The Weeknd ASIA TOUR LIVE IN JAPAN Special Guest:米津玄師 12/18 幕張メッセ9〜11ホール
- 2018/12/19
- 14:25
今や世界のポップミュージックの最先端はバンドではなくて、R&Bやソウルミュージックを現代としての解釈で鳴らすアーティストたちであるということはよく言われているようなことであるが、その最先端の最前線に立っているアメリカのアーティスト、The Weekndが初来日。全米ではチャート1位を当たり前のように獲得しているが、初来日(前にサマソニに出るはずだったがキャンセルになった)にしていきなり幕張メッセの9〜11ホールというのはスタッフサイドのかなり勇足であり、10月に幕張メッセの2daysを即完させた米津玄師をゲストに招いても客席は空席、空間が目立つという状態に。
・米津玄師
そもそも米津玄師が他のアーティストの対バンやゲストに出るというのは、初期のシークレット名義でのライブを除くと、3年前のRADWIMPSの「胎盤ツアー」くらいであり、最近はフェスにもあまり出ていないだけに、かなり貴重な機会。
とはいえ、この日自分は「当日引換券」というシステム(一般発売終了後に普通にチケット代を払って当日にチケットを引き換えるというあまりよくわからないシステム)で入場する予定だったのだが、その当日引換券の引き換え場所が純粋な当日券売り場、さらにはなぜか関係者受付と同じ列であり、しかも対応する係員が2人しかいないので無駄に列が長くなっていて、開演に間に合わなかった。
隣の「ミート&グリート」「ユニバーサルミュージック関係者受付」は誰も並んでいないのに、いちいち名前をチェックする関係者と同じ列に並ばされなければいけないというのは意味が全くわからないし(しかも外人の関係者の方も多いので説明にめちゃくちゃ時間かかってる)、まるっきり急ぐ気もなさそうなスタッフの対応にも愕然。結局引き換え自体は引換券とチケットを変えるだけだったので3秒で終わったのだが、それまでは音漏れを聞いているだけという状況で、非常にテンションが下がっていた。
なので序盤のアッパーなモードは音しか聴けていないのだが、ステージ両サイドには
「撮影禁止 NO PHOTO」
という案内がデカデカと映し出されているので、モニター一切なし。よってステージもあまりよく見えないというさらにテンションが下がるような状態。(幕張メッセ9〜11でモニターないライブって今まで経験しただろうか)
「春雷」が終わったあたりで米津玄師がボソッと
「今日はチケット買って来るつもりだったのに、気づいたらステージに立っている」
と言って笑わせたが、このライブが決まった時から米津玄師はThe Weekndから大きな影響を受けていることを語っていたし、直後の「Moonlight」からの曲はダークで内省的なサウンドの、The Weekndの影響を受けているのが感じ取れるような曲たち。「Moonlight」も「fogbound」も幕張メッセワンマンの時にはセトリから外れていただけに、この選曲からは米津玄師の
「今のアメリカの最先端のアーティストと同じステージに立って、そのファンの人たちの前でどういう音楽をやるべきなのか」
という意識を感じることができたし、それこそ幕張メッセ2daysですらセトリが1曲も変わらない、これまでのツアーもだいたいセトリ固定という形でライブを行ってきた米津玄師の方法論が少し変わりつつあるんじゃないか、と思った。
しかしワンマンでの「なんだこれ!?」的な演出を同じ会場(ホールは違うとはいえ)で見ているだけに、ほとんどなんの演出もない(ステージ自体も全然見えないけど)というのは少し物足りなさを感じてしまうというのは、米津玄師のライブではもはやそうした演出が重要なライブの要素になっていることの裏返しであるし、それを突き詰めたいからこそワンマンくらいしかライブをやっていないというのも頷けるところではある。
ただ、やはりこの日はアウェーであった。スタンディングエリアでは演奏中でも普通にグループで喋ったり、スマホをずっと見ていたり、「撮影禁止」とデカデカと書かれていたのに動画を撮ってる人がいたりと、なかなか集中してライブを見れるような状況ではなかった。
それでもラストの「Lemon」では歓声が上がったのだが、その歓声によるアクションがことごとく「写真や動画を撮りまくる」というものだったのは残念極まりなかった。
もちろん海外のアーティストのライブは基本的に撮影がOKであるというのはわかっているが、ステージ両サイドのモニター潰してまで「撮影禁止 NO PHOTO」と書かれているにもかかわらず撮影してる人を見ると、言語が理解できないんだろうか、と思ってしまう。
そしてそういう姿を米津玄師を見に来たという米津玄師ファンが見ると、
「海外のアーティストのファンの人は禁止って言われてることを普通にするんだ」
と思ってしまう。いくら米津玄師本人が「The Weekndを聴いてほしい」と言ったところで、こういう光景を見たら、聴いたりライブを見たりしたいと思わなくなってしまう人だってたくさんいる。別に米津玄師本人が普段からそうした音源やら写真やらがネットに出回ったりするのを快く思っていないということを全員が理解したりする必要はないし、知らない人がいて然るべきなんだけど、サマソニでback numberにステージ上から「撮影しないでくれ」と言わせてしまったように、ただでさえ洋楽不況と言われている昨今、洋楽ファンは自分で自分の首を絞めているところもあると思っている。今のままだとサマソニだって規模がさらに縮小したり、開催が危ぶまれたりしてもおかしくない。そうなって欲しくないんならせめて最低限のマナーやモラルは持とうぜ、と思う。Oasis関連のライブではそんなことを感じたことがないから、洋楽ファンと一括りにしてしまうのも乱暴なことなのかもしれないけど。
前日のインスタライブではあまり声が出ていなかったと言われていただけに不安視されていた米津玄師の声自体は割と出ていた。今までの米津玄師のライブ=「米津玄師がどれだけ声がちゃんと出ているか」というのが1番大きな評価基準だったのだが、その基準で言うならこの日よりも声が出ていないライブは何回もあったし、2daysの初日は良くなかったけど、2日目は良かったということもよくあるくらいに米津玄師のライブはまだまだムラがあるのだが、声がそれなりに出ていたにもかかわらず、この日のライブは今までの米津玄師のライブではワーストクラス。それはサウンドのあまりの悪さ(明らかにワンマンの時とは違いすぎた)もあったし、周りの観客の外的要因というのもあった。
ただ、こうしたアウェーの場を完全に持っていけるようなライブが出来るようなアーティストも確実にいる。そう考えると、演奏という部分だけでは米津玄師のライブはまだそこには達していないだけに、ここまでとは言わなくても、米津玄師だけを100%見に来たという人たちだけの前でやるようなライブじゃないものにもある程度出て行く必要がまだあるんじゃないか、と思う。
個人的には「米津玄師だけが見たい」っていう人は来る必要性がほとんどないようなライブだったけれど、この後のThe Weekndのライブも含めて、この日が米津玄師のさらなる進化のきっかけの1日になってくれたらこの日のライブも「あれがあったから今があるんだよなぁ」って後に思えるものになると思う。
1.Flamingo
2.砂の惑星
3.爱丽丝
4.春雷
5.Moonlight
6.fogbound
7.Paper Flower
8.Lemon
Flamingo
https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
・The Weeknd
そしていよいよ、The Weekndのライブ。The Weekndはエイベル・テスファイという男性R&Bシンガーのソロプロジェクトであり、冒頭にも述べたように、今のアメリカのポップミュージックの最先端にいるアーティストである。
そもそも初来日ということで、どんなライブをやるのかということをほとんどの人が知らない状態。ステージには下手にドラムセット、上手にはシンセやギターがあり、バンドセットであるということはわかるが、いざメンバーがステージに登場すると、怒号のような歓声が起こり、そのバンドセットの演奏をバックに、The Weekndが「PRAY FOR ME」を歌い始めると、もう会場の空気は完全にこの男に支配される。
それくらいに歌が上手い。もう
「本当にこの男は我々と同じ人類で、我々と同じ発声機能を有しているのだろうか」
と思ってしまうくらいにあまりに上手すぎる。それも音程がいいというだけでなく、ハイトーンの伸びや声量など、あらゆる声に関するスキルが想像し得る最高レベルをはるかに超越している。
そんな声を響かせながら、ステージを左右に移動しながら歌い、フレーズの合間には観客にジャンプを促したり、
「JAPAN!」
と叫んだりしてみせる。初の日本でのライブという気負いやプレッシャーは全く感じられないあたり、いつも通りの最高のパフォーマンスを見せるというスタンスなのだろう。ちなみにThe Weekndの見た目は、ソフトバンクホークスを皮切りに千葉ロッテマリーンズに至るまで、パ・リーグの球団を渡り歩いた、ウィリー・モー・ペーニャ選手によく似ている。
冒頭の「PRAY FOR ME」でのKendrick Lamarを始め、きらびやかなエレクトロサウンドをというDaft Punkならではの「STARBOY」など、The Weekndの曲は様々なジャンル、スタイルのアーティストとのコラボもあるのだが、そうした曲も全てThe Weekndとステージ上のメンバーだけで演奏されていくのだが、そのメンバーの演奏もとんでもなく上手い。ドレッドヘアという見た目からして絶対上手いことが分かりきっているようなリズム隊は、曲によってベースをエレキにしたりシンセに変えながら、力強くも柔軟なリズムで曲を支えるというよりもさらに強化していると言ってもいい印象。そのメンバーたちが曲と曲をシームレスに繋ぐようなライブアレンジ(ガラッとサウンドが変わる「HOUSE OF BALLOONS」〜「GLASS TABLE GIRLS」というあたりは見事としか言いようがない)を施しているので、ライブのテンポ自体もめちゃくちゃ良い。
R&BやヒップホップのライブだとシンガーやMCにDJを加えたスタイルというのも多いのだが、そうしたスタイルの場合、リズムに変化がほとんどないので、長時間のライブを見ていると飽きてしまったりする。(近年は海外のヒップホップしか聴いてない、と豪語している音楽評論家の宇野維正もそこはバンドに勝てない部分と評していた)
しかしながらこれだけ強いリズム隊を含めたバンド編成なだけに全く飽きることがないし、その低音のそもそもの強さを聴いていると、アジカンが最新アルバム「ホームタウン」で
「日本のロックバンドは音域のボトムが上がっているから、ストリーミングで海外の音楽を聴いていると、日本の音楽だけスカスカに聴こえる。そうして切ってしまうローの音をどう強くしていくかということに向き合った」
とサウンドデザインを抜本的に変えることで、新たなロックの進む道を示したのだが、アジカンが目指したローの音はこういうものなんじゃないか、というくらいに強い。もう聴こえ方がまるっきり違うし、アメリカでこうしたサウンドが主流になっているのもライブで聴くとよくわかる。日本の音楽の全部が全部そうした方がいいとは決して思っていないけれど。
しかしそうしたリズムの強さもさることながら、やはりそもそも全米1位になっているわけであって、The Weekndはポップミュージックなのである、っていうのもライブを見るとより一層わかるくらいに曲そのものが良い。リズムに重きを置きすぎるとメロディが薄れてしまってどうしても馴染めないという、海外のR&Bやヒップホップを聴いていてもそこまでハマることはできない(時々「なにがどうポップなのか全然わからん」と思ってしまうようなアーティストもいる)自分にとってもすんなりと聴けるのだが、それは決して薄く感じるということには一切ならないのはやはりThe Weekndの圧倒的な歌唱力。とりわけ中盤のアッパーな曲が連発され、The Weekndが「I FEEL IT COMING」の終わりの一瞬でメンバー紹介をした時はこれがクライマックスかな?とも思ったのだけれど、むしろそこからさらに歌声は凄みを増していく。
しかも曲を経てライブが進むにつれて段々、
「この人は歌うために生まれてきたんだろうな」
とすら思えてくるくらいに、その歌っている姿からは歌と向き合っている姿勢、間違いなく誠実な男なんだろうな、とわかるようなこの日この会場に集まってくれた人たちへの感謝の意までもが見えてくる。それが終盤に向かうにつれて大合唱やスマホライトなど、見ている人たちの心をさらにオープンなものにしている。やはり全米1位というところに行くためにはそうした、いろんなものをひっくり返せるようなパフォーマンスの力というものが必要なんだろうな、と思った。
曲が頭の中でリフレインしまくるほどの中毒性を持ったキラーチューン「ACQUAINTED」と、20曲以上をひたすらに歌い続けてもなおそのボーカルの力とバンドメンバーの熱量は上がり続けるのみ。もうこの歌さえあればほかになんもいらないだろう、というばかりに前半は控えめだった演出も炎が噴き出したたりとハデさを増していく中で、最後に「THE HILLS」を歌い終わると、すぐさまステージが暗転し、アンコールもなしに客電がゆっくりとついて終演のアナウンスが流れた。もう余韻に浸るというよりも放心してしまうくらいに圧倒的だった。
やっぱりもう存在として常人とは次元が違うところにいるんだな、というのがよくわかるし、客席には外国人の方もたくさんいた。日本に住んでいて、こうしてアメリカの大スターのライブを見ることができるというのはどんな気分なんだろうか。この日この会場にいただけでも日本に住んでいてよかったと思ってくれたらなによりも嬉しいし、こっちもこれからもこうして日本だけじゃなくいろんな国のアーティストのライブを見てみたいと思う。
そもそもThe Weekndと米津玄師のライブとなると、やっぱり客層が違ったり、価値観が違ったりする人もたくさんいる。いつものライブ以上に、普段は同じ空間には絶対集まることはないだろうな、という人も。でもそんな違いなんかを全て忘れさせるくらいに、The Weekndのライブは素晴らしかった。少し軽い気持ちで見に行ったライブだったが、実は自分はとんでもないところにいたのかもしれない、と一夜明けて思い返している。
1.PRAY FOR ME
2.STARBOY
3.PARTY MONSTER
4.REMINDER
5.SIX FEET UNDER
6.LOW LIFE
7.MIGHT NOT
8.SIDEWALKS
9.CREW LOVE
10.HOUSE OF BALLOONS
11.GLASS TABLE GIRLS
12.BELONG TO THE WORLDS
13.SECRETS
14.CAN'T FEEL MY FACE
15.IN THE NIGHT
16.I FEEL IT COMING
17.THE MORNING
18.WICKED GAMES
19.EARNED IT
20.OR NAH
21.OFTEN
22.ACQUAINTED
23.WASTED TIMES
24.CALL OUT MY NAME
25.THE HILLS
THE HILLS
https://youtu.be/yzTuBuRdAyA
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・米津玄師
そもそも米津玄師が他のアーティストの対バンやゲストに出るというのは、初期のシークレット名義でのライブを除くと、3年前のRADWIMPSの「胎盤ツアー」くらいであり、最近はフェスにもあまり出ていないだけに、かなり貴重な機会。
とはいえ、この日自分は「当日引換券」というシステム(一般発売終了後に普通にチケット代を払って当日にチケットを引き換えるというあまりよくわからないシステム)で入場する予定だったのだが、その当日引換券の引き換え場所が純粋な当日券売り場、さらにはなぜか関係者受付と同じ列であり、しかも対応する係員が2人しかいないので無駄に列が長くなっていて、開演に間に合わなかった。
隣の「ミート&グリート」「ユニバーサルミュージック関係者受付」は誰も並んでいないのに、いちいち名前をチェックする関係者と同じ列に並ばされなければいけないというのは意味が全くわからないし(しかも外人の関係者の方も多いので説明にめちゃくちゃ時間かかってる)、まるっきり急ぐ気もなさそうなスタッフの対応にも愕然。結局引き換え自体は引換券とチケットを変えるだけだったので3秒で終わったのだが、それまでは音漏れを聞いているだけという状況で、非常にテンションが下がっていた。
なので序盤のアッパーなモードは音しか聴けていないのだが、ステージ両サイドには
「撮影禁止 NO PHOTO」
という案内がデカデカと映し出されているので、モニター一切なし。よってステージもあまりよく見えないというさらにテンションが下がるような状態。(幕張メッセ9〜11でモニターないライブって今まで経験しただろうか)
「春雷」が終わったあたりで米津玄師がボソッと
「今日はチケット買って来るつもりだったのに、気づいたらステージに立っている」
と言って笑わせたが、このライブが決まった時から米津玄師はThe Weekndから大きな影響を受けていることを語っていたし、直後の「Moonlight」からの曲はダークで内省的なサウンドの、The Weekndの影響を受けているのが感じ取れるような曲たち。「Moonlight」も「fogbound」も幕張メッセワンマンの時にはセトリから外れていただけに、この選曲からは米津玄師の
「今のアメリカの最先端のアーティストと同じステージに立って、そのファンの人たちの前でどういう音楽をやるべきなのか」
という意識を感じることができたし、それこそ幕張メッセ2daysですらセトリが1曲も変わらない、これまでのツアーもだいたいセトリ固定という形でライブを行ってきた米津玄師の方法論が少し変わりつつあるんじゃないか、と思った。
しかしワンマンでの「なんだこれ!?」的な演出を同じ会場(ホールは違うとはいえ)で見ているだけに、ほとんどなんの演出もない(ステージ自体も全然見えないけど)というのは少し物足りなさを感じてしまうというのは、米津玄師のライブではもはやそうした演出が重要なライブの要素になっていることの裏返しであるし、それを突き詰めたいからこそワンマンくらいしかライブをやっていないというのも頷けるところではある。
ただ、やはりこの日はアウェーであった。スタンディングエリアでは演奏中でも普通にグループで喋ったり、スマホをずっと見ていたり、「撮影禁止」とデカデカと書かれていたのに動画を撮ってる人がいたりと、なかなか集中してライブを見れるような状況ではなかった。
それでもラストの「Lemon」では歓声が上がったのだが、その歓声によるアクションがことごとく「写真や動画を撮りまくる」というものだったのは残念極まりなかった。
もちろん海外のアーティストのライブは基本的に撮影がOKであるというのはわかっているが、ステージ両サイドのモニター潰してまで「撮影禁止 NO PHOTO」と書かれているにもかかわらず撮影してる人を見ると、言語が理解できないんだろうか、と思ってしまう。
そしてそういう姿を米津玄師を見に来たという米津玄師ファンが見ると、
「海外のアーティストのファンの人は禁止って言われてることを普通にするんだ」
と思ってしまう。いくら米津玄師本人が「The Weekndを聴いてほしい」と言ったところで、こういう光景を見たら、聴いたりライブを見たりしたいと思わなくなってしまう人だってたくさんいる。別に米津玄師本人が普段からそうした音源やら写真やらがネットに出回ったりするのを快く思っていないということを全員が理解したりする必要はないし、知らない人がいて然るべきなんだけど、サマソニでback numberにステージ上から「撮影しないでくれ」と言わせてしまったように、ただでさえ洋楽不況と言われている昨今、洋楽ファンは自分で自分の首を絞めているところもあると思っている。今のままだとサマソニだって規模がさらに縮小したり、開催が危ぶまれたりしてもおかしくない。そうなって欲しくないんならせめて最低限のマナーやモラルは持とうぜ、と思う。Oasis関連のライブではそんなことを感じたことがないから、洋楽ファンと一括りにしてしまうのも乱暴なことなのかもしれないけど。
前日のインスタライブではあまり声が出ていなかったと言われていただけに不安視されていた米津玄師の声自体は割と出ていた。今までの米津玄師のライブ=「米津玄師がどれだけ声がちゃんと出ているか」というのが1番大きな評価基準だったのだが、その基準で言うならこの日よりも声が出ていないライブは何回もあったし、2daysの初日は良くなかったけど、2日目は良かったということもよくあるくらいに米津玄師のライブはまだまだムラがあるのだが、声がそれなりに出ていたにもかかわらず、この日のライブは今までの米津玄師のライブではワーストクラス。それはサウンドのあまりの悪さ(明らかにワンマンの時とは違いすぎた)もあったし、周りの観客の外的要因というのもあった。
ただ、こうしたアウェーの場を完全に持っていけるようなライブが出来るようなアーティストも確実にいる。そう考えると、演奏という部分だけでは米津玄師のライブはまだそこには達していないだけに、ここまでとは言わなくても、米津玄師だけを100%見に来たという人たちだけの前でやるようなライブじゃないものにもある程度出て行く必要がまだあるんじゃないか、と思う。
個人的には「米津玄師だけが見たい」っていう人は来る必要性がほとんどないようなライブだったけれど、この後のThe Weekndのライブも含めて、この日が米津玄師のさらなる進化のきっかけの1日になってくれたらこの日のライブも「あれがあったから今があるんだよなぁ」って後に思えるものになると思う。
1.Flamingo
2.砂の惑星
3.爱丽丝
4.春雷
5.Moonlight
6.fogbound
7.Paper Flower
8.Lemon
Flamingo
https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
・The Weeknd
そしていよいよ、The Weekndのライブ。The Weekndはエイベル・テスファイという男性R&Bシンガーのソロプロジェクトであり、冒頭にも述べたように、今のアメリカのポップミュージックの最先端にいるアーティストである。
そもそも初来日ということで、どんなライブをやるのかということをほとんどの人が知らない状態。ステージには下手にドラムセット、上手にはシンセやギターがあり、バンドセットであるということはわかるが、いざメンバーがステージに登場すると、怒号のような歓声が起こり、そのバンドセットの演奏をバックに、The Weekndが「PRAY FOR ME」を歌い始めると、もう会場の空気は完全にこの男に支配される。
それくらいに歌が上手い。もう
「本当にこの男は我々と同じ人類で、我々と同じ発声機能を有しているのだろうか」
と思ってしまうくらいにあまりに上手すぎる。それも音程がいいというだけでなく、ハイトーンの伸びや声量など、あらゆる声に関するスキルが想像し得る最高レベルをはるかに超越している。
そんな声を響かせながら、ステージを左右に移動しながら歌い、フレーズの合間には観客にジャンプを促したり、
「JAPAN!」
と叫んだりしてみせる。初の日本でのライブという気負いやプレッシャーは全く感じられないあたり、いつも通りの最高のパフォーマンスを見せるというスタンスなのだろう。ちなみにThe Weekndの見た目は、ソフトバンクホークスを皮切りに千葉ロッテマリーンズに至るまで、パ・リーグの球団を渡り歩いた、ウィリー・モー・ペーニャ選手によく似ている。
冒頭の「PRAY FOR ME」でのKendrick Lamarを始め、きらびやかなエレクトロサウンドをというDaft Punkならではの「STARBOY」など、The Weekndの曲は様々なジャンル、スタイルのアーティストとのコラボもあるのだが、そうした曲も全てThe Weekndとステージ上のメンバーだけで演奏されていくのだが、そのメンバーの演奏もとんでもなく上手い。ドレッドヘアという見た目からして絶対上手いことが分かりきっているようなリズム隊は、曲によってベースをエレキにしたりシンセに変えながら、力強くも柔軟なリズムで曲を支えるというよりもさらに強化していると言ってもいい印象。そのメンバーたちが曲と曲をシームレスに繋ぐようなライブアレンジ(ガラッとサウンドが変わる「HOUSE OF BALLOONS」〜「GLASS TABLE GIRLS」というあたりは見事としか言いようがない)を施しているので、ライブのテンポ自体もめちゃくちゃ良い。
R&BやヒップホップのライブだとシンガーやMCにDJを加えたスタイルというのも多いのだが、そうしたスタイルの場合、リズムに変化がほとんどないので、長時間のライブを見ていると飽きてしまったりする。(近年は海外のヒップホップしか聴いてない、と豪語している音楽評論家の宇野維正もそこはバンドに勝てない部分と評していた)
しかしながらこれだけ強いリズム隊を含めたバンド編成なだけに全く飽きることがないし、その低音のそもそもの強さを聴いていると、アジカンが最新アルバム「ホームタウン」で
「日本のロックバンドは音域のボトムが上がっているから、ストリーミングで海外の音楽を聴いていると、日本の音楽だけスカスカに聴こえる。そうして切ってしまうローの音をどう強くしていくかということに向き合った」
とサウンドデザインを抜本的に変えることで、新たなロックの進む道を示したのだが、アジカンが目指したローの音はこういうものなんじゃないか、というくらいに強い。もう聴こえ方がまるっきり違うし、アメリカでこうしたサウンドが主流になっているのもライブで聴くとよくわかる。日本の音楽の全部が全部そうした方がいいとは決して思っていないけれど。
しかしそうしたリズムの強さもさることながら、やはりそもそも全米1位になっているわけであって、The Weekndはポップミュージックなのである、っていうのもライブを見るとより一層わかるくらいに曲そのものが良い。リズムに重きを置きすぎるとメロディが薄れてしまってどうしても馴染めないという、海外のR&Bやヒップホップを聴いていてもそこまでハマることはできない(時々「なにがどうポップなのか全然わからん」と思ってしまうようなアーティストもいる)自分にとってもすんなりと聴けるのだが、それは決して薄く感じるということには一切ならないのはやはりThe Weekndの圧倒的な歌唱力。とりわけ中盤のアッパーな曲が連発され、The Weekndが「I FEEL IT COMING」の終わりの一瞬でメンバー紹介をした時はこれがクライマックスかな?とも思ったのだけれど、むしろそこからさらに歌声は凄みを増していく。
しかも曲を経てライブが進むにつれて段々、
「この人は歌うために生まれてきたんだろうな」
とすら思えてくるくらいに、その歌っている姿からは歌と向き合っている姿勢、間違いなく誠実な男なんだろうな、とわかるようなこの日この会場に集まってくれた人たちへの感謝の意までもが見えてくる。それが終盤に向かうにつれて大合唱やスマホライトなど、見ている人たちの心をさらにオープンなものにしている。やはり全米1位というところに行くためにはそうした、いろんなものをひっくり返せるようなパフォーマンスの力というものが必要なんだろうな、と思った。
曲が頭の中でリフレインしまくるほどの中毒性を持ったキラーチューン「ACQUAINTED」と、20曲以上をひたすらに歌い続けてもなおそのボーカルの力とバンドメンバーの熱量は上がり続けるのみ。もうこの歌さえあればほかになんもいらないだろう、というばかりに前半は控えめだった演出も炎が噴き出したたりとハデさを増していく中で、最後に「THE HILLS」を歌い終わると、すぐさまステージが暗転し、アンコールもなしに客電がゆっくりとついて終演のアナウンスが流れた。もう余韻に浸るというよりも放心してしまうくらいに圧倒的だった。
やっぱりもう存在として常人とは次元が違うところにいるんだな、というのがよくわかるし、客席には外国人の方もたくさんいた。日本に住んでいて、こうしてアメリカの大スターのライブを見ることができるというのはどんな気分なんだろうか。この日この会場にいただけでも日本に住んでいてよかったと思ってくれたらなによりも嬉しいし、こっちもこれからもこうして日本だけじゃなくいろんな国のアーティストのライブを見てみたいと思う。
そもそもThe Weekndと米津玄師のライブとなると、やっぱり客層が違ったり、価値観が違ったりする人もたくさんいる。いつものライブ以上に、普段は同じ空間には絶対集まることはないだろうな、という人も。でもそんな違いなんかを全て忘れさせるくらいに、The Weekndのライブは素晴らしかった。少し軽い気持ちで見に行ったライブだったが、実は自分はとんでもないところにいたのかもしれない、と一夜明けて思い返している。
1.PRAY FOR ME
2.STARBOY
3.PARTY MONSTER
4.REMINDER
5.SIX FEET UNDER
6.LOW LIFE
7.MIGHT NOT
8.SIDEWALKS
9.CREW LOVE
10.HOUSE OF BALLOONS
11.GLASS TABLE GIRLS
12.BELONG TO THE WORLDS
13.SECRETS
14.CAN'T FEEL MY FACE
15.IN THE NIGHT
16.I FEEL IT COMING
17.THE MORNING
18.WICKED GAMES
19.EARNED IT
20.OR NAH
21.OFTEN
22.ACQUAINTED
23.WASTED TIMES
24.CALL OUT MY NAME
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THE HILLS
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