THE BAWDIES Thank you for our Rock and Roll Tour 2004-2019 @日本武道館 1/17
- 2019/01/18
- 00:48
近年の勢いのある若手バンドからしたら幕張メッセやアリーナでやる前の段階の会場という感じでもあるが、日本武道館が今なおロックバンドにとっての聖地というイメージが強いのは、かつてThe Beatlesが来日公演を行った場所だからであるが、その「ロックバンドにとっての聖地である武道館」ということをどのバンドよりも強く意識してきたバンドである、THE BAWDIESの3回目の日本武道館ワンマンである。
結成15周年イヤーを迎えているTHE BAWDIESは昨年から47全都道府県ツアーを行っており、その終着地がこの日の日本武道館ワンマン。しかし早くから長蛇の列となった物販の列の中には大きなキャリーケースを持った人の姿も多く見受けられ、それぞれの住む街でのライブを見てから武道館に駆けつけているということがわかる。THE BAWDIESが好きな人たちはTHE BAWDIESがここに立つ意味をしっかり理解しているのだ。
まるでイギリスのテレビの音楽ショーのような、左右には赤い幕とミラーボール、ステージには段差のある白い舞台が組み上げられるという、過去2回の武道館ライブよりもはるかに派手な装飾となっている。
19時になると同時に場内が暗転し、おなじみの「SOUL MAN」が流れ始めると、ステージ両サイドにあるミラーボールと、客席の頭上にあるミラーボールが輝き出し、ステージ後方から黒いスーツで統一されたメンバーが登場。そのメンバーの後ろには「The Bawdies」の巨大なロゴが金色に輝いている。
SEが終わると同時にスポットライトに照らされたMARCYがドラムを叩き始め、ROYのベース、TAXMANのギター、最後にJIMのギターの音が重なる。メジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」のリード曲であった「EMOTION POTION」である。しかしツアーを48本回ってきたからか、MARCYのドラムの音がこれまで以上に強くなっているし、そのドラムのビートに引っ張られるようにバンドの演奏も前のめり。緊張ではなく、この場所に立ってロックンロールを鳴らしている喜びがその音や演奏する姿から溢れ出ている。
はやくも観客が飛び跳ねながら叫びまくる「NO WAY」、ROYの間違いなく過去最長の超ロングシャウトが響き渡る「IT'S TOO LATE」ではステージ前から大量の火柱が上がるという特効も使われるが、2日前にもこの日本武道館でライブを見ているので、少し違和感を感じる。それはスクリーンがなかったこと。そこには画面越しではなくて、今このステージで演奏している俺たちの姿だけを見ていてくれ、というメンバーの意志が感じられる。だから派手なように見えてライブ自体は本当にいつもどおりのロックンロールパーティーなのである。
ドラマ主題歌になってバンドの状況を大きく変えた「ROCK ME BABY」ではJIMとTAXMANのギターコンビがステージの白い舞台の階段を降り、観客に近づいて演奏。JIMのはしゃぎまくりながら弾く姿はステージが広いからかいつにも増して激しく見える。
「今回のツアーは本当に良いツアーになったんですけど、とんでもないことがありました。うちのドラムのMARCYさん、普段は全然喋らないんですけど、このツアー中にアンコールをいただいた時、先に1人でステージに出て行って、1人でお客さんに感謝を告げたんですよ。そんな姿、出会ってから30年くらい経ちましたけど、初めて見ましたよ!」
と、早くもROYによるMARCYいじりがスタートし、観客からの歓声に照れるMARCY。本人は
「そんな紹介はいらない(笑)」
といつものようにクールだが、序盤から大合唱を巻き起こした「SING YOUR SONG」と客席もステージも熱さを増していき、MARCYはこの辺りで早くもスーツを脱いで白シャツ姿に。
こちらはCMのタイアップになったことでやはり多くの人に聞かれるキッカケになった「LEMONADE」。いわゆるTHE BAWDIESのイメージ的な熱いロックンロールというタイプの曲ではないが、このミドルテンポの曲をシングルでリリースし、それがしっかり受け入れられたということが後の「THE SEVEN SEAS」なり「SUNSHINE」にも繋がったということが昨年リリースのベストアルバムで歴史をたどりながら聴くとよくわかるし、THE BAWDIESが決して勢いだけのバンドではなく、ソングライティング力をしっかり持っているからこそその位置まで来れたということをこの「LEMONADE」は示している。近年のフェスなどでは演奏されないこともあるが、やはりバンドにとって実に重要な曲であることは変わりない。
なんの前フリもなくTAXMANが歌い始めたメインボーカル曲「RAINY DAY」はそれまでのROYの濃いボーカル曲が続いた後に聴くとより一層爽やかに聴こえ、そのボーカルをこの日も轟かせまくっていたROYは
「2年前かな、台湾にライブをしに行ったんですよ。その時の打ち上げでMARCYさんは非常に空腹でして。でも台湾料理ってコースだと小皿で食べるような料理が多いんですよ。それでMARCYさんがご飯ものが食べたいというところでようやくもち米で作ったチャーハンが来て。MARCYさんはかなり前のめりになって、椅子から立って一歩前に出てごっそりそれをよそったんですね。で、一刻も早く食べたかったのか、そのまま座ろうとしたんですよ。でもMARCYさんは取る時に一歩前に出てるから、座ろうとしたところのちょっと後ろに椅子があるわけですよ。そうしたら当然MARCYさんは倒れて、顔にもち米がかかるわけですよ。
で、MARCYさんは今まで聞いたことないくらいにデカい声で「なっ!」て叫んで。あの瞬間、本当に全てがスローモーションに見えました。MARCYさんです!」
とMARCYいじりをひたすらに続けながら、「KEEP YOU HAPPY」で武道館をその名のとおりにハッピーな空気で満たすと、「TWIST AND SHOUT」をワンフレーズ演奏してから「A NEW DAY IS COMIN'」につなげるというライブならではのアレンジも。この辺りもかつてフェスなどの短い時間のライブで5曲くらいを1曲につなげるようなメドレーアレンジをしていたこのバンドのライブの強みが出ている。
個人的にライブで聴くのは久々な「1-2-3」はかつてこのバンドが横浜アリーナでワンマンをするようになった時に特大のロックンロールスケールを見せつけた曲。
そして早くもここで劇場の開幕を告げる音が鳴り、年末のフェスなどで披露されていた、女子高生の舟山卓子(TAXMAN)と転校生のソウダセイジ(ROY)の2人が出会う小芝居が始まり、その第2話的な、なぜかソウダセイジが卓子の家に下宿しており、クリスマスイブに卓子はソウダセイジに自分の思いを伝えるべくコッペパンのような色のマフラーをプレゼントするのだが、そこにソウダセイジの元カノであるというアカイトマト(MARCY)が現れ…という、演奏面やグルーヴだけでなく、かつては突っ走るROYに3人が付き合っているという感じだったこの小芝居のストーリーやメンバーの演技力も格段に進化している。しかもそこで小芝居が終わるため、この物語はさらに続いていく予感しかないのだが、この続きは一体いつどこで見ることになるのだろうか。
その小芝居を経て、お待ちかねの「HOT DOG」へ。JIMが白い舞台から飛び降りてギターをかき鳴らしまくり、観客の「1,2,3,4!」のカウントがさらなる熱狂を呼び起こしていくのだが、THE BAWDIESの最大の代表曲であるこの曲は最後に
「Dancin' to the R&R music」
と繰り返される。リリースからもう9年経ってもこの曲がライブで欠かさず演奏され続けてきたのは、
「ロックンロールで踊る」
というこのバンドの芯の部分を伝え続けてきた曲だから。その芯は今にいたるまで全く変わっていない。
「HEY!」という観客も含めた掛け声が響きながら、ROYとTAXMANのツインボーカル的な構成が絶妙なポップさを醸し出す「KICKS!」、ROYがシャウトしまくってから自身のベースでイントロを奏でる「I'M IN LOVE WITH YOU」というバンドにとってのポップサイドの曲が続くと、
「きっとみなさん楽しいことばかりの人生じゃないと思うんです。それは僕らもそうです。仕事や学校や人間関係とか、色々あると思います。でもそういう時に元気を出して、前を向いて明日に向かっていってほしいわけです。
じゃあ元気を出したい時にどうすればいいのか?僕らはずっと言い続けてきました。ロックンロールがあるじゃないか、THE BAWDIESがいるじゃないかと。僕らは80,90歳になってもロックンロールを鳴らし続けます。そして1人でも多くの人をロックンロールで笑顔にしたい。だからこれからも元気が欲しい時にはTHE BAWDIESに会いに来てください。THE BAWDIESに頼ってください。我々は全力でそれに応えますから」
とROYがTHE BAWDIESの活動理念そのものを語る。
知らない人の思いを背負うというのは人によっては苦しくなるし、重荷になる。自分だったらわざわざそんなものを背負うことはできない。でもTHE BAWDIESは進んでそれを背負う。背負うことによってそれがバンドの力になるし、背負っている人にロックンロールの素晴らしさを見せてあげることができるから。
かといってTHE BAWDIESは媚びたり、安牌を選ぶようなことを一切してこなかった。「HOT DOG」のような曲を量産することをせずにただひたすらにその時に自分たちがやりたいことをバンドとして曲にして変化・進化してきた。もしかしたらそれは不器用な進み方だったかもしれないし、戦略という点では正解ではなかったこともあったかもしれない。でも、だからこそ常にTHE BAWDIESには人間性が溢れている。メンバー以外の誰かの顔がその音楽や活動から浮かんでくることがない。ただひたすらにロックンロールを転がしてきた15年間だった。
その思いを形にしたかのような「THE EDGE」から、再びTAXMANがメインボーカルを務める「B.P.B」ではROYとTAXMANが立ち位置を入れ替え、TAXMANがセンターに立って歌う。この武道館のステージの真ん中から眺めた景色はTAXMANにどう映っていたのだろうか。
かたやROYは間奏のベースソロを弾く際に必要以上にゆーっくりと階段を降りてステージ最前まで出るというパフォーマンスを見せ、JIMとMARCYは顔を見合わせて爆笑。そのリアクションから、これはもしかしたらROYのアドリブだったのかもしれない。そしてROYがベースを弾き始めると、TAXMANも前に出てきて拡声器を手にして叫び、JIMまでもが前に出てきて間奏を演奏。しかし前にはマイクがないため、3人が顔を見合わせて慌ててマイクの前に戻って最後のサビに突入すると、それまでよりさらに一段階熱狂度合いが上がる。
続く「YOU GOTTA DANCE」や、冒頭の「EMOTION POTION」もそうだが、THE BAWDIESはこうして一度ブレイクさせてから盛り上げるのが本当に上手いというか、そこに関しては天性のものを感じさせる。それがフェスなどで初めて見た人を引き込んできた最大の要素なんじゃないだろうか、と最初は名前知ってるからちょっと見てみようかな、くらいの感じだった人たちを最後には飛び跳ねさせまくるようになっている姿を何度も見てきただけに思う。
前回の武道館では最後の最後に客電が点いた中で演奏された「JUST BE COOL」を今回はこの位置で演奏して止まるところをしらない熱狂っぷりを描き出すと、
「去年15年を総括するベストアルバムを出しました。でもその中には1曲だけ新曲が入ってます。それは15年をまとめてはい終わり!じゃなくてTHE BAWDIESがこれからも転がり続けていくのを示すためです。その曲を最後に演奏して終わりたいと思います!」
とROYが15周年を迎えてもこれからもバンドが変わらずに進み続けるという意志を改めて示して演奏されたのは「FEELIN' FREE」。THE BAWDIESらしい荒々しいロックンロールであれど、JIMのギターのエフェクティブな音は明確にこれまでにない、このバンドのさらなる可能性として鳴っている。これからもロックンロールサイドの曲をたくさん作っていくと思うが、それはこれまでの曲の焼き直し的なものには絶対にならないはずだ。
本編が終わってメンバーがステージから捌けると、暗闇の中で何やら転換が行われ、照明がつく前に音が鳴らされる。すると照明がつき、スーツを脱いで白シャツ姿になったメンバーと、両サイドにはストリングスチームが。この武道館だからこその特別な編成で演奏されたのはこの武道館の前にリリースされた最新シングル「HAPPY RAYS」。普通なら武道館の前だから勢いをつけるロックンロールを!となりそうなものだが、THE BAWDIESは初武道館の前にも決してそうしたタイプではない「RED ROCKET SHIP」をリリースしたりと、このタイミングだからこそ逆に攻めの一手を打ってきた。この「HAPPY RAYS」もそうで、ストリングスの美しいサウンドがまさに幸せのシャワーを降り注がせているかのようだった。
「我々が最初に武道館でライブをやった時に、1番最初にやった曲」
と言って演奏されたのは、ROY、JIM、TAXMANの3人が中央に集まってネックを合わせるように演奏する「I BEG YOU」。ある意味ではTHE BAWDIESの始まりとも言える曲がこの聖地・武道館で再び鳴らされている。何というか、演奏しているメンバーが実に楽しそうだからか、演奏されているこの曲自身がここで鳴らされていることを凄く喜んでいるようにすら聞こえる。
そして、
「なぜ我々がこの日本武道館にこだわるかと言うと、1966年にThe Beatlesがこの場所で初めてライブを行いました。その時が日本でロックンロールが始まった瞬間だと我々は思っております。
でもこれからもっと若い世代のバンドが出てくるだろうし、もしかしたらThe Beatlesを知らない、ロックンロールって何?っていうバンドも出てくるかもしれませんし、この日本武道館よりさらに広い会場でやるためのステップとしてここでライブをするバンドもたくさんいると思うんです。
でも僕らはロックンロールを日本にずっと根付かせていきたいし、日本武道館よりも広い場所でやらなくたっていいんです。でもずっと日本武道館でライブがやりたい。これで終わりじゃないんです。5回6回、さらにその先も。さっきも言いましたけど、80歳や90歳になってもロックンロールを鳴らし続けていきたいんです」
と、改めてロックンロールを鳴らす理由、この日本武道館がこのバンドにとって聖地であり続けているかという理由をしっかりと語り、その思いを全部詰め込んでこれからもロックンロールし続けていくことを示すために「KEEP ON ROCKIN'」を演奏。その姿があまりにもカッコよくて、頼もしすぎて涙が出てきてしまったのだが、おなじみの振り切れたシャウトによるコール&レスポンスが響き、最後のサビでは銀テープが放たれると、寝転がりながらギターを弾きまくるJIMの後ろでROYとTAXMANは一つのマイクで一緒に歌っていた。その姿を見ていたら涙は引っ込み、笑顔になっていた。間違いなく、この日もこのバンドから元気と明日のために前を向く力をもらったのだった。
演奏が終わるとROYが再びMARCYをいじりまくる写真撮影から、メンバー全員が「HAPPY RAYS」の武道館特別バージョンに入っていた法被に着替えてのわっしょいへ。それを終えても左右の花道から観客に深々とお辞儀をする姿からはこの場所から帰りたくないという雰囲気も察せられたが、最後にはこのライブが映像作品化すること、次のツアーが6月から始まること、つまりはやっぱり全く止まらずに転がり続けることを示した、THE BAWDIESの3回目の聖地でのワンマンとなった。
始まる前はやっぱり2階スタンドの1番上の方や端っこは空いてて。売り切れなかった。でもライブが始まればそんなことは一切気にならないくらいに楽しかったし、カッコいい。夏フェスで集客が厳しい場面があってもTHE BAWDIESはいつもそうだった。
「今が1番楽しいし、最高」
とROYが言っていた通りだった。
THE BAWDIESは奇跡みたいなバンドである。そもそも幼少期からの友達である4人(TAXMANだけは途中からだけど、学生時代からの友人なことは変わらない)がずっと一緒にいるだけでもすごいのに、メンバー全員が同じロックンロールという特に当時流行っていない音楽から衝撃を受けて、全員がロックンロールの虜になり、一緒にバンドを始めて今でも一緒にロックンロールを続けている。やっぱり、この4人はロックンロールの神様に選ばれた存在なのだ。
「ロックンロールを日本で鳴らして、広めてくれ」
と。だからTHE BAWDIESのライブはロックンロールの魔法がかかってるとしか思えないような瞬間ばかりだ。だから通算100回以上はTHE BAWDIESのライブを見ているけれど、良くなかったと思うライブを見たことがない。いつだってフェスに出ればその日のベストアクトをかっさらうようなライブだけを見せてくれてきた。だから絶対に飽きないし、これからも一緒に転がり続けていきたいと思う。
ポール・マッカートニーは今でもこの武道館でライブをしているけれど、ジョン・レノンもジョージ・ハリスンももうこの日本武道館に立つことはない。でもこれからも我々は生きている限りはTHE BAWDIESがこの日本武道館に立つ姿を何度だって見ることができる。そしてその度にロックンロールがなんてカッコよくて楽しいものなのかを感じることができる。こんなに幸せなことがあるだろうか。
だからまた会いにいくし、これからもこのバンドに頼り続けて、生きていく力をもらいにいく。
1.EMOTION POTION
2.NO WAY
3.IT'S TOO LATE
4.ROCK ME BABY
5.SING YOUR SONG
6.LEMONADE
7.RAINY DAY
8.KEEP YOU HAPPY
9.TWIST AND SHOUT ~ A NEW DAY IS COMIN'
10.1-2-3
11.HOT DOG
12.KICKS!
13.I'M IN LOVE WITH YOU
14.THE EDGE
15.B.P.B
16.YOU GOTTA DANCE
17.JUST BE COOL
18.FEELIN' FREE
encore
19.HAPPY RAYS
20.I BEG YOU
21.KEEP ON ROCKIN'
KEEP ON ROCKIN'
https://youtu.be/IuzrSWYN_JA
Next→ 1/22 キュウソネコカミ @千葉LOOK
結成15周年イヤーを迎えているTHE BAWDIESは昨年から47全都道府県ツアーを行っており、その終着地がこの日の日本武道館ワンマン。しかし早くから長蛇の列となった物販の列の中には大きなキャリーケースを持った人の姿も多く見受けられ、それぞれの住む街でのライブを見てから武道館に駆けつけているということがわかる。THE BAWDIESが好きな人たちはTHE BAWDIESがここに立つ意味をしっかり理解しているのだ。
まるでイギリスのテレビの音楽ショーのような、左右には赤い幕とミラーボール、ステージには段差のある白い舞台が組み上げられるという、過去2回の武道館ライブよりもはるかに派手な装飾となっている。
19時になると同時に場内が暗転し、おなじみの「SOUL MAN」が流れ始めると、ステージ両サイドにあるミラーボールと、客席の頭上にあるミラーボールが輝き出し、ステージ後方から黒いスーツで統一されたメンバーが登場。そのメンバーの後ろには「The Bawdies」の巨大なロゴが金色に輝いている。
SEが終わると同時にスポットライトに照らされたMARCYがドラムを叩き始め、ROYのベース、TAXMANのギター、最後にJIMのギターの音が重なる。メジャーデビューアルバム「THIS IS MY STORY」のリード曲であった「EMOTION POTION」である。しかしツアーを48本回ってきたからか、MARCYのドラムの音がこれまで以上に強くなっているし、そのドラムのビートに引っ張られるようにバンドの演奏も前のめり。緊張ではなく、この場所に立ってロックンロールを鳴らしている喜びがその音や演奏する姿から溢れ出ている。
はやくも観客が飛び跳ねながら叫びまくる「NO WAY」、ROYの間違いなく過去最長の超ロングシャウトが響き渡る「IT'S TOO LATE」ではステージ前から大量の火柱が上がるという特効も使われるが、2日前にもこの日本武道館でライブを見ているので、少し違和感を感じる。それはスクリーンがなかったこと。そこには画面越しではなくて、今このステージで演奏している俺たちの姿だけを見ていてくれ、というメンバーの意志が感じられる。だから派手なように見えてライブ自体は本当にいつもどおりのロックンロールパーティーなのである。
ドラマ主題歌になってバンドの状況を大きく変えた「ROCK ME BABY」ではJIMとTAXMANのギターコンビがステージの白い舞台の階段を降り、観客に近づいて演奏。JIMのはしゃぎまくりながら弾く姿はステージが広いからかいつにも増して激しく見える。
「今回のツアーは本当に良いツアーになったんですけど、とんでもないことがありました。うちのドラムのMARCYさん、普段は全然喋らないんですけど、このツアー中にアンコールをいただいた時、先に1人でステージに出て行って、1人でお客さんに感謝を告げたんですよ。そんな姿、出会ってから30年くらい経ちましたけど、初めて見ましたよ!」
と、早くもROYによるMARCYいじりがスタートし、観客からの歓声に照れるMARCY。本人は
「そんな紹介はいらない(笑)」
といつものようにクールだが、序盤から大合唱を巻き起こした「SING YOUR SONG」と客席もステージも熱さを増していき、MARCYはこの辺りで早くもスーツを脱いで白シャツ姿に。
こちらはCMのタイアップになったことでやはり多くの人に聞かれるキッカケになった「LEMONADE」。いわゆるTHE BAWDIESのイメージ的な熱いロックンロールというタイプの曲ではないが、このミドルテンポの曲をシングルでリリースし、それがしっかり受け入れられたということが後の「THE SEVEN SEAS」なり「SUNSHINE」にも繋がったということが昨年リリースのベストアルバムで歴史をたどりながら聴くとよくわかるし、THE BAWDIESが決して勢いだけのバンドではなく、ソングライティング力をしっかり持っているからこそその位置まで来れたということをこの「LEMONADE」は示している。近年のフェスなどでは演奏されないこともあるが、やはりバンドにとって実に重要な曲であることは変わりない。
なんの前フリもなくTAXMANが歌い始めたメインボーカル曲「RAINY DAY」はそれまでのROYの濃いボーカル曲が続いた後に聴くとより一層爽やかに聴こえ、そのボーカルをこの日も轟かせまくっていたROYは
「2年前かな、台湾にライブをしに行ったんですよ。その時の打ち上げでMARCYさんは非常に空腹でして。でも台湾料理ってコースだと小皿で食べるような料理が多いんですよ。それでMARCYさんがご飯ものが食べたいというところでようやくもち米で作ったチャーハンが来て。MARCYさんはかなり前のめりになって、椅子から立って一歩前に出てごっそりそれをよそったんですね。で、一刻も早く食べたかったのか、そのまま座ろうとしたんですよ。でもMARCYさんは取る時に一歩前に出てるから、座ろうとしたところのちょっと後ろに椅子があるわけですよ。そうしたら当然MARCYさんは倒れて、顔にもち米がかかるわけですよ。
で、MARCYさんは今まで聞いたことないくらいにデカい声で「なっ!」て叫んで。あの瞬間、本当に全てがスローモーションに見えました。MARCYさんです!」
とMARCYいじりをひたすらに続けながら、「KEEP YOU HAPPY」で武道館をその名のとおりにハッピーな空気で満たすと、「TWIST AND SHOUT」をワンフレーズ演奏してから「A NEW DAY IS COMIN'」につなげるというライブならではのアレンジも。この辺りもかつてフェスなどの短い時間のライブで5曲くらいを1曲につなげるようなメドレーアレンジをしていたこのバンドのライブの強みが出ている。
個人的にライブで聴くのは久々な「1-2-3」はかつてこのバンドが横浜アリーナでワンマンをするようになった時に特大のロックンロールスケールを見せつけた曲。
そして早くもここで劇場の開幕を告げる音が鳴り、年末のフェスなどで披露されていた、女子高生の舟山卓子(TAXMAN)と転校生のソウダセイジ(ROY)の2人が出会う小芝居が始まり、その第2話的な、なぜかソウダセイジが卓子の家に下宿しており、クリスマスイブに卓子はソウダセイジに自分の思いを伝えるべくコッペパンのような色のマフラーをプレゼントするのだが、そこにソウダセイジの元カノであるというアカイトマト(MARCY)が現れ…という、演奏面やグルーヴだけでなく、かつては突っ走るROYに3人が付き合っているという感じだったこの小芝居のストーリーやメンバーの演技力も格段に進化している。しかもそこで小芝居が終わるため、この物語はさらに続いていく予感しかないのだが、この続きは一体いつどこで見ることになるのだろうか。
その小芝居を経て、お待ちかねの「HOT DOG」へ。JIMが白い舞台から飛び降りてギターをかき鳴らしまくり、観客の「1,2,3,4!」のカウントがさらなる熱狂を呼び起こしていくのだが、THE BAWDIESの最大の代表曲であるこの曲は最後に
「Dancin' to the R&R music」
と繰り返される。リリースからもう9年経ってもこの曲がライブで欠かさず演奏され続けてきたのは、
「ロックンロールで踊る」
というこのバンドの芯の部分を伝え続けてきた曲だから。その芯は今にいたるまで全く変わっていない。
「HEY!」という観客も含めた掛け声が響きながら、ROYとTAXMANのツインボーカル的な構成が絶妙なポップさを醸し出す「KICKS!」、ROYがシャウトしまくってから自身のベースでイントロを奏でる「I'M IN LOVE WITH YOU」というバンドにとってのポップサイドの曲が続くと、
「きっとみなさん楽しいことばかりの人生じゃないと思うんです。それは僕らもそうです。仕事や学校や人間関係とか、色々あると思います。でもそういう時に元気を出して、前を向いて明日に向かっていってほしいわけです。
じゃあ元気を出したい時にどうすればいいのか?僕らはずっと言い続けてきました。ロックンロールがあるじゃないか、THE BAWDIESがいるじゃないかと。僕らは80,90歳になってもロックンロールを鳴らし続けます。そして1人でも多くの人をロックンロールで笑顔にしたい。だからこれからも元気が欲しい時にはTHE BAWDIESに会いに来てください。THE BAWDIESに頼ってください。我々は全力でそれに応えますから」
とROYがTHE BAWDIESの活動理念そのものを語る。
知らない人の思いを背負うというのは人によっては苦しくなるし、重荷になる。自分だったらわざわざそんなものを背負うことはできない。でもTHE BAWDIESは進んでそれを背負う。背負うことによってそれがバンドの力になるし、背負っている人にロックンロールの素晴らしさを見せてあげることができるから。
かといってTHE BAWDIESは媚びたり、安牌を選ぶようなことを一切してこなかった。「HOT DOG」のような曲を量産することをせずにただひたすらにその時に自分たちがやりたいことをバンドとして曲にして変化・進化してきた。もしかしたらそれは不器用な進み方だったかもしれないし、戦略という点では正解ではなかったこともあったかもしれない。でも、だからこそ常にTHE BAWDIESには人間性が溢れている。メンバー以外の誰かの顔がその音楽や活動から浮かんでくることがない。ただひたすらにロックンロールを転がしてきた15年間だった。
その思いを形にしたかのような「THE EDGE」から、再びTAXMANがメインボーカルを務める「B.P.B」ではROYとTAXMANが立ち位置を入れ替え、TAXMANがセンターに立って歌う。この武道館のステージの真ん中から眺めた景色はTAXMANにどう映っていたのだろうか。
かたやROYは間奏のベースソロを弾く際に必要以上にゆーっくりと階段を降りてステージ最前まで出るというパフォーマンスを見せ、JIMとMARCYは顔を見合わせて爆笑。そのリアクションから、これはもしかしたらROYのアドリブだったのかもしれない。そしてROYがベースを弾き始めると、TAXMANも前に出てきて拡声器を手にして叫び、JIMまでもが前に出てきて間奏を演奏。しかし前にはマイクがないため、3人が顔を見合わせて慌ててマイクの前に戻って最後のサビに突入すると、それまでよりさらに一段階熱狂度合いが上がる。
続く「YOU GOTTA DANCE」や、冒頭の「EMOTION POTION」もそうだが、THE BAWDIESはこうして一度ブレイクさせてから盛り上げるのが本当に上手いというか、そこに関しては天性のものを感じさせる。それがフェスなどで初めて見た人を引き込んできた最大の要素なんじゃないだろうか、と最初は名前知ってるからちょっと見てみようかな、くらいの感じだった人たちを最後には飛び跳ねさせまくるようになっている姿を何度も見てきただけに思う。
前回の武道館では最後の最後に客電が点いた中で演奏された「JUST BE COOL」を今回はこの位置で演奏して止まるところをしらない熱狂っぷりを描き出すと、
「去年15年を総括するベストアルバムを出しました。でもその中には1曲だけ新曲が入ってます。それは15年をまとめてはい終わり!じゃなくてTHE BAWDIESがこれからも転がり続けていくのを示すためです。その曲を最後に演奏して終わりたいと思います!」
とROYが15周年を迎えてもこれからもバンドが変わらずに進み続けるという意志を改めて示して演奏されたのは「FEELIN' FREE」。THE BAWDIESらしい荒々しいロックンロールであれど、JIMのギターのエフェクティブな音は明確にこれまでにない、このバンドのさらなる可能性として鳴っている。これからもロックンロールサイドの曲をたくさん作っていくと思うが、それはこれまでの曲の焼き直し的なものには絶対にならないはずだ。
本編が終わってメンバーがステージから捌けると、暗闇の中で何やら転換が行われ、照明がつく前に音が鳴らされる。すると照明がつき、スーツを脱いで白シャツ姿になったメンバーと、両サイドにはストリングスチームが。この武道館だからこその特別な編成で演奏されたのはこの武道館の前にリリースされた最新シングル「HAPPY RAYS」。普通なら武道館の前だから勢いをつけるロックンロールを!となりそうなものだが、THE BAWDIESは初武道館の前にも決してそうしたタイプではない「RED ROCKET SHIP」をリリースしたりと、このタイミングだからこそ逆に攻めの一手を打ってきた。この「HAPPY RAYS」もそうで、ストリングスの美しいサウンドがまさに幸せのシャワーを降り注がせているかのようだった。
「我々が最初に武道館でライブをやった時に、1番最初にやった曲」
と言って演奏されたのは、ROY、JIM、TAXMANの3人が中央に集まってネックを合わせるように演奏する「I BEG YOU」。ある意味ではTHE BAWDIESの始まりとも言える曲がこの聖地・武道館で再び鳴らされている。何というか、演奏しているメンバーが実に楽しそうだからか、演奏されているこの曲自身がここで鳴らされていることを凄く喜んでいるようにすら聞こえる。
そして、
「なぜ我々がこの日本武道館にこだわるかと言うと、1966年にThe Beatlesがこの場所で初めてライブを行いました。その時が日本でロックンロールが始まった瞬間だと我々は思っております。
でもこれからもっと若い世代のバンドが出てくるだろうし、もしかしたらThe Beatlesを知らない、ロックンロールって何?っていうバンドも出てくるかもしれませんし、この日本武道館よりさらに広い会場でやるためのステップとしてここでライブをするバンドもたくさんいると思うんです。
でも僕らはロックンロールを日本にずっと根付かせていきたいし、日本武道館よりも広い場所でやらなくたっていいんです。でもずっと日本武道館でライブがやりたい。これで終わりじゃないんです。5回6回、さらにその先も。さっきも言いましたけど、80歳や90歳になってもロックンロールを鳴らし続けていきたいんです」
と、改めてロックンロールを鳴らす理由、この日本武道館がこのバンドにとって聖地であり続けているかという理由をしっかりと語り、その思いを全部詰め込んでこれからもロックンロールし続けていくことを示すために「KEEP ON ROCKIN'」を演奏。その姿があまりにもカッコよくて、頼もしすぎて涙が出てきてしまったのだが、おなじみの振り切れたシャウトによるコール&レスポンスが響き、最後のサビでは銀テープが放たれると、寝転がりながらギターを弾きまくるJIMの後ろでROYとTAXMANは一つのマイクで一緒に歌っていた。その姿を見ていたら涙は引っ込み、笑顔になっていた。間違いなく、この日もこのバンドから元気と明日のために前を向く力をもらったのだった。
演奏が終わるとROYが再びMARCYをいじりまくる写真撮影から、メンバー全員が「HAPPY RAYS」の武道館特別バージョンに入っていた法被に着替えてのわっしょいへ。それを終えても左右の花道から観客に深々とお辞儀をする姿からはこの場所から帰りたくないという雰囲気も察せられたが、最後にはこのライブが映像作品化すること、次のツアーが6月から始まること、つまりはやっぱり全く止まらずに転がり続けることを示した、THE BAWDIESの3回目の聖地でのワンマンとなった。
始まる前はやっぱり2階スタンドの1番上の方や端っこは空いてて。売り切れなかった。でもライブが始まればそんなことは一切気にならないくらいに楽しかったし、カッコいい。夏フェスで集客が厳しい場面があってもTHE BAWDIESはいつもそうだった。
「今が1番楽しいし、最高」
とROYが言っていた通りだった。
THE BAWDIESは奇跡みたいなバンドである。そもそも幼少期からの友達である4人(TAXMANだけは途中からだけど、学生時代からの友人なことは変わらない)がずっと一緒にいるだけでもすごいのに、メンバー全員が同じロックンロールという特に当時流行っていない音楽から衝撃を受けて、全員がロックンロールの虜になり、一緒にバンドを始めて今でも一緒にロックンロールを続けている。やっぱり、この4人はロックンロールの神様に選ばれた存在なのだ。
「ロックンロールを日本で鳴らして、広めてくれ」
と。だからTHE BAWDIESのライブはロックンロールの魔法がかかってるとしか思えないような瞬間ばかりだ。だから通算100回以上はTHE BAWDIESのライブを見ているけれど、良くなかったと思うライブを見たことがない。いつだってフェスに出ればその日のベストアクトをかっさらうようなライブだけを見せてくれてきた。だから絶対に飽きないし、これからも一緒に転がり続けていきたいと思う。
ポール・マッカートニーは今でもこの武道館でライブをしているけれど、ジョン・レノンもジョージ・ハリスンももうこの日本武道館に立つことはない。でもこれからも我々は生きている限りはTHE BAWDIESがこの日本武道館に立つ姿を何度だって見ることができる。そしてその度にロックンロールがなんてカッコよくて楽しいものなのかを感じることができる。こんなに幸せなことがあるだろうか。
だからまた会いにいくし、これからもこのバンドに頼り続けて、生きていく力をもらいにいく。
1.EMOTION POTION
2.NO WAY
3.IT'S TOO LATE
4.ROCK ME BABY
5.SING YOUR SONG
6.LEMONADE
7.RAINY DAY
8.KEEP YOU HAPPY
9.TWIST AND SHOUT ~ A NEW DAY IS COMIN'
10.1-2-3
11.HOT DOG
12.KICKS!
13.I'M IN LOVE WITH YOU
14.THE EDGE
15.B.P.B
16.YOU GOTTA DANCE
17.JUST BE COOL
18.FEELIN' FREE
encore
19.HAPPY RAYS
20.I BEG YOU
21.KEEP ON ROCKIN'
KEEP ON ROCKIN'
https://youtu.be/IuzrSWYN_JA
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