昨年のシングル「Horse Riding」に続き、3月に待望のアルバム「Keeper Of The Flame」をリリースした、the HIATUS。5月からスタートしたリリースツアーも、この日がセミファイナル。新木場STUDIO COAST2daysの初日。
「これは人が入りきれるのか?」とすら思うくらいに人が詰まりまくった客席の中、19時過ぎに会場が暗転すると、masasucks(ギター)を先頭に、ウエノコウジ(ベース)、柏倉隆史(ドラム)、伊澤一葉(キーボード)という編成のメンバーが登場して歓声が上がると、最後に細美武士が登場して、一際大きな歓声が上がり、
「the HIATUSです!よろしくお願いします!」
と言って、「Keeper Of The Flame」の「Roller Coaster Ride Memories」からスタートし、「Thirst」へ。細美武士はギターを弾かず、たまにサンプラーを操作しつつも、基本的には歌に専念。観客も腕をあげつつ、音に身を委ねながらじわりじわりと温度をあげて行く。
「新木場ー!俺たちは5月8日の千葉LOOKからずっとツアーをやってきて、みんな髪が伸びまくってたんだけど、昨日、隆史以外はみんな髪を切ってさっぱりしました。だけど、お前らが見たいのはそんな表面的なものじゃないだろ。新木場ファイナル、明日もあるけど、今日のことしか考えてません。よろしくお願いします!」
と細美が言い、アコギを手にすると、前作からの「Deerhounds」、そしてアコギからエレキに持ち替えた「Storm Racers」では、それまで音に身を委ねていた客席の空気が一転し、サビに入る前の細美の、
「1,2,3,4!」
というカウントに応じて、ダイバーが大量に出現。
すでに先行シングルとして去年リリースされ、夏フェスなどでも披露された「Horse Riding」は、正直、個人的には最初は「この曲がシングルっていうのはどうなんだろうか?」って思っていたが、今やバンドを代表する祝福のアンセムになっている。そうなったのは、間違いなくツアーで演奏しまくって、ここに至るまでに曲が育ってきたから。
そして曲とともに、毎ツアー、毎ツアーでバンドそのものが育っていると感じさせてくれるのが、1st収録の「The Flare」の、メンバーそれぞれがぶつかり合っているのに見事に一つの大きな塊になっているかのようなグルーヴ。結成からずっとやり続けている曲だが、これから先もさらに驚かされるような曲になるのだろうか。
「ツアーをずっと車で廻ってきて、走行距離が12000km。9999.9を超えるところをビデオに収めようと思って、俺が運転してるところを録ってもらったんだけど、9999.9を超えると、0に戻って。おおー!0に戻ったー!って。俺としては10000までいって欲しかったんだけど」
とツアー中の話もあってから演奏された、新作の「Unhurt」が最高に素晴らしかった。抑えめな序盤から、柏倉のドラムとともにどんどん熱量を上げていき、サビでは青とピンクのライトが動きまくる中、圧倒的爆発を見せる。決してモッシュやダイブが起こるような曲ではないが、熱さはそういう曲と変わらないと思う。
女性コーラス、ユカリ・ヴァレンタインを迎えて荘厳に響き渡った「Tales Of Sorrow Street」、「Sunset Off The Coastline」と、新作のイメージを決定づけるように体を揺らしながら聴きいる曲、それこそ目を瞑って聴くのもアリな曲から、「Lone Train Running」で合唱が響き渡ると、
「歌い始めて、10年以上。ようやく掴んだものがあるんだけど…これは言ったほうがいいのかな?ちょっとショーのMCとしては成り立ってないかもしれないけど…客席に一人もいなくなったら、バーでもやればいい、居酒屋でもやればいいって思ってたけど…嘘だったね。わかったね。音楽こそ、我が人生だ。ありがとうございました」
という、何故この細美武士という男にこれだけたくさんの人が惹かれるのかがこれ以上ないほどにわかるMCから、まさにその意思表明とでも言うべき「Burn To Shine」へ。
そして巨大な混沌そのもののような「Insomnia」から、最後は笑顔で、と言っているかのような「紺碧の夜に」でダイバーが大量に出現して本編は終了。
アンコールで再びメンバーが登場すると、
「俺は17で家を出て、そこからずっと転々としてて。今でもそうで。何も続かなかったけど、音楽だけは続けてて。クラスでめちゃくちゃ嫌われてたし、友達もできなかったけど、音楽やってる時だけはみんなが俺を見る目が違ったような気がしてて。
そのあとにバイクにハマって、世界チャンピオンのレーサーになりたいって思ったこともあったけど、それは無理だった(笑)すぐ諦めた(笑)
でも音楽だけはずっと諦めなかったから、これからも続けていくんだろうなって。それが願わくばこの5人でありますように。どうもありがとうございました」
と細美がMCしてから、細美が最後のサビを
「歌ってくれー!」
と叫んで大合唱が起きた「ベテルギウスの灯」、そしてイントロからゆらゆらと体を揺らしたくなる「Waiting For The Sun」。細美はアウトロで観客とコール&レスポンスをすると、深々と頭を下げてステージから去って行った。
しかしながら鳴り止まぬアンコールに応えて再びメンバーが登場。
「じゃあ1曲だけ」
と言って演奏されたのは、細美のボーカルとmasasucksのコーラスの絡みが美しい「Shimmer」。これまでは最後はアガる曲で終わるパターンが多かったが、この曲で終わるのは新作のモードを象徴しているかのようだった。
総括すると、2ndまでが赤く燃え盛る炎だとしたら、今作は青白く光る炎。一見すると暗く見えるその炎を明るく照らしているのは、細美武士の歌声と笑顔。どんどん歌の力が強くなっているだけに、50歳、60歳になったらどうなっているんだろうか。
細美武士の存在感はどんどん強くなってきているし、バンドそのものもどんどん強くなってきている。細美の存在がバンドを強くしているのか、バンドが細美を強くしているのか。どっちなのかはわからないが、細美本人が言っていたように、この5人で死ぬまで続けて欲しいし、ずっと見続けていたい。
1.Roller Coaster Ride Memories
2.Thirst
3.Deerhounds
4.Storm Racers
5.Something Ever After
6.Horse Riding
7.Superblock
8.Silver Birch
9.The Flare
10.Monkeys
11.Unhurt
12.Tales Of Sorrow Street
13.Sunset Off The Coastline
14.Lone Train Running
15.Burn To Shine
16.Insomnia
17.紺碧の夜に
encore1
18.ベテルギウスの灯
19.Waiting For The Sun
encore2
20.Shimmer
Thirst
http://youtu.be/fSzxtLQBZHY