どちらも特になんのタイミングでもない上での対バンである。最近ではアジカンはゴッチが、アナログフィッシュでは佐々木健太郎がソロ活動を展開している両者。先月ゴッチはそのソロでここQUATTROでライブを行ったが、都内でアジカンをこのキャパで見れるのはかなり貴重な気がする。
先攻、まさかのアジカン。ゴッチが両手でピースを作りながら登場。ここ最近はサポートメンバーがいることが多かったが、今日はメンバーのみの4人編成。
伊地知潔がドラムを叩き始めたイントロから始まったのは、まさかの「サイレン」。久しぶりに聴いた感じがするが、音の厚みのなさを感じてしまったのはサポートメンバーがいる編成に慣れすぎてしまったからだろうか。
ゴッチが「アンダースタンド」の歌詞を間違えたりしながらも、これは「ファンクラブ」期のライブなのかと思ってしまうような選曲の前半を終えると、
「こんばんは、オッサンズです(笑)」
と挨拶してから浜崎あゆみの命綱なしのフライングライブの話題に触れ、
「女性ソロアーティストの人にヤンキー口調や、観客を「お前ら」呼ばわりするのはなぜなのか(笑)」
という疑問に展開し、宇多田ヒカルの横浜アリーナのライブをUst視聴していたときに、
「行くぞ横浜ぁー!」
と叫んでいたことに衝撃を受けたと語り、
「行くぞ渋谷ぁー!」
と叫び、リリースされたばかりのNANO-MUGENコンピ収録の最新曲「スタンダード」を披露。かつて、全く日の目を浴びることなく、誰にも見向きされなかった時期の自分たちを回想したような歌詞のストレートなギターロックの曲だが、この曲からサウンドが安定してきた印象。冒頭にゴッチが「オッサンズです(笑)」と言っていたように、もはやメンバーも若くはないが、生み出される楽曲は未だに瑞々しい。
イントロで大きな歓声が上がった「振動覚」から「リライト」につながる流れは「ソルファ」の冒頭そのものだが、近年は間奏をアレンジしまくる傾向が強かった「リライト」をアレンジをせずに演奏。これはやはり4人編成だからということなんだろうか。
先日の安倍政権の集団的自衛権行使と、それに伴う首相官邸前での大規模デモが起きた時から(ちなみに自分は6/30の日にデモに行っている)、このライブで演奏されるんじゃないかと思っていた「No.9」も予想通り披露。曲のテーマ自体はそういう内容(憲法9条)の曲だが、全く重く感じないのは軽快な4つ打ちのビートによるものだろう。
ゴッチが今日はハーフパンツを穿いてライブをしていることを自虐的にネタにすると、
「2002年とか2003年の時くらいによくアナログフィッシュと対バンしてて。当時はQUATTROなんて埋まらないから、下北沢とかでやってて。俺たちのNANO-MUGENの前夜祭みたいなやつで横浜で一緒にやったこともあるんだけど、演奏がすごく良くて。
当時俺たちは演奏がへっぽこで、山ちゃんは3弦と4弦の区別がついてなかったし、健ちゃんはチューニングのことをチャーニングって言ってた(笑)
でもアナログフィッシュはソングライターが2人いて、下岡君の重い、社会的なメッセージが強い曲がある一方で佐々木君の4畳半フォークみたいな曲もあって。それはうらやましい武器だと思ってたので、またこうして一緒にやれて本当に嬉しいです」
という、デビューから共に生き抜いてきて、かねがね絶賛しているアナログフィッシュに対する思いとかつてのエピソードを交えたMCからは、ライブ定番のクライマックスへ。
全体的にかなり意外なセトリであったが、すでに来週に迫った、毎年レア曲や過去曲をふんだんに演奏されるNANO-MUGEN FES.は一体どういうセトリになるんだろうか。大好きなフェスだけに、他の出演者とともに本当に楽しみなところだ。
1.サイレン
2.センスレス
3.Re:Re:
4.アンダースタンド
5.スタンダード
6.振動覚
7.リライト
8.No.9
9.マーチングバンド
10.今を生きて
11.君という花
スタンダード
http://youtu.be/3fTx79kdNoA
後攻、SEもなく3人が登場したアナログフィッシュ。下岡のささやくようなボーカルの「抱きしめて」から始まると、アウトロではループも使ってサウンドがどんどんノイジーに変化していく。
「平行」、下岡が佐々木と肩を組んだり、サビで下岡と観客が拳をあげる「PHASE」「Hybrid」など、近年の下岡の曲(アナログフィッシュは下岡と佐々木が曲と歌詞を書き、書いたほうがメインボーカルを務めるというスタイル)は、ゴッチも言っていたように、重く感じることもある社会的メッセージの強い曲が多い。
「失う用意はある?
それとも放っておく勇気はあるのかい」(PHASE)
「ステロイド漬けのアイドル 取引上手なジーザス
由来を離れてどこへ行く
狂気と正気のハイブリッド」(Hybrid)
など、個人的には言葉の選び方、繋ぎ方、メロディへの載せ方に面白さを感じるので、その最新形と言えるムーディーなヒップホップと言っていいくらいに下岡がラップのような歌唱を見せる新曲が本当に良かった。
その一方で、アジカンとの昔のエピソードを話し、
「前に下北沢で一緒にやった時に最後にThe La'sの「There She Goes」をセッションしたんだけど、俺はいつも英語の歌詞を全部自分で聴こえたままにカタカナに直すの。そしたらそれを見た後藤君が、天才だ!みたいな感じで日記に書いてくれて(笑)
僕たちにも「There She Goes」というタイトルの新曲ができました」
と言って演奏された佐々木の新曲は彼の真っ直ぐな性格がそのまま現れたかのような曲で、下岡の曲の重さとは正反対の明るさを持っている。それは終盤に演奏され、歌い終わった佐々木が、肩を脱臼してしまうんじゃないかと心配するくらいに腕をグルグル回しまくった「Fine」もしかり。
ドラム斉藤の見た目通りに堅実さを感じるドラムソロも挟み、キャリアの中では初期曲と言ってもいい「公平なワールド」の、下岡によるキーボードの音も加えた現在のバンドのアレンジでの演奏で本編は終了。
「このワールドは 公平なワールドのバカ」
というフレーズからはまだ無垢な部分も感じるが、当時はあたり言及されることはなかったけど、下岡のメッセージ性の強さはこの頃から一貫している。
アンコールでは前にやったことを佐々木が話していたのでちょっと期待していたセッションは今回はできないことを下岡が告げると、
「地震が起きると戦争になる、って忌野清志郎さんが言ってたんだ。本当にそうなりそうだよ。でも、俺たちは俺たちなりに、楽しくやりましょう」
と、ここまでアジカンもアナログフィッシュも触れてこなかった現在の社会の状況に触れ(下岡はデモの時に姿を見かけた)、実際に「戦争」という単語も出てくる「テキサス」を演奏して終了。
多分このバンドのライブをここまでしっかり見たのは7,8年ぶりくらいになるが、アジカンの後にも関わらず、鳴り止まないくらいに大きな拍手が起こっていたのが、このライブの素晴らしさを物語っていた。制作中だというアルバム、絶対買う。
1.抱きしめて
2.はなさない
3.My Way
4.平行
5.Good bye Girlfriend
6.新曲
7.There She Goes (新曲)
8.PHASE
9.Fine
10.Hybrid
11.公平なワールド
encore
12.テキサス
Hybrid
http://youtu.be/XcFb1nldmuQ
アナログフィッシュのMCで下岡が、「アジカンのスタンダードっていう今日やった新曲がアジカンの中で一番好きな曲なんだけど、何でだろって思って何回もPV見てたら、あの曲は俺に向けて歌ってるんだよね。俺に向けてってことは君に向けてってことだよ」って言ってて、最大限に「それだ!」と思った。
そしてその「君」がたくさん集まるNANO-MUGENまであと一週間。