キュウソネコカミ DMCC REAL ONEMAN TOUR 2019 -Despair Makes Cowards Courageous- 〜ギリ平成〜 @Zepp DiverCity 1/23
- 2019/01/24
- 00:42
キュウソネコカミの「ギリ平成」リリースツアー、前日の千葉LOOKに続き、2日目のこの日はZepp DiverCity。千葉LOOKにもZeppと同じくらいの応募数が来ていたというので、それならZeppで2daysでも良かったんじゃ?とも思うが、かねてから
「いちいち準備とか撤収するのが大変なのはわかってるんだけど、いろんな会場でライブがやりたい」
という発言をしていたキュウソならではのスケジュールである。
とはいえ、普通なら小箱を一通り回ってから大箱へ、というスケジュールが一般的である中で、関東でもかなりの狭さである千葉LOOKから翌日一気にトップクラスのキャパであるDiverCityに、というおよそ10倍ものキャパの違う会場でのライブというのは全くやり方が違うはず。前日のMCでは
「明日は違うことをする」
と言っていただけに、果たしてどんなライブになるのか。
この日は19時前に早くもP青木がステージに登場して前説がスタート。この日も相変わらず噛み噛みなのだが、最後の最後に
「まもなく開場です!」
と、開演を開場と言い間違える。1時間前に開場したから我々はここにいるんじゃないだろうか。
すぐさま場内が暗転して無事に開場ではなく開演を迎えるラウドなSEが鳴ると、前日は最初からステージ背面に張られていたツアーロゴのフラッグがせり上がって一斉にメンバーたちが登場し、「推しのいる生活」からスタートし「The band」へという流れは変わらないが、ステージが低くてメンバーの姿が見えづらい千葉LOOKとは違い、距離は遠くてもやはりしっかりと全体が見える。特にソゴウがドラムを叩く姿が常に見えているのは嬉しい限り。
なのでオカザワとカワクボが台の上に立つとより一層目立つし、セイヤが「The band」の
「オナって迷って」
のフレーズでギターのネックを手で擦るような仕草を見せるのも実によく見える。
とはいえやはり流れ自体は前日と変わらないのかな?と思っていたら、前日やっていた「良いDJ」は飛ばして「メンヘラちゃん」、さらには前日は後半に演奏されていた「馬乗りマウンティング」というめんどくさい人間シリーズをここで固めてくるという変化を見せる。
「馬乗りマウンティング」の演奏中には間奏でオカザワが台の上に乗ってU.S.Aダンス(やるたびにバランスを崩して落ちそうになっていた)、カワクボはジュリアナ的な手の振りで応戦というマウンティング合戦を見せていたのもこの日はよく見えた。
前日はセイヤが歌詞を間違えてしまった「ファントムバイブレーション」もさすがに初日ではないだけにもう間違えることはなかったが、曲中に「ブスでも可愛い子と付き合える理由」をつらつらと並べていく「ただしイケメンに限らない」では前日以上に多く理由を並べていき、
「健やか」「軽やか」
とパッと思いついたであろうとしか考えられないものまでも並んでいき、最後に
「こみゅ力」
をあげて「こみゅ力」に続いていく。
「今日は来てくれてありがとうー!」
と言うとドラムがドカドカと叩くというバンドのMCにありがちな流れを、ソゴウがそういうことを一切やらないドラマーであるがゆえにセイヤとヨコタが「ドカドカドカドカ」と口で再現する、というやり取りから、
セイヤ「むしろもっと長くやってみる?ドラムちょっと叩いて終わりかと思いきや全然終わらんで演奏みたいになる、みたいな(笑)
でもソゴウはうちのメンバーの中で一番ロックだから、決まり切ったことをやるのが好きじゃないねん」
ヨコタ「決まり切ったことをやっている人たちはロックじゃないと?(笑)」
と危なそうな流れに行きそうだったので、慌てて曲へ。
前日は演奏されなかった、つまりこの日がライブで初披露となった「遊泳」は「ギリ平成」の中でもややシリアスな空気を持った曲で、前日にこのタイミングで演奏されな「KENKO不KENKO」とは演奏している時の客席の空気が全く違う。
だからこそ、前日は「死なんかなー」を演奏していた過去曲ゾーンも「空芯菜」に変更したのだろう。なんで「空芯菜」にしたのかはわからないけれど。
ギターを置いたセイヤが客席に突入していく「TOSHI-LOW」さんでは観客の上でしっかりと直立すると、着ているTシャツを半分だけまくってその肉体を見せつけるのだが、腕にかなりの筋肉がついているし、腹にも無駄な肉が全くない。TOSHI-LOWや細美武士に憧れて体を鍛えているのが良くわかるし、ガリガリのひ弱そうな男というイメージは完全になくなってきている。
「きらきら星」のイントロがウォールオブデスという名の死への呼び水となる「炊き上がれ召し上がれ」は前日はキャパを勘案してか中央に1つだけ作ったウォールオブデスが、この日はオカザワとカワクボの前に計2つ作られるという大箱バージョンに。この辺りも細かいけれど、会場のキャパに合わせてパフォーマンスを変え、少しでも多くの人に参加して楽しんでもらおうというメンバーの気配りを感じる。
「米米米米」に合わせて「家」を「マイ」に変えるというおそらくこのツアーならではのアレンジを見せた後は前日同様にムーディーなBGMが流れる中での休憩タイム。
セイヤは「The band」の
「誰かと幸せになったって」
のフレーズでヨコタが結婚指輪を自分に見せびらかせるようにするのが気になっていたらしいが、ヨコタが結婚式の時のお色直しタイムで横を並んで歩く相手に自分を選んでくれたことを感謝していると語り、図らずもメンバー同士の仲の良さが感じられるような展開に。きっとこのメンバーはこれからもずっとこうやってみんなでワイワイしながら、時には悩みながらバンドを続けていくのだろう。
後半戦は前日とは流れがガラッと変わり、「ビビった」や「KMDT25」のように順番を入れ替えた曲や、「スベテヨシゼンカナヤバジュモン」と前日はやらなかった曲(というかこの曲を今になってやるとは思わなかった)も含めて演奏していくのだが、この日は「わかってんだよ」「真面目に」というストレートにバンドの熱さを放出する曲を最後ではなくこのタイミングで。特に「真面目に」はセイヤが声が多少不安定になってもひたすら張り上げて歌い、さらには床を転げ回りながらギターをかき鳴らす。
「全然真面目じゃない俺を許してくれますか?
全然真面目じゃない俺を愛してくれますか?」
とセイヤは「真面目に」で歌っているが、キュウソはどのバンドよりも真面目だ。それがライブを見ていると心から伝わってくるから、こうしてたくさんの人から愛されている。
「いつか報われると信じてる」
まだ報われたと思っていないのか、とも思うが、いつか自分たちが思い描くところまでたどり着くことを信じさせてくれるから、この曲をライブで聴くと本当に感動してしまう。
ここが東京ということもあってか、いきなり「東京オリンピックに出たい」「でもフルマラソンは絶対走りたくない。バンドマンやりがちやけど」となぜかマラソンの話になり、
「このメンバーの中でマラソンを走るとしたら誰か?」
と展開し、セイヤとヨコタが後ろを振り向くと、視線の先にいたソゴウは
「お前ら、予想通りに俺に走らせようとするな(笑)」
と自分に矛先が来るのがわかっていた様子。しかし最終的には見た目に反してスポーツマンである(リアルにずっと野球をやっていた)カワクボが適任ということに。カワクボはMCで話したりしないが、ボディービルダーみたいなポーズを取ったりするなどノリノリ。それはファンサービス的な面もあるのだろうが、実は非常に難しいベースを弾きながら細かいアクションや顔を作ったりするサービス精神旺盛なカワクボの人柄がよく出ている。
「KMTR645」では前日は絵だけだった「ペディグリー」のフレーズで本物のファービー人形が登場し、セイヤがマイクに近づけて喋らせようとするが全く何を言っているのかわからず。ここはある意味ではツアーでどう変化していくのか見ものであるが、なぜ昨日の今日でいきなりファービー人形が出てきたのかは全くわからない。
「DQNなりたい、40代で死にたい」の
「ヤンキー怖い」
の大合唱パートでセイヤが再び客席に突入すると、何度となく崩れそうになりながらも客席の中央にあるミラーボールの真下まで行き、そこで観客に支えられながら立つとミラーボールが煌びやかに光るというZeppならではのパフォーマンス。こうした演出や鮮やかな照明などは前日とは全く異なる部分だが、それを徐々に作っていくのではなく1日でガラッと変えてやれるのがキュウソのすごいところである。
そしてこの日のラスト2曲は前日はアンコールで演奏された2曲。しかも明らかに前日のライブではアンコールの締めは固定かと思われていたアルバムのタイトルトラック的な「ギリ昭和」もこの日は本編の最後に演奏されたことにより、「真面目に」が本編のラストだった前日とは全く違うタイプの余韻を残した。
なぜかこの日は観客による「ヤンキー怖い」の大合唱でアンコールを呼び込むと、ツアーTシャツに着替えたメンバーがステージに現れると、こうしてZeppでワンマンをやれている喜びを語り、「MEGA SHAKE IT!!」からこの日の締めに選ばれたのは「越えていけ」。
「こうあるべきだとかこうじゃなきゃいけないとか 誰の人生だ お前の人生だ」
タイアップのアニメの主人公(偉大な父を持つ野球少年)に向けられたようでもあり、メンバー自身、そして聴いてくれている全ての人に真っ直ぐに突き刺さるメッセージ。ただ単に耳障りや行儀の良い言葉を並べているのではなく、汗を飛び散らせながら本心を思いっきり叫んでいる。そこにはかつてメンバー自身が憧れ続けてきたであろう、男が惚れるような背中を見せてくれる男たちから受け継いできたものを感じる。やっぱりキュウソはこの日も面白いのはもちろん、本当にカッコよかった。
恒例の写真撮影をすると、やはりこの日も
「こんなデカいところでやらせてもらってるのにもう終わっちゃうのが寂しすぎる!」
と急遽もう1曲、この日まだ演奏されていなかった「良いDJ」を演奏し、踊りまくらせるとともに、昨日の今日でこれだけ選曲や流れを変えるということは、33公演全通しても絶対飽きないだろうし、それを面白いパフォーマンスではなくて音楽そのものでやれているというところにこのバンドの強さを感じさせた。実はキュウソは超アスリート気質のバンドなのである。
「あぁクソめんどくさいよ 人を信じることや 人に尽くせることは」 (「真面目に」)
「恋だの愛だのだけじゃない 特別な感情覚えたよ」 (「推しのいる生活」)
「尊敬され羨ましがられ褒められて優越感に浸りたい」 (「馬乗りマウンティング」)
「結局こみゅ力…」 (「ただしイケメンに限らない」)
「誰にも舐められないように 誰にも奪われないように 届ける前に言葉選んで」 (「遊泳」)
「わかり合えない お前とはずっと
わかり合いたい わかり合いたい」 (「ピクピク」)
これは「ギリ平成」に収録された曲たちの歌詞だが、こうして並べてみると「ギリ平成」は人と人とのコミュニケーションをテーマにしたアルバムであるということがわかる。言葉という人間だけにしか使えないコミュニケーション。だからこそそこには歌う人や演奏する人の人間性が否が応でも出てくる。それはキュウソのメンバーの持つ優しさや温かさそのもの。つまり「ギリ平成」は誰よりも人間らしさに溢れたキュウソのメンバーたちが人間そのものに向き合ったアルバムなのである。そんなアルバムが最も真価を発揮する場所は、やはりこうして人と人が向き合うライブという場所なのである。それを今回のツアーで証明していくことになるはず。
キュウソのライブは本当に楽しい。もうマイナスなことを何一つ考えることができないくらいに楽しい。普通こうした
「若い」「規模がある程度大きい」「サークルやウォールオブデスなどフィジカル的に楽しめる」
という要素が揃っているバンドのライブだと、ファン同士がSNSなどで批判し合ってたり、他のバンドのファンから批判されたりということもよく見かける。(キュウソの周りにいるバンドたちのファンでもしばしば目にする)
でもキュウソのファンがそういう状態になっているのをほぼ全くと言っていいくらいに見たことがない。それはキュウソがライブで掲げる
「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」
を誰よりもメンバーが1番実践しているからである。だからメンバーたちは常に客席の様子をちゃんと見ながらライブをしている。誰も傷ついたり悲しんだりすることのないように。それでいて作る音楽からは
「世間の需要とズレている」 (「The band」)
という通りにファンに媚びるようなことは全くしない。
実際に自分のすぐ横では、自分よりはるかに年上であろう夫婦の方がツアーTシャツを着てアルバムの曲で本当に楽しそうに踊っていた。
長くバンドが続いていくためには流行りに左右されることのないファンが付いていてくれるというのが重要だと思うけれど、今のキュウソにはすでにそうして支えてくれる人が老若男女問わず本当にたくさんいる。きっとこれからも長い年月を共に過ごしていけるバンドになる。そしていつかは(本人たちが望んでいるかはわからないけど)武道館でワンマンが見たい、とこの日のライブを見ていて思った。
「リアルタイムで出会えたからライブが見れるの最高だね」
1.推しのいる生活
2.The band
3.メンヘラちゃん
4.馬乗りマウンティング
5.ファントムバイブレーション
6.ただしイケメンに限らない
7.こみゅ力
8.遊泳
9.空芯菜
10.ピクピク
11.TOSHI-LOWさん
12.炊き上がれ召し上がれ
13.米米米米
14.米
15.ビビった
16.スベテヨシゼンカナヤバジュモン
17.KMDT25
18.わかってんだよ
19.真面目に
20.5RATS
21.KMTR645
22.DQNなりたい、40代で死にたい
23.ハッピーポンコツ
24.ギリ昭和
encore
25.MEGA SHAKE IT!!
26.越えていけ
encore2
27.良いDJ
馬乗りマウンティング
https://youtu.be/3x83YDv_fcw
Next→ 2/3 The Mirraz @北浦和KYARA
「いちいち準備とか撤収するのが大変なのはわかってるんだけど、いろんな会場でライブがやりたい」
という発言をしていたキュウソならではのスケジュールである。
とはいえ、普通なら小箱を一通り回ってから大箱へ、というスケジュールが一般的である中で、関東でもかなりの狭さである千葉LOOKから翌日一気にトップクラスのキャパであるDiverCityに、というおよそ10倍ものキャパの違う会場でのライブというのは全くやり方が違うはず。前日のMCでは
「明日は違うことをする」
と言っていただけに、果たしてどんなライブになるのか。
この日は19時前に早くもP青木がステージに登場して前説がスタート。この日も相変わらず噛み噛みなのだが、最後の最後に
「まもなく開場です!」
と、開演を開場と言い間違える。1時間前に開場したから我々はここにいるんじゃないだろうか。
すぐさま場内が暗転して無事に開場ではなく開演を迎えるラウドなSEが鳴ると、前日は最初からステージ背面に張られていたツアーロゴのフラッグがせり上がって一斉にメンバーたちが登場し、「推しのいる生活」からスタートし「The band」へという流れは変わらないが、ステージが低くてメンバーの姿が見えづらい千葉LOOKとは違い、距離は遠くてもやはりしっかりと全体が見える。特にソゴウがドラムを叩く姿が常に見えているのは嬉しい限り。
なのでオカザワとカワクボが台の上に立つとより一層目立つし、セイヤが「The band」の
「オナって迷って」
のフレーズでギターのネックを手で擦るような仕草を見せるのも実によく見える。
とはいえやはり流れ自体は前日と変わらないのかな?と思っていたら、前日やっていた「良いDJ」は飛ばして「メンヘラちゃん」、さらには前日は後半に演奏されていた「馬乗りマウンティング」というめんどくさい人間シリーズをここで固めてくるという変化を見せる。
「馬乗りマウンティング」の演奏中には間奏でオカザワが台の上に乗ってU.S.Aダンス(やるたびにバランスを崩して落ちそうになっていた)、カワクボはジュリアナ的な手の振りで応戦というマウンティング合戦を見せていたのもこの日はよく見えた。
前日はセイヤが歌詞を間違えてしまった「ファントムバイブレーション」もさすがに初日ではないだけにもう間違えることはなかったが、曲中に「ブスでも可愛い子と付き合える理由」をつらつらと並べていく「ただしイケメンに限らない」では前日以上に多く理由を並べていき、
「健やか」「軽やか」
とパッと思いついたであろうとしか考えられないものまでも並んでいき、最後に
「こみゅ力」
をあげて「こみゅ力」に続いていく。
「今日は来てくれてありがとうー!」
と言うとドラムがドカドカと叩くというバンドのMCにありがちな流れを、ソゴウがそういうことを一切やらないドラマーであるがゆえにセイヤとヨコタが「ドカドカドカドカ」と口で再現する、というやり取りから、
セイヤ「むしろもっと長くやってみる?ドラムちょっと叩いて終わりかと思いきや全然終わらんで演奏みたいになる、みたいな(笑)
でもソゴウはうちのメンバーの中で一番ロックだから、決まり切ったことをやるのが好きじゃないねん」
ヨコタ「決まり切ったことをやっている人たちはロックじゃないと?(笑)」
と危なそうな流れに行きそうだったので、慌てて曲へ。
前日は演奏されなかった、つまりこの日がライブで初披露となった「遊泳」は「ギリ平成」の中でもややシリアスな空気を持った曲で、前日にこのタイミングで演奏されな「KENKO不KENKO」とは演奏している時の客席の空気が全く違う。
だからこそ、前日は「死なんかなー」を演奏していた過去曲ゾーンも「空芯菜」に変更したのだろう。なんで「空芯菜」にしたのかはわからないけれど。
ギターを置いたセイヤが客席に突入していく「TOSHI-LOW」さんでは観客の上でしっかりと直立すると、着ているTシャツを半分だけまくってその肉体を見せつけるのだが、腕にかなりの筋肉がついているし、腹にも無駄な肉が全くない。TOSHI-LOWや細美武士に憧れて体を鍛えているのが良くわかるし、ガリガリのひ弱そうな男というイメージは完全になくなってきている。
「きらきら星」のイントロがウォールオブデスという名の死への呼び水となる「炊き上がれ召し上がれ」は前日はキャパを勘案してか中央に1つだけ作ったウォールオブデスが、この日はオカザワとカワクボの前に計2つ作られるという大箱バージョンに。この辺りも細かいけれど、会場のキャパに合わせてパフォーマンスを変え、少しでも多くの人に参加して楽しんでもらおうというメンバーの気配りを感じる。
「米米米米」に合わせて「家」を「マイ」に変えるというおそらくこのツアーならではのアレンジを見せた後は前日同様にムーディーなBGMが流れる中での休憩タイム。
セイヤは「The band」の
「誰かと幸せになったって」
のフレーズでヨコタが結婚指輪を自分に見せびらかせるようにするのが気になっていたらしいが、ヨコタが結婚式の時のお色直しタイムで横を並んで歩く相手に自分を選んでくれたことを感謝していると語り、図らずもメンバー同士の仲の良さが感じられるような展開に。きっとこのメンバーはこれからもずっとこうやってみんなでワイワイしながら、時には悩みながらバンドを続けていくのだろう。
後半戦は前日とは流れがガラッと変わり、「ビビった」や「KMDT25」のように順番を入れ替えた曲や、「スベテヨシゼンカナヤバジュモン」と前日はやらなかった曲(というかこの曲を今になってやるとは思わなかった)も含めて演奏していくのだが、この日は「わかってんだよ」「真面目に」というストレートにバンドの熱さを放出する曲を最後ではなくこのタイミングで。特に「真面目に」はセイヤが声が多少不安定になってもひたすら張り上げて歌い、さらには床を転げ回りながらギターをかき鳴らす。
「全然真面目じゃない俺を許してくれますか?
全然真面目じゃない俺を愛してくれますか?」
とセイヤは「真面目に」で歌っているが、キュウソはどのバンドよりも真面目だ。それがライブを見ていると心から伝わってくるから、こうしてたくさんの人から愛されている。
「いつか報われると信じてる」
まだ報われたと思っていないのか、とも思うが、いつか自分たちが思い描くところまでたどり着くことを信じさせてくれるから、この曲をライブで聴くと本当に感動してしまう。
ここが東京ということもあってか、いきなり「東京オリンピックに出たい」「でもフルマラソンは絶対走りたくない。バンドマンやりがちやけど」となぜかマラソンの話になり、
「このメンバーの中でマラソンを走るとしたら誰か?」
と展開し、セイヤとヨコタが後ろを振り向くと、視線の先にいたソゴウは
「お前ら、予想通りに俺に走らせようとするな(笑)」
と自分に矛先が来るのがわかっていた様子。しかし最終的には見た目に反してスポーツマンである(リアルにずっと野球をやっていた)カワクボが適任ということに。カワクボはMCで話したりしないが、ボディービルダーみたいなポーズを取ったりするなどノリノリ。それはファンサービス的な面もあるのだろうが、実は非常に難しいベースを弾きながら細かいアクションや顔を作ったりするサービス精神旺盛なカワクボの人柄がよく出ている。
「KMTR645」では前日は絵だけだった「ペディグリー」のフレーズで本物のファービー人形が登場し、セイヤがマイクに近づけて喋らせようとするが全く何を言っているのかわからず。ここはある意味ではツアーでどう変化していくのか見ものであるが、なぜ昨日の今日でいきなりファービー人形が出てきたのかは全くわからない。
「DQNなりたい、40代で死にたい」の
「ヤンキー怖い」
の大合唱パートでセイヤが再び客席に突入すると、何度となく崩れそうになりながらも客席の中央にあるミラーボールの真下まで行き、そこで観客に支えられながら立つとミラーボールが煌びやかに光るというZeppならではのパフォーマンス。こうした演出や鮮やかな照明などは前日とは全く異なる部分だが、それを徐々に作っていくのではなく1日でガラッと変えてやれるのがキュウソのすごいところである。
そしてこの日のラスト2曲は前日はアンコールで演奏された2曲。しかも明らかに前日のライブではアンコールの締めは固定かと思われていたアルバムのタイトルトラック的な「ギリ昭和」もこの日は本編の最後に演奏されたことにより、「真面目に」が本編のラストだった前日とは全く違うタイプの余韻を残した。
なぜかこの日は観客による「ヤンキー怖い」の大合唱でアンコールを呼び込むと、ツアーTシャツに着替えたメンバーがステージに現れると、こうしてZeppでワンマンをやれている喜びを語り、「MEGA SHAKE IT!!」からこの日の締めに選ばれたのは「越えていけ」。
「こうあるべきだとかこうじゃなきゃいけないとか 誰の人生だ お前の人生だ」
タイアップのアニメの主人公(偉大な父を持つ野球少年)に向けられたようでもあり、メンバー自身、そして聴いてくれている全ての人に真っ直ぐに突き刺さるメッセージ。ただ単に耳障りや行儀の良い言葉を並べているのではなく、汗を飛び散らせながら本心を思いっきり叫んでいる。そこにはかつてメンバー自身が憧れ続けてきたであろう、男が惚れるような背中を見せてくれる男たちから受け継いできたものを感じる。やっぱりキュウソはこの日も面白いのはもちろん、本当にカッコよかった。
恒例の写真撮影をすると、やはりこの日も
「こんなデカいところでやらせてもらってるのにもう終わっちゃうのが寂しすぎる!」
と急遽もう1曲、この日まだ演奏されていなかった「良いDJ」を演奏し、踊りまくらせるとともに、昨日の今日でこれだけ選曲や流れを変えるということは、33公演全通しても絶対飽きないだろうし、それを面白いパフォーマンスではなくて音楽そのものでやれているというところにこのバンドの強さを感じさせた。実はキュウソは超アスリート気質のバンドなのである。
「あぁクソめんどくさいよ 人を信じることや 人に尽くせることは」 (「真面目に」)
「恋だの愛だのだけじゃない 特別な感情覚えたよ」 (「推しのいる生活」)
「尊敬され羨ましがられ褒められて優越感に浸りたい」 (「馬乗りマウンティング」)
「結局こみゅ力…」 (「ただしイケメンに限らない」)
「誰にも舐められないように 誰にも奪われないように 届ける前に言葉選んで」 (「遊泳」)
「わかり合えない お前とはずっと
わかり合いたい わかり合いたい」 (「ピクピク」)
これは「ギリ平成」に収録された曲たちの歌詞だが、こうして並べてみると「ギリ平成」は人と人とのコミュニケーションをテーマにしたアルバムであるということがわかる。言葉という人間だけにしか使えないコミュニケーション。だからこそそこには歌う人や演奏する人の人間性が否が応でも出てくる。それはキュウソのメンバーの持つ優しさや温かさそのもの。つまり「ギリ平成」は誰よりも人間らしさに溢れたキュウソのメンバーたちが人間そのものに向き合ったアルバムなのである。そんなアルバムが最も真価を発揮する場所は、やはりこうして人と人が向き合うライブという場所なのである。それを今回のツアーで証明していくことになるはず。
キュウソのライブは本当に楽しい。もうマイナスなことを何一つ考えることができないくらいに楽しい。普通こうした
「若い」「規模がある程度大きい」「サークルやウォールオブデスなどフィジカル的に楽しめる」
という要素が揃っているバンドのライブだと、ファン同士がSNSなどで批判し合ってたり、他のバンドのファンから批判されたりということもよく見かける。(キュウソの周りにいるバンドたちのファンでもしばしば目にする)
でもキュウソのファンがそういう状態になっているのをほぼ全くと言っていいくらいに見たことがない。それはキュウソがライブで掲げる
「楽しくても思いやりとマナーを忘れるな」
を誰よりもメンバーが1番実践しているからである。だからメンバーたちは常に客席の様子をちゃんと見ながらライブをしている。誰も傷ついたり悲しんだりすることのないように。それでいて作る音楽からは
「世間の需要とズレている」 (「The band」)
という通りにファンに媚びるようなことは全くしない。
実際に自分のすぐ横では、自分よりはるかに年上であろう夫婦の方がツアーTシャツを着てアルバムの曲で本当に楽しそうに踊っていた。
長くバンドが続いていくためには流行りに左右されることのないファンが付いていてくれるというのが重要だと思うけれど、今のキュウソにはすでにそうして支えてくれる人が老若男女問わず本当にたくさんいる。きっとこれからも長い年月を共に過ごしていけるバンドになる。そしていつかは(本人たちが望んでいるかはわからないけど)武道館でワンマンが見たい、とこの日のライブを見ていて思った。
「リアルタイムで出会えたからライブが見れるの最高だね」
1.推しのいる生活
2.The band
3.メンヘラちゃん
4.馬乗りマウンティング
5.ファントムバイブレーション
6.ただしイケメンに限らない
7.こみゅ力
8.遊泳
9.空芯菜
10.ピクピク
11.TOSHI-LOWさん
12.炊き上がれ召し上がれ
13.米米米米
14.米
15.ビビった
16.スベテヨシゼンカナヤバジュモン
17.KMDT25
18.わかってんだよ
19.真面目に
20.5RATS
21.KMTR645
22.DQNなりたい、40代で死にたい
23.ハッピーポンコツ
24.ギリ昭和
encore
25.MEGA SHAKE IT!!
26.越えていけ
encore2
27.良いDJ
馬乗りマウンティング
https://youtu.be/3x83YDv_fcw
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