THE BAWDIES OFFICIAL MOBILE 会員限定ライブ 「代打!THE BAWDIES」 @下北沢SHELTER 3/3
- 2019/03/03
- 23:47
急遽決定した、THE BAWDIESのモバイル会員限定ライブ。当然ながら会場は武道館でワンマンを行なっているアーティストとしては激狭、バンドサイドが「超接近戦」と称する下北沢SHELTER。THE BAWDIESがこの会場でライブをするのは実に8年ぶりである。
この日のライブタイトルが「代打!THE BAWDIES」という意味深なものであり、ゲスト有りでありながらもゲストが当日まで発表されないという状態。この日限定で物販で販売されたTシャツに「55」という番号が刻まれた意味とは…。
ゲスト有りでありながらも、ステージにセッティングされた機材は紛れもなくTHE BAWDIESのもの。「ゲストとは…?」という感じもするが、日曜日のライブにしては珍しい19時の開演時間になると会場が暗転し、流れ始めたSEはおなじみの「SOUL MAN」で、いつものように黒いスーツに身を包んだTHE BAWDIESのメンバーが登場。
やはり今のTHE BAWDIESにとってはキャパ的には非常に小さい会場であるがゆえに、
「ステージと距離が近いけれど周りの人とも近すぎてステージがよく見えない」
というのが始まる前の状況だったのだが、それはメンバーが登場してガッと観客がステージ側に押し寄せると、ドラムのMARCY以外はしっかりと見えるように。
そのくらいの超接近戦ということで、「A NEW DAY IS COMIN'」で始まると、
「la la la …」
のコーラスで観客が大合唱するのが実によく聞こえる。基本的にモバイル会員限定ライブということでTHE BAWDIESの曲を熟知している人しかいないがゆえでもあるだろうけれど、熱気が本当に凄まじい。毎回ライブに行っていてもこんなにメンバーを近くで見れる機会というのはそうそうないだけに、その熱気も非常によくわかるけれど。
おなじみのROYのロングシャウトは聞くたびに長く、そして強くなっている(その際にTAXMANがROYをアピールする動きも派手になっているように見える)「IT'S TOO LATE」など序盤からJIMは客席最前列の柵に足をかけて、自身のギターを観客に触られるのも厭わないくらいにゼロ距離でギターを弾きまくる。そんな距離だけに普段はなかなかそうは感じない、メンバーが明らかにこっちを見たな、という目線も感じることができるし、そうして楽しんでいる観客の顔を見てメンバーもさらに楽しく演奏しているように見える。
メンバーと観客による大合唱も含めて客席を揺らしまくった「NO WAY」を終えると、早くも汗を流しまくっているJIMにROYとTAXMANがツッコミを入れながら、先日のKEYTALKとの新代田FEVERでの対バンの際にも話した、
「ROYが入り待ちしている他のバンドのファンの人に話しかけられたくて仕方がない」
というネタから、
「今日はホームだからね。スポーツでもホームゲームの方が力が出るのがわかりますね」
という最近は招かれた側での対バンが多かった(前日にはOfficial髭男dismに招かれての対バンライブだった)が故に久々のホーム感を感じていると、MARCYが酸欠で気絶しているという明らかに安い三文芝居が始まり、MARCYがスタッフに抱えられながら退場。(MARCYも抱えられながら笑っていた)
「大変だ!この中に、ドラムを叩ける方はいらっしゃいませんか!?」
とROYが客席に問いかけると、
「ここにいるぜー!」
と言って観客の入り口から現れたのは、go! go! vanillasのドラマーであるジェットセイヤ。客席をかき分け、最後には上を泳がされるような形でステージまで達すると、ハットとサングラスこそいつもの通りではあれど、THE BAWDIESに合わせた黒いスーツという姿はいつもよりも大人らしさを感じさせる。
そのセイヤがドラムセットに座ると、演奏されたのはもちろんバニラズの「カウンターアクション」をTHE BAWDIESが英語でカバーした「COUNTER ACTION」。2組のスプリット盤をリリースした後の2マンツアーでも披露されていたが、THE BAWDIESのカバーはどんな曲であれ思いっきり「THE BAWDIESでしかないもの」に変わる。それは海外のロックンロールやソウルミュージックのカバーアルバム「GOING BACK HOME」においてもそうだったし、盟友であるthe telephonesの「sick rocks」をカバーした時もそうだった。
カバーした曲の中ではgo! go! vanillasは最もTHE BAWDIESに近い音楽性の、いわゆるロックンロールバンドであるが、それでもTHE BAWDIESにかかればガレージロック感が何倍にも増したものになる。普段自分たちが演奏しているバージョンとは異なる、THE BAWDIESバージョンにもしっかり合わせられるセイヤもさすがである。
セイヤが去るとMARCYが何事もなかったかのように笑顔でステージに戻り、新たなギターサウンドを取り入れながらもロックンロールであることは失われていない「FEELIN' FREE」、これぞTHE BAWDIESど真ん中のロックンロールな「THE EDGE」と、THE BAWDIESがロックンロールに転がり続けていくという意志を示した曲が続く。
そんな中でTAXMANがボーカルを取るのはツービートのパンクな「SO LONG SO LONG」。まるでロックンロールバンドをやるために生まれてきたかのような喉と声を持つROYとの対比のようにTAXMANボーカルはさわやかな曲が多いが、この曲ではパンクなサウンドに合わせるかのように荒々しい。それはこうした近距離でのライブハウスだからこそより一層映えるものである。
すると突然メンバー間で
「お前の足が太いから邪魔なんだよ!」
とTAXMANがROYにキレ始め、それを発端にJIMとMARCYも加わってケンカが始まるという茶番に。結局ROYを残して3人は裏にケンカしに行き、残されたROYが
「どうしよう。次の曲はアカペラで歌わなきゃいけないのかな?」
とオロオロしていると、突如アコギの音ともにスーツ姿のスタイルの良い男がステージに現れる。それはgo! go! vanillasのギタリストの柳沢進太郎であり、そのままROYと進太郎の2人で「LEMONADE」をコラボ。
編成的には弾き語りと言ってもおかしくないようなものであるが、だからこそROYのボーカルの力強さだけではない上手さや曲に応じて表情を変えることができる、かつて自身で
「喉の開き方や締め方を変えることによって、エフェクターみたいに声を変えることができるんです」
と言っていたこの喉の至宝っぷりを実感させてくれる。
しかし目立つのはROYだけでなく、進太郎もファルセットコーラスによって、JIMやTAXMANとは違う角度からこの曲を引き立てる。この辺りはgo! go! vanillasでも発揮されている進太郎のギタリストとしてだけではない魅力であるし、もともとバニラズ加入前はメインボーカリストであった進太郎のポテンシャルの高さを改めて感じさせた。
曲が終わるといつのまにかステージから居なくなっていた進太郎に変わって、先ほどケンカをしていた3人が肩を組んで仲睦まじく再登場。いわく
「裏で「LEMONADE」を聴いてたらどうでもよくなっちゃった!」
とのことで、珍しく3人がROYの歌を称えるという場面も。
「やっぱりバンドって良いよね!」
とわざとらしくもありながら紛れもなく本心でもあるであろうことをTAXMANが言うと、そうして精神が通じ合っているからこそROYとのツインボーカルがより一層バンドマジックを感じさせるように聞こえる「KICKS!」から、ストリングス隊とともに演奏された武道館ワンマンとは違い、4人だけでこの近さで演奏されるからこそメロディの良さに気付く最新シングル「HAPPY RAYS」、その幸せのシャワーが降り続けるようにミラーボールが回る「KEEP YOUR HAPPY」と、激しいロックンロールだけではない、THE BAWDIESの名曲と言えるサイドの曲が続く。
すると
「今日は特別な日だから、この曲を!」
と言ってJIMのギターが奏で始めたのは、なんとgo! go! vanillas「平成ペイン」のイントロ。それに合わせてマイクを持ってステージに現れたのはもちろん、バニラズのボーカルの牧達弥。先輩というかアニキ的な存在のTHE BAWDIESの演奏で牧とROYが歌う「平成ペイン」は「COUNTER ACTION」のガレージ感溢れるアレンジとは異なり、原曲に忠実なというか、ほぼ完コピ。TAXMANもギターだけでなくコーラスも務めていたあたりは急造カバーではなくて普段から演奏しているかのような慣れた感じがあったが、普段はギターを弾きながら歌うだけに動くことができない牧は鎖から解き放たれた犬のようにステージを左右に動き回り、さらには天井に手を突いて観客の上に被さるような形で歌うくらいの自由っぷり。これは普段のバニラズのライブでのこの曲では見ることができないものだ。
この曲を易々と演奏しているように見えるTHE BAWDIESもさすがだが、やはり兄弟の契りを交わしているバンド同士であり、ともに全国を回った存在であるだけに、THE BAWDIESのファンしかいないこの日の客席であってもみんなこの曲をちゃんと知っていて、サビではみんなが声を合わせて歌っていた。それくらいにバンド同士だけでなく、ファンもリスペクトを寄せる両者であるがゆえに、
「本当は今日はgo! go! vanillasがこの下北沢SHELTERを抑えてたんです。でもみんなも知ってのとおりに、プリティが交通事故に遭って、この日にライブをする準備が間に合わないと。そこで、じゃあ我々がやります!ということで「代打!THE BAWDIES」というタイトルになったわけです」
とROYがこの日この会場で急遽ワンマンをやることになった経緯を説明するし、なぜこのタイトルになって、なぜこうしてバニラズの3人が出てきたのかというのが全て繋がっていく。
しかしながらROYは
「バニラズ、年末にいろんなバンドのベーシストを迎えてフェスに出てたけど、俺に最初に話が来るんだろうな、って思いながら待ってたのに一切話が来ませんでした!」
と牧に詰め寄り、TAXMANも
「断るかもしれないけど、一応そこは同じ事務所なんだし、関係性的にまずここに話しとくべきじゃない!?」
と珍しく援護射撃。スーツ姿の凛々しさが消えるくらいに牧は申し訳なさそうに頭を下げるが、
「お前、さっきからずっと俺に背中向けてるじゃないか!」
とJIMに言われるという袋叩き状態。しかしその遠慮のなさこそが年齢とかを超えた両者の気を使わなくてもいい関係であることを示していた。
牧が去ると、再びTAXMANメインボーカルの「B.P.B」では間奏前のTAXMANの煽りが先日のKEYTALKとの対バンの時と同様に以前よりも長くなり(この日はその時に使っていた拡声器は使わなかったが)、演奏に入る時にカウントを取ってからという方向に変化。
「SING YOUR SONG」で大合唱を起こすと、ラストはおなじみの「JUST BE COOL」で飛び跳ねさせまくり、最後のサビ前ではいったんブレイクして
「SHELTERー!」
とROYが叫び、COOLになど到底なれないくらいに灼熱の空間になっていた。
アンコールではモバイル会員企画としてファンの質問にTHE BAWDIESとgo! go! vanillasのメンバーが答えるというものが行われ、男性ファンからの
「髭が濃くて困っているので、オススメのシェーバーを教えて欲しい」
という質問に対しては青髭おじさんことROYが
「永久脱毛行ったのに生えてくる」
という衝撃の回答。計14回も行ったらしい。
さらには
「好きなサンリオのキャラクターは?」
という問いも。ROYは「ター坊」と答えたが、JIMはROYが小学生の時にター坊の体操服入れを使っていたのを今でもよく覚えているらしい。
質問コーナーが終わり、暗闇の中で何やらセッティングをしていると、TAXMANがサングラスをかけて1人だけステージに立っており、何やら聞き覚えのある音楽が。TAXMANはタモリに扮しており、
TAXMAN「雨ですね」
観客「そーですね!」
というやり取りが始まると、懐かしの「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」のコーナーが始まる。
ゲストにgo! go! vanillasの3人が登場し、バニラズが持ってきたポスターを壁に貼るという「いいとも青年隊」としてJIMもサラッと登場する中、バニラズが友達紹介として電話をかけたのは年末のフェスと武道館ワンマンの時に展開された学園ラブコメの主人公であった、ROY演じるソウダセイジ。
「彼女が焼いたパンを持っていきます!」
とタモリに言っていただけに、TAXMANが演じていた舟山卓子とは上手くいったようである。
そして演奏されたのは進太郎もギター、牧もボーカルで参加した「HOT DOG」。セイヤは客席に飛び込んだりと、パーティーはたくさん人がいた方が楽しいというのを証明するかのような楽しさの倍増っぷり。
さらにはこの2組が転がり続けていくという意志を示すための「KEEP ON ROCKIN'」では途中でMARCYがセイヤとドラムを入れ替わったりする中で恒例のコール&レスポンスを牧も参加して行うのだが、さすがTHE BAWDIESのモバイル会員ばかりという客席、普段ならレスポンスが小さくてやり直すことでさらなる爆発力を生み出すという流れなのだが、今回はやり直しなしの一発で爆発するというあたりは本当にこの日この会場に集まった人たちのTHE BAWDIESへの愛の強さを感じさせた。それはこれからも転がり続けるTHE BAWDIESとともに我々も転がり続けていくという意志表示であるかのように。
全員がジャケットを脱いで並ぶと、
「なんかこの格好だとみんな学生みたいだね(笑)」
というTAXMANの一言によって撮影許可が下りて撮影タイムへ。
そして最後はやはり大将ことTAXMANによる恒例の「わっしょい」。「KEEP ON ROCKIN'」同様にこれも説明なしの一発わっしょいでしっかり決め、また両バンドでの再会を約束して7人はステージを去って行った。世の中にたくさんのバンドがいるけれど、こうしてバニラズの3人をステージに立たせて演奏に参加させることができるのはTHE BAWDIESしかいないのだから。次は7人じゃなくて、また8人全員で。
1月に日本武道館でワンマンを行なった時にROYは
「我々を、THE BAWDIESを頼ってください」
と言っていた。あの時は我々観客に
「辛いことがあった時は俺たちのライブに来てくれ」
と言っているのだと思っていた。もちろんその意味もあったのだろうが、このライブを見た後になると、それは我々THE BAWDIESのファンだけではなくて、ともに走り続ける仲間や、一度は止まってしまったけれどまた走り出すことを選んだ仲間に対しても
「頼ってください」
と言っていたのだということがわかる。
その言葉がそうした説得力を持つのは、THE BAWDIESが常にこれからも転がり続けていくということを口にして、それを自らの身をもって示してきたから。
勢いや動員は正直に言って落ち着いてきている。でもTHE BAWDIESを愛する人にとっての存在の大きさはそれと反比例するかのようにさらに増してきている。10年前に出会ってから毎回ワンマンには足を運んでいるし(武道館ワンマンは3回全部見ている)、THE BAWDIESは自分にとってずっと大事なバンドであり続けてきたが、今なおライブを見るたびにさらに好きになっている。そう感じるからこそ、このバンドはこれから日本のロックシーンにおいてさらに重要なバンドになっていく予感がする。
日本のプロ野球史で最も劇的な代打は、北川博敏が近鉄の優勝を決めた、代打逆転満塁優勝決定ホームラン。(それはメジャーリーグでも達成した者がいない、世界唯一の記録)
go! go! vanillasの3人がしっかり塁を埋めたからこそ、THE BAWDIESの代打での打席は、代打満塁ホームランとなった。今でも目に焼き付いて離れない、あの北川のホームランのライナーの弾道と同じくらいに鮮やかなホームランのようなライブだった。
でもTHE BAWDIESはまだ代打専任じゃない。レギュラー、いや、自分にとっての主砲のようなバンドだ。
1.A NEW DAY IS COMIN'
2.IT'S TOO LATE
3.NO WAY
4.COUNTER ACTION feat.ジェットセイヤ
5.FEELIN' FREE
6.THE EDGE
7.SO LONG SO LONG
8.LEMONADE (ROY × 柳沢進太郎)
9.KICKS!
10.HAPPY RAYS
11.KEEP YOUR HAPPY
12.平成ペイン feat.牧達弥
13.B.P.B
14.SING YOUR SONG
15.JUST BE COOL
encore
16.HOT DOG feat.go! go! vanillas
17.KEEP ON ROCKIN' feat.go! go! vanillas
HAPPY RAYS
https://youtu.be/GxT1zaOu0EM
Next→ 3/9 クボケンジ (メレンゲ) @富士吉田市民会館小ホール
この日のライブタイトルが「代打!THE BAWDIES」という意味深なものであり、ゲスト有りでありながらもゲストが当日まで発表されないという状態。この日限定で物販で販売されたTシャツに「55」という番号が刻まれた意味とは…。
ゲスト有りでありながらも、ステージにセッティングされた機材は紛れもなくTHE BAWDIESのもの。「ゲストとは…?」という感じもするが、日曜日のライブにしては珍しい19時の開演時間になると会場が暗転し、流れ始めたSEはおなじみの「SOUL MAN」で、いつものように黒いスーツに身を包んだTHE BAWDIESのメンバーが登場。
やはり今のTHE BAWDIESにとってはキャパ的には非常に小さい会場であるがゆえに、
「ステージと距離が近いけれど周りの人とも近すぎてステージがよく見えない」
というのが始まる前の状況だったのだが、それはメンバーが登場してガッと観客がステージ側に押し寄せると、ドラムのMARCY以外はしっかりと見えるように。
そのくらいの超接近戦ということで、「A NEW DAY IS COMIN'」で始まると、
「la la la …」
のコーラスで観客が大合唱するのが実によく聞こえる。基本的にモバイル会員限定ライブということでTHE BAWDIESの曲を熟知している人しかいないがゆえでもあるだろうけれど、熱気が本当に凄まじい。毎回ライブに行っていてもこんなにメンバーを近くで見れる機会というのはそうそうないだけに、その熱気も非常によくわかるけれど。
おなじみのROYのロングシャウトは聞くたびに長く、そして強くなっている(その際にTAXMANがROYをアピールする動きも派手になっているように見える)「IT'S TOO LATE」など序盤からJIMは客席最前列の柵に足をかけて、自身のギターを観客に触られるのも厭わないくらいにゼロ距離でギターを弾きまくる。そんな距離だけに普段はなかなかそうは感じない、メンバーが明らかにこっちを見たな、という目線も感じることができるし、そうして楽しんでいる観客の顔を見てメンバーもさらに楽しく演奏しているように見える。
メンバーと観客による大合唱も含めて客席を揺らしまくった「NO WAY」を終えると、早くも汗を流しまくっているJIMにROYとTAXMANがツッコミを入れながら、先日のKEYTALKとの新代田FEVERでの対バンの際にも話した、
「ROYが入り待ちしている他のバンドのファンの人に話しかけられたくて仕方がない」
というネタから、
「今日はホームだからね。スポーツでもホームゲームの方が力が出るのがわかりますね」
という最近は招かれた側での対バンが多かった(前日にはOfficial髭男dismに招かれての対バンライブだった)が故に久々のホーム感を感じていると、MARCYが酸欠で気絶しているという明らかに安い三文芝居が始まり、MARCYがスタッフに抱えられながら退場。(MARCYも抱えられながら笑っていた)
「大変だ!この中に、ドラムを叩ける方はいらっしゃいませんか!?」
とROYが客席に問いかけると、
「ここにいるぜー!」
と言って観客の入り口から現れたのは、go! go! vanillasのドラマーであるジェットセイヤ。客席をかき分け、最後には上を泳がされるような形でステージまで達すると、ハットとサングラスこそいつもの通りではあれど、THE BAWDIESに合わせた黒いスーツという姿はいつもよりも大人らしさを感じさせる。
そのセイヤがドラムセットに座ると、演奏されたのはもちろんバニラズの「カウンターアクション」をTHE BAWDIESが英語でカバーした「COUNTER ACTION」。2組のスプリット盤をリリースした後の2マンツアーでも披露されていたが、THE BAWDIESのカバーはどんな曲であれ思いっきり「THE BAWDIESでしかないもの」に変わる。それは海外のロックンロールやソウルミュージックのカバーアルバム「GOING BACK HOME」においてもそうだったし、盟友であるthe telephonesの「sick rocks」をカバーした時もそうだった。
カバーした曲の中ではgo! go! vanillasは最もTHE BAWDIESに近い音楽性の、いわゆるロックンロールバンドであるが、それでもTHE BAWDIESにかかればガレージロック感が何倍にも増したものになる。普段自分たちが演奏しているバージョンとは異なる、THE BAWDIESバージョンにもしっかり合わせられるセイヤもさすがである。
セイヤが去るとMARCYが何事もなかったかのように笑顔でステージに戻り、新たなギターサウンドを取り入れながらもロックンロールであることは失われていない「FEELIN' FREE」、これぞTHE BAWDIESど真ん中のロックンロールな「THE EDGE」と、THE BAWDIESがロックンロールに転がり続けていくという意志を示した曲が続く。
そんな中でTAXMANがボーカルを取るのはツービートのパンクな「SO LONG SO LONG」。まるでロックンロールバンドをやるために生まれてきたかのような喉と声を持つROYとの対比のようにTAXMANボーカルはさわやかな曲が多いが、この曲ではパンクなサウンドに合わせるかのように荒々しい。それはこうした近距離でのライブハウスだからこそより一層映えるものである。
すると突然メンバー間で
「お前の足が太いから邪魔なんだよ!」
とTAXMANがROYにキレ始め、それを発端にJIMとMARCYも加わってケンカが始まるという茶番に。結局ROYを残して3人は裏にケンカしに行き、残されたROYが
「どうしよう。次の曲はアカペラで歌わなきゃいけないのかな?」
とオロオロしていると、突如アコギの音ともにスーツ姿のスタイルの良い男がステージに現れる。それはgo! go! vanillasのギタリストの柳沢進太郎であり、そのままROYと進太郎の2人で「LEMONADE」をコラボ。
編成的には弾き語りと言ってもおかしくないようなものであるが、だからこそROYのボーカルの力強さだけではない上手さや曲に応じて表情を変えることができる、かつて自身で
「喉の開き方や締め方を変えることによって、エフェクターみたいに声を変えることができるんです」
と言っていたこの喉の至宝っぷりを実感させてくれる。
しかし目立つのはROYだけでなく、進太郎もファルセットコーラスによって、JIMやTAXMANとは違う角度からこの曲を引き立てる。この辺りはgo! go! vanillasでも発揮されている進太郎のギタリストとしてだけではない魅力であるし、もともとバニラズ加入前はメインボーカリストであった進太郎のポテンシャルの高さを改めて感じさせた。
曲が終わるといつのまにかステージから居なくなっていた進太郎に変わって、先ほどケンカをしていた3人が肩を組んで仲睦まじく再登場。いわく
「裏で「LEMONADE」を聴いてたらどうでもよくなっちゃった!」
とのことで、珍しく3人がROYの歌を称えるという場面も。
「やっぱりバンドって良いよね!」
とわざとらしくもありながら紛れもなく本心でもあるであろうことをTAXMANが言うと、そうして精神が通じ合っているからこそROYとのツインボーカルがより一層バンドマジックを感じさせるように聞こえる「KICKS!」から、ストリングス隊とともに演奏された武道館ワンマンとは違い、4人だけでこの近さで演奏されるからこそメロディの良さに気付く最新シングル「HAPPY RAYS」、その幸せのシャワーが降り続けるようにミラーボールが回る「KEEP YOUR HAPPY」と、激しいロックンロールだけではない、THE BAWDIESの名曲と言えるサイドの曲が続く。
すると
「今日は特別な日だから、この曲を!」
と言ってJIMのギターが奏で始めたのは、なんとgo! go! vanillas「平成ペイン」のイントロ。それに合わせてマイクを持ってステージに現れたのはもちろん、バニラズのボーカルの牧達弥。先輩というかアニキ的な存在のTHE BAWDIESの演奏で牧とROYが歌う「平成ペイン」は「COUNTER ACTION」のガレージ感溢れるアレンジとは異なり、原曲に忠実なというか、ほぼ完コピ。TAXMANもギターだけでなくコーラスも務めていたあたりは急造カバーではなくて普段から演奏しているかのような慣れた感じがあったが、普段はギターを弾きながら歌うだけに動くことができない牧は鎖から解き放たれた犬のようにステージを左右に動き回り、さらには天井に手を突いて観客の上に被さるような形で歌うくらいの自由っぷり。これは普段のバニラズのライブでのこの曲では見ることができないものだ。
この曲を易々と演奏しているように見えるTHE BAWDIESもさすがだが、やはり兄弟の契りを交わしているバンド同士であり、ともに全国を回った存在であるだけに、THE BAWDIESのファンしかいないこの日の客席であってもみんなこの曲をちゃんと知っていて、サビではみんなが声を合わせて歌っていた。それくらいにバンド同士だけでなく、ファンもリスペクトを寄せる両者であるがゆえに、
「本当は今日はgo! go! vanillasがこの下北沢SHELTERを抑えてたんです。でもみんなも知ってのとおりに、プリティが交通事故に遭って、この日にライブをする準備が間に合わないと。そこで、じゃあ我々がやります!ということで「代打!THE BAWDIES」というタイトルになったわけです」
とROYがこの日この会場で急遽ワンマンをやることになった経緯を説明するし、なぜこのタイトルになって、なぜこうしてバニラズの3人が出てきたのかというのが全て繋がっていく。
しかしながらROYは
「バニラズ、年末にいろんなバンドのベーシストを迎えてフェスに出てたけど、俺に最初に話が来るんだろうな、って思いながら待ってたのに一切話が来ませんでした!」
と牧に詰め寄り、TAXMANも
「断るかもしれないけど、一応そこは同じ事務所なんだし、関係性的にまずここに話しとくべきじゃない!?」
と珍しく援護射撃。スーツ姿の凛々しさが消えるくらいに牧は申し訳なさそうに頭を下げるが、
「お前、さっきからずっと俺に背中向けてるじゃないか!」
とJIMに言われるという袋叩き状態。しかしその遠慮のなさこそが年齢とかを超えた両者の気を使わなくてもいい関係であることを示していた。
牧が去ると、再びTAXMANメインボーカルの「B.P.B」では間奏前のTAXMANの煽りが先日のKEYTALKとの対バンの時と同様に以前よりも長くなり(この日はその時に使っていた拡声器は使わなかったが)、演奏に入る時にカウントを取ってからという方向に変化。
「SING YOUR SONG」で大合唱を起こすと、ラストはおなじみの「JUST BE COOL」で飛び跳ねさせまくり、最後のサビ前ではいったんブレイクして
「SHELTERー!」
とROYが叫び、COOLになど到底なれないくらいに灼熱の空間になっていた。
アンコールではモバイル会員企画としてファンの質問にTHE BAWDIESとgo! go! vanillasのメンバーが答えるというものが行われ、男性ファンからの
「髭が濃くて困っているので、オススメのシェーバーを教えて欲しい」
という質問に対しては青髭おじさんことROYが
「永久脱毛行ったのに生えてくる」
という衝撃の回答。計14回も行ったらしい。
さらには
「好きなサンリオのキャラクターは?」
という問いも。ROYは「ター坊」と答えたが、JIMはROYが小学生の時にター坊の体操服入れを使っていたのを今でもよく覚えているらしい。
質問コーナーが終わり、暗闇の中で何やらセッティングをしていると、TAXMANがサングラスをかけて1人だけステージに立っており、何やら聞き覚えのある音楽が。TAXMANはタモリに扮しており、
TAXMAN「雨ですね」
観客「そーですね!」
というやり取りが始まると、懐かしの「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」のコーナーが始まる。
ゲストにgo! go! vanillasの3人が登場し、バニラズが持ってきたポスターを壁に貼るという「いいとも青年隊」としてJIMもサラッと登場する中、バニラズが友達紹介として電話をかけたのは年末のフェスと武道館ワンマンの時に展開された学園ラブコメの主人公であった、ROY演じるソウダセイジ。
「彼女が焼いたパンを持っていきます!」
とタモリに言っていただけに、TAXMANが演じていた舟山卓子とは上手くいったようである。
そして演奏されたのは進太郎もギター、牧もボーカルで参加した「HOT DOG」。セイヤは客席に飛び込んだりと、パーティーはたくさん人がいた方が楽しいというのを証明するかのような楽しさの倍増っぷり。
さらにはこの2組が転がり続けていくという意志を示すための「KEEP ON ROCKIN'」では途中でMARCYがセイヤとドラムを入れ替わったりする中で恒例のコール&レスポンスを牧も参加して行うのだが、さすがTHE BAWDIESのモバイル会員ばかりという客席、普段ならレスポンスが小さくてやり直すことでさらなる爆発力を生み出すという流れなのだが、今回はやり直しなしの一発で爆発するというあたりは本当にこの日この会場に集まった人たちのTHE BAWDIESへの愛の強さを感じさせた。それはこれからも転がり続けるTHE BAWDIESとともに我々も転がり続けていくという意志表示であるかのように。
全員がジャケットを脱いで並ぶと、
「なんかこの格好だとみんな学生みたいだね(笑)」
というTAXMANの一言によって撮影許可が下りて撮影タイムへ。
そして最後はやはり大将ことTAXMANによる恒例の「わっしょい」。「KEEP ON ROCKIN'」同様にこれも説明なしの一発わっしょいでしっかり決め、また両バンドでの再会を約束して7人はステージを去って行った。世の中にたくさんのバンドがいるけれど、こうしてバニラズの3人をステージに立たせて演奏に参加させることができるのはTHE BAWDIESしかいないのだから。次は7人じゃなくて、また8人全員で。
1月に日本武道館でワンマンを行なった時にROYは
「我々を、THE BAWDIESを頼ってください」
と言っていた。あの時は我々観客に
「辛いことがあった時は俺たちのライブに来てくれ」
と言っているのだと思っていた。もちろんその意味もあったのだろうが、このライブを見た後になると、それは我々THE BAWDIESのファンだけではなくて、ともに走り続ける仲間や、一度は止まってしまったけれどまた走り出すことを選んだ仲間に対しても
「頼ってください」
と言っていたのだということがわかる。
その言葉がそうした説得力を持つのは、THE BAWDIESが常にこれからも転がり続けていくということを口にして、それを自らの身をもって示してきたから。
勢いや動員は正直に言って落ち着いてきている。でもTHE BAWDIESを愛する人にとっての存在の大きさはそれと反比例するかのようにさらに増してきている。10年前に出会ってから毎回ワンマンには足を運んでいるし(武道館ワンマンは3回全部見ている)、THE BAWDIESは自分にとってずっと大事なバンドであり続けてきたが、今なおライブを見るたびにさらに好きになっている。そう感じるからこそ、このバンドはこれから日本のロックシーンにおいてさらに重要なバンドになっていく予感がする。
日本のプロ野球史で最も劇的な代打は、北川博敏が近鉄の優勝を決めた、代打逆転満塁優勝決定ホームラン。(それはメジャーリーグでも達成した者がいない、世界唯一の記録)
go! go! vanillasの3人がしっかり塁を埋めたからこそ、THE BAWDIESの代打での打席は、代打満塁ホームランとなった。今でも目に焼き付いて離れない、あの北川のホームランのライナーの弾道と同じくらいに鮮やかなホームランのようなライブだった。
でもTHE BAWDIESはまだ代打専任じゃない。レギュラー、いや、自分にとっての主砲のようなバンドだ。
1.A NEW DAY IS COMIN'
2.IT'S TOO LATE
3.NO WAY
4.COUNTER ACTION feat.ジェットセイヤ
5.FEELIN' FREE
6.THE EDGE
7.SO LONG SO LONG
8.LEMONADE (ROY × 柳沢進太郎)
9.KICKS!
10.HAPPY RAYS
11.KEEP YOUR HAPPY
12.平成ペイン feat.牧達弥
13.B.P.B
14.SING YOUR SONG
15.JUST BE COOL
encore
16.HOT DOG feat.go! go! vanillas
17.KEEP ON ROCKIN' feat.go! go! vanillas
HAPPY RAYS
https://youtu.be/GxT1zaOu0EM
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