サンボマスター サンボマスターワンマンツアー2018 〜輝きだして走ってく〜 @Zepp DiverCity TOKYO 12/15
- 2018/12/16
- 00:23
近年はリリースされた曲が毎回のように映画などの大型タイアップとなっており、その効果もあってかもはやベテランと言ってもいいような立ち位置になりながらも未だに多くの人に広がり続けている、サンボマスター。
とりわけ今年のROCK IN JAPAN FES.においては通常は入場規制がまずおきないようなPARK STAGEで、並み居る強力なアーティストと同じ時間でありながら超満員の入場規制という、今になってさらに勢いを増している状態を見せつけた。
今回のツアーはシングル「輝きだして走ってく」のリリースツアーであり、ファイナルであるこの日のZepp DiverCityは当然のようにチケットソールドアウト。去年の日本武道館ワンマンもそうだったが、毎年サンボマスターはZepp Tokyoなど、12月にワンマンをやっているイメージが強い。
シンプルだがカッコいい英語のロゴがステージ裏に飾られた中、おなじみゴダイゴ「Monkey Magic」が流れてメンバーが登場すると、のっけから「オイ!オイ!」のコールが起こり、「世界をかえさせておくれよ」からスタート。やはりというか何というか、メンバーも観客も1曲目とは思えないくらいに高いテンションなのだが、それでも山口は
「おい東京!こんなもんか!」
「サボってんじゃねーぞ!」
「福井県はこの100倍くらい凄かったぞ!」
とさらに煽りまくる。
その効果もあってか、「これで自由になったのだ」ではまさに自由になったかのようにダイバーが続出。それでもなお山口は煽り続け、
「50歳のやつも、40歳のやつも、30歳のやつも、14歳のやつも、今だけは17歳になって踊りまくれ!」
と言って踊らせまくった「青春狂騒曲」と、山口の曲に合わせた煽りはもはや達人の領域に突入しているし、これだけ歌うだけではなくて言葉を発しまくっているのを見ると、一体この男の呼吸方法はどうなっているのか、と思う。しかもそれだけではなくて、
「やべー!俺ギター超上手いんですけど!」
と自分で言うくらいにギターも弾きまくっている。
そんな山口のボーカリスト、ギタリストとしてのスキル同様に、「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」ではサビで近藤の急に高速になるベース、「光のロック」では立ち上がって叫びまくりながら叩く木内のドラムと、サンボマスターのメンバーたちは本当に演奏力が高い。あまりに熱量が高すぎるが故についつい見過ごされがちだが、よくよく見るとスリーピースとしての限界を更新するようなことをサラリとやってみせている。
「甲子園で優勝できる高校は1校だけ、オリンピックで金メダルを貰えるのは1人だけ、でも今日は全員優勝できるんですよ!全員優勝!全員優勝!」
とこの日のキーワードが「全員優勝」に決まるくらいのミラクルを起こした「ミラクルをキミとおこしたいんです」、
「なんでそういうかわかるか?俺たちがお前たちから何を感じてるかわかるか?俺たちがお前たちから感じるのは、可能性!」
と、決してライブのテンポが損なわれることはないくらいに(山口はこんな広い会場でも酸欠になりかけたみたいだが、こんな歌い方と煽り方をしていたらそれはそうなる)前口上を追加することでさらなる熱狂を生み出していく。
そんな空気が少し変わったのは、山口が
「俺たちはお前たちに会いたくて会いたくて、寝れなかったりする毎日を明日になれば、朝になればお前たちに会える、って思いながら生きている。お前たちもそうだろう。俺たちが待ちわびているのは、新しい朝だ」
と言葉を並べると熱さしか感じないが、そこには日々の自分のどうしようもなさを感じさせるような感情を感じさせてから演奏された「新しい朝」。この曲を聴くと、かつてCOUNTDOWN JAPANのEARTH STAGEの年越し後という大トリの位置で出演した時に、新しい年がやってきたのを祝すかのように演奏されたことを思い出すし、激しいだけではないサンボマスターの3人の温かさや優しさみたいなものを感じて、激しい曲を聴くよりも胸が熱くなる。
「新しい朝」は決してライブ定番と言える曲ではないだけに、ワンマンだからこそ聴ける曲だなぁと思うのだが、畳み掛けるように
「お前が誰かを裏切ったり、傷つけたりしても、俺が全部肯定してやるからな!全部無実だって証明してやるからな!」
と言って演奏されたのは、初期の山口の歌詞の文学的な要素を強く感じさせる「あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ」。いったいこの曲をライブで聴くのはいつ以来になるんだろうか、というくらいのレアな選曲である。
さらに山口のギターがうなりまくる「絶望と欲望と男の子と女の子」、DJとしても活動するダイノジを始め、ファンからも実に人気の高い曲であり、ダイバーが続出する中で木内が昂りまくった感情を叫んで放出した「あなたといきたい」と、決して定番とはいえない、あらゆる時期の曲を次々と演奏していく。
そうした曲たちから感じるのは、浮き沈みも経験したし、迷走しているようにも見えた時期もあったとはいえ、サンボマスターはその長いキャリアの中で本当に良い曲しか作ってこなかった、ということ。このレア曲での凄まじい客席の喜びようと盛り上がりっぷりはそのことを証明しているかのようだった。サンボマスターはフェスやイベントで見てもあまりに最高過ぎるのだが、そこで演奏されている曲以外にもこんなに良い曲がたくさんあるというのがよくわかるだけに、フェスなどでしか見たことがない人たちにも是非ワンマンに来てこうした曲たちに触れて欲しいと思う。
もはや山口のみならず、客席も酸欠になっている人もいるのでは?と思ってしまうくらいに熱気と汗に満ちた空気をさらに熱くするのは、ブルーハーツや銀杏BOYZ、10-FEETにビートルズ、ローリングストーンズなど、山口が影響や刺激を受けてきたロックンローラーたちの魂がまだ死んでいない、ここにこうして集まっている人たちがいる限りはロックンロールは死ぬことはない、ということを証明するかのような「ロックンロール イズ ノットデッド」。
山口は
「泣くんじゃない!笑えー!」
と言っていたが、ロックへの愛情、自分が好きなものへの愛情をこんなに感じさせるような演奏を見たら泣いている人がたくさんいるのも無理はない。この曲とサンボマスターのライブに宿るもの。それはやはりロックンロールの力そのもの。それをずっと感じてきたからこそ、自分はこのブログのURLをこの曲のタイトルからいただいたのである。
「今年は色んなことがあったな。大阪や広島で豪雨の被害があって、北海道でも地震があって。俺は次に歌う曲をそういう被害にあった人に歌いたいと思ってるんだけど、非難されるかもしれないけど…俺はそれ以上にここにいるお前らにこの曲を歌いたいんだ」
と、自身の地元である福島が震災の被害に遭ってから、猪苗代湖ズの活動などで震災の被害に向かい合ってきた山口が、それ以上にこうして自分たちのライブを見に来てくれている人たちに向けて歌ったのは「ラブソング」。
山口は最後のサビの前に大きく間を置いたのだが、その時間には一切の騒音が発生しない。曲間ではメンバーの名前を叫びまくったりしていた人たちですらじっとステージを見つめたり、目を閉じて災害の被害に遭った人たちに思いを馳せたりしている。みんな、メンバーがどういう思いでこの曲を演奏しているのか、というのをしっかり理解した上でこの曲と向き合っていた。そうしたファンのリテラシーの高さはそうして震災などの支援や活動をしてきたメンバーの人間性によるものが大きいのだろう。
そして「ラブソング」とは違った角度でここにいる人たちのことを全肯定するような「YES」からは怒涛の後半戦へ。
「ここがフジロックじゃないから、日本武道館じゃないから、ROCK IN JAPAN FES.じゃないからできないって思ってんのか!?」
と煽ってから演奏された「できっこないを やらなくちゃ」ではほぼ全編に渡って合唱が発生し、
「アイワナビーア 君のすべて!」
のフレーズでは特大の大合唱が起こる。もはやサンボマスター最大の代表曲と言っていいこの曲だが、バンドにとって特別な曲であるのは、千葉県柏市出身であり、千葉ロッテマリーンズの大ファンであるドラムの木内の念願とも言える、ロッテの選手の登場曲としてマリンスタジアムで流れていた曲だからである。
しかしこの曲を登場曲として使っていた、ロッテの根元俊一は今年引退することを発表した。その最後の試合で、選手たちはみんなこの曲を登場曲にしていた。それくらいにこの曲はロッテの選手たちからも愛されていた。それはそうだ、
「君ならできないことだって できるんだ本当さどんなときも」
というこの曲のフレーズに選手たちも間違いなく力をもらっていたからだ。
さらに「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で否応無しに「愛と平和!」の大合唱を起こすと、
「お前らが俺たちにどう写ってるかわかってるのか。お前らがナイフやカッターや包丁で自分のことを傷つけようとしていても、俺たちが絶対見つけ出してやるからな。なんで見つけられるかって?それはお前たちが輝いて見えるからです!」
と山口が最後まで暑苦しく語りかけてから演奏された「輝きだして走ってく」は今回のツアーのきっかけになった最新シングル曲。映画「チアダン」のタイアップ曲として起用されたことにより、これまでよりさらに多くの人に届いたこの曲の受け入れられ方を見ていると、このバンドの代表曲はもはや日本のロックのアンセムと言っていいレベルになっていると思っているのだが、その曲たちと並ぶ新しい曲。やっぱりサンボマスターの曲は昔の曲も新しい曲も名曲ばかりなのだ。
「ロックンロール!ロックンロール!」
という独特のアンコール待ちの観客の声が響く中、2階席からはひときわ大きな叫び声が聞こえる。関係者が中心だからか、そもそも2階席のアンコール待ちで立ち上がっている人自体が全然いない中で、落ちそうなくらいに手すりに身を乗り出して叫びまくっていた声の主は「百獣の王」こと、元陸上10種競技のチャンピオンでもある、武井壮。もともとは電気グルーヴのピエール瀧に見出されてスペシャの番組に出演し、そこで仲良くなったTHE BAWDIESのライブにいつも来ているし、自身で主催フェスを開催するくらいに音楽が好きな男であるが、やはり熱い男は熱いバンドの音楽やライブが好きなんだろうなぁというのが一目でわかる。
そんな中で3人がステージに戻ってくると、山口と近藤がおなじみの漫才のようなやり取りをする中、ツアー中に叫び声しか発していないという木内もファイナルだからこそのMCで観客に感謝を告げる。男どアホウサンボマスターでは選手宣誓なども行うだけに決して喋らないイメージではないが、こうした3人のデビュー当時、いや結成当時から変わっていないであろう姿を見れるのはやはり嬉しいことである。
「みなさん!メリークリスマス!サンタクロースから爆音のプレゼントですよ!」
と山口がギターを弾きまくった「そのぬくもりに用がある」から、ラストに披露されたのは「さよならベイビー」。まだ年内にはおよそ14年ぶりの年越しアクトを担うCOUNTDOWN JAPANでのライブが残っている(まだ期待の若手的な立ち位置だった14年前の年越しはGALAXY STAGE、名実共にロックンロールの申し子としての立ち位置を確立した今回はEARTH STAGEでのカウントダウンである)が、この曲は去りゆく平成という時代と2018年という年に別れを告げるかのように鳴らされ、演奏が終わると写真撮影をした後に木内のドラムのパッドやスティック、山口のピックなど、投げ込めそうなものはすべて客席に投げ込むというファイナルならではのすべてを出し切ったライブだった。
もはやサンボマスターはベテランと言ってもいいような立ち位置になっているバンドである。昨今のロックフェスにおいてはベテランともなるとなかなかアウェー感を感じたり、若い人には届いていなかったり、知られていないんだろうな、と思ってしまうような場面も多い。昔はメインステージのトリをやっていたようなバンドでさえ、今や小さいステージに出ているということもザラである。
とはいえそういうバンドもワンマンではこうした広いライブハウスでもソールドアウトしていたりするので、フェスにもよるけれど、フェスに行く多数の人が聴く音楽の中になかなかベテランバンドが入りづらいということでもある(そりゃあ若い人からすれば自分たちと同世代やちょっと上くらいの、今から一緒に歳を重ねていけるバンドに魅力を感じるのは当然だ。自分もそうだったし)のだが、サンボマスターは今でもこうしてZeppクラスのワンマンが即完して、フェスでもメインステージを満員にすることができる。
そのことを証明するかのように、この日の会場にはずっとサンボマスターを聴いてきたであろう、自分が昔に初めてサンボマスターのライブに行った時に客席の平均年齢の高さにビックリしてしまったような50代くらいの人もたくさんいるし、フェスで見たりタイアップなどで知ったであろう10代の人もたくさんいる。それって実は本当にすごいことであり、ベテランの域に達しているバンドでそれができるのは「国民的」と言っていいような位置にいるようなバンドたちばかりである。
そう考えると、サンボマスターも実はその位置に収まることができるバンドなんじゃないか、とも思うし、そうした状況を作れたのはこのバンドの音楽とライブが聴く人の年代を選ばない、普遍的な力を持ったものだということだ。
だからサンボマスターはこれからさらに10年経ってもこのくらい広い会場でも、フェスのメインステージでもロックンロールを鳴らし続けていると思う。その頃にはメンバーはみんな50歳を超えているけれど、その歳になっても、あなたといきたい。
1.世界をかえさせておくれよ
2.これで自由になったのだ
3.青春狂騒曲
4.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
5.光のロック
6.ミラクルをキミとおこしたいんです
7.可能性
8.新しい朝
9.あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ
10.絶望と欲望と男の子と女の子
11.あなたといきたい
12.ロックンロール イズ ノットデッド
13.ラブソング
14.YES
15.できっこないを やらなくちゃ
16.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
17.輝きだして走ってく
encore
18.そのぬくもりに用がある
19.さよならベイビー
輝きだして走ってく
https://youtu.be/KM0SrqFBt38
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とりわけ今年のROCK IN JAPAN FES.においては通常は入場規制がまずおきないようなPARK STAGEで、並み居る強力なアーティストと同じ時間でありながら超満員の入場規制という、今になってさらに勢いを増している状態を見せつけた。
今回のツアーはシングル「輝きだして走ってく」のリリースツアーであり、ファイナルであるこの日のZepp DiverCityは当然のようにチケットソールドアウト。去年の日本武道館ワンマンもそうだったが、毎年サンボマスターはZepp Tokyoなど、12月にワンマンをやっているイメージが強い。
シンプルだがカッコいい英語のロゴがステージ裏に飾られた中、おなじみゴダイゴ「Monkey Magic」が流れてメンバーが登場すると、のっけから「オイ!オイ!」のコールが起こり、「世界をかえさせておくれよ」からスタート。やはりというか何というか、メンバーも観客も1曲目とは思えないくらいに高いテンションなのだが、それでも山口は
「おい東京!こんなもんか!」
「サボってんじゃねーぞ!」
「福井県はこの100倍くらい凄かったぞ!」
とさらに煽りまくる。
その効果もあってか、「これで自由になったのだ」ではまさに自由になったかのようにダイバーが続出。それでもなお山口は煽り続け、
「50歳のやつも、40歳のやつも、30歳のやつも、14歳のやつも、今だけは17歳になって踊りまくれ!」
と言って踊らせまくった「青春狂騒曲」と、山口の曲に合わせた煽りはもはや達人の領域に突入しているし、これだけ歌うだけではなくて言葉を発しまくっているのを見ると、一体この男の呼吸方法はどうなっているのか、と思う。しかもそれだけではなくて、
「やべー!俺ギター超上手いんですけど!」
と自分で言うくらいにギターも弾きまくっている。
そんな山口のボーカリスト、ギタリストとしてのスキル同様に、「オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで」ではサビで近藤の急に高速になるベース、「光のロック」では立ち上がって叫びまくりながら叩く木内のドラムと、サンボマスターのメンバーたちは本当に演奏力が高い。あまりに熱量が高すぎるが故についつい見過ごされがちだが、よくよく見るとスリーピースとしての限界を更新するようなことをサラリとやってみせている。
「甲子園で優勝できる高校は1校だけ、オリンピックで金メダルを貰えるのは1人だけ、でも今日は全員優勝できるんですよ!全員優勝!全員優勝!」
とこの日のキーワードが「全員優勝」に決まるくらいのミラクルを起こした「ミラクルをキミとおこしたいんです」、
「なんでそういうかわかるか?俺たちがお前たちから何を感じてるかわかるか?俺たちがお前たちから感じるのは、可能性!」
と、決してライブのテンポが損なわれることはないくらいに(山口はこんな広い会場でも酸欠になりかけたみたいだが、こんな歌い方と煽り方をしていたらそれはそうなる)前口上を追加することでさらなる熱狂を生み出していく。
そんな空気が少し変わったのは、山口が
「俺たちはお前たちに会いたくて会いたくて、寝れなかったりする毎日を明日になれば、朝になればお前たちに会える、って思いながら生きている。お前たちもそうだろう。俺たちが待ちわびているのは、新しい朝だ」
と言葉を並べると熱さしか感じないが、そこには日々の自分のどうしようもなさを感じさせるような感情を感じさせてから演奏された「新しい朝」。この曲を聴くと、かつてCOUNTDOWN JAPANのEARTH STAGEの年越し後という大トリの位置で出演した時に、新しい年がやってきたのを祝すかのように演奏されたことを思い出すし、激しいだけではないサンボマスターの3人の温かさや優しさみたいなものを感じて、激しい曲を聴くよりも胸が熱くなる。
「新しい朝」は決してライブ定番と言える曲ではないだけに、ワンマンだからこそ聴ける曲だなぁと思うのだが、畳み掛けるように
「お前が誰かを裏切ったり、傷つけたりしても、俺が全部肯定してやるからな!全部無実だって証明してやるからな!」
と言って演奏されたのは、初期の山口の歌詞の文学的な要素を強く感じさせる「あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ」。いったいこの曲をライブで聴くのはいつ以来になるんだろうか、というくらいのレアな選曲である。
さらに山口のギターがうなりまくる「絶望と欲望と男の子と女の子」、DJとしても活動するダイノジを始め、ファンからも実に人気の高い曲であり、ダイバーが続出する中で木内が昂りまくった感情を叫んで放出した「あなたといきたい」と、決して定番とはいえない、あらゆる時期の曲を次々と演奏していく。
そうした曲たちから感じるのは、浮き沈みも経験したし、迷走しているようにも見えた時期もあったとはいえ、サンボマスターはその長いキャリアの中で本当に良い曲しか作ってこなかった、ということ。このレア曲での凄まじい客席の喜びようと盛り上がりっぷりはそのことを証明しているかのようだった。サンボマスターはフェスやイベントで見てもあまりに最高過ぎるのだが、そこで演奏されている曲以外にもこんなに良い曲がたくさんあるというのがよくわかるだけに、フェスなどでしか見たことがない人たちにも是非ワンマンに来てこうした曲たちに触れて欲しいと思う。
もはや山口のみならず、客席も酸欠になっている人もいるのでは?と思ってしまうくらいに熱気と汗に満ちた空気をさらに熱くするのは、ブルーハーツや銀杏BOYZ、10-FEETにビートルズ、ローリングストーンズなど、山口が影響や刺激を受けてきたロックンローラーたちの魂がまだ死んでいない、ここにこうして集まっている人たちがいる限りはロックンロールは死ぬことはない、ということを証明するかのような「ロックンロール イズ ノットデッド」。
山口は
「泣くんじゃない!笑えー!」
と言っていたが、ロックへの愛情、自分が好きなものへの愛情をこんなに感じさせるような演奏を見たら泣いている人がたくさんいるのも無理はない。この曲とサンボマスターのライブに宿るもの。それはやはりロックンロールの力そのもの。それをずっと感じてきたからこそ、自分はこのブログのURLをこの曲のタイトルからいただいたのである。
「今年は色んなことがあったな。大阪や広島で豪雨の被害があって、北海道でも地震があって。俺は次に歌う曲をそういう被害にあった人に歌いたいと思ってるんだけど、非難されるかもしれないけど…俺はそれ以上にここにいるお前らにこの曲を歌いたいんだ」
と、自身の地元である福島が震災の被害に遭ってから、猪苗代湖ズの活動などで震災の被害に向かい合ってきた山口が、それ以上にこうして自分たちのライブを見に来てくれている人たちに向けて歌ったのは「ラブソング」。
山口は最後のサビの前に大きく間を置いたのだが、その時間には一切の騒音が発生しない。曲間ではメンバーの名前を叫びまくったりしていた人たちですらじっとステージを見つめたり、目を閉じて災害の被害に遭った人たちに思いを馳せたりしている。みんな、メンバーがどういう思いでこの曲を演奏しているのか、というのをしっかり理解した上でこの曲と向き合っていた。そうしたファンのリテラシーの高さはそうして震災などの支援や活動をしてきたメンバーの人間性によるものが大きいのだろう。
そして「ラブソング」とは違った角度でここにいる人たちのことを全肯定するような「YES」からは怒涛の後半戦へ。
「ここがフジロックじゃないから、日本武道館じゃないから、ROCK IN JAPAN FES.じゃないからできないって思ってんのか!?」
と煽ってから演奏された「できっこないを やらなくちゃ」ではほぼ全編に渡って合唱が発生し、
「アイワナビーア 君のすべて!」
のフレーズでは特大の大合唱が起こる。もはやサンボマスター最大の代表曲と言っていいこの曲だが、バンドにとって特別な曲であるのは、千葉県柏市出身であり、千葉ロッテマリーンズの大ファンであるドラムの木内の念願とも言える、ロッテの選手の登場曲としてマリンスタジアムで流れていた曲だからである。
しかしこの曲を登場曲として使っていた、ロッテの根元俊一は今年引退することを発表した。その最後の試合で、選手たちはみんなこの曲を登場曲にしていた。それくらいにこの曲はロッテの選手たちからも愛されていた。それはそうだ、
「君ならできないことだって できるんだ本当さどんなときも」
というこの曲のフレーズに選手たちも間違いなく力をもらっていたからだ。
さらに「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」で否応無しに「愛と平和!」の大合唱を起こすと、
「お前らが俺たちにどう写ってるかわかってるのか。お前らがナイフやカッターや包丁で自分のことを傷つけようとしていても、俺たちが絶対見つけ出してやるからな。なんで見つけられるかって?それはお前たちが輝いて見えるからです!」
と山口が最後まで暑苦しく語りかけてから演奏された「輝きだして走ってく」は今回のツアーのきっかけになった最新シングル曲。映画「チアダン」のタイアップ曲として起用されたことにより、これまでよりさらに多くの人に届いたこの曲の受け入れられ方を見ていると、このバンドの代表曲はもはや日本のロックのアンセムと言っていいレベルになっていると思っているのだが、その曲たちと並ぶ新しい曲。やっぱりサンボマスターの曲は昔の曲も新しい曲も名曲ばかりなのだ。
「ロックンロール!ロックンロール!」
という独特のアンコール待ちの観客の声が響く中、2階席からはひときわ大きな叫び声が聞こえる。関係者が中心だからか、そもそも2階席のアンコール待ちで立ち上がっている人自体が全然いない中で、落ちそうなくらいに手すりに身を乗り出して叫びまくっていた声の主は「百獣の王」こと、元陸上10種競技のチャンピオンでもある、武井壮。もともとは電気グルーヴのピエール瀧に見出されてスペシャの番組に出演し、そこで仲良くなったTHE BAWDIESのライブにいつも来ているし、自身で主催フェスを開催するくらいに音楽が好きな男であるが、やはり熱い男は熱いバンドの音楽やライブが好きなんだろうなぁというのが一目でわかる。
そんな中で3人がステージに戻ってくると、山口と近藤がおなじみの漫才のようなやり取りをする中、ツアー中に叫び声しか発していないという木内もファイナルだからこそのMCで観客に感謝を告げる。男どアホウサンボマスターでは選手宣誓なども行うだけに決して喋らないイメージではないが、こうした3人のデビュー当時、いや結成当時から変わっていないであろう姿を見れるのはやはり嬉しいことである。
「みなさん!メリークリスマス!サンタクロースから爆音のプレゼントですよ!」
と山口がギターを弾きまくった「そのぬくもりに用がある」から、ラストに披露されたのは「さよならベイビー」。まだ年内にはおよそ14年ぶりの年越しアクトを担うCOUNTDOWN JAPANでのライブが残っている(まだ期待の若手的な立ち位置だった14年前の年越しはGALAXY STAGE、名実共にロックンロールの申し子としての立ち位置を確立した今回はEARTH STAGEでのカウントダウンである)が、この曲は去りゆく平成という時代と2018年という年に別れを告げるかのように鳴らされ、演奏が終わると写真撮影をした後に木内のドラムのパッドやスティック、山口のピックなど、投げ込めそうなものはすべて客席に投げ込むというファイナルならではのすべてを出し切ったライブだった。
もはやサンボマスターはベテランと言ってもいいような立ち位置になっているバンドである。昨今のロックフェスにおいてはベテランともなるとなかなかアウェー感を感じたり、若い人には届いていなかったり、知られていないんだろうな、と思ってしまうような場面も多い。昔はメインステージのトリをやっていたようなバンドでさえ、今や小さいステージに出ているということもザラである。
とはいえそういうバンドもワンマンではこうした広いライブハウスでもソールドアウトしていたりするので、フェスにもよるけれど、フェスに行く多数の人が聴く音楽の中になかなかベテランバンドが入りづらいということでもある(そりゃあ若い人からすれば自分たちと同世代やちょっと上くらいの、今から一緒に歳を重ねていけるバンドに魅力を感じるのは当然だ。自分もそうだったし)のだが、サンボマスターは今でもこうしてZeppクラスのワンマンが即完して、フェスでもメインステージを満員にすることができる。
そのことを証明するかのように、この日の会場にはずっとサンボマスターを聴いてきたであろう、自分が昔に初めてサンボマスターのライブに行った時に客席の平均年齢の高さにビックリしてしまったような50代くらいの人もたくさんいるし、フェスで見たりタイアップなどで知ったであろう10代の人もたくさんいる。それって実は本当にすごいことであり、ベテランの域に達しているバンドでそれができるのは「国民的」と言っていいような位置にいるようなバンドたちばかりである。
そう考えると、サンボマスターも実はその位置に収まることができるバンドなんじゃないか、とも思うし、そうした状況を作れたのはこのバンドの音楽とライブが聴く人の年代を選ばない、普遍的な力を持ったものだということだ。
だからサンボマスターはこれからさらに10年経ってもこのくらい広い会場でも、フェスのメインステージでもロックンロールを鳴らし続けていると思う。その頃にはメンバーはみんな50歳を超えているけれど、その歳になっても、あなたといきたい。
1.世界をかえさせておくれよ
2.これで自由になったのだ
3.青春狂騒曲
4.オレたちのすすむ道を悲しみで閉ざさないで
5.光のロック
6.ミラクルをキミとおこしたいんです
7.可能性
8.新しい朝
9.あなたが人を裏切るなら僕は誰かを殺してしまったさ
10.絶望と欲望と男の子と女の子
11.あなたといきたい
12.ロックンロール イズ ノットデッド
13.ラブソング
14.YES
15.できっこないを やらなくちゃ
16.世界はそれを愛と呼ぶんだぜ
17.輝きだして走ってく
encore
18.そのぬくもりに用がある
19.さよならベイビー
輝きだして走ってく
https://youtu.be/KM0SrqFBt38
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