NO NUKES 2019 day1 @豊洲PIT 3/23
- 2019/03/24
- 01:51
東日本大震災と福島第一原発の事故を受けて始まった、坂本龍一がオーガナイザーとなりロッキンオンが主催する脱原発を訴える音楽イベント「NO NUKES」。
ロッキンオン社長の渋谷陽一のメッセージにもある通りに、原発の再稼働を進める現政府へのメッセージとして2年ぶりに開催。会場は電力が風力発電で賄われている豊洲PITというのは前回開催時と同様。
場内には物販や飲食ブースだけでなく、東北ライブハウス大作戦や反原発団体のブースなどが出店しており、いつもとは違う雰囲気というか緊張感があるのがこのフェスならでは。しかしやはりみんな音楽を楽しみに来ているのは変わらないと表情をしている。
13:00〜 Gotch
このフェスはオーガナイザーこそ坂本龍一であるが、ある意味ではこのフェスの旗振り役としてアジカンだけでなくトークセッション、さらにはこのソロなどで出演してきたゴッチ。今年は初日のトップバッターがソロ、2日目のトリがアジカンと、やはりこのフェスを背負っていると言っていい存在である。
メンバー全員が揃いのストライプのシャツを着てステージに登場すると、かつてのライブメンバーからは入れ替わっているメンバーもいることに気づく。それが最もわかりやすいのは、かつてはギターが井上陽介(Tarntable Films)と佐藤亮のツインギターだったのが、ギターは井上だけになり、代わりにサックスとフルートを吹ける管楽器メンバーが加わっている。
そのメンバーたちのフリーキーかつセッション的な演奏(ゴッチはギターをスクラッチするように音を出したりしている)による「Paper Moon」でスタートすると、ゴッチがギターを下ろしてハンドマイクを持ち、ステージを闊歩しながら歌う「Wanderland」へ。トラックというかバンドサウンドとは異なる音楽の形をバンドではない場所で追及しようとしていた時期だからこその曲だが、サックスの生演奏が入ることによってライブにおける音源の再現度ははるかに上がっているし、何よりもソロ始動時からゴッチを支えるスーパードラマー・mabanuaの存在によってしっかりとバンドだからこその音楽に生まれ変わっている。
「いつもとはちょっと違うフェスかもしれないけど、楽しんで。俺は楽しんでいいと思ってるし、そうしないと身がもたないと思ってるから」
と語ると、日本語と英語の混ざり合った歌詞がこの豊洲という東京の海の近くであるこの会場にこの上なくマッチした「Tokyo Bay」、アコギの旋律が心地よい短尺曲「Blackbird Sings at Night」と続き、
「みんな好きに揺れてね。この後は基本的にバキバキなヤツらしか出てこないから、揺れるチャンスはここしかないよ(笑)
今日のメンツで1番ケンカが弱いのは俺だから、なんかあったらみんなに助け呼ぶね(笑)
あと、俺のソロは全然売れてないから、豊洲PITでやれるのは奇跡(笑)一生の思い出にします(笑)」
とソロではおなじみの自虐MCもはさみながら、「Taxi Driver」ではゴッチ本人が誰よりも楽しそうに揺れながら歌い、
「みんな、ポジティブなメッセージを受け取って帰ってね。明日からの、来週からの生活のエネルギーになるように、最後まで楽しんで」
とあくまで楽しくというムード(このイベントが始まった当初はまだそういう空気ではなかったが、4〜5年前から「楽しく」というものに変わってきた)を作り出しながら、最後の「A Girl in Love」ではゴッチのボーカルに続いて、ここまでにも美しいコーラスを重ねていた女性メンバーに加え、シモリョー(キーボード)、井上、mabanuaという初期からゴッチのソロに参加している面々も声を重ねる。それはソロでありながらも決して1人だけではできない、このメンバーと作り上げてきた音楽だからこそ。最後にステージ前に並んで肩を組んだメンバーたちは笑顔で、やはり楽しくステージを去っていった。
1.Paper Moon
2.Wanderland
3.Tokyo Bay
4.Blackbird Sings at Night
5.The Sun is Not Down
6.Taxi Driver
7.A Girl in Love
Taxi Driver
https://youtu.be/QH2xYbpk5ps
14:05〜 トークセッション
このイベントではおなじみのトークセッション。今回の参加者はオーガナイザーの坂本龍一、司会のいとうせいこう、教授こと坂本龍一から「助教授」という称号を授けられたゴッチ、さらには今回は「ヒバクシャ国際連盟」の林田氏が参加。
その林田氏による、広島・長崎の被爆者の方々がどういう人生を生きてきたか、核兵器の恐ろしさとは、というテーマでトークが進んでいく。それは一見すると原発とは違うことのようでもあるが、
林田「こういう問題を話していると、「当事者以外が口を出すな」って言われることがあるんですね。でも当事者の方ってみんな声を上げられないんですよ。声を上げてしまうと被害者であるということがわかってしまうし、それによって差別されたりすることになってしまう。だから私も被爆三世って名乗ってますけど、当事者の周りの人が声を上げてくれないと誰も当事者の方の苦しみに気づかないんですね」
いとう「それは原発の構図とも同じだけれど、もう核兵器の当事者って言ったら亡くなった方ばっかりになってしまうもんね」
と、それは核兵器だけではなく全ての「必要悪」と言われているものに共通すること。
「核兵器が東京に落とされて、我々が被爆の被害に遭ったとしますよね。足が吹き飛びました、って。でもそういう時に医療は助けてくれないんです。被爆した人を助けると、その治療をした人も被爆者になってしまうから。だから赤十字社は「核兵器は人道に反するもの」っていう声明を出したんです」
など、ハッとするというか、今まで気づかなかった目線の話ばかりだった。
しかし、あまりに専門的な話が続いたからか、助教授ことゴッチが全く口を挟めずにいると、エセタイマーズの格好をした細美武士とTOSHI-LOWがステージに乱入。
「バンドマン界隈では博識って言われてるゴッチがこんなに喋らないなんて!寝てると思った(笑)」
とそれまでの緊張感に満ちた空気は一気に和やかなものになっていくのはこの2人が持つ人間性によるものだろう。
TOSHI-LOW「ケータリングの弁当が来るのが16時からだって言うから先にスタッフの弁当を食べた(笑)」
と笑わせながらも、細美と2人でしっかり議論にも参加。
細美「前から言ってるけど、ここには今原発反対派の人が並んでるじゃん?そうじゃなくて賛成派の人にも来て貰って、その人の意見も聞いた上で議論がしてみたい」
というのは相手が誰であれ関係ないというスタンスで人と接する細美ならでは。
坂本龍一がトークしてるメンバーの写真を撮ったりしながらこの日の物販Tシャツを宣伝し、
ゴッチ「これは売れたら福島の方々に寄付されるんで。僕らには入ってこないです」
TOSHI-LOW「渋谷陽一は信用していいの?(笑)」
細美「ROCK IN JAPAN FES.の利益とか全部寄付すれば良いじゃん(笑)」
と、どんどん場が和んでくると、ここまでほとんど喋れていないゴッチが助教授から助手に格下げされる中、
「みんなでヒバクシャ国際連盟の署名に参加しましょう」
と言うも、1週間前に参加することが決まったという林田氏は署名を持参してきておらず、全員がずっこけるというコントみたいな展開に。坂本龍一もずっこけていたのはすごく面白かったが、署名はネットでもできるということ。
林田「核兵器を持ってる国も、使ったらどんな被害を受けるか、被爆者がどんな人生を送っているかっていうところがない。これからもそういうところを訴えたり、声にしていきたい」
ゴッチ「想像力が抑止力になると思うんで」
と締めてトークを終えると、去り際にTOSHI-LOWが
「この難しい議題の答えは、次の難波さん(NAMBA69)が一発で出してくれると思います!」
とやはり全てを持っていった。
15:30〜 NAMBA69
かつてはパンク・ラウド系のバンドに特化した、山本太郎や三宅洋平も登場した「NO MORE FUCKIN' NUKES」を今はなくなってしまった渋谷AXで主催した、NAMBA69。
メンバーが登場すると、難波章浩がアカペラで歌い始めたのは「COUNTRY ROAD」。
「今も家に帰れない人がいるなんて信じられない。福島の人たちに届きますように!」
と思いを叫ぶと、観客も一緒に大合唱。耳をつんざくような爆音パンクロックとはいえ、そもそもは誰もが知るスタンダード曲のカバーであり、そのメロディは変わらないだけにみんなで歌えるというのはこうした空気が重くなりがち(ましてやトークセッションの後だし)なイベントにおいてはデカい。
しかしこのイベントはロッキンオンのイベントである。ロッキンオンはフェスでもイベントでもダイブが禁止しているのだが、そうしたアナウンスがないからか(あったらBRAHMANを呼ばないだろうし)、もう「HEROS」からはひたすらにモッシュ、ダイブの嵐。なんならステージダイブする人も現れるくらいの激しさ。
そんな中でSAMBU(ドラム)が「FOR LIFE」の入りを間違えてしまう(曲順間違えだろうか)という場面もあったが、かつてハイスタを活動休止させた後はパンクとはかなり距離のある音楽をやっていたとは思えないほどにこのNAMBA69名義になってからの難波はどストレートにパンクと向き合っている。その上でデカいのはSAMBUとK5とは違って後からバンドに加入したko-heyの存在だろう。メロディをガンガン持ってくるというko-heyのアイデアから生まれた曲もあるようだし、分厚いサウンドのギターだけでなくコーラスでの貢献度も非常に高い。ソロ名義だった時よりも曲がメロディアスになっているのは間違いなくその影響であろう。
「俺の次男が3月11日生まれなんだけど、2011年が2歳の誕生日で。今は10歳になって、ようやくいろんなことが理解できるようになってきてるんだけど、今年の誕生日に「地震が起きた時はどうだったの?原発の事故ってどうだったの?」って聞かれて。その時に上手く答えることができなかったんだけど、俺はこうしてただ「反対」って言ってるだけになってなかったかな、って。これからの子供たちにそういうものを背負わちゃいけないって思った。
俺は今、新潟に住んでるんだけど、新潟では毎日のように東北電力が
「もう事故は起こしません」
っていうCMを放送してて。そうやってどんどん再稼働っていう方向に持っていこうとしてるんだろうなって」
と子供がいるからこその自身の原発への思いやスタンスを口にする。
前回はトークセッションにも参加していたが、難波章浩はゴッチとかと違って、自身の思考をそのまま言葉として発したり、言葉で知識を持っている人と渡り合うのが得意なタイプではない。むしろ不器用と言っていいような人だ。でも不器用だからこそ、ずっと純粋な心を持ったままだし、何よりもずっと優しいままだ。それはMCだけではなく、爆音の演奏からも感じられる。かつてTHE BLUE HEARTSは
「僕 パンクロックが好きだ 優しいから好きなんだ」
と歌っていたが、ハイスタで日本のパンクロックを更新させた張本人である難波章浩のパンクロックは今でも本当に優しい。それはこれからも歩いていくという意志を示した「WALK」からも確かに伝わってきた。以前は怒りを強く打ち出した時もあったけれど、今はそういう戦い方ではない。だから、見ていて楽しいし、頼もしく感じる。
リハ.LET IT ROCK
リハ.MY WAY
1.COUNTRY ROAD
2.HEROS
3.PROMISES
4.FOR LIFE
5.SUMMERTIME
6.CHANGES (新曲)
7.LOOK UP TO THE SKY
8.MANIAC
9.WALK
MANIAC
https://youtu.be/K3ZUuVPMT4I
16:35〜 ストレイテナー
このイベントには初出演となる、ストレイテナー。ゴッチや細美武士などの友人ばかりが出演しているとはいえ、このバンドが出演するのを意外に感じている人も多かったはず。
ホリエは白いパーカー、ひなっちこと日向がキャップを被って登場すると、髪を後ろで結わいた大山純が静かにギターを弾きながら、ナカヤマシンペイがウインドチャイムの音を鳴らしている。
「NO NUKESはじめまして!初出演、俺たちストレイテナーって言います!」
とホリエが挨拶すると、いきなりの「Melodic Storm」でスタート。さらには「シーグラス」と代表曲にしてキラーチューンが続き、客席からは拳も上がるが、ステージ上のメンバー(特にホリエ)はいつにも増して緊張感を感じさせるのはやはりこのイベントが持つメッセージから来るものだろうか。
ホリエが立ったままキーボードを弾く「Braver」は
「全ての勇気のある人たちへ」
という言葉を添えてから演奏されたが、出演することによって「こいつらはこういう人たちだ」というレッテルを貼られたり、考えが違う人たちが離れて行ってしまったりするというリスクのあるこのイベントに出演することを選んだこのバンド自身が何よりの「Braver」である。
テンポとしてはミッドテンポの曲であるが、シンペイは力の限りに振りかぶってドラムをぶっ叩き、OJは髪を振り乱しながらギターを弾き、ひなっちのベースはやはりゴリッゴリである。そのテンポには似つかわしくない演奏の強さは、この曲の持つメッセージを音で表すためには不可欠なものだ。ホリエがキーボードを弾くタイプのほかの曲とはそこが明らかに違う。
今でこそかつて2日連続でライブを見た時に全曲総とっかえしていたほどにガラッと変えることはなくなったが、ストレイテナーは毎回セトリを変えるバンドだ。そこには対バン相手に合わせたり、そのライブだからこそその曲を演奏するというバンド側の明確な姿勢があるからこそだが、この日イベントにおいては久々に演奏された「A LONG WAY TO NOWHERE」は明らかにそれを感じさせたし、それは演奏後のホリエの
「俺たちミュージシャンは幸せなことにいろんな場所に行って演奏することができて。そこでいろんな人と出会ったりすることで、その場所が特別な場所になっていく。その場所が奪われるのが怖い。ただそれだけ」
という言葉と、その後に久々に演奏された「NO 〜命の跡に咲いた花〜」からも感じられた。
ホリエの言葉はストレイテナーだけでなく、全てのツアーを行うアーティストに言えることだ。全国に行ってライブをすれば、その土地の人たちと関わらずにはいられない。ライブハウスのスタッフだったり、ライブ後の打ち上げの店の人だったり。我々のようにいつも同じ会社に行って仕事をしている人間よりも明らかにいろんな場所に住む、いろんな人たちと交流がある。そしてそれは年数を重ねるだけ増えていく。何度もその場所でライブをすれば、何回もその人たちと会える。ミュージシャンに原発に反対したり、災害に対してすぐアクションを見せる人が多いのはそう考えると当たり前のことだ。そこにいる人たちがどんな人たちか知っていて、それは大切な人たちなのだから。
まだライブでやるのが2回目という新曲「スパイラル」は「Braver」とは対称的にシンプルというか、ストレートなサウンド。それはあくまでホリエの歌を立たせようとしているからなのだろうし、その歌にはバンドを、音楽を続けていくことというテーマが含まれているように感じる。だからそれをしっかり伝えるためのアレンジになっているというか。
そしてラストは「REMINDER」。初期からのバンドの代表曲であるが、この日の演奏からは「決して忘れないように」というバンドからのメッセージであるかのように聞こえた。この日のライブも、震災や原発のことも。
ストレイテナーはそれこそ「Dear Deadman」期あたりまではMCすら全くしないバンドだったし、こうした社会的なメッセージを発信することに関してはかつてホリエが
「俺たちの世代のそういう役割はゴッチに任せる(笑)」
と言っていた。しかしそれは間違いなく変わってきている。その起点は「NO 〜命の跡に咲いた花〜」をリリースした時だったと思うのだが、いくらゴッチに任せたからと言っても全ての思想が同じわけではないし、長崎出身のホリエだからこそ言えることも確かにある。そしてその想いは活動を続けて、日本全国のたくさんの人と出会ったことで自分の口から発するという選択をすることになった。その姿はかつての全く喋らなかった頃よりも愛と優しさを感じることができる。
1.Melodic Storm
2.シーグラス
3.Braver
4.A LONG WAY TO NOWHERE
5.NO 〜命の跡に咲いた花〜
6.スパイラル
7.REMINDER
Braver
https://youtu.be/rvNlzyWVbGk
17:40〜 いとうせいこう is the poet
トークセッションでは司会者としてもさすがの仕切りを見せていた、いとうせいこう。このイベントではこれまでにもこうして枠を設けられた中で出演してきた通り、ここではミュージシャンとしての出演。
最初にいとうせいこうが1人で登場し、田中正造が遺した言葉を朗読すると、サポートメンバー2人がサンプラーとキーボードを駆使して電子音を奏で始め、その言葉は音の上に乗って我々の耳に届いていく。
しかもそのサポートのうちの1人はベースに持ち替え、さらにギターとドラムも登場してバンド編成に。セッション的な側面も強い演奏なのだが、サウンドはかなりダブ的な要素が濃い。
与謝蕪村など、いとうせいこうが詠むポエムはこの国の自然や環境を守るということに主題が置かれたもので、それがそのまま原発によって自然が壊されてはならないというメッセージになっていく。
ギターのメンバーがヴォコーダーを通して声すらも音として使ったり、キーボードのメンバーがシンセを弾いたりと曲というよりはその部分部分でパートを変えながらも、そうしたことができるメンバーが揃っているだけにやはりそこから生まれるグルーヴは凄まじいものがあるし、3曲演奏されたうちの最後の曲はダブというよりもそのグルーヴを生かしたダンサブルなもので、まさか偉人たちの遺した言葉たちがこんなにも身体的に機能する音楽に乗るとは全く思っていなかった。
トークショーでもテレビなどでおなじみの面白いおじさんらしさをうかがわせるツッコミを見せていたが、そもそもはいとうせいこうは日本のヒップホップのパイオニア的な人間のうちの1人である。(それは□□□に加入したことからもわかる)
この日のこのステージで見せた顔は間違いなくミュージシャンとしてのいとうせいこうのものであったし、この日の出演者の中では最も番組のスポンサーであったりというしがらみがあるであろうにもかかわらず、こうして自身の心情をストレートに発している。その姿勢はヒップホップでありパンクでもあるし、自身の中で何が1番大事なのかがわかっているのがよくわかる。
そしてドラムのオータコージ(曽我部恵一BANDなど)が凄まじいドラマーであるということがこのイベントでいとうせいこうの後ろで叩いているのを見るたびに実感する。
18:45〜 BRAHMAN
このイベントでは毎回おなじみのBRAHMAN。もはやロッキンオンのイベントやフェスにBRAHMANとして出演するのはこのイベントのみになりつつある。(毎回ロッキンにもCDJにもOverground Acoustic Undergroundでメンバーたちは出演している)
1週間前に釜石でライブを見たばかりであるが、この日はトークセッションで使ったスクリーンがステージ背面にあるだけに、そこにオープニング映像が投影され、最後には
「NO NUKES 2019 3/22」
というこの日限りの文字も映し出される。
先週は演奏していなかった「THE VOID」から始まるというあたりはさすがに1度もセトリが同じライブを見たことがないバンドであるが、「賽の河原」からは日本語歌詞の曲を連発していく。
TOSHI-LOWが右腕の筋肉を見せつける「付和雷同」、
「響くサイレンと シュプレヒコール」
という歌詞がエマージェンシー感を感じさせる「遠国」のアウトロからすぐさまイントロに切り替わった「BEYOND THE MOUNTAIN」といつにも増してテンポが速く感じるし、その場で座り込むようにして苦痛の顔を浮かべながらベースを弾くMAKOTOを含めて、やはりそこには原発に対する怒りのような感情を感じざるを得ないし、それは「不倶戴天」で最も炸裂していた。しかし最後の
「赦すってことだ」
というフレーズに合わせて突き立てた中指が人差し指とともにピースになるのは怒りだけでは何も解決しないというメッセージ(いとうせいこうもライブ中にそうしたポエムを詠んでいた)に感じる。
TOSHI-LOWが勢いよくステージに飛び込んだ「警醒」ではスクリーンにMVが映し出されたのだが、観客に支えられるTOSHI-LOWめがけて飛んでくるダイバーの数があまりに多すぎて振り払ったりすることができず、TOSHI-LOWの姿が見えなくなるという状況に。曲終わりで引っ張り上げられたが、そんな状況なだけに他に倒れたり起き上がれなかったりした人もいたようで、「鼎の問」での福島第一原発で作業をする人たちの映像とコメントが映し出されると、
「誰かがやらなきゃいけない。だったらお前が横にいるやつを立たせてあげればいいんじゃないか」
と、起き上がれていない人を助けるためのメッセージに咄嗟に変えていたのはさすがだ。
しかしこの「NO NUKES」で映像を見ながら聴く「鼎の問」はやはりいつもとはまた重みが全く違う。この人たちが住んでいた場所に帰れる日は来るんだろうか。映像の中に結婚式のシーンがあるように、あんな事故さえ起こっていなかったらこうして防護服に身を包んで作業することのない、ささやかなだけど幸せな人生があったんじゃないだろうか。そう思いながら見ていたら自然と涙が溢れそうになってしまった。
観客の上から最前列の柵の上にTOSHI-LOWが移動すると、
「あの人にも見せたかったなぁ。地球から生まれた力でクリーンな電気を100%使えるようになった日本の姿を、その電気で子供が冬に寒い思いをしたり、お年寄りが夏に熱中症で倒れたりしなくなった世の中を…」
と喋り始めたので、誰か近しい人が亡くなってしまったのか…と思っていたら、
「不慮の死を遂げた坂本龍一、ROCK IN JAPAN FES.の開催中に熱中症で死んだ渋谷陽一、後を追うように亡くなったいとうせいこうと難波章浩…年上連中がいなくなったから好きにできます(笑)」
と、このイベントではおなじみの教授が亡くなったネタについにいとうせいこうまでをも含めて重々しい空気を爆笑に変えてみせる。しかし、
「3月11日に福島県の双葉町の小学校に友達と2人で行った。原発の避難区域の小学校だ。2011年の3月11日、14時46分。その小学校ではモップかけをしていたらしい。綺麗に並べられた靴。きっと上履きを履いたままで避難したんだろう。あの学校はその日の写真でも見ているかのようにその時と全く変わらないままだった。
日本が原発をゼロにするのは俺たちの代では無理かもしれない。政府の大臣が天下りで電力会社の役員になるような国だ。その仕組みももしかしたら俺たちの時代では変わらないかもしれない。でも今の子供たちが故郷を奪われることなく、ちょっと飲みに行こうぜって言って友達と朝まで飲みに行けるような時代になりますように。その子供たちにこういう友達ができますように」
と最後にはやはりしっかりとまとめてみせると「今夜」を歌い始め、やはり途中からは細美武士がステージに登場してTOSHI-LOWとともに歌い始める。住む場所がなくなるということは、それまで一緒にいた友達とも会えなくなってしまうということ。震災がきっかけでこうして関係が深くなった2人だけれど、そうは思えないくらいにずっと一緒にいたかのようだ。
細美がステージから去ると最後に演奏されたのは「真善美」。
「一度きりの意味をお前が問う番だ」
というフレーズが響く中、先に楽器を置いてステージから去る中、TOSHI-LOWがマイクを落とすとその瞬間に場内が暗転。客電が点いて再び明るくなると、現実に引き戻されたかのように大きな拍手が起こった。
先週のライブのレポなどでも「BRAHMANはフェスとかに出ると強すぎる、ジョーカー的な存在」と書いたが、やはりこの日もそうだった。TOSHI-LOWのMCもそうだが、音の説得力が圧倒的過ぎる。MCだけが上手かったり強かったりするバンドだったらここまで圧倒的には思えない。それはそもそもがMCを全くしないストイックなバンドだからだろう。
1.THE VOID
2.賽の河原
3.付和雷同
4.AFTER-SENSATION
5.遠国
6.BEYOND THE MOUNTAIN
7.不倶戴天
8.警醒
9.鼎の問
10.今夜 w/ 細美武士
11.真善美
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
19:50〜 the HIATUS
この日のトリはthe HIATUS。かつてのこのイベントでは脱原発に向けてのメッセージを届けに来た、小泉純一郎元首相に細美武士が普通に喋りかけて、周りにいた人たちに
「なんでそんなことできんの!?」
と驚かせたこともあった。
リハでメンバー全員が出てきて感触を確かめるように曲を演奏すると、本編はきらめくようなキーボードのサウンドの「Clone」からスタート。やはり細美のボーカルはこの日も素晴らしいし、それはMONOEYESよりも、復活したELLEGARDENよりもthe HIATUSでこそ強く感じるのだが、細美がギターからキーボードにパートチェンジした「Sunset Off The Coastline」ではイントロで全く違う音が鳴ってしまい、「新曲か!?」と思ってしまうほど。
昨年末には「Monochrome Film Tour」という映像を使ったコンセプトの強いツアーを行っており、年末のフェスでもそのツアーのハイライト的な曲を演奏しており、それまでの定番曲がほとんど演奏されないという内容だったのだが、それは年が明けて3月になったこの日も同様。(そもそもELLEGARDENのライブは発表されているが、年が明けても特にthe HIATUSの活動について新しいアナウンスはないのだが)
それゆえにこの日もアッパーな曲は一切なく、映像こそないがじっくりと浸らせていくような曲が続いていく。
「がれきの海で 夢を見ていた」
という歌詞が震災を思い起こさせる(リリースされたのは震災の前だが)「西門の昧爽」も原曲とは全く異なるジャジーなアレンジになっている。
細美「今日、本当に楽しみにしてたんだ。TOSHI-LOWと久しぶりに会えるから。1週間会ってなかったんだ(笑)恋人だから(笑)
TOSHI-LOWは本当に強い男だから。俺みたいな弱いやつは毎日昨日よりもちょっとでも強くなろうと思ってるんだけど…。ウエノさん、先輩だけど1人だけTOSHI-LOWに殺されてなかったですね(笑)」
ウエノ「そもそもあいつに敬語を使われたことないから後輩っていう感じしないけどね(笑)
でもTOSHI-LOWは吉川晃司さんには敬語を使ってて、なんで?って聞いたら「俺も水球やってたから」だって(笑)」
細美「その意味で先輩だからっていうこと?(笑)
おっさんになると思うけど、やっぱり愛と勇気ですよ。次のNO NUKESは客席のこっち半分が原発賛成派で、こっち半分が反対派でやりたい。殴り合いになるかもしれないけど(笑)」
と相変わらずのTOSHI-LOWとのラブラブっぷりを見せつけると、「Radio」でさらに細美の声が凄みを増していくと、ラストの「Burn To Shine」ではまさに全てを燃えつくすかのような細美の絶唱っぷり。あまりに圧巻にして圧倒的だった。
アンコールでは細美が
「「グラビティ」っていう映画見たことある?その映画でジョージ・クルーニーが宇宙を漂流しながらカントリー音楽を流して、
「朝焼けに染まるガンジス川を見たことあるか?」
って言うんだけど、俺はその映画を見てインドに行ったんだけど。ガンジス川ってインドの人とは違って俺たちみたいな免疫の弱い人が入ると下痢になるって言われてて。だからチンコと股間が水につかないように膝だけ浸かったら、最後の一歩がぬかるんでてズルッと滑って全身浸かっちゃって(笑)
俺はガンジス川もナイル川もメコン川も行ったけど、本当にキレイだった。人生ってそういうもんでいいんじゃないかな。だから最後は、そういう曲で」
と言って演奏されたのは「Waiting For The Sun」。演奏を終えると、masasucksが渾身の笑顔で観客に応えていた。かつてのこのイベントではmasasucksによる
「俺たちで新しい日本を作っていこうぜ!」
という言葉が1日を締めたこともあった。それくらいにこのバンドは細美だけではなく、メンバー全員が強い意志を持ってこのイベントに臨んでいる。ともすればマニアック過ぎるセットリストでもあるのだが、決してそういう空気にならなかったのは演奏と歌の素晴らしさはもちろん、そこに込めた意志が確かにあるからだ。こんなに素晴らしいライブを見せたこのバンドの次のアクションは果たして。
リハ.Let Me Fall
1.Clone
2.Sunset Off The Coastline
3.Shimmer
4.Thirst
5.Unhurt
6.Tree Rings
7.西門の昧爽
8.Radio
9.Burn To Shine
encore
10.Waiting For The Sun
Clone
https://youtu.be/h9aLBoHFeOQ
アンコールが終わって客電がついてもさらなるアンコールを求める声は止まず、なんと坂本龍一、ゴッチ、細美武士、TOSHI-LOWの4人が挨拶のためにステージに登場すると、翌日に渋谷でライブがあるために会場に来れないというTOSHI-LOWが
「せっかくだから教授のピアノが聴きたいな〜。あそこにキーボードあるしな〜」
と焚きつけ、the HIATUSの伊澤のキーボードを使って「戦場のメリークリスマス」を弾くというサプライズ。かつてはオーガナイザーでありながら出演者としても名を連ねていたが、今となってはこうして演奏する姿を見れるのは実に貴重だ。TOSHI-LOWはステージから去る際に教授を拝むようにして去って行ったけれど(笑)
NO NUKESは終わった会計を公開しているから出演者にメリットが全然ないということがわかっているし、メンバーの誰か1人が違う考えを持っていたら出ることができないフェスだ。それはGotchやいとうせいこうというバンドメンバーではなくてサポートメンバーという立場の人でもそう。この日の出演者たちがみんな凄いライブバンドなのは原発に対する意志をメンバー全員が共有していて、それが音に出てるのは間違いなくあると思う。
細美武士は「やっぱり愛と勇気ですよ」と発言していたが、国会中継で映っているような人間からは自分はそれを全く感じることができない。もちろんこの日の出演者たちが全て正しいわけではないし、彼らは政治の専門家でもない。でもどちらを信じられるかって言われたら間違いなく自分は政治家なんかではなくこの日の出演者たちを選ぶだろう。彼らの姿や言葉からは愛と勇気を確かに感じることができるから。
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ロッキンオン社長の渋谷陽一のメッセージにもある通りに、原発の再稼働を進める現政府へのメッセージとして2年ぶりに開催。会場は電力が風力発電で賄われている豊洲PITというのは前回開催時と同様。
場内には物販や飲食ブースだけでなく、東北ライブハウス大作戦や反原発団体のブースなどが出店しており、いつもとは違う雰囲気というか緊張感があるのがこのフェスならでは。しかしやはりみんな音楽を楽しみに来ているのは変わらないと表情をしている。
13:00〜 Gotch
このフェスはオーガナイザーこそ坂本龍一であるが、ある意味ではこのフェスの旗振り役としてアジカンだけでなくトークセッション、さらにはこのソロなどで出演してきたゴッチ。今年は初日のトップバッターがソロ、2日目のトリがアジカンと、やはりこのフェスを背負っていると言っていい存在である。
メンバー全員が揃いのストライプのシャツを着てステージに登場すると、かつてのライブメンバーからは入れ替わっているメンバーもいることに気づく。それが最もわかりやすいのは、かつてはギターが井上陽介(Tarntable Films)と佐藤亮のツインギターだったのが、ギターは井上だけになり、代わりにサックスとフルートを吹ける管楽器メンバーが加わっている。
そのメンバーたちのフリーキーかつセッション的な演奏(ゴッチはギターをスクラッチするように音を出したりしている)による「Paper Moon」でスタートすると、ゴッチがギターを下ろしてハンドマイクを持ち、ステージを闊歩しながら歌う「Wanderland」へ。トラックというかバンドサウンドとは異なる音楽の形をバンドではない場所で追及しようとしていた時期だからこその曲だが、サックスの生演奏が入ることによってライブにおける音源の再現度ははるかに上がっているし、何よりもソロ始動時からゴッチを支えるスーパードラマー・mabanuaの存在によってしっかりとバンドだからこその音楽に生まれ変わっている。
「いつもとはちょっと違うフェスかもしれないけど、楽しんで。俺は楽しんでいいと思ってるし、そうしないと身がもたないと思ってるから」
と語ると、日本語と英語の混ざり合った歌詞がこの豊洲という東京の海の近くであるこの会場にこの上なくマッチした「Tokyo Bay」、アコギの旋律が心地よい短尺曲「Blackbird Sings at Night」と続き、
「みんな好きに揺れてね。この後は基本的にバキバキなヤツらしか出てこないから、揺れるチャンスはここしかないよ(笑)
今日のメンツで1番ケンカが弱いのは俺だから、なんかあったらみんなに助け呼ぶね(笑)
あと、俺のソロは全然売れてないから、豊洲PITでやれるのは奇跡(笑)一生の思い出にします(笑)」
とソロではおなじみの自虐MCもはさみながら、「Taxi Driver」ではゴッチ本人が誰よりも楽しそうに揺れながら歌い、
「みんな、ポジティブなメッセージを受け取って帰ってね。明日からの、来週からの生活のエネルギーになるように、最後まで楽しんで」
とあくまで楽しくというムード(このイベントが始まった当初はまだそういう空気ではなかったが、4〜5年前から「楽しく」というものに変わってきた)を作り出しながら、最後の「A Girl in Love」ではゴッチのボーカルに続いて、ここまでにも美しいコーラスを重ねていた女性メンバーに加え、シモリョー(キーボード)、井上、mabanuaという初期からゴッチのソロに参加している面々も声を重ねる。それはソロでありながらも決して1人だけではできない、このメンバーと作り上げてきた音楽だからこそ。最後にステージ前に並んで肩を組んだメンバーたちは笑顔で、やはり楽しくステージを去っていった。
1.Paper Moon
2.Wanderland
3.Tokyo Bay
4.Blackbird Sings at Night
5.The Sun is Not Down
6.Taxi Driver
7.A Girl in Love
Taxi Driver
https://youtu.be/QH2xYbpk5ps
14:05〜 トークセッション
このイベントではおなじみのトークセッション。今回の参加者はオーガナイザーの坂本龍一、司会のいとうせいこう、教授こと坂本龍一から「助教授」という称号を授けられたゴッチ、さらには今回は「ヒバクシャ国際連盟」の林田氏が参加。
その林田氏による、広島・長崎の被爆者の方々がどういう人生を生きてきたか、核兵器の恐ろしさとは、というテーマでトークが進んでいく。それは一見すると原発とは違うことのようでもあるが、
林田「こういう問題を話していると、「当事者以外が口を出すな」って言われることがあるんですね。でも当事者の方ってみんな声を上げられないんですよ。声を上げてしまうと被害者であるということがわかってしまうし、それによって差別されたりすることになってしまう。だから私も被爆三世って名乗ってますけど、当事者の周りの人が声を上げてくれないと誰も当事者の方の苦しみに気づかないんですね」
いとう「それは原発の構図とも同じだけれど、もう核兵器の当事者って言ったら亡くなった方ばっかりになってしまうもんね」
と、それは核兵器だけではなく全ての「必要悪」と言われているものに共通すること。
「核兵器が東京に落とされて、我々が被爆の被害に遭ったとしますよね。足が吹き飛びました、って。でもそういう時に医療は助けてくれないんです。被爆した人を助けると、その治療をした人も被爆者になってしまうから。だから赤十字社は「核兵器は人道に反するもの」っていう声明を出したんです」
など、ハッとするというか、今まで気づかなかった目線の話ばかりだった。
しかし、あまりに専門的な話が続いたからか、助教授ことゴッチが全く口を挟めずにいると、エセタイマーズの格好をした細美武士とTOSHI-LOWがステージに乱入。
「バンドマン界隈では博識って言われてるゴッチがこんなに喋らないなんて!寝てると思った(笑)」
とそれまでの緊張感に満ちた空気は一気に和やかなものになっていくのはこの2人が持つ人間性によるものだろう。
TOSHI-LOW「ケータリングの弁当が来るのが16時からだって言うから先にスタッフの弁当を食べた(笑)」
と笑わせながらも、細美と2人でしっかり議論にも参加。
細美「前から言ってるけど、ここには今原発反対派の人が並んでるじゃん?そうじゃなくて賛成派の人にも来て貰って、その人の意見も聞いた上で議論がしてみたい」
というのは相手が誰であれ関係ないというスタンスで人と接する細美ならでは。
坂本龍一がトークしてるメンバーの写真を撮ったりしながらこの日の物販Tシャツを宣伝し、
ゴッチ「これは売れたら福島の方々に寄付されるんで。僕らには入ってこないです」
TOSHI-LOW「渋谷陽一は信用していいの?(笑)」
細美「ROCK IN JAPAN FES.の利益とか全部寄付すれば良いじゃん(笑)」
と、どんどん場が和んでくると、ここまでほとんど喋れていないゴッチが助教授から助手に格下げされる中、
「みんなでヒバクシャ国際連盟の署名に参加しましょう」
と言うも、1週間前に参加することが決まったという林田氏は署名を持参してきておらず、全員がずっこけるというコントみたいな展開に。坂本龍一もずっこけていたのはすごく面白かったが、署名はネットでもできるということ。
林田「核兵器を持ってる国も、使ったらどんな被害を受けるか、被爆者がどんな人生を送っているかっていうところがない。これからもそういうところを訴えたり、声にしていきたい」
ゴッチ「想像力が抑止力になると思うんで」
と締めてトークを終えると、去り際にTOSHI-LOWが
「この難しい議題の答えは、次の難波さん(NAMBA69)が一発で出してくれると思います!」
とやはり全てを持っていった。
15:30〜 NAMBA69
かつてはパンク・ラウド系のバンドに特化した、山本太郎や三宅洋平も登場した「NO MORE FUCKIN' NUKES」を今はなくなってしまった渋谷AXで主催した、NAMBA69。
メンバーが登場すると、難波章浩がアカペラで歌い始めたのは「COUNTRY ROAD」。
「今も家に帰れない人がいるなんて信じられない。福島の人たちに届きますように!」
と思いを叫ぶと、観客も一緒に大合唱。耳をつんざくような爆音パンクロックとはいえ、そもそもは誰もが知るスタンダード曲のカバーであり、そのメロディは変わらないだけにみんなで歌えるというのはこうした空気が重くなりがち(ましてやトークセッションの後だし)なイベントにおいてはデカい。
しかしこのイベントはロッキンオンのイベントである。ロッキンオンはフェスでもイベントでもダイブが禁止しているのだが、そうしたアナウンスがないからか(あったらBRAHMANを呼ばないだろうし)、もう「HEROS」からはひたすらにモッシュ、ダイブの嵐。なんならステージダイブする人も現れるくらいの激しさ。
そんな中でSAMBU(ドラム)が「FOR LIFE」の入りを間違えてしまう(曲順間違えだろうか)という場面もあったが、かつてハイスタを活動休止させた後はパンクとはかなり距離のある音楽をやっていたとは思えないほどにこのNAMBA69名義になってからの難波はどストレートにパンクと向き合っている。その上でデカいのはSAMBUとK5とは違って後からバンドに加入したko-heyの存在だろう。メロディをガンガン持ってくるというko-heyのアイデアから生まれた曲もあるようだし、分厚いサウンドのギターだけでなくコーラスでの貢献度も非常に高い。ソロ名義だった時よりも曲がメロディアスになっているのは間違いなくその影響であろう。
「俺の次男が3月11日生まれなんだけど、2011年が2歳の誕生日で。今は10歳になって、ようやくいろんなことが理解できるようになってきてるんだけど、今年の誕生日に「地震が起きた時はどうだったの?原発の事故ってどうだったの?」って聞かれて。その時に上手く答えることができなかったんだけど、俺はこうしてただ「反対」って言ってるだけになってなかったかな、って。これからの子供たちにそういうものを背負わちゃいけないって思った。
俺は今、新潟に住んでるんだけど、新潟では毎日のように東北電力が
「もう事故は起こしません」
っていうCMを放送してて。そうやってどんどん再稼働っていう方向に持っていこうとしてるんだろうなって」
と子供がいるからこその自身の原発への思いやスタンスを口にする。
前回はトークセッションにも参加していたが、難波章浩はゴッチとかと違って、自身の思考をそのまま言葉として発したり、言葉で知識を持っている人と渡り合うのが得意なタイプではない。むしろ不器用と言っていいような人だ。でも不器用だからこそ、ずっと純粋な心を持ったままだし、何よりもずっと優しいままだ。それはMCだけではなく、爆音の演奏からも感じられる。かつてTHE BLUE HEARTSは
「僕 パンクロックが好きだ 優しいから好きなんだ」
と歌っていたが、ハイスタで日本のパンクロックを更新させた張本人である難波章浩のパンクロックは今でも本当に優しい。それはこれからも歩いていくという意志を示した「WALK」からも確かに伝わってきた。以前は怒りを強く打ち出した時もあったけれど、今はそういう戦い方ではない。だから、見ていて楽しいし、頼もしく感じる。
リハ.LET IT ROCK
リハ.MY WAY
1.COUNTRY ROAD
2.HEROS
3.PROMISES
4.FOR LIFE
5.SUMMERTIME
6.CHANGES (新曲)
7.LOOK UP TO THE SKY
8.MANIAC
9.WALK
MANIAC
https://youtu.be/K3ZUuVPMT4I
16:35〜 ストレイテナー
このイベントには初出演となる、ストレイテナー。ゴッチや細美武士などの友人ばかりが出演しているとはいえ、このバンドが出演するのを意外に感じている人も多かったはず。
ホリエは白いパーカー、ひなっちこと日向がキャップを被って登場すると、髪を後ろで結わいた大山純が静かにギターを弾きながら、ナカヤマシンペイがウインドチャイムの音を鳴らしている。
「NO NUKESはじめまして!初出演、俺たちストレイテナーって言います!」
とホリエが挨拶すると、いきなりの「Melodic Storm」でスタート。さらには「シーグラス」と代表曲にしてキラーチューンが続き、客席からは拳も上がるが、ステージ上のメンバー(特にホリエ)はいつにも増して緊張感を感じさせるのはやはりこのイベントが持つメッセージから来るものだろうか。
ホリエが立ったままキーボードを弾く「Braver」は
「全ての勇気のある人たちへ」
という言葉を添えてから演奏されたが、出演することによって「こいつらはこういう人たちだ」というレッテルを貼られたり、考えが違う人たちが離れて行ってしまったりするというリスクのあるこのイベントに出演することを選んだこのバンド自身が何よりの「Braver」である。
テンポとしてはミッドテンポの曲であるが、シンペイは力の限りに振りかぶってドラムをぶっ叩き、OJは髪を振り乱しながらギターを弾き、ひなっちのベースはやはりゴリッゴリである。そのテンポには似つかわしくない演奏の強さは、この曲の持つメッセージを音で表すためには不可欠なものだ。ホリエがキーボードを弾くタイプのほかの曲とはそこが明らかに違う。
今でこそかつて2日連続でライブを見た時に全曲総とっかえしていたほどにガラッと変えることはなくなったが、ストレイテナーは毎回セトリを変えるバンドだ。そこには対バン相手に合わせたり、そのライブだからこそその曲を演奏するというバンド側の明確な姿勢があるからこそだが、この日イベントにおいては久々に演奏された「A LONG WAY TO NOWHERE」は明らかにそれを感じさせたし、それは演奏後のホリエの
「俺たちミュージシャンは幸せなことにいろんな場所に行って演奏することができて。そこでいろんな人と出会ったりすることで、その場所が特別な場所になっていく。その場所が奪われるのが怖い。ただそれだけ」
という言葉と、その後に久々に演奏された「NO 〜命の跡に咲いた花〜」からも感じられた。
ホリエの言葉はストレイテナーだけでなく、全てのツアーを行うアーティストに言えることだ。全国に行ってライブをすれば、その土地の人たちと関わらずにはいられない。ライブハウスのスタッフだったり、ライブ後の打ち上げの店の人だったり。我々のようにいつも同じ会社に行って仕事をしている人間よりも明らかにいろんな場所に住む、いろんな人たちと交流がある。そしてそれは年数を重ねるだけ増えていく。何度もその場所でライブをすれば、何回もその人たちと会える。ミュージシャンに原発に反対したり、災害に対してすぐアクションを見せる人が多いのはそう考えると当たり前のことだ。そこにいる人たちがどんな人たちか知っていて、それは大切な人たちなのだから。
まだライブでやるのが2回目という新曲「スパイラル」は「Braver」とは対称的にシンプルというか、ストレートなサウンド。それはあくまでホリエの歌を立たせようとしているからなのだろうし、その歌にはバンドを、音楽を続けていくことというテーマが含まれているように感じる。だからそれをしっかり伝えるためのアレンジになっているというか。
そしてラストは「REMINDER」。初期からのバンドの代表曲であるが、この日の演奏からは「決して忘れないように」というバンドからのメッセージであるかのように聞こえた。この日のライブも、震災や原発のことも。
ストレイテナーはそれこそ「Dear Deadman」期あたりまではMCすら全くしないバンドだったし、こうした社会的なメッセージを発信することに関してはかつてホリエが
「俺たちの世代のそういう役割はゴッチに任せる(笑)」
と言っていた。しかしそれは間違いなく変わってきている。その起点は「NO 〜命の跡に咲いた花〜」をリリースした時だったと思うのだが、いくらゴッチに任せたからと言っても全ての思想が同じわけではないし、長崎出身のホリエだからこそ言えることも確かにある。そしてその想いは活動を続けて、日本全国のたくさんの人と出会ったことで自分の口から発するという選択をすることになった。その姿はかつての全く喋らなかった頃よりも愛と優しさを感じることができる。
1.Melodic Storm
2.シーグラス
3.Braver
4.A LONG WAY TO NOWHERE
5.NO 〜命の跡に咲いた花〜
6.スパイラル
7.REMINDER
Braver
https://youtu.be/rvNlzyWVbGk
17:40〜 いとうせいこう is the poet
トークセッションでは司会者としてもさすがの仕切りを見せていた、いとうせいこう。このイベントではこれまでにもこうして枠を設けられた中で出演してきた通り、ここではミュージシャンとしての出演。
最初にいとうせいこうが1人で登場し、田中正造が遺した言葉を朗読すると、サポートメンバー2人がサンプラーとキーボードを駆使して電子音を奏で始め、その言葉は音の上に乗って我々の耳に届いていく。
しかもそのサポートのうちの1人はベースに持ち替え、さらにギターとドラムも登場してバンド編成に。セッション的な側面も強い演奏なのだが、サウンドはかなりダブ的な要素が濃い。
与謝蕪村など、いとうせいこうが詠むポエムはこの国の自然や環境を守るということに主題が置かれたもので、それがそのまま原発によって自然が壊されてはならないというメッセージになっていく。
ギターのメンバーがヴォコーダーを通して声すらも音として使ったり、キーボードのメンバーがシンセを弾いたりと曲というよりはその部分部分でパートを変えながらも、そうしたことができるメンバーが揃っているだけにやはりそこから生まれるグルーヴは凄まじいものがあるし、3曲演奏されたうちの最後の曲はダブというよりもそのグルーヴを生かしたダンサブルなもので、まさか偉人たちの遺した言葉たちがこんなにも身体的に機能する音楽に乗るとは全く思っていなかった。
トークショーでもテレビなどでおなじみの面白いおじさんらしさをうかがわせるツッコミを見せていたが、そもそもはいとうせいこうは日本のヒップホップのパイオニア的な人間のうちの1人である。(それは□□□に加入したことからもわかる)
この日のこのステージで見せた顔は間違いなくミュージシャンとしてのいとうせいこうのものであったし、この日の出演者の中では最も番組のスポンサーであったりというしがらみがあるであろうにもかかわらず、こうして自身の心情をストレートに発している。その姿勢はヒップホップでありパンクでもあるし、自身の中で何が1番大事なのかがわかっているのがよくわかる。
そしてドラムのオータコージ(曽我部恵一BANDなど)が凄まじいドラマーであるということがこのイベントでいとうせいこうの後ろで叩いているのを見るたびに実感する。
18:45〜 BRAHMAN
このイベントでは毎回おなじみのBRAHMAN。もはやロッキンオンのイベントやフェスにBRAHMANとして出演するのはこのイベントのみになりつつある。(毎回ロッキンにもCDJにもOverground Acoustic Undergroundでメンバーたちは出演している)
1週間前に釜石でライブを見たばかりであるが、この日はトークセッションで使ったスクリーンがステージ背面にあるだけに、そこにオープニング映像が投影され、最後には
「NO NUKES 2019 3/22」
というこの日限りの文字も映し出される。
先週は演奏していなかった「THE VOID」から始まるというあたりはさすがに1度もセトリが同じライブを見たことがないバンドであるが、「賽の河原」からは日本語歌詞の曲を連発していく。
TOSHI-LOWが右腕の筋肉を見せつける「付和雷同」、
「響くサイレンと シュプレヒコール」
という歌詞がエマージェンシー感を感じさせる「遠国」のアウトロからすぐさまイントロに切り替わった「BEYOND THE MOUNTAIN」といつにも増してテンポが速く感じるし、その場で座り込むようにして苦痛の顔を浮かべながらベースを弾くMAKOTOを含めて、やはりそこには原発に対する怒りのような感情を感じざるを得ないし、それは「不倶戴天」で最も炸裂していた。しかし最後の
「赦すってことだ」
というフレーズに合わせて突き立てた中指が人差し指とともにピースになるのは怒りだけでは何も解決しないというメッセージ(いとうせいこうもライブ中にそうしたポエムを詠んでいた)に感じる。
TOSHI-LOWが勢いよくステージに飛び込んだ「警醒」ではスクリーンにMVが映し出されたのだが、観客に支えられるTOSHI-LOWめがけて飛んでくるダイバーの数があまりに多すぎて振り払ったりすることができず、TOSHI-LOWの姿が見えなくなるという状況に。曲終わりで引っ張り上げられたが、そんな状況なだけに他に倒れたり起き上がれなかったりした人もいたようで、「鼎の問」での福島第一原発で作業をする人たちの映像とコメントが映し出されると、
「誰かがやらなきゃいけない。だったらお前が横にいるやつを立たせてあげればいいんじゃないか」
と、起き上がれていない人を助けるためのメッセージに咄嗟に変えていたのはさすがだ。
しかしこの「NO NUKES」で映像を見ながら聴く「鼎の問」はやはりいつもとはまた重みが全く違う。この人たちが住んでいた場所に帰れる日は来るんだろうか。映像の中に結婚式のシーンがあるように、あんな事故さえ起こっていなかったらこうして防護服に身を包んで作業することのない、ささやかなだけど幸せな人生があったんじゃないだろうか。そう思いながら見ていたら自然と涙が溢れそうになってしまった。
観客の上から最前列の柵の上にTOSHI-LOWが移動すると、
「あの人にも見せたかったなぁ。地球から生まれた力でクリーンな電気を100%使えるようになった日本の姿を、その電気で子供が冬に寒い思いをしたり、お年寄りが夏に熱中症で倒れたりしなくなった世の中を…」
と喋り始めたので、誰か近しい人が亡くなってしまったのか…と思っていたら、
「不慮の死を遂げた坂本龍一、ROCK IN JAPAN FES.の開催中に熱中症で死んだ渋谷陽一、後を追うように亡くなったいとうせいこうと難波章浩…年上連中がいなくなったから好きにできます(笑)」
と、このイベントではおなじみの教授が亡くなったネタについにいとうせいこうまでをも含めて重々しい空気を爆笑に変えてみせる。しかし、
「3月11日に福島県の双葉町の小学校に友達と2人で行った。原発の避難区域の小学校だ。2011年の3月11日、14時46分。その小学校ではモップかけをしていたらしい。綺麗に並べられた靴。きっと上履きを履いたままで避難したんだろう。あの学校はその日の写真でも見ているかのようにその時と全く変わらないままだった。
日本が原発をゼロにするのは俺たちの代では無理かもしれない。政府の大臣が天下りで電力会社の役員になるような国だ。その仕組みももしかしたら俺たちの時代では変わらないかもしれない。でも今の子供たちが故郷を奪われることなく、ちょっと飲みに行こうぜって言って友達と朝まで飲みに行けるような時代になりますように。その子供たちにこういう友達ができますように」
と最後にはやはりしっかりとまとめてみせると「今夜」を歌い始め、やはり途中からは細美武士がステージに登場してTOSHI-LOWとともに歌い始める。住む場所がなくなるということは、それまで一緒にいた友達とも会えなくなってしまうということ。震災がきっかけでこうして関係が深くなった2人だけれど、そうは思えないくらいにずっと一緒にいたかのようだ。
細美がステージから去ると最後に演奏されたのは「真善美」。
「一度きりの意味をお前が問う番だ」
というフレーズが響く中、先に楽器を置いてステージから去る中、TOSHI-LOWがマイクを落とすとその瞬間に場内が暗転。客電が点いて再び明るくなると、現実に引き戻されたかのように大きな拍手が起こった。
先週のライブのレポなどでも「BRAHMANはフェスとかに出ると強すぎる、ジョーカー的な存在」と書いたが、やはりこの日もそうだった。TOSHI-LOWのMCもそうだが、音の説得力が圧倒的過ぎる。MCだけが上手かったり強かったりするバンドだったらここまで圧倒的には思えない。それはそもそもがMCを全くしないストイックなバンドだからだろう。
1.THE VOID
2.賽の河原
3.付和雷同
4.AFTER-SENSATION
5.遠国
6.BEYOND THE MOUNTAIN
7.不倶戴天
8.警醒
9.鼎の問
10.今夜 w/ 細美武士
11.真善美
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
19:50〜 the HIATUS
この日のトリはthe HIATUS。かつてのこのイベントでは脱原発に向けてのメッセージを届けに来た、小泉純一郎元首相に細美武士が普通に喋りかけて、周りにいた人たちに
「なんでそんなことできんの!?」
と驚かせたこともあった。
リハでメンバー全員が出てきて感触を確かめるように曲を演奏すると、本編はきらめくようなキーボードのサウンドの「Clone」からスタート。やはり細美のボーカルはこの日も素晴らしいし、それはMONOEYESよりも、復活したELLEGARDENよりもthe HIATUSでこそ強く感じるのだが、細美がギターからキーボードにパートチェンジした「Sunset Off The Coastline」ではイントロで全く違う音が鳴ってしまい、「新曲か!?」と思ってしまうほど。
昨年末には「Monochrome Film Tour」という映像を使ったコンセプトの強いツアーを行っており、年末のフェスでもそのツアーのハイライト的な曲を演奏しており、それまでの定番曲がほとんど演奏されないという内容だったのだが、それは年が明けて3月になったこの日も同様。(そもそもELLEGARDENのライブは発表されているが、年が明けても特にthe HIATUSの活動について新しいアナウンスはないのだが)
それゆえにこの日もアッパーな曲は一切なく、映像こそないがじっくりと浸らせていくような曲が続いていく。
「がれきの海で 夢を見ていた」
という歌詞が震災を思い起こさせる(リリースされたのは震災の前だが)「西門の昧爽」も原曲とは全く異なるジャジーなアレンジになっている。
細美「今日、本当に楽しみにしてたんだ。TOSHI-LOWと久しぶりに会えるから。1週間会ってなかったんだ(笑)恋人だから(笑)
TOSHI-LOWは本当に強い男だから。俺みたいな弱いやつは毎日昨日よりもちょっとでも強くなろうと思ってるんだけど…。ウエノさん、先輩だけど1人だけTOSHI-LOWに殺されてなかったですね(笑)」
ウエノ「そもそもあいつに敬語を使われたことないから後輩っていう感じしないけどね(笑)
でもTOSHI-LOWは吉川晃司さんには敬語を使ってて、なんで?って聞いたら「俺も水球やってたから」だって(笑)」
細美「その意味で先輩だからっていうこと?(笑)
おっさんになると思うけど、やっぱり愛と勇気ですよ。次のNO NUKESは客席のこっち半分が原発賛成派で、こっち半分が反対派でやりたい。殴り合いになるかもしれないけど(笑)」
と相変わらずのTOSHI-LOWとのラブラブっぷりを見せつけると、「Radio」でさらに細美の声が凄みを増していくと、ラストの「Burn To Shine」ではまさに全てを燃えつくすかのような細美の絶唱っぷり。あまりに圧巻にして圧倒的だった。
アンコールでは細美が
「「グラビティ」っていう映画見たことある?その映画でジョージ・クルーニーが宇宙を漂流しながらカントリー音楽を流して、
「朝焼けに染まるガンジス川を見たことあるか?」
って言うんだけど、俺はその映画を見てインドに行ったんだけど。ガンジス川ってインドの人とは違って俺たちみたいな免疫の弱い人が入ると下痢になるって言われてて。だからチンコと股間が水につかないように膝だけ浸かったら、最後の一歩がぬかるんでてズルッと滑って全身浸かっちゃって(笑)
俺はガンジス川もナイル川もメコン川も行ったけど、本当にキレイだった。人生ってそういうもんでいいんじゃないかな。だから最後は、そういう曲で」
と言って演奏されたのは「Waiting For The Sun」。演奏を終えると、masasucksが渾身の笑顔で観客に応えていた。かつてのこのイベントではmasasucksによる
「俺たちで新しい日本を作っていこうぜ!」
という言葉が1日を締めたこともあった。それくらいにこのバンドは細美だけではなく、メンバー全員が強い意志を持ってこのイベントに臨んでいる。ともすればマニアック過ぎるセットリストでもあるのだが、決してそういう空気にならなかったのは演奏と歌の素晴らしさはもちろん、そこに込めた意志が確かにあるからだ。こんなに素晴らしいライブを見せたこのバンドの次のアクションは果たして。
リハ.Let Me Fall
1.Clone
2.Sunset Off The Coastline
3.Shimmer
4.Thirst
5.Unhurt
6.Tree Rings
7.西門の昧爽
8.Radio
9.Burn To Shine
encore
10.Waiting For The Sun
Clone
https://youtu.be/h9aLBoHFeOQ
アンコールが終わって客電がついてもさらなるアンコールを求める声は止まず、なんと坂本龍一、ゴッチ、細美武士、TOSHI-LOWの4人が挨拶のためにステージに登場すると、翌日に渋谷でライブがあるために会場に来れないというTOSHI-LOWが
「せっかくだから教授のピアノが聴きたいな〜。あそこにキーボードあるしな〜」
と焚きつけ、the HIATUSの伊澤のキーボードを使って「戦場のメリークリスマス」を弾くというサプライズ。かつてはオーガナイザーでありながら出演者としても名を連ねていたが、今となってはこうして演奏する姿を見れるのは実に貴重だ。TOSHI-LOWはステージから去る際に教授を拝むようにして去って行ったけれど(笑)
NO NUKESは終わった会計を公開しているから出演者にメリットが全然ないということがわかっているし、メンバーの誰か1人が違う考えを持っていたら出ることができないフェスだ。それはGotchやいとうせいこうというバンドメンバーではなくてサポートメンバーという立場の人でもそう。この日の出演者たちがみんな凄いライブバンドなのは原発に対する意志をメンバー全員が共有していて、それが音に出てるのは間違いなくあると思う。
細美武士は「やっぱり愛と勇気ですよ」と発言していたが、国会中継で映っているような人間からは自分はそれを全く感じることができない。もちろんこの日の出演者たちが全て正しいわけではないし、彼らは政治の専門家でもない。でもどちらを信じられるかって言われたら間違いなく自分は政治家なんかではなくこの日の出演者たちを選ぶだろう。彼らの姿や言葉からは愛と勇気を確かに感じることができるから。
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