはガラガラだった。あれ?と思っていたが、すぐに気付いた。観客はほとんどが未成年であり、みんなペットボトルの水をもらってすぐにカウンターから離れていたのであり、アルコールを注文して注いでもらう年齢の人が全くいなかったのである。そこで自分はミセスの客層がそれまでに自分が足を運んでいたものとは違うことに気付いたのだった。
(そのライブの写真撮影にバッチリ映ってしまっており、実に申し訳ない気持ちになった)
その客層はワンマン以外の場所でも強く実感することがあった。初出演のWING TENT以降、毎年ステージを大きくしていき、バンドにとっては最もホームなフェスと言える存在である、ROCK IN JAPAN FES.。
「サママ・フェスティバル!」で機材トラブルによって同期の音が出なくなるというハプニングに見舞われた、SOUND OF FOREST出演時から、様々なアーティストが出演するフェスにおいてもミセスの時間は客層が違っていた。
ほとんどが高校生や、もしかしたら中学生かもしれないくらいの若い人たち。その人たちはきっと、ミセスを見たくてこのフェスに来た人たち。自分の好きなバンドを追ってこうしてロックフェスに足を運ぶことができて、いろんなアーティストのライブに触れることができる。
自分がその年代のときはまだフェス勃興期であり、そんなことができるなんて考えたこともなかった。しかもそこで自分たち世代のサマーチューンを生で聴くことができている。自分が今その年代だったなら…そう考えれば考えるほど、少し年上のミセスを追える人たちが羨ましくて仕方がなかった。
しかしその客層の若さも含めて、ミセスはナメられることが多くなってきていた。
「メジャーデビューしてポップになった」
「子供向けのバンドだ」
そんな言葉を何回も見たり聞いたりした。実際にワン・ダイレクションなどの、いわゆる「ティーン・ポップ」と呼ばれていた音楽に影響を受けて大胆に音楽性の変化を見せた、セルフタイトルアルバム以降はより一層そういった声を聞くようになった。
しかし大森は西日に強く照らされたロッキンのLAKE STAGEに出演した際に、
「そう言っている人は今までMrs. GREEN APPLEの何を見てきたんだ!」
と珍しく語気を強めてステージ上から口にした。音楽性は変われど、バンドの芯の部分は変わっていないし、同じことを繰り返すつもりもない。ただその時に自分たちのやりたいことをとことん突き詰めながらも、絶対に妥協しない。それは今に至るまでミセスがずっと貫き続けてきたスタンスである。
そうしてミセスはホール、さらにはアリーナとワンマンのステージが大きくなっていく。ロッキンでも数々の伝説的なライブを生み出してきたLAKE STAGEのトリを務めて自分たちも伝説の系譜に名を連ね、翌年からはメインステージであるGRASS STAGEに立つことになる。WING TENTでの初出演から長い年月が経ったが、それもまた一歩ずつ確実に進んできたからこそ、いろんなステージのいろんな時間帯でのミセスのライブを見ることができた。
それはまさに「大好きなモノがどんどん増えてく!」、「忘れたくないなぁ」を増やしていく過程そのものであり、夜のLAKE STAGEとついに辿り着いたGRASS STAGEは「僕らの夏」そのものだった。だからこそロッキンでのミセスのライブは今も全て忘れられないものだったのだ。
そして今年、デビュー5周年を迎えたミセスは初のアリーナツアー「エデンの園」を開催し、先日初のベストアルバム「5」をリリースする。
とはいえ、少し妙だったのは、ベストアルバムのリリースが発表されても、それに伴うライブが発表されなかったこと。というよりも「エデンの園」がセトリや演出も含めて紛れもなくベスト的な内容のツアーになっていたこと。
そして昨日、ミセスは活動休止を発表した。事務所から独立して新しく、自分たちで活動していくための準備期間としての活動休止。だから少しの間だけ会えないだけ。アリーナにまで到達しても、まだまだやりたいことや、自分たちが思い描く景色がある。そのために敢えて安定した状況から飛び出して、想像もつかないような場所へ歩き出していく。いつも驚かされてきたミセスにまたしても驚かされてしまった。それはきっとこれからもそうなんだろう。我々なんかじゃ予想できないようなことを思いついて、それを実行するために動く。でもきっと、それは大森少年がずっと昔から思い描いてきたことなんだろう。
でもそのニュースを聞いてから改めて「5」の最後に収録された新曲「Theater」を聞くと、他の曲とは違うことに気づく。この曲にコーラスで参加しているのは、マネージャーやスタッフなど、メジャーデビュー以降のミセスを支え続けてきた人たち。
他の曲では弦楽器の専門家を招いて曲の完成度の高さを何よりも優先してきたミセスが初めてそれよりも優先したもの。それはこの5年間を共に過ごしてきた人たちへの愛情だった。ずっとミセスのことを追ってきたフォロワーさんから教えていただいたのだが、「Theater」というタイトルも彼らがこれまで所属してきた事務所「テアトル」のアナグラムであるらしい。その人たちと作る最後の曲。それが収められているということが、バンドが口にしてきた「フェーズ1」終了の何よりの証明だった。
もちろん、インタビューなどでは特に藤澤は葛藤や苦悩を正直に吐露することもあったけれど、ステージに立つミセスのメンバーの姿はいつもキラキラしていた。
それよりもそのメンバーの姿を客席から見るファンの目がキラキラしていた。憧れの存在、人生の指針となる存在が自分の目に映っていることを心から喜んでいるような。
自分はそんなミセスのファンの目や表情を見るのが好きだった。自分が忘れてしまっていたり、もしかしたら失くしてしまっているかもしれないようなものを、彼ら彼女らの目や表情からいつも感じてきたから。その姿を見るたびに、自分も少しだけ音楽へ向かう純粋さを取り戻せたような気がしていた。
きっと、ミセスはすぐに帰ってくる。これは体制が整うまでに便宜上使用する意味での「活動休止」であり、きっとアーティストによっては「独立」とだけ発表することですぐには活動しないことを読み取らせることによって、わざわざ休止とは言わないパターンも多いからだ。
(それでもあえて「活動休止」と、少しの間は表立った活動をしないことをしっかりと伝えるあたりにミセスのメンバーや関わっている人たちの誠実さを感じる)
ただ、まだ帰ってくる日がいつになるかはわからない。そもそも、早く帰ってきたところで以前までのようにライブが見れるかどうかわからないような世の中の状況になってしまっている。
(だからこそある意味ではこのタイミングであることもミセスは「持ってるな」とも思う)
それでも、ミセスのメンバーやこれまでにバンドを支えてきてくれた人たち、そしてバンドの歌詞や言葉を自身の生きる指針にしてきたであろうファンの人たちはこれから先の活動や人生を、笑顔であってほしいな。
もちろんそこに載る全てのアーティストの曲が自分にハマるわけではないし、そのタイミングで聴いてそれっきり、というアーティストもたくさんいる。
そんな中で2015年2月、ミニアルバム「Progressive」リリース時にそのコーナーで紹介された、Mrs. GREEN APPLEは一聴して衝撃を受ける出会いだった。
「Progressive」はサウンド自体はストレートなギターロック。しかし大森元貴の歌唱力、バンドの演奏力とアレンジ、それらの複合による完成度の高さとバンドから漲る瑞々しさはいわゆるスタンダードなギターロックバンドとは全く違って聴こえた。
何よりも大森の描く、彼の持つ死生観を強く感じさせる歌詞は当時の彼が18歳であることを知ってあまりに驚いてしまった。一体どんな人生を歩んできたらこんな歌詞が書ける18歳になれるのかと。
その歌詞に関しては後に大森のこれまでの人生についてのインタビューを読んで納得のいく部分もあったが、それでもやはり彼よりも長い年月を生きてきた己の人生がいかに何にも考えていなかったものかと痛感させられるくらいに、語彙力や裏側に含まれているであろう意味を含めて、ミセスの歌詞は本当に衝撃的だった。
その衝撃に突き動かされるようにすぐさますでにリリースされていた「Introduction」を購入し(収録曲は後に再収録されることになるが、メジャーデビュー後には早くも手に入れることが出来なくなり、たくさんのファンの方々が欲しがっているのをよく見た)、彼らのライブに足を運ぶようになる。
初めての彼らのライブは2015年3月26日の新代田FEVERでの自主企画ライブ。ARCHAIC RAG STORE、Chapter Lineというインディーズ期のミセスがよく対バンしていた2組を迎えてのライブはすでに超満員であったが、その後に見るライブとこの日が少し違ったのは、まだそこまで観客が若い人ばかりではなかったということ。今になって思うと自分よりはるかに年上の人が多かったのはメンバーの親だったのかもしれないが。
そのライブ(自分の書いたレポ: http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-168.html)で音源で聴いた時の完成度の高さをさらに上回るようなライブの素晴らしさに完全に撃ち抜かれてしまった。大森のあまりにもうますぎるボーカルとメンバーの演奏。大森の歌はこの後にさらに超絶進化していくことになるのだが、全てが10代の少年を中心にしたバンドのクオリティとは思えないものだった。
その演奏が素晴らしかったのは、大森という唯一無二のボーカリストがいるにもかかわらず1人も埋もれることのないキャラクターの強さを持ったメンバー個々の演奏力の高さはもちろん、後にメンバーが課題に挙げることになる「アンサンブルの強さ」だった。
(だからこそ「ENSEMBLE」で「アンサンブルが弱いよね」と大森が言っていた時は「どこがだよ!めちゃ強いじゃん!」とツッコミを入れたものだが、大森の思い描く理想とはこの時はまだ遠かったのだろう)
「元貴の歌詞をメンバー全員で読み込んで、意味や思いを理解してからレコーディングするようにしている」
ということを常にメンバー全員で行っているからこそ、全員が同じ気持ちを持って音を鳴らすことができるし、温度差がそれぞれにない。
自分はそこまで曲や歌詞を全員で共有しているというバンドを他に知らないし、それこそがミセスのアンサンブルを強靭なものにしているのだと思った。
この日はタイミング的には「Progressive」のリリースライブであり、セトリも「Progressive」と「Introduction」をメインとしたものであったが、この時にすでに後に「TWELVE」に収録されることになる「愛情と矛先」、さらにはこの日のアンコールにメジャーデビューを発表し、そのリード曲になる「StaRt」も演奏されたが、「Progressive」と「Introduction」だけでも名曲しかないのに、さらにこのクオリティの未発表曲がある。一体このバンドはなんなんだろうか。こんな小さいライブハウスなのに、すでにアリーナでワンマンをやっている姿が簡単に頭の中に思い描ける。あまりにもとんでもないバンドすぎるんじゃないだろうか。その1日だけでそこまで思わされた。だからこそ、それからもライブに通い続けることになったのだ。
そんなミセスの初のワンマンはその年の9月の渋谷WWWだった。まだメジャーデビュー直後とはいえ、バンドの力と曲のクオリティからしたらもう2,3段飛ばしで大きい会場でやってもいいとも思っていたけれど、ミセスは今に至るまでずっと一歩ずつ階段を登ってきた。だからこそ我々はミセスの立ついろんな景色を見ることができたのだ。
そのワンマンのライブ後。普段ならごった返すドリンクカウンターはガラガラだった。あれ?と思っていたが、すぐに気付いた。観客はほとんどが未成年であり、みんなペットボトルの水をもらってすぐにカウンターから離れていたのであり、アルコールを注文して注いでもらう年齢の人が全くいなかったのである。そこで自分はミセスの客層がそれまでに自分が足を運んでいたものとは違うことに気付いたのだった。
(そのライブの写真撮影にバッチリ映ってしまっており、実に申し訳ない気持ちになった)
その客層はワンマン以外の場所でも強く実感することがあった。初出演のWING TENT以降、毎年ステージを大きくしていき、バンドにとっては最もホームなフェスと言える存在である、ROCK IN JAPAN FES.。
「サママ・フェスティバル!」で機材トラブルによって同期の音が出なくなるというハプニングに見舞われた、SOUND OF FOREST出演時から、様々なアーティストが出演するフェスにおいてもミセスの時間は客層が違っていた。
ほとんどが高校生や、もしかしたら中学生かもしれないくらいの若い人たち。その人たちはきっと、ミセスを見たくてこのフェスに来た人たち。自分の好きなバンドを追ってこうしてロックフェスに足を運ぶことができて、いろんなアーティストのライブに触れることができる。
自分がその年代のときはまだフェス勃興期であり、そんなことができるなんて考えたこともなかった。しかもそこで自分たち世代のサマーチューンを生で聴くことができている。自分が今その年代だったなら…そう考えれば考えるほど、少し年上のミセスを追える人たちが羨ましくて仕方がなかった。
しかしその客層の若さも含めて、ミセスはナメられることが多くなってきていた。
「メジャーデビューしてポップになった」
「子供向けのバンドだ」
そんな言葉を何回も見たり聞いたりした。実際にワン・ダイレクションなどの、いわゆる「ティーン・ポップ」と呼ばれていた音楽に影響を受けて大胆に音楽性の変化を見せた、セルフタイトルアルバム以降はより一層そういった声を聞くようになった。
しかし大森は西日に強く照らされたロッキンのLAKE STAGEに出演した際に、
「そう言っている人は今までMrs. GREEN APPLEの何を見てきたんだ!」
と珍しく語気を強めてステージ上から口にした。音楽性は変われど、バンドの芯の部分は変わっていないし、同じことを繰り返すつもりもない。ただその時に自分たちのやりたいことをとことん突き詰めながらも、絶対に妥協しない。それは今に至るまでミセスがずっと貫き続けてきたスタンスである。
そうしてミセスはホール、さらにはアリーナとワンマンのステージが大きくなっていく。ロッキンでも数々の伝説的なライブを生み出してきたLAKE STAGEのトリを務めて自分たちも伝説の系譜に名を連ね、翌年からはメインステージであるGRASS STAGEに立つことになる。WING TENTでの初出演から長い年月が経ったが、それもまた一歩ずつ確実に進んできたからこそ、いろんなステージのいろんな時間帯でのミセスのライブを見ることができた。
それはまさに「大好きなモノがどんどん増えてく!」、「忘れたくないなぁ」を増やしていく過程そのものであり、夜のLAKE STAGEとついに辿り着いたGRASS STAGEは「僕らの夏」そのものだった。だからこそロッキンでのミセスのライブは今も全て忘れられないものだったのだ。
そして今年、デビュー5周年を迎えたミセスは初のアリーナツアー「エデンの園」を開催し、先日初のベストアルバム「5」をリリースする。
とはいえ、少し妙だったのは、ベストアルバムのリリースが発表されても、それに伴うライブが発表されなかったこと。というよりも「エデンの園」がセトリや演出も含めて紛れもなくベスト的な内容のツアーになっていたこと。
そして昨日、ミセスは活動休止を発表した。事務所から独立して新しく、自分たちで活動していくための準備期間としての活動休止。だから少しの間だけ会えないだけ。アリーナにまで到達しても、まだまだやりたいことや、自分たちが思い描く景色がある。そのために敢えて安定した状況から飛び出して、想像もつかないような場所へ歩き出していく。いつも驚かされてきたミセスにまたしても驚かされてしまった。それはきっとこれからもそうなんだろう。我々なんかじゃ予想できないようなことを思いついて、それを実行するために動く。でもきっと、それは大森少年がずっと昔から思い描いてきたことなんだろう。
でもそのニュースを聞いてから改めて「5」の最後に収録された新曲「Theater」を聞くと、他の曲とは違うことに気づく。この曲にコーラスで参加しているのは、マネージャーやスタッフなど、メジャーデビュー以降のミセスを支え続けてきた人たち。
他の曲では弦楽器の専門家を招いて曲の完成度の高さを何よりも優先してきたミセスが初めてそれよりも優先したもの。それはこの5年間を共に過ごしてきた人たちへの愛情だった。ずっとミセスのことを追ってきたフォロワーさんから教えていただいたのだが、「Theater」というタイトルも彼らがこれまで所属してきた事務所「テアトル」のアナグラムであるらしい。その人たちと作る最後の曲。それが収められているということが、バンドが口にしてきた「フェーズ1」終了の何よりの証明だった。
もちろん、インタビューなどでは特に藤澤は葛藤や苦悩を正直に吐露することもあったけれど、ステージに立つミセスのメンバーの姿はいつもキラキラしていた。
それよりもそのメンバーの姿を客席から見るファンの目がキラキラしていた。憧れの存在、人生の指針となる存在が自分の目に映っていることを心から喜んでいるような。
自分はそんなミセスのファンの目や表情を見るのが好きだった。自分が忘れてしまっていたり、もしかしたら失くしてしまっているかもしれないようなものを、彼ら彼女らの目や表情からいつも感じてきたから。その姿を見るたびに、自分も少しだけ音楽へ向かう純粋さを取り戻せたような気がしていた。
きっと、ミセスはすぐに帰ってくる。これは体制が整うまでに便宜上使用する意味での「活動休止」であり、きっとアーティストによっては「独立」とだけ発表することですぐには活動しないことを読み取らせることによって、わざわざ休止とは言わないパターンも多いからだ。
(それでもあえて「活動休止」と、少しの間は表立った活動をしないことをしっかりと伝えるあたりにミセスのメンバーや関わっている人たちの誠実さを感じる)
ただ、まだ帰ってくる日がいつになるかはわからない。そもそも、早く帰ってきたところで以前までのようにライブが見れるかどうかわからないような世の中の状況になってしまっている。
(だからこそある意味ではこのタイミングであることもミセスは「持ってるな」とも思う)
それでも、ミセスのメンバーやこれまでにバンドを支えてきてくれた人たち、そしてバンドの歌詞や言葉を自身の生きる指針にしてきたであろうファンの人たちはこれから先の活動や人生を、笑顔であってほしいな。
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Bentham 「東京パノプティコン 2020 〜Social Distortion 新代田編〜」 @新代田FEVER 6/28