[ALEXANDROS] Sleepless in Japan Tour @横浜アリーナ 3/12
- 2019/03/13
- 01:31
昨年11月にリリースされたアルバム「Sleepless in Brooklyn」を携え、12月からはライブハウスツアーを周り、そして今月からはアリーナツアーがスタートした、[ALEXANDROS]。
昨年8月にはマリンスタジアムでワンマンも行い、アルバムもそのスケールに見合うような壮大なサウンドスケープを手に入れていたが、それがアリーナでどう響くのか。前作のツアーでこの横浜アリーナで行われたワンマンも素晴らしかっただけに期待が高まる。
19時過ぎにJay-Zの「Empire State of Mind」のBGMの音が大きくなると、場内が暗転して「アルペジオ」のコーラス部分に切り替わり、ステージ背面にある[]の電飾に挟まれた3面のスクリーンにニューヨークであろう街の風景が映し出され、サポートメンバーのROSEを含めたメンバー紹介も含めた映画のオープニングのような映像が流れ始め、
「Sleepless in Yokohama」
の文字が浮かび上がると観客の期待は否が応でも高まっていく。
サトヤスがフォーマルな衣装、白井は髪を切っており、磯部は逆にまた毛量がかなり増えてきている中、最後に川上洋平が登場し、このツアーはもちろん、最近のこのバンドのオープニング曲として定着しつつある「LAST MINUTE」の穏やかかつ音数を絞ったサウンドが響き渡っていく。ステージ背面のスクリーンだけでなく、横浜アリーナの特徴の一つである場内中央の天井から下がるモニターにもメンバーが演奏する姿が映し出され、ステージから遠い距離の観客からもよく見えるのは嬉しいところである。これまでに数えきれないくらいにライブを見てきているが、一度も不安定なところを見たことがない川上のボーカルはこの日も最初のファルセットから実にキレイだ。
ライブタイトルからもわかるとおりに、このツアーは「Sleepless in Brooklyn」を引っさげてのものなので、当然そのアルバム曲を披露するツアーでもあるのだが、いきなり2曲目に1stアルバムの「She's Very」を入れてくるという嬉しいサプライズ。川上は少し歌い方を変えて歌ったりする部分もあったが、やはり「LAST MINUTE」の次に聴くとそのバンドサウンドのシンプルさと力強さが際立つ。
川上がステージ前にせり出した花道を進みながらイントロのギターを弾き始めると特効が炸裂するというアリーナ規模だからこその演出も早くも使う「Starrrrrrr」では観客の大合唱もやはりアリーナ規模の大きさに。まだ3曲目なのにこの曲を聴くと早くもクライマックス感すらある。それくらいにこのバンドのライブを担い続けてきた曲である。
イントロで磯部が叩くボンゴもかなり板についてきたというか、始めた当初よりも明らかに違和感がなくなってきている「I Don't Believe In You」ではROSEもキーボードではなくパッドを叩き、サンプラーまでも操るというマルチプレイヤーっぷり。このバンドがあらゆるジャンルやサウンドを取り込み、それをこうしてライブの場で自分たちの音として鳴らせるというのはこのROSEの存在が本当に大きい。
「KABUTO」のカップリングという地味な位置に収録されているとは思えないくらいの合唱を巻き起こした「Follow Me」、歯切れの良い川上のボーカルとバンドのサウンドがライブにさらなるスピード感をもたらす「Spit!」、川上と白井が暴れまわるようにギターを弾く「Girl A」と曲間をほとんど挟まないどころか、ほとんどの曲でアウトロとイントロが繋がるような流れるライブアレンジを施しているだけにやはりこのバンドのライブは実にテンポが良いし、それによってたくさんの曲が聴けるというのも実に嬉しい。
この日のステージセットはニューヨークの街並みをイメージしたものになっており、地下鉄の入り口からゴミ箱にいたるまで、かなり細かく再現されており、それがストリート的な淫靡なサウンドと照明によって隅々まで視認できるようになった「Come Closer」、川上に合わせて観客が腕を左右に振るのがこの規模だと圧巻の「Party Is Over」、
「地元・横浜に雪を降らせちゃっていいですかー!」
と川上が花道を歩いた先にある「DEAD END」という文字が床に描かれたセンターステージで歌いながら、雪が舞うような美しい映像がこれまたまだ前半なのにクライマックス感を感じさせる「SNOW SOUND」と、本当に選曲も幅が広いし、その選曲の幅広さによってこのバンドの持つ音楽性の幅広さも示していくと、歌い終わったはずの川上が再び「SNOW SOUND」のサビをアカペラで歌い始めたと思ったら、それを観客に合唱させる。合唱させた本人も
「こんなに高いキーの曲でこんなにデッカい合唱が起こるのは本当に素晴らしい!」
と驚くくらいの大合唱に、この曲がこのバンドのファンに歌詞も完璧に覚えられるくらいに深く浸透していることがわかる。
磯部を除く3人は神奈川県生まれであり、ある意味では地元凱旋となるのだが、横浜ではなく相模原出身なために微妙に地元ではないことをネタに笑いを誘う。このリラックスした雰囲気は「地元だから」ということであるが、アリーナの規模でも全く気負いがないし、この規模でライブをやるのが普通ですというくらいのリラックスさを感じさせる。
MCを挟んだ後はスクリーンに英語の歌詞が次々と映し出され、客席には巨大な風船がいくつも舞った「Kaiju」からは「MILK」「KABUTO」「Mosquito Bite」と「Sleepless in Brooklyn」で獲得した重厚なリフで押すロックンロールを連発。とりわけ「Mosquito Bite」の大合唱と、ライブならではの長いアウトロアレンジを演奏した後に川上と白井が拳を合わせる姿はあまりにもカッコよくて胸が熱くなる。
直前の曲たちではそのギターのリフで曲を牽引していた白井がフライングVを手にするとそれを担いでセンターステージまで歩き、そのままそこで演奏を始めた「Kick & Spin」はサトヤスがキックを追加してさらにダンサブルなサウンドになり、川上はタオルを頭に被せてステージ上手から伸びたサイドの花道へ、磯部は逆サイドへと自由自在なフォーメーションで展開していく。この辺りもアリーナクラスでのライブを重ねてきたバンドだからこそのエンターテイメントという印象だ。
すると川上が1人でセンターステージに移動し、いったんほかのメンバーはステージから捌けていく。
「俺はライブで煽ったりするけど、自分がライブを観に行ってる時は拍手以外は何にもしないタイプだから、みんなも俺が手を振ったりしても合わせたくないなら合わせなくていいから!自由に最後まで楽しもう!」
とどんなスタイルの楽しみ方をしても絶対楽しませてやるというライブに対する絶対的な自信がうかがえる発言の後に1人でアコギを弾きながら歌い始めたのは「You're So Sweet & I Love You」。
最初は川上の弾き語りなのかな?と思っていたら1番のサビを歌い終わったところで白井が後ろから現れ、普段とは逆サイドの下手でギターを弾き始め、その後にROSEが加わってキーボードが、サトヤスが加わって、センターステージ上空から降りてくるという衝撃的なセッティングがなされた、普段のよりもはるかにシンプルなドラムセットを叩き、最後に磯部が加わってベースとコーラスが重なる。その1人ずつ曲に参加していくという演出はその人の鳴らす音が加わるとこう変化するというのを実にわかりやすく教えてくれたし、弾き語り的な形であっても、バンドのサウンドになってもこの曲がアリーナクラスのスケールを持ち合わせていたということでもある。
実際に自分も「city」に続いてシングルリリースされたこの曲でこのバンドがこの規模までいくだろうな、と確信した曲であるだけにこうして実際にアリーナの規模で聴けるのは実に感慨深い。
そのままセンターステージで「明日、また」を演奏するとメインステージに戻りながら「NEW WALL」を演奏。もはやこのあたりでライブが終わっても全くおかしくないくらいのキラーチューンの連発っぷりだが、まだまだライブは続くとばかりに磯部が再びボンゴを叩くと、白井までもが用意されたパーカッションをスティックと手で叩きまくるという新機軸を見せ、それがより一層曲のトライバル感を引き出した「Fish Tacos Party」でまさにパーティーというくらいの熱狂を生み出していく。
するとROSEがキーボードをゆっくりと弾く中、スクリーンには少女がプレゼントの箱を開ける映像が。「Your Song」の演奏が始まると、中には懐かしのCDウォークマンが入っており、そこにセットされたのは「Sleepless in Brooklyn」。CDケースに手足が生え、少女といつも一緒にいる存在というのはこの曲の歌詞の通りだが、少女が成長してスマホで音楽を聴くようになったことでCDは少女から手に取ってもらえなくなっていってしまう。
しかし少女が就活の面接で失敗して落ち込んでいる時にCDが優しいメロディを奏で、少女はかつてずっと一緒に過ごしていたCDウォークマンを手に取る。
「I'll be by your side
君のそばで鳴るよ
世界中の誰もが敵でも 僕は味方さ」
という歌詞の通りに。そして彼女はカーテンを開け、また新しい1日に向かっていくという、もうこれをそのままこの曲のMVにした方がいいという映像。
「横浜の声を聞かせてよ」
と歌詞を変えていた川上の歌い方も優しく包み込むようなものになっていたのは間違いなくこの曲に合わせたものだろう。
今の若い人はCDウォークマンという存在すらももしかしたら知らないかもしれない。しかし自分はこの映像の少女と同じように幼少時代にCDウォークマンをプレゼントしてもらい、当時買ったCDを何度も何度も聴いていた。持ち運ぶには少し大きかったし、CDを何枚も持ち歩かなければならなかったけど、そうした経験をしていたからこの映像を見てぼろぼろと泣いてしまった。
普段から家ではCDプレイヤーで音楽を聴いているが、久しぶりにCDウォークマンを探してまた外でもCDを聴きたくなったし、すごいスピードで音楽の聴き方が変わっている世の中だけど、自分で手に取れるものだからこそ感じることができる感情が確かにある。それはもしかしたらメンバーたちもかつてそうした経験があったのかもしれない。
必ずしもCDで聴くのが1番いい聴き方というわけではないし、メンバーはどんな形であっても自分たちの曲を聴いてくれたら嬉しいと思うだろうけど、自分はCDを買って音楽を聴くという音楽との付き合い方をしてきたし、だから「Sleepless in Brooklyn」を始めとして、家にはCDが何千枚とある。今までもそれら1つ1つを大事にしてきたつもりだけど、この映像を見て改めてそう思った。
中盤まではアリーナという会場で真価を発揮するのはリフをメインにしたロックンロールな曲だと思っていたし、それも間違いではなかったのだが、最もこの日真価を発揮していたのは間違いなく「Your Song」だった。この曲が持っているメッセージの通りに、このツアーを見に来た人にとっては、この曲がより一層大事な自分の曲になっていくはずだ。
そんな感動的な流れを切るように川上が
「あと2曲です!」
と告げると、その川上がステージ両サイドを歩きながら歌う「Adventure」ではROCK IN JAPAN FES.やCOUNTDOWN JAPANでもおなじみの、カメラの目の前で歌いながらそのカメラを客席の方に向けるという川上カメラ(勝手にそう呼んでいる)もアリーナ規模だからこそ見れる演出。「Your Song」同様にここでも川上は「横浜」というご当地バージョンに歌詞を変えてみせる。
そしてラストに演奏されたのはオープニングでコーラスが流れていた「アルペジオ」。そのコーラス部分ではやはり大合唱が巻き起こったのだが、演奏自体はちょっとズレていた気がするのは気のせいだろうか。
アンコールでは「Burger Queen」のSEが流れてここからまたライブが始まるかのような雰囲気に。磯部はジャケットからTシャツ姿に着替えており、そのSEをそのまま生演奏に切り替えるように「Burger Queen」を途中から演奏し、そのままこの横浜でMVを撮影した「city」を生まれた場所にある会場で鳴らす。とりわけこの横浜アリーナは位置や周りの景色がまさに「都市」と言っていいような会場なだけにより一層この曲がこの場所のための曲であるかのように響く。
すると再びドラムセットとキーボードが上空からセンターステージへ降りてきて、それを見た磯部は
「収納する空間がないので高さを使うという日本的な手法を使っております」
と解説しながら再びメンバー全員でセンターステージへ。
やはり磯部と白井はセンターステージだと立ち位置が逆になる中、白井は人生で初めてライブを見たのがこの会場で行われた、BLANKY JET CITYの解散ライブだったことを語り、「city」を演奏した時に使ったギターは浅井健一がそのライブで弾いていたのと同じものであること、今の自分の年齢が当時の浅井健一と同じであることを語るが、川上からは
「解散ライブをした時と年齢が同じって言うから、解散するって言うのかと思った(笑)」
と突っ込まれていた。その川上は改めて横浜を地元であると宣言し、「city」の弟的な曲だという「ハナウタ」を披露。「city」の弟的な存在ということはこの曲もまたこの横浜が故郷ということになるのだろうか。
川上が客席のかなり遠くまでピックを投げたりしていただけに、さすがにこれで終わりかな?と思っていたが、先にステージから去ったと思われたメンバーたちはメインステージで川上が戻るのを待っており、川上が戻って演奏されたのはやはり「ワタリドリ」。
おそらく今のこのバンド最大の代表曲と言える曲であるが、正直言ってこの曲をやらなかったとしても全然物足りなさはなかった。(実際にここまでにやっていなかったことを忘れていた)
でもやっぱりこのバンドはこの曲をやる。この曲を聴きたい人がたくさんいるということをわかっているから。アリーナならではの演出や特効もたくさん使ったが、やはり核にあるのはこのバンドの音楽なのである。音楽と演奏が最大のエンターテイメントになっているからこそ、このバンドはアリーナでもライブハウスでも強いし、それはライブを重ねるごとに未だに進化を果たしているから、これからもちょっとでも見逃したくない。
メンバーがステージから去ると、最近のライブではおなじみの楽屋での映像がスクリーンに流れる。川上と磯部が休暇を取って旅行をしようと話し合っている横で弁当を開ける白井。それは崎陽軒のシュウマイ弁当であり、1つもらった川上が
「美味い!」
と言って地元・横浜の名物を讃えると、アメコミ風のエンディング映像が流れた。なんだか本当に映画を見ているようだったけれど、映像ではなくて目の前で役者たちが演技をしているかのような。やっぱりその臨場感こそがロックバンドのライブの醍醐味なのだ。
ライブハウス編でのレポで自分は
「ライブハウスで見るこのバンドのライブは最高だったけど、アリーナで見たらアリーナで見るこのバンドのライブも最高、って思うんだろうな」
と書いたけれど、やはりその通りだった。ライブハウスを燃え上がらせる衝動とアリーナを制圧するスケール。さらには「Your Song」での感動という新たな武器までも手にした[ALEXANDROS]は間違いなく今が最強の状態だ。6月の埼玉までこの旅は続くけれど、こんなライブを見たらやっぱりSleeplessになってしまうに決まってるじゃないか。
1.LAST MINUTE
2.She's Very
3.Starrrrrrr
4.I Don't Believe In You
5.Follow Me
6.Spit!
7.Girl A
8.Come Closer
9.Party Is Over
10.SNOW SOUND
11.Kaiju
12.MILK
13.KABUTO
14.Mosquito Bite
15.Kick & Spin
16.Your So Sweet & I Love You
17.明日、また
18.NEW WALL
19.Fish Tacos Party
20.Your Song
21.Adventure
22.アルペジオ
encore
23.Burger Queen
24.city
25.ハナウタ
26.ワタリドリ
アルペジオ
https://youtu.be/uHxwO3mGpLU
Next→ 3/15 Base Ball Bear @Zepp DiverCity
昨年8月にはマリンスタジアムでワンマンも行い、アルバムもそのスケールに見合うような壮大なサウンドスケープを手に入れていたが、それがアリーナでどう響くのか。前作のツアーでこの横浜アリーナで行われたワンマンも素晴らしかっただけに期待が高まる。
19時過ぎにJay-Zの「Empire State of Mind」のBGMの音が大きくなると、場内が暗転して「アルペジオ」のコーラス部分に切り替わり、ステージ背面にある[]の電飾に挟まれた3面のスクリーンにニューヨークであろう街の風景が映し出され、サポートメンバーのROSEを含めたメンバー紹介も含めた映画のオープニングのような映像が流れ始め、
「Sleepless in Yokohama」
の文字が浮かび上がると観客の期待は否が応でも高まっていく。
サトヤスがフォーマルな衣装、白井は髪を切っており、磯部は逆にまた毛量がかなり増えてきている中、最後に川上洋平が登場し、このツアーはもちろん、最近のこのバンドのオープニング曲として定着しつつある「LAST MINUTE」の穏やかかつ音数を絞ったサウンドが響き渡っていく。ステージ背面のスクリーンだけでなく、横浜アリーナの特徴の一つである場内中央の天井から下がるモニターにもメンバーが演奏する姿が映し出され、ステージから遠い距離の観客からもよく見えるのは嬉しいところである。これまでに数えきれないくらいにライブを見てきているが、一度も不安定なところを見たことがない川上のボーカルはこの日も最初のファルセットから実にキレイだ。
ライブタイトルからもわかるとおりに、このツアーは「Sleepless in Brooklyn」を引っさげてのものなので、当然そのアルバム曲を披露するツアーでもあるのだが、いきなり2曲目に1stアルバムの「She's Very」を入れてくるという嬉しいサプライズ。川上は少し歌い方を変えて歌ったりする部分もあったが、やはり「LAST MINUTE」の次に聴くとそのバンドサウンドのシンプルさと力強さが際立つ。
川上がステージ前にせり出した花道を進みながらイントロのギターを弾き始めると特効が炸裂するというアリーナ規模だからこその演出も早くも使う「Starrrrrrr」では観客の大合唱もやはりアリーナ規模の大きさに。まだ3曲目なのにこの曲を聴くと早くもクライマックス感すらある。それくらいにこのバンドのライブを担い続けてきた曲である。
イントロで磯部が叩くボンゴもかなり板についてきたというか、始めた当初よりも明らかに違和感がなくなってきている「I Don't Believe In You」ではROSEもキーボードではなくパッドを叩き、サンプラーまでも操るというマルチプレイヤーっぷり。このバンドがあらゆるジャンルやサウンドを取り込み、それをこうしてライブの場で自分たちの音として鳴らせるというのはこのROSEの存在が本当に大きい。
「KABUTO」のカップリングという地味な位置に収録されているとは思えないくらいの合唱を巻き起こした「Follow Me」、歯切れの良い川上のボーカルとバンドのサウンドがライブにさらなるスピード感をもたらす「Spit!」、川上と白井が暴れまわるようにギターを弾く「Girl A」と曲間をほとんど挟まないどころか、ほとんどの曲でアウトロとイントロが繋がるような流れるライブアレンジを施しているだけにやはりこのバンドのライブは実にテンポが良いし、それによってたくさんの曲が聴けるというのも実に嬉しい。
この日のステージセットはニューヨークの街並みをイメージしたものになっており、地下鉄の入り口からゴミ箱にいたるまで、かなり細かく再現されており、それがストリート的な淫靡なサウンドと照明によって隅々まで視認できるようになった「Come Closer」、川上に合わせて観客が腕を左右に振るのがこの規模だと圧巻の「Party Is Over」、
「地元・横浜に雪を降らせちゃっていいですかー!」
と川上が花道を歩いた先にある「DEAD END」という文字が床に描かれたセンターステージで歌いながら、雪が舞うような美しい映像がこれまたまだ前半なのにクライマックス感を感じさせる「SNOW SOUND」と、本当に選曲も幅が広いし、その選曲の幅広さによってこのバンドの持つ音楽性の幅広さも示していくと、歌い終わったはずの川上が再び「SNOW SOUND」のサビをアカペラで歌い始めたと思ったら、それを観客に合唱させる。合唱させた本人も
「こんなに高いキーの曲でこんなにデッカい合唱が起こるのは本当に素晴らしい!」
と驚くくらいの大合唱に、この曲がこのバンドのファンに歌詞も完璧に覚えられるくらいに深く浸透していることがわかる。
磯部を除く3人は神奈川県生まれであり、ある意味では地元凱旋となるのだが、横浜ではなく相模原出身なために微妙に地元ではないことをネタに笑いを誘う。このリラックスした雰囲気は「地元だから」ということであるが、アリーナの規模でも全く気負いがないし、この規模でライブをやるのが普通ですというくらいのリラックスさを感じさせる。
MCを挟んだ後はスクリーンに英語の歌詞が次々と映し出され、客席には巨大な風船がいくつも舞った「Kaiju」からは「MILK」「KABUTO」「Mosquito Bite」と「Sleepless in Brooklyn」で獲得した重厚なリフで押すロックンロールを連発。とりわけ「Mosquito Bite」の大合唱と、ライブならではの長いアウトロアレンジを演奏した後に川上と白井が拳を合わせる姿はあまりにもカッコよくて胸が熱くなる。
直前の曲たちではそのギターのリフで曲を牽引していた白井がフライングVを手にするとそれを担いでセンターステージまで歩き、そのままそこで演奏を始めた「Kick & Spin」はサトヤスがキックを追加してさらにダンサブルなサウンドになり、川上はタオルを頭に被せてステージ上手から伸びたサイドの花道へ、磯部は逆サイドへと自由自在なフォーメーションで展開していく。この辺りもアリーナクラスでのライブを重ねてきたバンドだからこそのエンターテイメントという印象だ。
すると川上が1人でセンターステージに移動し、いったんほかのメンバーはステージから捌けていく。
「俺はライブで煽ったりするけど、自分がライブを観に行ってる時は拍手以外は何にもしないタイプだから、みんなも俺が手を振ったりしても合わせたくないなら合わせなくていいから!自由に最後まで楽しもう!」
とどんなスタイルの楽しみ方をしても絶対楽しませてやるというライブに対する絶対的な自信がうかがえる発言の後に1人でアコギを弾きながら歌い始めたのは「You're So Sweet & I Love You」。
最初は川上の弾き語りなのかな?と思っていたら1番のサビを歌い終わったところで白井が後ろから現れ、普段とは逆サイドの下手でギターを弾き始め、その後にROSEが加わってキーボードが、サトヤスが加わって、センターステージ上空から降りてくるという衝撃的なセッティングがなされた、普段のよりもはるかにシンプルなドラムセットを叩き、最後に磯部が加わってベースとコーラスが重なる。その1人ずつ曲に参加していくという演出はその人の鳴らす音が加わるとこう変化するというのを実にわかりやすく教えてくれたし、弾き語り的な形であっても、バンドのサウンドになってもこの曲がアリーナクラスのスケールを持ち合わせていたということでもある。
実際に自分も「city」に続いてシングルリリースされたこの曲でこのバンドがこの規模までいくだろうな、と確信した曲であるだけにこうして実際にアリーナの規模で聴けるのは実に感慨深い。
そのままセンターステージで「明日、また」を演奏するとメインステージに戻りながら「NEW WALL」を演奏。もはやこのあたりでライブが終わっても全くおかしくないくらいのキラーチューンの連発っぷりだが、まだまだライブは続くとばかりに磯部が再びボンゴを叩くと、白井までもが用意されたパーカッションをスティックと手で叩きまくるという新機軸を見せ、それがより一層曲のトライバル感を引き出した「Fish Tacos Party」でまさにパーティーというくらいの熱狂を生み出していく。
するとROSEがキーボードをゆっくりと弾く中、スクリーンには少女がプレゼントの箱を開ける映像が。「Your Song」の演奏が始まると、中には懐かしのCDウォークマンが入っており、そこにセットされたのは「Sleepless in Brooklyn」。CDケースに手足が生え、少女といつも一緒にいる存在というのはこの曲の歌詞の通りだが、少女が成長してスマホで音楽を聴くようになったことでCDは少女から手に取ってもらえなくなっていってしまう。
しかし少女が就活の面接で失敗して落ち込んでいる時にCDが優しいメロディを奏で、少女はかつてずっと一緒に過ごしていたCDウォークマンを手に取る。
「I'll be by your side
君のそばで鳴るよ
世界中の誰もが敵でも 僕は味方さ」
という歌詞の通りに。そして彼女はカーテンを開け、また新しい1日に向かっていくという、もうこれをそのままこの曲のMVにした方がいいという映像。
「横浜の声を聞かせてよ」
と歌詞を変えていた川上の歌い方も優しく包み込むようなものになっていたのは間違いなくこの曲に合わせたものだろう。
今の若い人はCDウォークマンという存在すらももしかしたら知らないかもしれない。しかし自分はこの映像の少女と同じように幼少時代にCDウォークマンをプレゼントしてもらい、当時買ったCDを何度も何度も聴いていた。持ち運ぶには少し大きかったし、CDを何枚も持ち歩かなければならなかったけど、そうした経験をしていたからこの映像を見てぼろぼろと泣いてしまった。
普段から家ではCDプレイヤーで音楽を聴いているが、久しぶりにCDウォークマンを探してまた外でもCDを聴きたくなったし、すごいスピードで音楽の聴き方が変わっている世の中だけど、自分で手に取れるものだからこそ感じることができる感情が確かにある。それはもしかしたらメンバーたちもかつてそうした経験があったのかもしれない。
必ずしもCDで聴くのが1番いい聴き方というわけではないし、メンバーはどんな形であっても自分たちの曲を聴いてくれたら嬉しいと思うだろうけど、自分はCDを買って音楽を聴くという音楽との付き合い方をしてきたし、だから「Sleepless in Brooklyn」を始めとして、家にはCDが何千枚とある。今までもそれら1つ1つを大事にしてきたつもりだけど、この映像を見て改めてそう思った。
中盤まではアリーナという会場で真価を発揮するのはリフをメインにしたロックンロールな曲だと思っていたし、それも間違いではなかったのだが、最もこの日真価を発揮していたのは間違いなく「Your Song」だった。この曲が持っているメッセージの通りに、このツアーを見に来た人にとっては、この曲がより一層大事な自分の曲になっていくはずだ。
そんな感動的な流れを切るように川上が
「あと2曲です!」
と告げると、その川上がステージ両サイドを歩きながら歌う「Adventure」ではROCK IN JAPAN FES.やCOUNTDOWN JAPANでもおなじみの、カメラの目の前で歌いながらそのカメラを客席の方に向けるという川上カメラ(勝手にそう呼んでいる)もアリーナ規模だからこそ見れる演出。「Your Song」同様にここでも川上は「横浜」というご当地バージョンに歌詞を変えてみせる。
そしてラストに演奏されたのはオープニングでコーラスが流れていた「アルペジオ」。そのコーラス部分ではやはり大合唱が巻き起こったのだが、演奏自体はちょっとズレていた気がするのは気のせいだろうか。
アンコールでは「Burger Queen」のSEが流れてここからまたライブが始まるかのような雰囲気に。磯部はジャケットからTシャツ姿に着替えており、そのSEをそのまま生演奏に切り替えるように「Burger Queen」を途中から演奏し、そのままこの横浜でMVを撮影した「city」を生まれた場所にある会場で鳴らす。とりわけこの横浜アリーナは位置や周りの景色がまさに「都市」と言っていいような会場なだけにより一層この曲がこの場所のための曲であるかのように響く。
すると再びドラムセットとキーボードが上空からセンターステージへ降りてきて、それを見た磯部は
「収納する空間がないので高さを使うという日本的な手法を使っております」
と解説しながら再びメンバー全員でセンターステージへ。
やはり磯部と白井はセンターステージだと立ち位置が逆になる中、白井は人生で初めてライブを見たのがこの会場で行われた、BLANKY JET CITYの解散ライブだったことを語り、「city」を演奏した時に使ったギターは浅井健一がそのライブで弾いていたのと同じものであること、今の自分の年齢が当時の浅井健一と同じであることを語るが、川上からは
「解散ライブをした時と年齢が同じって言うから、解散するって言うのかと思った(笑)」
と突っ込まれていた。その川上は改めて横浜を地元であると宣言し、「city」の弟的な曲だという「ハナウタ」を披露。「city」の弟的な存在ということはこの曲もまたこの横浜が故郷ということになるのだろうか。
川上が客席のかなり遠くまでピックを投げたりしていただけに、さすがにこれで終わりかな?と思っていたが、先にステージから去ったと思われたメンバーたちはメインステージで川上が戻るのを待っており、川上が戻って演奏されたのはやはり「ワタリドリ」。
おそらく今のこのバンド最大の代表曲と言える曲であるが、正直言ってこの曲をやらなかったとしても全然物足りなさはなかった。(実際にここまでにやっていなかったことを忘れていた)
でもやっぱりこのバンドはこの曲をやる。この曲を聴きたい人がたくさんいるということをわかっているから。アリーナならではの演出や特効もたくさん使ったが、やはり核にあるのはこのバンドの音楽なのである。音楽と演奏が最大のエンターテイメントになっているからこそ、このバンドはアリーナでもライブハウスでも強いし、それはライブを重ねるごとに未だに進化を果たしているから、これからもちょっとでも見逃したくない。
メンバーがステージから去ると、最近のライブではおなじみの楽屋での映像がスクリーンに流れる。川上と磯部が休暇を取って旅行をしようと話し合っている横で弁当を開ける白井。それは崎陽軒のシュウマイ弁当であり、1つもらった川上が
「美味い!」
と言って地元・横浜の名物を讃えると、アメコミ風のエンディング映像が流れた。なんだか本当に映画を見ているようだったけれど、映像ではなくて目の前で役者たちが演技をしているかのような。やっぱりその臨場感こそがロックバンドのライブの醍醐味なのだ。
ライブハウス編でのレポで自分は
「ライブハウスで見るこのバンドのライブは最高だったけど、アリーナで見たらアリーナで見るこのバンドのライブも最高、って思うんだろうな」
と書いたけれど、やはりその通りだった。ライブハウスを燃え上がらせる衝動とアリーナを制圧するスケール。さらには「Your Song」での感動という新たな武器までも手にした[ALEXANDROS]は間違いなく今が最強の状態だ。6月の埼玉までこの旅は続くけれど、こんなライブを見たらやっぱりSleeplessになってしまうに決まってるじゃないか。
1.LAST MINUTE
2.She's Very
3.Starrrrrrr
4.I Don't Believe In You
5.Follow Me
6.Spit!
7.Girl A
8.Come Closer
9.Party Is Over
10.SNOW SOUND
11.Kaiju
12.MILK
13.KABUTO
14.Mosquito Bite
15.Kick & Spin
16.Your So Sweet & I Love You
17.明日、また
18.NEW WALL
19.Fish Tacos Party
20.Your Song
21.Adventure
22.アルペジオ
encore
23.Burger Queen
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26.ワタリドリ
アルペジオ
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