駿府城夏祭り 水祭 -suisai- @駿府城公園 8/17
- 2019/08/21
- 23:21
毎週のようにどこかでフェスが行われている夏。この週末もSUMMER SONICやRISING SUN ROCK FESが開催されていたが、地方でも小さいフェスが多く開催されているし、そこにはある意味では町おこし的な側面もあるし、地元の人たちにとっての楽しみという面もある。
それはフェス=お祭りという概念があるからこそでもあるのだが、この日、静岡県の静岡駅からすぐにある、徳川家康ゆかりの地である駿府城公園ではまさに地元のお祭りが開催されていた。敷地内に並ぶ飲食店、「水祭」というタイトルならではのミストや風鈴を使った涼しげな演出。ロッキンよりもはるかに厳しい暑さを少し和らげるような会場にはエンタメステージに多数のお笑い芸人が登場して集まった人たちを笑わせていた一方、ライブステージは入場無料という気前の良さであるにもかかわらず、人気若手バンドから誰もが知るヒット曲を持つアーティストまでが集結。そのラインアップは
SILENT SIREN
KEYTALK
I Don't Like Mondays.
伊藤千晃
サンプラザ中野くんとパッパラー河合
リアクション ザ ブッダ
和の音 結 (オープニングアクト)
という面々。繰り返すがこのラインアップで無料である。
とはいえ誰でも見れるわけではなく、さすがに整理券を配布したりしてMAXは4500人ほどらしいが飲食店はもちろん物販もあるライブエリアはかなり広く感じる。
何より、野外での無料ライブというとステージが明らかに急造のものだったり、音が良くなくてちゃんと聞こえなかったりと「無料だからしょうがない」と言い聞かせるしかないものも多いし、そもそもライブ仕切ったことないだろう、と思うくらいに段取りなどが悪いようなものも多い。
しかし中に入るとビックリするくらいにステージがしっかりしている。今まで行ったことのある中で言うならばMETROCKのSEASIDE PARKに近い雰囲気を感じる。それくらいにステージがしっかり作られているし、両サイドにモニターがあるというのは無料ライブでそこまでやるか!?とすら思ってしまうが、見る側からしたら嬉しいことである。
そんな中、お笑いコンビのアルコ&ピースの酒井健太、SBSアナウンサーの矢端名結の2人による進行により、和太鼓を中心として笛のメンバーなどもいるオープニングアクトの和の音 結が祭りの雰囲気にぴったりの力強い和の音で観客を出迎えると、はやくも日が落ちてきた17時頃にメインアクトがスタート。
・リアクション ザ ブッダ
トップバッターはJAPAN'S NEXTなどにも出演している埼玉のスリーピースバンド、リアクション ザ ブッダ。だいたいにおいてはこうした地元のお祭り的なイベントの最若手アーティストは地元出身のアーティストだったりすることが多いが、どうやらこのイベントはそういうわけでもないらしい。
佐々木直人のゴリゴリのベースと自虐的な歌詞の言葉数の多いボーカル、木田健太郎のギター専任だからこそのテクニカルなフレーズ、スポーティーな見た目同様にバンドの音に疾走感と推進力を与える大野宏二朗のドラムがスリーピースのロックバンドならではのダイナミズムを感じさせる「Fantastic Chaos」で始まると、スクリーンに映し出されるメンバーの演奏する姿には歌詞などの文字や水しぶきなどのエフェクトが施されており、こうした部分もとてもじゃないが無料のライブイベントとは思えないというか、無料じゃなくてもこうした演出はほとんどない。このイベントとこのバンドがともに入念な準備をした上でこの日のライブに臨んでいるのがよくわかる。
その後はストレートなギターロック色を強めていくのだが、まさに火花が飛び散るような演奏の「火花」など、各々の演奏技術の上手さがぶつかり合いながらも一つのバンドの音として重なり合っていく。
やはりまだほとんどの人にとっては知られていない存在ではあったと思うが、それでも最後には佐々木の呼びかけに応じてたくさんの人が腕を上げていた。そこにはここに集まった人たちがせっかくのこの日を精一杯楽しもうとしているのが伝わってきたし、その光景は「これはきっといいイベント、いい一日になるな」と思わせてくれた。
歌詞によるものもあると思われるが、現状では1曲目に演奏した「Fantastic Chaos」のインパクトが大きい。それだけにさらなるキラーチューンができれば状況はもっと良くなるはずだ。スリーピースでの演奏技術という意味ではすでにかなり完成度が高いバンドであるだけに。
1.Fantastic Chaos
2.リード
3.火花
4.ヤミクモ
Fantastic Chaos
https://youtu.be/SFbM2r72FVQ
・サンプラザ中野くんとパッパラー河合
この日の出演者の中では最も誰しもが知るヒット曲を持っていながらも、どこか飛び道具的な存在に見えてしまう、サンプラザ中野くんとパッパラー河合。
2人とドラマーの3人編成で登場すると、おなじみのスキンヘッドにサングラスという出で立ちの長身のサンプラザ中野くんがいきなり
「忘れないうちに言っておきます。みなさん、私のツイッターをフォローしてください!」
と「それはそんなに言い忘れたらいけないことなのか?」という気もする第一声から、2人によるバンド、爆風スランプの大ヒット曲「旅人よ 〜The Longest Journey」でスタートし、サンプラザ中野くんはそのドスの効いた力強い声を放ち、パッパラー河合はステージ上を動き回りながらギターを弾き倒す。今年で59歳になるらしいがそんな年齢を全く感じさせないパフォーマンス。最後にキメでジャンプする時だけはその跳躍力は年齢を感じさせたが。
サンプラザ中野くんが身振り手振りを交えて歌う「リゾ・ラバ [resort lover]」はどこか開放的な野外ライブの雰囲気に似合っているような気もするが、コンパクトな編成にもかかわらずベースとキーボードの音は同期のものが流れており、「これならバンドで出ても良かったんじゃ?」とも思ったが、サンプラザ中野くんいわくこの日に2人名義の出演となったのは
「経費の問題」
というやんごとなき事情によるものらしい。
そして誰もが待ち望んでいたであろう、今でもテレビなどで使われている大ヒットシングル「Runner」は
「我々と一緒に「Runner」を歌えば幸せになれます!」
というサンプラザ中野くんによって歌詞が事前に伝えられ、観客みんなで大合唱するというスタイル。全然ファンというわけではないが、自分もちゃんと歌える。そのくらいにいろんなところで聞いてきたし、ちゃんと記憶に残る曲だった。それはきっとこれからもそうで、いろんな人に歌い継がれていくのだと思う。
「テレビを見るならSBS!」
など、さすがベテランらしいこの静岡に根ざしたコール&レスポンスで静岡県民の心をがっちり掴むと、最後に演奏されたのはサンプラザ中野くん名義で最新バージョンとしてシングルリリースされているという「大きな玉ねぎの下で」。正直、どの辺りが最新バージョンになったのかほとんどわからないが、
「ペンフレンドの2人の恋」
という歌い出しの歌詞も含めて、2019年の今聴いても若い人はきっと共感できないような歌詞だろう。でもまだスマホも携帯もなかった時代。遠くに住む親族や友人と連絡を取るには電話をするか手紙を書くしかなかった。子供の頃に引っ越して遠くに行ってしまった友人と手紙をやり取りしていた頃を思い出していた。彼はまだ自分のことを覚えているのだろうか。
そしてこの曲は日本武道館のことを歌った曲である。「大きな玉ねぎ」とは日本武道館の天井にあるオブジェのこと。しかしこの日の4日前に日本武道館に行った時、改修工事を控えた天井の玉ねぎはすでに幕がかかっていた。改修されてあの場所がどうなるのかはわからないが、この曲を聴いているとあのオブジェはずっと残っていて欲しいと思う。
ライブ後、物販でサンプラザ中野くんとパッパラー河合の2人がCDを買ってくれた人と一緒に記念撮影をしていた。大ベテランになっても全く偉ぶったりしないその姿勢はすごいと思うし、爆風スランプはいろんなフェスに出れば盛り上がる存在だと思う。それくらいに彼らは還暦間近の今でも現役バリバリだ。
1.旅人よ 〜The Longest Journey
2.リゾ・ラバ [resort lover]
3.Runner
4.大きな玉ねぎの下で
Runner
https://youtu.be/Jtw5S12-ZeI
・伊藤千晃
2日間開催されるお祭りのこの日は「バンドday」ということで、ほかの出演者はみなバンドなのだが、そんな中で明らかに異彩を放つ、伊藤千晃。元AAAのメンバーである彼女がソロでこのイベントに出演。
左肩を出した赤いセクシーな衣装を着て登場すると、後ろにはバンドメンバーたちの姿が。(ベースはこの日先に出演したリアクション ザ ブッダの佐々木直人という特別編成)
そこでバンドdayのこの日に出演した理由はわかったが、どうやら今までバンド編成でのライブをやったことがないそうなので、やはり最初は少し歌いづらいというか、慣れていない感じはすごく出ていたが、それでも自身で佐々木を含むバンドメンバーを紹介する時に、
「生音で歌うって本当に最高!」
と言っていただけに、歌とダンスというイメージの強い彼女のライブもこれから変わっていくのかもしれない。
基本的に曲のスタイルはグループ時代の延長線上的なものであるが、「Don't look back」ではブラックミュージックのエッセンスを含んだサウンドがバンドによる生演奏の迫力を持って響き、翌日のこのイベントに出演するナオト・インティライミが手がけた「Wa・Ta・Shi」ではスクリーンに歌詞が映し出される中、カメラ目線で歌ったり手を振ったりする姿が映し出される。それを至って自然にできるというのはさすがにモンスターグループにいた人ならではの経験と技術があるな、と感じた。
西島隆弘がソロでもドームクラスの人気を誇り、日高光啓はSKY-HIとしてさらに広いフィールドに挑み、宇野実彩子がマルチな活躍を見せる一方で浦田直也は良くない意味でニュースになったりと、AAAのメンバーは30代を超えて悲喜交々な人生を歩んでいる。
脱退を発表した時の反応は良くないものもたくさんあったけれど、こうして歌い続ける場所がある伊藤千晃は幸せな人生を歩んでいるのかもしれない、と歌っている姿を見て思った。
1.LOVE or LIPS
2.ツキミキミ
3.Don't look back
4.Wa・Ta・Shi
LOVE or LIPS
https://youtu.be/sJyXOvgweEQ
・I Don't Like Mondays.
全ての社会人の味方のような名前のバンドである。ステージに登場しただけで華やかな空気に歓声が上がるくらいの4人組バンド、I Don't Like Mondays.が徐々に夕暮れに染まり始めた水祭のステージに登場。
サングラスをかけたボーカルのYUが飛び跳ねまくりながらハイトーンかつ発音の良い英語歌詞を歌う「WE ARE YOUNG」からスタートするのだが、アー写のイメージからてっきりガレージ的なロックンロールバンドなのかと思いきや、EDMサウンドを大胆に取り入れた、ポップかつキャッチーに振り切れたバンドである。(確かにメンバーの衣装はそうしたサウンドによく似合っている)
なので英語の発音の良さに加えてそのサウンドのスタイルもあって、まるでアメリカのポップシーンで活躍しているバンドのライブを見ているかのよう。EDMをここまで取り入れたアメリカのポップバンドというと近年のONE OK ROCKが頭をよぎるが、それよりも前にNANO-MUGEN FES.でライブを見たOwl Cityに近いポップへの振り切り方。
とはいえただEDMなポップであるだけならバンドである必要はないわけで、タイトル的にはどうしてもTHE BAWDIESを想起させるような「LEMONADE」の甘酸っぱさを感じる切ないメロディや、出で立ちが見るからにザ・ギタリストなCHOJIの背面弾きギターなど、バンドという編成である理由がライブを観るとよくわかるし、最初の感触よりもロックンロールのエッセンスを強く持っていることをその演奏から感じさせてくれる。
3年ぶりのニューアルバムをリリース間近というタイミングなだけにそのアルバムに収録される新曲も演奏されたが、そのブランクやサングラスを外したメンバーの顔を見るに、もっと若くてキラキラしたバンドなのかと思いきや決してそうではないというか、これまでにいろんな悔しい思いをしてきて今のスタイルにたどり着いたんだろうな、と思うし、そうした経験を全てこんなにもポップな方向に振り切ることができるバンドはそうはいない。
avex所属ということで翌日にはa-nationという大舞台を控えているものの、そこには一切触れずに、
「静岡県でライブをするのは初めて。これからもっともっと静岡でライブをしたい」
と語る彼らは浮き足立つことなく一歩一歩自分たちの足跡を踏みしめながら歩いて行こうとしているように見えた。
終わった頃には夜の時間を迎え、公園はライトアップされていた。駿府城公園という場所柄、和の要素が実に強いシチュエーションであるが、このバンドがライブをしている時だけはここがサマソニのライブ会場のようにすら思えた。そこに立っていてもおかしくないスケールをこのバンドは持っている。
1.WE ARE YOUNG
2.LEMONADE
3.Don't look back
4.Freaky boy
5.TONIGHT
6.DIAMOND
DIAMOND
https://youtu.be/Av9s2aB5HdA
・KEYTALK
ヤバTとの対バンとロッキンに続いて期せずして2週間で3回このバンドのライブを見ることに。そのペースもそこそこ多いような気もするが、このバンドはそれ以上のペースでライブをやりまくっている。
このイベントは転換中に両サイドのスクリーンに協賛企業のCMが映し出されていたので、その音が流れることからライブ前のサウンドチェックはここはないだろうと思っていたし、実際に他の出演者はやっていなかった。
しかしこのバンドはメンバー全員がサウンドチェックに出てくると、ずっと見ていて覚えてしまったのか、簡易ウォシュレットのCMのダンスを首藤義勝(ベース&ボーカル)が踊ったりする中、いつもと同じように本番と同じように「パラレル」を演奏。どんな場所でも変わることのないKEYTALKのライブバンドとしての姿勢を見た気がする。
おなじみの「物販」のSEでメンバーが元気よく登場すると、1曲目はすっかりこのバンドの代表曲になりつつある「BUBBLE-GUM MAGIC」。もう完全に空は暗くなっている夜の時間であるが、ロッキンでは昼間の時間帯だったし、若手という立ち位置やこれまでにリリースしてきた夏ソングのイメージから、太陽が似合うバンドだと思っていたが、この景色も実によく似合うし、それは義勝のスラップベースが炸裂し、観客も踊りまくる「MATSURI BAYASHI」もそう感じさせる。そもそもが
「夜の帳の祭り囃子」
という歌詞の曲であるだけに、まさにこうした夜の夏祭りが舞台の曲であり、バンドはこうした景色に見合う曲をすでに作っていたのである。
すでに缶ビールを開けている巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)は観客を自ら煽ってそれを一気飲み。
「良い子は真似しないでください(笑)」
と言っていたが、このシチュエーションでビールを飲めるのが実に気持ち良さそうだし、だからこそ自ら一気飲みしたのだろう。
現在毎週金曜日に新曲を配信リリースしている真っ最中であるが、その中からロッキンでも演奏された「真夏の衝動」を披露。KEYTALKの新たな夏ソングであるが、タイトルから察せられるようなアッパーな夏ソングではなく、むしろじわじわと暑さを増していくような曲。レーベル移籍後の初リリースとなった「BUBBLE-GUM MAGIC」もそうだったが、最近の曲は視点が少し大人になったようにも感じる。とはいえ小野武正はやはりギターを弾きまくっており、それがただ単に落ち着いたという感じにはならないロックさを与えている。
メンバーがステップを踏みながら演奏したり、EDMパートでは巨匠がダンスを踊る「Summer Venus」でより一層夏感を増していく中でも「桜花爛漫」が演奏されるというのは少し驚きだ。曲のタイプ的には同様にポップサイドであるリリースされたばかりの「ララ・ラプソディー」が演奏されると思っていただけに。
「いやー、ここいやすい!居心地がいい!」
と早くもホーム感を感じるくらいにこの場所との親和性の高さを見せ、それは武正の「ぺーい」コール&レスポンスの後に最後に演奏された「MONSTER DANCE」で炸裂。祭りならではの開放感やテンションがこの曲のお祭り感とで抜群の相乗効果を生み出していた。
このイベントは入場無料であるがゆえに、普段からこのバンドを見に行っているであろう、バンドTシャツを着た人もたくさんいる一方で、近くでお祭りがやってるから来てみた、というような普段ライブハウスにはいないような人もいたし、家族で来ているような人もたくさんいた。
そうした、普段のライブハウスではあまり目にしないような人たちまでもがたくさん踊っている姿を見て、軽く見られることもあるこのバンドの音楽はあらゆる年代の人に届くような普遍性を持っているということを改めて感じさせられた。持ち時間も他のライブに比べたら短いし、演奏する曲も予想通りの範疇ではあるが、その光景を観れるのはこの日のこの場所以外にそうそうない。
リハ.Love me (外音なし)
リハ.パラレル
1.BUBBLE-GUM MAGIC
2.MATSURI BAYASHI
3.真夏の衝動
4.Summer Venus
5.桜花爛漫
6.MONSTER DANCE
BUBBLE-GUM MAGIC
https://youtu.be/Qfmu__aAnU8
・SILENT SIREN
この日のトリは4人組ガールズバンド、SILENT SIREN。KEYTALKではなくこのバンドがトリというところにこのイベントならではのチョイスを感じるのは、華やかな衣装のメンバーが登場して最初に演奏されたのが、あいにゃんによるゴリゴリのベースのイントロで始まる「フジヤマディスコ」だったからである。もちろんここ静岡県は富士山のご当地であるだけに、この曲を持つこのバンドがこの日のトリというのはある意味では当然と言える。
ゆかるん(キーボード)が煽りながらキーボードを弾く中、どうしたって可愛さという要素を強く感じるすぅ(ボーカル&ギター)の歌声が曲をさらにポップに引き立てるが、メンバーで唯一金髪なのが目を惹くひなんちゅ(ドラム)も含め、イメージ以上にメンバーの演奏レベルは高い。もともとの出自からバンドとしてナメられることもあるだろうけれど、そうした視線を自分たちの演奏でねじ伏せるというか黙らせるかのよう。
自分は昔、まだ今のように大きくなる前のPARK STAGEに出ていた時のロッキンで少しライブを見たことがあるのだが(今でこそ常連バンドになっているが、多分ロッキンに出始めた頃)、それこそ「フジヤマディスコ」をはじめとして今のこのバンドはダンスミュージック的なサウンドの曲が多い。タイトルからしてそのもののような「DanceMusiQ」など、観客がゆかるんと同様に光る扇子のようなものを掲げながら踊っているのは夜だからこそ美しい風景だ。
「恋のエスパー」では最後のサビ前でメンバーがぴたっと静止し、
「今時間が止まってます。そこしだけ前に時間を戻すことができます」
とすぅが言うと、なんと1曲目の「フジヤマディスコ」をもう1度演奏し始めるのだが、ゆかるんから
「時間戻しすぎ!」
と突っ込まれ、
「静岡だから「フジヤマディスコ」まで戻しちゃったー!」
とやはりこれは静岡だからこそのバージョンだったようだ。
そしてラストは「チェリボム」でポップかつキュートにライブとこの熱い1日を締め括ったが、
「KEYTALKとリアクション ザ ブッダは前に対バンしたことがある。繋いでくれたバンドマンに感謝!」
とすぅは言っていた。その言葉からは4人がたしかにバンドマンとして生きてきた誇りのようなものを感じさせた。
1.フジヤマディスコ
2.八月の夜
3.ぐるぐるワンダーランド
4.DanceMusiQ
5.恋のエスパー
6.チェリボム
フジヤマディスコ
https://youtu.be/4dOq4V4r8Uw
ライブが終わったのは21時と、野外ライブにしてはかなり遅めな時間だった。それでもまだ外の飲食ブースは営業していたし、23時くらいまでお祭りは続いたらしい。フェスとはまた違った祭りの楽しさみたいなものがこの日は確かにあった。
ステージ、スクリーン、演出、音響…その全てがとても無料のクオリティではないというか、なんなら5000〜6000円でチケットを売ってもいいくらいにしっかりしたイベントだった。そこからは静岡の人たちの地元やこの場所への確かな愛を感じたし、これから何年もこのイベントが続いていったら、夏の暑い日にわざわざ静岡に来る理由ができるかもしれない。ちょっと静岡のことが好きになれたような、良いイベントを見たからこその良い夜だった。
Next→ 8/19 THE BAWDIES × the telephones @恵比寿LIQUIDROOM
それはフェス=お祭りという概念があるからこそでもあるのだが、この日、静岡県の静岡駅からすぐにある、徳川家康ゆかりの地である駿府城公園ではまさに地元のお祭りが開催されていた。敷地内に並ぶ飲食店、「水祭」というタイトルならではのミストや風鈴を使った涼しげな演出。ロッキンよりもはるかに厳しい暑さを少し和らげるような会場にはエンタメステージに多数のお笑い芸人が登場して集まった人たちを笑わせていた一方、ライブステージは入場無料という気前の良さであるにもかかわらず、人気若手バンドから誰もが知るヒット曲を持つアーティストまでが集結。そのラインアップは
SILENT SIREN
KEYTALK
I Don't Like Mondays.
伊藤千晃
サンプラザ中野くんとパッパラー河合
リアクション ザ ブッダ
和の音 結 (オープニングアクト)
という面々。繰り返すがこのラインアップで無料である。
とはいえ誰でも見れるわけではなく、さすがに整理券を配布したりしてMAXは4500人ほどらしいが飲食店はもちろん物販もあるライブエリアはかなり広く感じる。
何より、野外での無料ライブというとステージが明らかに急造のものだったり、音が良くなくてちゃんと聞こえなかったりと「無料だからしょうがない」と言い聞かせるしかないものも多いし、そもそもライブ仕切ったことないだろう、と思うくらいに段取りなどが悪いようなものも多い。
しかし中に入るとビックリするくらいにステージがしっかりしている。今まで行ったことのある中で言うならばMETROCKのSEASIDE PARKに近い雰囲気を感じる。それくらいにステージがしっかり作られているし、両サイドにモニターがあるというのは無料ライブでそこまでやるか!?とすら思ってしまうが、見る側からしたら嬉しいことである。
そんな中、お笑いコンビのアルコ&ピースの酒井健太、SBSアナウンサーの矢端名結の2人による進行により、和太鼓を中心として笛のメンバーなどもいるオープニングアクトの和の音 結が祭りの雰囲気にぴったりの力強い和の音で観客を出迎えると、はやくも日が落ちてきた17時頃にメインアクトがスタート。
・リアクション ザ ブッダ
トップバッターはJAPAN'S NEXTなどにも出演している埼玉のスリーピースバンド、リアクション ザ ブッダ。だいたいにおいてはこうした地元のお祭り的なイベントの最若手アーティストは地元出身のアーティストだったりすることが多いが、どうやらこのイベントはそういうわけでもないらしい。
佐々木直人のゴリゴリのベースと自虐的な歌詞の言葉数の多いボーカル、木田健太郎のギター専任だからこそのテクニカルなフレーズ、スポーティーな見た目同様にバンドの音に疾走感と推進力を与える大野宏二朗のドラムがスリーピースのロックバンドならではのダイナミズムを感じさせる「Fantastic Chaos」で始まると、スクリーンに映し出されるメンバーの演奏する姿には歌詞などの文字や水しぶきなどのエフェクトが施されており、こうした部分もとてもじゃないが無料のライブイベントとは思えないというか、無料じゃなくてもこうした演出はほとんどない。このイベントとこのバンドがともに入念な準備をした上でこの日のライブに臨んでいるのがよくわかる。
その後はストレートなギターロック色を強めていくのだが、まさに火花が飛び散るような演奏の「火花」など、各々の演奏技術の上手さがぶつかり合いながらも一つのバンドの音として重なり合っていく。
やはりまだほとんどの人にとっては知られていない存在ではあったと思うが、それでも最後には佐々木の呼びかけに応じてたくさんの人が腕を上げていた。そこにはここに集まった人たちがせっかくのこの日を精一杯楽しもうとしているのが伝わってきたし、その光景は「これはきっといいイベント、いい一日になるな」と思わせてくれた。
歌詞によるものもあると思われるが、現状では1曲目に演奏した「Fantastic Chaos」のインパクトが大きい。それだけにさらなるキラーチューンができれば状況はもっと良くなるはずだ。スリーピースでの演奏技術という意味ではすでにかなり完成度が高いバンドであるだけに。
1.Fantastic Chaos
2.リード
3.火花
4.ヤミクモ
Fantastic Chaos
https://youtu.be/SFbM2r72FVQ
・サンプラザ中野くんとパッパラー河合
この日の出演者の中では最も誰しもが知るヒット曲を持っていながらも、どこか飛び道具的な存在に見えてしまう、サンプラザ中野くんとパッパラー河合。
2人とドラマーの3人編成で登場すると、おなじみのスキンヘッドにサングラスという出で立ちの長身のサンプラザ中野くんがいきなり
「忘れないうちに言っておきます。みなさん、私のツイッターをフォローしてください!」
と「それはそんなに言い忘れたらいけないことなのか?」という気もする第一声から、2人によるバンド、爆風スランプの大ヒット曲「旅人よ 〜The Longest Journey」でスタートし、サンプラザ中野くんはそのドスの効いた力強い声を放ち、パッパラー河合はステージ上を動き回りながらギターを弾き倒す。今年で59歳になるらしいがそんな年齢を全く感じさせないパフォーマンス。最後にキメでジャンプする時だけはその跳躍力は年齢を感じさせたが。
サンプラザ中野くんが身振り手振りを交えて歌う「リゾ・ラバ [resort lover]」はどこか開放的な野外ライブの雰囲気に似合っているような気もするが、コンパクトな編成にもかかわらずベースとキーボードの音は同期のものが流れており、「これならバンドで出ても良かったんじゃ?」とも思ったが、サンプラザ中野くんいわくこの日に2人名義の出演となったのは
「経費の問題」
というやんごとなき事情によるものらしい。
そして誰もが待ち望んでいたであろう、今でもテレビなどで使われている大ヒットシングル「Runner」は
「我々と一緒に「Runner」を歌えば幸せになれます!」
というサンプラザ中野くんによって歌詞が事前に伝えられ、観客みんなで大合唱するというスタイル。全然ファンというわけではないが、自分もちゃんと歌える。そのくらいにいろんなところで聞いてきたし、ちゃんと記憶に残る曲だった。それはきっとこれからもそうで、いろんな人に歌い継がれていくのだと思う。
「テレビを見るならSBS!」
など、さすがベテランらしいこの静岡に根ざしたコール&レスポンスで静岡県民の心をがっちり掴むと、最後に演奏されたのはサンプラザ中野くん名義で最新バージョンとしてシングルリリースされているという「大きな玉ねぎの下で」。正直、どの辺りが最新バージョンになったのかほとんどわからないが、
「ペンフレンドの2人の恋」
という歌い出しの歌詞も含めて、2019年の今聴いても若い人はきっと共感できないような歌詞だろう。でもまだスマホも携帯もなかった時代。遠くに住む親族や友人と連絡を取るには電話をするか手紙を書くしかなかった。子供の頃に引っ越して遠くに行ってしまった友人と手紙をやり取りしていた頃を思い出していた。彼はまだ自分のことを覚えているのだろうか。
そしてこの曲は日本武道館のことを歌った曲である。「大きな玉ねぎ」とは日本武道館の天井にあるオブジェのこと。しかしこの日の4日前に日本武道館に行った時、改修工事を控えた天井の玉ねぎはすでに幕がかかっていた。改修されてあの場所がどうなるのかはわからないが、この曲を聴いているとあのオブジェはずっと残っていて欲しいと思う。
ライブ後、物販でサンプラザ中野くんとパッパラー河合の2人がCDを買ってくれた人と一緒に記念撮影をしていた。大ベテランになっても全く偉ぶったりしないその姿勢はすごいと思うし、爆風スランプはいろんなフェスに出れば盛り上がる存在だと思う。それくらいに彼らは還暦間近の今でも現役バリバリだ。
1.旅人よ 〜The Longest Journey
2.リゾ・ラバ [resort lover]
3.Runner
4.大きな玉ねぎの下で
Runner
https://youtu.be/Jtw5S12-ZeI
・伊藤千晃
2日間開催されるお祭りのこの日は「バンドday」ということで、ほかの出演者はみなバンドなのだが、そんな中で明らかに異彩を放つ、伊藤千晃。元AAAのメンバーである彼女がソロでこのイベントに出演。
左肩を出した赤いセクシーな衣装を着て登場すると、後ろにはバンドメンバーたちの姿が。(ベースはこの日先に出演したリアクション ザ ブッダの佐々木直人という特別編成)
そこでバンドdayのこの日に出演した理由はわかったが、どうやら今までバンド編成でのライブをやったことがないそうなので、やはり最初は少し歌いづらいというか、慣れていない感じはすごく出ていたが、それでも自身で佐々木を含むバンドメンバーを紹介する時に、
「生音で歌うって本当に最高!」
と言っていただけに、歌とダンスというイメージの強い彼女のライブもこれから変わっていくのかもしれない。
基本的に曲のスタイルはグループ時代の延長線上的なものであるが、「Don't look back」ではブラックミュージックのエッセンスを含んだサウンドがバンドによる生演奏の迫力を持って響き、翌日のこのイベントに出演するナオト・インティライミが手がけた「Wa・Ta・Shi」ではスクリーンに歌詞が映し出される中、カメラ目線で歌ったり手を振ったりする姿が映し出される。それを至って自然にできるというのはさすがにモンスターグループにいた人ならではの経験と技術があるな、と感じた。
西島隆弘がソロでもドームクラスの人気を誇り、日高光啓はSKY-HIとしてさらに広いフィールドに挑み、宇野実彩子がマルチな活躍を見せる一方で浦田直也は良くない意味でニュースになったりと、AAAのメンバーは30代を超えて悲喜交々な人生を歩んでいる。
脱退を発表した時の反応は良くないものもたくさんあったけれど、こうして歌い続ける場所がある伊藤千晃は幸せな人生を歩んでいるのかもしれない、と歌っている姿を見て思った。
1.LOVE or LIPS
2.ツキミキミ
3.Don't look back
4.Wa・Ta・Shi
LOVE or LIPS
https://youtu.be/sJyXOvgweEQ
・I Don't Like Mondays.
全ての社会人の味方のような名前のバンドである。ステージに登場しただけで華やかな空気に歓声が上がるくらいの4人組バンド、I Don't Like Mondays.が徐々に夕暮れに染まり始めた水祭のステージに登場。
サングラスをかけたボーカルのYUが飛び跳ねまくりながらハイトーンかつ発音の良い英語歌詞を歌う「WE ARE YOUNG」からスタートするのだが、アー写のイメージからてっきりガレージ的なロックンロールバンドなのかと思いきや、EDMサウンドを大胆に取り入れた、ポップかつキャッチーに振り切れたバンドである。(確かにメンバーの衣装はそうしたサウンドによく似合っている)
なので英語の発音の良さに加えてそのサウンドのスタイルもあって、まるでアメリカのポップシーンで活躍しているバンドのライブを見ているかのよう。EDMをここまで取り入れたアメリカのポップバンドというと近年のONE OK ROCKが頭をよぎるが、それよりも前にNANO-MUGEN FES.でライブを見たOwl Cityに近いポップへの振り切り方。
とはいえただEDMなポップであるだけならバンドである必要はないわけで、タイトル的にはどうしてもTHE BAWDIESを想起させるような「LEMONADE」の甘酸っぱさを感じる切ないメロディや、出で立ちが見るからにザ・ギタリストなCHOJIの背面弾きギターなど、バンドという編成である理由がライブを観るとよくわかるし、最初の感触よりもロックンロールのエッセンスを強く持っていることをその演奏から感じさせてくれる。
3年ぶりのニューアルバムをリリース間近というタイミングなだけにそのアルバムに収録される新曲も演奏されたが、そのブランクやサングラスを外したメンバーの顔を見るに、もっと若くてキラキラしたバンドなのかと思いきや決してそうではないというか、これまでにいろんな悔しい思いをしてきて今のスタイルにたどり着いたんだろうな、と思うし、そうした経験を全てこんなにもポップな方向に振り切ることができるバンドはそうはいない。
avex所属ということで翌日にはa-nationという大舞台を控えているものの、そこには一切触れずに、
「静岡県でライブをするのは初めて。これからもっともっと静岡でライブをしたい」
と語る彼らは浮き足立つことなく一歩一歩自分たちの足跡を踏みしめながら歩いて行こうとしているように見えた。
終わった頃には夜の時間を迎え、公園はライトアップされていた。駿府城公園という場所柄、和の要素が実に強いシチュエーションであるが、このバンドがライブをしている時だけはここがサマソニのライブ会場のようにすら思えた。そこに立っていてもおかしくないスケールをこのバンドは持っている。
1.WE ARE YOUNG
2.LEMONADE
3.Don't look back
4.Freaky boy
5.TONIGHT
6.DIAMOND
DIAMOND
https://youtu.be/Av9s2aB5HdA
・KEYTALK
ヤバTとの対バンとロッキンに続いて期せずして2週間で3回このバンドのライブを見ることに。そのペースもそこそこ多いような気もするが、このバンドはそれ以上のペースでライブをやりまくっている。
このイベントは転換中に両サイドのスクリーンに協賛企業のCMが映し出されていたので、その音が流れることからライブ前のサウンドチェックはここはないだろうと思っていたし、実際に他の出演者はやっていなかった。
しかしこのバンドはメンバー全員がサウンドチェックに出てくると、ずっと見ていて覚えてしまったのか、簡易ウォシュレットのCMのダンスを首藤義勝(ベース&ボーカル)が踊ったりする中、いつもと同じように本番と同じように「パラレル」を演奏。どんな場所でも変わることのないKEYTALKのライブバンドとしての姿勢を見た気がする。
おなじみの「物販」のSEでメンバーが元気よく登場すると、1曲目はすっかりこのバンドの代表曲になりつつある「BUBBLE-GUM MAGIC」。もう完全に空は暗くなっている夜の時間であるが、ロッキンでは昼間の時間帯だったし、若手という立ち位置やこれまでにリリースしてきた夏ソングのイメージから、太陽が似合うバンドだと思っていたが、この景色も実によく似合うし、それは義勝のスラップベースが炸裂し、観客も踊りまくる「MATSURI BAYASHI」もそう感じさせる。そもそもが
「夜の帳の祭り囃子」
という歌詞の曲であるだけに、まさにこうした夜の夏祭りが舞台の曲であり、バンドはこうした景色に見合う曲をすでに作っていたのである。
すでに缶ビールを開けている巨匠こと寺中友将(ボーカル&ギター)は観客を自ら煽ってそれを一気飲み。
「良い子は真似しないでください(笑)」
と言っていたが、このシチュエーションでビールを飲めるのが実に気持ち良さそうだし、だからこそ自ら一気飲みしたのだろう。
現在毎週金曜日に新曲を配信リリースしている真っ最中であるが、その中からロッキンでも演奏された「真夏の衝動」を披露。KEYTALKの新たな夏ソングであるが、タイトルから察せられるようなアッパーな夏ソングではなく、むしろじわじわと暑さを増していくような曲。レーベル移籍後の初リリースとなった「BUBBLE-GUM MAGIC」もそうだったが、最近の曲は視点が少し大人になったようにも感じる。とはいえ小野武正はやはりギターを弾きまくっており、それがただ単に落ち着いたという感じにはならないロックさを与えている。
メンバーがステップを踏みながら演奏したり、EDMパートでは巨匠がダンスを踊る「Summer Venus」でより一層夏感を増していく中でも「桜花爛漫」が演奏されるというのは少し驚きだ。曲のタイプ的には同様にポップサイドであるリリースされたばかりの「ララ・ラプソディー」が演奏されると思っていただけに。
「いやー、ここいやすい!居心地がいい!」
と早くもホーム感を感じるくらいにこの場所との親和性の高さを見せ、それは武正の「ぺーい」コール&レスポンスの後に最後に演奏された「MONSTER DANCE」で炸裂。祭りならではの開放感やテンションがこの曲のお祭り感とで抜群の相乗効果を生み出していた。
このイベントは入場無料であるがゆえに、普段からこのバンドを見に行っているであろう、バンドTシャツを着た人もたくさんいる一方で、近くでお祭りがやってるから来てみた、というような普段ライブハウスにはいないような人もいたし、家族で来ているような人もたくさんいた。
そうした、普段のライブハウスではあまり目にしないような人たちまでもがたくさん踊っている姿を見て、軽く見られることもあるこのバンドの音楽はあらゆる年代の人に届くような普遍性を持っているということを改めて感じさせられた。持ち時間も他のライブに比べたら短いし、演奏する曲も予想通りの範疇ではあるが、その光景を観れるのはこの日のこの場所以外にそうそうない。
リハ.Love me (外音なし)
リハ.パラレル
1.BUBBLE-GUM MAGIC
2.MATSURI BAYASHI
3.真夏の衝動
4.Summer Venus
5.桜花爛漫
6.MONSTER DANCE
BUBBLE-GUM MAGIC
https://youtu.be/Qfmu__aAnU8
・SILENT SIREN
この日のトリは4人組ガールズバンド、SILENT SIREN。KEYTALKではなくこのバンドがトリというところにこのイベントならではのチョイスを感じるのは、華やかな衣装のメンバーが登場して最初に演奏されたのが、あいにゃんによるゴリゴリのベースのイントロで始まる「フジヤマディスコ」だったからである。もちろんここ静岡県は富士山のご当地であるだけに、この曲を持つこのバンドがこの日のトリというのはある意味では当然と言える。
ゆかるん(キーボード)が煽りながらキーボードを弾く中、どうしたって可愛さという要素を強く感じるすぅ(ボーカル&ギター)の歌声が曲をさらにポップに引き立てるが、メンバーで唯一金髪なのが目を惹くひなんちゅ(ドラム)も含め、イメージ以上にメンバーの演奏レベルは高い。もともとの出自からバンドとしてナメられることもあるだろうけれど、そうした視線を自分たちの演奏でねじ伏せるというか黙らせるかのよう。
自分は昔、まだ今のように大きくなる前のPARK STAGEに出ていた時のロッキンで少しライブを見たことがあるのだが(今でこそ常連バンドになっているが、多分ロッキンに出始めた頃)、それこそ「フジヤマディスコ」をはじめとして今のこのバンドはダンスミュージック的なサウンドの曲が多い。タイトルからしてそのもののような「DanceMusiQ」など、観客がゆかるんと同様に光る扇子のようなものを掲げながら踊っているのは夜だからこそ美しい風景だ。
「恋のエスパー」では最後のサビ前でメンバーがぴたっと静止し、
「今時間が止まってます。そこしだけ前に時間を戻すことができます」
とすぅが言うと、なんと1曲目の「フジヤマディスコ」をもう1度演奏し始めるのだが、ゆかるんから
「時間戻しすぎ!」
と突っ込まれ、
「静岡だから「フジヤマディスコ」まで戻しちゃったー!」
とやはりこれは静岡だからこそのバージョンだったようだ。
そしてラストは「チェリボム」でポップかつキュートにライブとこの熱い1日を締め括ったが、
「KEYTALKとリアクション ザ ブッダは前に対バンしたことがある。繋いでくれたバンドマンに感謝!」
とすぅは言っていた。その言葉からは4人がたしかにバンドマンとして生きてきた誇りのようなものを感じさせた。
1.フジヤマディスコ
2.八月の夜
3.ぐるぐるワンダーランド
4.DanceMusiQ
5.恋のエスパー
6.チェリボム
フジヤマディスコ
https://youtu.be/4dOq4V4r8Uw
ライブが終わったのは21時と、野外ライブにしてはかなり遅めな時間だった。それでもまだ外の飲食ブースは営業していたし、23時くらいまでお祭りは続いたらしい。フェスとはまた違った祭りの楽しさみたいなものがこの日は確かにあった。
ステージ、スクリーン、演出、音響…その全てがとても無料のクオリティではないというか、なんなら5000〜6000円でチケットを売ってもいいくらいにしっかりしたイベントだった。そこからは静岡の人たちの地元やこの場所への確かな愛を感じたし、これから何年もこのイベントが続いていったら、夏の暑い日にわざわざ静岡に来る理由ができるかもしれない。ちょっと静岡のことが好きになれたような、良いイベントを見たからこその良い夜だった。
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