NO NUKES 2019 day2 @豊洲PIT 3/24
- 2019/03/25
- 22:13
2日目。この日は前説にロッキンオン社長の渋谷陽一が登場。この2日間のラインアップを
「体力の1日目、知力の2日目。2日とも来ている人たちは体力も知力も優れた人たち」
と実にわかりやすく説明しながら、
「政府は原発会社に助成金を出そうとしている。8年経ったけど、問題はさらに先鋭化してきてる。だからこそこのイベントをやる意義があるんじゃないか」
とこのイベントの趣旨を改めて語る。TOSHI-LOWがこの日もいたら間違いなく乱入されていただろうが、この日はスケジュールの都合で不在。
13:00〜 トークセッション
この日はトークセッションからスタート。前日同様に司会はいとうせいこうで、このイベントのオーガナイザーである坂本龍一、前日のこのトークセッションで全く喋れなかったことによって助教授から助手に格下げされたゴッチの3人に加え、この日は「未来バンク」という団体を運営している田中優氏を迎えての開催。
電力会社の電力を一切使わずに、岡山県で太陽光発電で電気を自給している田中氏がどうやってそれで生活しているのか、電気料金の仕組みはどうなっているのか、そうした原発に頼らない生活をするためにはどうすればいいのか、ということをスライドショーやデータを使ってわかりやすく説明。
結果的にはおおよそ100万円ほどの設備投資をすればそれは実現できるし、田中氏の運営する「未来バンク」はそうした人のために融資を行なっているということ。そう聞くと自家発電で生活していくことの敷居がそんなに高くないように感じる。(自分が住んでるような安い賃貸アパートだとまたちょっと違ってくるんだろうけど)
しかしながら1番会場が湧いたのは坂本龍一の
「音楽に罪はない!」
という、電気グルーヴのCD回収に対して声をあげたタイムリーな話題の時。ゴッチも前日よりからは喋っていたが、温水便座がなかなか冷蔵庫などの他の家電と比べると省エネに結びついておらず、
「お尻は冷たくていいんじゃないか」
と言ったのがハイライトに。司会であり、最も芸能というしがらみが多いシーンに足を踏み入れているいとうせいこうは大企業が電気を使えば使うほど安くなるという一般家庭とは真逆の料金システムであることに、
「これを変えなければならない」
と憤りを感じていた。そこにも原発に反対する理由が確かにある。
坂本龍一「連中がいないと静かだね」
いとうせいこう「昨日、楽屋でちょっと騒がしくしてたらギターを持って入ってきましたよ(笑)修学旅行の見張りの先生か!っていう」
とTOSHI-LOWがいないことをいじりながらも少し寂しがっていた。坂本龍一は2011年にこのNO NUKESをやる前まで、BRAHMANをなんて読むのか知らないくらいにTOSHI-LOWのことを知らなかったという。でも今はこんなにも信頼し合う中になっている。その姿は本当に楽しそうだ。
14:25〜 Yogee New Waves
かなり意外な初出演、Yogee New Waves。なかなかこういうイベントに出てきたり、声を上げるようなイメージはなかったが。
メンバー4人に加え、キーボードに高野勲、パーカッションに松井泉を加えた6人編成で、「Good Night Station」「emerald」と序盤は深く潜っていくような曲を続けていく。サポートが加わったことでサウンドはより豊潤なものになり、曲の再現度は大幅に向上している。
メガネにヒゲというハマ・オカモトを彷彿とさせるギタリストの竹村郁哉がそれまでのザ・シティポップ的なサウンドから一気に音量と歪みを上げた「CAN YOU FEEL IT」からはモードがロックさを強く感じさせるものに。角舘健悟も曲の途中でギターを置いて体を揺らしながら歌い始めると、そのムーディーかつ滑らかなボーカルの中に声を張り上げるような箇所もあり、その部分がより一層引き立つ。
そのバンドの持つロックンロールな部分とシティポップな部分のハイブリッド的な、
「花束をあげよう 輝く日々に」
という歌詞が角舘のロマンチックさを感じさせる「Bluemin' Days」を終えるとパーカッションだけでなくキーボードも弾くというマルチな活躍を見せていた松井がステージから去り、5人編成となって「Like Sixteen Candles」で微かではあるが確かな火を灯し、温かな空気に包まれる中でステージを去っていった。
冒頭にも書いた通りに、このバンドがこのイベントに出るのはかなり意外だった。そうした思想や主張を出さないようなタイプの人間やバンドだと思っていたから。でも彼らの曲は「楽園」をテーマに作られているし、聴いていてそうした景色が思い浮かぶものが多い。きっとその楽園は原発というものが存在しない場所なのだろう。
そう考えると彼らがこのステージに立った意味がよくわかるし、何よりも若いバンドがあまりこのイベントに出ない(今までで1番若かったのは水曜日のカンパネラのコムアイだろう。その上となるともうHEY-SMITHやa flood of circleになるかもしれない)だけに、このバンドが持つ熱い精神性を感じさせてくれるし、ここから何かが広がってくれれば。
リハ.Ride On Wave
1.Good Night Station
2.emerald
3.Good Bye
4.CAN YOU FEEL IT
5.Bluemin' Days
6.Like Sixteen Candle
Good Night Station
https://youtu.be/IGKqkXptz_I
15:30〜 坂本龍一 + 大友良英
このイベントのオーガナイザーである坂本龍一がこの日は出演者としても登場。大ヒット朝ドラ「あまちゃん」の音楽を担当した大友良英とのコラボである。
ステージに巨大なグランドピアノが置いてあるのを見ると、さすが坂本龍一のステージだなぁと思うのだが、実際に2人がステージに立つと、坂本龍一はピアノの椅子に座るのだが、びっくりするくらいにピアノを弾かない。何をしているのかというと、ピアノの側面をカギみたいなもので擦ったり、ピアノの上に物を落としたりしてノイズを出すというピアノの使い方。
方や大友良英もギターを持ってはいるのだが、ギターを弾くのではなくボディを擦ったり叩いたり、坂本龍一に合わせてコインを床に落としたりというノイズの発し方。あまちゃんで有名になった後に自身のライブに来る人が困惑していたとも言っていたが、元来はこうした前衛的というか実験的な音楽を作ってきた人である。
曲ではなくてセッションであるので切れ目らしきものもなく、ひたすらに2人が何かしらの音を出し続けるというものなのだが、途中で坂本龍一がギターを手にし、「ギター弾くのか!?」と思うも、やっぱりギターでノイズを出すという使い方。最後に再びピアノに戻って鍵盤を叩くも、やはり曲を奏でるのではなくて音を出すという使い方。
セッションを終えた2人はガッチリと握手を交わしてステージを去ったが、自分にはまだこのセッションの凄さがあまりよくわからないし、前日にTOSHI-LOWに無茶振りされたように、これまでに生み出してきた名曲の数々を聞きたかったという思いもある。それよりも坂本龍一が出演者としてステージに立つ、大友良英も一緒に立つということがメッセージとして大事なんだろうけれど。
16:35〜 サンボマスター
かつて難波章浩が主催した「NO MORE FUCKIN' NUKES」には出演したことはあるが、このイベントには初出演となる、サンボマスター。
おなじみゴダイゴ「モンキーマジック」のSEで登場すると、山口が早くも「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくりながら、「青春狂騒曲」でスタートするのだが、やはりこのイベントの空気感ゆえか、それとも坂本龍一のライブの直後だからか、いつもに比べると盛り上がりはやや物足りなく、
「あれ?今日ここお葬式じゃないですよね?ライブですよね?」
と山口がさらに煽って笑わせながらどんどん盛り上がりを増していく。
サンボマスターはフェスやイベントなどの短い持ち時間のライブではやる曲がほとんど変わらないのだが、その中でも「そのぬくもりに用がある」と序盤は初期の代表曲が続き、最近は序盤によく演奏されていた「世界を変えさせておくれよ」が演奏されていないというのも少し新鮮である。
「俺はお前たちのことをジョン・レノンみたいに思ってる。ボブ・ディランみたいに思ってる。ブルーハーツみたいに思ってる」
とロックスターたちの名前を並べた後に
「ロックンロールは死んでねぇ、生きてるってとこを見せてくれ!」
と言って「ロックンロール イズ ノットデッド」で最初のおとなしさはどこへやら、もはや完全に会場はサンボマスターのワンマンライブかと思うくらいに持っていくと、山口がもう会えなくなってしまった人への思いを感情をたっぷり込めて歌い上げる「ラブソング」へ。
誰もが自身の中のもう会えなくなってしまった大切な人への思いを募らせる中、曲を終えると同時に
「俺はやりに来たんだ!できねぇことなんかねぇって言いに来たんだ!」
という言葉が、原発がない社会や世界を作ろうとするのは夢物語じゃない、願って行動し続けていればいつかきっとそれはできるというポジティブなエネルギーに変換されていく「できっこないを やらなくちゃ」、おなじみの「愛と平和!」の大合唱が響いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」とバンドの代表曲が続くと、
「俺にはあなたたちが、輝いて見えます!」
と昨年映画の主題歌に起用された「輝きだして走ってく」を力の限りに演奏して終了。力の限りに、というのは木内がドラムを叩く一打一打がいつもより力を込めているように見えたし、手数自体も多くなっていたように感じるから。
山口隆は福島県出身である。それだけに原発に対して言いたいこともたくさんあるはず。実際に震災の直後には自分の故郷がめちゃくちゃになってしまった悲しみを口にしたりもしていたが、この日はそうしたことを口にすることのない、いつも通りのサンボマスターの、いつも通りのミラクルなライブだった。
サンボマスターの3人は優しい人たちだから人のことを貶めたりするようなことは基本的にしない。(初期は「○○なんかロックじゃねぇ!」って言ったりかなり尖っていたが)
ツイッターとかでも政府の政策などに反対や疑念を呈したりもしているが、個人の名前を出して攻撃するようなことは決してしていない。サンボマスターの戦い方はそういうものではないなから。ただいつものように「愛と平和!」をみんなで叫ぶということ。それこそがサンボマスターの戦い方。だからサンボマスター目当てではない他のアーティストのファンの人たちをも完全に巻き込むようなライブができるのだ。
1.青春狂騒曲
2.そのぬくもりに用がある
3.ロックンロール イズ ノットデッド
4.ラブソング
5.できっこないを やらなくちゃ
6.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
7.輝きだして走ってく
輝きだして走ってく
https://youtu.be/KM0SrqFBt38
17:40〜 Nulbarich
Yogee New Wavesとともに、今回の出演者の中ではかなり意外な存在。すでに日本武道館でワンマンも行なっている、シティポップ、アーバンポップの新鋭、Nulbarichが初出演。
ギター2人にベース、ドラム、キーボードのバンドメンバーたちが時間前からサウンドチェックをしていると、ステージから捌けることなくそのまま演奏をスタートさせて、オシャレかつポップなサウンドの上に見た目も実にオシャレなバンド首謀者JQのファルセットボーカルが乗る「It's Who We Are」からスタート。
このバンドのライブを見るのは完全に初めて。「このバンドは本物なのか?」ということも言われているだけに、ちょっとお手並み拝見というか、本物ではなかったとしたらライブが良くなかったらすぐにバレるぞ(ましてやこの日のラインナップ的にそうだとしたら絶対に目立つ)、と思いながら見ていたのだが、びっくりするくらいにライブは良い。メンバーの演奏はもちろん上手いし、そこに「なぜこの音を鳴らしているのか」というJQの意志が共有されているように見える。何よりもJQのボーカルが上手いだけでなく、そのファッショナブルな出で立ちでステージを左右に動きながら歌う姿からはこのバンドを日本武道館まで持って行ったことにも納得してしまうようなカリスマ性のようなものを感じる。
しかし口を開けば
「水が美味しい」
「(客席の落ち着きっぷりを見て)サンボマスター出たのにこういう感じですか?(笑)
坂本龍一さんのライブ見たからですか?(笑)」
と飄々としているというよりはむしろ天然なのかもしれないとすら思わせる。
ファンクテイストの強い「On and On」でタイトルフレーズを合唱させると、
「今日、出るかどうか凄く悩んだ。でも最近、こういう意味のあるイベントに出ることが多くなってきて。あの日から自分の中にあった感情と向き合うきっかけになるというか」
とこのイベントに出演することを決めた理由をはっきりと、というわけではなくあくまで自然体に言葉にする。
このイベントの冊子に出したコメントには
「いつか、なくなる日が来るのなら、それを見てみたいと思った」
と原発がなくなった後の世界をJQが思い描いていることが書いてあった。
決して強い語気で言うことはないし、彼の言葉や音楽からは怒りという要素は全く感じられない。それは前日に出演したパンク要素の強いバンドたちとは逆と言っていいようなスタンスだが、こうしてこのイベントのステージに立っていることがNulbarichとしての意志の表明であるし、同期の浮遊感と飛翔感のあるサウンドを取り入れた曲たちが描く多幸感は、このバンドが目指す理想の世界を体現しているかのようだった。
ここまでの知名度があるだけに曲を聴く機会というのも結構あるし、果たしてどんなもんかという感じでアルバムも聴いているのだが正直、自分はこのバンドの何もかもがオシャレ過ぎて相容れないというか、苦手に感じていた。
しかしこうして実際にライブを見てみると、このバンドが目指すものや音楽でやろうとしていることがよくわかる。それはライブの実力があるからこそでもあるのだが、音楽性の趣向が違っていても、同じ未来を思い描いている。自分は人と人は誰しもが必ず分かり合えるわけではないと思っているのだが、ライブを見る前よりはこのバンドの存在を近くに感じることができている。いつかお互いが思い描く「NEW ERA」でまた会うことができたら。
1.It's Who We Are
2.VOICE
3.Kiss You Back
4.On and On
5.I Bet We'll Be Beautiful
6.Zero Gravity
7.ain't on the map yet
8.Almost There
VOICE
https://youtu.be/3mEXnLyp6Vo
18:45〜 ACIDMAN
このフェスの象徴的な存在の1つである、ACIDMAN。かつてはこのイベントでBRAHMANと2マンをやって締めの方を務めたりもしたが、今回は2日間のトリ前という位置での出演。
おなじみの「最後の国」のSEが流れると客席は大きな手拍子で3人を迎え、大木伸夫が
「独りで崩した 祈りに少し似ているような気がして」
とギターを静かに鳴らしながら「リピート」を歌い始め、最初のメロまでを歌うと佐藤雅俊と浦山一悟のリズム隊が曲に入ってバンドの演奏に。穏やかに進む曲でこそあるが、最後の
「何を手に入れた?」
というフレーズのリフレインを大木はそれまでよりも力を強く込めて歌う。失ってしまったものの大きさや大事さを噛みしめるかのように。
かつてはフェスなどでも毎回のように演奏されていた「ストロマトライト」でサトマは飛び跳ねながらベースを弾き、一気にスリーピースの圧力の限界に挑むかのように激しい演奏が繰り広げられていく。
バンドの事務所の名前にもなっているきらめくダンサブルなサウンドの「FREE STAR」では間奏で大木がステージ前に出てきて客席を見渡しながらギターを弾き、拳をあげる。まるで自分たちの思いを理解してくれている人がこんなにもいるんだ、と感じさせてくれるこの景色を噛みしめるかのように。
3人の音がぶつかり合いながらも重なっていくライブ定番曲「ある証明」で一つのピークを刻むと、こちらは最近になってライブで定番になってきている「MEMORIES」へと一気に駆け抜けていく。やっぱりACIDMANのライブの爆発力と安定感は素晴らしいな、と感じさせてくれる瞬間であった。
するとここでおなじみの大木の説法。
「我々は毎年3月11日に福島県にライブをしに行っていて。ライブをして、線量計を持っていけるギリギリのところまで行って…。
なんでそこまでするのかっていうと怖いからなんですよね。前はたくさん並んでいた放射性廃棄物の黒い袋がなくなっているのを見ると、復興も進んでいるのかなと思ったりもするんだけど、それは一つの場所に集約したからっていうだけで。集積場の黒い袋の山は本当に怖いです。
きっともう住んでいたところに戻れない人もいるだろうし、そういう場所をこれ以上増やしたくない。原子力はまだ人間には扱えない代物なんです。もちろん脱原発に賛成の人も、そうでない人もいるだろうけど、今日が考える一つのきっかけの日になって欲しいなと思います」
という、かつて原子力についても学んでいて、実際に毎年福島に足を運んでいる大木だからこそ、いつにも増して発言には説得力があった。ただ原発反対と言うんじゃなくて、放射性廃棄物という処理のしようがないものにもちゃんと目を向けた上で原発はやめようと主張する。こうして考えると反対する理由はたくさんあるのだ。
そこまで大木のMCが長いとも思わなかったが、早くも最後の曲へ。現在過去曲を中心に演奏するツアーを行っているからこそ、演奏されたのは「UNFOLD」。「ALMA」でも「Your Song」でも「赤橙」でもなく、この曲。日本の美しい情景を想像させる日本語歌詞の部分と、
「Before you say "Hello my name is over."」
という英詞のリフレインは大木の言う通りにこのイベントのACIDMANのステージを締めるに相応しい曲であった。
ACIDMANは本当に不思議なバンドだ。ひたすらに大木の思考や世界観を曲と歌詞に落とし込んで、サトマと一悟はそれに着いて行くという構図はずっと変わらない。だからこのイベントにおいても2人は「大木がそう言ってるから」という形で参加しているのかというとそれは全く違う。だとしたら毎回このステージに立ったり、3月11日にバンドとして福島にライブをしに行ったりすることはしないだろう。大木の言うことを2人なりに咀嚼して考えて同じ意志を共有しているからそういう活動ができているし、その意志の共有っぷりがACIDMANを今でも最高のライブバンドたらしめている。
「いつかこのフェスをやらなくてもいいような社会になりますように」
というのは大木が初開催時から言い続けてきたことだが、今年は細美武士も口にしたし、かつてはゴッチも口にした。大木の願いはいつからかこのフェスそのものが持つ願いになっている。今となっては大きなフェスではアウェー感を感じるような時も増えたが、このイベントにおいては今でもやはり象徴的な存在のバンドだ。
1.リピート
2.ストロマトライト
3.FREE STAR
4.ある証明
5.MEMORIES
6.UNFOLD
ある証明
https://youtu.be/uJkTEn9CqCI
19:50〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION
今回のNO NUKESはゴッチのソロで幕を開け、アジカンで終わる。そこには今のこのイベントを最も背負っているのはゴッチであるという強いメッセージである。
SEもなしに4人とサポートキーボードのシモリョーがステージに登場すると、うっすらとした照明に照らされる中で徐々に音が立ち上がっていくのは「NO NUKES」というこのイベントのタイトルが冠せられた、明確な原発に対する曲「N2」。かつて「ランドマーク」期は毎回のようにライブで演奏されていた曲であるが、今となってはこのイベントくらいでしか演奏されなくなってきている。
そうしたメッセージも発しながらも、「センスレス」「Standard」というライブ定番曲を続けていき、「Standard」では客席から無数の腕が高く突き上げられる。
「小さな願いは今日 スタンダードだ」
というフレーズがここに集まった人たちにこの上ない勇気を与えて行く。
ゴッチが挨拶しながら、NO NUKESのTシャツを着た伊地知潔がドラムの一部のセッティングを変更してから演奏されたのは最新アルバム「ホームタウン」収録の「サーカス」。他にMVが公開されている曲もアルバムにはある中でこの曲が演奏されたのは、
「滑舌の悪い彼のスピーチも
終わる日が来るのだろう」
という現政権に対する姿勢を含んだ歌詞があるからであろう。それは直接的な単語を含んでいないからこそ、意識しなければそういう曲には聞こえない。この辺りの言葉の選び方と作詞技術はさすがに今や作家としても活動しているゴッチならではである。
そしてライブを見ていて気付いたのが、COUNTDOWN JAPANでライブを見た時よりも音がはるかにクリアになっている。それは「ホームタウン」で手に入れた音質の良さがあるからこそそれをライブの場でも実践できるようになったと思うのだが、喜多のギターも山田のベースも、何よりも潔のドラムの音の一つ一つがもの凄くハッキリと聞こえる。ステージから遠く離れても音さえ聞けばドラムのどの部分を叩いているのか一瞬でわかりそうですらある。
アルバムにも収録されている「荒野を歩け」もそのサウンドの刷新によって今までよりもはるかにそのメロディと、喜多の弾きまくるギターソロがしっかり聞こえる。何よりも喜多の顔はこうして演奏しているのが実に楽しそうだ。
この日会場にいないTOSHI-LOWと細美武士のことを自分とは違う=自分にはないものを持っているからこそいじって笑わせつつ、後にリアレンジされてシングル化された「Re:Re:」のライブアレンジを骨太なバンドサウンドで聴かせると、おなじみの「リライト」へ。間奏のダブアレンジ部分でゴッチが突如として
「スペシャルゲスト」
と口にする。このタイミングで楽器を何にも用意してないのに出てこれる人ってこの日の出演者の中にいたっけ?と思っていると、登場したのはなんとSKY-HI。
「俺はマリファナなくてもぶっ飛んでる
コカインなくてもぶっ飛んでる
シャブやらなくてもぶっ飛んでる
今日も放射能を吸い込んでる」
と代名詞とも言える超高速フリースタイルラップをタイムリーなネタも入れながらこのイベントだからこそのフレーズもきっちりと入れて展開して行く。たまたま仕事後にこのイベントに遊びに来たらゴッチに「間奏長くやるから好きなタイミングで出てきて」と言われたというくらいに何にも決めずにやったらしいが、SKY-HIの反射神経とラップのスキルの凄まじさを一瞬でわからせてくれる。
SKY-HIは昨年「キョウボウザイ」という曲を法案成立後にすぐさまネットにアップした。
「ヒップホップミュージシャンとして、社会のことに知らぬ存ぜぬではいられない」
と自身のヒップホップミュージシャンとしての矜持を語っていたが、AAAのメンバーでもあるというしがらみの多い立場ではあるけれど、こうしてこのイベントに来てステージに立ったということは彼なりに言いたいことがしっかりとあるということ。
ゴッチも演奏後に
「ヒップホップって本当に凄い」
と言っていたが、今こうして社会の動きに対してしっかりと言葉を持ってカウンターを打てるのはやはりヒップホップなのかもしれない。アメリカのヒップホップの歌詞を聴いていてもリアリティはほとんど湧かないが、SKY-HIのラップは確実に今の日本の社会情勢を捉えている。なかなか難しいかもしれないが、次回のこのイベントにはゲストとしてではなく、出演者として名前が並んでいて欲しいし、この「リライト」をなんかしらの手段で音源化していただきたい。
「本当は俺もNulbarichやYogee New Wavesみたいにこうやって話すことなく、ステージに立ってることがメッセージだ、みたいな感じでやっていきたいんだよ。俺は本当はそういうタイプの人間だから。
でも坂本さんたちのバトンをちゃんと受け取らないといけないし、次の世代の人たちに「あんなことがあったのにあいつら何やってたんだよ」って言われないようにしないといけない」
と改めてNO NUKESというイベントを背負っているからこその覚悟を語る。今、そのバトンは間違いなくアジカン(というかゴッチ)が握っている。
そしてゴッチのソロでドラムを叩いているmabanuaが2018年のベストソングにも挙げていた「ボーイズ&ガールズ」を、いつか自分たちが持っているバトンを渡す世代に「全部任せたいけど、ちゃんと俺たちもこれからも頑張るから大丈夫だよ」と背中を押すかのように鳴らしてステージを去った。
「今を生きて」も「君という花」も「ソラニン」もない。今のアジカンのモードにして、このイベントだからこそのアジカンのライブだった。
アンコールで再び5人でステージに現れると、
「みんな明日から日常でしょ?みんなが明日からもポジティブなエネルギーに包まれますように」
と、意味や意義やメッセージが強いイベントであっても、あくまで来てくれてる人たちの明日からの力になって欲しい、楽しかったと思って欲しいという姿勢を見せると、演奏されたのは「ホームタウン」のさらなる先の新曲「解放区」。
曲途中にはゴッチのポエトリーリーディング(しかも結構長め)も挟まれるという驚きの構成であるが、そのタイトル通りに閉塞感をぶち破るような力強いポジティブな力、そしてポエトリーリーディングにしなければいけない、収まらないくらいの言葉の多さと強さ。そこにはこれまで以上にメッセンジャーとしてのアジカンの姿を感じる。「ホームタウン」で自分たちだけならず日本のロックバンドのサウンドを新たな地平に導いたアジカンは、再び言葉と向き合って自分たちにしかできないロックを生み出そうとしている。
最後にはオーガナイザーの坂本龍一もステージに招いて6人で一礼。確かに、坂本龍一の持っていたバトンはこのバンドに受け継がれた。それを感じさせる光景だった。このバトンはいつ、誰が受け取るのだろう。いつかはその日が来なくてはいけないが、アジカンはまだまだ自ら手放すようなことはしないだろう。
こうしてゴッチが社会に向けたメッセージを発したり、行動をしたりすると
「アジカンのファンは後藤が言うことを全て正しいと思う信者だ」
という声もあがる。(それはゴッチだけに限った話ではないが)
じゃあ自分はどうなのか?というと、ゴッチのツイッターとかを見ていても全てを100%信じているわけではないし、それはどうなんでしょう?って思うこともあったりする。
でもゴッチがこうして声を上げたり、THE FUTURE TIMESを作ったりしてくれることで、今まで知らなかったことや見えなかったことが知れる。ネットの文字なんて結局真実かどうかなんてわからないけど、THE FUTURE TIMESには活動をしている人の名前も顔も、ゴッチと会話していることもちゃんと記されている。そういう活動を知ることで、今まで考えていたけれど、一般人がどうすればいいのか、ということに参加できるようになったりする。
このNO NUKESだってそうだ。原発反対だと思っていても、どうすればその意思を表明できて、同じことを考えている人たちや、帰る場所をなくしてしまった人たちへの力になれるのか。ゴッチが声を上げてくれるからこそ、こうしてこういう場所に来て、意思を表明することができる。
かつて自分が10代の時に巨大なロックの荒野に導いてくれたバンドは、今でも音楽だけでない様々な場所に自分を導いてくれている。アジカンがいてくれて、本当に良かった。
全てを背負わせたくはないけれど、背負っている時の方がアジカンはいいライブを見せてくれる。かつてのNANO-MUGEN FES.で見てきたライブが、どのワンマンよりも良かったように。
1.N2
2.センスレス
3.Standard
4.サーカス
5.荒野を歩け
6.Re:Re:
7.リライト feat. SKY-HI
8.ボーイズ&ガールズ
encore
9.解放区 (新曲)
ボーイズ&ガールズ
https://youtu.be/8HPp22obp9g
自分はずっとこのイベントに参加し続けている。それは己の意思の表明でもあるのだが、2013年にZepp DiverCityで行われていた時よりも、空気が楽しいものに徐々に変わってきたように思える。
国会前の反原発デモにも行ったことがあるが、それは楽しいものでは決してなかった。いなければいけないのはわかっていても、何をすればいいのか全くわからなかった。でもこのイベントはライブを楽しみながら考えていくことができる。音楽と社会のことが結びつくのを嫌がる人もいるし、それはその人のスタンスだから仕方がないことだが、音楽を愛する者たちの戦い方はこういうものなのかもしれない。せっかく変えるんなら苦しみながらじゃなくて、楽しみながら変えていきたい。
「想像力が1番の抑止力になる」
と初日のトークセッションでゴッチは言っていた。また地震が起きたら、津波が来たら、原発がテロのターゲットにされたら。自分の家の隣に原発が建てられたら。放射性廃棄物の処理場ができたら。そんな様々なことを想像してみる。そうするとやっぱり原発という存在に自分は賛成することは絶対にできないし、せめて10代の時の自分みたいなやつがなんにも恐れることなく、好きなことに夢中になれているような世の中であって欲しいと思っている。だから、なくなるまではこのイベントに足を運び続けようと思っている。
Next→ 3/26 NICO Touches the Walls @EX THEATER ROPPONGI
「体力の1日目、知力の2日目。2日とも来ている人たちは体力も知力も優れた人たち」
と実にわかりやすく説明しながら、
「政府は原発会社に助成金を出そうとしている。8年経ったけど、問題はさらに先鋭化してきてる。だからこそこのイベントをやる意義があるんじゃないか」
とこのイベントの趣旨を改めて語る。TOSHI-LOWがこの日もいたら間違いなく乱入されていただろうが、この日はスケジュールの都合で不在。
13:00〜 トークセッション
この日はトークセッションからスタート。前日同様に司会はいとうせいこうで、このイベントのオーガナイザーである坂本龍一、前日のこのトークセッションで全く喋れなかったことによって助教授から助手に格下げされたゴッチの3人に加え、この日は「未来バンク」という団体を運営している田中優氏を迎えての開催。
電力会社の電力を一切使わずに、岡山県で太陽光発電で電気を自給している田中氏がどうやってそれで生活しているのか、電気料金の仕組みはどうなっているのか、そうした原発に頼らない生活をするためにはどうすればいいのか、ということをスライドショーやデータを使ってわかりやすく説明。
結果的にはおおよそ100万円ほどの設備投資をすればそれは実現できるし、田中氏の運営する「未来バンク」はそうした人のために融資を行なっているということ。そう聞くと自家発電で生活していくことの敷居がそんなに高くないように感じる。(自分が住んでるような安い賃貸アパートだとまたちょっと違ってくるんだろうけど)
しかしながら1番会場が湧いたのは坂本龍一の
「音楽に罪はない!」
という、電気グルーヴのCD回収に対して声をあげたタイムリーな話題の時。ゴッチも前日よりからは喋っていたが、温水便座がなかなか冷蔵庫などの他の家電と比べると省エネに結びついておらず、
「お尻は冷たくていいんじゃないか」
と言ったのがハイライトに。司会であり、最も芸能というしがらみが多いシーンに足を踏み入れているいとうせいこうは大企業が電気を使えば使うほど安くなるという一般家庭とは真逆の料金システムであることに、
「これを変えなければならない」
と憤りを感じていた。そこにも原発に反対する理由が確かにある。
坂本龍一「連中がいないと静かだね」
いとうせいこう「昨日、楽屋でちょっと騒がしくしてたらギターを持って入ってきましたよ(笑)修学旅行の見張りの先生か!っていう」
とTOSHI-LOWがいないことをいじりながらも少し寂しがっていた。坂本龍一は2011年にこのNO NUKESをやる前まで、BRAHMANをなんて読むのか知らないくらいにTOSHI-LOWのことを知らなかったという。でも今はこんなにも信頼し合う中になっている。その姿は本当に楽しそうだ。
14:25〜 Yogee New Waves
かなり意外な初出演、Yogee New Waves。なかなかこういうイベントに出てきたり、声を上げるようなイメージはなかったが。
メンバー4人に加え、キーボードに高野勲、パーカッションに松井泉を加えた6人編成で、「Good Night Station」「emerald」と序盤は深く潜っていくような曲を続けていく。サポートが加わったことでサウンドはより豊潤なものになり、曲の再現度は大幅に向上している。
メガネにヒゲというハマ・オカモトを彷彿とさせるギタリストの竹村郁哉がそれまでのザ・シティポップ的なサウンドから一気に音量と歪みを上げた「CAN YOU FEEL IT」からはモードがロックさを強く感じさせるものに。角舘健悟も曲の途中でギターを置いて体を揺らしながら歌い始めると、そのムーディーかつ滑らかなボーカルの中に声を張り上げるような箇所もあり、その部分がより一層引き立つ。
そのバンドの持つロックンロールな部分とシティポップな部分のハイブリッド的な、
「花束をあげよう 輝く日々に」
という歌詞が角舘のロマンチックさを感じさせる「Bluemin' Days」を終えるとパーカッションだけでなくキーボードも弾くというマルチな活躍を見せていた松井がステージから去り、5人編成となって「Like Sixteen Candles」で微かではあるが確かな火を灯し、温かな空気に包まれる中でステージを去っていった。
冒頭にも書いた通りに、このバンドがこのイベントに出るのはかなり意外だった。そうした思想や主張を出さないようなタイプの人間やバンドだと思っていたから。でも彼らの曲は「楽園」をテーマに作られているし、聴いていてそうした景色が思い浮かぶものが多い。きっとその楽園は原発というものが存在しない場所なのだろう。
そう考えると彼らがこのステージに立った意味がよくわかるし、何よりも若いバンドがあまりこのイベントに出ない(今までで1番若かったのは水曜日のカンパネラのコムアイだろう。その上となるともうHEY-SMITHやa flood of circleになるかもしれない)だけに、このバンドが持つ熱い精神性を感じさせてくれるし、ここから何かが広がってくれれば。
リハ.Ride On Wave
1.Good Night Station
2.emerald
3.Good Bye
4.CAN YOU FEEL IT
5.Bluemin' Days
6.Like Sixteen Candle
Good Night Station
https://youtu.be/IGKqkXptz_I
15:30〜 坂本龍一 + 大友良英
このイベントのオーガナイザーである坂本龍一がこの日は出演者としても登場。大ヒット朝ドラ「あまちゃん」の音楽を担当した大友良英とのコラボである。
ステージに巨大なグランドピアノが置いてあるのを見ると、さすが坂本龍一のステージだなぁと思うのだが、実際に2人がステージに立つと、坂本龍一はピアノの椅子に座るのだが、びっくりするくらいにピアノを弾かない。何をしているのかというと、ピアノの側面をカギみたいなもので擦ったり、ピアノの上に物を落としたりしてノイズを出すというピアノの使い方。
方や大友良英もギターを持ってはいるのだが、ギターを弾くのではなくボディを擦ったり叩いたり、坂本龍一に合わせてコインを床に落としたりというノイズの発し方。あまちゃんで有名になった後に自身のライブに来る人が困惑していたとも言っていたが、元来はこうした前衛的というか実験的な音楽を作ってきた人である。
曲ではなくてセッションであるので切れ目らしきものもなく、ひたすらに2人が何かしらの音を出し続けるというものなのだが、途中で坂本龍一がギターを手にし、「ギター弾くのか!?」と思うも、やっぱりギターでノイズを出すという使い方。最後に再びピアノに戻って鍵盤を叩くも、やはり曲を奏でるのではなくて音を出すという使い方。
セッションを終えた2人はガッチリと握手を交わしてステージを去ったが、自分にはまだこのセッションの凄さがあまりよくわからないし、前日にTOSHI-LOWに無茶振りされたように、これまでに生み出してきた名曲の数々を聞きたかったという思いもある。それよりも坂本龍一が出演者としてステージに立つ、大友良英も一緒に立つということがメッセージとして大事なんだろうけれど。
16:35〜 サンボマスター
かつて難波章浩が主催した「NO MORE FUCKIN' NUKES」には出演したことはあるが、このイベントには初出演となる、サンボマスター。
おなじみゴダイゴ「モンキーマジック」のSEで登場すると、山口が早くも「オイ!オイ!オイ!オイ!」と煽りまくりながら、「青春狂騒曲」でスタートするのだが、やはりこのイベントの空気感ゆえか、それとも坂本龍一のライブの直後だからか、いつもに比べると盛り上がりはやや物足りなく、
「あれ?今日ここお葬式じゃないですよね?ライブですよね?」
と山口がさらに煽って笑わせながらどんどん盛り上がりを増していく。
サンボマスターはフェスやイベントなどの短い持ち時間のライブではやる曲がほとんど変わらないのだが、その中でも「そのぬくもりに用がある」と序盤は初期の代表曲が続き、最近は序盤によく演奏されていた「世界を変えさせておくれよ」が演奏されていないというのも少し新鮮である。
「俺はお前たちのことをジョン・レノンみたいに思ってる。ボブ・ディランみたいに思ってる。ブルーハーツみたいに思ってる」
とロックスターたちの名前を並べた後に
「ロックンロールは死んでねぇ、生きてるってとこを見せてくれ!」
と言って「ロックンロール イズ ノットデッド」で最初のおとなしさはどこへやら、もはや完全に会場はサンボマスターのワンマンライブかと思うくらいに持っていくと、山口がもう会えなくなってしまった人への思いを感情をたっぷり込めて歌い上げる「ラブソング」へ。
誰もが自身の中のもう会えなくなってしまった大切な人への思いを募らせる中、曲を終えると同時に
「俺はやりに来たんだ!できねぇことなんかねぇって言いに来たんだ!」
という言葉が、原発がない社会や世界を作ろうとするのは夢物語じゃない、願って行動し続けていればいつかきっとそれはできるというポジティブなエネルギーに変換されていく「できっこないを やらなくちゃ」、おなじみの「愛と平和!」の大合唱が響いた「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」とバンドの代表曲が続くと、
「俺にはあなたたちが、輝いて見えます!」
と昨年映画の主題歌に起用された「輝きだして走ってく」を力の限りに演奏して終了。力の限りに、というのは木内がドラムを叩く一打一打がいつもより力を込めているように見えたし、手数自体も多くなっていたように感じるから。
山口隆は福島県出身である。それだけに原発に対して言いたいこともたくさんあるはず。実際に震災の直後には自分の故郷がめちゃくちゃになってしまった悲しみを口にしたりもしていたが、この日はそうしたことを口にすることのない、いつも通りのサンボマスターの、いつも通りのミラクルなライブだった。
サンボマスターの3人は優しい人たちだから人のことを貶めたりするようなことは基本的にしない。(初期は「○○なんかロックじゃねぇ!」って言ったりかなり尖っていたが)
ツイッターとかでも政府の政策などに反対や疑念を呈したりもしているが、個人の名前を出して攻撃するようなことは決してしていない。サンボマスターの戦い方はそういうものではないなから。ただいつものように「愛と平和!」をみんなで叫ぶということ。それこそがサンボマスターの戦い方。だからサンボマスター目当てではない他のアーティストのファンの人たちをも完全に巻き込むようなライブができるのだ。
1.青春狂騒曲
2.そのぬくもりに用がある
3.ロックンロール イズ ノットデッド
4.ラブソング
5.できっこないを やらなくちゃ
6.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
7.輝きだして走ってく
輝きだして走ってく
https://youtu.be/KM0SrqFBt38
17:40〜 Nulbarich
Yogee New Wavesとともに、今回の出演者の中ではかなり意外な存在。すでに日本武道館でワンマンも行なっている、シティポップ、アーバンポップの新鋭、Nulbarichが初出演。
ギター2人にベース、ドラム、キーボードのバンドメンバーたちが時間前からサウンドチェックをしていると、ステージから捌けることなくそのまま演奏をスタートさせて、オシャレかつポップなサウンドの上に見た目も実にオシャレなバンド首謀者JQのファルセットボーカルが乗る「It's Who We Are」からスタート。
このバンドのライブを見るのは完全に初めて。「このバンドは本物なのか?」ということも言われているだけに、ちょっとお手並み拝見というか、本物ではなかったとしたらライブが良くなかったらすぐにバレるぞ(ましてやこの日のラインナップ的にそうだとしたら絶対に目立つ)、と思いながら見ていたのだが、びっくりするくらいにライブは良い。メンバーの演奏はもちろん上手いし、そこに「なぜこの音を鳴らしているのか」というJQの意志が共有されているように見える。何よりもJQのボーカルが上手いだけでなく、そのファッショナブルな出で立ちでステージを左右に動きながら歌う姿からはこのバンドを日本武道館まで持って行ったことにも納得してしまうようなカリスマ性のようなものを感じる。
しかし口を開けば
「水が美味しい」
「(客席の落ち着きっぷりを見て)サンボマスター出たのにこういう感じですか?(笑)
坂本龍一さんのライブ見たからですか?(笑)」
と飄々としているというよりはむしろ天然なのかもしれないとすら思わせる。
ファンクテイストの強い「On and On」でタイトルフレーズを合唱させると、
「今日、出るかどうか凄く悩んだ。でも最近、こういう意味のあるイベントに出ることが多くなってきて。あの日から自分の中にあった感情と向き合うきっかけになるというか」
とこのイベントに出演することを決めた理由をはっきりと、というわけではなくあくまで自然体に言葉にする。
このイベントの冊子に出したコメントには
「いつか、なくなる日が来るのなら、それを見てみたいと思った」
と原発がなくなった後の世界をJQが思い描いていることが書いてあった。
決して強い語気で言うことはないし、彼の言葉や音楽からは怒りという要素は全く感じられない。それは前日に出演したパンク要素の強いバンドたちとは逆と言っていいようなスタンスだが、こうしてこのイベントのステージに立っていることがNulbarichとしての意志の表明であるし、同期の浮遊感と飛翔感のあるサウンドを取り入れた曲たちが描く多幸感は、このバンドが目指す理想の世界を体現しているかのようだった。
ここまでの知名度があるだけに曲を聴く機会というのも結構あるし、果たしてどんなもんかという感じでアルバムも聴いているのだが正直、自分はこのバンドの何もかもがオシャレ過ぎて相容れないというか、苦手に感じていた。
しかしこうして実際にライブを見てみると、このバンドが目指すものや音楽でやろうとしていることがよくわかる。それはライブの実力があるからこそでもあるのだが、音楽性の趣向が違っていても、同じ未来を思い描いている。自分は人と人は誰しもが必ず分かり合えるわけではないと思っているのだが、ライブを見る前よりはこのバンドの存在を近くに感じることができている。いつかお互いが思い描く「NEW ERA」でまた会うことができたら。
1.It's Who We Are
2.VOICE
3.Kiss You Back
4.On and On
5.I Bet We'll Be Beautiful
6.Zero Gravity
7.ain't on the map yet
8.Almost There
VOICE
https://youtu.be/3mEXnLyp6Vo
18:45〜 ACIDMAN
このフェスの象徴的な存在の1つである、ACIDMAN。かつてはこのイベントでBRAHMANと2マンをやって締めの方を務めたりもしたが、今回は2日間のトリ前という位置での出演。
おなじみの「最後の国」のSEが流れると客席は大きな手拍子で3人を迎え、大木伸夫が
「独りで崩した 祈りに少し似ているような気がして」
とギターを静かに鳴らしながら「リピート」を歌い始め、最初のメロまでを歌うと佐藤雅俊と浦山一悟のリズム隊が曲に入ってバンドの演奏に。穏やかに進む曲でこそあるが、最後の
「何を手に入れた?」
というフレーズのリフレインを大木はそれまでよりも力を強く込めて歌う。失ってしまったものの大きさや大事さを噛みしめるかのように。
かつてはフェスなどでも毎回のように演奏されていた「ストロマトライト」でサトマは飛び跳ねながらベースを弾き、一気にスリーピースの圧力の限界に挑むかのように激しい演奏が繰り広げられていく。
バンドの事務所の名前にもなっているきらめくダンサブルなサウンドの「FREE STAR」では間奏で大木がステージ前に出てきて客席を見渡しながらギターを弾き、拳をあげる。まるで自分たちの思いを理解してくれている人がこんなにもいるんだ、と感じさせてくれるこの景色を噛みしめるかのように。
3人の音がぶつかり合いながらも重なっていくライブ定番曲「ある証明」で一つのピークを刻むと、こちらは最近になってライブで定番になってきている「MEMORIES」へと一気に駆け抜けていく。やっぱりACIDMANのライブの爆発力と安定感は素晴らしいな、と感じさせてくれる瞬間であった。
するとここでおなじみの大木の説法。
「我々は毎年3月11日に福島県にライブをしに行っていて。ライブをして、線量計を持っていけるギリギリのところまで行って…。
なんでそこまでするのかっていうと怖いからなんですよね。前はたくさん並んでいた放射性廃棄物の黒い袋がなくなっているのを見ると、復興も進んでいるのかなと思ったりもするんだけど、それは一つの場所に集約したからっていうだけで。集積場の黒い袋の山は本当に怖いです。
きっともう住んでいたところに戻れない人もいるだろうし、そういう場所をこれ以上増やしたくない。原子力はまだ人間には扱えない代物なんです。もちろん脱原発に賛成の人も、そうでない人もいるだろうけど、今日が考える一つのきっかけの日になって欲しいなと思います」
という、かつて原子力についても学んでいて、実際に毎年福島に足を運んでいる大木だからこそ、いつにも増して発言には説得力があった。ただ原発反対と言うんじゃなくて、放射性廃棄物という処理のしようがないものにもちゃんと目を向けた上で原発はやめようと主張する。こうして考えると反対する理由はたくさんあるのだ。
そこまで大木のMCが長いとも思わなかったが、早くも最後の曲へ。現在過去曲を中心に演奏するツアーを行っているからこそ、演奏されたのは「UNFOLD」。「ALMA」でも「Your Song」でも「赤橙」でもなく、この曲。日本の美しい情景を想像させる日本語歌詞の部分と、
「Before you say "Hello my name is over."」
という英詞のリフレインは大木の言う通りにこのイベントのACIDMANのステージを締めるに相応しい曲であった。
ACIDMANは本当に不思議なバンドだ。ひたすらに大木の思考や世界観を曲と歌詞に落とし込んで、サトマと一悟はそれに着いて行くという構図はずっと変わらない。だからこのイベントにおいても2人は「大木がそう言ってるから」という形で参加しているのかというとそれは全く違う。だとしたら毎回このステージに立ったり、3月11日にバンドとして福島にライブをしに行ったりすることはしないだろう。大木の言うことを2人なりに咀嚼して考えて同じ意志を共有しているからそういう活動ができているし、その意志の共有っぷりがACIDMANを今でも最高のライブバンドたらしめている。
「いつかこのフェスをやらなくてもいいような社会になりますように」
というのは大木が初開催時から言い続けてきたことだが、今年は細美武士も口にしたし、かつてはゴッチも口にした。大木の願いはいつからかこのフェスそのものが持つ願いになっている。今となっては大きなフェスではアウェー感を感じるような時も増えたが、このイベントにおいては今でもやはり象徴的な存在のバンドだ。
1.リピート
2.ストロマトライト
3.FREE STAR
4.ある証明
5.MEMORIES
6.UNFOLD
ある証明
https://youtu.be/uJkTEn9CqCI
19:50〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION
今回のNO NUKESはゴッチのソロで幕を開け、アジカンで終わる。そこには今のこのイベントを最も背負っているのはゴッチであるという強いメッセージである。
SEもなしに4人とサポートキーボードのシモリョーがステージに登場すると、うっすらとした照明に照らされる中で徐々に音が立ち上がっていくのは「NO NUKES」というこのイベントのタイトルが冠せられた、明確な原発に対する曲「N2」。かつて「ランドマーク」期は毎回のようにライブで演奏されていた曲であるが、今となってはこのイベントくらいでしか演奏されなくなってきている。
そうしたメッセージも発しながらも、「センスレス」「Standard」というライブ定番曲を続けていき、「Standard」では客席から無数の腕が高く突き上げられる。
「小さな願いは今日 スタンダードだ」
というフレーズがここに集まった人たちにこの上ない勇気を与えて行く。
ゴッチが挨拶しながら、NO NUKESのTシャツを着た伊地知潔がドラムの一部のセッティングを変更してから演奏されたのは最新アルバム「ホームタウン」収録の「サーカス」。他にMVが公開されている曲もアルバムにはある中でこの曲が演奏されたのは、
「滑舌の悪い彼のスピーチも
終わる日が来るのだろう」
という現政権に対する姿勢を含んだ歌詞があるからであろう。それは直接的な単語を含んでいないからこそ、意識しなければそういう曲には聞こえない。この辺りの言葉の選び方と作詞技術はさすがに今や作家としても活動しているゴッチならではである。
そしてライブを見ていて気付いたのが、COUNTDOWN JAPANでライブを見た時よりも音がはるかにクリアになっている。それは「ホームタウン」で手に入れた音質の良さがあるからこそそれをライブの場でも実践できるようになったと思うのだが、喜多のギターも山田のベースも、何よりも潔のドラムの音の一つ一つがもの凄くハッキリと聞こえる。ステージから遠く離れても音さえ聞けばドラムのどの部分を叩いているのか一瞬でわかりそうですらある。
アルバムにも収録されている「荒野を歩け」もそのサウンドの刷新によって今までよりもはるかにそのメロディと、喜多の弾きまくるギターソロがしっかり聞こえる。何よりも喜多の顔はこうして演奏しているのが実に楽しそうだ。
この日会場にいないTOSHI-LOWと細美武士のことを自分とは違う=自分にはないものを持っているからこそいじって笑わせつつ、後にリアレンジされてシングル化された「Re:Re:」のライブアレンジを骨太なバンドサウンドで聴かせると、おなじみの「リライト」へ。間奏のダブアレンジ部分でゴッチが突如として
「スペシャルゲスト」
と口にする。このタイミングで楽器を何にも用意してないのに出てこれる人ってこの日の出演者の中にいたっけ?と思っていると、登場したのはなんとSKY-HI。
「俺はマリファナなくてもぶっ飛んでる
コカインなくてもぶっ飛んでる
シャブやらなくてもぶっ飛んでる
今日も放射能を吸い込んでる」
と代名詞とも言える超高速フリースタイルラップをタイムリーなネタも入れながらこのイベントだからこそのフレーズもきっちりと入れて展開して行く。たまたま仕事後にこのイベントに遊びに来たらゴッチに「間奏長くやるから好きなタイミングで出てきて」と言われたというくらいに何にも決めずにやったらしいが、SKY-HIの反射神経とラップのスキルの凄まじさを一瞬でわからせてくれる。
SKY-HIは昨年「キョウボウザイ」という曲を法案成立後にすぐさまネットにアップした。
「ヒップホップミュージシャンとして、社会のことに知らぬ存ぜぬではいられない」
と自身のヒップホップミュージシャンとしての矜持を語っていたが、AAAのメンバーでもあるというしがらみの多い立場ではあるけれど、こうしてこのイベントに来てステージに立ったということは彼なりに言いたいことがしっかりとあるということ。
ゴッチも演奏後に
「ヒップホップって本当に凄い」
と言っていたが、今こうして社会の動きに対してしっかりと言葉を持ってカウンターを打てるのはやはりヒップホップなのかもしれない。アメリカのヒップホップの歌詞を聴いていてもリアリティはほとんど湧かないが、SKY-HIのラップは確実に今の日本の社会情勢を捉えている。なかなか難しいかもしれないが、次回のこのイベントにはゲストとしてではなく、出演者として名前が並んでいて欲しいし、この「リライト」をなんかしらの手段で音源化していただきたい。
「本当は俺もNulbarichやYogee New Wavesみたいにこうやって話すことなく、ステージに立ってることがメッセージだ、みたいな感じでやっていきたいんだよ。俺は本当はそういうタイプの人間だから。
でも坂本さんたちのバトンをちゃんと受け取らないといけないし、次の世代の人たちに「あんなことがあったのにあいつら何やってたんだよ」って言われないようにしないといけない」
と改めてNO NUKESというイベントを背負っているからこその覚悟を語る。今、そのバトンは間違いなくアジカン(というかゴッチ)が握っている。
そしてゴッチのソロでドラムを叩いているmabanuaが2018年のベストソングにも挙げていた「ボーイズ&ガールズ」を、いつか自分たちが持っているバトンを渡す世代に「全部任せたいけど、ちゃんと俺たちもこれからも頑張るから大丈夫だよ」と背中を押すかのように鳴らしてステージを去った。
「今を生きて」も「君という花」も「ソラニン」もない。今のアジカンのモードにして、このイベントだからこそのアジカンのライブだった。
アンコールで再び5人でステージに現れると、
「みんな明日から日常でしょ?みんなが明日からもポジティブなエネルギーに包まれますように」
と、意味や意義やメッセージが強いイベントであっても、あくまで来てくれてる人たちの明日からの力になって欲しい、楽しかったと思って欲しいという姿勢を見せると、演奏されたのは「ホームタウン」のさらなる先の新曲「解放区」。
曲途中にはゴッチのポエトリーリーディング(しかも結構長め)も挟まれるという驚きの構成であるが、そのタイトル通りに閉塞感をぶち破るような力強いポジティブな力、そしてポエトリーリーディングにしなければいけない、収まらないくらいの言葉の多さと強さ。そこにはこれまで以上にメッセンジャーとしてのアジカンの姿を感じる。「ホームタウン」で自分たちだけならず日本のロックバンドのサウンドを新たな地平に導いたアジカンは、再び言葉と向き合って自分たちにしかできないロックを生み出そうとしている。
最後にはオーガナイザーの坂本龍一もステージに招いて6人で一礼。確かに、坂本龍一の持っていたバトンはこのバンドに受け継がれた。それを感じさせる光景だった。このバトンはいつ、誰が受け取るのだろう。いつかはその日が来なくてはいけないが、アジカンはまだまだ自ら手放すようなことはしないだろう。
こうしてゴッチが社会に向けたメッセージを発したり、行動をしたりすると
「アジカンのファンは後藤が言うことを全て正しいと思う信者だ」
という声もあがる。(それはゴッチだけに限った話ではないが)
じゃあ自分はどうなのか?というと、ゴッチのツイッターとかを見ていても全てを100%信じているわけではないし、それはどうなんでしょう?って思うこともあったりする。
でもゴッチがこうして声を上げたり、THE FUTURE TIMESを作ったりしてくれることで、今まで知らなかったことや見えなかったことが知れる。ネットの文字なんて結局真実かどうかなんてわからないけど、THE FUTURE TIMESには活動をしている人の名前も顔も、ゴッチと会話していることもちゃんと記されている。そういう活動を知ることで、今まで考えていたけれど、一般人がどうすればいいのか、ということに参加できるようになったりする。
このNO NUKESだってそうだ。原発反対だと思っていても、どうすればその意思を表明できて、同じことを考えている人たちや、帰る場所をなくしてしまった人たちへの力になれるのか。ゴッチが声を上げてくれるからこそ、こうしてこういう場所に来て、意思を表明することができる。
かつて自分が10代の時に巨大なロックの荒野に導いてくれたバンドは、今でも音楽だけでない様々な場所に自分を導いてくれている。アジカンがいてくれて、本当に良かった。
全てを背負わせたくはないけれど、背負っている時の方がアジカンはいいライブを見せてくれる。かつてのNANO-MUGEN FES.で見てきたライブが、どのワンマンよりも良かったように。
1.N2
2.センスレス
3.Standard
4.サーカス
5.荒野を歩け
6.Re:Re:
7.リライト feat. SKY-HI
8.ボーイズ&ガールズ
encore
9.解放区 (新曲)
ボーイズ&ガールズ
https://youtu.be/8HPp22obp9g
自分はずっとこのイベントに参加し続けている。それは己の意思の表明でもあるのだが、2013年にZepp DiverCityで行われていた時よりも、空気が楽しいものに徐々に変わってきたように思える。
国会前の反原発デモにも行ったことがあるが、それは楽しいものでは決してなかった。いなければいけないのはわかっていても、何をすればいいのか全くわからなかった。でもこのイベントはライブを楽しみながら考えていくことができる。音楽と社会のことが結びつくのを嫌がる人もいるし、それはその人のスタンスだから仕方がないことだが、音楽を愛する者たちの戦い方はこういうものなのかもしれない。せっかく変えるんなら苦しみながらじゃなくて、楽しみながら変えていきたい。
「想像力が1番の抑止力になる」
と初日のトークセッションでゴッチは言っていた。また地震が起きたら、津波が来たら、原発がテロのターゲットにされたら。自分の家の隣に原発が建てられたら。放射性廃棄物の処理場ができたら。そんな様々なことを想像してみる。そうするとやっぱり原発という存在に自分は賛成することは絶対にできないし、せめて10代の時の自分みたいなやつがなんにも恐れることなく、好きなことに夢中になれているような世の中であって欲しいと思っている。だから、なくなるまではこのイベントに足を運び続けようと思っている。
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