COUNTDOWN JAPAN 18/19 day3 @幕張メッセ 12/30
- 2019/01/03
- 00:47
3日目。会場の年越しまでのカウンターの時間が初日からはるかに減ってきているのを見ると、もう2018年が終わろうとしていると実感する。
12:00〜 amazarashi [COSMO STAGE]
昨年は初日のトップバッターとしてこのステージに出演。フェスにはほとんど出ない異質の存在でありながらも今や武道館360°ワンマンを行うくらいの存在になっている、amazarashi。今年は3日目のトップバッターとしてこのステージに帰還。
おなじみの紗幕がステージに張られた中でその向こう側にメンバーが登場すると、紗幕に歌詞が次々に映し出される「ワードプロセッサー」からスタートし、
「COUNTDOWN JAPAN!青森から来ました、amazarashiです!」
と秋田ひろむが挨拶。紛れもなく2018年のライブ納めならではの気合いが入っている。
最新シングルのタイトル曲「リビングデッド」は武道館の時と同様に「新言語秩序」と「言葉ゾンビ」の対立を描くような映像をもって演奏され、そのままMVの映像が流れた「ジュブナイル」へ。秋田の声の出方は申し分ないが、このamazarashi結成に至るまでを描いたようなMVを見ると、武道館の時はライブに参加していた豊川真奈美(ピアノ)の不在は少し大きなものとして感じてしまう。
とはいえ普段のワンマンでは基本的に着席したままで鑑賞するというライブスタイルなだけに、手拍子が起きたり、サビで腕が上がったりするのはフェスならではだな、とも思うし、普段はそうはできないけれど、amazarashiのライブでそういう楽しみ方をしたい人も少なからずいるんだろうな、とも思える。
特になんの説明もなく演奏された新曲「さよならごっこ」は淡々としたリズムで進んでいき、途中からノイジーなギターが被さってくるという構成。演出も一切なかったが故にまだ曲の全体像が見えたとは言い難い。年明けから放送されるアニメのタイアップが決まっているだけに、その内容に沿って書かれた可能性もある。
しかしかつてもこのフェスに出演した時に「命にふさわしい」を新曲として披露していただけに、このフェスに出ることによってライブの場で新曲を鳴らすことができるというのは間違いなくバンド側にとっても我々側にとってもプラスだ。なかなか見たい人が全員観れるというわけではないけれど。
そしてMVの人形が潰されていく映像が流れた「命にふさわしい」の
「心さえ 心さえ 心さえ なかったなら」
という秋田の壮絶なボーカルが響いた後に、
「ありがとうございました、amazarashiでした!」
と言って演奏されたのは「独白」の検閲解除バージョン。てっきり最後は「空に歌えば」や「フィロソフィー」あたりかと思っていた。なぜならこの「独白」は先日の武道館公演の時のストーリーがあったからこそ生きるような曲だと思っていたから。(きっと武道館に行った人はみんなそう思っていたはず)
でもストーリーを語ることなく、曲を積み重ねることでストーリーを作ることをしなくても、この曲の
「言葉を取り戻せ」
というメッセージはしっかりと伝わっていた。そうしたこの曲の持つ力はこうしてフェスで演奏されないとわからなかったかもしれない。
たった30分という、ワンマン慣れしてる側からしたらはるかに短い時間。でもその時間だからこそワンマンの時とは違うように感じられるものが確かにある。いろんなフェスに出るようなアーティストではないけれど、せめて年末に毎年このフェスのこの会場でamazarashi納めをすることができたら。
1.ワードプロセッサー
2.リビングデッド
3.ジュブナイル
4.さよならごっこ
5.命にふさわしい
6.独白
・フレデリック [EARTH STAGE]
amazarashi終わりでEARTHに移動すると、初のEARTH進出にもかかわらず、凄まじい数の人を動員していた、フレデリック。
もう着いた時には完全に終盤で、「かなしいうれしい」で手拍子が起こると、三原健司は
「この曲をこのステージまで連れてくるって、俺言ったよな?」
と言ってから「オドループ」を演奏した。カメラ目線の健司と赤頭のギターソロも含めて踊りまくりの楽しい空間だったけれど、まだ「オドループ」のバンド、という認知のされ方だった時にCOSMO STAGEでこのフェスに初出演した時から、このバンドはずっとこのステージを目指し続けてきた。それを見てきたからこそ、ただ楽しいだけじゃなくて感動があったし、
「いろんなバンドやアーティストがこのフェスにはたくさん出てますけど、その人の1番の魅力が伝わるのはワンマンです。このフェスでライブを見てみて良いと思ったら、ワンマンに行ってみてください。ワンマンに行けば、そのアーティストはその気持ちに100で応えてくれます」
という健司のMCからは、このEARTH STAGEに立てるようになったからこその責任や自覚が感じられた。
ただ自分たちがデカいステージに立てて嬉しい、で終わるんじゃなくて、このステージを目指しているアーティストたちやこのフェスを目指しているアーティストたちの思いを背負ってここに立っている。なぜそう言うのかと言うと、フレデリックは「オドループ」やその前からずっと、音楽への愛を曲にしてきたバンドだからである。その気持ちがこのステージまで来れた最大の原動力と言っていいかもしれない。年明けにフレデリックのワンマンに行くから、その時にこの気持ちに100で応えてくれ。
13:15〜 sumika [EARTH STAGE]
こちらもフレデリック同様にEARTH STAGE初進出のsumika。本気のリハでメンバーがほぼフルで曲を演奏してくれるのも嬉しいが、このバンドの「MAGIC」ではなく、go! go! vanillasの「マジック」を片岡健太が歌い、
「プリティまで届け!」
と交通事故で入院しているプリティへの想いを口にした。その気持ちは必ず届いているはず。
本編では「フィクション」から華々しくスタートすると、「Lovers」で大合唱となり、「1.2.3…4.5.6」で踊りまくりと、全くもってこのステージが初めてとは思えないくらいの掌握っぷり。2018年にリリースしてヒットしたシングル「ファンファーレ」も、このフェスに初めて出演した時から演奏している「ふっかつのじゅもん」も、全ての曲がこの規模のステージで鳴らされるべきスケールとポップさを備えていたということが実によくわかるし、何よりもメンバーがみんなこのステージに立てている喜びを表情や演奏している姿から感じさせてくれるので、見ているこちらも心から楽しくなってくる。
現代の社会に対する警告のようなものを感じる歌詞の「ペルソナ・プロムナード」、じっくりと聴かせるタイプの「いいのに」というカップリング的な立ち位置の曲がセトリの中に入ってくるのも持ち時間が長いこのメインステージに立てたからこそだろうし、片岡がハンドマイクで動きながら歌い、前日の[ALEXANDROS]の川上洋平のようにステージ左右の花道のカメラに向かって歌ってから観客の方へカメラを回した「Summer Vacation」という緩急で言うなら「緩」の部分にあたる曲を続けて演奏できるのもその持ち時間の部分が大きい。
そして
「いつも、部屋で1人で曲を作る時にイメージしてる光景があって。それは野外ならROCK IN JAPANのGRASS STAGE、室内ならこのCOUNTDOWN JAPANのEARTH STAGEです」
と、片岡がこのステージが夢の舞台であったことを語ってから最後に大合唱を響かせたのは「「伝言歌」」。観客の合唱を煽る際に片岡は、
「これだけたくさんの人がいたから麻痺していました。みんな、じゃなくてあなた1人1人に歌ってるんだ!」
と言った。そうして目の前にいる1人1人に向かって歌っているから、これだけ大きなステージであっても距離が遠くなったとは感じない。いつもすぐ近くで歌ってくれているかのよう。どれだけ大きくなっても、sumikaという単語をバンド名にした意志は全く変わっていない。それはきっとアリーナワンマンや、夏に間違いなく立つであろうロッキンのGRASS STAGEでもそう思わせてくれるはず。
リハ.カルチャーショッカー
リハ.MAGIC
1.フィクション
2.Lovers
3.1.2.3…4.5.6
4.ファンファーレ
5.ふっかつのじゅもん
6.ペルソナ・プロムナード
7.いいのに
8.Summer Vacation
9.「伝言歌」
14:00〜 teto [COSMO STAGE]
2年連続出演となる、teto。2018年はフルアルバムをリリースし、自分の年間ベストアルバムに選出させてもらったくらいに飛躍を感じさせた1年だった。
おなじみのNirvana「Sliver」でメンバーが登場すると、アフロだったギターの山崎はラーメンマンみたいにサイドを剃り上げて髪を上で結わくという髪型になっており、一瞬違う人かと思ったのだが、いきなりステージに倒れこんだりという意味不明なパフォーマンスを見て山崎だな、と確認できた。最後に登場した小池は金髪にイメチェン。
「高層ビルと人工衛星」から始まると、もう小池はその衝動を止められないと言わんばかりに暴れまくりながら歌い、ステージから落ちてしまうんじゃないかと思うほど。そうなると出禁になってしまうのでそこは気をつけて欲しいが、普段のライブハウスでは客席にダイブしまくっている小池がロッキンオンのフェスでは全くダイブしないあたり、ちゃんとそこら辺はわきまえているというか、めちゃくちゃなようでいてちゃんと理性的にパフォーマンスしている部分もあるのだろう。
小池がサビを弾き語りのように歌ってからバンドで演奏された「トリーバーチの靴」はそのサビの部分を小池が
「歌え!」
と言ってマイクを客席に向けて合唱を煽る。まさかこんなデカいフェスのこんなにデカいステージでこの曲をみんなで歌えるような日が来るとは。
「こんだけたくさん人が来てくれて、見てくれて。でもどれだけたくさんの人が見に来てくれていても、俺はそこのメガネかけて首にタオル巻いた、ぼっちで来てるちんちくりんな、あんたみたいな男の痛みを歌いたいわけです!」
と言って「Pain Pain Pain」を演奏したのだが、最大の問題は小池がその発言をした時に指差して向いていた先が自分であった、という点である。なぜあれだけたくさんの人がいた中で小池の目に自分が止まったのかはわからないが、交友関係激狭、イケてるような人生では全くないし、これからも絶対そうはなれないからこそGOING STEADYや銀杏BOYZが響いた自分の姿を見て、何か同じようなものを小池が感じ取ってくれたのならば本望である。
小池の弾き語り的な歌い出しから、後半で一気にノイジーなバンド演奏が加わるという、銀杏BOYZの「人間」などへのリスペクトやオマージュが感じられるアレンジになった「光るまち」は一刻も早くこのバージョンでの音源が欲しいと思うくらいの進化を感じさせ、最後には
「もうホントに、刹那的な生き方とか全然望んでないから!」
とまるで友達に語りかけるようにアレンジされて歌われた「拝啓」。それはそのままこのバンドの活動に対して我々が望むことでもあるのだが、他のメンバーが先にステージを去る中、小池はドラムセットにダイブ。それはあまりにも刹那的過ぎやしないだろうか。
アルバムもリリースしたし、銀杏BOYZとも対バンしたし、と本当に良くも悪くも色々あったtetoの2018年。でもこの衝動を炸裂させまくるような姿の美しさと、その姿を見て感動しているこの感覚は絶対に本物だと信じている。だから、浅くてもいいから息をし続けてくれないか。
1.高層ビルと人工衛星
2.トリーバーチの靴
3.Pain Pain Pain
4.光るまち
5.拝啓
・ACIDMAN [GALAXY STAGE]
ちょうど着いた時には曲を演奏し終わって、大木伸夫がMCを始めようというタイミングだった。
「これから僕の宗教的なMCが始まりますが、なんの宗教にも入っていないんで安心してください(笑)」
(いつもの「生きること」について語る)
「お布施は出口の方で承っております(笑)」
と、かつてと違ってただ思想を伝えるのではなくて、そこに笑えるような要素を足して話せるようになっているのはいい年の取り方をしてきたんだな、と思うけれど、その後の「ALMA」の感動は変わらないし、フェスではトリで出た時にアンコールくらいでしかやらないイメージの「Your Song」は聴いていると2017年の11月にさいたまスーパーアリーナで開催された主催フェス「SAI」のことを、本当に良い日だったと思い出させる。
近年は人気バンドの裏でこのステージに出て非常に厳しい客入りという場面も見てきたし、同じようにこのフェスを初期から支えてきたくるりなども今やCOSMO STAGEに出るくらいになってしまったが、この日はまだこのバンドはGALAXY STAGEに出れるバンドだと思った。やっぱりライブのカッコよさはずっと変わらないどころか進化している。
15:15〜 BIGMAMA [GALAXY STAGE]
このGALAXY STAGEの番人と言っていいバンド、BIGMAMA。今年もやはりこのGALAXY STAGEへの出演。14/15にはこのステージの年越しも務めたバンドである。
「第九」のSEが流れてメンバーが登場すると、「Make Up Your Mind」からスタート。「# DIV/0!」と続けざまに曲を連発していくというのは近年の変化したライブのスタイルだが、リリースされたばかりのアルバム「-11°C」からも「Step-out Shepherd」が披露され、かと思えば東出のバイオリンが流麗に響く「秘密」と新旧交えた選曲にはフェスというお祭りだからこそみんなが楽しめる曲を、という部分と今の最新の自分たちの姿を見せるという音楽にひたすら真摯に向かってきた5人の姿勢が見える。
「ヴァイオリンが加わったメロコアバンド」という初期のこのバンドのスタイルが戻ってきた!と歓喜してしまうツービートの弾け飛ぶようなメロコアナンバー「POPCORN STAR」から「第九」をモチーフにした大合唱曲「No.9」とサウンドのスタイルは違えど多幸感が会場を包んで行き、リアドは間奏でバスドラを踏みながら立ち上がって「幕張ー!」と叫ぶ。コーラスを牽引する東出と柿沼も実に楽しそうにステージを動き回っているし、それは安井がその後ろでしっかりリズムを支えているからだ。
そのメンバーの姿からは、ソングライターでありボーカリストである金井がガンガン引っ張るというよりも、全員で力を合わせてこのバンドの魅力をたくさんの人に伝えていこうという姿勢が見える。
「MCをしないで曲をひたすら連発していくスタイルに変えた」
と宣言しているものの、やはり脳裏には何か引っかかったままのものがある。だからこそ喋らなくていいっていうスタイルに強引に変えに行ったんじゃないかと。
だから去年のこのフェスで見た時はかつてあんなにこのバンドのライブから溢れていた楽しさ、多幸感が失われてしまったように感じた。ストイックなライブというよりも悲壮感しか感じないような。
別にそういうことがあっても聴かなくなったりということは自分はしないけれど、その空気がなかなかキツくてワンマンからは遠ざかってしまっているのだが、この日久しぶりにこのバンドから光を感じたのは新作の出来がすごく良かったからというよりも、そうしたメンバーの姿勢を感じることができたからだ。だからその後の「MUTOPIA」も「until the blouse is bottond up」も、金井はタオルを掲げて、ということを口にしたりはしなかったけど、東出がタオルを掲げている姿に反応して客席もタオルを掲げて大合唱が起きていたから素直に楽しかった。
最後に金井は
「ここに来てくれた、あなたの全てを肯定するために」
と言って「YESMAN」を演奏したが、ここにいてライブを楽しんでいた人たちはきっと今のこのバンドのことをちゃんと肯定してくれるはず。
音楽は決して汚れたりはしないが、金井がその音楽を自分の手で殺したり封じようとしてしまったこともまた事実。そうした曲たちを、その曲を愛してくれている人たちがこれからも聴けるように。そして何よりもこんなに頼もしい姿を見せてくれるメンバーたちを悲しませたりしないように。久しぶりにワンマンに行きたくなるような、良いバンドなんだよな、って思えるライブだった。
1.Make Up Your Mind
2.# DIV/0!
3.Step-out Shepherd
4.秘密
5.POPCORN STAR
6.No.9
7.MUTOPIA
8.until the blouse is bottond up
9.YESMAN
16:20〜 Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
2006年に初出演して以来の12年間、これまでにEARTH STAGEとGALAXY STAGEにしか出演していないという、紛れもなくこのフェスを支えてきたバンドである、Base Ball Bear。今年もGALAXY STAGEに出演である。
メンバー3人が揃ってのサウンドチェックで「祭りのあと」を演奏すると、おなじみのXTCのSEで登場し、小出がエフェクターを操作しながらノイジーなギターの音が会場に広がっていく。思わず「なんの曲だ?」と思っていると、ギターのフレーズだけではわからなかったのが、リズムが加わって徐々に輪郭が見えてきて、小出が歌い始めて確信に変わった1曲目はまさかの「yoakemae」。去年までのこのフェスは弓木英梨乃を加えた4人編成で出演していたから、3人でこのステージに立つのは初めてなのだが、この曲を3人で演奏したことはあっただろうか。それくらいに、湯浅がいた時代ですらシンセや打ち込みなしで演奏するのが難しそうに見えたこの曲を3人だけで演奏している。小出はただ既存のフレーズをそのまま演奏するのではなく、3人バージョンにアレンジされた全く新しいギターを弾いている。
3人になって、もしかしたらライブではもう聴けなくなるんじゃないか、と思っていた曲もある。でもその筆頭と言えるようなこの曲をこうしてライブで聴けたということは、これからどんな曲でも3人で、今のベボベで演奏するのを見れるということ。そうした小さなところからも、これからもこのバンドを続けていこうという意志を感じる。
続いて演奏されたのは早くも新曲。「試される」というタイトルのこの曲はタイトルのとおりに「試される」というフレーズが繰り返される、ベボベ流の王道ギターロック的な曲。
「僕らは2006年、1回だけこのフェスが元日に開催されたことがあるんですけど、その黒歴史の年からずっと出てます(笑)」
という、初出演時に湯浅が獅子舞、小出と堀之内は袴、関根は巫女さんの格好でライブをしていた若手時代を思い出させるようなこのフェスの振り返りから、さらに続いても新曲を演奏。
「Flame」というタイトルのこの曲は冬に似合う曲という通りにじっくりと音を重ねていくタイプの曲。だがタイトルが「Flame」(炎)であるために歌詞にも確かに「炎」という単語が出てきたりと、静かに燃えるようなものを感じた。どちらの曲も早く音源を聴きたいところだ。
さらに最後のサビ前で小出が思いっきりタメまくる「Tabibito in the Dark」と、「yoakemae」に続いてこの時期の曲が3人編成で聴けるのは実に嬉しい。
そして小出がヒップホップ的なコール&レスポンスをしてから、堀之内のドラムのみ→関根のベースが加わる→小出のラップが乗るというリズム隊がグルーヴを生み出すことによって3人だからこそのタイトな強さを感じさせる「The CUT」では小出のラップが実にスムーズに響き、
「2018年は同期のバンドが完結を選んで。2019年には彼女たちの分まで思いを持っていこうと思っています。これからも我々Base Ball Bearをよろしくお願いします。というかロック全体的によろしくお願いします」
と、盟友チャットモンチーの分までバンドを続けていくことを宣言。そうして、続ける理由はどんどん増えていく。でも決してそれは重荷ではない。むしろこれからもきっとベボベの3人に大きな力を与えてくれるはず。ベボベが続けている姿を見れば、いつだってあの頃のことを思い出すことができるのだから。
そんな思いを乗せた「LOVE MATHEMATICS」のカウントが響くと、
「みなさんにとっての2019年が幸多きものになりますように。それはこんな風に」
と言ってから最後に演奏されたのは「ドラマチック」。今年も本当にいろんなところでこのバンドのライブを見ることができた。そんなドラマチックな人生はこれからもこのバンドがいる限り続いていく。
バンドに変化があったりすると、ついバンドは進化よりも維持を選んでしまいがちだ。でもベボベは3人だけで、4人の時を越えようとしている。「光源」の時はキーボードやホーンを加えた、今まではできなかった形でそれをやろうとしていたが、小出がマテリアルクラブという実験的な活動を開始させたことで、ベボベは3人でのギターロックで4人だった頃のギターロックを越えようとしている。ライブを見ていると確かにそうした意志を感じるから、本当に頼もしく見える。
このバンドとは「また来年!」ってこれからも毎年言い合っていきたい。
リハ.祭りのあと
1.yoakemae
2.試される (新曲)
3.Flame (新曲)
4.Tabibito in the Dark
5.The CUT
6. LOVE MATHEMATICS
7.ドラマチック
17:00〜 GOOD4NOTHING [COSMO STAGE]
もはや常連を超えて常備施設的なバンド、GOOD4NOTHING。Base Ball Bear同様に12年連続出演である。
おなじみ「河内のおっさんの歌」のSEで4人が登場。U-tanとTANNYのボーカル陣は見た目が変わらないが、MAKKIN(ベース)は髪がかなり伸びており、SUNE(ドラム)は髭が非常に濃くなっており、よりワイルドになってきている。
SEが終わって「FOUND」からスタートすると、この広い会場が一気にライブハウスになったかのようなモッシュが発生し、ひたすらにメロディックパンクを叩き込んでいく。
年間100本以上ライブを行い続けているバンドなだけに安定感は抜群なのだが、そこにいつまで経っても変わることのないキッズのような純粋な衝動が含まれている。だから基本的には楽しくて笑顔になれるメロディックパンクなのだが、たまに泣けてくるような場面もある。
特に「Cause You're Alive」はタイトルからもわかるように軽くはないテーマの曲なのだが、演奏中にTANNYはTシャツをまくって自分の乳首を弄るというやんちゃなパフォーマンスを見せる。
そしてラストはまさにこのステージの最前ブロックに向けたかのように演奏された「In The Mosh Pit」でパンクバンドとしての誇りを貫いたまま、12回目のこのフェスのライブを終えた。
12年というのは本当に長い年月だ。このバンド自身もその間にメンバーチェンジがあったし、周りのバンドが解散や活動休止したのも数えきれないに見てきただろうし、このフェスがダイブ禁止になったことによって、出演しなくなったバンドだっている。でもそうしたことがありながらも、パンクバンド代表としてこのフェスに出続けるのがどれだけカッコいいのかということをこのバンドのライブは教えてくれる。
今でこそSHANKやDizzy Sunfistという若手バンドたちがこのフェスを代表するパンクバンドになりつつあるが、そうしたバンドがこのフェスに出ているのも、このバンドとdustboxがパンクの火をこのフェスに灯し続けてきたから。かつてのようにGALAXY STAGEに出たりということはないかもしれないが、間違いなくこのフェスを支え続けてきた功労者たち。これからもよろしく。
1.FOUND
2.IN THIS LIFE
3.It's My Paradise
4.RIGHT NOW
5.STOMPING STEP
6.THIS SONG'S TO MY FRIEND
7.Cause You're Alive
8.In The Mosh Pit
17:30〜 Bentham [ASTRO ARENA]
2年前の初出演時は「バドミントンができるくらいに客席が空いていた」というBentham。MOON STAGEをしっかり埋めた昨年に続いてはASTRO ARENAに出演。
メンバーがステージに登場すると、ラウドなサウンドの「FATEMOTION」からスタート。さらに「クレイジーガール」と集まった観客をガンガンに踊らせまくっていく、このバンドならではの軽快と言えるのだがライブで見ると全く軽く感じないダンスロック。
年明けにはアルバムがリリースされることを発表すると、その中に収録されている曲がウルトラマンのタイアップになることを発表すると、オゼがアイスラッガー、須田がスペシウム光線のポーズを取って喜びを表現。その曲はこの日は演奏されなかったが、100円で先行配信されている「cymbidium」を披露。鈴木は
「1万人がダウンロードすれば100万円!」
と言っていたが、もちろんそれは冗談であり、少しでも多くの人に曲を聴いてもらいたいというメンバーの意志の表れである。
「激しい雨」の最後のサビ前にオゼが大きく息を吸い込むと、
「色々あるけど、誰かが良いって言うからっていうのを聴くんじゃなくて、自分が良いと思った音楽を。2019年、それがBenthamだったら嬉しいです」
と地道に、しかし真摯に音楽を紡いでいく覚悟を語ると、最後にはやはり「パブリック」。しかし演奏もはるかにパワーアップしているし、初期の頃には辻(ベース)しかコーラスをしていなかったのが、今では須田も鈴木もコーラスをするようになっている。それが辻のコーラスとともにオゼのボーカルに乗り、曲の持つメロディのキャッチーさがより一層引き出されている。こうして自分たちの代表曲をそのまま演奏するのではなくて、常にブラッシュアップさせながらライブで演奏し続けていく。そういう意味では見るたびに成長が感じられるバンドだし、ロッキンよりもはるかに進化していた。その姿勢は新作アルバムや、リリース後のツアーやライブにも確実に反映されていくはず。
そもそもの楽曲のキャッチーさは申し分ないし、ライブも実に熱い。それだけに、せめてこのキャパをしっかり埋めるくらいには評価されて欲しい。
1.FATEMOTION
2.クレイジーガール
3.cymbidium
4.激しい雨
5.パブリック
18:15〜 クリープハイプ [EARTH STAGE]
今やロッキンオンのフェスにおいてはメインステージでも屈指の動員力を誇るようになっている、クリープハイプ。そんな状況でもツアーではライブハウスがメインであるため、ライブを観れる機会が貴重という人も多いんじゃないかと思われる。
SEなしで4人がフラッとステージに現れると、カオナシの前にはキーボードが。尾崎もギターを持たずにマイクスタンドに向かって歌う「5%」からしっとりとスタートし、そういうモードなのかな?という予感は尾崎の
「今のは前戯のつもりだったんだけど、濡れましたか?濡れてなくても僕はドSなんで、セックスの歌を」
という言葉によって打ち砕かれるのだが、いつのまにかベースに持ち替えていたカオナシがイントロを奏でる「HE IS MINE」で早くも
「セックスしよう!」
の大合唱が起こる。
このフェスではおなじみの「幕張の六畳間」に歌詞を変えて歌われた「鬼」、軽快なダンスビートの「おばけでいいからはやくきて」と1曲ごとにガラッとサウンドが変わっていく幅の広さ。
季節外れの曲と紹介された「ラブホテル」では最後のサビ前に尾崎が
「この前、後輩(My Hair is Badの椎木)と赤坂BLITZにライブを見に行って。ドリンク代くらい出してやるか、と思ったらスタッフの方に「ドリンク代は大丈夫です」って言われて(笑)
それでも一杯くらい奢ってやろうと思って、ビールを2杯頼んだら「身分証の確認をお願いします」って言われて。まぁお前も童顔だからなぁ、仕方ないよなぁって思ってたら「いや、そちらではなくて…」って言われて、34歳なのに年齢確認をされました(笑)
何が恥ずかしいって、免許証を持ってないから保険証を出したんだけど、保険証って生年月日の文字がめちゃ小さいから、ほらほら34歳ですよ、ってすごいアピールして(笑)
そうなったのも、全部…」
という苦いようでいてネタになったようなことも「夏のせい」という歌詞で打ち消してみせる。
そこに最新アルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」から何気ない日常の瞬間を温かいサウンドで鳴らした「一生のお願い」も挟まれるという予想できないような選曲が続くと、ゆっくりと、でも力強く聴き手を
「前に進め 前に進め」
と背中を押す「二十九、三十」からはライブ定番曲を次々に連発。その一翼をアルバムのタームとしては最新作収録となる「イト」が担うようになってきているのも実に心強い。映画のタイアップもあったとはいえ、今や完全にこのバンドの代表曲だ。
「こうしてこの大きなステージが埋まってるのを見ると、本当に嬉しいんだけど、これが現実だと思わないようにしないといけないっていうか…。みんなも嬉しいこととかより、となりの客が合唱してうるさいとか、前のやつの髪が当たるとか、電車が混んでるとか、そういう嫌なこととか悔しいことの方が現実だな、って…。だからこれからもそういうことを忘れずにいきたいと思います」
とこんなに大きなステージが超満員になっても素直に喜ばないあたりは実に尾崎らしいが、最後の「栞」はそうした悔しい思いを包み込むように響き渡った。
もともとはFM802の番組のテーマソングとしてオールスター的なメンバーで歌われた曲だが、これからはクリープハイプの代表曲として長くたくさんの人の心に残っていく曲になると思うし、数多くの人が2018年の年間ベストディスクに「泣きたくなるほど嬉しい日々に」を入れていたのは、この曲のクリープハイプバージョンが入っていたのが大きいと思う。実際にこうしたフェスでもツアーでもこの曲は最後に演奏されるようになった。
そういう意味ではクリープハイプに大きな武器をもたらした、バンドをさらに上に押し上げた2018年だった。
1.5%
2.HE IS MINE
3.鬼
4.おばけでいいからはやくきて
5.ラブホテル
6.一生のお願い
7.二十九、三十
8.オレンジ
9.イト
10.栞
19:30〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [EARTH STAGE]
昨年は初日のEARTHのトリ、ロッキンでもGRASSのトリを務め、今回は3日目のEARTHのトリと、かつては出たり出なかったりというような存在であったが、今や完全にロッキンオンのフェスの番人的な存在になりつつある、アジカン。
場内が暗転すると、SEとして流れ始めたのはまさかの「新世紀のラブソング」のイントロ。メンバーが登場すると、そのまま曲の演奏に突入。フェスはおろかワンマンでも最近は演奏されていなかった曲であるだけに、客席からは大きな歓声が上がる。
ゴッチが軽く挨拶すると、イントロが長く追加されたライブアレンジがそのままリメイク版のシングルになった「Re:Re:」。ゴッチはブレイク部分で「さっそう!」と声をあげるなど、気合いが漲っている。やはり平成最後のこのフェスのステージということもあるのだろうか。
そんな気合いがまっすぐに天井まで伸びていく「Standard」、イントロで大歓声が上がり、今なお絶大な支持を得ていることを知らしめる「ソラニン」、ライブならではのセッション的なイントロのアレンジが観客のテンションをさらに上げる「ブルートレイン」、サポートキーボードのシモリョーのコーラスとアレンジによってシングルバージョンとカップリングバージョンのマッシュアップとなった「サイレン」と、シングル曲中心でありながらも全くいつものセトリ感がないのはアジカンならではと言えるだろう。
「なんかさぁ、パーマにメガネにヒゲみたいなキャラって俺以降増えたよね(笑)」
とゴッチのいつもの自虐的なMCを挟んでから演奏されたのはリリースされたばかりの最新作のタイトル曲である「ホームタウン」。アルバムは低音の響きや鳴りを抜本的に見直した、新たな日本のロックのスタンダードな形を作り上げるようなものだったが、それは確かにライブにも現れているように感じる。それくらいにこんなに広いステージにもかかわらず、リズムがシンプルだがクリアに聞こえる。これは年明けから始まる新作を携えたツアーでも新しい日本のロックの形を見せてくれるんじゃないかと期待が高まる。
喜多のギターソロが唸りを上げまくる「荒野を歩け」からの「リライト」では間奏でゴッチがギターを置き、ハンドマイクでダブ的な演奏に合わせて
「芽生えてた感情切って泣いて」
の部分をコール&レスポンスさせるのだが、なぜかボソボソした声でコールし始めると、
「徐々にデカくしていって最後にみんなでドカーンと大合唱するやつだから〜」
と説明した通りに何回か重ねるごとに少しずつ声を大きくしていき、ギターを持つといつものように歌ってから最後のサビに突入して大合唱を巻き起こす。フェスでは毎回やる曲なだけに飽き気味に感じる時もあるのだが、これは実に良いアレンジだし、一気に盛り上がりが最高潮に達していた。リリースから15年近く経ってこの曲がさらに伸び代を感じさせるとは。
その勢いのままにラウドなサウンドの「Easter」から、誰よりもゴッチが自由に踊るようにして曲を奏でているように見える「君という花」、そしてラストはシングルとしては最新になる「ボーイズ&ガールズ」。決して盛り上がる曲では全くないが、こうして年末にロックフェスに集まる少年少女たちを肯定しているかのように鳴らされていた。きっとそれは今の年齢になったアジカンのメンバーだからこそできること。
アンコールではゴッチが
「みんな、来年も1年間ニヤニヤしていようぜ。ツイッターとかだと気難しいおっさんって思われてるだろうけどさ、意外と朗らかだから(笑)
ニヤニヤしてるっていうことは笑えてるっていうことだから」
と、あくまで楽しく、笑顔で生きていきたいし生きていこうぜという姿勢を見せた。それはどこか「ホームタウン」のアルバムの内容にも通じるところがあるのだが、最後に演奏された「今を生きて」から感じる空気でもある。パワーポップを今にしてアジカンが標榜したのはそうした朗らかな空気を世の中に満たしていきたいという思いもあるのかもしれない。
もはやアジカンは完全にベテランの域に達しているバンドだけれど、ビックリするくらいに守りに入らない。最新作でもサウンドの刷新を計ったり、ほかのソングライターに曲を作ってもらったりというロックバンドとして新たなトライアルに挑み続けている。それができるのは変わらずにこの4人で進み続けてきたからこそだろうが、NANO-MUGEN FESなどで常に我々にそうした変革者としての背中を見せてくれていたアジカンが今でもその姿勢を見せてくれている。そして何よりも素晴らしいライブを見せてくれる。それが本当に嬉しいし、終わった後の清々しさという意味ではこの日が1番だった。
1.新世紀のラブソング
2.Re:Re:
3.Standard
4.ソラニン
5.ブルートレイン
6.サイレン
7.ホームタウン
8.荒野を歩け
9.リライト
10.Easter
11.君という花
12.ボーイズ&ガールズ
encore
13.今を生きて
この日はフェス会場でいろんな人に会った。そこで様々な音楽の話をして、いろんな刺激をもらった。それは各地からいろんなアーティストが好きな人が集うフェスならでは。そうした出会いもたくさんあった2018年だった。
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12:00〜 amazarashi [COSMO STAGE]
昨年は初日のトップバッターとしてこのステージに出演。フェスにはほとんど出ない異質の存在でありながらも今や武道館360°ワンマンを行うくらいの存在になっている、amazarashi。今年は3日目のトップバッターとしてこのステージに帰還。
おなじみの紗幕がステージに張られた中でその向こう側にメンバーが登場すると、紗幕に歌詞が次々に映し出される「ワードプロセッサー」からスタートし、
「COUNTDOWN JAPAN!青森から来ました、amazarashiです!」
と秋田ひろむが挨拶。紛れもなく2018年のライブ納めならではの気合いが入っている。
最新シングルのタイトル曲「リビングデッド」は武道館の時と同様に「新言語秩序」と「言葉ゾンビ」の対立を描くような映像をもって演奏され、そのままMVの映像が流れた「ジュブナイル」へ。秋田の声の出方は申し分ないが、このamazarashi結成に至るまでを描いたようなMVを見ると、武道館の時はライブに参加していた豊川真奈美(ピアノ)の不在は少し大きなものとして感じてしまう。
とはいえ普段のワンマンでは基本的に着席したままで鑑賞するというライブスタイルなだけに、手拍子が起きたり、サビで腕が上がったりするのはフェスならではだな、とも思うし、普段はそうはできないけれど、amazarashiのライブでそういう楽しみ方をしたい人も少なからずいるんだろうな、とも思える。
特になんの説明もなく演奏された新曲「さよならごっこ」は淡々としたリズムで進んでいき、途中からノイジーなギターが被さってくるという構成。演出も一切なかったが故にまだ曲の全体像が見えたとは言い難い。年明けから放送されるアニメのタイアップが決まっているだけに、その内容に沿って書かれた可能性もある。
しかしかつてもこのフェスに出演した時に「命にふさわしい」を新曲として披露していただけに、このフェスに出ることによってライブの場で新曲を鳴らすことができるというのは間違いなくバンド側にとっても我々側にとってもプラスだ。なかなか見たい人が全員観れるというわけではないけれど。
そしてMVの人形が潰されていく映像が流れた「命にふさわしい」の
「心さえ 心さえ 心さえ なかったなら」
という秋田の壮絶なボーカルが響いた後に、
「ありがとうございました、amazarashiでした!」
と言って演奏されたのは「独白」の検閲解除バージョン。てっきり最後は「空に歌えば」や「フィロソフィー」あたりかと思っていた。なぜならこの「独白」は先日の武道館公演の時のストーリーがあったからこそ生きるような曲だと思っていたから。(きっと武道館に行った人はみんなそう思っていたはず)
でもストーリーを語ることなく、曲を積み重ねることでストーリーを作ることをしなくても、この曲の
「言葉を取り戻せ」
というメッセージはしっかりと伝わっていた。そうしたこの曲の持つ力はこうしてフェスで演奏されないとわからなかったかもしれない。
たった30分という、ワンマン慣れしてる側からしたらはるかに短い時間。でもその時間だからこそワンマンの時とは違うように感じられるものが確かにある。いろんなフェスに出るようなアーティストではないけれど、せめて年末に毎年このフェスのこの会場でamazarashi納めをすることができたら。
1.ワードプロセッサー
2.リビングデッド
3.ジュブナイル
4.さよならごっこ
5.命にふさわしい
6.独白
・フレデリック [EARTH STAGE]
amazarashi終わりでEARTHに移動すると、初のEARTH進出にもかかわらず、凄まじい数の人を動員していた、フレデリック。
もう着いた時には完全に終盤で、「かなしいうれしい」で手拍子が起こると、三原健司は
「この曲をこのステージまで連れてくるって、俺言ったよな?」
と言ってから「オドループ」を演奏した。カメラ目線の健司と赤頭のギターソロも含めて踊りまくりの楽しい空間だったけれど、まだ「オドループ」のバンド、という認知のされ方だった時にCOSMO STAGEでこのフェスに初出演した時から、このバンドはずっとこのステージを目指し続けてきた。それを見てきたからこそ、ただ楽しいだけじゃなくて感動があったし、
「いろんなバンドやアーティストがこのフェスにはたくさん出てますけど、その人の1番の魅力が伝わるのはワンマンです。このフェスでライブを見てみて良いと思ったら、ワンマンに行ってみてください。ワンマンに行けば、そのアーティストはその気持ちに100で応えてくれます」
という健司のMCからは、このEARTH STAGEに立てるようになったからこその責任や自覚が感じられた。
ただ自分たちがデカいステージに立てて嬉しい、で終わるんじゃなくて、このステージを目指しているアーティストたちやこのフェスを目指しているアーティストたちの思いを背負ってここに立っている。なぜそう言うのかと言うと、フレデリックは「オドループ」やその前からずっと、音楽への愛を曲にしてきたバンドだからである。その気持ちがこのステージまで来れた最大の原動力と言っていいかもしれない。年明けにフレデリックのワンマンに行くから、その時にこの気持ちに100で応えてくれ。
13:15〜 sumika [EARTH STAGE]
こちらもフレデリック同様にEARTH STAGE初進出のsumika。本気のリハでメンバーがほぼフルで曲を演奏してくれるのも嬉しいが、このバンドの「MAGIC」ではなく、go! go! vanillasの「マジック」を片岡健太が歌い、
「プリティまで届け!」
と交通事故で入院しているプリティへの想いを口にした。その気持ちは必ず届いているはず。
本編では「フィクション」から華々しくスタートすると、「Lovers」で大合唱となり、「1.2.3…4.5.6」で踊りまくりと、全くもってこのステージが初めてとは思えないくらいの掌握っぷり。2018年にリリースしてヒットしたシングル「ファンファーレ」も、このフェスに初めて出演した時から演奏している「ふっかつのじゅもん」も、全ての曲がこの規模のステージで鳴らされるべきスケールとポップさを備えていたということが実によくわかるし、何よりもメンバーがみんなこのステージに立てている喜びを表情や演奏している姿から感じさせてくれるので、見ているこちらも心から楽しくなってくる。
現代の社会に対する警告のようなものを感じる歌詞の「ペルソナ・プロムナード」、じっくりと聴かせるタイプの「いいのに」というカップリング的な立ち位置の曲がセトリの中に入ってくるのも持ち時間が長いこのメインステージに立てたからこそだろうし、片岡がハンドマイクで動きながら歌い、前日の[ALEXANDROS]の川上洋平のようにステージ左右の花道のカメラに向かって歌ってから観客の方へカメラを回した「Summer Vacation」という緩急で言うなら「緩」の部分にあたる曲を続けて演奏できるのもその持ち時間の部分が大きい。
そして
「いつも、部屋で1人で曲を作る時にイメージしてる光景があって。それは野外ならROCK IN JAPANのGRASS STAGE、室内ならこのCOUNTDOWN JAPANのEARTH STAGEです」
と、片岡がこのステージが夢の舞台であったことを語ってから最後に大合唱を響かせたのは「「伝言歌」」。観客の合唱を煽る際に片岡は、
「これだけたくさんの人がいたから麻痺していました。みんな、じゃなくてあなた1人1人に歌ってるんだ!」
と言った。そうして目の前にいる1人1人に向かって歌っているから、これだけ大きなステージであっても距離が遠くなったとは感じない。いつもすぐ近くで歌ってくれているかのよう。どれだけ大きくなっても、sumikaという単語をバンド名にした意志は全く変わっていない。それはきっとアリーナワンマンや、夏に間違いなく立つであろうロッキンのGRASS STAGEでもそう思わせてくれるはず。
リハ.カルチャーショッカー
リハ.MAGIC
1.フィクション
2.Lovers
3.1.2.3…4.5.6
4.ファンファーレ
5.ふっかつのじゅもん
6.ペルソナ・プロムナード
7.いいのに
8.Summer Vacation
9.「伝言歌」
14:00〜 teto [COSMO STAGE]
2年連続出演となる、teto。2018年はフルアルバムをリリースし、自分の年間ベストアルバムに選出させてもらったくらいに飛躍を感じさせた1年だった。
おなじみのNirvana「Sliver」でメンバーが登場すると、アフロだったギターの山崎はラーメンマンみたいにサイドを剃り上げて髪を上で結わくという髪型になっており、一瞬違う人かと思ったのだが、いきなりステージに倒れこんだりという意味不明なパフォーマンスを見て山崎だな、と確認できた。最後に登場した小池は金髪にイメチェン。
「高層ビルと人工衛星」から始まると、もう小池はその衝動を止められないと言わんばかりに暴れまくりながら歌い、ステージから落ちてしまうんじゃないかと思うほど。そうなると出禁になってしまうのでそこは気をつけて欲しいが、普段のライブハウスでは客席にダイブしまくっている小池がロッキンオンのフェスでは全くダイブしないあたり、ちゃんとそこら辺はわきまえているというか、めちゃくちゃなようでいてちゃんと理性的にパフォーマンスしている部分もあるのだろう。
小池がサビを弾き語りのように歌ってからバンドで演奏された「トリーバーチの靴」はそのサビの部分を小池が
「歌え!」
と言ってマイクを客席に向けて合唱を煽る。まさかこんなデカいフェスのこんなにデカいステージでこの曲をみんなで歌えるような日が来るとは。
「こんだけたくさん人が来てくれて、見てくれて。でもどれだけたくさんの人が見に来てくれていても、俺はそこのメガネかけて首にタオル巻いた、ぼっちで来てるちんちくりんな、あんたみたいな男の痛みを歌いたいわけです!」
と言って「Pain Pain Pain」を演奏したのだが、最大の問題は小池がその発言をした時に指差して向いていた先が自分であった、という点である。なぜあれだけたくさんの人がいた中で小池の目に自分が止まったのかはわからないが、交友関係激狭、イケてるような人生では全くないし、これからも絶対そうはなれないからこそGOING STEADYや銀杏BOYZが響いた自分の姿を見て、何か同じようなものを小池が感じ取ってくれたのならば本望である。
小池の弾き語り的な歌い出しから、後半で一気にノイジーなバンド演奏が加わるという、銀杏BOYZの「人間」などへのリスペクトやオマージュが感じられるアレンジになった「光るまち」は一刻も早くこのバージョンでの音源が欲しいと思うくらいの進化を感じさせ、最後には
「もうホントに、刹那的な生き方とか全然望んでないから!」
とまるで友達に語りかけるようにアレンジされて歌われた「拝啓」。それはそのままこのバンドの活動に対して我々が望むことでもあるのだが、他のメンバーが先にステージを去る中、小池はドラムセットにダイブ。それはあまりにも刹那的過ぎやしないだろうか。
アルバムもリリースしたし、銀杏BOYZとも対バンしたし、と本当に良くも悪くも色々あったtetoの2018年。でもこの衝動を炸裂させまくるような姿の美しさと、その姿を見て感動しているこの感覚は絶対に本物だと信じている。だから、浅くてもいいから息をし続けてくれないか。
1.高層ビルと人工衛星
2.トリーバーチの靴
3.Pain Pain Pain
4.光るまち
5.拝啓
・ACIDMAN [GALAXY STAGE]
ちょうど着いた時には曲を演奏し終わって、大木伸夫がMCを始めようというタイミングだった。
「これから僕の宗教的なMCが始まりますが、なんの宗教にも入っていないんで安心してください(笑)」
(いつもの「生きること」について語る)
「お布施は出口の方で承っております(笑)」
と、かつてと違ってただ思想を伝えるのではなくて、そこに笑えるような要素を足して話せるようになっているのはいい年の取り方をしてきたんだな、と思うけれど、その後の「ALMA」の感動は変わらないし、フェスではトリで出た時にアンコールくらいでしかやらないイメージの「Your Song」は聴いていると2017年の11月にさいたまスーパーアリーナで開催された主催フェス「SAI」のことを、本当に良い日だったと思い出させる。
近年は人気バンドの裏でこのステージに出て非常に厳しい客入りという場面も見てきたし、同じようにこのフェスを初期から支えてきたくるりなども今やCOSMO STAGEに出るくらいになってしまったが、この日はまだこのバンドはGALAXY STAGEに出れるバンドだと思った。やっぱりライブのカッコよさはずっと変わらないどころか進化している。
15:15〜 BIGMAMA [GALAXY STAGE]
このGALAXY STAGEの番人と言っていいバンド、BIGMAMA。今年もやはりこのGALAXY STAGEへの出演。14/15にはこのステージの年越しも務めたバンドである。
「第九」のSEが流れてメンバーが登場すると、「Make Up Your Mind」からスタート。「# DIV/0!」と続けざまに曲を連発していくというのは近年の変化したライブのスタイルだが、リリースされたばかりのアルバム「-11°C」からも「Step-out Shepherd」が披露され、かと思えば東出のバイオリンが流麗に響く「秘密」と新旧交えた選曲にはフェスというお祭りだからこそみんなが楽しめる曲を、という部分と今の最新の自分たちの姿を見せるという音楽にひたすら真摯に向かってきた5人の姿勢が見える。
「ヴァイオリンが加わったメロコアバンド」という初期のこのバンドのスタイルが戻ってきた!と歓喜してしまうツービートの弾け飛ぶようなメロコアナンバー「POPCORN STAR」から「第九」をモチーフにした大合唱曲「No.9」とサウンドのスタイルは違えど多幸感が会場を包んで行き、リアドは間奏でバスドラを踏みながら立ち上がって「幕張ー!」と叫ぶ。コーラスを牽引する東出と柿沼も実に楽しそうにステージを動き回っているし、それは安井がその後ろでしっかりリズムを支えているからだ。
そのメンバーの姿からは、ソングライターでありボーカリストである金井がガンガン引っ張るというよりも、全員で力を合わせてこのバンドの魅力をたくさんの人に伝えていこうという姿勢が見える。
「MCをしないで曲をひたすら連発していくスタイルに変えた」
と宣言しているものの、やはり脳裏には何か引っかかったままのものがある。だからこそ喋らなくていいっていうスタイルに強引に変えに行ったんじゃないかと。
だから去年のこのフェスで見た時はかつてあんなにこのバンドのライブから溢れていた楽しさ、多幸感が失われてしまったように感じた。ストイックなライブというよりも悲壮感しか感じないような。
別にそういうことがあっても聴かなくなったりということは自分はしないけれど、その空気がなかなかキツくてワンマンからは遠ざかってしまっているのだが、この日久しぶりにこのバンドから光を感じたのは新作の出来がすごく良かったからというよりも、そうしたメンバーの姿勢を感じることができたからだ。だからその後の「MUTOPIA」も「until the blouse is bottond up」も、金井はタオルを掲げて、ということを口にしたりはしなかったけど、東出がタオルを掲げている姿に反応して客席もタオルを掲げて大合唱が起きていたから素直に楽しかった。
最後に金井は
「ここに来てくれた、あなたの全てを肯定するために」
と言って「YESMAN」を演奏したが、ここにいてライブを楽しんでいた人たちはきっと今のこのバンドのことをちゃんと肯定してくれるはず。
音楽は決して汚れたりはしないが、金井がその音楽を自分の手で殺したり封じようとしてしまったこともまた事実。そうした曲たちを、その曲を愛してくれている人たちがこれからも聴けるように。そして何よりもこんなに頼もしい姿を見せてくれるメンバーたちを悲しませたりしないように。久しぶりにワンマンに行きたくなるような、良いバンドなんだよな、って思えるライブだった。
1.Make Up Your Mind
2.# DIV/0!
3.Step-out Shepherd
4.秘密
5.POPCORN STAR
6.No.9
7.MUTOPIA
8.until the blouse is bottond up
9.YESMAN
16:20〜 Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
2006年に初出演して以来の12年間、これまでにEARTH STAGEとGALAXY STAGEにしか出演していないという、紛れもなくこのフェスを支えてきたバンドである、Base Ball Bear。今年もGALAXY STAGEに出演である。
メンバー3人が揃ってのサウンドチェックで「祭りのあと」を演奏すると、おなじみのXTCのSEで登場し、小出がエフェクターを操作しながらノイジーなギターの音が会場に広がっていく。思わず「なんの曲だ?」と思っていると、ギターのフレーズだけではわからなかったのが、リズムが加わって徐々に輪郭が見えてきて、小出が歌い始めて確信に変わった1曲目はまさかの「yoakemae」。去年までのこのフェスは弓木英梨乃を加えた4人編成で出演していたから、3人でこのステージに立つのは初めてなのだが、この曲を3人で演奏したことはあっただろうか。それくらいに、湯浅がいた時代ですらシンセや打ち込みなしで演奏するのが難しそうに見えたこの曲を3人だけで演奏している。小出はただ既存のフレーズをそのまま演奏するのではなく、3人バージョンにアレンジされた全く新しいギターを弾いている。
3人になって、もしかしたらライブではもう聴けなくなるんじゃないか、と思っていた曲もある。でもその筆頭と言えるようなこの曲をこうしてライブで聴けたということは、これからどんな曲でも3人で、今のベボベで演奏するのを見れるということ。そうした小さなところからも、これからもこのバンドを続けていこうという意志を感じる。
続いて演奏されたのは早くも新曲。「試される」というタイトルのこの曲はタイトルのとおりに「試される」というフレーズが繰り返される、ベボベ流の王道ギターロック的な曲。
「僕らは2006年、1回だけこのフェスが元日に開催されたことがあるんですけど、その黒歴史の年からずっと出てます(笑)」
という、初出演時に湯浅が獅子舞、小出と堀之内は袴、関根は巫女さんの格好でライブをしていた若手時代を思い出させるようなこのフェスの振り返りから、さらに続いても新曲を演奏。
「Flame」というタイトルのこの曲は冬に似合う曲という通りにじっくりと音を重ねていくタイプの曲。だがタイトルが「Flame」(炎)であるために歌詞にも確かに「炎」という単語が出てきたりと、静かに燃えるようなものを感じた。どちらの曲も早く音源を聴きたいところだ。
さらに最後のサビ前で小出が思いっきりタメまくる「Tabibito in the Dark」と、「yoakemae」に続いてこの時期の曲が3人編成で聴けるのは実に嬉しい。
そして小出がヒップホップ的なコール&レスポンスをしてから、堀之内のドラムのみ→関根のベースが加わる→小出のラップが乗るというリズム隊がグルーヴを生み出すことによって3人だからこそのタイトな強さを感じさせる「The CUT」では小出のラップが実にスムーズに響き、
「2018年は同期のバンドが完結を選んで。2019年には彼女たちの分まで思いを持っていこうと思っています。これからも我々Base Ball Bearをよろしくお願いします。というかロック全体的によろしくお願いします」
と、盟友チャットモンチーの分までバンドを続けていくことを宣言。そうして、続ける理由はどんどん増えていく。でも決してそれは重荷ではない。むしろこれからもきっとベボベの3人に大きな力を与えてくれるはず。ベボベが続けている姿を見れば、いつだってあの頃のことを思い出すことができるのだから。
そんな思いを乗せた「LOVE MATHEMATICS」のカウントが響くと、
「みなさんにとっての2019年が幸多きものになりますように。それはこんな風に」
と言ってから最後に演奏されたのは「ドラマチック」。今年も本当にいろんなところでこのバンドのライブを見ることができた。そんなドラマチックな人生はこれからもこのバンドがいる限り続いていく。
バンドに変化があったりすると、ついバンドは進化よりも維持を選んでしまいがちだ。でもベボベは3人だけで、4人の時を越えようとしている。「光源」の時はキーボードやホーンを加えた、今まではできなかった形でそれをやろうとしていたが、小出がマテリアルクラブという実験的な活動を開始させたことで、ベボベは3人でのギターロックで4人だった頃のギターロックを越えようとしている。ライブを見ていると確かにそうした意志を感じるから、本当に頼もしく見える。
このバンドとは「また来年!」ってこれからも毎年言い合っていきたい。
リハ.祭りのあと
1.yoakemae
2.試される (新曲)
3.Flame (新曲)
4.Tabibito in the Dark
5.The CUT
6. LOVE MATHEMATICS
7.ドラマチック
17:00〜 GOOD4NOTHING [COSMO STAGE]
もはや常連を超えて常備施設的なバンド、GOOD4NOTHING。Base Ball Bear同様に12年連続出演である。
おなじみ「河内のおっさんの歌」のSEで4人が登場。U-tanとTANNYのボーカル陣は見た目が変わらないが、MAKKIN(ベース)は髪がかなり伸びており、SUNE(ドラム)は髭が非常に濃くなっており、よりワイルドになってきている。
SEが終わって「FOUND」からスタートすると、この広い会場が一気にライブハウスになったかのようなモッシュが発生し、ひたすらにメロディックパンクを叩き込んでいく。
年間100本以上ライブを行い続けているバンドなだけに安定感は抜群なのだが、そこにいつまで経っても変わることのないキッズのような純粋な衝動が含まれている。だから基本的には楽しくて笑顔になれるメロディックパンクなのだが、たまに泣けてくるような場面もある。
特に「Cause You're Alive」はタイトルからもわかるように軽くはないテーマの曲なのだが、演奏中にTANNYはTシャツをまくって自分の乳首を弄るというやんちゃなパフォーマンスを見せる。
そしてラストはまさにこのステージの最前ブロックに向けたかのように演奏された「In The Mosh Pit」でパンクバンドとしての誇りを貫いたまま、12回目のこのフェスのライブを終えた。
12年というのは本当に長い年月だ。このバンド自身もその間にメンバーチェンジがあったし、周りのバンドが解散や活動休止したのも数えきれないに見てきただろうし、このフェスがダイブ禁止になったことによって、出演しなくなったバンドだっている。でもそうしたことがありながらも、パンクバンド代表としてこのフェスに出続けるのがどれだけカッコいいのかということをこのバンドのライブは教えてくれる。
今でこそSHANKやDizzy Sunfistという若手バンドたちがこのフェスを代表するパンクバンドになりつつあるが、そうしたバンドがこのフェスに出ているのも、このバンドとdustboxがパンクの火をこのフェスに灯し続けてきたから。かつてのようにGALAXY STAGEに出たりということはないかもしれないが、間違いなくこのフェスを支え続けてきた功労者たち。これからもよろしく。
1.FOUND
2.IN THIS LIFE
3.It's My Paradise
4.RIGHT NOW
5.STOMPING STEP
6.THIS SONG'S TO MY FRIEND
7.Cause You're Alive
8.In The Mosh Pit
17:30〜 Bentham [ASTRO ARENA]
2年前の初出演時は「バドミントンができるくらいに客席が空いていた」というBentham。MOON STAGEをしっかり埋めた昨年に続いてはASTRO ARENAに出演。
メンバーがステージに登場すると、ラウドなサウンドの「FATEMOTION」からスタート。さらに「クレイジーガール」と集まった観客をガンガンに踊らせまくっていく、このバンドならではの軽快と言えるのだがライブで見ると全く軽く感じないダンスロック。
年明けにはアルバムがリリースされることを発表すると、その中に収録されている曲がウルトラマンのタイアップになることを発表すると、オゼがアイスラッガー、須田がスペシウム光線のポーズを取って喜びを表現。その曲はこの日は演奏されなかったが、100円で先行配信されている「cymbidium」を披露。鈴木は
「1万人がダウンロードすれば100万円!」
と言っていたが、もちろんそれは冗談であり、少しでも多くの人に曲を聴いてもらいたいというメンバーの意志の表れである。
「激しい雨」の最後のサビ前にオゼが大きく息を吸い込むと、
「色々あるけど、誰かが良いって言うからっていうのを聴くんじゃなくて、自分が良いと思った音楽を。2019年、それがBenthamだったら嬉しいです」
と地道に、しかし真摯に音楽を紡いでいく覚悟を語ると、最後にはやはり「パブリック」。しかし演奏もはるかにパワーアップしているし、初期の頃には辻(ベース)しかコーラスをしていなかったのが、今では須田も鈴木もコーラスをするようになっている。それが辻のコーラスとともにオゼのボーカルに乗り、曲の持つメロディのキャッチーさがより一層引き出されている。こうして自分たちの代表曲をそのまま演奏するのではなくて、常にブラッシュアップさせながらライブで演奏し続けていく。そういう意味では見るたびに成長が感じられるバンドだし、ロッキンよりもはるかに進化していた。その姿勢は新作アルバムや、リリース後のツアーやライブにも確実に反映されていくはず。
そもそもの楽曲のキャッチーさは申し分ないし、ライブも実に熱い。それだけに、せめてこのキャパをしっかり埋めるくらいには評価されて欲しい。
1.FATEMOTION
2.クレイジーガール
3.cymbidium
4.激しい雨
5.パブリック
18:15〜 クリープハイプ [EARTH STAGE]
今やロッキンオンのフェスにおいてはメインステージでも屈指の動員力を誇るようになっている、クリープハイプ。そんな状況でもツアーではライブハウスがメインであるため、ライブを観れる機会が貴重という人も多いんじゃないかと思われる。
SEなしで4人がフラッとステージに現れると、カオナシの前にはキーボードが。尾崎もギターを持たずにマイクスタンドに向かって歌う「5%」からしっとりとスタートし、そういうモードなのかな?という予感は尾崎の
「今のは前戯のつもりだったんだけど、濡れましたか?濡れてなくても僕はドSなんで、セックスの歌を」
という言葉によって打ち砕かれるのだが、いつのまにかベースに持ち替えていたカオナシがイントロを奏でる「HE IS MINE」で早くも
「セックスしよう!」
の大合唱が起こる。
このフェスではおなじみの「幕張の六畳間」に歌詞を変えて歌われた「鬼」、軽快なダンスビートの「おばけでいいからはやくきて」と1曲ごとにガラッとサウンドが変わっていく幅の広さ。
季節外れの曲と紹介された「ラブホテル」では最後のサビ前に尾崎が
「この前、後輩(My Hair is Badの椎木)と赤坂BLITZにライブを見に行って。ドリンク代くらい出してやるか、と思ったらスタッフの方に「ドリンク代は大丈夫です」って言われて(笑)
それでも一杯くらい奢ってやろうと思って、ビールを2杯頼んだら「身分証の確認をお願いします」って言われて。まぁお前も童顔だからなぁ、仕方ないよなぁって思ってたら「いや、そちらではなくて…」って言われて、34歳なのに年齢確認をされました(笑)
何が恥ずかしいって、免許証を持ってないから保険証を出したんだけど、保険証って生年月日の文字がめちゃ小さいから、ほらほら34歳ですよ、ってすごいアピールして(笑)
そうなったのも、全部…」
という苦いようでいてネタになったようなことも「夏のせい」という歌詞で打ち消してみせる。
そこに最新アルバム「泣きたくなるほど嬉しい日々に」から何気ない日常の瞬間を温かいサウンドで鳴らした「一生のお願い」も挟まれるという予想できないような選曲が続くと、ゆっくりと、でも力強く聴き手を
「前に進め 前に進め」
と背中を押す「二十九、三十」からはライブ定番曲を次々に連発。その一翼をアルバムのタームとしては最新作収録となる「イト」が担うようになってきているのも実に心強い。映画のタイアップもあったとはいえ、今や完全にこのバンドの代表曲だ。
「こうしてこの大きなステージが埋まってるのを見ると、本当に嬉しいんだけど、これが現実だと思わないようにしないといけないっていうか…。みんなも嬉しいこととかより、となりの客が合唱してうるさいとか、前のやつの髪が当たるとか、電車が混んでるとか、そういう嫌なこととか悔しいことの方が現実だな、って…。だからこれからもそういうことを忘れずにいきたいと思います」
とこんなに大きなステージが超満員になっても素直に喜ばないあたりは実に尾崎らしいが、最後の「栞」はそうした悔しい思いを包み込むように響き渡った。
もともとはFM802の番組のテーマソングとしてオールスター的なメンバーで歌われた曲だが、これからはクリープハイプの代表曲として長くたくさんの人の心に残っていく曲になると思うし、数多くの人が2018年の年間ベストディスクに「泣きたくなるほど嬉しい日々に」を入れていたのは、この曲のクリープハイプバージョンが入っていたのが大きいと思う。実際にこうしたフェスでもツアーでもこの曲は最後に演奏されるようになった。
そういう意味ではクリープハイプに大きな武器をもたらした、バンドをさらに上に押し上げた2018年だった。
1.5%
2.HE IS MINE
3.鬼
4.おばけでいいからはやくきて
5.ラブホテル
6.一生のお願い
7.二十九、三十
8.オレンジ
9.イト
10.栞
19:30〜 ASIAN KUNG-FU GENERATION [EARTH STAGE]
昨年は初日のEARTHのトリ、ロッキンでもGRASSのトリを務め、今回は3日目のEARTHのトリと、かつては出たり出なかったりというような存在であったが、今や完全にロッキンオンのフェスの番人的な存在になりつつある、アジカン。
場内が暗転すると、SEとして流れ始めたのはまさかの「新世紀のラブソング」のイントロ。メンバーが登場すると、そのまま曲の演奏に突入。フェスはおろかワンマンでも最近は演奏されていなかった曲であるだけに、客席からは大きな歓声が上がる。
ゴッチが軽く挨拶すると、イントロが長く追加されたライブアレンジがそのままリメイク版のシングルになった「Re:Re:」。ゴッチはブレイク部分で「さっそう!」と声をあげるなど、気合いが漲っている。やはり平成最後のこのフェスのステージということもあるのだろうか。
そんな気合いがまっすぐに天井まで伸びていく「Standard」、イントロで大歓声が上がり、今なお絶大な支持を得ていることを知らしめる「ソラニン」、ライブならではのセッション的なイントロのアレンジが観客のテンションをさらに上げる「ブルートレイン」、サポートキーボードのシモリョーのコーラスとアレンジによってシングルバージョンとカップリングバージョンのマッシュアップとなった「サイレン」と、シングル曲中心でありながらも全くいつものセトリ感がないのはアジカンならではと言えるだろう。
「なんかさぁ、パーマにメガネにヒゲみたいなキャラって俺以降増えたよね(笑)」
とゴッチのいつもの自虐的なMCを挟んでから演奏されたのはリリースされたばかりの最新作のタイトル曲である「ホームタウン」。アルバムは低音の響きや鳴りを抜本的に見直した、新たな日本のロックのスタンダードな形を作り上げるようなものだったが、それは確かにライブにも現れているように感じる。それくらいにこんなに広いステージにもかかわらず、リズムがシンプルだがクリアに聞こえる。これは年明けから始まる新作を携えたツアーでも新しい日本のロックの形を見せてくれるんじゃないかと期待が高まる。
喜多のギターソロが唸りを上げまくる「荒野を歩け」からの「リライト」では間奏でゴッチがギターを置き、ハンドマイクでダブ的な演奏に合わせて
「芽生えてた感情切って泣いて」
の部分をコール&レスポンスさせるのだが、なぜかボソボソした声でコールし始めると、
「徐々にデカくしていって最後にみんなでドカーンと大合唱するやつだから〜」
と説明した通りに何回か重ねるごとに少しずつ声を大きくしていき、ギターを持つといつものように歌ってから最後のサビに突入して大合唱を巻き起こす。フェスでは毎回やる曲なだけに飽き気味に感じる時もあるのだが、これは実に良いアレンジだし、一気に盛り上がりが最高潮に達していた。リリースから15年近く経ってこの曲がさらに伸び代を感じさせるとは。
その勢いのままにラウドなサウンドの「Easter」から、誰よりもゴッチが自由に踊るようにして曲を奏でているように見える「君という花」、そしてラストはシングルとしては最新になる「ボーイズ&ガールズ」。決して盛り上がる曲では全くないが、こうして年末にロックフェスに集まる少年少女たちを肯定しているかのように鳴らされていた。きっとそれは今の年齢になったアジカンのメンバーだからこそできること。
アンコールではゴッチが
「みんな、来年も1年間ニヤニヤしていようぜ。ツイッターとかだと気難しいおっさんって思われてるだろうけどさ、意外と朗らかだから(笑)
ニヤニヤしてるっていうことは笑えてるっていうことだから」
と、あくまで楽しく、笑顔で生きていきたいし生きていこうぜという姿勢を見せた。それはどこか「ホームタウン」のアルバムの内容にも通じるところがあるのだが、最後に演奏された「今を生きて」から感じる空気でもある。パワーポップを今にしてアジカンが標榜したのはそうした朗らかな空気を世の中に満たしていきたいという思いもあるのかもしれない。
もはやアジカンは完全にベテランの域に達しているバンドだけれど、ビックリするくらいに守りに入らない。最新作でもサウンドの刷新を計ったり、ほかのソングライターに曲を作ってもらったりというロックバンドとして新たなトライアルに挑み続けている。それができるのは変わらずにこの4人で進み続けてきたからこそだろうが、NANO-MUGEN FESなどで常に我々にそうした変革者としての背中を見せてくれていたアジカンが今でもその姿勢を見せてくれている。そして何よりも素晴らしいライブを見せてくれる。それが本当に嬉しいし、終わった後の清々しさという意味ではこの日が1番だった。
1.新世紀のラブソング
2.Re:Re:
3.Standard
4.ソラニン
5.ブルートレイン
6.サイレン
7.ホームタウン
8.荒野を歩け
9.リライト
10.Easter
11.君という花
12.ボーイズ&ガールズ
encore
13.今を生きて
この日はフェス会場でいろんな人に会った。そこで様々な音楽の話をして、いろんな刺激をもらった。それは各地からいろんなアーティストが好きな人が集うフェスならでは。そうした出会いもたくさんあった2018年だった。
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