ARABAKI ROCK FEST.2019 day2 @エコキャンプみちのく 4/28
- 2019/05/01
- 12:39
2日目。風は冷たく感じる時もあるけれど、見事なくらいの快晴。前日までの悪天候によって足場がぬかるんでいたりするところはあるが、実に過ごしやすい気候。
11:00〜 ネクライトーキー [ARAHABAKI STAGE]
このフェス初出演となる、男女混成5人組バンド、ネクライトーキーが2日目のARAHABAKI STAGEのトップバッター。今まで参加したサーキットイベントなどにも出演していたが、入場規制でことごとく見れなかっただけに、ライブを見るのは初めて。
注目度の高さを示すように超満員の観客が待ち受ける中で1人ずつステージに登場すると、最後に女性ボーカルのもっさが登場して「めっちゃかわいいうた」からスタートすると、もっさの声も曲も実にポップなのだが、バンドの演奏がめちゃくちゃ上手い。そもそもギターの朝日廉、ベースの藤田、ドラムのカズマ・タケイはコンテンポラリーな生活のメンバーとしてKANA-BOONなどのバンドとしのぎを削ってきたメンバーであるだけにそれは当然でもあるのだが、そのコンテンポラリーな生活ではボーカル&ギターだった朝日はギターに徹するとこんなにも上手いのか、と思うくらいにギタリストとしてのレベルが高い。
先日、サポートメンバーだった中村郁香(キーボード)の正式加入が発表されたが、そうなるのは必然だったであろうというくらいに彼女のキーボードの音色がポップさを引き立てる代表曲の一つ「こんがらがった!」から、朝日が石風呂という名義のボカロPとして発表していた「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」というライブだからこそ聴ける曲に至るまで、どれも徹底的にポップなのだけれども、その演奏する姿や音からはロックバンドであることの熱さを感じさせる。
もっさのギターのチューニングがなかなか終わらず、朝日が
「今日はいい天気ですね。…天気の話をするっていうことは他に喋る話題がないっていうこと(笑)」
と場を繋ぐのも限界を迎えてくると、「だけじゃないBABY」から、イントロで大歓声が上がった、このバンドの名前を一躍シーンに知らしめることになった「オシャレ大作戦」ではもっさが
「アラバキ ヘヘイヘイ」
と歌詞をこのフェスに合わせて歌ってさらなる大歓声を巻き起こす。ただでさえキラーチューンであるこの曲であるが、こうしてご当地に合わせて歌詞を変えることができるというのは本当に強い。これからいろんな場所やいろんなフェスでその土地やイベントの名前に変えて歌われていくのだろう。
MCもほとんどないし、このステージ特有の花道も全く使わないというストイックさは30分の持ち時間に7曲を叩き込むというひたすらに音楽を聴かせたいというこのバンドの意識がそのまま現れているが、最後の「遠吠えのサンセット」の急加速していくような演奏は改めてこのバンドの持つ力量の高さ、それはあらゆる角度から曲をポップにキャッチーにできる技術でもあるということを感じさせた。
朝日は前述のように石風呂名義でも高い評価を受けていたし、そっちの道や楽曲提供者という道でも生きていくことができる人だ。ましてやコンテンポラリーな生活というバンドは大成するところまではいくことができなかっただけに、一層バンドじゃなくてそっちの道へ…と考えても全くおかしくない。
でも朝日はバンドであることを諦めなかった。自分がボーカルではあることを譲ってまでもバンドという形にこだわり続けた。そのバンドを信じる力がもっさと中村に出会ったことで花開き、こんなに大きなフェスの大きなステージを超満員にできるようにまでなった。かつてコンテンポラリーな生活が小さいライブハウスでも満員にならなかったところを見ているだけに、これは本当に感動的な景色だったし、バンドにはやっぱり夢がある。何歳になってもこうして大きいところまでいける可能性があるんだから。
1.めっちゃかわいいうた
2.こんがらがった!
3.ジャックポットなら踊らにゃソンソン
4.許せ!服部
5.だけじゃないBABY
6.オシャレ大作戦
7.遠吠えのサンセット
オシャレ大作戦
https://youtu.be/Aw1Awul1818
12:00〜 マカロニえんぴつ [HANAGASA STAGE]
こちらもこのフェス初出演、マカロニえんぴつ。本番前のサウンドチェックの段階からはっとりはこの日BAN-ETSU STAGEに出演するウルフルズの「バンザイ 〜好きでよかった〜」を弾き語りしたり、本編に入りきらない曲を演奏したりと早くから集まってくれた人たちへのサービス精神を見せる。
このHANAGASA STAGEは唯一テント型のステージなのだが、そのテント部分からはみ出しまくるくらいに満員の観客が詰めかけた本番では「鳴らせ」でスタートすると、シングルリリースされたミドルテンポで温かみのあるサウンドと歌詞の「レモンパイ」ではステージ背面の壁にレモン色の照明が、大人っぽさを感じさせる最新作からの「ブルーベリー・ナイツ」では紫色の照明が映し出され、天井があるこのステージだからこその演出が楽曲の内容と見事にリンクしていく。
バンドが解散や活動休止していくことの寂しさなどのファン心理を、バンドをやる側になっても上手く言い当てることができる歌詞を書けるはっとりの作詞家としてのセンスを垣間見ることができる華やかなキーボードのサウンドの「OKKAKE」は良い曲ではあるのだが、そもそも「レモンパイ」のカップリングという立ち位置の曲なだけにフェスで演奏するのはどうなんだろうか、とも思っていたのだがそれが杞憂を通り越して愚問であったと思わせるくらいの盛り上がりっぷり。つまりはこの曲をみんなが知っていて待っているという状況がすでに出来上がっているということで、それが今のこのバンドの状況の良さや勢いを示している。なかなかカップリング曲をフェスでやってここまで持っていけるバンドはいない。
はっとりは初出演ではあれど、このフェスに観客として参加したことがあり、スピッツや奥田民生やTOMOVSKYなど、自身のルーツであるミュージシャンたちのライブを見た思い出の場所であることを語るのだが、
「このフェスに出れたことは本当に嬉しい。でもここはゴールじゃない」
とバンドはさらに先を見据えて進んでいることを語ると、「洗濯機と君とラヂオ」で踊らせてから最後に演奏されたのは「ミスター・ブルースカイ」。テントのステージであるがゆえに演奏中に我々観客は青空を見ることはできなかったのだが、メンバーたちはこの曲の演奏中に青空を見ることができたのだろうか。
もし仮に今年はそれを見ることができなかったとしても、来年以降はもっと大きなステージでこの曲が鳴らされるだろう。そしていつかはかつてはっとりがスピッツや奥田民生を見たステージへ。そこに行けるポテンシャルや楽曲を持っているバンドだし、その日までOKKAKEていたいと思えるバンド。本当にそれくらい曲が良い。
リハ.バンザイ 〜好きでよかった〜
リハ.girl my friend
リハ.MAR-Z
1.鳴らせ
2.レモンパイ
3.ブルーベリー・ナイツ
4.OKKAKE
5.洗濯機と君とラヂオ
6.ミスター・ブルースカイ
ブルーベリー・ナイツ
https://youtu.be/Euf1-3WRino
12:55〜 ヤバイTシャツ屋さん [BAN-ETSU STAGE]
2年ぶりの出演となる、ヤバイTシャツ屋さん。この日も時間前からサウンドチェックで曲を連発して絶好調だし、もうその段階からBAN-ETSU STAGEのスタンディングゾーンは超満員で、ある意味ではメインのMICHINOKU STAGEよりも人が入るかもしれないこのステージへの出演となったのは正解なのかもしれない。
おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEで登場すると、この日はいきなりの「ハッピーウェディング前ソング」からスタートし、「キッス!キッス!」の大合唱とともにはやくもダイバーが次々と転がっていく。
こやまが言っていたように、この日はバンドにとって平成最後のライブである。ヤバTは様々な武器を持つバンドであるだけに色々な戦い方ができるし、平成最後のライブとしての選択肢としては
1.面白いパフォーマンスをふんだんに盛り込んだエンタメ的なライブ
2.こやまがツイッターで言っていたように全曲「かかとローラー」を演奏するネタ的なライブ
3.ひたすら自分たちの最も自信のある曲を並べるライブ
などがあるのだが、このバンドが選んだのは当たり前のように「3.ひたすらに自分たちの最も自信のある曲を並べるライブ」だった。だからこそ「かわE」以降にシングルのタイトル曲をこれでもかと並べる、鬼のようなセトリを組んできたのである。平成に生まれた自分たちが平成の最後にやるべきこと。それはやっぱり音楽であった。面白いメンバーたちだけど、決して面白パフォーマンス集団になりたかったわけじゃなくて、ただただバンドマンになりたかった人たちなのである。
とはいえそこはやはりヤバT、
「平成最後にやり残したことは?」
というこやまの問いに対し、
もりもと「結婚したかった」
(「中途半端な関係の女性が多すぎるから無理や」と一刀両断される)
しばた「平成最後だから、楽しんごのネタやりたい!」
としばたが全力のラブ注入を披露。なぜ平成最後に敢えて楽しんごだったのかは全くわからないが、先日のツアー中には嫌な思いや悲しい思いをして怒ったり涙をしてしまったりしていただけにちょっと心配していたのだが、やはりステージに立てば100%の笑顔を見せてくれるのが本当に頼もしい。
この日はタイムテーブル的にもこのバンドを聴いている人にとっては実に厳しいというのは、フェスの公式サイトが「移動に30分かかる」と公表しているくらいに距離が離れているMICHINOKU STAGEでこのバンドがBAN-ETSU STAGEでライブを終えた10分後くらいに04 Limited Sazabysのライブが始まるからである。
そんな状況であってもこれだけ超満員になっているというのは本当に凄いことであるが、こやまは
「フォーリミ見に行きたい人もいるやろうけど、俺らこのあとに「ヤバみ」とか「無線LAN〜」とか「あつまれ!パーティーピーポー」とかみんなが聴きたい曲やるから!
フォーリミ行くんやったら泳いで行って!」
とセトリを先に公表してフォーリミに移動しようとする人たちを阻止しようとしていたのには爆笑。しばたともりもとからは
「言ったらアカン!」
と言われていたが。
しかし公表した曲だけをやるのではなく、しばたのゴリゴリのベースのリズムが観客を踊らせる「DANCE ON TANSU」、そのしばたが作曲した、フェス映えするタオル回しがある「L・O・V・E タオル」と時間の限りにちょっとでも多くの曲を演奏しようとしているのがわかる。
そして終盤は予告通りに「無線LANばり便利」から、テンポ速くなりまくりの「ヤバみ」、そしてラストはやはり「あつまれ!パーティーピーポー」で平成最後の大合唱。ああ、やっぱりヤバTは本当に曲が良いバンドなだけに、フェスでこういう戦い方を選んでくれて本当に嬉しいな、と思っていたら、
「まだ時間あるからもう1曲!」
と言ってさらに「Tank-top of the world」を追加した。時間のギリギリまで曲を詰め込むその姿は、まるで彼らが憧れてきた10-FEETのようですらあった。最後までダイバーが減らないくらいの激しいライブであることも含めて。
先日のしばたのツアー中の件の時に触れたように、ヤバTはメンバーが優しすぎるが故に、そこにつけこまれてメンバーが傷ついたり悲しんだりしてしまう危険性すらある。でもこやまがこの日、
「フェスだから他に見たいアーティストがいっぱいいるだろうけれど、この時間にヤバTを選んでくれてありがとう」
と口にした。自分自身、本当に見たいバンドが被っていただけにどうするかずっと迷っていたのだけど、この言葉を聞いて救われた気がしたし、やっぱり好きなバンドのメンバーが優しい人たちなのは嬉しいことだ。
出会ってから今に至るまで、自分はヤバTのことを「平成最後の発明的なバンドであり、平成最後のモンスターバンド」だと思っているのだが、そんなバンドの平成最後のライブはやっぱり、かっこE超えてかっこFだったのだ。
リハ.とりあえず噛む
リハ.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
1.ハッピーウェディング前ソング
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.KOKYAKU満足度1位
5.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
6.DANCE ON TANSU
7.L・O・V・E タオル
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.あつまれ!パーティーピーポー
11.Tank-top of the world
かわE
https://youtu.be/ciFOh2KN99U
13:45〜 04 Limited Sazabys [MICHINOKU STAGE]
30分かかると公式が発表しているBAN-ETSU→MICHINOKU間を10分で移動したことによって間に合った、04 Limited Sazabys。2年連続でのこのMICHINOKU STAGE出演である。
「fiction」でスタートするのはおなじみではあるが、その後は「Alien」「Utopia」と最新アルバム「SOIL」の曲を続けて、バンドが最新モードにあることを告げる。この辺りは自身の主催する「YON FES」の時ともまた異なる内容である。
さらに「My HERO」からすでにライブではおなじみの曲になりつつある「Kitchen」と新作モードは続くのだが、「SOIL」がそもそも原点であるメロディックパンクに立ち返るような内容のものであっただけに、ライブをそのモードにするとより一層パンクなサウンドのバンドであるということが際立つ。GENのハイトーンボイスは曇りない青空に実によく似合う。YON FESも今年は良い天気だったし、このバンドは徐々に晴れバンドと言っていい存在になってきているのかもしれない。
「このステージで最初に出た、加山雄三さんのバンド見ていた人も多いでしょ?加山さん、12分押してましたからね(笑)それを俺たちが巻いて戻すっていう。エアジャムの時も俺たちだけ時間巻いてたからね(笑)
そういうところをもっと評価して欲しい(笑)」
とGENが笑わせたが、ファストかつショートな曲が多いだけにそうした時間調整がしやすいバンドであるとも言えるが、見た目やイメージ以上にそうしたところには実に真面目なバンドである。自分たちがフェスを主催しているだけに時間を守ることの大事さが身にしみているのかもしれないけれど。
まさに人が人の上を泳いでいく「swim」から、昼間であるが流星群を降り注がせた「midnight cruising」ではRYU-TAがKOUHEIのドラムセットに寄っていって2人でカメラ目線をして演奏するのが実に面白い。RYU-TAはその後もスクリーンの下の鉄骨が組まれたところにまで入っていって演奏するというフットワークの軽さを見せていたが、このステージですら今のこのバンドにとっては小さく感じるということなのだろうか。
この東北の澄んだ空に想いを馳せるかのようにさわやかな「hello」を演奏すると、
「人の想像もできないような悲しいことが起こったりする。ヒトリエが止まったりとか」
と震災を経験した東北の人たちへのメッセージと、本当だったらこの日このフェスで顔を合わせることができたヒトリエのwowakaのことを偲んだ。
そして「Squall」を普段から考えすぎな生活をしているみんなに、ゴールデンウィークくらいは何も考えずに音に向き合うようにと演奏すると、ここまでのこのフェスの最高沸点を記録すべく渾身の「monolith」でこの日最大のダイバーと巨大なサークルを生み出し、最後に最新作のショートチューン「message」でやはりパンクに終わったかと思いきや、
「まだちょっと時間あるみたいなんでもう1曲やります!」
とさらに「Remember」を追加して、最後にさらなる巨大&高速サークルを作り出した。
去年、このバンドは東名阪のアリーナツアーの真っ最中にこのフェスに出演するという超強行スケジュールで出演した。今年もGENは前日に金沢での東京スカパラダイスオーケストラのライブにゲスト参加してからこのフェスに出演している。そもそもが月初にYON FESをやっているだけに、そのあとはちょっと休んでも誰も何にも言わないだろうに、GENはこの日
「できることならこれからも毎年出たいフェス」
と口にしていた。このフェスに出て、東北の景色を見て、空気を吸うことによって、先輩のバンドたちとは違う、自分たちなりの東北への向き合い方が見つかるかもしれない。東北で生まれたこのバンドのファンとして、いつか、このバンドがそれを形にするのを見てみたいと思う。
1.fiction
2.Alien
3.Utopia
4.My HERO
5.Kitchen
6.swim
7.midnight cruising
8.hello
9.Squall
10.monolith
11.message
12.Remember
Kitchen
https://youtu.be/b8pteycZ7wM
15:10〜 THE BACK HORN [MICHINOKU STAGE]
この直前にHATAHATA STAGEに出演していたKing Gnuをちょっと見てから来ようと思っていたのだが、ミュージックステーションに出演した効果もあったからか、ステージが全く見えないくらいに観客が多すぎたために断念し、早めにこのMICHINOKU STAGEに戻る。前日はボーカルの将司が9mmの15周年ライブに参加した、THE BACK HORN。このフェスの象徴的なバンドの一つである。
この牧歌的な雰囲気の会場に似つかわしくない荘厳なSEでメンバー4人が登場すると、早くも岡峰光舟(ベース)が両手を高く広げ、菅波栄純の殺傷能力の高いギターリフが響く「ブラックホールバースデイ」でスタート。武道館ワンマンの時は前半では声の調子がイマイチだった将司もこの青空に響くようにしっかりと歌っており、将司、栄純、光舟の3人はのっけからステージ狭しと動き回り、暴れまくりながら演奏している。
早くも放たれたバンド最大の代表曲「コバルトブルー」ではステージ上の3人に負けないくらいに客席も激しさを増し、ダイバーが次々に転がっていく。ヤバTやフォーリミのライブでならわかるけど、このバンドのライブでこんなに!?というくらいに数えきれないくらいのダイバーが転がる様を見ると、このフェスがもともと持っている激しい部分を改めて感じるし、それはこのバンドとともに育まれてきたものなのかもしれない、とも思う。
最新ミニアルバム「情景泥棒」収録の「Running Away」でメンバー全員による力強いタイトルのコーラスを響かせると、ドラムの松田晋二によるMC。
「我々、THE BACK HORNはこのアラバキ皆勤賞です!このアラバキとともに歩んできました!我々去年結成20周年を迎えましたが、こうしてこのフェスに出れるのは当たり前だと思っていません。いませんが、これからもずっと出続けたいと思っています!」
という出馬経験の浅い議員の選挙演説みたいなMCは若手時代からずっと変わらないが、皆勤賞と聞くともうこのバンドはベテランと言っていい位置まで来てるんだなと思うし、ここからほど近い福島県出身である松田はこのフェスのステージに立つことでどれだけ力をもらってきただろうか、とも思う。そんな松田はこの後にラジオブースの公開収録にも登場。
そんな中で演奏されたのは松任谷由実のカバー「春よ、来い」。まだ桜が咲いているこの会場だからこそこの曲は最も相応しい場所であるかのように響くし、この曲のアレンジやサウンドからはこのバンドの持つ激しさやドロドロした部分以外のぬくもりや人間らしさを感じることができる。
そのまま「美しい名前」と聞かせる曲が続くのだが、この曲はライブにおいてはもう定番と言っていいくらいによく演奏されている曲だ。でもイントロではよく歓声が上がるのを見ると、この曲を聴きたいと思っている人がたくさんいるのだろうし、もう大切な人の名前を呼ぶことができなくなってしまうようなことがあったこの東北で聞くこの曲はいつも以上に何か感じるというか考えさせるものがあった。
小説家の住野よるとのコラボ曲である「ハナレバナレ」はバラード的なタイトルとは裏腹に、このバンドの持つドロドロとした一面が表出した曲。
「ハートブレイクな世界よ くたばれ」
という歌い出しが20年を超えているにもかかわらずインディーズ時代のこのバンドらしさを感じさせる。
将司が栄純に
「栄純、平成最後だからなんか一言」
と振ると、
「これからもよろしくー!」
といういたって普通なことしか言わないあたり、本当にステージで喋ることは何も考えていないバンドなんだな、と思うが、「シンフォニア」「刃」という終盤の代表曲2連発でのメンバーの暴れっぷりからは、いつもと同じようでいて、特別な場所でのライブだからこそいつもよりも生命力が漲っているように感じた。
ライブ後、将司と栄純は2人で一緒にフェスの会場内を歩き回っていた。それもまた皆勤賞のこのフェスだからこそと言えるだろうし、あまりに普通に溶け込みすぎていて、メインステージに出ているバンドとは思えないくらいに誰からも気づかれていないのがまたこのバンドらしいなと思った。
1.ブラックホールバースデイ
2.コバルトブルー
3.Running Away
4.春よ、来い
5.美しい名前
6.ハナレバナレ
7.シンフォニア
8.刃
Running Away
https://youtu.be/JP_8obkKnGY
16:00〜 浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS [HATAHATA STAGE]
こちらもこのフェスではおなじみの存在である、ベンジーこと浅井健一。2016年に結成したたスリーピースでの浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS名義での出演。
キャップを被ったベンジーがギターを弾きまくり、ベンジー→中尾憲太郎(ベース)→小林瞳(ドラム)とタイトルコールをリレーしていく「Watching TV」でスタートすると、中尾憲太郎のダウンピッキングの力強いベースのサウンドとシンプル極まりないスリーピースのロックンロールは実に相性が良いということに気付く。
シンプルとはいえ、ベンジーはギターがめちゃくちゃ上手いんだな、というのがすぐにわかるくらいにギターを弾きまくっているし、これは確かにギターはベンジーだけがいれば十分であり、スリーピースで活動しているのもよくわかる。
公開されたばかりの最新曲「HARUKAZE」を春の野外で響かせると、観客の1人が
「ベンジー、平成最後のライブだよ!」
と声を掛け、
「そういやそうだな」
と本当に全くその事実に気付いていなかったであろうベンジーはいきなり自身のピックを平成最後のプレゼントとばかりに客席に投げ入れまくると、
「今日はお祭りだから、懐かしい曲を」
と言って演奏されたのはなんとまさかのBLANKY JET CITYの「ガソリンの揺れ方」。これには遠巻きで見ていたブランキー時代からのファンも一斉に前に詰めかけたのだが、続く「DERRINGER」も含めてブランキーと同じ編成のこのバンドだからこそこうしてブランキーの曲をやりやすい部分はあるのだろうし、今でもイントロを聴くだけで「この曲は!」と瞬時に反応できてしまう記名性の強さは本当に凄い。かつてブランキー時代のインタビューでベンジーは
「俺たちはBLANKY JET CITYっていう未来の街から、今の汚れた世の中を掃除しに来たんさ」
と言っていたが、その通りにブランキーは時代を変えたバンドだったのだと思う。実際にイカ天やホコ天から次々にバンドがデビューしていったいわゆる「バンドブーム」を終わらせたのはブランキーの本物のロックンロールだったとも言われている。ブランキー自身もイカ天から世の中に登場したバンドであったが。
INTERCHANGE KILLS名義の曲だけでもフェスの時間をまかなえるだけの曲数や時間はあるのだが、この編成になる前のソロ名義での「紙飛行機」「危険すぎる」という曲も演奏されているのを聴くと、このバンドではベンジーの長い音楽キャリアを総括するような曲が聴けるということがわかる。
その中でも再びブランキー時代の大名曲「赤いタンバリン」が演奏されると再び湧きに湧く客席。ソロ名義の曲もそうだが、この編成は音数が少ないようでいてベンジーの活動の中で作ってきた曲と最も相性がいいと言える。それはつまりやはりロックンロールであるということ。
ベンジー「スーパーベーシスト、中尾憲太郎!スーパードラマー、小林瞳!」
中尾「スーパーボーカリスト&ギタリスト、浅井健一!」
ベンジー「そんなにスーパーじゃないけどね(笑)」
中尾「ほかに何て言ったらいいのかわからん!(笑)」
というやり取りはこの3人の関係の良さを表していたし、最後にはINTERCHANGE KILLS名義の「Beautiful Death」を演奏したのだが、本人が謙遜するのが信じられないくらいにベンジーはやはりスーパーボーカリスト&スーパーギタリストだった。
過去の諸々の事情から、ベンジーはロッキンのフェスやビバラなどの首都圏の大型フェスに出ることはない。それだけになかなかフェスで関東民が観れる機会はそうそうないのだが、このフェスに来れば見ることができるし、ライブを観るとベンジーがどれだけすごいロックンローラーなのかということがよくわかる。来年以降もここに来るのなら、またここでライブを見たいな。
1.Watching TV
2.Vineger
3.HARUKAZE
4.ガソリンの揺れかた
5.DERRINGER
6.紙飛行機
7.危険すぎる
8.赤いタンバリン
9.Beautiful Death
Beautiful Death
https://youtu.be/GqPaIDTxJr4
16:40〜 あいみょん [MICHINOKU STAGE]
始まる前からMICHINOKU STAGEのメイン通路は入場規制、つまりはメインステージすらも入場規制がかかっているというとんでもない状況が、今の日本の音楽シーンのトップに君臨しているのがこの人であるということがわかる、あいみょん。2年連続でのこのフェス出演である。
そんな状況なので、まぁステージがよく見えないのだが、このステージはメインステージなのでスクリーンがあるだけにそこ頼りになってしまうくらいに人が多い。
そんな中でサポートのバンドメンバーとともにあいみょんが登場し、
「君のアイスクリームが溶けた」
と歌い始める官能的な歌詞の「満月の夜なら」でスタート。曲中のハンドクラップがこの曲がどれだけたくさんの人に受け入れられているのかがよくわかるし、官能的ではあれど歌詞に使われている単語だけを見るとそこにエロさは全く感じさせないあたり、あいみょんの作詞の手法の凄さに驚く。
ポエトリーリーディング的に歌詞をマシンガンのごとくに連射していく「生きていたんだよな」も、もはやメンヘラソングという位置からは1億光年くらい遠い「みんなの歌」になっているが、武道館ワンマンの時に大合唱を巻き起こした「ふたりの世界」の
「まだ眠たくないのセックス」
はフェスだからか合唱はなし。しかしそれ故に「今夜このまま」も含めて、いつも以上にこの満員すらも超えたレベルの客席の隅から隅までにしっかり届くように、勢いというよりは丁寧に歌っていたのが印象的であった。
あいみょんが敬愛するandymoriからインスパイアされた「夢追いベンガル」でバンドサウンドとともに観客のノリも一気に加速したかと思いきや、R&Bのテイストを強く含んだ「愛を伝えたいだとか」ではゆらゆらと踊らせるという、みんなが聞きたがっているヒット曲を欠かさずに演奏するからこその忙しない1曲ごとのモードの切り替わり。
そして稀代の名曲「君はロックを聴かない」を「ROCK」がフェスの名前についているくらいにロックを聴いているであろうこのフェスの観客の前で歌うと、このメンバーだからこそあいみょんのライブはロックさを感じることができるんだなと毎回のように実感する、BPM速くなりまくりの「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」から、
「今年もたくさん咲いてくれますように」
と言って最後に演奏されたのは「マリーゴールド」。青空が微かにオレンジ色に染まり、その空には飛行機雲も浮かんでいる。偶然というにはあまりにも出来すぎた、まるでこの時に合わせたかのような演出のようだった。
意外だったのはリリースされたばかりの「ハルノヒ」を春フェスでやらなかったことであるが、「マリーゴールド」が去年の、「君はロックを聴かない」が2年前の夏の曲である。それならば今年はどんな夏の名曲を生み出すのか。それはきっとそれらの曲と同じように今年の夏の野外で聴けるはずだ。
1.満月の夜なら
2.生きていたんだよな
3.ふたりの世界
4.今夜このまま
5.夢追いベンガル
6.愛を伝えたいだとか
7.君はロックを聴かない
8.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
9.マリーゴールド
マリーゴールド
https://youtu.be/0xSiBpUdW4E
17:40〜 SHADOWS [ARAHABAKI STAGE]
このフェスには初出演となる、SHADOWS。空が暗くなってきた時間帯のARAHABAKI STAGEへの出演である。
メンバー5人がステージに現れると、Hiroは早くもステージ中央から伸びる花道に進み、ファストかつハードかつラウドなバンドの演奏に乗せて歌いながら、
「お前ら早くこっち来いよ!」
とダイブを煽りまくる。
もはやハードコアと言っていいくらいに削ぎ落とされたサウンドのバンドなのだが、HiroとK azuki(ギター)とTakahiro(ギター)の3人は現在のラウドシーン隆盛の礎を作ったFACTのメンバーであり、そのメロディ部分を担っていた男たちである。だからこそ「Into The Line」「Chain Reaction」という曲ではこの3人が持つ激しいだけではないメロディの美しさを感じることができるし、それがFACTをレジェンド的な存在にした理由でもあり、このバンドのライブにたくさんの人が集まっている理由でもある。
しかしHiroはなぜか
「初めまして、SHISHAMOです!」
とタイムテーブルがかぶり気味なSHISHAMOの名前で挨拶。
「名前が似てるからSHISHAMOと間違ってここに来た人もいるんじゃないの?」
と言っていたが、メンバーの見た目からもサウンドからもSHISHAMOではないことは1秒でわかるだけに、ここにいた人たちはみんなこのバンドのライブが見たくて集まった人ばかりである。
「せっかくだからこのフェスで1番デカいサークル作ろうぜ!なんだって1番がいいだろ!」
とHiroが言うと「Fail」では客席に巨大サークルが出現するのだが、サークルの激しさが他のバンドとは全く違うのはこのバンドだからだろう。
このバンドは最新アルバムをライブ会場限定で販売しているのだが、そのアルバムからも「The Lost Song」「My Direction」という曲が披露されたのだが、バンドの音楽性はそのままにひたすら重さと強さを追求したような曲たち。そんな中にあって新曲ではない「Progress」は
「前に一歩ずつ進んでいこうっていう曲」
と言って演奏されていただけに、激しいだけではないこのバンドの聞き手に力を与えるような一面をうかがわせる。
そしてラストは「BEK」をラウドかつハードに鳴らし、30分という短い持ち時間で11曲も演奏した。このバンドはこれからVIVA LA ROCKなどのフェスにも出て行く。基本的にライブハウスが生きる場所であるバンドだけれど、こうしてフェスでライブを見ると、ライブハウスではない場所だからこそ見れる景色があるということを実感できる。
1.All I Want
2.Senses
3.Overcome
4.Into The Line
5.Chain Reaction
6.Freedom Is Yours
7.Fail
8.The Lost Song
9.Progress
10.My Direction
11.BEK
My Direction
https://youtu.be/ScMu3t1vKYY
18:30〜 フレデリック [HATAHATA STAGE]
2019年、平成最後のアラバキも終わりに近づいてきている。今年のHATAHATA STAGEのトリはフレデリック。今ではフェスに欠かせない存在のバンドだが、夜の野外で見れるのは貴重な機会だ。
「フレデリック、始めます」
というおなじみのSEでメンバーが登場すると、1曲目は健司がハンドマイクで歌う「飄々とエモーション」で、ダンスというよりはまずはその健司のこの広いステージを包み込むような歌声を堪能させるようなスタートだ。
高橋武のドラムが細かいビートを刻む「シンセンス」からはダンサブルなモードに突入していくのだが、フレデリックど真ん中な「スキライズム」、夜の野外でこのバンドのロックを聴いてしまったら踊らずにはいられないでしょうと思う「夜にロックを聴いてしまったら」、さらにはこの会場に来ている人たちがあらゆる日常の事象から逃げ出すようにしてここにいるんじゃないかと思わせるような「逃避行」と完全に新作アルバム「フレデリズム2」のモード。
なかなかこうしたフェスのステージ、しかもトリという舞台でここまで新作に振り切れたモードのライブをやるバンドはなかなかいないと思うのだが、それはバンド自身が新作にこの上ない自信を持っているからこそできることである。実際に「フレデリズム2」は今年リリースされたアルバムの中では屈指の傑作だと思う。
「アラバキ、まだまだ遊ぶ?遊ばない?遊ぶ?遊ばない?遊ぶよな?」
と健司が不敵に煽ってから演奏された「KITAKU BEATS」でまだまだ遊びたいと思わせると、
「これまでに何百組のアーティストが出演してきた、このHATAHATA STAGE。その平成最後のライブが我々フレデリックです。令和の人がこの映像を見たら、平成ってすごい楽しい時代だったんやなって思うくらいにもっと踊ってもらっていいですかアラバキ!」
と健司が平成の終わりに想いを馳せると、康司のベースによるイントロのアレンジがさらに観客の期待感を煽りまくる「オドループ」へ。
赤頭のギターソロはこの日も華麗に決まったが、まさに夜の時間帯に聞くこの曲は本当に踊ってない夜が気に入らない、というくらいに満員の客席が総ダンス状態だったし、この曲はフレデリック最大の代表曲にして、平成を代表する名曲だと思う。それはきっと令和になっても変わらないはずだ。
トリなのでアンコールがあるかと思いきや、スタッフがいそいそと撤収作業を始め、アンコールはなし。野外の夜にこのバンドのライブを見れたのは嬉しかったが、できるならもうちょっと長い時間ライブができるステージで見てみたい。もう30分や35分では物足りないライブをやるようなバンドになってきているだけに。
1.飄々とエモーション
2.シンセンス
3.スキライズム
4.夜にロックを聴いてしまったら
5.逃避行
6.KITAKU BEATS
7.オドループ
スキライズム
https://youtu.be/YZdDKQHLu50
19:45〜 the telephones [HANAGASA STAGE]
5年ぶりのアラバキ出演は2008年に初めて出演した時に立ったHANAGASA STAGEのトリ。復活後のツアーで釜石でライブはしているが、東北に来てくれるのをずっと待っていた人たちで時間前からテントの中は溢れかえっている、the telephones。
晴れていたとはいえやはりこの時間はかなり寒さが厳しくなってきていたのだが、サウンドチェックで演奏している時にノブは上半身裸という状態。telephones以降、様子がおかしいメンバーがいるバンドもたくさん出てきたが、さすがにこの寒さで上半身裸になるやつはそうそういない(自分が見た中では2日間でノブだけ)だけに、もうすっかり慣れてしまった感じもするけれど、やっぱりノブはちょっとおかしい。
「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでアフロのカツラを被った4人が登場すると(ノブはさすがにいつものラメTシャツを着ている)、
「アラバキー!5年ぶりに帰ってきたぜー!今日は何も考えずに踊って最高の夜にしようぜー!いきなり猿のように踊ろうぜー!」
と石毛輝が叫び、初っ端から「Monkey Discooooooo」でスタートして寒さも忘れるくらいの凄まじい盛り上がり。始まる前から満員だったテントの中にはさらに多くの人が押し寄せてきている。
「俺たちは2008年にこのフェスに初めて出演した時がこのHANAGASA STAGEだったんだけど、その時にやった曲!」
と言って演奏された「DaDaDa」のディスコパンクサウンドでダイバーも出現。自分自身、telephonesのライブを見始めたのは2008年にフェスに出始めてからだった。その時はこのフェスには来ていなかったが、もし初出演した時にライブを見れていたら、この「DaDaDa」を聴いた時に抱く感情は全く違うものになっていたんじゃないかと思う。
夜のHANAGASA STAGEは映像とのコラボがあるステージなのだが、この日は様々なアーティストのMVを監督している加藤マニ氏による、バンドの演奏に合わせた映像がリアルタイムで映し出され(本人もその時によって速さが変わるバンドの演奏に合わせるのはすごく難しかったと語っている)、「Yeah Yeah Yeah」では最後のサビ前でパソコンのインターネットが動作を停止した時のような映像が映ると、
「the telephonesは動作を停止しました」
という文字が並んでおり、メンバーがマネキンチャレンジのように1分くらいピタッと静止。telephonesはワンマンのライブ前にメンバーが出演する煽りVTRを作ったりもしていたけれど、こうしてライブ中に映像を使うことはほとんどなかった。それだけに新鮮だし、こうして映像に合わせて演奏の仕方を変えるというのも若手時代じゃなくて今だからこそできることだと思う。
「俺たちが初めて出た時はもっとこのステージは小さかったんだけど、その時もこんな風にテントからはみ出すくらいに人が見に来てくれて。本当に嬉しい」
と集まってくれた人たちへの感謝を告げると、「A.B.C.DISCO」からは怒涛のキラーチューンにしてディスコヒッツ祭り。
「HABANERO」で石毛がかつてと変わらない軽快なバク転を見せるのもステージが広いフェスならでは。
そして「I Hate DISCOOOOOOO!!!」でディスコを叫びまくった後に、石毛が観客に
「ウィーアー!?」
と問いかけると大きな
「ディスコ!」
が返ってきて、あまりの大きさにビックリしたのだが、
「本当にありがとう。でもまだ思い出補正で11年前の時の方が大きく感じてしまう。だからそれを塗り替えるくらいに大きな声で!」
と言うと最大限の「ディスコ!」コールの後に演奏されたのは、このフェスへの愛と感謝を告げる「Love & DISCO」。トリだからなのかはわからないけど、先日見た他のフェスではやらなかった。やっぱり何度聴いてもこの曲は本当に平成を代表する名曲だと思う。そんなに売れたわけでもないし、みんなが知っている曲ではないけれど、telephonesを聴いてきた人にとっては間違いなくそれは揺らぐことはない事実だ。
アンコールに応えてメンバーが再びステージに現れると、
「俺たちのことを忘れないでいてくれてありがとう」
と石毛は言った。忘れるわけないじゃないか、と思うけれど、石毛はシーンの移り変わりの早さをわかっている。1年くらい休むだけで忘れられてしまうくらいに次々に新しい才能が世の中に出てくる中で、5年間というのは実に長い時間だし、この時間はメインステージではthe pillowsの30周年記念ライブが、BAN-ETSUではなにかと話題の石野卓球のDJが行われていた。そんな厳しい時間にこのステージに収まりきらないくらいにたくさんの人がtelephonesを見にきてくれている。みんな忘れるどころか、ずっとtelephonesがまたここに来てくれるのを待っていたのだ。
そして最後に演奏されたのは、まだ初出演時には「Love & DISCO」すらなかった状態でバンド最大のキラーチューンだったであろう、「Urban Disco」。ノブは客席に突入すると、そのまま全然ステージに戻ってこなかったので、どこに行ったんだろう?と思っていたら最後に椅子を持ってステージに戻ってきて、その椅子に座ってくつろいでいた。その意味不明さは全く変わらないどころか、むしろ当時よりも増している感じがするが、telephonesのライブの楽しさもやっぱり当時と変わらないどころか、楽しさを増していた。
この前の月に見たツタロックでは、やはり他のメインステージに出たバンドに比べるとアウェー感が強かった。もうtelephonesの音楽も、存在も知らない人がたくさんいるということを思い知らされた。それは決して悲観的なことではないし、telephonesはアウェーで勝ち続けてきたことでフェスの大きなステージに立てるようになったバンドだけれど、telephonesのライブはtelephonesが好きな人たちがみんなで踊って叫ぶことでその楽しさがさらに増幅されていく。かつてのワンマンの時に何度も味わったあの感覚。それをこの日は思い出させてくれるくらい、みんながtelephonesのことを待っていた熱量がバンドの演奏をさらに熱くしていた。かつてこのバンドのライブを見ていた人たちはやっぱりこのバンドのことを忘れるわけがなかった。
平成最後の、という言葉を本当によく聞いた、今年のアラバキ。多くの出演者にとっても平成最後のライブだったであろうけれど、平成最後に何を食べていたか、平成から令和に変わる瞬間に何をしていたかなんてきっとすぐに忘れてしまう。年号が変わったからといって何もかもがドラスティックに変わることなんてない。あくまで前の日の続きだ。
でもこの日、平成最後に見たライブがこの場所でのthe telephonesのライブだったということは一生忘れないと思う。止まってた期間もあったとはいえ、自分が平成の中でトップクラスにライブを見てきたバンド。(多分上位にいるのはBase Ball Bear、アジカン、9mm、THE BAWDIESあたり)
そのバンドが復活してから最高クラスのライブでこのフェスを締め括ってくれた。それだけでも、やっぱりここまで来て良かったと思えた。
リハ.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
1.Monkey Discooooooo
2.DaDaDa
3.Yeah Yeah Yeah
4.A.B.C.DISCO
5.HABANERO
6.I Hate DISCOOOOOOO!!!
7.Love & DISCO
encore
8.Urban Disco
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
やっぱり関東からこの会場まではかなり遠いし、持ち時間もメインのトリ以外は短いし、ステージ間の移動も通路が狭かったりと、不便なところも多いフェスだ。でもやっぱりこのフェスでしか見ることができないものがたくさん見れるし、どこか東北だからこその感情や力がこのフェスやこのフェスに関わる人たちからは感じることができる。また来年、来れたらいいな。
Next→ 5/1 THE KEBABS × ドミコ @渋谷CLUB QUATTRO
11:00〜 ネクライトーキー [ARAHABAKI STAGE]
このフェス初出演となる、男女混成5人組バンド、ネクライトーキーが2日目のARAHABAKI STAGEのトップバッター。今まで参加したサーキットイベントなどにも出演していたが、入場規制でことごとく見れなかっただけに、ライブを見るのは初めて。
注目度の高さを示すように超満員の観客が待ち受ける中で1人ずつステージに登場すると、最後に女性ボーカルのもっさが登場して「めっちゃかわいいうた」からスタートすると、もっさの声も曲も実にポップなのだが、バンドの演奏がめちゃくちゃ上手い。そもそもギターの朝日廉、ベースの藤田、ドラムのカズマ・タケイはコンテンポラリーな生活のメンバーとしてKANA-BOONなどのバンドとしのぎを削ってきたメンバーであるだけにそれは当然でもあるのだが、そのコンテンポラリーな生活ではボーカル&ギターだった朝日はギターに徹するとこんなにも上手いのか、と思うくらいにギタリストとしてのレベルが高い。
先日、サポートメンバーだった中村郁香(キーボード)の正式加入が発表されたが、そうなるのは必然だったであろうというくらいに彼女のキーボードの音色がポップさを引き立てる代表曲の一つ「こんがらがった!」から、朝日が石風呂という名義のボカロPとして発表していた「ジャックポットなら踊らにゃソンソン」というライブだからこそ聴ける曲に至るまで、どれも徹底的にポップなのだけれども、その演奏する姿や音からはロックバンドであることの熱さを感じさせる。
もっさのギターのチューニングがなかなか終わらず、朝日が
「今日はいい天気ですね。…天気の話をするっていうことは他に喋る話題がないっていうこと(笑)」
と場を繋ぐのも限界を迎えてくると、「だけじゃないBABY」から、イントロで大歓声が上がった、このバンドの名前を一躍シーンに知らしめることになった「オシャレ大作戦」ではもっさが
「アラバキ ヘヘイヘイ」
と歌詞をこのフェスに合わせて歌ってさらなる大歓声を巻き起こす。ただでさえキラーチューンであるこの曲であるが、こうしてご当地に合わせて歌詞を変えることができるというのは本当に強い。これからいろんな場所やいろんなフェスでその土地やイベントの名前に変えて歌われていくのだろう。
MCもほとんどないし、このステージ特有の花道も全く使わないというストイックさは30分の持ち時間に7曲を叩き込むというひたすらに音楽を聴かせたいというこのバンドの意識がそのまま現れているが、最後の「遠吠えのサンセット」の急加速していくような演奏は改めてこのバンドの持つ力量の高さ、それはあらゆる角度から曲をポップにキャッチーにできる技術でもあるということを感じさせた。
朝日は前述のように石風呂名義でも高い評価を受けていたし、そっちの道や楽曲提供者という道でも生きていくことができる人だ。ましてやコンテンポラリーな生活というバンドは大成するところまではいくことができなかっただけに、一層バンドじゃなくてそっちの道へ…と考えても全くおかしくない。
でも朝日はバンドであることを諦めなかった。自分がボーカルではあることを譲ってまでもバンドという形にこだわり続けた。そのバンドを信じる力がもっさと中村に出会ったことで花開き、こんなに大きなフェスの大きなステージを超満員にできるようにまでなった。かつてコンテンポラリーな生活が小さいライブハウスでも満員にならなかったところを見ているだけに、これは本当に感動的な景色だったし、バンドにはやっぱり夢がある。何歳になってもこうして大きいところまでいける可能性があるんだから。
1.めっちゃかわいいうた
2.こんがらがった!
3.ジャックポットなら踊らにゃソンソン
4.許せ!服部
5.だけじゃないBABY
6.オシャレ大作戦
7.遠吠えのサンセット
オシャレ大作戦
https://youtu.be/Aw1Awul1818
12:00〜 マカロニえんぴつ [HANAGASA STAGE]
こちらもこのフェス初出演、マカロニえんぴつ。本番前のサウンドチェックの段階からはっとりはこの日BAN-ETSU STAGEに出演するウルフルズの「バンザイ 〜好きでよかった〜」を弾き語りしたり、本編に入りきらない曲を演奏したりと早くから集まってくれた人たちへのサービス精神を見せる。
このHANAGASA STAGEは唯一テント型のステージなのだが、そのテント部分からはみ出しまくるくらいに満員の観客が詰めかけた本番では「鳴らせ」でスタートすると、シングルリリースされたミドルテンポで温かみのあるサウンドと歌詞の「レモンパイ」ではステージ背面の壁にレモン色の照明が、大人っぽさを感じさせる最新作からの「ブルーベリー・ナイツ」では紫色の照明が映し出され、天井があるこのステージだからこその演出が楽曲の内容と見事にリンクしていく。
バンドが解散や活動休止していくことの寂しさなどのファン心理を、バンドをやる側になっても上手く言い当てることができる歌詞を書けるはっとりの作詞家としてのセンスを垣間見ることができる華やかなキーボードのサウンドの「OKKAKE」は良い曲ではあるのだが、そもそも「レモンパイ」のカップリングという立ち位置の曲なだけにフェスで演奏するのはどうなんだろうか、とも思っていたのだがそれが杞憂を通り越して愚問であったと思わせるくらいの盛り上がりっぷり。つまりはこの曲をみんなが知っていて待っているという状況がすでに出来上がっているということで、それが今のこのバンドの状況の良さや勢いを示している。なかなかカップリング曲をフェスでやってここまで持っていけるバンドはいない。
はっとりは初出演ではあれど、このフェスに観客として参加したことがあり、スピッツや奥田民生やTOMOVSKYなど、自身のルーツであるミュージシャンたちのライブを見た思い出の場所であることを語るのだが、
「このフェスに出れたことは本当に嬉しい。でもここはゴールじゃない」
とバンドはさらに先を見据えて進んでいることを語ると、「洗濯機と君とラヂオ」で踊らせてから最後に演奏されたのは「ミスター・ブルースカイ」。テントのステージであるがゆえに演奏中に我々観客は青空を見ることはできなかったのだが、メンバーたちはこの曲の演奏中に青空を見ることができたのだろうか。
もし仮に今年はそれを見ることができなかったとしても、来年以降はもっと大きなステージでこの曲が鳴らされるだろう。そしていつかはかつてはっとりがスピッツや奥田民生を見たステージへ。そこに行けるポテンシャルや楽曲を持っているバンドだし、その日までOKKAKEていたいと思えるバンド。本当にそれくらい曲が良い。
リハ.バンザイ 〜好きでよかった〜
リハ.girl my friend
リハ.MAR-Z
1.鳴らせ
2.レモンパイ
3.ブルーベリー・ナイツ
4.OKKAKE
5.洗濯機と君とラヂオ
6.ミスター・ブルースカイ
ブルーベリー・ナイツ
https://youtu.be/Euf1-3WRino
12:55〜 ヤバイTシャツ屋さん [BAN-ETSU STAGE]
2年ぶりの出演となる、ヤバイTシャツ屋さん。この日も時間前からサウンドチェックで曲を連発して絶好調だし、もうその段階からBAN-ETSU STAGEのスタンディングゾーンは超満員で、ある意味ではメインのMICHINOKU STAGEよりも人が入るかもしれないこのステージへの出演となったのは正解なのかもしれない。
おなじみの「はじまるよ〜」の脱力SEで登場すると、この日はいきなりの「ハッピーウェディング前ソング」からスタートし、「キッス!キッス!」の大合唱とともにはやくもダイバーが次々と転がっていく。
こやまが言っていたように、この日はバンドにとって平成最後のライブである。ヤバTは様々な武器を持つバンドであるだけに色々な戦い方ができるし、平成最後のライブとしての選択肢としては
1.面白いパフォーマンスをふんだんに盛り込んだエンタメ的なライブ
2.こやまがツイッターで言っていたように全曲「かかとローラー」を演奏するネタ的なライブ
3.ひたすら自分たちの最も自信のある曲を並べるライブ
などがあるのだが、このバンドが選んだのは当たり前のように「3.ひたすらに自分たちの最も自信のある曲を並べるライブ」だった。だからこそ「かわE」以降にシングルのタイトル曲をこれでもかと並べる、鬼のようなセトリを組んできたのである。平成に生まれた自分たちが平成の最後にやるべきこと。それはやっぱり音楽であった。面白いメンバーたちだけど、決して面白パフォーマンス集団になりたかったわけじゃなくて、ただただバンドマンになりたかった人たちなのである。
とはいえそこはやはりヤバT、
「平成最後にやり残したことは?」
というこやまの問いに対し、
もりもと「結婚したかった」
(「中途半端な関係の女性が多すぎるから無理や」と一刀両断される)
しばた「平成最後だから、楽しんごのネタやりたい!」
としばたが全力のラブ注入を披露。なぜ平成最後に敢えて楽しんごだったのかは全くわからないが、先日のツアー中には嫌な思いや悲しい思いをして怒ったり涙をしてしまったりしていただけにちょっと心配していたのだが、やはりステージに立てば100%の笑顔を見せてくれるのが本当に頼もしい。
この日はタイムテーブル的にもこのバンドを聴いている人にとっては実に厳しいというのは、フェスの公式サイトが「移動に30分かかる」と公表しているくらいに距離が離れているMICHINOKU STAGEでこのバンドがBAN-ETSU STAGEでライブを終えた10分後くらいに04 Limited Sazabysのライブが始まるからである。
そんな状況であってもこれだけ超満員になっているというのは本当に凄いことであるが、こやまは
「フォーリミ見に行きたい人もいるやろうけど、俺らこのあとに「ヤバみ」とか「無線LAN〜」とか「あつまれ!パーティーピーポー」とかみんなが聴きたい曲やるから!
フォーリミ行くんやったら泳いで行って!」
とセトリを先に公表してフォーリミに移動しようとする人たちを阻止しようとしていたのには爆笑。しばたともりもとからは
「言ったらアカン!」
と言われていたが。
しかし公表した曲だけをやるのではなく、しばたのゴリゴリのベースのリズムが観客を踊らせる「DANCE ON TANSU」、そのしばたが作曲した、フェス映えするタオル回しがある「L・O・V・E タオル」と時間の限りにちょっとでも多くの曲を演奏しようとしているのがわかる。
そして終盤は予告通りに「無線LANばり便利」から、テンポ速くなりまくりの「ヤバみ」、そしてラストはやはり「あつまれ!パーティーピーポー」で平成最後の大合唱。ああ、やっぱりヤバTは本当に曲が良いバンドなだけに、フェスでこういう戦い方を選んでくれて本当に嬉しいな、と思っていたら、
「まだ時間あるからもう1曲!」
と言ってさらに「Tank-top of the world」を追加した。時間のギリギリまで曲を詰め込むその姿は、まるで彼らが憧れてきた10-FEETのようですらあった。最後までダイバーが減らないくらいの激しいライブであることも含めて。
先日のしばたのツアー中の件の時に触れたように、ヤバTはメンバーが優しすぎるが故に、そこにつけこまれてメンバーが傷ついたり悲しんだりしてしまう危険性すらある。でもこやまがこの日、
「フェスだから他に見たいアーティストがいっぱいいるだろうけれど、この時間にヤバTを選んでくれてありがとう」
と口にした。自分自身、本当に見たいバンドが被っていただけにどうするかずっと迷っていたのだけど、この言葉を聞いて救われた気がしたし、やっぱり好きなバンドのメンバーが優しい人たちなのは嬉しいことだ。
出会ってから今に至るまで、自分はヤバTのことを「平成最後の発明的なバンドであり、平成最後のモンスターバンド」だと思っているのだが、そんなバンドの平成最後のライブはやっぱり、かっこE超えてかっこFだったのだ。
リハ.とりあえず噛む
リハ.小ボケにマジレスするボーイ&ガール
1.ハッピーウェディング前ソング
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.KOKYAKU満足度1位
5.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
6.DANCE ON TANSU
7.L・O・V・E タオル
8.無線LANばり便利
9.ヤバみ
10.あつまれ!パーティーピーポー
11.Tank-top of the world
かわE
https://youtu.be/ciFOh2KN99U
13:45〜 04 Limited Sazabys [MICHINOKU STAGE]
30分かかると公式が発表しているBAN-ETSU→MICHINOKU間を10分で移動したことによって間に合った、04 Limited Sazabys。2年連続でのこのMICHINOKU STAGE出演である。
「fiction」でスタートするのはおなじみではあるが、その後は「Alien」「Utopia」と最新アルバム「SOIL」の曲を続けて、バンドが最新モードにあることを告げる。この辺りは自身の主催する「YON FES」の時ともまた異なる内容である。
さらに「My HERO」からすでにライブではおなじみの曲になりつつある「Kitchen」と新作モードは続くのだが、「SOIL」がそもそも原点であるメロディックパンクに立ち返るような内容のものであっただけに、ライブをそのモードにするとより一層パンクなサウンドのバンドであるということが際立つ。GENのハイトーンボイスは曇りない青空に実によく似合う。YON FESも今年は良い天気だったし、このバンドは徐々に晴れバンドと言っていい存在になってきているのかもしれない。
「このステージで最初に出た、加山雄三さんのバンド見ていた人も多いでしょ?加山さん、12分押してましたからね(笑)それを俺たちが巻いて戻すっていう。エアジャムの時も俺たちだけ時間巻いてたからね(笑)
そういうところをもっと評価して欲しい(笑)」
とGENが笑わせたが、ファストかつショートな曲が多いだけにそうした時間調整がしやすいバンドであるとも言えるが、見た目やイメージ以上にそうしたところには実に真面目なバンドである。自分たちがフェスを主催しているだけに時間を守ることの大事さが身にしみているのかもしれないけれど。
まさに人が人の上を泳いでいく「swim」から、昼間であるが流星群を降り注がせた「midnight cruising」ではRYU-TAがKOUHEIのドラムセットに寄っていって2人でカメラ目線をして演奏するのが実に面白い。RYU-TAはその後もスクリーンの下の鉄骨が組まれたところにまで入っていって演奏するというフットワークの軽さを見せていたが、このステージですら今のこのバンドにとっては小さく感じるということなのだろうか。
この東北の澄んだ空に想いを馳せるかのようにさわやかな「hello」を演奏すると、
「人の想像もできないような悲しいことが起こったりする。ヒトリエが止まったりとか」
と震災を経験した東北の人たちへのメッセージと、本当だったらこの日このフェスで顔を合わせることができたヒトリエのwowakaのことを偲んだ。
そして「Squall」を普段から考えすぎな生活をしているみんなに、ゴールデンウィークくらいは何も考えずに音に向き合うようにと演奏すると、ここまでのこのフェスの最高沸点を記録すべく渾身の「monolith」でこの日最大のダイバーと巨大なサークルを生み出し、最後に最新作のショートチューン「message」でやはりパンクに終わったかと思いきや、
「まだちょっと時間あるみたいなんでもう1曲やります!」
とさらに「Remember」を追加して、最後にさらなる巨大&高速サークルを作り出した。
去年、このバンドは東名阪のアリーナツアーの真っ最中にこのフェスに出演するという超強行スケジュールで出演した。今年もGENは前日に金沢での東京スカパラダイスオーケストラのライブにゲスト参加してからこのフェスに出演している。そもそもが月初にYON FESをやっているだけに、そのあとはちょっと休んでも誰も何にも言わないだろうに、GENはこの日
「できることならこれからも毎年出たいフェス」
と口にしていた。このフェスに出て、東北の景色を見て、空気を吸うことによって、先輩のバンドたちとは違う、自分たちなりの東北への向き合い方が見つかるかもしれない。東北で生まれたこのバンドのファンとして、いつか、このバンドがそれを形にするのを見てみたいと思う。
1.fiction
2.Alien
3.Utopia
4.My HERO
5.Kitchen
6.swim
7.midnight cruising
8.hello
9.Squall
10.monolith
11.message
12.Remember
Kitchen
https://youtu.be/b8pteycZ7wM
15:10〜 THE BACK HORN [MICHINOKU STAGE]
この直前にHATAHATA STAGEに出演していたKing Gnuをちょっと見てから来ようと思っていたのだが、ミュージックステーションに出演した効果もあったからか、ステージが全く見えないくらいに観客が多すぎたために断念し、早めにこのMICHINOKU STAGEに戻る。前日はボーカルの将司が9mmの15周年ライブに参加した、THE BACK HORN。このフェスの象徴的なバンドの一つである。
この牧歌的な雰囲気の会場に似つかわしくない荘厳なSEでメンバー4人が登場すると、早くも岡峰光舟(ベース)が両手を高く広げ、菅波栄純の殺傷能力の高いギターリフが響く「ブラックホールバースデイ」でスタート。武道館ワンマンの時は前半では声の調子がイマイチだった将司もこの青空に響くようにしっかりと歌っており、将司、栄純、光舟の3人はのっけからステージ狭しと動き回り、暴れまくりながら演奏している。
早くも放たれたバンド最大の代表曲「コバルトブルー」ではステージ上の3人に負けないくらいに客席も激しさを増し、ダイバーが次々に転がっていく。ヤバTやフォーリミのライブでならわかるけど、このバンドのライブでこんなに!?というくらいに数えきれないくらいのダイバーが転がる様を見ると、このフェスがもともと持っている激しい部分を改めて感じるし、それはこのバンドとともに育まれてきたものなのかもしれない、とも思う。
最新ミニアルバム「情景泥棒」収録の「Running Away」でメンバー全員による力強いタイトルのコーラスを響かせると、ドラムの松田晋二によるMC。
「我々、THE BACK HORNはこのアラバキ皆勤賞です!このアラバキとともに歩んできました!我々去年結成20周年を迎えましたが、こうしてこのフェスに出れるのは当たり前だと思っていません。いませんが、これからもずっと出続けたいと思っています!」
という出馬経験の浅い議員の選挙演説みたいなMCは若手時代からずっと変わらないが、皆勤賞と聞くともうこのバンドはベテランと言っていい位置まで来てるんだなと思うし、ここからほど近い福島県出身である松田はこのフェスのステージに立つことでどれだけ力をもらってきただろうか、とも思う。そんな松田はこの後にラジオブースの公開収録にも登場。
そんな中で演奏されたのは松任谷由実のカバー「春よ、来い」。まだ桜が咲いているこの会場だからこそこの曲は最も相応しい場所であるかのように響くし、この曲のアレンジやサウンドからはこのバンドの持つ激しさやドロドロした部分以外のぬくもりや人間らしさを感じることができる。
そのまま「美しい名前」と聞かせる曲が続くのだが、この曲はライブにおいてはもう定番と言っていいくらいによく演奏されている曲だ。でもイントロではよく歓声が上がるのを見ると、この曲を聴きたいと思っている人がたくさんいるのだろうし、もう大切な人の名前を呼ぶことができなくなってしまうようなことがあったこの東北で聞くこの曲はいつも以上に何か感じるというか考えさせるものがあった。
小説家の住野よるとのコラボ曲である「ハナレバナレ」はバラード的なタイトルとは裏腹に、このバンドの持つドロドロとした一面が表出した曲。
「ハートブレイクな世界よ くたばれ」
という歌い出しが20年を超えているにもかかわらずインディーズ時代のこのバンドらしさを感じさせる。
将司が栄純に
「栄純、平成最後だからなんか一言」
と振ると、
「これからもよろしくー!」
といういたって普通なことしか言わないあたり、本当にステージで喋ることは何も考えていないバンドなんだな、と思うが、「シンフォニア」「刃」という終盤の代表曲2連発でのメンバーの暴れっぷりからは、いつもと同じようでいて、特別な場所でのライブだからこそいつもよりも生命力が漲っているように感じた。
ライブ後、将司と栄純は2人で一緒にフェスの会場内を歩き回っていた。それもまた皆勤賞のこのフェスだからこそと言えるだろうし、あまりに普通に溶け込みすぎていて、メインステージに出ているバンドとは思えないくらいに誰からも気づかれていないのがまたこのバンドらしいなと思った。
1.ブラックホールバースデイ
2.コバルトブルー
3.Running Away
4.春よ、来い
5.美しい名前
6.ハナレバナレ
7.シンフォニア
8.刃
Running Away
https://youtu.be/JP_8obkKnGY
16:00〜 浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS [HATAHATA STAGE]
こちらもこのフェスではおなじみの存在である、ベンジーこと浅井健一。2016年に結成したたスリーピースでの浅井健一 & THE INTERCHANGE KILLS名義での出演。
キャップを被ったベンジーがギターを弾きまくり、ベンジー→中尾憲太郎(ベース)→小林瞳(ドラム)とタイトルコールをリレーしていく「Watching TV」でスタートすると、中尾憲太郎のダウンピッキングの力強いベースのサウンドとシンプル極まりないスリーピースのロックンロールは実に相性が良いということに気付く。
シンプルとはいえ、ベンジーはギターがめちゃくちゃ上手いんだな、というのがすぐにわかるくらいにギターを弾きまくっているし、これは確かにギターはベンジーだけがいれば十分であり、スリーピースで活動しているのもよくわかる。
公開されたばかりの最新曲「HARUKAZE」を春の野外で響かせると、観客の1人が
「ベンジー、平成最後のライブだよ!」
と声を掛け、
「そういやそうだな」
と本当に全くその事実に気付いていなかったであろうベンジーはいきなり自身のピックを平成最後のプレゼントとばかりに客席に投げ入れまくると、
「今日はお祭りだから、懐かしい曲を」
と言って演奏されたのはなんとまさかのBLANKY JET CITYの「ガソリンの揺れ方」。これには遠巻きで見ていたブランキー時代からのファンも一斉に前に詰めかけたのだが、続く「DERRINGER」も含めてブランキーと同じ編成のこのバンドだからこそこうしてブランキーの曲をやりやすい部分はあるのだろうし、今でもイントロを聴くだけで「この曲は!」と瞬時に反応できてしまう記名性の強さは本当に凄い。かつてブランキー時代のインタビューでベンジーは
「俺たちはBLANKY JET CITYっていう未来の街から、今の汚れた世の中を掃除しに来たんさ」
と言っていたが、その通りにブランキーは時代を変えたバンドだったのだと思う。実際にイカ天やホコ天から次々にバンドがデビューしていったいわゆる「バンドブーム」を終わらせたのはブランキーの本物のロックンロールだったとも言われている。ブランキー自身もイカ天から世の中に登場したバンドであったが。
INTERCHANGE KILLS名義の曲だけでもフェスの時間をまかなえるだけの曲数や時間はあるのだが、この編成になる前のソロ名義での「紙飛行機」「危険すぎる」という曲も演奏されているのを聴くと、このバンドではベンジーの長い音楽キャリアを総括するような曲が聴けるということがわかる。
その中でも再びブランキー時代の大名曲「赤いタンバリン」が演奏されると再び湧きに湧く客席。ソロ名義の曲もそうだが、この編成は音数が少ないようでいてベンジーの活動の中で作ってきた曲と最も相性がいいと言える。それはつまりやはりロックンロールであるということ。
ベンジー「スーパーベーシスト、中尾憲太郎!スーパードラマー、小林瞳!」
中尾「スーパーボーカリスト&ギタリスト、浅井健一!」
ベンジー「そんなにスーパーじゃないけどね(笑)」
中尾「ほかに何て言ったらいいのかわからん!(笑)」
というやり取りはこの3人の関係の良さを表していたし、最後にはINTERCHANGE KILLS名義の「Beautiful Death」を演奏したのだが、本人が謙遜するのが信じられないくらいにベンジーはやはりスーパーボーカリスト&スーパーギタリストだった。
過去の諸々の事情から、ベンジーはロッキンのフェスやビバラなどの首都圏の大型フェスに出ることはない。それだけになかなかフェスで関東民が観れる機会はそうそうないのだが、このフェスに来れば見ることができるし、ライブを観るとベンジーがどれだけすごいロックンローラーなのかということがよくわかる。来年以降もここに来るのなら、またここでライブを見たいな。
1.Watching TV
2.Vineger
3.HARUKAZE
4.ガソリンの揺れかた
5.DERRINGER
6.紙飛行機
7.危険すぎる
8.赤いタンバリン
9.Beautiful Death
Beautiful Death
https://youtu.be/GqPaIDTxJr4
16:40〜 あいみょん [MICHINOKU STAGE]
始まる前からMICHINOKU STAGEのメイン通路は入場規制、つまりはメインステージすらも入場規制がかかっているというとんでもない状況が、今の日本の音楽シーンのトップに君臨しているのがこの人であるということがわかる、あいみょん。2年連続でのこのフェス出演である。
そんな状況なので、まぁステージがよく見えないのだが、このステージはメインステージなのでスクリーンがあるだけにそこ頼りになってしまうくらいに人が多い。
そんな中でサポートのバンドメンバーとともにあいみょんが登場し、
「君のアイスクリームが溶けた」
と歌い始める官能的な歌詞の「満月の夜なら」でスタート。曲中のハンドクラップがこの曲がどれだけたくさんの人に受け入れられているのかがよくわかるし、官能的ではあれど歌詞に使われている単語だけを見るとそこにエロさは全く感じさせないあたり、あいみょんの作詞の手法の凄さに驚く。
ポエトリーリーディング的に歌詞をマシンガンのごとくに連射していく「生きていたんだよな」も、もはやメンヘラソングという位置からは1億光年くらい遠い「みんなの歌」になっているが、武道館ワンマンの時に大合唱を巻き起こした「ふたりの世界」の
「まだ眠たくないのセックス」
はフェスだからか合唱はなし。しかしそれ故に「今夜このまま」も含めて、いつも以上にこの満員すらも超えたレベルの客席の隅から隅までにしっかり届くように、勢いというよりは丁寧に歌っていたのが印象的であった。
あいみょんが敬愛するandymoriからインスパイアされた「夢追いベンガル」でバンドサウンドとともに観客のノリも一気に加速したかと思いきや、R&Bのテイストを強く含んだ「愛を伝えたいだとか」ではゆらゆらと踊らせるという、みんなが聞きたがっているヒット曲を欠かさずに演奏するからこその忙しない1曲ごとのモードの切り替わり。
そして稀代の名曲「君はロックを聴かない」を「ROCK」がフェスの名前についているくらいにロックを聴いているであろうこのフェスの観客の前で歌うと、このメンバーだからこそあいみょんのライブはロックさを感じることができるんだなと毎回のように実感する、BPM速くなりまくりの「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」から、
「今年もたくさん咲いてくれますように」
と言って最後に演奏されたのは「マリーゴールド」。青空が微かにオレンジ色に染まり、その空には飛行機雲も浮かんでいる。偶然というにはあまりにも出来すぎた、まるでこの時に合わせたかのような演出のようだった。
意外だったのはリリースされたばかりの「ハルノヒ」を春フェスでやらなかったことであるが、「マリーゴールド」が去年の、「君はロックを聴かない」が2年前の夏の曲である。それならば今年はどんな夏の名曲を生み出すのか。それはきっとそれらの曲と同じように今年の夏の野外で聴けるはずだ。
1.満月の夜なら
2.生きていたんだよな
3.ふたりの世界
4.今夜このまま
5.夢追いベンガル
6.愛を伝えたいだとか
7.君はロックを聴かない
8.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
9.マリーゴールド
マリーゴールド
https://youtu.be/0xSiBpUdW4E
17:40〜 SHADOWS [ARAHABAKI STAGE]
このフェスには初出演となる、SHADOWS。空が暗くなってきた時間帯のARAHABAKI STAGEへの出演である。
メンバー5人がステージに現れると、Hiroは早くもステージ中央から伸びる花道に進み、ファストかつハードかつラウドなバンドの演奏に乗せて歌いながら、
「お前ら早くこっち来いよ!」
とダイブを煽りまくる。
もはやハードコアと言っていいくらいに削ぎ落とされたサウンドのバンドなのだが、HiroとK azuki(ギター)とTakahiro(ギター)の3人は現在のラウドシーン隆盛の礎を作ったFACTのメンバーであり、そのメロディ部分を担っていた男たちである。だからこそ「Into The Line」「Chain Reaction」という曲ではこの3人が持つ激しいだけではないメロディの美しさを感じることができるし、それがFACTをレジェンド的な存在にした理由でもあり、このバンドのライブにたくさんの人が集まっている理由でもある。
しかしHiroはなぜか
「初めまして、SHISHAMOです!」
とタイムテーブルがかぶり気味なSHISHAMOの名前で挨拶。
「名前が似てるからSHISHAMOと間違ってここに来た人もいるんじゃないの?」
と言っていたが、メンバーの見た目からもサウンドからもSHISHAMOではないことは1秒でわかるだけに、ここにいた人たちはみんなこのバンドのライブが見たくて集まった人ばかりである。
「せっかくだからこのフェスで1番デカいサークル作ろうぜ!なんだって1番がいいだろ!」
とHiroが言うと「Fail」では客席に巨大サークルが出現するのだが、サークルの激しさが他のバンドとは全く違うのはこのバンドだからだろう。
このバンドは最新アルバムをライブ会場限定で販売しているのだが、そのアルバムからも「The Lost Song」「My Direction」という曲が披露されたのだが、バンドの音楽性はそのままにひたすら重さと強さを追求したような曲たち。そんな中にあって新曲ではない「Progress」は
「前に一歩ずつ進んでいこうっていう曲」
と言って演奏されていただけに、激しいだけではないこのバンドの聞き手に力を与えるような一面をうかがわせる。
そしてラストは「BEK」をラウドかつハードに鳴らし、30分という短い持ち時間で11曲も演奏した。このバンドはこれからVIVA LA ROCKなどのフェスにも出て行く。基本的にライブハウスが生きる場所であるバンドだけれど、こうしてフェスでライブを見ると、ライブハウスではない場所だからこそ見れる景色があるということを実感できる。
1.All I Want
2.Senses
3.Overcome
4.Into The Line
5.Chain Reaction
6.Freedom Is Yours
7.Fail
8.The Lost Song
9.Progress
10.My Direction
11.BEK
My Direction
https://youtu.be/ScMu3t1vKYY
18:30〜 フレデリック [HATAHATA STAGE]
2019年、平成最後のアラバキも終わりに近づいてきている。今年のHATAHATA STAGEのトリはフレデリック。今ではフェスに欠かせない存在のバンドだが、夜の野外で見れるのは貴重な機会だ。
「フレデリック、始めます」
というおなじみのSEでメンバーが登場すると、1曲目は健司がハンドマイクで歌う「飄々とエモーション」で、ダンスというよりはまずはその健司のこの広いステージを包み込むような歌声を堪能させるようなスタートだ。
高橋武のドラムが細かいビートを刻む「シンセンス」からはダンサブルなモードに突入していくのだが、フレデリックど真ん中な「スキライズム」、夜の野外でこのバンドのロックを聴いてしまったら踊らずにはいられないでしょうと思う「夜にロックを聴いてしまったら」、さらにはこの会場に来ている人たちがあらゆる日常の事象から逃げ出すようにしてここにいるんじゃないかと思わせるような「逃避行」と完全に新作アルバム「フレデリズム2」のモード。
なかなかこうしたフェスのステージ、しかもトリという舞台でここまで新作に振り切れたモードのライブをやるバンドはなかなかいないと思うのだが、それはバンド自身が新作にこの上ない自信を持っているからこそできることである。実際に「フレデリズム2」は今年リリースされたアルバムの中では屈指の傑作だと思う。
「アラバキ、まだまだ遊ぶ?遊ばない?遊ぶ?遊ばない?遊ぶよな?」
と健司が不敵に煽ってから演奏された「KITAKU BEATS」でまだまだ遊びたいと思わせると、
「これまでに何百組のアーティストが出演してきた、このHATAHATA STAGE。その平成最後のライブが我々フレデリックです。令和の人がこの映像を見たら、平成ってすごい楽しい時代だったんやなって思うくらいにもっと踊ってもらっていいですかアラバキ!」
と健司が平成の終わりに想いを馳せると、康司のベースによるイントロのアレンジがさらに観客の期待感を煽りまくる「オドループ」へ。
赤頭のギターソロはこの日も華麗に決まったが、まさに夜の時間帯に聞くこの曲は本当に踊ってない夜が気に入らない、というくらいに満員の客席が総ダンス状態だったし、この曲はフレデリック最大の代表曲にして、平成を代表する名曲だと思う。それはきっと令和になっても変わらないはずだ。
トリなのでアンコールがあるかと思いきや、スタッフがいそいそと撤収作業を始め、アンコールはなし。野外の夜にこのバンドのライブを見れたのは嬉しかったが、できるならもうちょっと長い時間ライブができるステージで見てみたい。もう30分や35分では物足りないライブをやるようなバンドになってきているだけに。
1.飄々とエモーション
2.シンセンス
3.スキライズム
4.夜にロックを聴いてしまったら
5.逃避行
6.KITAKU BEATS
7.オドループ
スキライズム
https://youtu.be/YZdDKQHLu50
19:45〜 the telephones [HANAGASA STAGE]
5年ぶりのアラバキ出演は2008年に初めて出演した時に立ったHANAGASA STAGEのトリ。復活後のツアーで釜石でライブはしているが、東北に来てくれるのをずっと待っていた人たちで時間前からテントの中は溢れかえっている、the telephones。
晴れていたとはいえやはりこの時間はかなり寒さが厳しくなってきていたのだが、サウンドチェックで演奏している時にノブは上半身裸という状態。telephones以降、様子がおかしいメンバーがいるバンドもたくさん出てきたが、さすがにこの寒さで上半身裸になるやつはそうそういない(自分が見た中では2日間でノブだけ)だけに、もうすっかり慣れてしまった感じもするけれど、やっぱりノブはちょっとおかしい。
「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでアフロのカツラを被った4人が登場すると(ノブはさすがにいつものラメTシャツを着ている)、
「アラバキー!5年ぶりに帰ってきたぜー!今日は何も考えずに踊って最高の夜にしようぜー!いきなり猿のように踊ろうぜー!」
と石毛輝が叫び、初っ端から「Monkey Discooooooo」でスタートして寒さも忘れるくらいの凄まじい盛り上がり。始まる前から満員だったテントの中にはさらに多くの人が押し寄せてきている。
「俺たちは2008年にこのフェスに初めて出演した時がこのHANAGASA STAGEだったんだけど、その時にやった曲!」
と言って演奏された「DaDaDa」のディスコパンクサウンドでダイバーも出現。自分自身、telephonesのライブを見始めたのは2008年にフェスに出始めてからだった。その時はこのフェスには来ていなかったが、もし初出演した時にライブを見れていたら、この「DaDaDa」を聴いた時に抱く感情は全く違うものになっていたんじゃないかと思う。
夜のHANAGASA STAGEは映像とのコラボがあるステージなのだが、この日は様々なアーティストのMVを監督している加藤マニ氏による、バンドの演奏に合わせた映像がリアルタイムで映し出され(本人もその時によって速さが変わるバンドの演奏に合わせるのはすごく難しかったと語っている)、「Yeah Yeah Yeah」では最後のサビ前でパソコンのインターネットが動作を停止した時のような映像が映ると、
「the telephonesは動作を停止しました」
という文字が並んでおり、メンバーがマネキンチャレンジのように1分くらいピタッと静止。telephonesはワンマンのライブ前にメンバーが出演する煽りVTRを作ったりもしていたけれど、こうしてライブ中に映像を使うことはほとんどなかった。それだけに新鮮だし、こうして映像に合わせて演奏の仕方を変えるというのも若手時代じゃなくて今だからこそできることだと思う。
「俺たちが初めて出た時はもっとこのステージは小さかったんだけど、その時もこんな風にテントからはみ出すくらいに人が見に来てくれて。本当に嬉しい」
と集まってくれた人たちへの感謝を告げると、「A.B.C.DISCO」からは怒涛のキラーチューンにしてディスコヒッツ祭り。
「HABANERO」で石毛がかつてと変わらない軽快なバク転を見せるのもステージが広いフェスならでは。
そして「I Hate DISCOOOOOOO!!!」でディスコを叫びまくった後に、石毛が観客に
「ウィーアー!?」
と問いかけると大きな
「ディスコ!」
が返ってきて、あまりの大きさにビックリしたのだが、
「本当にありがとう。でもまだ思い出補正で11年前の時の方が大きく感じてしまう。だからそれを塗り替えるくらいに大きな声で!」
と言うと最大限の「ディスコ!」コールの後に演奏されたのは、このフェスへの愛と感謝を告げる「Love & DISCO」。トリだからなのかはわからないけど、先日見た他のフェスではやらなかった。やっぱり何度聴いてもこの曲は本当に平成を代表する名曲だと思う。そんなに売れたわけでもないし、みんなが知っている曲ではないけれど、telephonesを聴いてきた人にとっては間違いなくそれは揺らぐことはない事実だ。
アンコールに応えてメンバーが再びステージに現れると、
「俺たちのことを忘れないでいてくれてありがとう」
と石毛は言った。忘れるわけないじゃないか、と思うけれど、石毛はシーンの移り変わりの早さをわかっている。1年くらい休むだけで忘れられてしまうくらいに次々に新しい才能が世の中に出てくる中で、5年間というのは実に長い時間だし、この時間はメインステージではthe pillowsの30周年記念ライブが、BAN-ETSUではなにかと話題の石野卓球のDJが行われていた。そんな厳しい時間にこのステージに収まりきらないくらいにたくさんの人がtelephonesを見にきてくれている。みんな忘れるどころか、ずっとtelephonesがまたここに来てくれるのを待っていたのだ。
そして最後に演奏されたのは、まだ初出演時には「Love & DISCO」すらなかった状態でバンド最大のキラーチューンだったであろう、「Urban Disco」。ノブは客席に突入すると、そのまま全然ステージに戻ってこなかったので、どこに行ったんだろう?と思っていたら最後に椅子を持ってステージに戻ってきて、その椅子に座ってくつろいでいた。その意味不明さは全く変わらないどころか、むしろ当時よりも増している感じがするが、telephonesのライブの楽しさもやっぱり当時と変わらないどころか、楽しさを増していた。
この前の月に見たツタロックでは、やはり他のメインステージに出たバンドに比べるとアウェー感が強かった。もうtelephonesの音楽も、存在も知らない人がたくさんいるということを思い知らされた。それは決して悲観的なことではないし、telephonesはアウェーで勝ち続けてきたことでフェスの大きなステージに立てるようになったバンドだけれど、telephonesのライブはtelephonesが好きな人たちがみんなで踊って叫ぶことでその楽しさがさらに増幅されていく。かつてのワンマンの時に何度も味わったあの感覚。それをこの日は思い出させてくれるくらい、みんながtelephonesのことを待っていた熱量がバンドの演奏をさらに熱くしていた。かつてこのバンドのライブを見ていた人たちはやっぱりこのバンドのことを忘れるわけがなかった。
平成最後の、という言葉を本当によく聞いた、今年のアラバキ。多くの出演者にとっても平成最後のライブだったであろうけれど、平成最後に何を食べていたか、平成から令和に変わる瞬間に何をしていたかなんてきっとすぐに忘れてしまう。年号が変わったからといって何もかもがドラスティックに変わることなんてない。あくまで前の日の続きだ。
でもこの日、平成最後に見たライブがこの場所でのthe telephonesのライブだったということは一生忘れないと思う。止まってた期間もあったとはいえ、自分が平成の中でトップクラスにライブを見てきたバンド。(多分上位にいるのはBase Ball Bear、アジカン、9mm、THE BAWDIESあたり)
そのバンドが復活してから最高クラスのライブでこのフェスを締め括ってくれた。それだけでも、やっぱりここまで来て良かったと思えた。
リハ.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
1.Monkey Discooooooo
2.DaDaDa
3.Yeah Yeah Yeah
4.A.B.C.DISCO
5.HABANERO
6.I Hate DISCOOOOOOO!!!
7.Love & DISCO
encore
8.Urban Disco
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
やっぱり関東からこの会場まではかなり遠いし、持ち時間もメインのトリ以外は短いし、ステージ間の移動も通路が狭かったりと、不便なところも多いフェスだ。でもやっぱりこのフェスでしか見ることができないものがたくさん見れるし、どこか東北だからこその感情や力がこのフェスやこのフェスに関わる人たちからは感じることができる。また来年、来れたらいいな。
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