THE KEBABS KEBABS激震 〜宇田川町の決戦〜 Guest:ドミコ @渋谷CLUB QUATTRO 5/1
- 2019/05/02
- 20:02
a flood of circleの佐々木亮介(ボーカル&ギター)、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也(ベース)、元serial TV dramaの新井弘毅(ギター)、元ART-SCHOOLの鈴木浩介によって結成されたバンド、THE KEBABS。
これまでにも2回メインのライブをやっており、佐々木亮介のa flood of circleが主催するフェス「A FLOOD OF CIRCUS」にも出演していたが、メインのライブとしてはこれが3回目。徐々にキャパを広げてきてはいるが、それでも渋谷QUATTROは即完。もはや小さい方のステージに出たO-EASTすらもメインでライブをやったら即完しそうな予感すらする。
・ドミコ
この日のゲストはドミコ。さかしたひかる(ボーカル&ギター)と長谷川啓太(ドラム)の二人組のロックバンドである。先日もアラバキに出演していたし、徐々に大きな場所に打って出て行こうという状況にあるバンド。
ステージ中央には「Domico」というバンド名の電飾が飾られる中、長い髪の毛先を赤く染めているさかしたと長谷川の2人が登場すると、サイケデリックな音像の「わからない」からスタートし、ギターとドラムだけという形ではあるが、さかしたがギターをルーパーで重ねて音を分厚くするという2人だからこその工夫が垣間見えるし、それはさかしたがオクターバーを使って、ギターであるにもかかわらずベースのような低音を発し、それをルーパーでループさせることでベースの不在をカバーするセッション的な演奏からも感じ取ることができる。
そのセッション的な演奏からの「まどろまない」もベースらしい低音を重ねていたし、かつて米津玄師がYANKEE名義でこのバンドと対バンした時に見たのとは別バンドのようである。というかそれからリリースやライブを重ねて、ただサイケデリックなだけではない自分たちだけの音楽やライブのやり方をこの2人は見つけたように見える。
さかしたは基本的に
「サンキュー。THE KEBABSありがとう」
くらいの簡単なMCしかしないのだが、それがかえって曲間の無駄な時間を省いた、実にテンポの良いライブに繋がっている。
そんな中で「united pancakes」からはロックンロールさを増していき、全くスタイルは違うし、最後まで自分たちがこの日に呼ばれた理由は明かさなかったが、なんとなくこのバンドがTHE KEBABSに呼ばれた理由がわかった気もするし、最後の「ペーパーロールスター」でのたくさんの腕が上がるのを見て、意外なくらいにアウェー感がなかったことに気がついた。
2人組のロックバンドと言われると、できることが限られていると思ってしまう。そもそもがギターとドラムしか楽器がないし、歌いながら複雑なギターのフレーズを弾いたりするのは実に大変だから。
でもこのバンドはその「2人であること」を制限とは全く思っていないというか、むしろ2人だからこそ自由であるかのように自在に音を重ねて演奏している。それはさかしたの技術や知識があってこそできるものであるのだが、その「ロックバンドはなんのしがらみにも縛られない自由なものである」という姿勢こそがTHE KEBABSとこのバンドに通じるものであると思う。
1.わからない
2.こんなのおかしくない?
3.まどろまない
4.さらわれたい
5.裸の王様
6.服をかして
7.united pancake
8.地球外生命体みたいなのに乗って
9.ペーパーロールスター
ペーパーロールスター
https://youtu.be/5LuyP1OvGSU
・THE KEBABS
そしてTHE KEBABS。メンバー4人が登場すると、普段のa flood of circleのライブ時には革ジャンを着ている佐々木亮介が革ジャンを着ておらず、普通の長袖シャツを着ている姿が実に新鮮。
そんな中で「Open Sesame」からスタートすると、本当に余計なことを一切考えずに作っているんだろうなというのが一発でわかるくらいのどストレートなロックンロール。この日の物販で売られていたバンドTシャツに起用された「Cocktail Party Anthem」も含めて、歌詞に一切の意味や深読みの余地を見出せないくらいのレベルの潔いロックンロールさ。
「台風ブンブン」では亮介以外の3人がサビでコーラスをするのだが、間奏の新井のギターソロの時に田淵のところに亮介が寄っていって、ギターを弾く新井のことを品定めするかのように見ていたのが実に面白かった。基本的に演奏での決め事は無いように見えるが、こうした細かいパフォーマンスは楽しそうに演奏するメンバーの表情に合わせて実に笑えてしまう。
そう、亮介がいきなり「かっ飛ばせー、KEBABS!」と言ってから「THE KEBABSがやってくる」を演奏していたように、とにかくメンバーが演奏する姿が楽しそうだったのだ。特にそれを感じさせたのは、ART-SCHOOL時代には全く笑顔を見せることがなかった鈴木。バンドの持つ雰囲気や空気感が全く違うとはいえ、こんなに楽しそうにライブをやる人だとは思っていなかったし、こんなに笑う人だということすらも自分はこれまでに知らなかった。
基本的にこのバンドの軸はどストレートなロックンロールなのだが、田淵がいることによってかポップさを強く感じるのがタイトルのフレーズが頭から離れない「ピアノのある部屋で」やタイトルだけ見ると頭が悪そうにすら思えてしまう「すごいやばい」。田淵はユニゾンで数々の名曲を生み出してきた男だが、亮介もまた紛れもないメロディメーカーとしてフラッドの曲を生み出してきた。その2人が合わさるとこんなにもロックンロールかつキャッチーな音楽が生まれる。
亮介によるポエトリーリーディング的なボーカルがこの日最も会場の空気を変えていた「ホラー映画を見よう」、亮介だけでなく田淵と新井もボーカルを取るのが面白く、歌詞がシュール極まりない「メリージェーン知らない」とひたすらに曲を連発していく。MCは全くと言っていいくらいにない。結局、MCをしようとしても「楽しい」くらいしか言葉が出てこないだろうし、何かを喋ろうとしても友達同士の他愛もない会話にしかならないのだろう。
「ロックンロール」というスタイルを背負って現代のこの国でロックンロールバンドとしてどう活動していくか?ということをフラッドはずっと己に問いながら活動し続けてきたし、ユニゾンはポップなシーンに進みながらも「これまでの自分たちを見続けてきてくれた人たちを振り落とさないためにはどういう曲を作って、どのくらいのキャパでライブをやるのが良いのか」ということを考えすぎなくらいに考えてきたバンドである。
でもこのバンドではそうした、考えなくてはいけないことは何もない。ただひたすら無邪気にロックンロールを鳴らすだけでいい。だからそこには聴き手へのメッセージを送る必要もないし、バンドのことを語ったりする必要もない。この4人で出来た曲を鳴らすのが何よりもこのバンドがどうあるべきか?を示しているから。
終盤、さらに激しいロックンロールが繰り広げられると、ダイバーが続々とステージの方へ転がっていく。亮介も
「知らない曲ばっかりでしょ?(笑)」
と言っていたように、このバンドはまだ会場限定のデモCD2枚しか出していない。計6曲。つまりそれ以外はほとんど新曲(すでにライブで聴いたことのある人はいるけれど)なわけで、「どのタイミングで飛ぶべきか」というのを基本的に誰もわかっていない。
それでもダイブするというのは、このバンドの演奏や音で「もういくしかない!」というくらいに衝動を突き動かされているからである。ある意味では最も純粋なダイブの形だが、それはかつてはダイブどころかモッシュすらも一切なかったフラッドのライブが「Human License」をリリースした後あたりから一気に激しさを増していった時のことを思い出させた。
結局全く喋ることなく本編は終わったのだが、アンコールで再び4人がステージに現れると、亮介が
「ビールお願いしまーす、4人前で!」
とビールをスタッフに頼むのだが、最も袖に近いTBCこと田淵が自分の分だけビールを持っており、
亮介「作曲者って本当にそういうとこあるよな…(笑)」
田淵「お前も作曲者だろ!(笑)」
というここではバンドメンバーであり、フラッドにおいてはコンポーザーとプロデューサーという関係でもある2人の微笑ましいやり取りから、4人全員が缶ビールを手にして、亮介がマイクの前でプシュっと開ける音がマイク越しに響く。そのまま4人で缶を合わせて乾杯してビールを飲む。亮介はフラッドでもこうしたシーンを何回も見せてきたが、田淵がステージ上で酒を飲んでいる姿は実に新鮮だ。まるでステージ上で打ち上げをしているかのようだったが、ライブ後の打ち上げはどれだけ激しいものだったんだろうか。
そしてさらなる新曲(というかほとんど新曲だけど)である、亮介が2日酔いの朝の心情をそのまま言葉にしたであろう「お水ください」から、最後はこの日2回目の「THE KEBABSのテーマ」。1回目とは異なり、田淵と新井が背中を合わせたりして密着して演奏する中、
「タバコを吸うのはドラムだけ」
の歌詞をここでは
「タバコを吸うのは鈴木だけ」
と具体的な名前に変えて歌っていた。
そうした自由さも含めて、THE KEBABSのライブからは「ロックバンドってめちゃくちゃ楽しいんだな」と思わせるくらいにメンバーそれぞれが本当に楽しそうに演奏していた。
いつも革ジャンを着ていて、ある種ロックンロールという決まりきったフォームのフラッドとも、みんなとは全然違うけどこれが1番自分たちが投げやすいというトルネード投法みたいなユニゾンとも違う。THE KEBABSはただ友達と公園でキャッチボールして軽く投げたら全員150km出てて、それならこのメンバーでチーム作った方が楽しくない?というノリの延長線上であるかのよう。
しかしファンサイドとしては気になるのはそれぞれの本隊とのスケジュールの兼ね合いだが、亮介はフラッドで「アルバム出した直後にニューシングルをリリース」、さらにはソロでもガンガン新曲を作るという今までよりもさらに「いつ寝てんの?」と思うような生き急ぎっぷりを見せているし、ユニゾンも15周年を迎えてツアーや大規模なワンマンが決まり、フェスにも今年は春から精力的に出演している。
つまりはこれまでと全く本隊のペースは変わらないままで、その合間にこのバンドを楽しんでいる。このバンドが始動したからと言って本隊が疎かになるなんてことは絶対ないだろうし、むしろ本隊とは違う場所で、楽しみながらバンドをやるメンバーたちを見れる機会が増えただけなのだ。
で、「何も考えずにバンドを楽しんでいる」的なことをつらつらと書いてきたが、確かにシーンの動向とか戦略とかそういった友達同士でやるバンドの上で窮屈に感じるようなものはこのバンドは一切考えていないだろう。
でも一つだけ亮介と田淵が考えていたであろうことがある。それは、「新井と鈴木をまたバンドマンとしてステージに立たせてやりたい」ということである。今はともに様々なアーティストのレコーディングやライブサポートとして活動しているが、そうした場面では本当にその人のことを追っている人以外は名前や顔を覚えることがないし、2人ともある意味では志半ばで「バンドマンであること」から退いてしまった男たちである。
友人として、今もバンドマンとして生き続けている亮介と田淵が唯一考えていたこととしたらそれだろう。サポートではなく、同じバンドのメンバーとしてこの4人で横並びで立っていたい。だからTHE KEBABSは「亮介と田淵のバンド」ではなくて、この4人のバンドなのである。そしてその4人であることによってバンドにどれだけの力が宿るのかというのを亮介と田淵は身をもって知っている。あくまでも余技的な、でも確かにロックンロールバンドであることの魔法がこのバンドには宿っている。それを実感できた一夜だった。
1.Open Sesame
2.Cocktail Party Anthem
3.台風ブンブン
4.THE KEBABSがやってくる
5.ピアノのある部屋で
6.すごいやばい
7.THE KEBABSのテーマ
8.ホラー映画を見よう
9.メリージェーン知らない
10.Bad rock'n roll show
11.ジャキジャキハート
12.THE KEBABSは忙しい
13.猿でもできる
14.ガソリン
encore
15.お水ください
16.THE KEBABSのテーマ
THE KEBABSのテーマ
https://youtu.be/EyFdHdcWCds
Next→ 5/3 VIVA LA ROCK 2019 @さいたまスーパーアリーナ
これまでにも2回メインのライブをやっており、佐々木亮介のa flood of circleが主催するフェス「A FLOOD OF CIRCUS」にも出演していたが、メインのライブとしてはこれが3回目。徐々にキャパを広げてきてはいるが、それでも渋谷QUATTROは即完。もはや小さい方のステージに出たO-EASTすらもメインでライブをやったら即完しそうな予感すらする。
・ドミコ
この日のゲストはドミコ。さかしたひかる(ボーカル&ギター)と長谷川啓太(ドラム)の二人組のロックバンドである。先日もアラバキに出演していたし、徐々に大きな場所に打って出て行こうという状況にあるバンド。
ステージ中央には「Domico」というバンド名の電飾が飾られる中、長い髪の毛先を赤く染めているさかしたと長谷川の2人が登場すると、サイケデリックな音像の「わからない」からスタートし、ギターとドラムだけという形ではあるが、さかしたがギターをルーパーで重ねて音を分厚くするという2人だからこその工夫が垣間見えるし、それはさかしたがオクターバーを使って、ギターであるにもかかわらずベースのような低音を発し、それをルーパーでループさせることでベースの不在をカバーするセッション的な演奏からも感じ取ることができる。
そのセッション的な演奏からの「まどろまない」もベースらしい低音を重ねていたし、かつて米津玄師がYANKEE名義でこのバンドと対バンした時に見たのとは別バンドのようである。というかそれからリリースやライブを重ねて、ただサイケデリックなだけではない自分たちだけの音楽やライブのやり方をこの2人は見つけたように見える。
さかしたは基本的に
「サンキュー。THE KEBABSありがとう」
くらいの簡単なMCしかしないのだが、それがかえって曲間の無駄な時間を省いた、実にテンポの良いライブに繋がっている。
そんな中で「united pancakes」からはロックンロールさを増していき、全くスタイルは違うし、最後まで自分たちがこの日に呼ばれた理由は明かさなかったが、なんとなくこのバンドがTHE KEBABSに呼ばれた理由がわかった気もするし、最後の「ペーパーロールスター」でのたくさんの腕が上がるのを見て、意外なくらいにアウェー感がなかったことに気がついた。
2人組のロックバンドと言われると、できることが限られていると思ってしまう。そもそもがギターとドラムしか楽器がないし、歌いながら複雑なギターのフレーズを弾いたりするのは実に大変だから。
でもこのバンドはその「2人であること」を制限とは全く思っていないというか、むしろ2人だからこそ自由であるかのように自在に音を重ねて演奏している。それはさかしたの技術や知識があってこそできるものであるのだが、その「ロックバンドはなんのしがらみにも縛られない自由なものである」という姿勢こそがTHE KEBABSとこのバンドに通じるものであると思う。
1.わからない
2.こんなのおかしくない?
3.まどろまない
4.さらわれたい
5.裸の王様
6.服をかして
7.united pancake
8.地球外生命体みたいなのに乗って
9.ペーパーロールスター
ペーパーロールスター
https://youtu.be/5LuyP1OvGSU
・THE KEBABS
そしてTHE KEBABS。メンバー4人が登場すると、普段のa flood of circleのライブ時には革ジャンを着ている佐々木亮介が革ジャンを着ておらず、普通の長袖シャツを着ている姿が実に新鮮。
そんな中で「Open Sesame」からスタートすると、本当に余計なことを一切考えずに作っているんだろうなというのが一発でわかるくらいのどストレートなロックンロール。この日の物販で売られていたバンドTシャツに起用された「Cocktail Party Anthem」も含めて、歌詞に一切の意味や深読みの余地を見出せないくらいのレベルの潔いロックンロールさ。
「台風ブンブン」では亮介以外の3人がサビでコーラスをするのだが、間奏の新井のギターソロの時に田淵のところに亮介が寄っていって、ギターを弾く新井のことを品定めするかのように見ていたのが実に面白かった。基本的に演奏での決め事は無いように見えるが、こうした細かいパフォーマンスは楽しそうに演奏するメンバーの表情に合わせて実に笑えてしまう。
そう、亮介がいきなり「かっ飛ばせー、KEBABS!」と言ってから「THE KEBABSがやってくる」を演奏していたように、とにかくメンバーが演奏する姿が楽しそうだったのだ。特にそれを感じさせたのは、ART-SCHOOL時代には全く笑顔を見せることがなかった鈴木。バンドの持つ雰囲気や空気感が全く違うとはいえ、こんなに楽しそうにライブをやる人だとは思っていなかったし、こんなに笑う人だということすらも自分はこれまでに知らなかった。
基本的にこのバンドの軸はどストレートなロックンロールなのだが、田淵がいることによってかポップさを強く感じるのがタイトルのフレーズが頭から離れない「ピアノのある部屋で」やタイトルだけ見ると頭が悪そうにすら思えてしまう「すごいやばい」。田淵はユニゾンで数々の名曲を生み出してきた男だが、亮介もまた紛れもないメロディメーカーとしてフラッドの曲を生み出してきた。その2人が合わさるとこんなにもロックンロールかつキャッチーな音楽が生まれる。
亮介によるポエトリーリーディング的なボーカルがこの日最も会場の空気を変えていた「ホラー映画を見よう」、亮介だけでなく田淵と新井もボーカルを取るのが面白く、歌詞がシュール極まりない「メリージェーン知らない」とひたすらに曲を連発していく。MCは全くと言っていいくらいにない。結局、MCをしようとしても「楽しい」くらいしか言葉が出てこないだろうし、何かを喋ろうとしても友達同士の他愛もない会話にしかならないのだろう。
「ロックンロール」というスタイルを背負って現代のこの国でロックンロールバンドとしてどう活動していくか?ということをフラッドはずっと己に問いながら活動し続けてきたし、ユニゾンはポップなシーンに進みながらも「これまでの自分たちを見続けてきてくれた人たちを振り落とさないためにはどういう曲を作って、どのくらいのキャパでライブをやるのが良いのか」ということを考えすぎなくらいに考えてきたバンドである。
でもこのバンドではそうした、考えなくてはいけないことは何もない。ただひたすら無邪気にロックンロールを鳴らすだけでいい。だからそこには聴き手へのメッセージを送る必要もないし、バンドのことを語ったりする必要もない。この4人で出来た曲を鳴らすのが何よりもこのバンドがどうあるべきか?を示しているから。
終盤、さらに激しいロックンロールが繰り広げられると、ダイバーが続々とステージの方へ転がっていく。亮介も
「知らない曲ばっかりでしょ?(笑)」
と言っていたように、このバンドはまだ会場限定のデモCD2枚しか出していない。計6曲。つまりそれ以外はほとんど新曲(すでにライブで聴いたことのある人はいるけれど)なわけで、「どのタイミングで飛ぶべきか」というのを基本的に誰もわかっていない。
それでもダイブするというのは、このバンドの演奏や音で「もういくしかない!」というくらいに衝動を突き動かされているからである。ある意味では最も純粋なダイブの形だが、それはかつてはダイブどころかモッシュすらも一切なかったフラッドのライブが「Human License」をリリースした後あたりから一気に激しさを増していった時のことを思い出させた。
結局全く喋ることなく本編は終わったのだが、アンコールで再び4人がステージに現れると、亮介が
「ビールお願いしまーす、4人前で!」
とビールをスタッフに頼むのだが、最も袖に近いTBCこと田淵が自分の分だけビールを持っており、
亮介「作曲者って本当にそういうとこあるよな…(笑)」
田淵「お前も作曲者だろ!(笑)」
というここではバンドメンバーであり、フラッドにおいてはコンポーザーとプロデューサーという関係でもある2人の微笑ましいやり取りから、4人全員が缶ビールを手にして、亮介がマイクの前でプシュっと開ける音がマイク越しに響く。そのまま4人で缶を合わせて乾杯してビールを飲む。亮介はフラッドでもこうしたシーンを何回も見せてきたが、田淵がステージ上で酒を飲んでいる姿は実に新鮮だ。まるでステージ上で打ち上げをしているかのようだったが、ライブ後の打ち上げはどれだけ激しいものだったんだろうか。
そしてさらなる新曲(というかほとんど新曲だけど)である、亮介が2日酔いの朝の心情をそのまま言葉にしたであろう「お水ください」から、最後はこの日2回目の「THE KEBABSのテーマ」。1回目とは異なり、田淵と新井が背中を合わせたりして密着して演奏する中、
「タバコを吸うのはドラムだけ」
の歌詞をここでは
「タバコを吸うのは鈴木だけ」
と具体的な名前に変えて歌っていた。
そうした自由さも含めて、THE KEBABSのライブからは「ロックバンドってめちゃくちゃ楽しいんだな」と思わせるくらいにメンバーそれぞれが本当に楽しそうに演奏していた。
いつも革ジャンを着ていて、ある種ロックンロールという決まりきったフォームのフラッドとも、みんなとは全然違うけどこれが1番自分たちが投げやすいというトルネード投法みたいなユニゾンとも違う。THE KEBABSはただ友達と公園でキャッチボールして軽く投げたら全員150km出てて、それならこのメンバーでチーム作った方が楽しくない?というノリの延長線上であるかのよう。
しかしファンサイドとしては気になるのはそれぞれの本隊とのスケジュールの兼ね合いだが、亮介はフラッドで「アルバム出した直後にニューシングルをリリース」、さらにはソロでもガンガン新曲を作るという今までよりもさらに「いつ寝てんの?」と思うような生き急ぎっぷりを見せているし、ユニゾンも15周年を迎えてツアーや大規模なワンマンが決まり、フェスにも今年は春から精力的に出演している。
つまりはこれまでと全く本隊のペースは変わらないままで、その合間にこのバンドを楽しんでいる。このバンドが始動したからと言って本隊が疎かになるなんてことは絶対ないだろうし、むしろ本隊とは違う場所で、楽しみながらバンドをやるメンバーたちを見れる機会が増えただけなのだ。
で、「何も考えずにバンドを楽しんでいる」的なことをつらつらと書いてきたが、確かにシーンの動向とか戦略とかそういった友達同士でやるバンドの上で窮屈に感じるようなものはこのバンドは一切考えていないだろう。
でも一つだけ亮介と田淵が考えていたであろうことがある。それは、「新井と鈴木をまたバンドマンとしてステージに立たせてやりたい」ということである。今はともに様々なアーティストのレコーディングやライブサポートとして活動しているが、そうした場面では本当にその人のことを追っている人以外は名前や顔を覚えることがないし、2人ともある意味では志半ばで「バンドマンであること」から退いてしまった男たちである。
友人として、今もバンドマンとして生き続けている亮介と田淵が唯一考えていたこととしたらそれだろう。サポートではなく、同じバンドのメンバーとしてこの4人で横並びで立っていたい。だからTHE KEBABSは「亮介と田淵のバンド」ではなくて、この4人のバンドなのである。そしてその4人であることによってバンドにどれだけの力が宿るのかというのを亮介と田淵は身をもって知っている。あくまでも余技的な、でも確かにロックンロールバンドであることの魔法がこのバンドには宿っている。それを実感できた一夜だった。
1.Open Sesame
2.Cocktail Party Anthem
3.台風ブンブン
4.THE KEBABSがやってくる
5.ピアノのある部屋で
6.すごいやばい
7.THE KEBABSのテーマ
8.ホラー映画を見よう
9.メリージェーン知らない
10.Bad rock'n roll show
11.ジャキジャキハート
12.THE KEBABSは忙しい
13.猿でもできる
14.ガソリン
encore
15.お水ください
16.THE KEBABSのテーマ
THE KEBABSのテーマ
https://youtu.be/EyFdHdcWCds
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