ROCK IN JAPAN FES.2019 day5 @国営ひたちなか海浜公園 8/12
- 2019/08/19
- 18:04
ついに20年目のロッキンも最終日。5日目というのは未知の領域であるが、かつての3日開催の時の3日目と思えばちょっと久しぶりな感じ。当時と違うように感じるのはフェスに慣れたからか、昔よりも3日目になっても疲れていないこと。
そもそもこの日は開催前には台風の接近が予想されていたし、直前まで雨予報だった。しかし蓋を開けてみれば完全に晴れ模様だし、なんなら5日間で1番暑くすら感じる。改めてロッキンオンの、渋谷陽一の持つ力の凄さにビックリせざるを得ない。
この日以外の4日間は全てLAKE STAGEかPARK STAGEで幕開けを迎えていたのだが、この日は今年最初で最後のGRASS STAGEでの朝礼。フェス業界最強の晴れ男である渋谷陽一は20年間のこのフェスの歩みの中でターニングポイントになった、ダイブ禁止のルールを作った理由をしっかりと伝え、震災の年にひたちなか市に「絶対開催して欲しい」と言われて開催を決めたというこの場所への思いを語った。
そして2000年に初開催された時の渋谷陽一の写真シリーズ、この日はスペシャルバージョンとして、この場所を渋谷陽一とともに愛し続けてきた、Dragon Ashとの楽屋フォト。上半身裸でポーズを決める若き日のDragon Ashに囲まれている渋谷陽一はヤンキーに絡まれているおっさんのようにも見えるが、
「後ろに馬場君も写ってますけど、彼はこの場所が本当に好きだった。彼に20周年のこの場所を見て欲しかった」
と、2012年に急逝したIKUZONEに触れる。もう何回聞いたかわからない渋谷陽一の前説でこんなに泣きそうになるなんて思わなかったし、この日の主役が誰なのかということがこの短い時間でわかった。
10:30〜 MONGOL800 [GRASS STAGE]
2005年にこのGRASS STAGEに初出演した際に、初めてこのステージで演奏前にメンバー本人がサウンドチェックをしたバンドとしてこのフェスの記録に刻まれているバンド、MONGOL800。渋谷陽一からは
「キヨサクだけはめちゃくちゃ太った」
と紹介されていた。
モンパチは今年、バンドの形が変わった。ギターの儀間崇が脱退し、キヨサクと高里悟(ドラム)の2人になった。この日、ステージにギターを持って登場したのは、なんとWANIMAのKO-SHIN。さらにはホーン隊の2人も加え、
「沖縄より暑いじゃないかー!」
というこのフェスではおなじみの挨拶(毎回言ってるだけにこのフェスがどれだけ暑いかがわかる)から、
「今日は宴じゃ、PARTYじゃー!」
とその名の通りのパーティーアンセム「PARTY」からスタートするというフェスならではの多幸感をさらに増幅するオープニング。さらにははやくも「あなたに」を演奏するのだが、儀間がいなくなったことによって彼のボーカルフレーズはどうするのだろうかと思っていた。そうするとその部分をなんとKO-SHINが歌う。WANIMAでもコーラスこそしているが、単独で喋ることがほとんどないKO-SHINのまさかのボーカルに沸く客席。ギターの完璧な演奏を見ていてもKO-SHINがずっとモンパチを好きだったことがよくわかるが、それだけでなく入念に練習やリハを行なってきたのだろうし、WANIMAというスケジュール的に忙しい超人気バンドのメンバーでありながらもこうしてサポートメンバーとしてモンパチとステージに立つことにした覚悟が伺える。
すると「OKINAWA CALLING」ではグレコローマンスタイルのダンサー、粒マスタード安次嶺がステージに登場し、曲のリズムに合わせた独特のダンスで爆笑を巻き起こす。キヨサクの高校の先輩という間柄らしいが、この曲だけかと思いきやこの後のライブ全編にわたって、時に息を切らしたりしながら踊り続ける。間違いなくこの日この時間、このフェスで最も運動量が多いのは彼である。
ハッピーなウェディングソング「honeymoon」の後には
「沖縄の歌姫の曲を勝手に歌い継ぐ」
ということで、安室奈美恵「TRY ME 〜私を信じて〜」のカバーを演奏。昨年からやっている試みらしいが、モンパチらしいパンクとレゲエをミックスさせたアレンジは、この原曲を知らない世代からしたらこのバンドの新曲だと思われても仕方がないくらいにこのバンドの音楽になっている。この曲すらもモンパチのギターとして演奏できるKO-SHINは改めて凄いギタリストだと思う。
そして歌い出しから大合唱が起きたのはもちろん「小さな恋のうた」。かつてキヨサクはインタビューで、
「1回、僕らはその曲だけのバンドじゃない、って思って「あなたに」も「小さな恋のうた」もやらなかったことがあるんですけど、ライブ終わった後になんか落ち込んで(笑)それからは毎回やるようにしてます」
と言っていたが、いつまでこの曲をやってるんだ、と誰かに言われようともこの曲をライブで聴けるのはやっぱり嬉しい。
「夢ならば覚めないで 夢ならば覚めないで」
のフレーズをキヨサクは観客に委ねると、観客の声のみの大合唱が。この曲はもうモンパチの曲というよりは我々みんなの曲になっているし、こうして何万人もの人たちが一緒になって歌えるパンクというこのバンドが築き上げたものは、今このバンドでギターを弾いているKO-SHINのWANIMAに確かに受け継がれている。そしてまたそれはWANIMAからさらに若い世代に受け継がれていくのだろう。
そしてラストの「DON'T WORRY BE HAPPY」では各メンバーのソロ回しに加え、無尽蔵なのかと思うくらいの体力を見せる粒マスタード安次嶺のダンスソロも披露されたかと思いきや、その安次嶺と同じ格好をしたWANIMAのドラムのFUJIがダンサーとして登場し、さらにはKENTAもボーカルとして、WANIMA総登場。そんなトップバッターにしてこの日のクライマックスのような景色を見せてくれたモンパチはまだまだ終わらない。
儀間が脱退し、その後にサポートメンバーとしてバンドを支えたヨースケ@HOMEは若くして急逝した。そうした背景を考えると、不安だったり悲しみを抱えてこのライブに臨んだ人も少なくはなかったと思う。しかしモンパチはそんな感傷を一切感じさせない、ひたすらに楽しいライブをやり切ってみせた。そもそもモンパチはずっとこういうバンドだったし、沖縄の気候そのもののように熱く、暖かいバンドだった。これからも、何にも心配はいらないのかもしれない。
1.PARTY
2.あなたに
3.Love song
4.OKINAWA CALLING
5.honeymoon
6.TRY ME 〜私を信じて〜 (安室奈美恵のカバー)
7.小さな恋のうた
8.DON'T WORRY BE HAPPY
小さな恋のうた
https://youtu.be/u8EkSB9zSpE
11:20〜 a flood of circle [BUZZ STAGE]
2年連続のBUZZ STAGE出演。それは昨年のこのステージでのライブが本当に素晴らしいものだったからだと思っている、a flood of circle。素晴らしすぎて4本足を運んだツアーを終えての出演。
メンバーが登場すると、やはり佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黒の革ジャンを着用しており、メンバー全員が黒の衣装で統一されているという真夏とは思えない暑苦しい出で立ち。
そんな中で
「俺たちのベストはいつも今なんだよ」
と昨年のベスト的なライブを更新しようとする意識しか感じない「ベストライド」でスタートすると、
「ROCK IN JAPAN FES.にロックンロール持ってきました、a flood of circleです!」
と亮介が挨拶して、最前ブロックは激しいモッシュの嵐となる「The Beautiful Monkeys」、アオキテツ(ギター)だけでなく亮介もギターを弾きまくるアウトロのアレンジがなされた「Dancing Zombiez」、亮介がハンドマイクでステージを歩き回りながら歌う「Sweet Home Battle Field」とひたすらにアッパーなロックンロールサイドのキラーチューンを連発。
何度となくこのフェスに出てはいるけれど、2013年にSOUND OF FORESTのトリを務めた時(「FOREST WALKER」というレア曲をやった)以外は全て持ち時間30分という短い時間しか与えられていないし、それは他のフェスでも同様だ。そうしたフェスでのライブを繰り返すうちにこのバンドが辿り着いたスタイルが、MCなしでひたすらにこうしたアッパーなロックンロールをぶち込みまくるというものなのだろう。そしてそれが最も自分たちのカッコよさ、ロックンロールのカッコよさを伝えることができるというのをこのバンドはしっかりわかっている。
すると亮介が、
「ロックってなんでもありだよな!なんでもあり最高!だから友達の曲やるわ!」
と言って演奏したのは、なんとUNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバムに収録された「フルカラープログラム」のカバー。原曲のきらめくキャッチーさを活かしながらもロックンロール濃度を強めたアレンジはユニゾンの田淵とともにTHE KEBABSで活動している亮介がいるバンドだからこその愛あるものであるが、フェスとワンマンを比べたらそのバンドを見るためだけなら絶対にワンマンの方がいい。たくさん曲も聴けるし、そのバンドだけに浸ることができる。だから逆にワンマンに行ったらフェスにわざわざ見に行かなくてもいいという言説もわかるのだが、直近のツアーでワンマンを何回見ている身であっても、ここで見れてよかったと思える。そうした特別なことをやってくれる。てっきりユニゾンのトリビュートライブまではやらないと思っていたこの曲を聴けたのはバンド側のそうした意識が少なからずあったからだと思っている。
「ロッキン!テンションが低いんじゃないですか!?」
と言って演奏されたのはツアーのタイトルにもなっていた、最新アルバム「CENTER OF THE EARTH」収録の「ハイテンションソング」。HISAYO(ベース)と渡邊一丘もコーラスを務めて、去年よりも明らかに人が多く入ったBUZZ STAGEをさらにハイテンションにしていくのだが、てっきりアルバムからはタイトル曲の「Center Of The Earth」がフェスでやる曲になるかと思っていたのだが、この曲を選んだのはやはりひたすらにロックンロールに、ひたすら熱く、という今のこのバンドのモードを象徴している。
そんな中でこの日も最後に演奏されたのは、
「俺たちとあんたらの明日に捧げます!」
と言ってから演奏された「シーガル」。ワンマンとは違って亮介が客席にマイクを向けることはなかったが、今のこのバンドの絶好調っぷり、まさにベストが今であるということを示すにはあまりに充分過ぎる30分であった。
正直、フラッドは毎年このフェスに出れるかどうか微妙なライン上にいるバンドだ。突出した動員力や売り上げや話題性があるバンドじゃないから。でもこのフェスに出るたびにフラッドはこのフェスの名前にある「ROCK」の部分を背負おうとしてきた。そんなバンドはなかなかいないし、何よりもそうして呼んでくれるたびにそれまでの自分たちのベストを更新するようなライブを見せてそうして呼んでくれる期待に応えてきた。その姿をずっと見てきたからこそ、来年は開催が3日間のみなって今年より100組くらい出演者が減ったとしてもこのバンドの名前がラインアップに並んでいることを心から願っている。
去年のフラッドのライブはロッキンに15年通ってきた中でもTOP5に入るくらいに本当に素晴らしかった。「伝説の大御所のレアなライブ」ではなく、10年以上見てきたフラッドのライブの最新系でそう思えたのが本当に嬉しかった。でも今年もフラッドは去年を更新した。この完全無欠のロックンロールがもっと大きなステージで、もっと長い時間観れることをずっと信じている。
1.ベストライド
2.The Beautiful Monkeys
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.フルカラープログラム
6.ハイテンションソング
7.シーガル
ハイテンションソング
https://youtu.be/VEmhS4g4FOU
12:20〜 GRAPEVINE [SOUND OF FOREST]
2001年の開催第2回にGRASS STAGEで初出演。翌年以降は自他共に認める「LAKEの番人」として2000年代のこのフェスの顔だった、GRAPEVINE。実に10年以上経てのひたちなか帰還。
まだ強い日が照らす中、おなじみの金戸覚(ベース)、高野勲(キーボード)を含めたメンバーがステージに登場すると、田中和将(ボーカル&ギター)がアコギを弾きながら歌い始めたのは「Arma」。このフェスのステージの中でも特に牧歌的な雰囲気の強いSOUND OF FORESTが
「武器は要らない 次の夏が来ればいい」
というフレーズと柔らかくも温かいバンドのサウンドに包まれていく。
しかしながら続く「FLY」では西川弘剛のギターが引っ張るロックチューンで、メンバーの鳴らす音が激しくぶつかり合う中に田中のボーカルが実によく伸びる。かつてはLAKE STAGEで何度も鳴らされてきた曲である。
「詳しくは調べてないんだけど、多分10年以上ぶりに帰ってきました、ひたちなか!」
と田中がテンション高くこの場所への帰還を告げると、至高の名曲「風待ち」を穏やかな風が吹くこの森の中で響かせる。その姿はかつての「LAKEの番人」という称号以上にこのSOUND OF FORESTに似合っている。
「あの頃見てたもの あれもこれも遠すぎて」
というフレーズの通りに、バンドの状況も、このフェスで立つステージも変わったし、何よりも常連だった当時は全然演奏していなかったこうした名曲シングル曲を演奏するようなスタイルに変わっている。
かつて弟分と言えるNICO Touches the Wallsの光村とのこのフェスのバックヤード対談で、
「フェスでこそ自分たちの1番濃い部分を見せるべき」
と言っていたが、その心境はきっとだいぶ変わっているし、バンド自身も中堅からベテランという立場になった。何も変わらないわけがないのである。
バンドの代表曲にして、かつてはこんなにもフェスで毎回演奏されるような定番曲になるとは全く思っていなかった「光について」に続いてはバンドの最新の姿もしっかり見せるべく、最新アルバム「ALL THE LIGHT」のタイトルチューン的な「Alright」も披露。
「いま大人になって 或いは親になってさ
何もかもが全部遠く感じてる」
という歌詞は今の年齢になったからこそ歌える歌詞ではあるが、かつては難解の極み的なものだったその歌詞のシンプルさには改めて驚かされる。
「次にまたいつ来れるかわからんけど、ひたちなかありがとっ!」
と田中が挨拶すると最後に演奏されたのはライブの終わりが実によく似合う「Everyman, Everywhere」。かつてLAKEで演奏されていた時はそのキャパにピッタリのスケールをもった雄大な曲だと思っていたが、スケールはそのままに、今のバンドで鳴らされるとこのバンドはFORESTが実によく似合うようになったんだな、と思えた。
かつてLAKEに出ていた頃は、矢沢永吉、坂本龍一、岡村靖幸ら、このバンドはいつも大物の真裏でライブをしていた。それでも毎回LAKEはちゃんと埋まっていたし、フェス側からもその位置を託されるくらいに信頼されていた。つまり、間違いなくこのフェスを支えていたバンドなのである。
だからこそ、田中は自虐的に「次いつ来れるかわからん」と言っていたけれど、またこれからは昔のように毎年、LAKEの番人ではなくて森の番人としてこのフェスを支えてくれないだろうか、と思っている。
1.Arma
2.FLY
3.風待ち
4.光について
5.Alright
6.Everyman, Everywhere
Alright
https://youtu.be/DpdSEfIPFcQ
13:50〜 Czecho No Republic [BUZZ STAGE]
かつてはLAKE STAGEにも立ったことのある、Czecho No Republic。直前には武井優心(ボーカル&ベース)とタカハシマイ(ボーカル&キーボード&ギター)がバンド内結婚を発表するというおめでたいニュースもあった中での出演。
いきなりの手拍子が鳴り響く「Amazing Parade」の武井とタカハシマイの男女混声の歌声がこのバンド特有の多幸感を生み出し、それはフェスという場の空気によってどんどん増幅されていく。そこにはBUZZ STAGEを満員になるくらいに観客が詰めかけていたという要素も間違いなくあったはず。
この日トリのアクトが終わった後に上がる花火に想いを馳せざるを得ない「Fireworks」では打ち込みのサウンドも使う中で武井はハンドマイク姿での歌唱となる。屋根があるステージというのは日陰になるという意味ではいいものであるが、この曲に関してはやはり空の下で聞きたかったという気持ちも強い。
その一方で鮮やかな金髪になったタカハシマイの、その容姿以上に美しいボーカルが伸びやかに響く「Electric Girl」、リリースされたばかりの「Forever Summer」と、かつてのこのフェスに出演してきた時もそう思わせたが、このバンドは夏が似合う曲、夏をテーマにした曲が多い。武井は決して夏にみんなでワイワイするような人間性の男ではない暗いメンタリティの人だが、だからこそ夏の暑さやキラキラした雰囲気に憧れているのかもしれないし、それをしっかり自分たちの音楽にできているのはさすがだ。
客席からはやはり「おめでとうー!」という歓声が飛んでいたが、言葉は少なく、ひたすらに演奏でその声に応えていく。武井もタカハシマイも新たな責任感が芽生えたのか、それとも愛する人がすぐ隣にいることによる力か、歌っている姿や声からかつてない自信の漲りっぷりを感じる。
そんな感謝への思いをフェスという場所だからこそ音にしてみせたのは、タカハシマイがアコギを弾く「Festival」。
「笑って輪になって僕ら踊ろうよ」
というフェスならではの光景を描いた曲であるが、だいぶ持ち曲が増えた今でもこの曲をフェスで演奏してくれるというのは嬉しい限りである。
そしてラストの「OH YEAH!!!!!!!」では武井がベースを置いてハンドマイク歌唱に切り替わると、なぜかギターを弾く砂川一黄の背中の上に馬乗りになるというパフォーマンスを見せる。フェスならではの高揚感によって生まれた光景だったのかもしれないけれど、そうした姿とこのバンドの多幸感溢れるサウンドはやはりフェスという場には欠かせないものだ。
最後の砂川の恒例の「エンジョーイ!」も含め、5人から4人になっても、かつて出ていたところよりも小さいステージになってもその楽しさは変わらないし、かつてSOUND OF FORESTのトリを務めた時に武井の声が全く出なくなってしまった、ということももうない。というか、そうした悔しさもこの場所で味わったりしたからこそ、こうして楽しい空間を作り出すことができている。
1.Amazing Parade
2.Fireworks
3.Electric Girl
4.Forever Summer
5.Festival
6.OH YEAH!!!!!!!
Forever Summer
https://youtu.be/TdJcxbFpV6k
14:15〜 エレファントカシマシ [GRASS STAGE]
1度だけ宮本浩次の病気の治療によって出演できなかったこともあったが、20年のうちの19年に出演してきた、このフェスの生き証人的なバンド、エレファントカシマシ。今年の夏はエレカシとしての稼働はこのフェスのみであり、そこからもこのフェスに対する気合いや特別な思い入れを持っているのがわかる。
いつものようにSEもなしにメンバーがステージに登場するが、サポートメンバーのうちギターはおなじみのミッキーことヒラマミキオ(ex.東京事変)であるが、この日はキーボードが数々のアーティストのプロデューサーとしても知られる蔦谷好位置という布陣で、宮本浩次のど迫力のボーカルが驚く「ズレてる方がいい」でスタート。宮本は冒頭からギターを持つもすぐに下ろして放り投げようとする→スタッフがキャッチする、というなんのためにギターを持つのか全くわからないパフォーマンスを見せるが、これはもう宮本のその瞬間の衝動による、全く予期できないものなのであろう。
2日前にソロ名義で出演した時には1曲目に演奏された「悲しみの果て」をバンドでの出演でもしっかり演奏するのだが、横山健などによるサポートメンバーによって強力な個の集合体的なものであったソロ名義での演奏とはまた違う、6人全員でエレファントカシマシという一つの大きな塊を作っているかのような印象。それはどちらがいいとか悪いとかではなく、こうしてその違いを楽しむことができるし、それは去年までの、エレカシのみの活動では感じることができなかったものだ。そしてそうした違いを感じることによって、そもそもの楽曲の素晴らしさも改めて実感できる。
2年前のこのステージで演奏された時は宮本がステージから離れすぎてマイクから音が出なくなるというアクシデントを連発させた「デーデ」も、宮本が富永義之のカウントをじっくり聞いてタイミングをはかってから演奏したりもしたが、今回は無事に演奏しきる。
「金があればいい!」
という衝撃的な締めのフレーズを宮本が歌い切ると、
「キラキラしてるぜエビバデ!よく見えないけど!(笑)」
とおなじみの宮本節で笑わせながらも、「ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜」、松任谷由実のカバー「翳りゆく部屋」と、宮本の歌を中心にしたバラード曲を連発。やっぱり宮本は本当に歌が上手いことを実感する。
そんな宮本はなぜか履いていた靴も歌っている間に脱ぎ捨てていたのだが、さらには靴下に穴が空いているということすらも発表する。なぜわざわざそうしたことを言ったのかは全くわからないが、それもまた実に宮本らしいというか、物凄くカッコいいのにカッコいいというだけでは終わらない。何かしら笑えたり、和んだりという部分を入れてくる。
これまでのこのフェスでは「ガストロンジャー」のような攻撃的な曲や、近年は「Easy Go」や「RAINBOW」のようなパンクな曲がライブのハイライトを担ってきていたが、この日はそういった曲は演奏されず、「桜の花、舞い上がる道を」「笑顔の未来へ」という、良いメロディの曲を良い歌と良い演奏で、というエレカシの新たな黄金期の到来を告げたポップな曲が続いたのは宮本ソロではなくエレカシとしてのバンドのモードがそちらサイドだということだろうか。
そして、
「さぁ頑張ろうぜ」
という宮本のボーカルが観客の背中を強く押し、客席で拳が上がる「俺たちの明日」から、宮本の歌い出しに大歓声が上がった、これまでこのフェスで何度聴いてきたかわからない、このフェスの主題歌の一つ「今宵の月のように」、そして最後は宮本が石森の背中を押してステージ前まで引っ張り出す「ファイティングマン」と、このバンドの歴史を彩ってきた、そしてそれはそのままこのフェスの歴史を作ってきた名曲のオンパレード的なライブとなった。
1年半前のCDJだったか、EARTH STAGEのトップバッターをエレカシが務めた時に渋谷陽一は前説で
「エレカシはうちのフェスではなせが100点満点のライブをやってくれない(笑)」
と言っていた。それは渋谷陽一が他のフェスで素晴らしいパフォーマンスをしているエレカシの姿を自分たちのフェス以外でもたくさん見てきたからこそだが、この日のエレカシのライブは間違いなく100点満点のものだった。
昨年はトリとはいえ、LAKE STAGEだったことには本人たちとしても悔しい思いもあっただろうし、2000年代後半にはLAKEすらもガラガラになってしまうくらいの時期もあったけれど、やっぱりエレカシにはこのGRASS STAGEがどこよりも似合う。それは今の姿を見ているとより一層そう感じる。
1.ズレてる方がいい
2.悲しみの果て
3.デーデ
4.ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜
5.翳りゆく部屋
6.桜の花、舞い上がる道を
7.笑顔の未来へ
8.俺たちの明日
9.今宵の月のように
10.ファイティングマン
俺たちの明日
https://youtu.be/cWHU2-WnZqc
15:10〜 くるり [LAKE STAGE]
特に近年は毎年出演しているわけではないけれど、岸田繁(ボーカル&ギター)が湊屋のハム焼きを心から愛していたりと、このフェスの20年の歴史においてはやはり欠かすことのできない存在である、くるり。初のLAKE STAGEでの出演。
岸田に佐藤征史(ベース)、ファンファン(トランペット)、松本大樹(ギター)、野崎泰洋(キーボード)という近年おなじみのメンバーに加え、ドラムにはくるりのメンバーには珍しくスポーティーな出で立ちの若手・石若駿という5人で登場すると、プログレバンドかと思うくらいに難解な構成のインスト曲「Tokyo OP」でスタート。その始まり方を考えると、これまでのくるりの名曲たちが聴けるのを期待してきた人たちの予想を裏切る、初見殺し的な内容のライブになってもおかしくない。実際にくるりはこのフェスで何度もそうした最新の自分たちの姿をひたすらに見せ続けるというライブをやってきた。(この日PARK STAGEのトリを務めるフジファブリックの山内総一郎がサポートギタリストだった時がその最たるものだったかもしれない)
しかしながらそう思わせたのは最初だけで、その後はいわゆるシティーポップを音楽の知識と技術と経験が最高レベルであるくるりがやるとこんなにも素晴らしい曲になります、という灼熱のLAKE STAGEの景色が意外なくらいに似合う「琥珀色の街、上海蟹の朝」、歌詞に出てくる一部を
「ひたちなか ROCK IN JAPAN FES.」
と変えて歌って大歓声を浴びた、バンドのグルーヴも見る見るうちに高まっていく「everybody feel the same」というバンドの代表曲を演奏してこのフェスの20周年に華を添えていく。
「みんな、熱中症とか気をつけて」
とすでに自身が汗まみれになっている岸田が言うと、その暑さを和らげるようなピアノのメロディが美しい「ばらの花」、くるり初期の名曲が今の音数が増えて技術が向上した形で演奏され、岸田のボーカルも空いっぱいに伸びる「虹」、クラシックの要素を取り入れた「ブレーメン」…結果的には40分という短い時間に代表曲・名曲を詰め込んだ、ベストオブくるり的な内容となり、そんなライブの締めに演奏されたのはもちろん「東京」。
ここは関東とはいえ東京からはかなり離れた場所だが、ここでこの曲を聴くと2006年にGRASS STAGEのトリを務めた時に1曲目に演奏された時のことや、朝イチのGRASS STAGEで演奏された時など、様々な記憶が蘇ってくる。メンバーだけでなく観客全員で曲最後のコーラス部分を合唱していたら、そうしてこの「東京」が間違いなくこのフェスに刻まれてきたことを実感していた。
くるりは一時期に比べたらリリースペースはかなり落ちているし、くるり以外の活躍する場所も増えてきている岸田はインタビューで
「モチベーションがどうも上がらん」
的なことを話していた。しかしこうしてライブを見ているとモチベーションが低いなんてことは全く思えないパフォーマンスを見せてくれる。
ベテランバンドが多いと言われているこの日、そうしたバンドたちが自分たちなりの戦い方を見せてくれているが、くるりもまだまだ健在である、そう思える20周年を祝うロッキンでのライブだった。
1.Tokyo OP
2.琥珀色の街、上海蟹の朝
3.everybody feel the same
4.ばらの花
5.虹
6.ブレーメン
7.東京
琥珀色の街、上海蟹の朝
https://youtu.be/NyddMMiViZc
16:20〜 the telephones [PARK STAGE]
2015年のこのフェスの初日。GRASS STAGEのトップバッターとしてステージに立っていたのはこのバンドだった。あの日も信じられないくらいに暑かったことを今でもよく覚えている。the telephones唯一のGRASS STAGE出演は、活動休止を発表した後の、最後に出たロッキンの時だったから。
そんなthe telephonesが本格的に活動を再開し、各地の春フェスに帰還したのに続いて、このフェスにも帰ってきた。今回は初のPARK STAGEへの出演であり、石毛輝のDJも含めれば初出演の2008年のWING TENTから始まり、今このフェスに存在するステージ全てに出演したことになるという快挙である。
おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」のSEでメンバーが登場すると、ノブ(シンセサイザー)と長島涼平はこの日から販売開始された新たな夏フェスグッズである90年代のJリーグチームを彷彿とさせるサッカーシャツを着用し、石毛の
「帰ってきたぜ、ひたちなかー!」
と帰還を告げる言葉の後に「I Hate Discooooooo」、さらにははやくも「urban disco」とディスコシリーズを連発し、思い思いに踊りまくる客席の中央にはサークルも出現。その客席の中にはかつてのサッカーTシャツを着た人たちがたくさんおり、telephonesが本当にこのフェスに帰ってきたんだな、ということを実感して灼熱のダンスフロアの真っ只中でちょっとしみじみとしてしまった。
ノブがダンスを指南する「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」ではノブのその発言や挙動に笑う人の数も多かっただけに、この4年間のブランクがあっただけにこのバンドのライブをこうしてこのフェスで初めて見るという人も結構いたのかもしれない。
「太陽をミラーボールにして踊ろうぜ!」
と石毛が言うのも、LAKEのトリをやったりしたこともあったが、それ以上にこのフェスの暑い時間を踊らせまくってきたという経験と記憶が今もあるからだが、きらめくようなシンセのフレーズの「A.B.C.DISCO」でバカになって踊りまくると、イントロがライブならではのアレンジによってさらにダンサブルになった「electric girl」でただ止まっていた時間がまた動き出したというだけではない、各々がそれぞれの場所で音楽を続けてきたからこその進化したバンドの姿を4年ぶりのこのフェスのステージに刻み込んで行く。
「HABANERO」では石毛が体操選手かと思うような見事なパフォーマンスを見せて喝采を浴びるのだが、ところどころ演奏する音を外していたのはやはり暑さによるものなのだろうか。
そして
「猿のように踊ろうぜー!」
と「Monkey Discooooooo」でこの日最大かつ最高のダンスフロアを出現させると、最後は
「忘れないでいてくれたかい?待っていてくれたかい?」
という石毛の言葉が感傷を強める中で演奏された、この場所への愛と感謝を告げる「Love & DISCO」。2015年に最後に演奏された時は
「ここにいるみんなとロッキンオンとノブ夫妻に捧げます!」
と言って演奏された。それも間違いなく愛と感謝に溢れてはいたが、やはりどこか寂しさがあった。それにtelephonesは「活動休止前最後だから」というような特別な要素がなくても当たり前のようにGRASS STAGEに立つべきバンドだと思っていたのが叶わなくなってしまったから。だからあの時に100%楽しかったかと言われたらそうは言えない。
でもこの日は間違いなく心から楽しかったと言える。もう終わってしまう、見れなくなってしまうという寂しさを感じるのではなく、telephonesがこのひたちなかに帰ってきたことを告げるために、ずっと帰ってくるのを待っていてくれた人たちとこの場所に向けて、希望のみを持って鳴っていたから。
telephonesはかつて良い意味でも悪い意味でも「フェスバンド」てな称されていた。2008年に初出演してから、毎年一気に規模を拡大して、その都度入りきれないくらいの人たちがこのバンドを見るために集まっていた。紛れもなくtelephonesはこのフェスとともに大きくなってきた。それは石毛の
「ロッキンで見るtelephonesは最高なんだぜー!」
という言葉を証明するかのようだった。
そう、ここで見るtelephonesが最高だってわかってるからこそ、来年以降もこのフェスでtelephonesのライブが観たいのだ。他の休止したバンドに比べたら、不在の期間はそこまで長くはない。
でもその間、もし次にtelephonesがこのフェスに戻ってくる時に自分はこのフェスに来ていられる年齢だろうか。telephonesも休止して10年とか経ったら、またWING TENTから始めたりするのだろうか。なんて思ったりもしていた。でもそうはならなかった。あの頃とほとんど変わらないようにtelephonesのライブをここで見ることができている。不在だった3年間の空白を埋めてお釣りがくるくらい、来年からもっと楽しいことをしよう。
リハ.Yeah Yeah Yeah
1.I Hate Discooooooo
2.urban disco
3.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
4.A.B.C.DISCO
5.electric girl
6.HABANERO
7.Monkey Discooooooo
8.Love & DISCO
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
17:30〜 ストレイテナー [LAKE STAGE]
この時間になると各ステージがトリ、あるいはトリ前という時間を迎える。5日間続いてきたこのフェスももう終わってしまう。そんな切ない空気が流れ始める時間である。
LAKE STAGEはトリ前というスロット。ここに登場するのはストレイテナー。この日はベテランバンドが多いと言われている日であるが、このバンドも今や確実にそこに入っている存在である。
4人がステージに登場すると、ナカヤマシンペイの髪がかなり短い金髪になっているのに驚く中、この青い空が徐々に赤みを増していく風景によく似合う「彩雲」からスタートし、このバンドの原点的なギターロック「REMINDER」へ。
「昨日、2004年にこのステージに初出演した時の映像を見ていた。Youtubeにあったから。めちゃくちゃオラついてて、見たら恥ずかしくなった(笑)」
とホリエアツシ(ボーカル&ギター&キーボード)は回想したが、テナーは当時
「このバンドは近年のギターロックのバンドの中ではずば抜けて無愛想なバンドだ」
と書かれていた。それくらいにライブで喋ることはほとんどなかった。そんなバンドが
「その頃のオラついていた時の気持ちを思い出して演奏する」
と言った後の「The World Record」はホリエのボーカルは確かにいつも以上に尖がっていたが、そもそもが横揺れの曲であるために、シンペイが
「わかってる、わかってるよ。オラついた曲やるって言ったのに横揺れの曲やられても、っていう感じだよな(笑)だから、LAKE STAGEのバーサーカーに捧ぐ!」
と言って突入した「BERSERKER TUNE」はそのシンペイのドラムを中心に超高速化。当時はまだ存在しなかった曲であるが、この曲の演奏時は間違いなくオラつきまくっていた。近年は「優しくなった」と言われることも多いし、ホリエは同年代のバンドマンたちと同様に面白いおじさんになった。それでもまだこの尖った気持ちは失われていない。
しかしタイムテーブルの都合上、ここまで見て離脱。かつてストレイテナーは2008年にはGRASS STAGEのトリを務めたこともあるし、その後にまだまだGRASSに立てる動員力があるにもかかわらず、志願してこのLAKE STAGEのトリを務めたこともあった。それくらいにこのLAKE STAGEを愛しているバンドなのである。(昨年、PARKに出演した時もシンペイはそれらしいことを言っていた)
そんな憧れの場所であり続けるLAKE STAGEに立っている喜びが炸裂しているようなライブだった。できることならば最後まで見たかった。
REMINDER
https://youtu.be/_OeVilAk_EY
18:05〜 Dragon Ash [GRASS STAGE]
20周年を迎えたこのフェスで、20回全て出演したのは、この日に東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカルで出演した奥田民生とこのバンドのみ。しかも全て同じ名義で、全てこのGRASS STAGEに出演したのはDragon Ashだけ。朝礼の渋谷陽一の写真からもこのバンドがこのフェスにとって本当に特別な存在なことがわかるが、20周年の大トリ、ついにDragon Ashが登場。
時間になり、両サイドのスクリーンには「Next Artist is Dragon Ash」の文字に続いて、2000年の第1回開催時からこれまでの全てのこの場所での映像が映し出される。ロッキンでこんな映像はずっと来ていても今まで見たことがない。それくらいにこのライブは特別なものだし、各年のkjの姿を見ると、その時期にどんな音楽に傾倒していたのかがよくわかる。
そんな登場する前から涙腺が緩む演出の後に会場に流れ始めたのは「陽はまた昇りくりかえす」のイントロのスタンプ音。するとメンバー達もステージに登場していきなりこの曲からスタート。ベースは直前に大麻取締法違反によって逮捕されたKenKenに変わって、同じく逮捕されたJESSEがボーカルを務めるThe BONEZのTSUYOSHI。そのニュースが出た時はバンドの出演自体が危ぶまれたが、こうして傷を負った仲間同士がすぐに手を差し伸べてくれるのがこのバンドがこれまでの活動において培ってきたものだ。
ステージに立てないと思った日があっても、また陽は昇ってくりかえす。ロックバンドとしての日々は続いていく。「The Show Must Go On」はその宣誓のようにも感じた。
何度となく、というかこのフェスの20回に太陽を運び込んできた(初年度は2日目が途中で中止になったが、このバンドがトリを務めた初日は無事に完遂した)、まさにバンド界の天気の子と言えるこのバンドならではの太陽ソング「Run to the Sun」から、いきなり披露された新曲「Fly Over」ではステージ前から炎が噴き上がるという演出もあり、一気にその熱さに拍車がかかっていく。
kjとHIROKI(ギター)が向かい合って大ジャンプを決めた「Mix It Up」から、hideのカバー「ROCKET DIVE」と、ノンストップでミクスチャーロックを投下しまくっていく。少しでもたくさんの曲を演奏しようという意識だろうか。それによってライブ自体のテンポも物凄く良い。余計な時間が何もなく、流れるように次の曲に進んでいく。
またこの日はフェスのスタッフもみんなこのバンドのフェスへの愛と思いをしっかり理解しており、「Walk with Dreams」ではTSUYOSHIの後ろに置いてある2色のベースがスクリーンに映し出される。それはこの景色を見ることができなかった、IKUZONEのもの。今もバンドとともに歩き続けているということを、この空のどこかから見ているということをわからせてくれるような演出である。その前で踊るATSUSHIとDRI-Vのダンサー2人も実に穏やかな顔をしている。
久しぶりにこの会場で鳴らされた大ヒット曲「Life goes on」では観客が飛び跳ねまくり、kjが
「力貸してくれ、相棒ー!」
と言うと今年は2日目のこのステージのトリを務めた、10-FEETのTAKUMAがステージへ。コラボ曲「SKY IS THE LIMIT」をTAKUMAとのツインボーカルで披露するのだが、最後のキメで全員揃ってジャンプ…と思いきやTAKUMAはジャンプせずに変なポーズを取ってまとめてみせ、kjから突っ込まれるのだが、この日のライブはやはりどこか緊張感が強く漂っていたのをTAKUMAの存在とパフォーマンスはほぐしてくれる。
かつてDragon Ashはこのフェスの初期には毎回このステージのトリを務めていた。それくらいにあの頃のDragon Ashは時代を作ったモンスターバンドだった。その当時によくやっていた、
「携帯とかライター出して!」
と言って客席に光が灯る演出の「静かな日々の階段を」では現代ではスマホライトが輝く。同じ曲の同じような光景でも時代を経たことによって少し変わる。それによって見える景色もやはりちょっと変わる。
そしてkjはこの曲のアウトロで
「So what you want ひとつだけ
So what you need 選んだ Style」
「それぞれひとつの life
それぞれが選んだ style」
とRIP SLYME「One」のフレーズを歌った。かつて自分自身が表舞台に引っ張り上げ、何度となくこのフェスのこのステージに立ってきた仲間の音楽を、きっともう立つことはないこのステージに置いていくかのように。そこからはkjの優しさを感じることができる。
その名の通りにkjも観客も飛び跳ねまくる近年のライブ定番曲「Jump」から、かつては何度となく
「この場所の曲です!」
と言って演奏されていた、Dragon Ashの静と動をどちらも内包した「百合の咲く場所で」では一つのピークを刻むかのような盛り上がりをみせ、ステージから重低音が放たれると現れたのはラッパ我リヤのQと山田マン。2人を加えて演奏されたのはもちろん「Deep Impact」。リリース当時にシーンに衝撃を与えたロックとラップのミクスチャーが数年ぶりにひたちなかに響き渡る。ラッパ我リヤは2000年の第1回にこのフェスに出演しており、そういった意味でも20周年の大トリに相応しいゲストである。
そしていよいよ20年目の「Fantasista」のイントロが鳴る。求められることよりも自分たちがやりたいことをやってきたDragon Ash(だからこそ音楽性も変容してきた)が、それでもライブでやるのを欠かさなかった曲。もう最後だからと悟っているのか、サビでは禁止されているダイブをして運ばれていく人たちも。
ただ、近年kjはこのフェスでかなりグレーというか、黒に近いようなダイブを誘発するような発言をしてきた。ソロ名義でのアルバムリリース時にも
「俺はやっぱりライブに来てくれる奴にダイブさせたい。そういう衝動を与える音楽を作りたい」
と言っていただけに、自分がライブで見たい景色はそうしたものなんだろう。
しかしこの日はダイブが起きてたとはいえ、自分から煽るようなことはしなかった。それは、
「ロックバンドのシーンに泥を塗るようなことをしてしまってごめんなさい。こうして見にきてくれたり、それでもこいつらに出て欲しいって思ってくれる人のおかげで俺たちはこうしてステージに立てています。できるならば、俺たちをこれからもロックバンドでいさせてください」
という言葉の通りに、そうしたダイブ云々よりもこうしてステージに立てることの喜びがあったからだ。その決断に至るまでには様々な葛藤があったことも。
そのロックバンドでありたいという思いをそのまま曲にした「ROCK BAND」では山嵐のSATOSHIと、Xmas Eilienのお面を腰につけたKO-JI ZERO THREEが登場し、ロックバンドを志した原点を歌う。こうして大トリの舞台に相応しい選曲と、それをライブで演奏するために集まってくれる仲間たち。Dragon Ashがこれまでの活動で手に入れた最も大きなものは、売り上げではなくそれなのかもしれない。
SATOSHIとKO-JI ZERO THREEがステージから去ると、kjが再び口を開くが、その目元は潤んでいる。かつてもこのステージでトリをやった時、kjはいつも泣いていた。近年、Dragon Ashがトリをやったのはもう10年前だろうか。ここで久しぶりの涙である。
「このフェスには10代のガキだった頃からずっと育ててもらって…お世話になりました」
とkjは言った。「お世話になりました」という過去形の言葉尻だけを捉えたら、バンドのこのフェスからの卒業宣言と取れたかもしれない。実際、今このバンドがホーム感を感じるのはこのフェスよりも京都大作戦やOGA NAMAHAGE ROCK FESというラウド系のバンドが集まるフェスだろうし、かつてサマソニに少女時代が出演して話題になった時にkjはこのステージで、
「ロックフェスはロックバンドを愛するお前たちのものだって信じてるぜ」
とそのことについて揶揄するようなことを言ったこともある。それからこのフェスの姿も変わった。きっとkjが望むようなフェスの姿ではないのかもしれない。でも、
「まだ革命前夜!」
と言ってバンドは最後に革命の凱歌「Viva La Revolution」を鳴らした。かつてのように
「Viva La ROCKIN' ON!」
と歌詞を変えるようなことはしなかったけれど、その姿からはこれからもこのステージでDragon Ashを観れると思った。きっと、
「お世話になりました」
と言ったのはkjが泣いていてすぐに言い終わるようにしたからだろう。
演奏後、TSUYOSHIはIKUZONEのベースを高く掲げた。彼にこの20年目の景色を見せるように。きっと人によってはこのバンドが出ることに対して色々な意見もあると思う。でも、間違いなくここでこのバンドを見れて良かった。
20周年のこのフェスのGRASS STAGEを締めくくるのにこんなに相応しいバンドはこのバンドしかいなかっただろう。色んなアーティストの夢であり、憧れの場所である日本で1番大きなフェスの1番大きなステージは、このバンドがそこまで大きくしてきたと言ってもいいし、GRASS STAGEは20年間ずっとこのバンドのために存在し続けたのかもしれない。
初めてこのフェスに来た時も、Dragon Ashがトリだった。まだ10代の千葉の田舎の少年だった自分は、そもそもライブに来たことがほとんどなかった。だからどうやってライブを楽しめばいいのか、ということも知らなかったし、ライブで盛り上がったり、それを友達に見られるのが気恥ずかしかったりした。
そんな自分がDragon Ashのkjが
「飛び跳ねろー!」
と言った時に、勝手に体が飛び跳ねていた。恥ずかしいとか一切思わないほどに。
あの時に感じた、Dragon Ashの凄さ。まさにその時代のシーンを動かしていたというオーラみたいなものもあったが、それは今でも全く色褪せることなく自分のロックの衝動を突き動かし続けている。また来年からもGRASS STAGEで観れるのを楽しみにしてるよ。
1.陽はまた昇りくりかえす
2.The Show Must Go On
3.Run to the Sun
4.Fly Over (新曲)
5.Mix It Up
6.ROCKET DIVE
7.Walk with Dreams
8.Life goes on
9.SKY IS THE LIMIT w/ TAKUMA
10.静かな日々の階段を
11.Jump
12.百合の咲く場所で
13.Deep Impact w/ ラッパ我リヤ
14.Fantasista
15.ROCK BAND w/ SATOSHI, KO-JI ZERO THREE
16.Viva La Revolution
陽はまた昇りくりかえす
https://youtu.be/8T6LW_6WxLU
普段、仕事をして帰って寝て、という生活を繰り返していると、楽しいと思えることってそうそうない。でもこの場所に来ると、心から楽しいと思える。このフェス自体もいろんなものが変わったし、今も変わり続けているけれど、ここにいる時に1番楽しいと思えるのは初めて来た時から全く変わっていない。
だから来年も、これから先もずっと。SNSやクイックレポだけ見ていたら悔しくて仕方がなくなるだろうから、変わらずにあの場所に足を運び続けたい。
改めて、20周年おめでとうございます。行き始めて16年、ありがとうございます。これからもよろしく、この世で1番好きなライブ会場。
Next→ 8/13 yonige @日本武道館
そもそもこの日は開催前には台風の接近が予想されていたし、直前まで雨予報だった。しかし蓋を開けてみれば完全に晴れ模様だし、なんなら5日間で1番暑くすら感じる。改めてロッキンオンの、渋谷陽一の持つ力の凄さにビックリせざるを得ない。
この日以外の4日間は全てLAKE STAGEかPARK STAGEで幕開けを迎えていたのだが、この日は今年最初で最後のGRASS STAGEでの朝礼。フェス業界最強の晴れ男である渋谷陽一は20年間のこのフェスの歩みの中でターニングポイントになった、ダイブ禁止のルールを作った理由をしっかりと伝え、震災の年にひたちなか市に「絶対開催して欲しい」と言われて開催を決めたというこの場所への思いを語った。
そして2000年に初開催された時の渋谷陽一の写真シリーズ、この日はスペシャルバージョンとして、この場所を渋谷陽一とともに愛し続けてきた、Dragon Ashとの楽屋フォト。上半身裸でポーズを決める若き日のDragon Ashに囲まれている渋谷陽一はヤンキーに絡まれているおっさんのようにも見えるが、
「後ろに馬場君も写ってますけど、彼はこの場所が本当に好きだった。彼に20周年のこの場所を見て欲しかった」
と、2012年に急逝したIKUZONEに触れる。もう何回聞いたかわからない渋谷陽一の前説でこんなに泣きそうになるなんて思わなかったし、この日の主役が誰なのかということがこの短い時間でわかった。
10:30〜 MONGOL800 [GRASS STAGE]
2005年にこのGRASS STAGEに初出演した際に、初めてこのステージで演奏前にメンバー本人がサウンドチェックをしたバンドとしてこのフェスの記録に刻まれているバンド、MONGOL800。渋谷陽一からは
「キヨサクだけはめちゃくちゃ太った」
と紹介されていた。
モンパチは今年、バンドの形が変わった。ギターの儀間崇が脱退し、キヨサクと高里悟(ドラム)の2人になった。この日、ステージにギターを持って登場したのは、なんとWANIMAのKO-SHIN。さらにはホーン隊の2人も加え、
「沖縄より暑いじゃないかー!」
というこのフェスではおなじみの挨拶(毎回言ってるだけにこのフェスがどれだけ暑いかがわかる)から、
「今日は宴じゃ、PARTYじゃー!」
とその名の通りのパーティーアンセム「PARTY」からスタートするというフェスならではの多幸感をさらに増幅するオープニング。さらにははやくも「あなたに」を演奏するのだが、儀間がいなくなったことによって彼のボーカルフレーズはどうするのだろうかと思っていた。そうするとその部分をなんとKO-SHINが歌う。WANIMAでもコーラスこそしているが、単独で喋ることがほとんどないKO-SHINのまさかのボーカルに沸く客席。ギターの完璧な演奏を見ていてもKO-SHINがずっとモンパチを好きだったことがよくわかるが、それだけでなく入念に練習やリハを行なってきたのだろうし、WANIMAというスケジュール的に忙しい超人気バンドのメンバーでありながらもこうしてサポートメンバーとしてモンパチとステージに立つことにした覚悟が伺える。
すると「OKINAWA CALLING」ではグレコローマンスタイルのダンサー、粒マスタード安次嶺がステージに登場し、曲のリズムに合わせた独特のダンスで爆笑を巻き起こす。キヨサクの高校の先輩という間柄らしいが、この曲だけかと思いきやこの後のライブ全編にわたって、時に息を切らしたりしながら踊り続ける。間違いなくこの日この時間、このフェスで最も運動量が多いのは彼である。
ハッピーなウェディングソング「honeymoon」の後には
「沖縄の歌姫の曲を勝手に歌い継ぐ」
ということで、安室奈美恵「TRY ME 〜私を信じて〜」のカバーを演奏。昨年からやっている試みらしいが、モンパチらしいパンクとレゲエをミックスさせたアレンジは、この原曲を知らない世代からしたらこのバンドの新曲だと思われても仕方がないくらいにこのバンドの音楽になっている。この曲すらもモンパチのギターとして演奏できるKO-SHINは改めて凄いギタリストだと思う。
そして歌い出しから大合唱が起きたのはもちろん「小さな恋のうた」。かつてキヨサクはインタビューで、
「1回、僕らはその曲だけのバンドじゃない、って思って「あなたに」も「小さな恋のうた」もやらなかったことがあるんですけど、ライブ終わった後になんか落ち込んで(笑)それからは毎回やるようにしてます」
と言っていたが、いつまでこの曲をやってるんだ、と誰かに言われようともこの曲をライブで聴けるのはやっぱり嬉しい。
「夢ならば覚めないで 夢ならば覚めないで」
のフレーズをキヨサクは観客に委ねると、観客の声のみの大合唱が。この曲はもうモンパチの曲というよりは我々みんなの曲になっているし、こうして何万人もの人たちが一緒になって歌えるパンクというこのバンドが築き上げたものは、今このバンドでギターを弾いているKO-SHINのWANIMAに確かに受け継がれている。そしてまたそれはWANIMAからさらに若い世代に受け継がれていくのだろう。
そしてラストの「DON'T WORRY BE HAPPY」では各メンバーのソロ回しに加え、無尽蔵なのかと思うくらいの体力を見せる粒マスタード安次嶺のダンスソロも披露されたかと思いきや、その安次嶺と同じ格好をしたWANIMAのドラムのFUJIがダンサーとして登場し、さらにはKENTAもボーカルとして、WANIMA総登場。そんなトップバッターにしてこの日のクライマックスのような景色を見せてくれたモンパチはまだまだ終わらない。
儀間が脱退し、その後にサポートメンバーとしてバンドを支えたヨースケ@HOMEは若くして急逝した。そうした背景を考えると、不安だったり悲しみを抱えてこのライブに臨んだ人も少なくはなかったと思う。しかしモンパチはそんな感傷を一切感じさせない、ひたすらに楽しいライブをやり切ってみせた。そもそもモンパチはずっとこういうバンドだったし、沖縄の気候そのもののように熱く、暖かいバンドだった。これからも、何にも心配はいらないのかもしれない。
1.PARTY
2.あなたに
3.Love song
4.OKINAWA CALLING
5.honeymoon
6.TRY ME 〜私を信じて〜 (安室奈美恵のカバー)
7.小さな恋のうた
8.DON'T WORRY BE HAPPY
小さな恋のうた
https://youtu.be/u8EkSB9zSpE
11:20〜 a flood of circle [BUZZ STAGE]
2年連続のBUZZ STAGE出演。それは昨年のこのステージでのライブが本当に素晴らしいものだったからだと思っている、a flood of circle。素晴らしすぎて4本足を運んだツアーを終えての出演。
メンバーが登場すると、やはり佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黒の革ジャンを着用しており、メンバー全員が黒の衣装で統一されているという真夏とは思えない暑苦しい出で立ち。
そんな中で
「俺たちのベストはいつも今なんだよ」
と昨年のベスト的なライブを更新しようとする意識しか感じない「ベストライド」でスタートすると、
「ROCK IN JAPAN FES.にロックンロール持ってきました、a flood of circleです!」
と亮介が挨拶して、最前ブロックは激しいモッシュの嵐となる「The Beautiful Monkeys」、アオキテツ(ギター)だけでなく亮介もギターを弾きまくるアウトロのアレンジがなされた「Dancing Zombiez」、亮介がハンドマイクでステージを歩き回りながら歌う「Sweet Home Battle Field」とひたすらにアッパーなロックンロールサイドのキラーチューンを連発。
何度となくこのフェスに出てはいるけれど、2013年にSOUND OF FORESTのトリを務めた時(「FOREST WALKER」というレア曲をやった)以外は全て持ち時間30分という短い時間しか与えられていないし、それは他のフェスでも同様だ。そうしたフェスでのライブを繰り返すうちにこのバンドが辿り着いたスタイルが、MCなしでひたすらにこうしたアッパーなロックンロールをぶち込みまくるというものなのだろう。そしてそれが最も自分たちのカッコよさ、ロックンロールのカッコよさを伝えることができるというのをこのバンドはしっかりわかっている。
すると亮介が、
「ロックってなんでもありだよな!なんでもあり最高!だから友達の曲やるわ!」
と言って演奏したのは、なんとUNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバムに収録された「フルカラープログラム」のカバー。原曲のきらめくキャッチーさを活かしながらもロックンロール濃度を強めたアレンジはユニゾンの田淵とともにTHE KEBABSで活動している亮介がいるバンドだからこその愛あるものであるが、フェスとワンマンを比べたらそのバンドを見るためだけなら絶対にワンマンの方がいい。たくさん曲も聴けるし、そのバンドだけに浸ることができる。だから逆にワンマンに行ったらフェスにわざわざ見に行かなくてもいいという言説もわかるのだが、直近のツアーでワンマンを何回見ている身であっても、ここで見れてよかったと思える。そうした特別なことをやってくれる。てっきりユニゾンのトリビュートライブまではやらないと思っていたこの曲を聴けたのはバンド側のそうした意識が少なからずあったからだと思っている。
「ロッキン!テンションが低いんじゃないですか!?」
と言って演奏されたのはツアーのタイトルにもなっていた、最新アルバム「CENTER OF THE EARTH」収録の「ハイテンションソング」。HISAYO(ベース)と渡邊一丘もコーラスを務めて、去年よりも明らかに人が多く入ったBUZZ STAGEをさらにハイテンションにしていくのだが、てっきりアルバムからはタイトル曲の「Center Of The Earth」がフェスでやる曲になるかと思っていたのだが、この曲を選んだのはやはりひたすらにロックンロールに、ひたすら熱く、という今のこのバンドのモードを象徴している。
そんな中でこの日も最後に演奏されたのは、
「俺たちとあんたらの明日に捧げます!」
と言ってから演奏された「シーガル」。ワンマンとは違って亮介が客席にマイクを向けることはなかったが、今のこのバンドの絶好調っぷり、まさにベストが今であるということを示すにはあまりに充分過ぎる30分であった。
正直、フラッドは毎年このフェスに出れるかどうか微妙なライン上にいるバンドだ。突出した動員力や売り上げや話題性があるバンドじゃないから。でもこのフェスに出るたびにフラッドはこのフェスの名前にある「ROCK」の部分を背負おうとしてきた。そんなバンドはなかなかいないし、何よりもそうして呼んでくれるたびにそれまでの自分たちのベストを更新するようなライブを見せてそうして呼んでくれる期待に応えてきた。その姿をずっと見てきたからこそ、来年は開催が3日間のみなって今年より100組くらい出演者が減ったとしてもこのバンドの名前がラインアップに並んでいることを心から願っている。
去年のフラッドのライブはロッキンに15年通ってきた中でもTOP5に入るくらいに本当に素晴らしかった。「伝説の大御所のレアなライブ」ではなく、10年以上見てきたフラッドのライブの最新系でそう思えたのが本当に嬉しかった。でも今年もフラッドは去年を更新した。この完全無欠のロックンロールがもっと大きなステージで、もっと長い時間観れることをずっと信じている。
1.ベストライド
2.The Beautiful Monkeys
3.Dancing Zombiez
4.Sweet Home Battle Field
5.フルカラープログラム
6.ハイテンションソング
7.シーガル
ハイテンションソング
https://youtu.be/VEmhS4g4FOU
12:20〜 GRAPEVINE [SOUND OF FOREST]
2001年の開催第2回にGRASS STAGEで初出演。翌年以降は自他共に認める「LAKEの番人」として2000年代のこのフェスの顔だった、GRAPEVINE。実に10年以上経てのひたちなか帰還。
まだ強い日が照らす中、おなじみの金戸覚(ベース)、高野勲(キーボード)を含めたメンバーがステージに登場すると、田中和将(ボーカル&ギター)がアコギを弾きながら歌い始めたのは「Arma」。このフェスのステージの中でも特に牧歌的な雰囲気の強いSOUND OF FORESTが
「武器は要らない 次の夏が来ればいい」
というフレーズと柔らかくも温かいバンドのサウンドに包まれていく。
しかしながら続く「FLY」では西川弘剛のギターが引っ張るロックチューンで、メンバーの鳴らす音が激しくぶつかり合う中に田中のボーカルが実によく伸びる。かつてはLAKE STAGEで何度も鳴らされてきた曲である。
「詳しくは調べてないんだけど、多分10年以上ぶりに帰ってきました、ひたちなか!」
と田中がテンション高くこの場所への帰還を告げると、至高の名曲「風待ち」を穏やかな風が吹くこの森の中で響かせる。その姿はかつての「LAKEの番人」という称号以上にこのSOUND OF FORESTに似合っている。
「あの頃見てたもの あれもこれも遠すぎて」
というフレーズの通りに、バンドの状況も、このフェスで立つステージも変わったし、何よりも常連だった当時は全然演奏していなかったこうした名曲シングル曲を演奏するようなスタイルに変わっている。
かつて弟分と言えるNICO Touches the Wallsの光村とのこのフェスのバックヤード対談で、
「フェスでこそ自分たちの1番濃い部分を見せるべき」
と言っていたが、その心境はきっとだいぶ変わっているし、バンド自身も中堅からベテランという立場になった。何も変わらないわけがないのである。
バンドの代表曲にして、かつてはこんなにもフェスで毎回演奏されるような定番曲になるとは全く思っていなかった「光について」に続いてはバンドの最新の姿もしっかり見せるべく、最新アルバム「ALL THE LIGHT」のタイトルチューン的な「Alright」も披露。
「いま大人になって 或いは親になってさ
何もかもが全部遠く感じてる」
という歌詞は今の年齢になったからこそ歌える歌詞ではあるが、かつては難解の極み的なものだったその歌詞のシンプルさには改めて驚かされる。
「次にまたいつ来れるかわからんけど、ひたちなかありがとっ!」
と田中が挨拶すると最後に演奏されたのはライブの終わりが実によく似合う「Everyman, Everywhere」。かつてLAKEで演奏されていた時はそのキャパにピッタリのスケールをもった雄大な曲だと思っていたが、スケールはそのままに、今のバンドで鳴らされるとこのバンドはFORESTが実によく似合うようになったんだな、と思えた。
かつてLAKEに出ていた頃は、矢沢永吉、坂本龍一、岡村靖幸ら、このバンドはいつも大物の真裏でライブをしていた。それでも毎回LAKEはちゃんと埋まっていたし、フェス側からもその位置を託されるくらいに信頼されていた。つまり、間違いなくこのフェスを支えていたバンドなのである。
だからこそ、田中は自虐的に「次いつ来れるかわからん」と言っていたけれど、またこれからは昔のように毎年、LAKEの番人ではなくて森の番人としてこのフェスを支えてくれないだろうか、と思っている。
1.Arma
2.FLY
3.風待ち
4.光について
5.Alright
6.Everyman, Everywhere
Alright
https://youtu.be/DpdSEfIPFcQ
13:50〜 Czecho No Republic [BUZZ STAGE]
かつてはLAKE STAGEにも立ったことのある、Czecho No Republic。直前には武井優心(ボーカル&ベース)とタカハシマイ(ボーカル&キーボード&ギター)がバンド内結婚を発表するというおめでたいニュースもあった中での出演。
いきなりの手拍子が鳴り響く「Amazing Parade」の武井とタカハシマイの男女混声の歌声がこのバンド特有の多幸感を生み出し、それはフェスという場の空気によってどんどん増幅されていく。そこにはBUZZ STAGEを満員になるくらいに観客が詰めかけていたという要素も間違いなくあったはず。
この日トリのアクトが終わった後に上がる花火に想いを馳せざるを得ない「Fireworks」では打ち込みのサウンドも使う中で武井はハンドマイク姿での歌唱となる。屋根があるステージというのは日陰になるという意味ではいいものであるが、この曲に関してはやはり空の下で聞きたかったという気持ちも強い。
その一方で鮮やかな金髪になったタカハシマイの、その容姿以上に美しいボーカルが伸びやかに響く「Electric Girl」、リリースされたばかりの「Forever Summer」と、かつてのこのフェスに出演してきた時もそう思わせたが、このバンドは夏が似合う曲、夏をテーマにした曲が多い。武井は決して夏にみんなでワイワイするような人間性の男ではない暗いメンタリティの人だが、だからこそ夏の暑さやキラキラした雰囲気に憧れているのかもしれないし、それをしっかり自分たちの音楽にできているのはさすがだ。
客席からはやはり「おめでとうー!」という歓声が飛んでいたが、言葉は少なく、ひたすらに演奏でその声に応えていく。武井もタカハシマイも新たな責任感が芽生えたのか、それとも愛する人がすぐ隣にいることによる力か、歌っている姿や声からかつてない自信の漲りっぷりを感じる。
そんな感謝への思いをフェスという場所だからこそ音にしてみせたのは、タカハシマイがアコギを弾く「Festival」。
「笑って輪になって僕ら踊ろうよ」
というフェスならではの光景を描いた曲であるが、だいぶ持ち曲が増えた今でもこの曲をフェスで演奏してくれるというのは嬉しい限りである。
そしてラストの「OH YEAH!!!!!!!」では武井がベースを置いてハンドマイク歌唱に切り替わると、なぜかギターを弾く砂川一黄の背中の上に馬乗りになるというパフォーマンスを見せる。フェスならではの高揚感によって生まれた光景だったのかもしれないけれど、そうした姿とこのバンドの多幸感溢れるサウンドはやはりフェスという場には欠かせないものだ。
最後の砂川の恒例の「エンジョーイ!」も含め、5人から4人になっても、かつて出ていたところよりも小さいステージになってもその楽しさは変わらないし、かつてSOUND OF FORESTのトリを務めた時に武井の声が全く出なくなってしまった、ということももうない。というか、そうした悔しさもこの場所で味わったりしたからこそ、こうして楽しい空間を作り出すことができている。
1.Amazing Parade
2.Fireworks
3.Electric Girl
4.Forever Summer
5.Festival
6.OH YEAH!!!!!!!
Forever Summer
https://youtu.be/TdJcxbFpV6k
14:15〜 エレファントカシマシ [GRASS STAGE]
1度だけ宮本浩次の病気の治療によって出演できなかったこともあったが、20年のうちの19年に出演してきた、このフェスの生き証人的なバンド、エレファントカシマシ。今年の夏はエレカシとしての稼働はこのフェスのみであり、そこからもこのフェスに対する気合いや特別な思い入れを持っているのがわかる。
いつものようにSEもなしにメンバーがステージに登場するが、サポートメンバーのうちギターはおなじみのミッキーことヒラマミキオ(ex.東京事変)であるが、この日はキーボードが数々のアーティストのプロデューサーとしても知られる蔦谷好位置という布陣で、宮本浩次のど迫力のボーカルが驚く「ズレてる方がいい」でスタート。宮本は冒頭からギターを持つもすぐに下ろして放り投げようとする→スタッフがキャッチする、というなんのためにギターを持つのか全くわからないパフォーマンスを見せるが、これはもう宮本のその瞬間の衝動による、全く予期できないものなのであろう。
2日前にソロ名義で出演した時には1曲目に演奏された「悲しみの果て」をバンドでの出演でもしっかり演奏するのだが、横山健などによるサポートメンバーによって強力な個の集合体的なものであったソロ名義での演奏とはまた違う、6人全員でエレファントカシマシという一つの大きな塊を作っているかのような印象。それはどちらがいいとか悪いとかではなく、こうしてその違いを楽しむことができるし、それは去年までの、エレカシのみの活動では感じることができなかったものだ。そしてそうした違いを感じることによって、そもそもの楽曲の素晴らしさも改めて実感できる。
2年前のこのステージで演奏された時は宮本がステージから離れすぎてマイクから音が出なくなるというアクシデントを連発させた「デーデ」も、宮本が富永義之のカウントをじっくり聞いてタイミングをはかってから演奏したりもしたが、今回は無事に演奏しきる。
「金があればいい!」
という衝撃的な締めのフレーズを宮本が歌い切ると、
「キラキラしてるぜエビバデ!よく見えないけど!(笑)」
とおなじみの宮本節で笑わせながらも、「ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜」、松任谷由実のカバー「翳りゆく部屋」と、宮本の歌を中心にしたバラード曲を連発。やっぱり宮本は本当に歌が上手いことを実感する。
そんな宮本はなぜか履いていた靴も歌っている間に脱ぎ捨てていたのだが、さらには靴下に穴が空いているということすらも発表する。なぜわざわざそうしたことを言ったのかは全くわからないが、それもまた実に宮本らしいというか、物凄くカッコいいのにカッコいいというだけでは終わらない。何かしら笑えたり、和んだりという部分を入れてくる。
これまでのこのフェスでは「ガストロンジャー」のような攻撃的な曲や、近年は「Easy Go」や「RAINBOW」のようなパンクな曲がライブのハイライトを担ってきていたが、この日はそういった曲は演奏されず、「桜の花、舞い上がる道を」「笑顔の未来へ」という、良いメロディの曲を良い歌と良い演奏で、というエレカシの新たな黄金期の到来を告げたポップな曲が続いたのは宮本ソロではなくエレカシとしてのバンドのモードがそちらサイドだということだろうか。
そして、
「さぁ頑張ろうぜ」
という宮本のボーカルが観客の背中を強く押し、客席で拳が上がる「俺たちの明日」から、宮本の歌い出しに大歓声が上がった、これまでこのフェスで何度聴いてきたかわからない、このフェスの主題歌の一つ「今宵の月のように」、そして最後は宮本が石森の背中を押してステージ前まで引っ張り出す「ファイティングマン」と、このバンドの歴史を彩ってきた、そしてそれはそのままこのフェスの歴史を作ってきた名曲のオンパレード的なライブとなった。
1年半前のCDJだったか、EARTH STAGEのトップバッターをエレカシが務めた時に渋谷陽一は前説で
「エレカシはうちのフェスではなせが100点満点のライブをやってくれない(笑)」
と言っていた。それは渋谷陽一が他のフェスで素晴らしいパフォーマンスをしているエレカシの姿を自分たちのフェス以外でもたくさん見てきたからこそだが、この日のエレカシのライブは間違いなく100点満点のものだった。
昨年はトリとはいえ、LAKE STAGEだったことには本人たちとしても悔しい思いもあっただろうし、2000年代後半にはLAKEすらもガラガラになってしまうくらいの時期もあったけれど、やっぱりエレカシにはこのGRASS STAGEがどこよりも似合う。それは今の姿を見ているとより一層そう感じる。
1.ズレてる方がいい
2.悲しみの果て
3.デーデ
4.ハナウタ 〜遠い昔からの物語〜
5.翳りゆく部屋
6.桜の花、舞い上がる道を
7.笑顔の未来へ
8.俺たちの明日
9.今宵の月のように
10.ファイティングマン
俺たちの明日
https://youtu.be/cWHU2-WnZqc
15:10〜 くるり [LAKE STAGE]
特に近年は毎年出演しているわけではないけれど、岸田繁(ボーカル&ギター)が湊屋のハム焼きを心から愛していたりと、このフェスの20年の歴史においてはやはり欠かすことのできない存在である、くるり。初のLAKE STAGEでの出演。
岸田に佐藤征史(ベース)、ファンファン(トランペット)、松本大樹(ギター)、野崎泰洋(キーボード)という近年おなじみのメンバーに加え、ドラムにはくるりのメンバーには珍しくスポーティーな出で立ちの若手・石若駿という5人で登場すると、プログレバンドかと思うくらいに難解な構成のインスト曲「Tokyo OP」でスタート。その始まり方を考えると、これまでのくるりの名曲たちが聴けるのを期待してきた人たちの予想を裏切る、初見殺し的な内容のライブになってもおかしくない。実際にくるりはこのフェスで何度もそうした最新の自分たちの姿をひたすらに見せ続けるというライブをやってきた。(この日PARK STAGEのトリを務めるフジファブリックの山内総一郎がサポートギタリストだった時がその最たるものだったかもしれない)
しかしながらそう思わせたのは最初だけで、その後はいわゆるシティーポップを音楽の知識と技術と経験が最高レベルであるくるりがやるとこんなにも素晴らしい曲になります、という灼熱のLAKE STAGEの景色が意外なくらいに似合う「琥珀色の街、上海蟹の朝」、歌詞に出てくる一部を
「ひたちなか ROCK IN JAPAN FES.」
と変えて歌って大歓声を浴びた、バンドのグルーヴも見る見るうちに高まっていく「everybody feel the same」というバンドの代表曲を演奏してこのフェスの20周年に華を添えていく。
「みんな、熱中症とか気をつけて」
とすでに自身が汗まみれになっている岸田が言うと、その暑さを和らげるようなピアノのメロディが美しい「ばらの花」、くるり初期の名曲が今の音数が増えて技術が向上した形で演奏され、岸田のボーカルも空いっぱいに伸びる「虹」、クラシックの要素を取り入れた「ブレーメン」…結果的には40分という短い時間に代表曲・名曲を詰め込んだ、ベストオブくるり的な内容となり、そんなライブの締めに演奏されたのはもちろん「東京」。
ここは関東とはいえ東京からはかなり離れた場所だが、ここでこの曲を聴くと2006年にGRASS STAGEのトリを務めた時に1曲目に演奏された時のことや、朝イチのGRASS STAGEで演奏された時など、様々な記憶が蘇ってくる。メンバーだけでなく観客全員で曲最後のコーラス部分を合唱していたら、そうしてこの「東京」が間違いなくこのフェスに刻まれてきたことを実感していた。
くるりは一時期に比べたらリリースペースはかなり落ちているし、くるり以外の活躍する場所も増えてきている岸田はインタビューで
「モチベーションがどうも上がらん」
的なことを話していた。しかしこうしてライブを見ているとモチベーションが低いなんてことは全く思えないパフォーマンスを見せてくれる。
ベテランバンドが多いと言われているこの日、そうしたバンドたちが自分たちなりの戦い方を見せてくれているが、くるりもまだまだ健在である、そう思える20周年を祝うロッキンでのライブだった。
1.Tokyo OP
2.琥珀色の街、上海蟹の朝
3.everybody feel the same
4.ばらの花
5.虹
6.ブレーメン
7.東京
琥珀色の街、上海蟹の朝
https://youtu.be/NyddMMiViZc
16:20〜 the telephones [PARK STAGE]
2015年のこのフェスの初日。GRASS STAGEのトップバッターとしてステージに立っていたのはこのバンドだった。あの日も信じられないくらいに暑かったことを今でもよく覚えている。the telephones唯一のGRASS STAGE出演は、活動休止を発表した後の、最後に出たロッキンの時だったから。
そんなthe telephonesが本格的に活動を再開し、各地の春フェスに帰還したのに続いて、このフェスにも帰ってきた。今回は初のPARK STAGEへの出演であり、石毛輝のDJも含めれば初出演の2008年のWING TENTから始まり、今このフェスに存在するステージ全てに出演したことになるという快挙である。
おなじみの「Happiness, Happiness, Happiness」のSEでメンバーが登場すると、ノブ(シンセサイザー)と長島涼平はこの日から販売開始された新たな夏フェスグッズである90年代のJリーグチームを彷彿とさせるサッカーシャツを着用し、石毛の
「帰ってきたぜ、ひたちなかー!」
と帰還を告げる言葉の後に「I Hate Discooooooo」、さらにははやくも「urban disco」とディスコシリーズを連発し、思い思いに踊りまくる客席の中央にはサークルも出現。その客席の中にはかつてのサッカーTシャツを着た人たちがたくさんおり、telephonesが本当にこのフェスに帰ってきたんだな、ということを実感して灼熱のダンスフロアの真っ只中でちょっとしみじみとしてしまった。
ノブがダンスを指南する「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」ではノブのその発言や挙動に笑う人の数も多かっただけに、この4年間のブランクがあっただけにこのバンドのライブをこうしてこのフェスで初めて見るという人も結構いたのかもしれない。
「太陽をミラーボールにして踊ろうぜ!」
と石毛が言うのも、LAKEのトリをやったりしたこともあったが、それ以上にこのフェスの暑い時間を踊らせまくってきたという経験と記憶が今もあるからだが、きらめくようなシンセのフレーズの「A.B.C.DISCO」でバカになって踊りまくると、イントロがライブならではのアレンジによってさらにダンサブルになった「electric girl」でただ止まっていた時間がまた動き出したというだけではない、各々がそれぞれの場所で音楽を続けてきたからこその進化したバンドの姿を4年ぶりのこのフェスのステージに刻み込んで行く。
「HABANERO」では石毛が体操選手かと思うような見事なパフォーマンスを見せて喝采を浴びるのだが、ところどころ演奏する音を外していたのはやはり暑さによるものなのだろうか。
そして
「猿のように踊ろうぜー!」
と「Monkey Discooooooo」でこの日最大かつ最高のダンスフロアを出現させると、最後は
「忘れないでいてくれたかい?待っていてくれたかい?」
という石毛の言葉が感傷を強める中で演奏された、この場所への愛と感謝を告げる「Love & DISCO」。2015年に最後に演奏された時は
「ここにいるみんなとロッキンオンとノブ夫妻に捧げます!」
と言って演奏された。それも間違いなく愛と感謝に溢れてはいたが、やはりどこか寂しさがあった。それにtelephonesは「活動休止前最後だから」というような特別な要素がなくても当たり前のようにGRASS STAGEに立つべきバンドだと思っていたのが叶わなくなってしまったから。だからあの時に100%楽しかったかと言われたらそうは言えない。
でもこの日は間違いなく心から楽しかったと言える。もう終わってしまう、見れなくなってしまうという寂しさを感じるのではなく、telephonesがこのひたちなかに帰ってきたことを告げるために、ずっと帰ってくるのを待っていてくれた人たちとこの場所に向けて、希望のみを持って鳴っていたから。
telephonesはかつて良い意味でも悪い意味でも「フェスバンド」てな称されていた。2008年に初出演してから、毎年一気に規模を拡大して、その都度入りきれないくらいの人たちがこのバンドを見るために集まっていた。紛れもなくtelephonesはこのフェスとともに大きくなってきた。それは石毛の
「ロッキンで見るtelephonesは最高なんだぜー!」
という言葉を証明するかのようだった。
そう、ここで見るtelephonesが最高だってわかってるからこそ、来年以降もこのフェスでtelephonesのライブが観たいのだ。他の休止したバンドに比べたら、不在の期間はそこまで長くはない。
でもその間、もし次にtelephonesがこのフェスに戻ってくる時に自分はこのフェスに来ていられる年齢だろうか。telephonesも休止して10年とか経ったら、またWING TENTから始めたりするのだろうか。なんて思ったりもしていた。でもそうはならなかった。あの頃とほとんど変わらないようにtelephonesのライブをここで見ることができている。不在だった3年間の空白を埋めてお釣りがくるくらい、来年からもっと楽しいことをしよう。
リハ.Yeah Yeah Yeah
1.I Hate Discooooooo
2.urban disco
3.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
4.A.B.C.DISCO
5.electric girl
6.HABANERO
7.Monkey Discooooooo
8.Love & DISCO
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
17:30〜 ストレイテナー [LAKE STAGE]
この時間になると各ステージがトリ、あるいはトリ前という時間を迎える。5日間続いてきたこのフェスももう終わってしまう。そんな切ない空気が流れ始める時間である。
LAKE STAGEはトリ前というスロット。ここに登場するのはストレイテナー。この日はベテランバンドが多いと言われている日であるが、このバンドも今や確実にそこに入っている存在である。
4人がステージに登場すると、ナカヤマシンペイの髪がかなり短い金髪になっているのに驚く中、この青い空が徐々に赤みを増していく風景によく似合う「彩雲」からスタートし、このバンドの原点的なギターロック「REMINDER」へ。
「昨日、2004年にこのステージに初出演した時の映像を見ていた。Youtubeにあったから。めちゃくちゃオラついてて、見たら恥ずかしくなった(笑)」
とホリエアツシ(ボーカル&ギター&キーボード)は回想したが、テナーは当時
「このバンドは近年のギターロックのバンドの中ではずば抜けて無愛想なバンドだ」
と書かれていた。それくらいにライブで喋ることはほとんどなかった。そんなバンドが
「その頃のオラついていた時の気持ちを思い出して演奏する」
と言った後の「The World Record」はホリエのボーカルは確かにいつも以上に尖がっていたが、そもそもが横揺れの曲であるために、シンペイが
「わかってる、わかってるよ。オラついた曲やるって言ったのに横揺れの曲やられても、っていう感じだよな(笑)だから、LAKE STAGEのバーサーカーに捧ぐ!」
と言って突入した「BERSERKER TUNE」はそのシンペイのドラムを中心に超高速化。当時はまだ存在しなかった曲であるが、この曲の演奏時は間違いなくオラつきまくっていた。近年は「優しくなった」と言われることも多いし、ホリエは同年代のバンドマンたちと同様に面白いおじさんになった。それでもまだこの尖った気持ちは失われていない。
しかしタイムテーブルの都合上、ここまで見て離脱。かつてストレイテナーは2008年にはGRASS STAGEのトリを務めたこともあるし、その後にまだまだGRASSに立てる動員力があるにもかかわらず、志願してこのLAKE STAGEのトリを務めたこともあった。それくらいにこのLAKE STAGEを愛しているバンドなのである。(昨年、PARKに出演した時もシンペイはそれらしいことを言っていた)
そんな憧れの場所であり続けるLAKE STAGEに立っている喜びが炸裂しているようなライブだった。できることならば最後まで見たかった。
REMINDER
https://youtu.be/_OeVilAk_EY
18:05〜 Dragon Ash [GRASS STAGE]
20周年を迎えたこのフェスで、20回全て出演したのは、この日に東京スカパラダイスオーケストラのゲストボーカルで出演した奥田民生とこのバンドのみ。しかも全て同じ名義で、全てこのGRASS STAGEに出演したのはDragon Ashだけ。朝礼の渋谷陽一の写真からもこのバンドがこのフェスにとって本当に特別な存在なことがわかるが、20周年の大トリ、ついにDragon Ashが登場。
時間になり、両サイドのスクリーンには「Next Artist is Dragon Ash」の文字に続いて、2000年の第1回開催時からこれまでの全てのこの場所での映像が映し出される。ロッキンでこんな映像はずっと来ていても今まで見たことがない。それくらいにこのライブは特別なものだし、各年のkjの姿を見ると、その時期にどんな音楽に傾倒していたのかがよくわかる。
そんな登場する前から涙腺が緩む演出の後に会場に流れ始めたのは「陽はまた昇りくりかえす」のイントロのスタンプ音。するとメンバー達もステージに登場していきなりこの曲からスタート。ベースは直前に大麻取締法違反によって逮捕されたKenKenに変わって、同じく逮捕されたJESSEがボーカルを務めるThe BONEZのTSUYOSHI。そのニュースが出た時はバンドの出演自体が危ぶまれたが、こうして傷を負った仲間同士がすぐに手を差し伸べてくれるのがこのバンドがこれまでの活動において培ってきたものだ。
ステージに立てないと思った日があっても、また陽は昇ってくりかえす。ロックバンドとしての日々は続いていく。「The Show Must Go On」はその宣誓のようにも感じた。
何度となく、というかこのフェスの20回に太陽を運び込んできた(初年度は2日目が途中で中止になったが、このバンドがトリを務めた初日は無事に完遂した)、まさにバンド界の天気の子と言えるこのバンドならではの太陽ソング「Run to the Sun」から、いきなり披露された新曲「Fly Over」ではステージ前から炎が噴き上がるという演出もあり、一気にその熱さに拍車がかかっていく。
kjとHIROKI(ギター)が向かい合って大ジャンプを決めた「Mix It Up」から、hideのカバー「ROCKET DIVE」と、ノンストップでミクスチャーロックを投下しまくっていく。少しでもたくさんの曲を演奏しようという意識だろうか。それによってライブ自体のテンポも物凄く良い。余計な時間が何もなく、流れるように次の曲に進んでいく。
またこの日はフェスのスタッフもみんなこのバンドのフェスへの愛と思いをしっかり理解しており、「Walk with Dreams」ではTSUYOSHIの後ろに置いてある2色のベースがスクリーンに映し出される。それはこの景色を見ることができなかった、IKUZONEのもの。今もバンドとともに歩き続けているということを、この空のどこかから見ているということをわからせてくれるような演出である。その前で踊るATSUSHIとDRI-Vのダンサー2人も実に穏やかな顔をしている。
久しぶりにこの会場で鳴らされた大ヒット曲「Life goes on」では観客が飛び跳ねまくり、kjが
「力貸してくれ、相棒ー!」
と言うと今年は2日目のこのステージのトリを務めた、10-FEETのTAKUMAがステージへ。コラボ曲「SKY IS THE LIMIT」をTAKUMAとのツインボーカルで披露するのだが、最後のキメで全員揃ってジャンプ…と思いきやTAKUMAはジャンプせずに変なポーズを取ってまとめてみせ、kjから突っ込まれるのだが、この日のライブはやはりどこか緊張感が強く漂っていたのをTAKUMAの存在とパフォーマンスはほぐしてくれる。
かつてDragon Ashはこのフェスの初期には毎回このステージのトリを務めていた。それくらいにあの頃のDragon Ashは時代を作ったモンスターバンドだった。その当時によくやっていた、
「携帯とかライター出して!」
と言って客席に光が灯る演出の「静かな日々の階段を」では現代ではスマホライトが輝く。同じ曲の同じような光景でも時代を経たことによって少し変わる。それによって見える景色もやはりちょっと変わる。
そしてkjはこの曲のアウトロで
「So what you want ひとつだけ
So what you need 選んだ Style」
「それぞれひとつの life
それぞれが選んだ style」
とRIP SLYME「One」のフレーズを歌った。かつて自分自身が表舞台に引っ張り上げ、何度となくこのフェスのこのステージに立ってきた仲間の音楽を、きっともう立つことはないこのステージに置いていくかのように。そこからはkjの優しさを感じることができる。
その名の通りにkjも観客も飛び跳ねまくる近年のライブ定番曲「Jump」から、かつては何度となく
「この場所の曲です!」
と言って演奏されていた、Dragon Ashの静と動をどちらも内包した「百合の咲く場所で」では一つのピークを刻むかのような盛り上がりをみせ、ステージから重低音が放たれると現れたのはラッパ我リヤのQと山田マン。2人を加えて演奏されたのはもちろん「Deep Impact」。リリース当時にシーンに衝撃を与えたロックとラップのミクスチャーが数年ぶりにひたちなかに響き渡る。ラッパ我リヤは2000年の第1回にこのフェスに出演しており、そういった意味でも20周年の大トリに相応しいゲストである。
そしていよいよ20年目の「Fantasista」のイントロが鳴る。求められることよりも自分たちがやりたいことをやってきたDragon Ash(だからこそ音楽性も変容してきた)が、それでもライブでやるのを欠かさなかった曲。もう最後だからと悟っているのか、サビでは禁止されているダイブをして運ばれていく人たちも。
ただ、近年kjはこのフェスでかなりグレーというか、黒に近いようなダイブを誘発するような発言をしてきた。ソロ名義でのアルバムリリース時にも
「俺はやっぱりライブに来てくれる奴にダイブさせたい。そういう衝動を与える音楽を作りたい」
と言っていただけに、自分がライブで見たい景色はそうしたものなんだろう。
しかしこの日はダイブが起きてたとはいえ、自分から煽るようなことはしなかった。それは、
「ロックバンドのシーンに泥を塗るようなことをしてしまってごめんなさい。こうして見にきてくれたり、それでもこいつらに出て欲しいって思ってくれる人のおかげで俺たちはこうしてステージに立てています。できるならば、俺たちをこれからもロックバンドでいさせてください」
という言葉の通りに、そうしたダイブ云々よりもこうしてステージに立てることの喜びがあったからだ。その決断に至るまでには様々な葛藤があったことも。
そのロックバンドでありたいという思いをそのまま曲にした「ROCK BAND」では山嵐のSATOSHIと、Xmas Eilienのお面を腰につけたKO-JI ZERO THREEが登場し、ロックバンドを志した原点を歌う。こうして大トリの舞台に相応しい選曲と、それをライブで演奏するために集まってくれる仲間たち。Dragon Ashがこれまでの活動で手に入れた最も大きなものは、売り上げではなくそれなのかもしれない。
SATOSHIとKO-JI ZERO THREEがステージから去ると、kjが再び口を開くが、その目元は潤んでいる。かつてもこのステージでトリをやった時、kjはいつも泣いていた。近年、Dragon Ashがトリをやったのはもう10年前だろうか。ここで久しぶりの涙である。
「このフェスには10代のガキだった頃からずっと育ててもらって…お世話になりました」
とkjは言った。「お世話になりました」という過去形の言葉尻だけを捉えたら、バンドのこのフェスからの卒業宣言と取れたかもしれない。実際、今このバンドがホーム感を感じるのはこのフェスよりも京都大作戦やOGA NAMAHAGE ROCK FESというラウド系のバンドが集まるフェスだろうし、かつてサマソニに少女時代が出演して話題になった時にkjはこのステージで、
「ロックフェスはロックバンドを愛するお前たちのものだって信じてるぜ」
とそのことについて揶揄するようなことを言ったこともある。それからこのフェスの姿も変わった。きっとkjが望むようなフェスの姿ではないのかもしれない。でも、
「まだ革命前夜!」
と言ってバンドは最後に革命の凱歌「Viva La Revolution」を鳴らした。かつてのように
「Viva La ROCKIN' ON!」
と歌詞を変えるようなことはしなかったけれど、その姿からはこれからもこのステージでDragon Ashを観れると思った。きっと、
「お世話になりました」
と言ったのはkjが泣いていてすぐに言い終わるようにしたからだろう。
演奏後、TSUYOSHIはIKUZONEのベースを高く掲げた。彼にこの20年目の景色を見せるように。きっと人によってはこのバンドが出ることに対して色々な意見もあると思う。でも、間違いなくここでこのバンドを見れて良かった。
20周年のこのフェスのGRASS STAGEを締めくくるのにこんなに相応しいバンドはこのバンドしかいなかっただろう。色んなアーティストの夢であり、憧れの場所である日本で1番大きなフェスの1番大きなステージは、このバンドがそこまで大きくしてきたと言ってもいいし、GRASS STAGEは20年間ずっとこのバンドのために存在し続けたのかもしれない。
初めてこのフェスに来た時も、Dragon Ashがトリだった。まだ10代の千葉の田舎の少年だった自分は、そもそもライブに来たことがほとんどなかった。だからどうやってライブを楽しめばいいのか、ということも知らなかったし、ライブで盛り上がったり、それを友達に見られるのが気恥ずかしかったりした。
そんな自分がDragon Ashのkjが
「飛び跳ねろー!」
と言った時に、勝手に体が飛び跳ねていた。恥ずかしいとか一切思わないほどに。
あの時に感じた、Dragon Ashの凄さ。まさにその時代のシーンを動かしていたというオーラみたいなものもあったが、それは今でも全く色褪せることなく自分のロックの衝動を突き動かし続けている。また来年からもGRASS STAGEで観れるのを楽しみにしてるよ。
1.陽はまた昇りくりかえす
2.The Show Must Go On
3.Run to the Sun
4.Fly Over (新曲)
5.Mix It Up
6.ROCKET DIVE
7.Walk with Dreams
8.Life goes on
9.SKY IS THE LIMIT w/ TAKUMA
10.静かな日々の階段を
11.Jump
12.百合の咲く場所で
13.Deep Impact w/ ラッパ我リヤ
14.Fantasista
15.ROCK BAND w/ SATOSHI, KO-JI ZERO THREE
16.Viva La Revolution
陽はまた昇りくりかえす
https://youtu.be/8T6LW_6WxLU
普段、仕事をして帰って寝て、という生活を繰り返していると、楽しいと思えることってそうそうない。でもこの場所に来ると、心から楽しいと思える。このフェス自体もいろんなものが変わったし、今も変わり続けているけれど、ここにいる時に1番楽しいと思えるのは初めて来た時から全く変わっていない。
だから来年も、これから先もずっと。SNSやクイックレポだけ見ていたら悔しくて仕方がなくなるだろうから、変わらずにあの場所に足を運び続けたい。
改めて、20周年おめでとうございます。行き始めて16年、ありがとうございます。これからもよろしく、この世で1番好きなライブ会場。
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