COUNTDOWN JAPAN 18/19 day1 @幕張メッセ 12/28
- 2019/01/01
- 17:56
日本の大型冬フェスの先駆けである、ロッキンオン主催のCOUNTDOWN JAPAN。開催初年度からさまざまなトライアルを果たし、完全に冬フェス、年末フェスというものを定着させたイベントである。
今年も
EARTH STAGE
GALAXY STAGE
COSMO STAGE
MOON STAGE
ASTRO ARENA
の5ステージ構成で、1〜8ホールが4つのステージと飲食ブース、国際展示場がASTRO ARENA、9〜11ホールが物販&クロークという、幕張メッセをまるごと使うという巨大フェスっぷり。近年、社長の渋谷陽一が力を入れている会場のオブジェや装飾などはさらに派手になっている。
例年この初日は社会人はまだ仕事納めを迎えていないという日にちなこともあり、チケットが売り切れなかったりすることも多いのだが、今年はこの日にまさかのBUMP OF CHICKENが出演するということもあり、チケットは即完&超満員。10時過ぎに会場に到着した時点でBUMPの物販は100分待ちという、ワンマンなみの状態になっていた。
12:00〜 Hump Back [COSMO STAGE]
EARTH STAGEやGALAXY STAGEと違って、開演前に前説がないのが少し寂しいが、去年から巨大化したことによって1万人規模のステージになった、COSMO STAGE。
メンバー全員が時間前から登場し、
「朝早くから来てくれたみんなのためだけに全力でリハという名のライブやります!」
と言って、まさにサウンドチェックという感じは一切なし、普通に曲を演奏した大阪のHump Backがこのステージのトップバッター。
時間になるとSEが流れてメンバーが登場し、
「大阪から、ロックバンドがやってきたぞー!」
と林萌々子(ボーカル&ギター)が叫んで「月まで」からスタート。早くも超満員となった客席の光景に林は嬉しそうにギターをかき鳴らしながら歌い、ぴか(ベース)もぴょんぴょん飛び跳ねたり、体を低く逸らしながらベースを弾く。
自分は7月の徳島でのこなそんフェスでこのバンドのライブを見た時に、
「このバンドはこれから間違いなく変わる」
と書いたのだが、やはりそうだった。というか自分たちがバンドを始めるきっかけになったバンドの最後の日に呼んでもらえたら絶対にそうなる。
で、それは林のボーカルの飛距離はもちろん、ぴかと美咲のリズムの強さにもしっかり現れていて、普段フェスなどでは基本的にコーラス以外でマイクを使うことのないぴかが「高速道路にて」の間奏で、
「幕張!最高だー!」
と叫んでしまうくらいに、自分たちがどういう存在として見られているか、どういうバンドになっていくのか、ということに全員が自覚的になってきている。
だからこそ、
「夢はもう見ないのかい?」
という「拝啓、少年よ」のメッセージが一層響いてくるのだが、夏まではAメロで発生する手拍子を
「ロックバンドに手拍子はいらない!拳で見せてくれ!」
と制していたのを、この日はしなかった。手拍子自体も全体で起こっているというものではなかったとはいえ、やはりデカいステージになると全員が全員自分たちのライブのスタイルをわかっているわけではない、ということも理解しているのだろうか。
最新シングルからの「悲しみのそばに」では持ち時間の短いこうしたフェスでも歌の力で聴き入らせることができるようになったことを示すと、
「楽器もいいけど、歌うのが1番楽しい。歌えば楽しいことや嬉しいことはさらに楽しく、悔しいことや悲しいことはなくなっていく。みんながそうなってくれたらいいな。歌える?」
と「星丘公園」の
「君が泣いた夜に ロックンロールが死んでしまった 僕は飛べない」
という歌い出しのフレーズで林がマイクから離れると、確かな合唱が起こり、
「今年で1番嬉しい!ありがとう!」
と叫び、その後もサビでは大合唱が巻き起こった。
「みんなの青春になりたい!」
と憧れの人たちの前で叫んだバンドは、それからわずか半年で「みんなのバンド」になった。
ポップとして捉えられることも厭わないバンドも多い今のバンドシーンにおいて、ここまで愚直的なほどに「ロックバンドであること」を口にし続けるバンドは実に珍しい。でもそこまでしてロックバンドにこだわるからこそ、ロックバンドにほかの何よりも特別な感情を持っている我々は夢を見て、感動してしまう。
「ああ もう泣かないで」
と歌われるたびに泣いてしまうほどに。
リハ.今日が終わってく
リハ.生きて行く
1.月まで
2.高速道路にて
3.拝啓、少年よ
4.短編小説
5.悲しみのそばに
6.星丘公園
13:00〜 雨のパレード [COSMO STAGE]
今年で3年連続出演となる、雨のパレード。サウンドチェックから独特の浮遊感を持ったサウンドでフェスの祝祭空間とはまた異なる空間を作り出していたが、本番でメンバーが登場すると、福永浩平がハンドマイクで歌い、ギターである山崎康介はシンセ、紅一点ドラマーの大澤実音穂はパッドをメインに叩くというポストロック色の強い「Reason of Black Color」からスタート。
早くも「我々のアンセム」と紹介されてから演奏した「Tokyo」では福永がシンセを弾きながら歌い、山崎はギター、大澤は生ドラムメインと一気にバンド感が増していく。
決してわかりやすく盛り上がるようなタイプの音楽ではないし、ともすると暗いと取られがちなバンドだが、その音の奥からは微かだが確かな希望や光のようなものが見える。実際に福永を始め、演奏しているメンバーは実に楽しそうな表情をしており、見た目は低温でも中身は熱く燃えているバンドであることがわかる。
「去年のこのフェスで、来年はデカいことがたくさんあるはず、って言ったら、プライベートでデカいことがマジでたくさんあった1年になって。だから今年も福永予言をします。来年は我々雨のパレードにとって新しいステップの年になるでしょう」
と来年の決意を新たにすると、その意志を音楽で示すべく、最近ライブでよくやっているという新曲を演奏。
リズムをできるだけシンプルに絞った、淡々と進むように見えてサビで一気に拓けていくという展開のこの曲は確かにこれからのこのバンドの方向性を示しているのかもしれない。
そしてラストは福永がリズムに乗って自由に踊りまくる「Count me out」。観客よりボーカルが踊りまくっているという図はサカナクションなんかも彷彿とさせるが、4つ打ち感の強いこの曲で締めるというところにこのバンドの、独自でありながらもフェスだからこその戦い方が見えたような気がした。
1.Reason of Black Color
2.Tokyo
3.Shoes
4.新曲
5.Count me out
13:30〜 ハルカミライ [MOON STAGE]
今やZeppでのワンマンがソールドアウトするくらいの人気を獲得している若手バンドだが、自分はだいぶ前にyonigeが高田馬場CLUB PHASEでライブをやった時に対バンに出ていたのを見ていて、その時はあまりピンときていなかったというか、印象がほとんど残っていなかった。
しかし、この日冒頭からメンバーそれぞれが暴れまくるように演奏している姿、その鳴らしている音と、何よりも橋本学の必死に目の前にいる人に歌を届けようとしている姿を見て、自分が前に見たのは違うバンドだったんだろうか?と思ってしまうくらいにイメージが変わった。
「今日はモッシュもダイブもできないけど、その分、歌でやらかしてやろうぜ!」
という通りに、その溢れる衝動を全てステージの上で燃やし尽くそうとしている。
その姿勢も、サウンドも衒いのないストレートな歌詞も、見ていて昔好きだった青春パンクと呼ばれていたバンドたちのことを思い出した。つまりそれは自分の好きなタイプのバンドであるということである。
「COUNTDOWN JAPANのテーマ!」
と堂々とぶち上げた「春のテーマ」ではギターの関大地が落ちそうなくらいにステージの最先端に寝転がりながらギターを弾くと、橋本もそこに寄り添うようにして寝転がりながら歌うという、側から見たら「何をしてんの?」と思ってしまうような状況に。途中で「立て!立て!」と橋本に促されて関が立つと、橋本も立ち上がるという、完全に何も決め事をせずにその場で勢いや衝動に任せてライブをしているのがよくわかる。
満員の客席を眺めながら、
「いつかはメインステージに出て、ダイブして全裸になって、華々しく散ろうと思います(笑)関係者のみなさん、冗談ですよ!」
と言えるあたり、橋本は喋りも実に達者である。
飛躍のきっかけになった今年リリースのシングル「それいけステアーズ」をバンドの勢いそのものといった感じに演奏すると、ライブが終わってしまうのが名残惜しそうに橋本は座って観客に語りかける。それを見た関も座り、逆にベースの須藤俊は立ち上がるのだが、橋本は
「座ってる俺を見て合わせて座ったのか。そういうことができるようになったんだなぁ…。お前は座っててくれ!座ってるのが仕事だから!」
と関とドラムの小松謙太をいじって笑わせながらも、
「HYの「366日」をさっき楽屋で聴いていて。めちゃくちゃ良い曲だなぁって思いながら。でも上手くなくても、ハートの強さで歌は変わる!」
と堂々と宣言。最前列で見ていた女性が泣いていたのがスクリーンに映し出されたのだが、それも当然だと思うくらいにグッと来ていた。
そしてラストに演奏された「アストロビスタ」は
「眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ」
というフレーズがある。それはまるで高校生の頃とかの自分そのものだ。つまり同じような青春時代を送ってきたような人種だったということで、それはグッと来るよなぁと思うし、Zeppワンマンをソールドアウトさせたのも、このステージが超満員になったのも納得でしかない。
「ハルカミライを見て欲しいです!」
と言ってきてくれた人のおかげで、自分のこのバンドに対するイメージはガラッと変わった。今でもじゅうぶんすごいところにいるが、もっともっと行けそうな予感が漂っている。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.春のテーマ
6.世界を終わらせて
7.それいけステアーズ
8.アストロビスタ
14:00〜 SPECIAL OTHERS [COSMO STAGE]
もはやこのフェスの常連バンドの1組、SPECIAL OTHERS。ことインストバンドという枠組みにおいてはこのフェスを代表する存在と言っていいかもしれない。
いつものようにふらっと4人がステージに登場すると、おなじみのジャム的な音出しは控えめに、早くも「BEN」の演奏をスタートさせ、集まった観客をゆるゆると踊らせながら、それぞれのソロも挟みつつ、曲後半のボーカルパートでは芹澤(キーボード)と宮原(ドラム)の歌が至福の多幸感を持って響いていく。このバンドは様々なボーカリストたちを招いた曲も多数あるが、もし自分が歌うことになったとしたらこの曲のボーカルパートを歌いたいの一択。歌が始まるまで5〜6分なんにもやることがないけれど。
「BEN」も長尺曲であるが、続いて演奏された「I'LL BE BACK」は10分以上にも及ぶさらなる長尺曲。この曲も主に宮原のボーカルがポップなサウンドをさらにカラフルに引き立たせていくのだが、曲の途中でいきなり又吉のウッドベースの音が出なくなり、すぐさまエレキにシールドを挿し直して持ち替える。この辺りの対応力の速さはさすがベテランと言えるし、普段ウッドベースで弾いてる曲をいきなりエレキに変えるというのは実に弾きづらそうな感じがするのだが、それを一切感じさせないのもさすがである。
その時の様子を芹澤は
「ベースの音が出なくなったけど、全然そんなことないですよ、っていうていの顔をして演奏してたんだけど、みんな音が出なくなったの気付いてた?」
と観客に問いかけるも、大半の人が気付いていた。そりゃあ曲の途中でいきなりベース取り替えたらさすがに気付くだろう。
さらには昨年に続いて、今年もフライングカウントダウンを敢行するのだが、あまりに唐突にやったので全く盛り上がらず、
「これが本番だと思ったら恐ろしいね(笑)」
というくらいのクオリティだったので、このバンドが年越しアクトを務めるのはまだまだ先のことになりそうだ。
そんなこんなであっという間に最後の曲となって演奏したのはこのバンドの存在を広く世に知らしめた「AIMS」で、それまで以上に踊りまくり、最前ブロックはモッシュと呼んでも差し支えないくらいの盛り上がりを見せていた。
今でこそこうしてCOSMO STAGEに出ているが、前にはEARTH STAGEに出たり、GALAXY STAGEが超満員になるようなバンドだった。その頃からしたら状況はかなり落ち着いたように見えるけれど、やはりライブの素晴らしさは全く変わらない。ただ、持ち時間が30分だと3曲しかできないバンドなだけに、やはりせめて40分くらいは欲しいし、そういう意味ではデカいステージに出ていて欲しい存在のバンドである。
1.BEN
2.I'LL BE BACK
3.AIMS
14:30〜 ヤバイTシャツ屋さん [EARTH STAGE]
去年はGALAXY STAGEの年越しアクトを担った、ヤバイTシャツ屋さん。今年はついにEARTH STAGEに初進出である。
そんな記念すべき舞台にもかかわらず、おなじみの「はじまるよ〜」という脱力SEの後に登場すると、こやまはいつもの
「イェイイェイイェーイ!」
という感じでは全くなく、
「色々言いたいことはあるけれど、俺たちは俺たちで今日しかできないようなライブを絶対やる。解散ライブのつもりでやります」
とここに立てる嬉しさよりも悔しさをいきなり感じさせる発言。
実はこの日の朝に、ヤバTと同じ時間にMOON STAGEに出演する、ねごとがバンド解散を発表しており、朝から「ねごと解散するからヤバTを蹴ってねごとに行く」というツイートが流れていて、こやまはそれを見て悔しさをあらわにしていた。本来だったら自分たちを見てくれるはずだった人たちがほかのステージに行ってしまう。これだけデカいステージでこれだけ満員になっていればそこまで気にしなくても、と思ってしまうが、こやまはそうした悔しさをこの日のライブの原動力にしていた。それをこやまだけが抱えるのではなくて、しばたともりもともちゃんと共有しているからこそ、ただでさえテンポの速い曲がより速く、かつパンクと言っていいようなモードになっていた。それは最新作のリード曲であるポップな「かわE」もそうで、もはや「かわE」というよりも「かっこE」と思えるくらい。
とはいえいつものヤバTらしさも健在であり、
「俺らメンツ的には31日のバンドじゃない?仲良いバンドばっかり出てるし。今日なんか喋れる出演者が岡崎体育くらいしかいない(笑)
なんで俺らがこの日に出たかっていうと、31日に紅白歌合戦に出れると思って、スケジュールを空けておいたからです。結果的に出れませんでした!(笑)めちゃくちゃダサいです!
だから紅白歌合戦では絶対できない、中身スッカスカの曲をやりたいと思います!」
とこやまが笑わせながらもそこにはやはり悔しさを滲ませると、ヤバT最大のダンスナンバー「DANCE ON TANSU」の、全く意味はないけど語感の気持ち良さでEARTH STAGEは踊りまくる。ハイトーンボイスをベースを弾きながら軽々と歌うしばたの安定感も見逃せないところだ。
同じく歌詞に内容がないということを歌詞の内容にしているという実は内容があるようにすら思える「KOKYAKU満足度1位」では曲の後半でこやまのギターの音が出なくなるというハプニングに見舞われる。これはヤバTのライブでは実に珍しいことであるのだが、ただでさえ悔しさを抱えてライブに臨んだこやまはこのトラブルによってさらに悔しそうな顔つきになり、ベースとドラムの音だけが鳴り響く中、叫びまくってギターの隙間を埋めようとしていた。
なんとか立て直して「メロコアバンド〜」の演奏に入ろうとするも、またしても音が出なくなり、一度演奏を中断するまでに。普段ならこうした合間でいくらでも面白いトークでもして時間を埋められそうなものであるが、
「今日はひたすら曲を連発しようと思ってたから、話すネタを用意していない」
と、あくまでこの日のライブは面白さではなくて音楽で勝負するつもりだったことを明かす。そうなると解散ライブのつもりで、と言っていたのは本当のことなんだろう。
復旧してからの「メロコアバンド〜」はやはり時間が気になってきていたのか、観客を全員座らせてから一斉にジャンプさせるというおなじみのパフォーマンスをかなり急ぎ気味にやっていたように見えたし、その後に演奏された曲たちもさらにテンポが速くなってるように感じた。やはりそこは人間が音を出してるだけに、焦りであったりが音に現れている。それがロックバンドのライブの面白いところであり、それを実感させてくれるヤバTはやはりロックバンドである。
「ヤバTは勢いだけのバンド、ってよく言われます!でも勢いだけでこのステージに立ててます!それってすごいことじゃないでしょうか!」
とこやまは叫んだのだが、たくさんのバンドがこういうフェスに出ている中で、勢いを感じさせるようなバンドって実はそこまで多くない。それこそ中堅からベテランのバンドにそれは望めるものでもない。ヤバTは決して勢いだけのバンドではない、しっかりとした意志やバンドであることの誇り、そして自分たちにしかできないことをやっているバンドであるが、だからこそそうした本質とのギャップができてしまうし、それを言われたり目にしてしまうことも多い。そんなに気にしなくても、とも思うが、こやまはやっぱり気になってしまう。そのあたり、見た目以上にものすごく負けず嫌いな男である。
「勢いだけの曲」というさらにテンポ速くなりまくりの「ヤバみ」から、ラストは
「みんなをヘラヘラさせにきました!最後にこの曲でみんなでヘラヘラしようぜ!また来年もみんなでヘラヘラしようぜ!」
という「ハッピーウエディング前ソング」へ。ヘラヘラしているということは、みんなが笑っているということ。どれだけ悔しさを滲ませていても、やっぱり最後には笑顔になりたい。みんなの笑顔が見たい。だから一人でもたくさんの人に自分たちのライブを見て欲しい。
悔しさの中に見えたのは、このバンドの中身、本質。解散ライブのつもりで、と言っていたけれど、ヤバTはまだまだ終わらない。来年以降もこのデカいステージに立って、我々をヘラヘラさせてくれるはず。来年もきっと31日以外の日に出演して、31日はお茶の間までもヘラヘラさせてくれるのだろう。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.Tank-top of the World
5.DANCE ON TANSU
6.KOKYAKU満足度1位
7.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
8.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
9.ネコ飼いたい
10.無線LANばり便利
11.ヤバみ
12.ハッピーウェディング前ソング
15:30〜 パスピエ [ASTRO ARENA]
近年はこのASTRO ARENAが主戦場になってきている、パスピエ。ワンマンでも椅子がある会場を経てきているだけに、スタンド席のあるこのステージはうってつけの場所とも言える。
まだ時間前から暗闇の中にメンバー全員が登場して「正しいままではいられない」を演奏するというサービスをしてくれると、本編ではおなじみのSEとともに男性陣が先に登場し、ライブ用にアレンジされたイントロを演奏し始めると、その後にやや動きやすさを意識したように見える大胡田なつきが登場し、いきなりの「S.S.」からという攻めモード。間奏では早くもサポートドラマーの佐藤も含めたメンバーそれぞれのソロパートも差し込まれ、このバンドの演奏力の高さと迫力を見せてくれる。
最新作からの「ネオンと虎」、さらには大胡田がリズムに合わせて腕を振る和のテイストが強い「つくり囃子」と、短い時間の中でも同じようなタイプの曲でアゲまくるというわけではなく、バンドの持つ様々な面を見せようという意識が伝わってくるような選曲。
大胡田が今年1年の感謝と、こうして年末にこのフェスのステージに立てていることへの感謝を告げると、ライブではおなじみのイントロアレンジが加えられた「チャイナタウン」へ。三澤は背面弾きギターを披露し、露崎は5弦ベースでうねらせまくり、さらにグルーヴを高めていくと、最後に演奏されたのは大胡田がひらひらと舞いながら飛び跳ねる「MATATABISTEP」で踊らせまくり、そのいかにもインドア派的な見た目とは裏腹にメンバーも大汗をかく熱演、客席も凄まじい熱気で満ちていた。
GALAXYのトリを務めた時から比べると、パスピエの状況はかなり落ち着いてきている。でも野音のワンマンでもそうだったが、ライブはむしろ今なお進化を続けているし、それは30分という短すぎると感じてしまうこの日のライブからでも伝わってくる。というかこのバンドが50分の持ち時間を持っていたら圧倒的にベストアクト間違いないくらいのレベルだと思う。
リハ.正しいままではいられない
1.S.S.
2.ネオンと虎
3.つくり囃子
4.チャイナタウン
5.MATATABISTEP
16:30〜 JUN SKY WALKER(S) [MOON STAGE]
夏のロッキンにも出ていたし、他のフェスにも積極的に出演し、もはや大ベテランの域に入っているとは思えないくらいに精力的な活動を続けている、ジュンスカことJUN SKY WALKER(S)。1988年にメジャーデビューしているので、デビュー30周年イヤーの締めくくりがこの日のライブとなる。
おなじみのSEで森純太(ギター)、寺岡呼人(ベース)、小林雅之(ドラム)の3人が登場すると、最後にサングラスをかけて革ジャンというロックスターそのものな出で立ちの宮田和弥(ボーカル)がステージに現れ、森のギターがイントロを奏でたのは「歩いていこう」。ずっと昔からジュンスカを聴いているであろう人たちが集まった中でサビでは宮田がマイクを向けるとコーラスは合唱。
「うしろー!」
とマイクを客席後方まで向けてコーラスを煽る宮田のスタイルは昔から普遍。
さらに「START」、森がピート・タウンゼントばりに腕をグルんと回しながらギターを鳴らす「MY GENERATION」と往年の名曲の連発によって合唱はさらに大きくなっていくし、その様子に引き込まれたのか、観客はどんどん増えていく。
「みなさん「ボヘミアン・ラプソディ」は見ましたか?」
と宮田が問いかけると、映画に影響されたのか、クイーンのようなコール&レスポンスを展開。フレディ・マーキュリーばりに声を張り上げる宮田のボーカルには歳を重ねても一切の衰えが見えないどころか、かつてよりも歌えるレンジが広がっているかのようにすら感じる。
そのコール&レスポンスでさらに観客もステージも温度が上がった状態で演奏されたのは今年リリースの最新作からの「ONE WAY」。一度バンドが解散した後はプロデューサーとしてビッグネームになった寺岡呼人をはじめ、それぞれが新しい音楽活動をしていたが、4人が揃うとこれぞジュンスカとしか言えないようなビートパンクになる。メロコア以降の現代のパンクから比べると、パンクと言ってもテンポが遅いかもしれないけれど、スタイルを変えることなく自分たちを更新し続けている姿に心強さを覚える昔からのファンも多いはずだ。
再始動後の代表曲である「青春」から、
「今日もこのフェスが終わって外に出たら、幕張にはすてきな夜空が広がっていることでしょう!」
と宮田が言って大合唱を巻き起こしたのは「すてきな夜空」。時代が変わってもこのメロディの良さは絶対に変わらないと思うけれど、もし20年前とかにこういうフェスがあったら、きっと今のWANIMAやフォーリミみたいな位置にこのバンドがいたんだろうな、と思うし、そういう意味でもこうしてフェスに出続けることでそうしたバンドのファンに聴いてもらえるきっかけにもなると思う。
演奏が終わっても宮田は「ボヘミアン・ラプソディ」のコール&レスポンスを行い、メンバー紹介をしながら
「宮田・フレディ・和弥でした!」
と挨拶してステージを去っていった。
ジュンスカは2008年に限定復活した時にEARTH STAGEに立った。そのライブ後に、青春時代をジュンスカとともに過ごしたであろう年代の女性たちがずっと泣いていた。もう会えないと思っていたバンドにまた会えた嬉しさ。あれからさらに10年経って、今ならその気持ちが自分にもわかる。そしてそのバンドのライブを見続けることができる喜びも。
1.歩いていこう
2.START
3.MY GENERATION
4.ONE WAY
5.青春
6.すてきな夜空
17:00〜 Mrs. GREEN APPLE [EARTH STAGE]
過去2年はPerfumeとマキシマム ザ ホルモンの裏でGALAXY超満員、夏はMAN WITH A MISSIONの裏でLAKE STAGE超満員という結果を残してきただけに、若手の中でメインステージ昇格組筆頭と言われてきた、Mrs. GREEN APPLE。満を持してこのフェスのメインステージであるEARTH STAGEに初登場。
ステージには柱のオブジェがメンバーを取り囲む中、フォーマルな衣装に身を包んだメンバーたちが登場し、いきなり大森が観客に合唱を促す「Speaking」でスタート。EARTHですら満員と言っていいような状況だし、その観客全員による大合唱という光景を見ていると、まだ小さいステージに出ていたときからあったこの曲にはそもそもこうした巨大なステージで鳴らされるべきポテンシャルを持っていたんだな、と実感させられる。
「EMSEMBLE」ツアーを幕張メッセで終えた後はライブハウスをめぐる原点回帰的なツアーを行っており、そこでは初期曲も多く演奏されていたからか、この日もど迫力のギターロックサウンドが鳴り響いた「ナニヲナニヲ」、「藍」というインディー期の曲が演奏される。大森はこの曲たちを作った時に、こんなデカいステージで、5万人もの人の前で鳴らされるようになるなんて想像していただろうか。
一転してビッグバンド的なサウンドの「Love me, Love you」、EDMを取り入れて観客を飛び跳ねさせまくった「WHOO WHOO WHOO」と最新作の収録曲を披露して、このバンドの持つ音楽性の幅広さを見せる。サウンドだけ聴くとまるっきり別バンドと言ってもいいくらいの飛距離だが、それを違和感なくこうしてライブで並べられるというのはこのバンドのメンバーの技術と表現力、さらには大森が曲の背景やコンセプトをしっかりメンバー全員に伝えた上で作られているという意志の統一のされ方という要素も大きいように思える。
するとここで高校サッカーのテーマ曲になっている新曲「僕のこと」を披露。あくまで大森のボーカルを引き立てるために存在しているかのような引いた楽器隊の演奏と、ハイトーンやファルセットも含めて伸びやかな大森のボーカル。完全に聞かせるタイプの楽曲であるが、これだけ満員の観客が物音も立てることなく演奏に聞き入っている。それができるのは大森の圧倒的な歌唱力があってこそだし、この曲はそれがあるからこそ生まれた曲だと思う。青春のキラキラした感じというよりも、破れたチームがロッカールームで涙を流している姿に寄り添うような歌詞も多く出てくる。そうした青春を体験していないはずの大森がこうした曲を作ることができるというところにこのバンドの無限の可能性を感じる。
曲終盤には和太鼓の音も鳴る「No.7」、今や完全にこのバンドの代表曲と言ってもいい「WanteD! WanteD!」と後半はアッパーに振り切ると、
「僕らは今年がデビュー5周年だったんですけど、このフェスには昔お客さんとして遊びに来ていて。EARTH STAGEのデカさにビックリしたりしてたんだけど、今日こうして自分たちがこのステージに立てていて。今日会場に来るまでにみんなで車の中で、昔お世話になったバンドとか対バンしたバンド、CDを貰ったりしたバンドの曲を聴きながら来て。そういう人たちと出会ってライブハウスで一緒にやってきた経験が僕らをここに連れてきてくれたと思っています」
と、このEARTH STAGEに立っている感慨を口にしたのだが、ミセスはメジャーデビュー以降は対バンライブなどをそこまでやっているバンドではない。でもインディーの時代には小さなライブハウスでChapter Lineら少し年上のギターロックバンドとよく一緒にライブをしていた。もうこの規模になると彼らと一緒にライブをやれるような機会はないかもしれない。でもミセスのメンバーはあの頃のことを決して忘れてはいない。きっと当時一緒にライブをやっていたバンドたちも、こうしてミセスがこんなに大きなステージに立てるようになったことを心から喜んでくれているはずだ。今のミセスはそうしたいろんな人の思い(もちろんファンの思いも)を背負ってステージに立っているように感じる。だからもうインディーズ期やメジャーデビュー当時の頃のように子供みたいには絶対見えない。本当に頼もしい大人になった。
そうした思いがこもったようにすら感じた「青と夏」で会場にいる全ての人の抱える青さを刺激すると、最後に演奏されたのは「最強のドレミファソラシド」こと、メジャーデビュー曲の「StaRt」。ミセスはこの曲の歌詞の「忘れたくない」を未だに忘れていない。だからこのステージに立っても、最後には
「Mrs. GREEN APPLEでした!以降、お見知り置きを!」
と初出演した時と全く同じ挨拶で締めた。でもその言葉が含んでいる意味は当時とは全く違う。かつてより、さらに広い場所に向けたこのバンドからの宣言だ。
1.Speaking
2.ナニヲナニヲ
3.藍
4.Love me, Love you
5.WHOO WHOO WHOO
6.僕のこと
7.No.7
8.WanteD! WanteD!
9.青と夏
10.StaRt
18:30〜 あいみょん [GALAXY STAGE]
開演前から完全に超満員の入場規制状態。完全に2018年の顔であり、大晦日には紅白歌合戦にも出演する、あいみょんが昨年のASTRO ARENAから今年はGALAXY STAGEに移ってもなおこの状態である。
バンドメンバーとともにジャケットを着用したあいみょんが現れてアコギを手にすると、「満月の夜なら」からスタート。原曲は落ち着いた空気の曲であるのだが、バンド編成でのライブだからかテンポがかなり速くなっており、あいみょんの歌唱もそれについて行っている。しかしそこで声が揺らいだりということは全くないというあたりがこの1年であらゆる場所でライブをやりまくってきた経験と、時代を手にしている人だからこそのオーラみたいなものを感じさせる。
過激な歌詞がポエトリーリーディングのように次々と出てくる「生きていたんだよな」とドラマ主題歌として大ヒットしている、男女の恋をビールの泡にかけた「今夜このまま」がどちらも完全にあいみょんの音楽として同じように共有されているというところも伝わり方や聴かれ方の変化を感じさせるが、黒く長い髪をなびかせながらアコギを弾き、時に顔を横に向けながら歌うあいみょんの姿はライブで観ると実にセクシーなものを感じさせる。
R&B的なリズムのアプローチを取り入れた「愛を伝えたいだとか」もバンドサウンドによってロック色がかなり強くなっている中で演奏されたのは「君はロックを聴かない」。
このフェスは言ってもロックフェスであるため、きっとここに来ていた人はみんなロックを聴いているはず。(この日で言えばBUMP OF CHICKENとかを)
だからこの曲の「君」はこの日客席にいた人たちではない。むしろ観客は「こんな歌やあんな歌で恋を乗り越えてきた」「僕」側だ。でもそんな僕らの普段の生活においては、学校や会社でも、周りにロックを聴いている人は少ないし、このフェスに出ているアーティストの大半を知らないというような人ばっかりだ。きっと誰しもがそういう経験をしてきてるからこそ、この曲はロックファン1人1人に寄り添うかのように響く。本当にとんでもない名曲である。
さらにバンドの演奏がテンポをさらに速くする、あいみょんの中でもサウンド的には最もストレートなギターロックの「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」は「死ね。」というフレーズと爽やかかつ伸びやかなメロディのコントラストが実に痛快で、その瞬間に客席からたくさんの腕が上がる様子ももはや「メンヘラ」とかいうものを超えた場所でこの曲が鳴っていることを示してくれる。
あいみょんはフェスではほとんど曲間で喋らないで曲を次々に演奏していくのだが、最後にロッキンオンジャパン最新号の表紙を飾っていることを告げると、
「最後に今年1番咲いてくれた花の曲を歌います」
と言って演奏されたのは「マリーゴールド」。全ての曲が時代の曲として鳴り響いたこの日の中でもこの曲はやはり別格だ。GoogleのCMでもそうした使われ方をしているように、きっと2018年を代表する曲を何年も経った後に調べたらきっと真っ先にこの曲が出てくるはず。でもこの曲は2018年だけに効力を持った曲では全くなく、これからずっとたくさんの人の中で大事に聴かれていく曲になっていくのだと思う。
個人的な2018年のMVPはヤバイTシャツ屋さんだったが(あいみょんは今年はアルバムを出していないというのもある)、もっと広いところでのMVPというか、2018年の顔はこの人だったと言って間違いないし、2019年はさらに大きなステージでこの人の曲が鳴らされるのは間違いない。
リハ.ジェニファー
1.満月の夜なら
2.ふたりの世界
3.生きていたんだよな
4.今夜このまま
5.愛を伝えたいだとか
6.君はロックを聴かない
7.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
8.マリーゴールド
19:30〜 BUMP OF CHICKEN [EARTH STAGE]
この日への出演が決まってからチケットは即完。物販はディズニーランドのアトラクション並みの待ち時間という状況になっていた、この日のトリのBUMP OF CHICKEN。昔は年末に活動するようなイメージは一切なかったが、近年はこのフェスにもちょくちょく出演するようになってきている。
やはりというかなんというか、「EARTH STAGEって入場規制っていう概念あったっけ?」って思ってしまうくらいの超満員の中で4人が登場すると、藤原基央はアコギを手にすると客席に向かって高く掲げ、そのアコギを鳴らす冬の大名曲「スノースマイル」からスタートするというサプライズに客席は騒然。おりしもこの日は関東地方は真冬日、風が強く吹く幕張はより一層の寒さとなっていたのだが、その寒さがこの曲が聴けた要因であるならば、
「冬が寒くって本当に良かった」
と思わざるを得ない。
今年BUMPは、逆にアルバム出したらどうなるのか、というかアルバムというリリース形態が今後あるのだろうか、と心配になるくらいに多数の新曲をリリースしてきたのだが、2018年のライブ納めとなるこの日にその新曲たちをしっかりみんなの前で鳴らして新しい年にいこうという意識がはっきりと感じられるようなそこからの新曲の連発っぷり。
ステージ背面のスクリーンに曲の歌詞が映し出され、増川、チャマ、升の3人による「いこうよ」というコーラスが力強く前進していく姿勢を示している「望遠のマーチ」ではその演出ゆえに藤原が歌詞を間違えたのがはっきりとわかってしまうのだが、テレビを見ていたらいきなり妖怪ウォッチのCMでこの曲が流れ、「これBUMPの新曲!?」と驚いたのも2018年の思い出の一つである。
サビでカメラのフラッシュのように真っ白な光が中央のスクリーンから明滅するという演出の「記念撮影」、再び藤原がアコギに持ち替え、その儚さを含んだボーカルを中心にしながらも間奏では藤原と増川が向かい合ってギターを弾く「話がしたいよ」と続くと、かつて人形劇としてアニメ化された「ギルド」、観客一丸となって勇壮なコーラスを響かせた「虹を待つ人」と、幅広い時期からの選曲。というかほとんどフェスに出ないバンドゆえに、「今フェスでやるセトリ」というのが実に見えにくいバンドであり、ほとんどどの曲が演奏されても驚いてしまうのだが。
チャマによるMCなども挟みながら、唯一演奏されても驚かないというか、間違いなく演奏されると誰しもが思っているであろう「天体観測」がここで演奏されるのだが、以前まではフェスだとアンコールで演奏されることも多かったからか、この曲が演奏されるともうライブが終わってしまうかのような錯覚に陥ってしまう。当然サビの「オーイェー」のコーラスは割れんばかりの大合唱。
しかし「天体観測」でこそ終わらなかったものの、今やこのバンドの曲においてライブで1番盛り上がるんじゃないかと思うくらいに多幸感溢れる景色を描いて見せた「ray」であっという間に本編が終了。
「いくらなんでも早すぎない?ほかのステージまだやってる時間じゃない?」
と思ってると再びメンバーがアンコールで登場し、藤原と増川がステージ横に伸びる花道に走り出して客席の端の方にいる人にまで手を振ったりしてから演奏されたのは「メーデー」で
「君と一緒に!」
のサビの最後のフレーズは確かに今こうして我々の目の前でBUMP OF CHICKENが演奏しているという事実を再確認させてくれた。
これで終わりかと思いきや、チャマがステージに座り込んだり、みんなで話したりしている。果たしてこれは?と思っていると、藤原から
「実は本編が終わった時にスタッフさんに「まだ20分も持ち時間残ってますよ」って言われて(笑)
アンコールやるにしても1曲しか考えてなかったから、ステージの端まで走ったりしたんだけど、それでもどうやらまだ全然時間が余ってるらしいっていうことなんで、もう1曲やろうか」
と状況説明があり、まさかの持ち時間を間違えていたとのこと。確かにEARTHのトリは70分の持ち時間があるはずなのに、本編は45分くらいしかやっていなかった。そう考えると実にもったいないというか、最初から70分のつもりでセトリを組んでいればもう2〜3曲は演奏できたんじゃないか、と思ってしまうのだが、急遽追加で演奏された「ガラスのブルース」の
「ガラスの目をした幕張叫べ!」
という今ここでしかないフレーズを聞かされたら、こうしてこのフェスに出てくれただけで感謝だな、と思う以外になかった。
メンバーがステージから去る中、藤原が1人残ると、
「寒いから風邪引かないようにね。僕らの「スノースマイル」っていう曲の中に
「冬が寒くって本当に良かった」
っていう歌詞があるけど、冬が寒くって良かったって思うことなんてないから(笑)
あの曲は
「君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするためのこの上ないほどの理由になるから」
っていう好きな人のための惚気の口実だから。だから普通の人からしたら冬が寒くって良いことなんかなんもないから(笑)
もうあとちょっとで今年も終わるけど、今日ここにいた君たちは来年も大吉です。だって我々アーティストを楽しませてくれた、そんな君たちは大吉に決まっているからね。正月におみくじを引いたらこの大吉は効力を失うけれど(笑)、それまでは君たちは大吉です!」
と観客に独特の言葉で感謝を告げた。その姿はまるで漫談をしているかのようにも見えたが、なんやかんやでこれで持ち時間は結構いい時間まで使ったような気がした。
BUMPは昔こそ下北沢のライブハウスでライブをやって…というほかのバンドと変わらないような活動をしてきたバンドだったが、その後の大ブレイクによって、決してライブで勝ち上がってきたというバンドではなく、ひたすらに楽曲の力でこの位置まで来たバンドであるというイメージだ。そもそもライブの本数もそこまで多くないからこそこうしてフェスに出ると事件のようになるわけで。
だから機材交換の多さによるライブ全体のテンポも含め、BUMPはめちゃくちゃライブが良いバンドであるというわけではないと思う。でもこうしてこういうフェスに来るような人たちには誰しもが人生の中でこのバンドの曲が流れていた瞬間が確かにあって、ライブで聴くとその時にいた人や風景を思い出すことができる。自分自身、「天体観測」や「スノースマイル」や「ギルド」を聴くと確かにそうした感覚になる。今でもこれだけの人にとってそういう存在であって、そうした人が増え続ける一方であるというのは本当に凄い。ある意味、このフェスに出ているほかのバンドたちとは違う次元に立っている。
1.スノースマイル
2.望遠のマーチ
3.記念撮影
4.話がしたいよ
5.ギルド
6.虹を待つ人
7.天体観測
8.ray
encore
9.メーデー
10.ガラスのブルース
初日から本当に良いライブばかりの楽しい一日だったが、この日はヤバTのこやまの悔しそうな表情は忘れられない。またこのフェスのこのステージでそれを晴らすような素晴らしいライブをしてくれると信じている。
Next→ 12/29 COUNTDOWN JAPAN 18/19 @幕張メッセ
今年も
EARTH STAGE
GALAXY STAGE
COSMO STAGE
MOON STAGE
ASTRO ARENA
の5ステージ構成で、1〜8ホールが4つのステージと飲食ブース、国際展示場がASTRO ARENA、9〜11ホールが物販&クロークという、幕張メッセをまるごと使うという巨大フェスっぷり。近年、社長の渋谷陽一が力を入れている会場のオブジェや装飾などはさらに派手になっている。
例年この初日は社会人はまだ仕事納めを迎えていないという日にちなこともあり、チケットが売り切れなかったりすることも多いのだが、今年はこの日にまさかのBUMP OF CHICKENが出演するということもあり、チケットは即完&超満員。10時過ぎに会場に到着した時点でBUMPの物販は100分待ちという、ワンマンなみの状態になっていた。
12:00〜 Hump Back [COSMO STAGE]
EARTH STAGEやGALAXY STAGEと違って、開演前に前説がないのが少し寂しいが、去年から巨大化したことによって1万人規模のステージになった、COSMO STAGE。
メンバー全員が時間前から登場し、
「朝早くから来てくれたみんなのためだけに全力でリハという名のライブやります!」
と言って、まさにサウンドチェックという感じは一切なし、普通に曲を演奏した大阪のHump Backがこのステージのトップバッター。
時間になるとSEが流れてメンバーが登場し、
「大阪から、ロックバンドがやってきたぞー!」
と林萌々子(ボーカル&ギター)が叫んで「月まで」からスタート。早くも超満員となった客席の光景に林は嬉しそうにギターをかき鳴らしながら歌い、ぴか(ベース)もぴょんぴょん飛び跳ねたり、体を低く逸らしながらベースを弾く。
自分は7月の徳島でのこなそんフェスでこのバンドのライブを見た時に、
「このバンドはこれから間違いなく変わる」
と書いたのだが、やはりそうだった。というか自分たちがバンドを始めるきっかけになったバンドの最後の日に呼んでもらえたら絶対にそうなる。
で、それは林のボーカルの飛距離はもちろん、ぴかと美咲のリズムの強さにもしっかり現れていて、普段フェスなどでは基本的にコーラス以外でマイクを使うことのないぴかが「高速道路にて」の間奏で、
「幕張!最高だー!」
と叫んでしまうくらいに、自分たちがどういう存在として見られているか、どういうバンドになっていくのか、ということに全員が自覚的になってきている。
だからこそ、
「夢はもう見ないのかい?」
という「拝啓、少年よ」のメッセージが一層響いてくるのだが、夏まではAメロで発生する手拍子を
「ロックバンドに手拍子はいらない!拳で見せてくれ!」
と制していたのを、この日はしなかった。手拍子自体も全体で起こっているというものではなかったとはいえ、やはりデカいステージになると全員が全員自分たちのライブのスタイルをわかっているわけではない、ということも理解しているのだろうか。
最新シングルからの「悲しみのそばに」では持ち時間の短いこうしたフェスでも歌の力で聴き入らせることができるようになったことを示すと、
「楽器もいいけど、歌うのが1番楽しい。歌えば楽しいことや嬉しいことはさらに楽しく、悔しいことや悲しいことはなくなっていく。みんながそうなってくれたらいいな。歌える?」
と「星丘公園」の
「君が泣いた夜に ロックンロールが死んでしまった 僕は飛べない」
という歌い出しのフレーズで林がマイクから離れると、確かな合唱が起こり、
「今年で1番嬉しい!ありがとう!」
と叫び、その後もサビでは大合唱が巻き起こった。
「みんなの青春になりたい!」
と憧れの人たちの前で叫んだバンドは、それからわずか半年で「みんなのバンド」になった。
ポップとして捉えられることも厭わないバンドも多い今のバンドシーンにおいて、ここまで愚直的なほどに「ロックバンドであること」を口にし続けるバンドは実に珍しい。でもそこまでしてロックバンドにこだわるからこそ、ロックバンドにほかの何よりも特別な感情を持っている我々は夢を見て、感動してしまう。
「ああ もう泣かないで」
と歌われるたびに泣いてしまうほどに。
リハ.今日が終わってく
リハ.生きて行く
1.月まで
2.高速道路にて
3.拝啓、少年よ
4.短編小説
5.悲しみのそばに
6.星丘公園
13:00〜 雨のパレード [COSMO STAGE]
今年で3年連続出演となる、雨のパレード。サウンドチェックから独特の浮遊感を持ったサウンドでフェスの祝祭空間とはまた異なる空間を作り出していたが、本番でメンバーが登場すると、福永浩平がハンドマイクで歌い、ギターである山崎康介はシンセ、紅一点ドラマーの大澤実音穂はパッドをメインに叩くというポストロック色の強い「Reason of Black Color」からスタート。
早くも「我々のアンセム」と紹介されてから演奏した「Tokyo」では福永がシンセを弾きながら歌い、山崎はギター、大澤は生ドラムメインと一気にバンド感が増していく。
決してわかりやすく盛り上がるようなタイプの音楽ではないし、ともすると暗いと取られがちなバンドだが、その音の奥からは微かだが確かな希望や光のようなものが見える。実際に福永を始め、演奏しているメンバーは実に楽しそうな表情をしており、見た目は低温でも中身は熱く燃えているバンドであることがわかる。
「去年のこのフェスで、来年はデカいことがたくさんあるはず、って言ったら、プライベートでデカいことがマジでたくさんあった1年になって。だから今年も福永予言をします。来年は我々雨のパレードにとって新しいステップの年になるでしょう」
と来年の決意を新たにすると、その意志を音楽で示すべく、最近ライブでよくやっているという新曲を演奏。
リズムをできるだけシンプルに絞った、淡々と進むように見えてサビで一気に拓けていくという展開のこの曲は確かにこれからのこのバンドの方向性を示しているのかもしれない。
そしてラストは福永がリズムに乗って自由に踊りまくる「Count me out」。観客よりボーカルが踊りまくっているという図はサカナクションなんかも彷彿とさせるが、4つ打ち感の強いこの曲で締めるというところにこのバンドの、独自でありながらもフェスだからこその戦い方が見えたような気がした。
1.Reason of Black Color
2.Tokyo
3.Shoes
4.新曲
5.Count me out
13:30〜 ハルカミライ [MOON STAGE]
今やZeppでのワンマンがソールドアウトするくらいの人気を獲得している若手バンドだが、自分はだいぶ前にyonigeが高田馬場CLUB PHASEでライブをやった時に対バンに出ていたのを見ていて、その時はあまりピンときていなかったというか、印象がほとんど残っていなかった。
しかし、この日冒頭からメンバーそれぞれが暴れまくるように演奏している姿、その鳴らしている音と、何よりも橋本学の必死に目の前にいる人に歌を届けようとしている姿を見て、自分が前に見たのは違うバンドだったんだろうか?と思ってしまうくらいにイメージが変わった。
「今日はモッシュもダイブもできないけど、その分、歌でやらかしてやろうぜ!」
という通りに、その溢れる衝動を全てステージの上で燃やし尽くそうとしている。
その姿勢も、サウンドも衒いのないストレートな歌詞も、見ていて昔好きだった青春パンクと呼ばれていたバンドたちのことを思い出した。つまりそれは自分の好きなタイプのバンドであるということである。
「COUNTDOWN JAPANのテーマ!」
と堂々とぶち上げた「春のテーマ」ではギターの関大地が落ちそうなくらいにステージの最先端に寝転がりながらギターを弾くと、橋本もそこに寄り添うようにして寝転がりながら歌うという、側から見たら「何をしてんの?」と思ってしまうような状況に。途中で「立て!立て!」と橋本に促されて関が立つと、橋本も立ち上がるという、完全に何も決め事をせずにその場で勢いや衝動に任せてライブをしているのがよくわかる。
満員の客席を眺めながら、
「いつかはメインステージに出て、ダイブして全裸になって、華々しく散ろうと思います(笑)関係者のみなさん、冗談ですよ!」
と言えるあたり、橋本は喋りも実に達者である。
飛躍のきっかけになった今年リリースのシングル「それいけステアーズ」をバンドの勢いそのものといった感じに演奏すると、ライブが終わってしまうのが名残惜しそうに橋本は座って観客に語りかける。それを見た関も座り、逆にベースの須藤俊は立ち上がるのだが、橋本は
「座ってる俺を見て合わせて座ったのか。そういうことができるようになったんだなぁ…。お前は座っててくれ!座ってるのが仕事だから!」
と関とドラムの小松謙太をいじって笑わせながらも、
「HYの「366日」をさっき楽屋で聴いていて。めちゃくちゃ良い曲だなぁって思いながら。でも上手くなくても、ハートの強さで歌は変わる!」
と堂々と宣言。最前列で見ていた女性が泣いていたのがスクリーンに映し出されたのだが、それも当然だと思うくらいにグッと来ていた。
そしてラストに演奏された「アストロビスタ」は
「眠れない夜に私 ブルーハーツを聴くのさ」
というフレーズがある。それはまるで高校生の頃とかの自分そのものだ。つまり同じような青春時代を送ってきたような人種だったということで、それはグッと来るよなぁと思うし、Zeppワンマンをソールドアウトさせたのも、このステージが超満員になったのも納得でしかない。
「ハルカミライを見て欲しいです!」
と言ってきてくれた人のおかげで、自分のこのバンドに対するイメージはガラッと変わった。今でもじゅうぶんすごいところにいるが、もっともっと行けそうな予感が漂っている。
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.春のテーマ
6.世界を終わらせて
7.それいけステアーズ
8.アストロビスタ
14:00〜 SPECIAL OTHERS [COSMO STAGE]
もはやこのフェスの常連バンドの1組、SPECIAL OTHERS。ことインストバンドという枠組みにおいてはこのフェスを代表する存在と言っていいかもしれない。
いつものようにふらっと4人がステージに登場すると、おなじみのジャム的な音出しは控えめに、早くも「BEN」の演奏をスタートさせ、集まった観客をゆるゆると踊らせながら、それぞれのソロも挟みつつ、曲後半のボーカルパートでは芹澤(キーボード)と宮原(ドラム)の歌が至福の多幸感を持って響いていく。このバンドは様々なボーカリストたちを招いた曲も多数あるが、もし自分が歌うことになったとしたらこの曲のボーカルパートを歌いたいの一択。歌が始まるまで5〜6分なんにもやることがないけれど。
「BEN」も長尺曲であるが、続いて演奏された「I'LL BE BACK」は10分以上にも及ぶさらなる長尺曲。この曲も主に宮原のボーカルがポップなサウンドをさらにカラフルに引き立たせていくのだが、曲の途中でいきなり又吉のウッドベースの音が出なくなり、すぐさまエレキにシールドを挿し直して持ち替える。この辺りの対応力の速さはさすがベテランと言えるし、普段ウッドベースで弾いてる曲をいきなりエレキに変えるというのは実に弾きづらそうな感じがするのだが、それを一切感じさせないのもさすがである。
その時の様子を芹澤は
「ベースの音が出なくなったけど、全然そんなことないですよ、っていうていの顔をして演奏してたんだけど、みんな音が出なくなったの気付いてた?」
と観客に問いかけるも、大半の人が気付いていた。そりゃあ曲の途中でいきなりベース取り替えたらさすがに気付くだろう。
さらには昨年に続いて、今年もフライングカウントダウンを敢行するのだが、あまりに唐突にやったので全く盛り上がらず、
「これが本番だと思ったら恐ろしいね(笑)」
というくらいのクオリティだったので、このバンドが年越しアクトを務めるのはまだまだ先のことになりそうだ。
そんなこんなであっという間に最後の曲となって演奏したのはこのバンドの存在を広く世に知らしめた「AIMS」で、それまで以上に踊りまくり、最前ブロックはモッシュと呼んでも差し支えないくらいの盛り上がりを見せていた。
今でこそこうしてCOSMO STAGEに出ているが、前にはEARTH STAGEに出たり、GALAXY STAGEが超満員になるようなバンドだった。その頃からしたら状況はかなり落ち着いたように見えるけれど、やはりライブの素晴らしさは全く変わらない。ただ、持ち時間が30分だと3曲しかできないバンドなだけに、やはりせめて40分くらいは欲しいし、そういう意味ではデカいステージに出ていて欲しい存在のバンドである。
1.BEN
2.I'LL BE BACK
3.AIMS
14:30〜 ヤバイTシャツ屋さん [EARTH STAGE]
去年はGALAXY STAGEの年越しアクトを担った、ヤバイTシャツ屋さん。今年はついにEARTH STAGEに初進出である。
そんな記念すべき舞台にもかかわらず、おなじみの「はじまるよ〜」という脱力SEの後に登場すると、こやまはいつもの
「イェイイェイイェーイ!」
という感じでは全くなく、
「色々言いたいことはあるけれど、俺たちは俺たちで今日しかできないようなライブを絶対やる。解散ライブのつもりでやります」
とここに立てる嬉しさよりも悔しさをいきなり感じさせる発言。
実はこの日の朝に、ヤバTと同じ時間にMOON STAGEに出演する、ねごとがバンド解散を発表しており、朝から「ねごと解散するからヤバTを蹴ってねごとに行く」というツイートが流れていて、こやまはそれを見て悔しさをあらわにしていた。本来だったら自分たちを見てくれるはずだった人たちがほかのステージに行ってしまう。これだけデカいステージでこれだけ満員になっていればそこまで気にしなくても、と思ってしまうが、こやまはそうした悔しさをこの日のライブの原動力にしていた。それをこやまだけが抱えるのではなくて、しばたともりもともちゃんと共有しているからこそ、ただでさえテンポの速い曲がより速く、かつパンクと言っていいようなモードになっていた。それは最新作のリード曲であるポップな「かわE」もそうで、もはや「かわE」というよりも「かっこE」と思えるくらい。
とはいえいつものヤバTらしさも健在であり、
「俺らメンツ的には31日のバンドじゃない?仲良いバンドばっかり出てるし。今日なんか喋れる出演者が岡崎体育くらいしかいない(笑)
なんで俺らがこの日に出たかっていうと、31日に紅白歌合戦に出れると思って、スケジュールを空けておいたからです。結果的に出れませんでした!(笑)めちゃくちゃダサいです!
だから紅白歌合戦では絶対できない、中身スッカスカの曲をやりたいと思います!」
とこやまが笑わせながらもそこにはやはり悔しさを滲ませると、ヤバT最大のダンスナンバー「DANCE ON TANSU」の、全く意味はないけど語感の気持ち良さでEARTH STAGEは踊りまくる。ハイトーンボイスをベースを弾きながら軽々と歌うしばたの安定感も見逃せないところだ。
同じく歌詞に内容がないということを歌詞の内容にしているという実は内容があるようにすら思える「KOKYAKU満足度1位」では曲の後半でこやまのギターの音が出なくなるというハプニングに見舞われる。これはヤバTのライブでは実に珍しいことであるのだが、ただでさえ悔しさを抱えてライブに臨んだこやまはこのトラブルによってさらに悔しそうな顔つきになり、ベースとドラムの音だけが鳴り響く中、叫びまくってギターの隙間を埋めようとしていた。
なんとか立て直して「メロコアバンド〜」の演奏に入ろうとするも、またしても音が出なくなり、一度演奏を中断するまでに。普段ならこうした合間でいくらでも面白いトークでもして時間を埋められそうなものであるが、
「今日はひたすら曲を連発しようと思ってたから、話すネタを用意していない」
と、あくまでこの日のライブは面白さではなくて音楽で勝負するつもりだったことを明かす。そうなると解散ライブのつもりで、と言っていたのは本当のことなんだろう。
復旧してからの「メロコアバンド〜」はやはり時間が気になってきていたのか、観客を全員座らせてから一斉にジャンプさせるというおなじみのパフォーマンスをかなり急ぎ気味にやっていたように見えたし、その後に演奏された曲たちもさらにテンポが速くなってるように感じた。やはりそこは人間が音を出してるだけに、焦りであったりが音に現れている。それがロックバンドのライブの面白いところであり、それを実感させてくれるヤバTはやはりロックバンドである。
「ヤバTは勢いだけのバンド、ってよく言われます!でも勢いだけでこのステージに立ててます!それってすごいことじゃないでしょうか!」
とこやまは叫んだのだが、たくさんのバンドがこういうフェスに出ている中で、勢いを感じさせるようなバンドって実はそこまで多くない。それこそ中堅からベテランのバンドにそれは望めるものでもない。ヤバTは決して勢いだけのバンドではない、しっかりとした意志やバンドであることの誇り、そして自分たちにしかできないことをやっているバンドであるが、だからこそそうした本質とのギャップができてしまうし、それを言われたり目にしてしまうことも多い。そんなに気にしなくても、とも思うが、こやまはやっぱり気になってしまう。そのあたり、見た目以上にものすごく負けず嫌いな男である。
「勢いだけの曲」というさらにテンポ速くなりまくりの「ヤバみ」から、ラストは
「みんなをヘラヘラさせにきました!最後にこの曲でみんなでヘラヘラしようぜ!また来年もみんなでヘラヘラしようぜ!」
という「ハッピーウエディング前ソング」へ。ヘラヘラしているということは、みんなが笑っているということ。どれだけ悔しさを滲ませていても、やっぱり最後には笑顔になりたい。みんなの笑顔が見たい。だから一人でもたくさんの人に自分たちのライブを見て欲しい。
悔しさの中に見えたのは、このバンドの中身、本質。解散ライブのつもりで、と言っていたけれど、ヤバTはまだまだ終わらない。来年以降もこのデカいステージに立って、我々をヘラヘラさせてくれるはず。来年もきっと31日以外の日に出演して、31日はお茶の間までもヘラヘラさせてくれるのだろう。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.かわE
3.Universal Serial Bus
4.Tank-top of the World
5.DANCE ON TANSU
6.KOKYAKU満足度1位
7.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
8.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
9.ネコ飼いたい
10.無線LANばり便利
11.ヤバみ
12.ハッピーウェディング前ソング
15:30〜 パスピエ [ASTRO ARENA]
近年はこのASTRO ARENAが主戦場になってきている、パスピエ。ワンマンでも椅子がある会場を経てきているだけに、スタンド席のあるこのステージはうってつけの場所とも言える。
まだ時間前から暗闇の中にメンバー全員が登場して「正しいままではいられない」を演奏するというサービスをしてくれると、本編ではおなじみのSEとともに男性陣が先に登場し、ライブ用にアレンジされたイントロを演奏し始めると、その後にやや動きやすさを意識したように見える大胡田なつきが登場し、いきなりの「S.S.」からという攻めモード。間奏では早くもサポートドラマーの佐藤も含めたメンバーそれぞれのソロパートも差し込まれ、このバンドの演奏力の高さと迫力を見せてくれる。
最新作からの「ネオンと虎」、さらには大胡田がリズムに合わせて腕を振る和のテイストが強い「つくり囃子」と、短い時間の中でも同じようなタイプの曲でアゲまくるというわけではなく、バンドの持つ様々な面を見せようという意識が伝わってくるような選曲。
大胡田が今年1年の感謝と、こうして年末にこのフェスのステージに立てていることへの感謝を告げると、ライブではおなじみのイントロアレンジが加えられた「チャイナタウン」へ。三澤は背面弾きギターを披露し、露崎は5弦ベースでうねらせまくり、さらにグルーヴを高めていくと、最後に演奏されたのは大胡田がひらひらと舞いながら飛び跳ねる「MATATABISTEP」で踊らせまくり、そのいかにもインドア派的な見た目とは裏腹にメンバーも大汗をかく熱演、客席も凄まじい熱気で満ちていた。
GALAXYのトリを務めた時から比べると、パスピエの状況はかなり落ち着いてきている。でも野音のワンマンでもそうだったが、ライブはむしろ今なお進化を続けているし、それは30分という短すぎると感じてしまうこの日のライブからでも伝わってくる。というかこのバンドが50分の持ち時間を持っていたら圧倒的にベストアクト間違いないくらいのレベルだと思う。
リハ.正しいままではいられない
1.S.S.
2.ネオンと虎
3.つくり囃子
4.チャイナタウン
5.MATATABISTEP
16:30〜 JUN SKY WALKER(S) [MOON STAGE]
夏のロッキンにも出ていたし、他のフェスにも積極的に出演し、もはや大ベテランの域に入っているとは思えないくらいに精力的な活動を続けている、ジュンスカことJUN SKY WALKER(S)。1988年にメジャーデビューしているので、デビュー30周年イヤーの締めくくりがこの日のライブとなる。
おなじみのSEで森純太(ギター)、寺岡呼人(ベース)、小林雅之(ドラム)の3人が登場すると、最後にサングラスをかけて革ジャンというロックスターそのものな出で立ちの宮田和弥(ボーカル)がステージに現れ、森のギターがイントロを奏でたのは「歩いていこう」。ずっと昔からジュンスカを聴いているであろう人たちが集まった中でサビでは宮田がマイクを向けるとコーラスは合唱。
「うしろー!」
とマイクを客席後方まで向けてコーラスを煽る宮田のスタイルは昔から普遍。
さらに「START」、森がピート・タウンゼントばりに腕をグルんと回しながらギターを鳴らす「MY GENERATION」と往年の名曲の連発によって合唱はさらに大きくなっていくし、その様子に引き込まれたのか、観客はどんどん増えていく。
「みなさん「ボヘミアン・ラプソディ」は見ましたか?」
と宮田が問いかけると、映画に影響されたのか、クイーンのようなコール&レスポンスを展開。フレディ・マーキュリーばりに声を張り上げる宮田のボーカルには歳を重ねても一切の衰えが見えないどころか、かつてよりも歌えるレンジが広がっているかのようにすら感じる。
そのコール&レスポンスでさらに観客もステージも温度が上がった状態で演奏されたのは今年リリースの最新作からの「ONE WAY」。一度バンドが解散した後はプロデューサーとしてビッグネームになった寺岡呼人をはじめ、それぞれが新しい音楽活動をしていたが、4人が揃うとこれぞジュンスカとしか言えないようなビートパンクになる。メロコア以降の現代のパンクから比べると、パンクと言ってもテンポが遅いかもしれないけれど、スタイルを変えることなく自分たちを更新し続けている姿に心強さを覚える昔からのファンも多いはずだ。
再始動後の代表曲である「青春」から、
「今日もこのフェスが終わって外に出たら、幕張にはすてきな夜空が広がっていることでしょう!」
と宮田が言って大合唱を巻き起こしたのは「すてきな夜空」。時代が変わってもこのメロディの良さは絶対に変わらないと思うけれど、もし20年前とかにこういうフェスがあったら、きっと今のWANIMAやフォーリミみたいな位置にこのバンドがいたんだろうな、と思うし、そういう意味でもこうしてフェスに出続けることでそうしたバンドのファンに聴いてもらえるきっかけにもなると思う。
演奏が終わっても宮田は「ボヘミアン・ラプソディ」のコール&レスポンスを行い、メンバー紹介をしながら
「宮田・フレディ・和弥でした!」
と挨拶してステージを去っていった。
ジュンスカは2008年に限定復活した時にEARTH STAGEに立った。そのライブ後に、青春時代をジュンスカとともに過ごしたであろう年代の女性たちがずっと泣いていた。もう会えないと思っていたバンドにまた会えた嬉しさ。あれからさらに10年経って、今ならその気持ちが自分にもわかる。そしてそのバンドのライブを見続けることができる喜びも。
1.歩いていこう
2.START
3.MY GENERATION
4.ONE WAY
5.青春
6.すてきな夜空
17:00〜 Mrs. GREEN APPLE [EARTH STAGE]
過去2年はPerfumeとマキシマム ザ ホルモンの裏でGALAXY超満員、夏はMAN WITH A MISSIONの裏でLAKE STAGE超満員という結果を残してきただけに、若手の中でメインステージ昇格組筆頭と言われてきた、Mrs. GREEN APPLE。満を持してこのフェスのメインステージであるEARTH STAGEに初登場。
ステージには柱のオブジェがメンバーを取り囲む中、フォーマルな衣装に身を包んだメンバーたちが登場し、いきなり大森が観客に合唱を促す「Speaking」でスタート。EARTHですら満員と言っていいような状況だし、その観客全員による大合唱という光景を見ていると、まだ小さいステージに出ていたときからあったこの曲にはそもそもこうした巨大なステージで鳴らされるべきポテンシャルを持っていたんだな、と実感させられる。
「EMSEMBLE」ツアーを幕張メッセで終えた後はライブハウスをめぐる原点回帰的なツアーを行っており、そこでは初期曲も多く演奏されていたからか、この日もど迫力のギターロックサウンドが鳴り響いた「ナニヲナニヲ」、「藍」というインディー期の曲が演奏される。大森はこの曲たちを作った時に、こんなデカいステージで、5万人もの人の前で鳴らされるようになるなんて想像していただろうか。
一転してビッグバンド的なサウンドの「Love me, Love you」、EDMを取り入れて観客を飛び跳ねさせまくった「WHOO WHOO WHOO」と最新作の収録曲を披露して、このバンドの持つ音楽性の幅広さを見せる。サウンドだけ聴くとまるっきり別バンドと言ってもいいくらいの飛距離だが、それを違和感なくこうしてライブで並べられるというのはこのバンドのメンバーの技術と表現力、さらには大森が曲の背景やコンセプトをしっかりメンバー全員に伝えた上で作られているという意志の統一のされ方という要素も大きいように思える。
するとここで高校サッカーのテーマ曲になっている新曲「僕のこと」を披露。あくまで大森のボーカルを引き立てるために存在しているかのような引いた楽器隊の演奏と、ハイトーンやファルセットも含めて伸びやかな大森のボーカル。完全に聞かせるタイプの楽曲であるが、これだけ満員の観客が物音も立てることなく演奏に聞き入っている。それができるのは大森の圧倒的な歌唱力があってこそだし、この曲はそれがあるからこそ生まれた曲だと思う。青春のキラキラした感じというよりも、破れたチームがロッカールームで涙を流している姿に寄り添うような歌詞も多く出てくる。そうした青春を体験していないはずの大森がこうした曲を作ることができるというところにこのバンドの無限の可能性を感じる。
曲終盤には和太鼓の音も鳴る「No.7」、今や完全にこのバンドの代表曲と言ってもいい「WanteD! WanteD!」と後半はアッパーに振り切ると、
「僕らは今年がデビュー5周年だったんですけど、このフェスには昔お客さんとして遊びに来ていて。EARTH STAGEのデカさにビックリしたりしてたんだけど、今日こうして自分たちがこのステージに立てていて。今日会場に来るまでにみんなで車の中で、昔お世話になったバンドとか対バンしたバンド、CDを貰ったりしたバンドの曲を聴きながら来て。そういう人たちと出会ってライブハウスで一緒にやってきた経験が僕らをここに連れてきてくれたと思っています」
と、このEARTH STAGEに立っている感慨を口にしたのだが、ミセスはメジャーデビュー以降は対バンライブなどをそこまでやっているバンドではない。でもインディーの時代には小さなライブハウスでChapter Lineら少し年上のギターロックバンドとよく一緒にライブをしていた。もうこの規模になると彼らと一緒にライブをやれるような機会はないかもしれない。でもミセスのメンバーはあの頃のことを決して忘れてはいない。きっと当時一緒にライブをやっていたバンドたちも、こうしてミセスがこんなに大きなステージに立てるようになったことを心から喜んでくれているはずだ。今のミセスはそうしたいろんな人の思い(もちろんファンの思いも)を背負ってステージに立っているように感じる。だからもうインディーズ期やメジャーデビュー当時の頃のように子供みたいには絶対見えない。本当に頼もしい大人になった。
そうした思いがこもったようにすら感じた「青と夏」で会場にいる全ての人の抱える青さを刺激すると、最後に演奏されたのは「最強のドレミファソラシド」こと、メジャーデビュー曲の「StaRt」。ミセスはこの曲の歌詞の「忘れたくない」を未だに忘れていない。だからこのステージに立っても、最後には
「Mrs. GREEN APPLEでした!以降、お見知り置きを!」
と初出演した時と全く同じ挨拶で締めた。でもその言葉が含んでいる意味は当時とは全く違う。かつてより、さらに広い場所に向けたこのバンドからの宣言だ。
1.Speaking
2.ナニヲナニヲ
3.藍
4.Love me, Love you
5.WHOO WHOO WHOO
6.僕のこと
7.No.7
8.WanteD! WanteD!
9.青と夏
10.StaRt
18:30〜 あいみょん [GALAXY STAGE]
開演前から完全に超満員の入場規制状態。完全に2018年の顔であり、大晦日には紅白歌合戦にも出演する、あいみょんが昨年のASTRO ARENAから今年はGALAXY STAGEに移ってもなおこの状態である。
バンドメンバーとともにジャケットを着用したあいみょんが現れてアコギを手にすると、「満月の夜なら」からスタート。原曲は落ち着いた空気の曲であるのだが、バンド編成でのライブだからかテンポがかなり速くなっており、あいみょんの歌唱もそれについて行っている。しかしそこで声が揺らいだりということは全くないというあたりがこの1年であらゆる場所でライブをやりまくってきた経験と、時代を手にしている人だからこそのオーラみたいなものを感じさせる。
過激な歌詞がポエトリーリーディングのように次々と出てくる「生きていたんだよな」とドラマ主題歌として大ヒットしている、男女の恋をビールの泡にかけた「今夜このまま」がどちらも完全にあいみょんの音楽として同じように共有されているというところも伝わり方や聴かれ方の変化を感じさせるが、黒く長い髪をなびかせながらアコギを弾き、時に顔を横に向けながら歌うあいみょんの姿はライブで観ると実にセクシーなものを感じさせる。
R&B的なリズムのアプローチを取り入れた「愛を伝えたいだとか」もバンドサウンドによってロック色がかなり強くなっている中で演奏されたのは「君はロックを聴かない」。
このフェスは言ってもロックフェスであるため、きっとここに来ていた人はみんなロックを聴いているはず。(この日で言えばBUMP OF CHICKENとかを)
だからこの曲の「君」はこの日客席にいた人たちではない。むしろ観客は「こんな歌やあんな歌で恋を乗り越えてきた」「僕」側だ。でもそんな僕らの普段の生活においては、学校や会社でも、周りにロックを聴いている人は少ないし、このフェスに出ているアーティストの大半を知らないというような人ばっかりだ。きっと誰しもがそういう経験をしてきてるからこそ、この曲はロックファン1人1人に寄り添うかのように響く。本当にとんでもない名曲である。
さらにバンドの演奏がテンポをさらに速くする、あいみょんの中でもサウンド的には最もストレートなギターロックの「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」は「死ね。」というフレーズと爽やかかつ伸びやかなメロディのコントラストが実に痛快で、その瞬間に客席からたくさんの腕が上がる様子ももはや「メンヘラ」とかいうものを超えた場所でこの曲が鳴っていることを示してくれる。
あいみょんはフェスではほとんど曲間で喋らないで曲を次々に演奏していくのだが、最後にロッキンオンジャパン最新号の表紙を飾っていることを告げると、
「最後に今年1番咲いてくれた花の曲を歌います」
と言って演奏されたのは「マリーゴールド」。全ての曲が時代の曲として鳴り響いたこの日の中でもこの曲はやはり別格だ。GoogleのCMでもそうした使われ方をしているように、きっと2018年を代表する曲を何年も経った後に調べたらきっと真っ先にこの曲が出てくるはず。でもこの曲は2018年だけに効力を持った曲では全くなく、これからずっとたくさんの人の中で大事に聴かれていく曲になっていくのだと思う。
個人的な2018年のMVPはヤバイTシャツ屋さんだったが(あいみょんは今年はアルバムを出していないというのもある)、もっと広いところでのMVPというか、2018年の顔はこの人だったと言って間違いないし、2019年はさらに大きなステージでこの人の曲が鳴らされるのは間違いない。
リハ.ジェニファー
1.満月の夜なら
2.ふたりの世界
3.生きていたんだよな
4.今夜このまま
5.愛を伝えたいだとか
6.君はロックを聴かない
7.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
8.マリーゴールド
19:30〜 BUMP OF CHICKEN [EARTH STAGE]
この日への出演が決まってからチケットは即完。物販はディズニーランドのアトラクション並みの待ち時間という状況になっていた、この日のトリのBUMP OF CHICKEN。昔は年末に活動するようなイメージは一切なかったが、近年はこのフェスにもちょくちょく出演するようになってきている。
やはりというかなんというか、「EARTH STAGEって入場規制っていう概念あったっけ?」って思ってしまうくらいの超満員の中で4人が登場すると、藤原基央はアコギを手にすると客席に向かって高く掲げ、そのアコギを鳴らす冬の大名曲「スノースマイル」からスタートするというサプライズに客席は騒然。おりしもこの日は関東地方は真冬日、風が強く吹く幕張はより一層の寒さとなっていたのだが、その寒さがこの曲が聴けた要因であるならば、
「冬が寒くって本当に良かった」
と思わざるを得ない。
今年BUMPは、逆にアルバム出したらどうなるのか、というかアルバムというリリース形態が今後あるのだろうか、と心配になるくらいに多数の新曲をリリースしてきたのだが、2018年のライブ納めとなるこの日にその新曲たちをしっかりみんなの前で鳴らして新しい年にいこうという意識がはっきりと感じられるようなそこからの新曲の連発っぷり。
ステージ背面のスクリーンに曲の歌詞が映し出され、増川、チャマ、升の3人による「いこうよ」というコーラスが力強く前進していく姿勢を示している「望遠のマーチ」ではその演出ゆえに藤原が歌詞を間違えたのがはっきりとわかってしまうのだが、テレビを見ていたらいきなり妖怪ウォッチのCMでこの曲が流れ、「これBUMPの新曲!?」と驚いたのも2018年の思い出の一つである。
サビでカメラのフラッシュのように真っ白な光が中央のスクリーンから明滅するという演出の「記念撮影」、再び藤原がアコギに持ち替え、その儚さを含んだボーカルを中心にしながらも間奏では藤原と増川が向かい合ってギターを弾く「話がしたいよ」と続くと、かつて人形劇としてアニメ化された「ギルド」、観客一丸となって勇壮なコーラスを響かせた「虹を待つ人」と、幅広い時期からの選曲。というかほとんどフェスに出ないバンドゆえに、「今フェスでやるセトリ」というのが実に見えにくいバンドであり、ほとんどどの曲が演奏されても驚いてしまうのだが。
チャマによるMCなども挟みながら、唯一演奏されても驚かないというか、間違いなく演奏されると誰しもが思っているであろう「天体観測」がここで演奏されるのだが、以前まではフェスだとアンコールで演奏されることも多かったからか、この曲が演奏されるともうライブが終わってしまうかのような錯覚に陥ってしまう。当然サビの「オーイェー」のコーラスは割れんばかりの大合唱。
しかし「天体観測」でこそ終わらなかったものの、今やこのバンドの曲においてライブで1番盛り上がるんじゃないかと思うくらいに多幸感溢れる景色を描いて見せた「ray」であっという間に本編が終了。
「いくらなんでも早すぎない?ほかのステージまだやってる時間じゃない?」
と思ってると再びメンバーがアンコールで登場し、藤原と増川がステージ横に伸びる花道に走り出して客席の端の方にいる人にまで手を振ったりしてから演奏されたのは「メーデー」で
「君と一緒に!」
のサビの最後のフレーズは確かに今こうして我々の目の前でBUMP OF CHICKENが演奏しているという事実を再確認させてくれた。
これで終わりかと思いきや、チャマがステージに座り込んだり、みんなで話したりしている。果たしてこれは?と思っていると、藤原から
「実は本編が終わった時にスタッフさんに「まだ20分も持ち時間残ってますよ」って言われて(笑)
アンコールやるにしても1曲しか考えてなかったから、ステージの端まで走ったりしたんだけど、それでもどうやらまだ全然時間が余ってるらしいっていうことなんで、もう1曲やろうか」
と状況説明があり、まさかの持ち時間を間違えていたとのこと。確かにEARTHのトリは70分の持ち時間があるはずなのに、本編は45分くらいしかやっていなかった。そう考えると実にもったいないというか、最初から70分のつもりでセトリを組んでいればもう2〜3曲は演奏できたんじゃないか、と思ってしまうのだが、急遽追加で演奏された「ガラスのブルース」の
「ガラスの目をした幕張叫べ!」
という今ここでしかないフレーズを聞かされたら、こうしてこのフェスに出てくれただけで感謝だな、と思う以外になかった。
メンバーがステージから去る中、藤原が1人残ると、
「寒いから風邪引かないようにね。僕らの「スノースマイル」っていう曲の中に
「冬が寒くって本当に良かった」
っていう歌詞があるけど、冬が寒くって良かったって思うことなんてないから(笑)
あの曲は
「君の冷えた左手を僕の右ポケットにお招きするためのこの上ないほどの理由になるから」
っていう好きな人のための惚気の口実だから。だから普通の人からしたら冬が寒くって良いことなんかなんもないから(笑)
もうあとちょっとで今年も終わるけど、今日ここにいた君たちは来年も大吉です。だって我々アーティストを楽しませてくれた、そんな君たちは大吉に決まっているからね。正月におみくじを引いたらこの大吉は効力を失うけれど(笑)、それまでは君たちは大吉です!」
と観客に独特の言葉で感謝を告げた。その姿はまるで漫談をしているかのようにも見えたが、なんやかんやでこれで持ち時間は結構いい時間まで使ったような気がした。
BUMPは昔こそ下北沢のライブハウスでライブをやって…というほかのバンドと変わらないような活動をしてきたバンドだったが、その後の大ブレイクによって、決してライブで勝ち上がってきたというバンドではなく、ひたすらに楽曲の力でこの位置まで来たバンドであるというイメージだ。そもそもライブの本数もそこまで多くないからこそこうしてフェスに出ると事件のようになるわけで。
だから機材交換の多さによるライブ全体のテンポも含め、BUMPはめちゃくちゃライブが良いバンドであるというわけではないと思う。でもこうしてこういうフェスに来るような人たちには誰しもが人生の中でこのバンドの曲が流れていた瞬間が確かにあって、ライブで聴くとその時にいた人や風景を思い出すことができる。自分自身、「天体観測」や「スノースマイル」や「ギルド」を聴くと確かにそうした感覚になる。今でもこれだけの人にとってそういう存在であって、そうした人が増え続ける一方であるというのは本当に凄い。ある意味、このフェスに出ているほかのバンドたちとは違う次元に立っている。
1.スノースマイル
2.望遠のマーチ
3.記念撮影
4.話がしたいよ
5.ギルド
6.虹を待つ人
7.天体観測
8.ray
encore
9.メーデー
10.ガラスのブルース
初日から本当に良いライブばかりの楽しい一日だったが、この日はヤバTのこやまの悔しそうな表情は忘れられない。またこのフェスのこのステージでそれを晴らすような素晴らしいライブをしてくれると信じている。
Next→ 12/29 COUNTDOWN JAPAN 18/19 @幕張メッセ