The Mirraz 節分スペシャルライブ!第二投 〜鬼はOUT!OUT!OUT! 福はIN!IN!IN!〜 @北浦和KYARA 2/3
- 2019/02/04
- 00:29
昨年に続いての、北浦和KYARAでのThe Mirrazの節分ライブ。昨年はツアーの公演の一環としてたまたま節分の日に開催されたという印象が強く、観客がステージにいるメンバーに向かって豆を投げまくったり、豆を入れるための升が特別グッズとして(もちろんバンドのマスコットキャラクターであるキノイくんのイラスト入り)配られたりもしたが、ライブの内容自体はツアーの流れを踏襲したものだった。
しかしながら年末に急遽ニューアルバム「DEATH IN THE PYRAMID」をリリースし、各地で対バンライブこそ開催されているものの、ツアーのタームではなく、新作の曲を披露というよりもキノイくんがツイッターで「レア曲をやる」と宣言しているために昨年とは全く違うライブの内容になりそうな予感。
入場した際に豆撒き用の豆が配られる中、18時を過ぎると去年と同様に「節分」のSEでメンバーがステージに登場。畠山はサングラスにキャップという首から上はいつもと変わらないが、黒シャツにジャケットというフォーマルな出で立ち。それは両サイドのケイゾーと真彦も同様で、ある意味ではこのライブにかける意気込みを感じさせると言っていいのだろうか。
「SEが短い!」
と曲を始めるかなり前にSEが終わってしまったのを畠山と真彦が笑い合うと、2人のダークな重いギターリフが鳴り響く「TOP OF THE FUCKIN' WORLD」からスタートするというあたりからしてすでにツアーとは全く違う内容のものになるということがよくわかる。畠山のボーカルというか歌詞は少し不安定な出だしではあったが、真彦とケイゾーの高音コーラスとまのたかしの力強いドラムがしっかり曲を支えている。
とはいえミイラズのライブでは新作アルバムのリリースツアーであれ、そうでない特別なワンマンライブであれ、しっかりと代表曲的なものを演奏してくれるだけに、「check it out〜」からは最近のライブでは毎回演奏されている代表曲的な曲が続く。そこには「ふぁっきゅー」のようなまだドラマーが関口塁(現フレンズ)だった時の曲もあるし、「バタフライエフェクト〜」のような、今のドラマーであるまのたかしが参加するようになってからの曲も同じミイラズのロックとして並列に並んでいる。
リリース時、というかバンドがダークなEDMサウンドを取り入れた時期に賛否両論のうちの否定的な意見が非常に多かった「つーか、っつーか」も、その当時の否定的な意見はなんだったのか、というくらいの盛り上がりっぷり。サングラスをかけていた畠山の表情はわからなかったが、ケイゾーはサビで観客が飛び上がりまくる姿を見て、思わず笑顔を浮かべていた。
否定的な意見が多くてもこの曲をライブでやり続けてきたし、何よりもこの時期に前任ドラマーの新谷元輝が脱退しているだけに、バンド自体が止まってしまってもおかしくなかった状態だったが、それでもキノイくんがDJとして打ち込みのドラムを流したりするという試行錯誤を繰り返しながら走り続けてきた成果は間違いなく出ている。前回のツアーで畠山とケイゾーも
「EDMの曲はライブで育ちましたね」
と言っていたが、それは今なお育ち続けている。
つまりそれはミイラズのライブそのものがさらに良くなっているということであるのだが、自分が思う良いライブをするバンドの要素としてやはりリズム隊がしっかりしているかどうかというのは非常に大きい。例えばミイラズと同世代の9mm Parabellum Bulletのライブを見ているとどうしても頭や体が反応して動いてしまうのはかみじょうちひろという超人ドラマーがいるからこそだが、今のミイラズのその部分を担っているのは間違いなくサポートドラマーのまのである。特に「格闘ゲーム」でのスネア連打などを見ていると、こんなにもミイラズのサウンドに合う、重さと速さを持ったドラマーがこうしてライブで叩いてくれているというのに心から感謝せざるを得ない。今やMVなどの映像においても欠かせない存在になっているだけに、いつかサポートではなくて正式メンバーとしてこれからも長い年月をミイラズとして過ごしてくれたら、と思う。
いつもは後半に演奏されることの多い「スーパーフレア」で代表曲ゾーンを締めると、かつてメジャーデビューする際にリード曲にしようとしていた「NEW WORLD」を久しぶりに演奏。(メジャーデビュー時には結局「観覧車に乗る〜」が選ばれ、それまでとは違う形のミイラズを見せていこうとしただけに「夏を好きになるための6の法則」にて未発表曲をまとめる形で世の中に出ることになった)
この曲の歌詞には畠山に影響を与えたアーティストやバンドたちが次々に登場するのだが、The StreetsやMGMTあたりが並ぶのは当時の世界の音楽シーンを思い起こさせるし、Dragon AshやTHE BLUE HEARTSが起こした革命は今もこの国の至る所で続いていると思わせられる。
さらに「世界一キレイなもの」「この惑星のすべて」は畠山のロマンチックサイドが強く表出した、言葉数はいつものミイラズのとおりに多くてもサウンドは実にポップという曲であるが、こうして並んで演奏されることによって、この2曲が収録されていたアルバム「OPPORTUNITY」がやはり名盤であったということを改めて感じる。自分がミイラズの中で好きなアルバムを選ぶならばTOP3には間違いなく入ってくるアルバムであるし、この2曲とともに「i luv 日常」も含めてミイラズを全然知らないという人にも勧めやすいアルバムだと思っている。皮肉にもこの辺りからバンドの規模の縮小が目に見えてきてしまっていたのだが。
「天才って言われてるピアニストは3歳くらいの時から英才教育をされるって言われてるけど、俺も厳しい家で育って3歳くらいからずっと節分は日本の由緒ある伝統行事だって教えられて生きてきたから(笑)
そんな日にライブなんてやっていいのかっていう感じもするけど、とりあえずスーツ着ておけば大丈夫かなって(笑)」
とこの日の出で立ちがフォーマルなものになったことを説明して、
「節分の曲」
と言って演奏された「GET 豆」こと「GET MONEY」でロマンチックなモードから荒々しいガレージロックに戻ると、観客がリズムに合わせて手拍子をし、歌詞では毒を吐きまくる「気持ち悪りぃ」へという慌ただしさ。だがメンバーが合間にビールを飲みながらも曲間に無駄な間がほとんどないというスタイルゆえか、とっ散らかった印象は全くない。
そして真彦のノイジーなギターに畠山の切ない歌詞のボーカルが乗る「ハッピーアイスクリーム」も実に久々。さらには「君の料理」と、ここは冒頭に演奏されたタイトル曲も含めたアルバム「TOP OF THE FUCKIN' WORLD」に収録された名曲たち。自分は今のミイラズが10年くらいライブを見続けてきた中で最も最高な状態だと思っているし、今までもそれを言い続けてきたつもりなのだが、そのバンドの状態でこのミイラズ屈指にして日本のロックシーンの歴史に残るべき名曲を聞けるのは本当に嬉しいことだ。
「僕はいつも過去にとらわれてばかりで 君はいつも未来の話ばかりで
足したら丁度「今」になるのかもね
レシピがあれば曖昧にそこは「適量」」
なんていう日常の何気ないシーンを「君の料理」というテーマでこんなに詩的に美しく描ける男が畠山承平以外に他にいるのだろうか。
「観覧車〜」まで含めてミイラズなりのラブソング(やはり言葉数の多さとその言葉の引き出しの多さゆえに世に蔓延る陳腐なラブソングとは全く違う)を演奏すると、畠山がこの日のライブが長く感じるという旨のMCをしてから(最近やってなかった曲が多かったからだろうか)、最後のブロックへ。
もちろん最後のブロックは盛り上がるための代表曲連発的なものになるし、それはツアーのワンマンであってもそうなのだが、この日その中に実に久しぶりに「イフタム!ヤー!シムシム!」が演奏され、あの走り出すようなギターのリフが鳴らされた瞬間に絶叫するような観客もいた。それくらいにファンから愛されている曲だし、かつては常にライブの最後に演奏される曲だった。そんな曲を今の最強の状態のバンドで鳴らすのを聴くことができている。
「どれだけの悲しみを味わえば
悲しみに飽きることができるんだろう」
というフレーズはその前に演奏された、一気にモッシュが激しくなって客席の空気が変わった「僕らは」にも同じようなフレーズがある。つまりあらゆる物事から言葉を引っ張り出してはいるものの、ミイラズの歌っていることの芯の部分は全く変わっていないということである。
そしてラストは現状での最新作に収録されている「誰も死から逃れられない!」。この最新作に収録されている曲をこの盛り上がるためのブロックの最後に演奏したということが新しい曲を代表曲に育てようとしており、ミイラズがまだまだ進行形で動いているバンドであるということを示し、また最新作「DEATH IN THE PYRAMID」を携えたツアーの期待を高まらせた。
アンコールでは畠山がこの日のライブの限定Tシャツに着替えて登場し「DEATH IN THE PYRAMID」のリード曲となった「Only Only Only」を披露。アルバムについてのことはアルバムのツアーでまた書こうと思っているけれど、「DEATH IN THE PYRAMID」は近作のミイラズのアルバムの中ではトップクラスのアルバムであると思っている。自分は2017年の年間ベストアルバムに「ぼなぺてぃっ!!!」を選出したが、またそのくらいに評価したいアルバムだと思っている。
そしてここでようやく節分ならではの豆まきタイムに。畠山が徳川家の家紋が入った袴の羽織部分を装着すると、
「これは徳川家だけど、畠山っていう戦国武将もいたんだからね。「信長の野望」とかやったことある?畠山ってめちゃくちゃ弱い武将なの(笑)」
という歴史大好き(そのまま三国志の話にまで飛躍してケイゾーと話していた)な畠山が歴史トークを展開すると、観客から先に袋に入ったままの豆を鬼のお面を被った畠山以外のメンバーに投げ、畠山がメンバーのサインが入った豆の袋を客席に投げ返す。豆の袋が軽いのでなかなか後ろまで届いていなかったが。
さらに毎年恒例のPYRAMID de 427を今年は4月27日に開催することを発表(近年は土日に合わせて29日だったりした)し、この会場である北浦和KYARAが20周年を迎えたことで、かつてこの会場でthe telephonesと対バンした際に石毛輝と2階のバーの端っこの席で話し込み、石毛に
「「ハッピーアイスクリーム」は本当に良い曲だ」
と言われたというこの会場での思い出を語る。
畠山はthe telephonesが活動を再開したことを楽屋に貼ってあったポスターを見て知ったと言っていたが、こうして一緒にやっていた時のことを今でもちゃんと覚えているということは、それが本当に楽しかったということ。だからこそまた2組で一緒にライブをやって欲しいのだが。
そして「プロタゴニストの一日は」から、まさかのトライバルなリズムが現在の編成でさらに強化された「ソシタラ」までも久しぶりに演奏される。「イフタム!ヤー!シムシム!」もそうだが、こうしたかつてライブの最後を担うことが多かった曲が同じライブで、しかも最後ではないタイミングで演奏されるのを見ると、ちゃんとそれ以降の活動でそれらの曲に変わる曲や更新した曲を作れてきたんだな、と思う。
近年は「CANのジャケット〜」で最高沸点を刻むのがライブの締めの定番になっているし、それはこの日もそうだったのだが、たくさんの人が激しいモッシュをしている様を見ると、規模は昔よりもはるかに小さくなったけれど、この曲が持っている力やミイラズが持っている力は全く変わっていないどころか、確実に進化していると思う。だからこそ、かつてこのバンドのライブに来ていた人たちくらいは今のミイラズのライブも見に来て欲しいと心から願う。あの頃より絶対に楽しいから。
客電が点いて終わりの空気になってもなおアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場。すると先ほど畠山が着ていた羽織を観客にプレゼントするということでジャンケン大会が行われ、勝った人が今日から征夷大将軍として振る舞うことを強要すると、ミラーボールを探してから(この日の会場にはミラーボールがなかったので代わりにレーザー光線が飛び交った)「ミラーボールが回り出したら」を最後に演奏し、畠山は
「本当にありがとう!」
と満面の笑みを浮かべてステージから去って行った。
一時期よりは対バンライブに呼んでもらえる機会が増えたし、新作のリリースペースが異常というくらいに早いから1年経たずにツアーをやったりしているとはいえ、かつてフェスやイベントにもたくさん出演していた頃に比べると、やはりミイラズはそこまでライブの本数が多いバンドではない。
だからこそ、PYRAMID de 427やハロウィンライブ、そして節分ライブと、ミイラズのライブが毎年観れる日があるというのはファンとしては本当に嬉しいことだ。
ミイラズには「CANのジャケット〜」や「check it out〜」のような言葉数の多いガレージロックから社会への毒を撒き散らす曲、畠山のロマンチストサイドが表出した曲、ミイラズだからこそのラブソングなど、様々なタイプの曲がある。なかなかリリースツアーでは聴くことができないそうした様々なタイプの、ファンが自分の人生に重ね合わせたり、かつてのライブでの大切な思い出が詰まっている曲をたくさん聞くことができるのがPYRAMID de 427であり、ハロウィンライブであり、節分ライブである。
そしてきっとミイラズのライブがあるからこそ会える人たちというのもこうしてライブに来ている人たちの中には少なからずいるはずで、ミイラズがこうして毎年恒例のライブが増えることによって、その人たちと会ってミイラズの話をしたりする時間が増える。
だからこそ
「もう節分ライブはやらないかもしれない(笑)」
と畠山は言っていたけれど、別に節分でもなんでもいいのだ。ミイラズがこうしてライブをやる理由になるのならば。でもせっかく定着してきつつあるんだからまた来年からもやって欲しい。自分にとっても、この歳になっても節分がこんなに楽しいイベントだって思えることってほかにないのだから。
1.TOP OF THE FUCKIN' WORLD
2.check it out! check it out! check it out! check it out!
3.ふぁっきゅー
4.バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロのとある一日
5.つーか、っつーか
6.格闘ゲーム
7.スーパーフレア
8.NEW WORLD
9.世界一キレイなもの
10.この惑星のすべて
11.GET MONEY
12.気持ち悪りぃ
13.ハッピーアイスクリーム
14.君の料理 (レシピNo.2027)
15.観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは
16.マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。
17.ラストナンバー
18.僕らは
19.イフタム!ヤー!シムシム!
20.誰も死から逃れられない!
encore
21.Only Only Only
22.プロタゴニストの一日は
23.ソシタラ 〜人気名前ランキング2009,愛という名前は64位です〜
24.CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
encore2
25.ミラーボールが回り出したら
ハッピーアイスクリーム
https://youtu.be/s3DPEwUeWXE
Next→ 2/9 the telephones @佐賀RAG-G
しかしながら年末に急遽ニューアルバム「DEATH IN THE PYRAMID」をリリースし、各地で対バンライブこそ開催されているものの、ツアーのタームではなく、新作の曲を披露というよりもキノイくんがツイッターで「レア曲をやる」と宣言しているために昨年とは全く違うライブの内容になりそうな予感。
入場した際に豆撒き用の豆が配られる中、18時を過ぎると去年と同様に「節分」のSEでメンバーがステージに登場。畠山はサングラスにキャップという首から上はいつもと変わらないが、黒シャツにジャケットというフォーマルな出で立ち。それは両サイドのケイゾーと真彦も同様で、ある意味ではこのライブにかける意気込みを感じさせると言っていいのだろうか。
「SEが短い!」
と曲を始めるかなり前にSEが終わってしまったのを畠山と真彦が笑い合うと、2人のダークな重いギターリフが鳴り響く「TOP OF THE FUCKIN' WORLD」からスタートするというあたりからしてすでにツアーとは全く違う内容のものになるということがよくわかる。畠山のボーカルというか歌詞は少し不安定な出だしではあったが、真彦とケイゾーの高音コーラスとまのたかしの力強いドラムがしっかり曲を支えている。
とはいえミイラズのライブでは新作アルバムのリリースツアーであれ、そうでない特別なワンマンライブであれ、しっかりと代表曲的なものを演奏してくれるだけに、「check it out〜」からは最近のライブでは毎回演奏されている代表曲的な曲が続く。そこには「ふぁっきゅー」のようなまだドラマーが関口塁(現フレンズ)だった時の曲もあるし、「バタフライエフェクト〜」のような、今のドラマーであるまのたかしが参加するようになってからの曲も同じミイラズのロックとして並列に並んでいる。
リリース時、というかバンドがダークなEDMサウンドを取り入れた時期に賛否両論のうちの否定的な意見が非常に多かった「つーか、っつーか」も、その当時の否定的な意見はなんだったのか、というくらいの盛り上がりっぷり。サングラスをかけていた畠山の表情はわからなかったが、ケイゾーはサビで観客が飛び上がりまくる姿を見て、思わず笑顔を浮かべていた。
否定的な意見が多くてもこの曲をライブでやり続けてきたし、何よりもこの時期に前任ドラマーの新谷元輝が脱退しているだけに、バンド自体が止まってしまってもおかしくなかった状態だったが、それでもキノイくんがDJとして打ち込みのドラムを流したりするという試行錯誤を繰り返しながら走り続けてきた成果は間違いなく出ている。前回のツアーで畠山とケイゾーも
「EDMの曲はライブで育ちましたね」
と言っていたが、それは今なお育ち続けている。
つまりそれはミイラズのライブそのものがさらに良くなっているということであるのだが、自分が思う良いライブをするバンドの要素としてやはりリズム隊がしっかりしているかどうかというのは非常に大きい。例えばミイラズと同世代の9mm Parabellum Bulletのライブを見ているとどうしても頭や体が反応して動いてしまうのはかみじょうちひろという超人ドラマーがいるからこそだが、今のミイラズのその部分を担っているのは間違いなくサポートドラマーのまのである。特に「格闘ゲーム」でのスネア連打などを見ていると、こんなにもミイラズのサウンドに合う、重さと速さを持ったドラマーがこうしてライブで叩いてくれているというのに心から感謝せざるを得ない。今やMVなどの映像においても欠かせない存在になっているだけに、いつかサポートではなくて正式メンバーとしてこれからも長い年月をミイラズとして過ごしてくれたら、と思う。
いつもは後半に演奏されることの多い「スーパーフレア」で代表曲ゾーンを締めると、かつてメジャーデビューする際にリード曲にしようとしていた「NEW WORLD」を久しぶりに演奏。(メジャーデビュー時には結局「観覧車に乗る〜」が選ばれ、それまでとは違う形のミイラズを見せていこうとしただけに「夏を好きになるための6の法則」にて未発表曲をまとめる形で世の中に出ることになった)
この曲の歌詞には畠山に影響を与えたアーティストやバンドたちが次々に登場するのだが、The StreetsやMGMTあたりが並ぶのは当時の世界の音楽シーンを思い起こさせるし、Dragon AshやTHE BLUE HEARTSが起こした革命は今もこの国の至る所で続いていると思わせられる。
さらに「世界一キレイなもの」「この惑星のすべて」は畠山のロマンチックサイドが強く表出した、言葉数はいつものミイラズのとおりに多くてもサウンドは実にポップという曲であるが、こうして並んで演奏されることによって、この2曲が収録されていたアルバム「OPPORTUNITY」がやはり名盤であったということを改めて感じる。自分がミイラズの中で好きなアルバムを選ぶならばTOP3には間違いなく入ってくるアルバムであるし、この2曲とともに「i luv 日常」も含めてミイラズを全然知らないという人にも勧めやすいアルバムだと思っている。皮肉にもこの辺りからバンドの規模の縮小が目に見えてきてしまっていたのだが。
「天才って言われてるピアニストは3歳くらいの時から英才教育をされるって言われてるけど、俺も厳しい家で育って3歳くらいからずっと節分は日本の由緒ある伝統行事だって教えられて生きてきたから(笑)
そんな日にライブなんてやっていいのかっていう感じもするけど、とりあえずスーツ着ておけば大丈夫かなって(笑)」
とこの日の出で立ちがフォーマルなものになったことを説明して、
「節分の曲」
と言って演奏された「GET 豆」こと「GET MONEY」でロマンチックなモードから荒々しいガレージロックに戻ると、観客がリズムに合わせて手拍子をし、歌詞では毒を吐きまくる「気持ち悪りぃ」へという慌ただしさ。だがメンバーが合間にビールを飲みながらも曲間に無駄な間がほとんどないというスタイルゆえか、とっ散らかった印象は全くない。
そして真彦のノイジーなギターに畠山の切ない歌詞のボーカルが乗る「ハッピーアイスクリーム」も実に久々。さらには「君の料理」と、ここは冒頭に演奏されたタイトル曲も含めたアルバム「TOP OF THE FUCKIN' WORLD」に収録された名曲たち。自分は今のミイラズが10年くらいライブを見続けてきた中で最も最高な状態だと思っているし、今までもそれを言い続けてきたつもりなのだが、そのバンドの状態でこのミイラズ屈指にして日本のロックシーンの歴史に残るべき名曲を聞けるのは本当に嬉しいことだ。
「僕はいつも過去にとらわれてばかりで 君はいつも未来の話ばかりで
足したら丁度「今」になるのかもね
レシピがあれば曖昧にそこは「適量」」
なんていう日常の何気ないシーンを「君の料理」というテーマでこんなに詩的に美しく描ける男が畠山承平以外に他にいるのだろうか。
「観覧車〜」まで含めてミイラズなりのラブソング(やはり言葉数の多さとその言葉の引き出しの多さゆえに世に蔓延る陳腐なラブソングとは全く違う)を演奏すると、畠山がこの日のライブが長く感じるという旨のMCをしてから(最近やってなかった曲が多かったからだろうか)、最後のブロックへ。
もちろん最後のブロックは盛り上がるための代表曲連発的なものになるし、それはツアーのワンマンであってもそうなのだが、この日その中に実に久しぶりに「イフタム!ヤー!シムシム!」が演奏され、あの走り出すようなギターのリフが鳴らされた瞬間に絶叫するような観客もいた。それくらいにファンから愛されている曲だし、かつては常にライブの最後に演奏される曲だった。そんな曲を今の最強の状態のバンドで鳴らすのを聴くことができている。
「どれだけの悲しみを味わえば
悲しみに飽きることができるんだろう」
というフレーズはその前に演奏された、一気にモッシュが激しくなって客席の空気が変わった「僕らは」にも同じようなフレーズがある。つまりあらゆる物事から言葉を引っ張り出してはいるものの、ミイラズの歌っていることの芯の部分は全く変わっていないということである。
そしてラストは現状での最新作に収録されている「誰も死から逃れられない!」。この最新作に収録されている曲をこの盛り上がるためのブロックの最後に演奏したということが新しい曲を代表曲に育てようとしており、ミイラズがまだまだ進行形で動いているバンドであるということを示し、また最新作「DEATH IN THE PYRAMID」を携えたツアーの期待を高まらせた。
アンコールでは畠山がこの日のライブの限定Tシャツに着替えて登場し「DEATH IN THE PYRAMID」のリード曲となった「Only Only Only」を披露。アルバムについてのことはアルバムのツアーでまた書こうと思っているけれど、「DEATH IN THE PYRAMID」は近作のミイラズのアルバムの中ではトップクラスのアルバムであると思っている。自分は2017年の年間ベストアルバムに「ぼなぺてぃっ!!!」を選出したが、またそのくらいに評価したいアルバムだと思っている。
そしてここでようやく節分ならではの豆まきタイムに。畠山が徳川家の家紋が入った袴の羽織部分を装着すると、
「これは徳川家だけど、畠山っていう戦国武将もいたんだからね。「信長の野望」とかやったことある?畠山ってめちゃくちゃ弱い武将なの(笑)」
という歴史大好き(そのまま三国志の話にまで飛躍してケイゾーと話していた)な畠山が歴史トークを展開すると、観客から先に袋に入ったままの豆を鬼のお面を被った畠山以外のメンバーに投げ、畠山がメンバーのサインが入った豆の袋を客席に投げ返す。豆の袋が軽いのでなかなか後ろまで届いていなかったが。
さらに毎年恒例のPYRAMID de 427を今年は4月27日に開催することを発表(近年は土日に合わせて29日だったりした)し、この会場である北浦和KYARAが20周年を迎えたことで、かつてこの会場でthe telephonesと対バンした際に石毛輝と2階のバーの端っこの席で話し込み、石毛に
「「ハッピーアイスクリーム」は本当に良い曲だ」
と言われたというこの会場での思い出を語る。
畠山はthe telephonesが活動を再開したことを楽屋に貼ってあったポスターを見て知ったと言っていたが、こうして一緒にやっていた時のことを今でもちゃんと覚えているということは、それが本当に楽しかったということ。だからこそまた2組で一緒にライブをやって欲しいのだが。
そして「プロタゴニストの一日は」から、まさかのトライバルなリズムが現在の編成でさらに強化された「ソシタラ」までも久しぶりに演奏される。「イフタム!ヤー!シムシム!」もそうだが、こうしたかつてライブの最後を担うことが多かった曲が同じライブで、しかも最後ではないタイミングで演奏されるのを見ると、ちゃんとそれ以降の活動でそれらの曲に変わる曲や更新した曲を作れてきたんだな、と思う。
近年は「CANのジャケット〜」で最高沸点を刻むのがライブの締めの定番になっているし、それはこの日もそうだったのだが、たくさんの人が激しいモッシュをしている様を見ると、規模は昔よりもはるかに小さくなったけれど、この曲が持っている力やミイラズが持っている力は全く変わっていないどころか、確実に進化していると思う。だからこそ、かつてこのバンドのライブに来ていた人たちくらいは今のミイラズのライブも見に来て欲しいと心から願う。あの頃より絶対に楽しいから。
客電が点いて終わりの空気になってもなおアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場。すると先ほど畠山が着ていた羽織を観客にプレゼントするということでジャンケン大会が行われ、勝った人が今日から征夷大将軍として振る舞うことを強要すると、ミラーボールを探してから(この日の会場にはミラーボールがなかったので代わりにレーザー光線が飛び交った)「ミラーボールが回り出したら」を最後に演奏し、畠山は
「本当にありがとう!」
と満面の笑みを浮かべてステージから去って行った。
一時期よりは対バンライブに呼んでもらえる機会が増えたし、新作のリリースペースが異常というくらいに早いから1年経たずにツアーをやったりしているとはいえ、かつてフェスやイベントにもたくさん出演していた頃に比べると、やはりミイラズはそこまでライブの本数が多いバンドではない。
だからこそ、PYRAMID de 427やハロウィンライブ、そして節分ライブと、ミイラズのライブが毎年観れる日があるというのはファンとしては本当に嬉しいことだ。
ミイラズには「CANのジャケット〜」や「check it out〜」のような言葉数の多いガレージロックから社会への毒を撒き散らす曲、畠山のロマンチストサイドが表出した曲、ミイラズだからこそのラブソングなど、様々なタイプの曲がある。なかなかリリースツアーでは聴くことができないそうした様々なタイプの、ファンが自分の人生に重ね合わせたり、かつてのライブでの大切な思い出が詰まっている曲をたくさん聞くことができるのがPYRAMID de 427であり、ハロウィンライブであり、節分ライブである。
そしてきっとミイラズのライブがあるからこそ会える人たちというのもこうしてライブに来ている人たちの中には少なからずいるはずで、ミイラズがこうして毎年恒例のライブが増えることによって、その人たちと会ってミイラズの話をしたりする時間が増える。
だからこそ
「もう節分ライブはやらないかもしれない(笑)」
と畠山は言っていたけれど、別に節分でもなんでもいいのだ。ミイラズがこうしてライブをやる理由になるのならば。でもせっかく定着してきつつあるんだからまた来年からもやって欲しい。自分にとっても、この歳になっても節分がこんなに楽しいイベントだって思えることってほかにないのだから。
1.TOP OF THE FUCKIN' WORLD
2.check it out! check it out! check it out! check it out!
3.ふぁっきゅー
4.バタフライエフェクトを語るくらいの善悪と頑なに選択を探すマエストロのとある一日
5.つーか、っつーか
6.格闘ゲーム
7.スーパーフレア
8.NEW WORLD
9.世界一キレイなもの
10.この惑星のすべて
11.GET MONEY
12.気持ち悪りぃ
13.ハッピーアイスクリーム
14.君の料理 (レシピNo.2027)
15.観覧車に乗る君が夜景に照らされてるうちは
16.マジか。そう来たか、やっぱそう来ますよね。はいはい、ですよね、知ってます。
17.ラストナンバー
18.僕らは
19.イフタム!ヤー!シムシム!
20.誰も死から逃れられない!
encore
21.Only Only Only
22.プロタゴニストの一日は
23.ソシタラ 〜人気名前ランキング2009,愛という名前は64位です〜
24.CANのジャケットのモンスターみたいのが現れて世界壊しちゃえばいい
encore2
25.ミラーボールが回り出したら
ハッピーアイスクリーム
https://youtu.be/s3DPEwUeWXE
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