JAPAN'S NEXT 渋谷JACK @TSUTAYA O-EASTなど渋谷7会場 12/9
- 2018/12/11
- 00:43
夏に続いて、渋谷道玄坂の7つの会場でのサーキットフェスとして開催される、ロッキンオン主催の若手バンドの見本市的なJAPAN'S NEXT。これからROCK IN JAPAN FES.やCOUNTDOWN JAPANに出演するようになるであろうバンドたちを1日で見まくれるというのは実に嬉しいところである。
前回はO-EASTにSUPER BEAVERや打首獄門同好会などの日本武道館ワンマン即完レベルの、どこがNEXTなんだ、っていうバンドたちが出ていたが、それによって最大キャパのO-EASTですら入場規制連発だったからか、今回はEASTにもそのレベルのバンドはほとんどおらず、前回入場規制がかかった若手バンドたちがステップアップする格好となった。
しかしながらチケットは今回も即完という、今のライブハウスシーンを沸かせる若手バンドたちの勢いを感じさせる結果なだけに、開演時間の12時ギリギリに到着すると、O-Crestのトップバッターである、reGret Girlはすでに入場規制で入れず、という実に幸先の悪い展開に。
12:30〜 ハンブレッダーズ [O-WEST]
というわけで2番手の時間からスタート。O-WESTに最初に登場するのは、バンドとしての認知度よりも、ボーカル&ギターのムツムロアキラのツイッターでのバズりツイートが話題を呼んでいる「ネバーエンディング思春期」を掲げる4人組バンド、ハンブレッダーズ。
サウンドチェックの段階でメンバーが曲を演奏していたのだが、かなり寒いらしくメンバーは皆上着を着ている。しかし本番ではTシャツ姿で登場し、ムツムロが歌い出すと吉野エクスプロージョン(ギター)とでらし(ベース)がムツムロの至近距離に寄って行って凝視する中、
「今日、ここまでノーミス!」
と豪語して4人の音が重なっていく「スクールマジシャンガール」からスタート。
思春期ならではの衝動を炸裂させるギターロック、というのは実に真っ当かつ王道なものであり、学生視点の歌詞というのもともすると「こういうのいくらでも同じことをほかのバンドが歌ってたじゃん」と思ってしまうものになりがちなのだが、そこはさすがバズりツイッターバンドマンというべきか、そうした学生や学校というテーマを独自の視点や言語で歌詞にする力がすでに備わっている。それはこれから年齢を重ねていろんなことを歌詞にしていく中でも大きな武器になっていくはずだ。
また一聴するとストレートに感じるようなサウンドもギターのフレーズや曲の一部だけスラップになるベースなど、ストレートだけれど単調ではないというツボをしっかり抑えているし、キメではでらしがベースを抱えて大ジャンプをしたりと、技術だけでなく、自分たちの抱えている気持ちを音にして鳴らしたいという衝動が滾っているのがCDを聴くよりもライブを観ると実によくわかる。
「JAPAN'S NEXT、出れて嬉しいです!まぁ僕らが優勝できなかったオーディションのイベントで…(笑)今回は出れましたけど、COUNTDOWN JAPANは出れませんでした(笑)でもROCK IN JAPAN FES.もCOUNTDOWN JAPANもいつか絶対出てやるからな!」
とロッキンのフェスが憧れであることを語ると、リリースされたばかりの2ndミニアルバム「イマジナリー・ノンフィクション」の告知をすると、その収録曲である「CRYING BABY」で
「君が涙を流さなきゃダメなんてクソくらえだ」
と聴かせるようなタイプの曲であっても自分たちが抱える怒りを放出すると、自分たちのような人間のために鳴らすロック「弱者の為の騒音を」から、ラストはロックと出会った高校時代の衝撃を思い起こさせる「DAY DREAM BEAT」で、このバンドの鳴らす弱者の為の騒音がツイッターだけでなくもっと広くて大きい場所で響く可能性を秘めていることを感じさせた。
「ネバーエンディング思春期」を掲げていても、それはいつか必ず終わる。それはそうしたことを歌ってきたバンドたちが証明してきたことでもある。果たしてこのバンドはそうした歴史を覆すことができるだろうか。それともそうしたバンドたちのように違った方向へ進化していくのだろうか。
リハ.口笛を吹くように
リハ.RADIO GIRL
1.スクールマジシャンガール
2.常識の範疇
3.エンドレスヘイト
4.CRYING BABY
5.弱者の為の騒音を
6.DAY DREAM BEAT
弱者の為の騒音を
https://youtu.be/VgBtKdKaEZ4
13:30〜 フレンズ [O-EAST]
club asiaのネクライトーキーも入場規制で全く入れず、そのままO-EASTで待機。今やZeppや日比谷野音でワンマンを行なっているだけに、この日の出演者の中では最大規模の集客力を持つフレンズ。さすがにO-EASTは始まる前から満員。
最近のおなじみである、山本健太(ex.オトナモード)をキーボードに迎えた6人編成で「夜にダンス」からスタートすると、三浦太郎(ギター)、ひろせひろせ(ボーカル)、長島涼平(ベース)の3人が曲中にDA PUMP「U.S.A」ダンスを始め、おかもとえみも歌いながらそれに加わるという思わず笑ってしまうパフォーマンスを見せる。演奏中にいきなりそういうことができてしまうのは凄いけれど。
外の様子がわからないライブハウスの中とはいえ、真昼間のかなり早い時間帯である。それでも続いて「DIVER」「夜明けのメモリー」と夜の曲を演奏するとO-EASTの中だけは夜であるかのよう。それはこのバンドの曲と空気が生み出すものであるが、そんな中でもひろせひろせは
「今日、この時間このステージを選んでくれてありがとう!的なMCをいろんなバンドがすると思いますが、俺が1番そう思ってるからな!(笑)」
と笑わせる。
この日はダウンなどを着たままでライブを見ている人も多いくらいに寒い気候だったのだが、O-EASTの中を昼から夜に変えてしまったように、「常夏ヴァカンス」では季節すらも冬から夏に変えてしまうくらいの暖かい空気に。今年の夏フェスでも毎回演奏されていた曲であるが、そうした場所で聴いた記憶がより一層この会場の中を夏に変えてくれる。
もはやベーシストであったことを忘れてしまうくらいに、この日も美しいボーカルを響かせていたおかもとえみがなぜか
「フレー!フレー!渋谷〜!」
と渋谷の街そのものへエールを送るという観客のみならずひろせすらも困惑してしまう天然っぷりを見せると、年明けに開催されるNHKホールワンマンの告知を、
「紅白歌合戦をやってる場所ですよ!ワンマンをそこでやるから今年の紅白は辞退したんですけど(笑)」
というひろせらしい手法ですると、ラストはバンドがCOUNTDOWN JAPANの29日に出演することを歌詞に含めるという即興性の強さを見せた「Love,ya!」でやはりO-EASTは完全に夏になるとともに、また快晴の夏の空の下でこのバンドのこの曲を聴きたいと思わせた。
もともと実績や経験のあるメンバーたちで構成されているバンドなだけに、若手と言えるかどうかは微妙なところもあるが、やはりそのライブ力というか、自分たちだけの空気を作れるということにおいては一つ飛び抜けたものがある。オシャレなバンドという位置に入れられそうでもあるけれど、そういうバンドたちとも全く違う場所にいる。
リハ.塩と砂糖
1.夜にダンス
2.DIVER
3.夜明けのメモリー
4.常夏ヴァカンス
5.Love,ya!
常夏ヴァカンス
https://youtu.be/bCQP4u6rYek
14:00〜 THE LITTLE BLACK [club asia]
昨年のRO JACK for COUNTDOWN JAPANの覇者としてCOUNTDOWN JAPANに出演、このイベントでは前回に続いてasiaのステージに立つのが、元WHITE ASHののび太(ボーカル&ギター)と彩(ベース)にマット(ドラム)を加えたスリーピースバンド、THE LITTLE BLACKである。
夏の時と同じように下手ののび太と上手の彩が向かい合うような形で間にマットのドラムセットというフォーメーションなのだが、前回の出演から今回に至る間に初の音源となるミニアルバムをリリースしており、ようやく本格的なスタートを切ったと言えるのだが、やはり「どういう感じなんだろうか」と身構えて見ていた前回とは違い、タイトかつソリッドなスリーピースのロックンロールがやりたいバンドというメンバーの意志がハッキリとわかっているだけに、余計な意識を持つことなく、このバンドのロックンロールに浸ることができる。
シンプルであるが故に一つ一つのサウンドはしっかりと聞き取れるのだが、だからこそ改めてのび太のギターを聴いていると、これをスリーピースで、かつ歌いながら弾いているというのはとんでもないことをしているんだな、とWHITE ASH時代から数々のキラーリフを生み出してきたのび太のギタリストとしての技術の高さに改めて驚かされる。
初のミニアルバムが出たばかりだというのに早くも披露された新曲は彩のコーラスがほぼ全編に渡って重なっているという、メロディが際立った曲であり、のび太が「1番気に入っている曲」というのも頷けるだけに、なぜこの曲をミニアルバムに収録しなかったのか、とも思うが、それ故に次の作品が楽しみにもなる。
「もう今年も終わりますけど、2018年は皆さんはどんな年でしたか?よくよく考えたら、まだ大正生まれの人って生きてるだろうから、大正、昭和、平成、来年からの新年号って4つの年号を生きてるんだよね〜。すごいよね〜」
とさすがにキャリアがあるのび太だからか、全くフレッシュさを感じさせない話を始めたと思ったら、
「我々は去年のちょうどこの時期にRO JACKで優勝して、COUNTDOWN JAPANに出させてもらって。また、次は自分たちの力であの場所に立ちたいな。来年からは夏フェスにも出たいです」
と、去年「なんでわざわざのび太の新しいバンドがオーディション枠にいるんだ。優勝するに決まってるだろ」と言われまくっていたのを、自身が
「どうしてもあの場所からスタートしたかった」
と話していた通り、のび太にとってはWHITE ASHとしても優勝してシーンに登場し、実質的に多くの人にとってはWHITE ASHのラストライブの場にもなってしまったCOUNTDOWN JAPANに特別な思い入れがあるのだろう。
WHITE ASHとして出ていた頃に比べるとフェス自体もそれぞれのステージも巨大化しているため、集客力的にはまだ普通に出演できるような状況ではないのだが、そうした目標がちゃんとバンドにあるからか、夏の時よりもはるかにライブが良くなっていた。わずか半年でここまで良くなるということは、このバンドにはまだまだ伸び代があるということ。
実際、夏の時はライブが進むに従って観客の人数がかなり少なくなってしまっていたのだが、この日は最後まで満員と言ってもいい状態で、みんなしっかりこのバンドのロックンロールに向き合っていた。のび太と彩のロックはまだまだ終わっていない。それをこれからこのバンドで証明していくはず。
ドロミズ
https://youtu.be/6pdtKKo6tfY
15:00〜 FINLANDS [club asia]
前回もこのイベントに出演しているのだが、前回は入場規制で入れなかったため、今回ようやくライブを観れる機会が巡ってきた。(入場規制を避けるため、本来予定に入れていたO-WESTのニガミ17才は諦めることに)
FINLANDSは塩入冬湖(ボーカル&ギター)とコシミズカヨ(ベース&コーラス)の女性2人組バンドで、男性のギターとドラムのサポート2人を加えた4人編成。
時間になると、FINLANDSという名前を象徴するような衣装である厚手のコートを着たメンバーたちがステージに登場し、
「FINLANDSです。よろしくお願いします!」
と塩入が挨拶すると、キャッチーなリフ連発のギターが引っ張る疾走感の強いギターロック「ウィークエンド」からスタートするのだが、それよりも塩入の、金切り声と言っていいようなボーカルがやはり凄い。ソロでも活動しているというのもこの声があってこそだが、まるでロックンロールを歌うために生まれてきたかのような声である。好き嫌いは間違いなく分かれるだろうし、歌詞が聞き取りにくい時もたまにあるのだが、サウンドと相まって、可愛さなんか一切ない、ひたすらにカッコ良さしか感じないロックになっている。
塩入が早くもギターを下ろすと、全然バラードではない「バラード」ではasiaのステージの端にある階段のところまで行って、そこでマイクを持って歌うというこの会場だからこそのパフォーマンスも展開し、代表曲と言っていい「ゴードン」「恋の前」という曲では塩入とコシミズがそれぞれステージ前の台に立って演奏し、客席の温度はどんどん上昇していき、コートを着ているのが暑くないのかな?と思うくらいに会場が熱気に満ちていく。
今年リリースの最新アルバム「B II」の初回盤DVDに収録されたライブ映像を見て、自分は一刻も早くこのバンドのライブを観なくてはならないという気持ちを駆り立てられたのだが、そのDVDの時もそうだったように、塩入は歌う時にたまにじっと一点を見つめながら歌う時があって、その一点はカメラだったり客席だったりするのだけれど、その表情が女性の恋愛における怨念の強さを感じさせる歌詞により一層説得力というか、怖さにも似たものを感じさせる。
塩入「渋谷JACKって私は呼んでたんだけど、ジャパネクってみんな呼んでるらしいね」
コシミズ「その方がキャッチーだからじゃない?」
塩入「渋ジャはダメなの?」
コシミズ「…それならジャパネクの方が良くない?(笑)」
というライブ中の緊張感と真逆のガールズトークの延長のようなMCから、ラストは全然エレクトロサウンドじゃない「electro」から、バンドの演奏がさらに力強さを帯びるキラーチューン「クレーター」と、ミドル〜バラードと言ってもいい名曲も多数あるバンドではあるが、30分という短い時間なだけに、駆け抜けるように疾走感のある曲のみを連発したライブとなった。
チャットモンチーが新たな扉を開いた日本のガールズバンドシーンにおいて、こんなにもロックンロールさを強く感じさせるバンドがいただろうか。いや、いたとしてもこのバンドほどそのシーンに風穴を開けてくれるような予感がするバンドはいなかった。何かが変わるような気がひしひしとしているし、それは間違いなくこの国のガールズバンドシーンをさらに強いものにしていくはず。そのカギはやはり可愛さやオシャレさではなく、ロックバンドだからこそのカッコ良さだ。
リハ.カルト
リハ.Hello Tonight
1.ウィークエンド
2.バラード
3.ゴードン
4.恋の前
5.electro
6.クレーター
クレーター
https://youtu.be/Fyh1VyBgFJY
15:30〜 ReVision of Sence [O-EAST]
SNSなどで良くも悪くも何かと話題を振りまいているバンド、ReVision of Sence。すでにROCK IN JAPAN FES.にも出演しており、堂々の最大キャパ・O-EASTに出演。
このバンドの象徴的なデザインのコートを着た河井数馬(ボーカル)が
「頭振れ!」
とヘドバンを促したりと、フロントマンとしてライブを引っ張っていきながら歌うのだが、
「ブスは美人には勝てません!」
という「ヨノナカカオ」など、好き嫌いがハッキリ分かれそうというか、こうした歌詞に嫌悪感を抱くかどうかでこのバンドへの向き合い方は全く変わってくるし、それに加えてファンの「害悪キッズ問題」やメンバーの違法音楽アプリ肯定発言、さらには昨年のBAYCAMPにおける中に人が入っているのに女子トイレの上に乗って歌うというパフォーマンスなど、事あるごとにネット上で炎上しまくってきたバンドであるだけに、なかなかフラットな視点で評価したりライブを見たりするのが難しいバンドではあるのだが、打ち込みのサウンドも取り入れたラウドなロックをキャッチーなものにしてみせるセンス、そうした楽曲をしっかり音の強さと重さを兼ね備えた形で演奏することができるメンバーそれぞれの技術も実に高い。派手な髪色や衣装なども相まって、軽い感じで適当に音楽をやっていると見られても仕方がないが、そうした人だったらこんなライブはできない。この辺りはなんやかんや言われながらもZeppクラスでワンマンができているのも納得である。
「SNSで「いいね」を貰うことに取り憑かれた人」など、やはり曲のテーマや内容はものすごく好き嫌いが分かれるとは思うが、河井の
「俺もバンドを始めた時はONE OK ROCKみたいになれると思ってた。でもなれなかった。現実を知ったし、散々ボロカスに言われまくってきた。それでも俺たちにしかできない音楽があるはずだって思ってここまでやってきたし、こうしてライブをやっている時は俺たちが1番カッコいいと思ってる。俺はクズ人間だけど、一生ステージに立ち続けていたい。こうしてライブをやった次の日にコンビニでバイトなんかもうしたくない。俺はこれしかやりたくないんだ!」
という、ただただバンドをやって生きていきたいという純粋な心の内を曝け出したMCの後に演奏された最後の「負け続けの日々」は良くないイメージがこびりついているこのバンドの曲とは思えないくらいにストレートな、率直に言ってしまえばいい曲。
もしこのバンドがこうしたタイプの曲のみで勝負するようなバンドだったとしたら良くも悪くもイメージや立ち位置は全く違うものになっていただろうと思う。
しかし自分もクズ人間であることを自認しながら日々社会の底辺で生きているような人間であるが、クズ人間というのを免罪符にしてしまうのは良くないと思うのだ。クズ人間と他の人に迷惑をかけたり傷付けたりするのは全く違う。どれだけ自分を卑下してもいいからそこだけは履き違えないでいて欲しい。
このバンドについて回るイメージやアンチな人の多さはバンド自身の行動や発言が招いてしまったものでもある。それだけに河井の
「もっと評価されたい」
という発言は、「それなら奇をてらったことをしなくてもバンドの力のみで勝負すればいいのに」とも思うけれども、そうしていたらキュウソネコカミやヤバイTシャツ屋さん的な位置にも行けた可能性すら感じるポテンシャルはあるバンドだと思うのだが、ある意味では今のやり方こそが自分たちのやり方なんだろう。
そうした自分が好きな、誤解されたりナメられたりしていると未だに思っているバンドの名前を出してしまうくらいに、このバンドのライブからはそうしてナメられたりバカにされまくってきたことに対する悔しさが滲み出ていた。もちろんそれもまたバンド自身が招いてしまったことで…と言うとひたすらに同じことがループしまくってしまうのだが、ライブを見ればこのバンドのそうした人間臭い部分、この人たちがやっているからこういう音楽になるんだな、という人間らしさは確かに感じることができる。それさえちゃんとあれば、いつかこの状況をひっくり返せる日が来る可能性は必ずある。ロックバンドとしてずっと生きていきたいというのが本音ならば、いつかその日は来るはずだ。
1.ダメ、ゼッタイ、現実逃避
2.ヨノナカカオ
3.I'm a クズ人間
4.いいねパラサイト
5.負け続きの日々
ダメ、ゼッタイ、現実逃避
https://youtu.be/Wy_4xQ_3Zso
16:00〜 め組 [duo MUSIC EXCHANGE]
このイベントがサーキットフェスになる前から何度も出演しており、ある意味ではジャパネクの象徴的な存在とも言える、め組。前回はO-WESTに出演したが、今回は一つ大きなduo MUSIC EXCHANGEへ駒を進めた。
「サーキットイベントの常習犯こと、め組です!今日渋谷で1番良いライブをしに来ました!」
とメンバーが登場して菅原達也(ボーカル&ギター)が挨拶すると、いきなり観客に「ちゅるりらら」というフレーズの合唱を促す「悪魔の証明」からスタートし、何回か練習してから本番へ突入すると大きな合唱が起こり、菅原は実に満足そうな笑顔を浮かべていた。
夏の時点では新曲として披露されていた、何かと普通なようでいて全く普通ではないこのバンドの曲の中でも割と普通度が高い「Amenity」はすっかり定番曲化してきているし、リリース前からライブで毎回のようにやってきたからか、新曲とは思えないくらいに完全に馴染んできている。
そうして夏からのわずかな期間でバンドのレベルがさらに上がっているのが一見するだけでよくわかるのだが、それはサポートメンバーであるリズム隊の力強さもあるだろうけれど、ツアーやフェスを経てメンバー各々の力がさらに向上しているというのがデカい。特に元から流麗なピアノの音でこのバンドの持つポップさをさらに引き出していた紅一点メンバー・出嶋早紀はもはや覚醒を迎えたかのように完全にバンドのサウンドを牽引するようになっている。それによってさらにバンドのポップさが前面に出ているし、このバンドにピアノのメンバーがいる意味が明確になっている。
菅原達也が
「みんな辛い恋愛とか色々経験してると思うんだけど、俺も前に付き合ってた彼女とそういうことがあって。浮気されたんですよ。で、浮気されたのが悔しくて彼女に問い詰めたら、
「私は浮気をしているつもりじゃなかった」
って言われて(笑)
こいつ、何言ってんだろうなって思ったんだけど(笑)、きっとそのくらいの本気な恋愛をしていたんだろうな、って思ったら本当に悔しくて。次にやる曲を聴くといつもその時のことを思い出します」
と菅原達也らしい失笑の嵐が沸き起こったMCの後に演奏されたのは「僕らの匙加減」。なかなか一気に突き抜けることはできないが、夏とほとんどやってる曲は変わらないのに、夏よりもはるかに良いライブだった。フェスやサーキットは同じ時間にやっているアーティストによって動員力がダイレクトに反映されるが、このduoのキャパくらいは余裕で埋まってもいいバンドだと思う。
1.悪魔の証明
2.Amenity
3.お化けだぞっておどかして
4.500マイルメートル
5.僕らの匙加減
Amenity
https://youtu.be/DksDMNhWRIw
16:30〜 マカロニえんぴつ [O-EAST]
夏のこのイベントではO-WESTが入場規制。初出演したROCK IN JAPAN FES.でもWING TENTを満員に埋め、今回は最大キャパのO-EASTに出演となる、マカロニえんぴつ。
期待度の高さを表すようにO-EASTの中は超満員。サポートメンバーのドラムセット以外の4人は横一列に並ぶというフォーメーションで、キーボードこそあれど機材が多くないバンドなのでステージがどことなく大きく見える中、音を鳴らし始めると同時にその上にコーラスが重なっていくと、「洗濯機と君とラヂオ」からスタートするのだが、気合いという気負いというか、そういった類のものがあるのか、曲のテンポが本当に速い。それは30分の持ち時間がありながらも25分で7曲を演奏した走りっぷりを見せたロッキンの時もそうだったが、そのスピード感に加え、曲のタイプ的には聴かせるように演奏されてもおかしくないような「girl my friend」にしても、はっとり(ボーカル&ギター)の歌い方がよりロックさを感じさせるようなものになってきている。それは先日まで行われていたツアーの中で得てきたものなんだろうか。
この日各会場の転換中のBGMにも起用されていた最新シングル曲「レモンパイ」はゆったりとしたムードに浸らせる、その前に演奏された曲たちとは全く違う空気を持つ曲だが、そうしたタイプの曲がイントロが鳴らされた時点でたくさんの人が嬉しそうなリアクションを取っていたのが、今のこのバンドの持つ勢いや追い風っぷりを感じさせる。そしてだいぶ寒さを感じるような気候になってきただけに、温かいレモンパイを食べたいな、とすら聞いていて思ってしまう。
このバンドにおけるライブでの大合唱フレーズを含む「ワンドリンク別」からの踊りだしたくなるようなリズムの「ハートロッカー」で初めて立つというこのO-EASTの会場を完全に掌握すると、はっとりは
「ジャパーン!!!」
と叫ぶ。これははっとりが髪型を真似ているという奥田民生(ソロデビュー時の)がロッキンのフェスに出た時に叫ぶフレーズへのオマージュであろう。
「クソナメられた名前のロックバンドですけど、こうしてこのイベントで1番広いステージに立てて、こうして皆さんに集まってもらえて、本当に自信になります。
ロッキンオンには夏のフェスにも出させて貰っていて、COUNTDOWN JAPANでも12/31っていう大事な日を任せてもらって。信頼されてるんだな、とも思うけれど、信頼されてるっていうことはいつか裏切られるかもしれないっていうことでもあって。そうならないように努力し続けたいと思います」
とはっとりは最後に胸のうちを明かしたが、決してカッコいい名前のバンドではないだけに、それが理由でスルーされたり、ナメられたりすることがあって、それによってバンドが悔しい思いをしてきた、ということが滲み出ていた。
だからこそこのバンドはそうした名前だけでナメられるという、ある意味では見た目だけで判断されること以上にキツい経験を何度もしてきているし、それを覆そうとしている。なぜこのバンド名にしたのかはわからないが、曲を聴けば歌詞や言葉にこだわっているバンドだということはすぐに理解できるし、そんなバンドが適当な理由でこの名前を名乗るわけがない。
そうした思いを全て乗せて演奏していたからこそ、ラストの「ミスター・ブルースカイ」は、これまで以上にはるかに、届いていた。
1.洗濯機と君とラヂオ
2.girl my friend
3.レモンパイ
4.ワンドリンク別
5.ハートロッカー
6.ミスター・ブルースカイ
レモンパイ
https://youtu.be/AiFCRd9C_IA
17:00〜 2 [duo MUSIC EXCHANGE]
今や俳優としてもおなじみになりつつある古舘佑太郎と、銀杏BOYZのサポートメンバーでもある加藤綾太らによるバンド、2。こちらも前回に続いての出演で、前回はO-WESTで入場規制がかかっただけに、一つ広いキャパのduoに今回は出演。
赤坂真之介(ベース)が素肌にジャケット、古舘もワークシャツという汗をかきまくる前提のような出で立ちでメンバーが登場。加藤はトレードマークとも言える長い髪がかなりスッキリしている。
ライブ会場限定シングルを先月リリースしたばかりなのだが、いきなりその収録曲「ヤケのダンス」からロック、バンドの衝動を飛び散らせるかのようにしてメンバーは演奏し、古舘は歌っていく。紅一点ドラマーであるyuccoもそれは他のメンバーと同じなのだが、古舘に関してはThe SALOVERS、加藤に関しては銀杏BOYZでのライブと全く変わらず、上手い下手ではなくどれだけ音に熱さや衝動を込められるか、というように音を鳴らしているだけに、見ているこちら側も熱くならずにはいられないし、2人が全く変わらないのは本当に嬉しいし頼もしい。
何よりもThe SALOVERS時代から、ロックが衝動の音楽だとするならば、このバンドほどロックなバンドはいないと思っていた自分にとっては古舘のバンドから今も同じことを感じられるというのは、お互いに変わってないんだな、と再確認できる。
しかしながら凄まじいペースである。30分のうちに曲を演奏している以外の時間が全くない。そこにSFをテーマにしたと思われる「SとF」という新曲も交えていくのだが、曲そのもののテンポも速くなっていることにより、さらに衝動を強く感じさせる。
そんな中でも生活のふとした出来事を歌詞にした「ニヒリズム」、独特の視点による「ロボット」と、かつてThe SALOVERSのプロデューサーであった、いしわたり淳治に歌詞を認められた古舘の作家性はさらに鋭さを増している。
結局一切間をおかずに、キメでは古舘、加藤、赤坂が楽器を抱えてジャンプするという、ひたすら衝動が溢れるギターロックを連発し、古舘は新曲の紹介以外に一切喋らず、30分で10曲というパンクバンド顔負けのテンポで突っ走った。まるでこのバンドの周りだけは時間が流れるスピードが他とは違うかのように。
1.ヤケのダンス
2.Anthem Song
3.PSYCHOLOGIST
4.急行電車
5.SとF
6.ニヒリズム
7.ロボット
8.DEAD HEAT
9.Family
10.ケプラー
ケプラー
https://youtu.be/-wMVbr7AlE8
17:30〜 MOSHIMO [O-WEST]
前回はO-EASTに出演していた、MOSHIMO。今回はO-WESTに出演となったが、やはりライブ開始前から超満員。
見るたびにライブキッズらしさを増す男性メンバーたちに続いて、のっけから超ハイテンションな岩淵紗貴(ボーカル&ギター)が
「命短し恋せよ渋谷!」「命短し恋せよジャパネク!」
とコール&レスポンスを始め、温まったところで「猫かぶる」を歌い始めてスタートする。この段階で完全に空気を自分たちのものに変えてしまっている。
「冬になりましたんで、厚着してる女の子って良いですよね〜」
という一瀬(ギター)と宮原(ベース)の男子トークに岩淵が
「お前らキモいな!」
と誰よりも強いツッコミを入れると、配信リリースされたシングル曲「電光石火ジェラシー」では
「セーフ アウト よよいのよいよい!」
という野球拳のようなサビのフレーズでまたもコール&レスポンスを展開。男性メンバーのみならず観客すらも力技で自分たちの空気に包んでしまう岩淵のバイタリティというか、テンションは凄まじいものがあるというか、ここまで無垢な笑顔で思いっきりコールされるとレスポンスせざるを得ない。
しかし目立つのは岩淵だけかというとそんなことはなく、確かにライブそのものの流れを作っているのは岩淵なのだが、1年くらい前に初めてライブを見た時は岩淵に引っ張られているおとなしい男子たちというイメージだったのが、ライブキッズ的な見た目以上に音が本当にたくましくなっている。メンバーの構成的にもひたすらポップなイメージが強かったが、サウンドはもはやそういう客層のフェスやライブに出たらモッシュやダイブが起こってもおかしくないと感じるくらいのレベルでポップな中にもラウドさを含むようになっている。
そして早くもラストの「命短し恋せよ乙女」では恒例の観客の名前を聞いて「命短し恋せよ○○」とクリスマスに予定のない寂しい観客にエールを送るべく歌うのだが、
「私もキツい恋愛経験をしたことがあって。好きな人から呼ばれて、嬉しくて会いに行ったら、ふとした時に彼の携帯が鳴ったの。見たくなかったんだけど、見ちゃうじゃん?で、見たら明らかに彼女から連絡が来てたの。あ、私は2番手3番手なんだな、って。彼女には勝てないんだな、って。でもいつか絶対彼女に勝てるような女になってやる!ってその時に誓ったの!」
という実体験を若干涙ぐんでるような感じすらしながら話すと、そうした経験の悔しさを全て曲にぶつけるように
「命短し恋せよ乙女!」
と叫び、観客の声もさらに大きくそこに乗っかっていった。
ライブは見るたびにはるかに良くなっている。しかしこの持ち時間でコール&レスポンスや「命短し恋せよ乙女」の観客応援のくだりを入れられると、どうしても4曲しかできない。今のスタイルはMOSHIMOならではのものとも言えるが、せっかく良い曲が他にもたくさんあるだけに、この曲数はもったいないし、物足りなく感じてしまう。何よりも持ち時間が同じだと毎回同じ曲しかできなくなってしまう。果たしてこのままこのスタイルを貫くのか、それともいつかは変わるのか。そこも含めて今後も注目していきたいバンドである。
1.猫かぶる
2.電光石火ジェラシー
3.触らぬキミに祟りなし
4.命短し恋せよ乙女
電光石火ジェラシー
https://youtu.be/jAlK41ICgEw
18:30〜 ズーカラデル [O-WEST]
この前の時間のO-CrestのTrack'sが入場規制になっていたため、そのままO-WESTに残ることに。今年、スピッツの主催ライブにも出演し、そのライブを見たVIVA LA ROCKの主催者である鹿野淳が一目惚れしたバンド、ズーカラデルが初出演。
もう見るからに素朴な、という言葉しか出てこない、まるで北海道の新じゃがのごとき出で立ちの3人が登場すると、「誰も知らない」からじっくりとスタート。その見た目以上にサウンドも実にシンプルで機材も少ないし楽器を変えることもない。
全く激しい音楽ではない、吉田崇展(ボーカル&ギター)の歌を聴かせるような楽曲と奇を衒ったような単語こそないが、情景が浮かんでくるような歌詞は、メンバーの出で立ちも相まって、「さよならストレンジャー」期のくるりを彷彿とさせる。
それくらいシンプルだとサウンドも単調だったりして飽きてしまいがちなのだが、そうならないような音の運びや選びが随所に見られ、それはシンプルなサウンドであるからこそしっかりと聴き取れるのだが、そうしたフックを最も感じる鷲見こうたの、いきなり歪ませたり、予想もしないような音の動きを見せるベースは只者ではないことを予感させる。
激しいサウンドのカッコいいロックというわけでもなければ、オシャレなシティポップというわけでもない、洋楽の影響もあまり感じないという、実に形容しづらいし多分今のシーンには同じようなバンドがいないだけに共闘関係を築けそうなバンドも見当たらないので、実に評価されにくいバンド(これまでにもそういうバンドはたくさんいた)だと思うし、聴き心地としてはポップという一言に尽きるのだが、「アニー」での吉田のギターとウキウキするようなサウンドには間違いなくこのバンドがロックの影響下にあることがわかるし、時折3人が顔を見合ってタイミングを合わせたりする様子には、このバンドがこの3人でないとできないことをやっているということをうかがわせる。
「恋と退屈」では吉田が入りのギターをミスしてやり直すという場面もあったが、その吉田の
「アリガトッ!」
という外人が言うような「ありがとう」の言い方はなんなんだろうか、と思ってるうちに気づいたらラストの「漂流劇団」を演奏していた。
「あなたを笑わせたいのだ ただ抱き合って喜びたいのだ 彷徨う僕らの日々の向こう」
というドラマチックさのかけらもない我々の日常のサウンドトラック。そんな何気ない日常のふとした瞬間こそが幸せであることを教えてくれる音楽。吉田がミスったぶんだけか時間ちょっと押してたけど。
1.誰も知らない
2.ダンサーインザルーム
3.アニー
4.夢の恋人
5.恋と退屈
6.友達の歌
7.漂流劇団
漂流劇団
https://youtu.be/nRhycautvCE
19:00〜 climbgrow [club asia]
滋賀県出身の若きロックンロールバンドclimbgrow、このイベントに襲来。club asiaの客席は開始時点から満員である。
革ジャンや黒シャツなど、黒で統一された衣装のメンバーが「極彩色の夜へ」を演奏し始めると、そのあまりの音圧の強さと、杉野泰誠のひたすらに咆哮するようなボーカルに圧倒されてしまうし、その中でキラリと光るサビのキャッチーさも感じる。
「SCARLET」では杉野が客席の柵に足をかけて歌うという前のめりな姿勢を見せるのだが、あまりに前のめり過ぎて思わず客席に突入してしまわないか心配になる。(ロッキンオン主催のフェスなので、ダイブをしたり煽ったりすると出禁になってしまう)
しかしながらこの若さにしてよくぞこんな濃いロックンロールを選んだな、というくらいに聴く人を選ぶような音楽をやっているのだが、そこに一切の迷いがないことは演奏中の姿を見ていても、杉野の
「俺たちが日本のロックンロール代表!climbgrowだー!」
という強烈なシャウトからもよくわかる。
そしてそのバンドの力に観客もダイレクトに反応して、全ての曲のサビで拳が上がっていた。てっきりみんなどんなバンドか知らないけどとりあえず見てみよう、的な感じで集まっているのかと思っていたけれど、そうではなくてこのバンドのロックンロールを浴びたくてここに集まっていた。その人たちの大半がメンバーと同年代くらいの20歳前後の人たちというあたりに、ここから何かが変わっていきそうな予感を感じる。
「いろんなバンドが出てる中で同じようなことをやってもしょうがない。俺たちは俺たちにしかできないロックンロールをやってやる。今、俺たちはツアー中で、今度、下北沢のワンマンライブでまた東京に来るんで、是非見に来て欲しい。まだチケット余ってるんで」
と杉野は自分たちの覚悟を、歌ってる時の迫力とは違う好青年のような表情で語ったのだが、「チケットまだあります」ではなく「余ってる」と言った。そこには「なんでこのカッコよさがわかんねぇんだ」という状況への苛立ちもあり、チケットを売り切ることのできない自分自身への不甲斐なさも感じさせた。
最新アルバム「CROSS COUNTER」がリリースされたばかりという状況であり、そのツアー真っ只中ということで、後半には「CROSS COUNTER」の収録曲も並んだのだが、とりわけ
「差し込めクロスカウンター 光れ俺たちの時代だ」
とタイトルを交えて宣誓する「未来は俺らの手の中」はこれまでの曲以上に広いところに響く予感がしている。というか「CROSS COUNTER」は間違いなくそれを意識して作ったアルバムだと思う。
そしてラストは杉野のポエトリーリーディングのような言葉が次々にがなり立てるように吐き出されていく「風夜更け」。ロックンロールというスタイルを選んだのはもちろんロックンロールが好きだったからなのは間違いないが、そんなバンドのボーカリストがこんなにもロックンロールバンドでしかないような声を持っていたのは奇跡としか言いようがない。まだ20代前半という若さだが、ライブでの地力という面では、かつてOKAMOTO'Sや黒猫チェルシーというやってる音楽的にもライブの強さ的にも到底10代とは思えなかった「恐るべき子供たち」がシーンに登場してきた時を彷彿とさせる。
ロックンロールというスタイルのバンドがなかなかおなじみの存在になれないロッキンオンのフェスのこれからを背負ってもらいたい存在。
1.極彩色の夜へ
2.RAIN
3.SCARLET
4.ラスガノ
5.LILY
6.未来は俺らの手の中
7.風夜更け
未来は俺らの手の中
https://youtu.be/u4a8Tim8Xa0
19:30〜 嘘とカメレオン [O-WEST]
前回はclub asiaに出演した、嘘とカメレオン。今回はO-WESTに登場。
満員の観客の前に最初に現れたのは、タイムマシーン3号の関太ライクなギタリストの渡辺壮亮。すると冬をテーマにした朗読を始めて観客の意表を突いている間に他のメンバーが登場して音を鳴らし始め、最後に赤と白の着物を着た紅一点ボーカルのチャムが登場し、「百鬼夜行」からスタート。
ピンクと紫が合わさったような独特な髪色のベーシストの渋江アサヒがプロフィールに載せているように、9mm Parabellum Bulletのようなメタリックなギターフレーズと、SiMのような重いラウドなサウンドに和のエッセンスなどを配合した、性急なギターロックを鳴らすバンドである。
それだけに聴いているとモッシュやらツーステやらをするような絵がすぐに浮かぶのだが、若い人がメインであるにもかかわらず客席は非常に大人しいというか、じっくり聴いているような感じだったのが意外。本人たちが出れることを本当に喜んでいたCOUNTDOWN JAPANというフェスの舞台ではそのノリも少しは変わるのだろうか。年明け後のASTRO ARENAという休憩するにはうってつけの時間と場所での出演であるが。
「かごめ かごめ」
のフレーズが和のテイストを強く感じさせながらもキャッチーに響く「フェイトンに告ぐ」、観客に「アン ドゥ トロワ」のカウントを合唱させる「JOHN DOE」と、1stフルアルバム「ヲトシアナ」からの現状のベスト的な内容。
渡辺はMC中にコーラのペットボトルを開けて「プシュ」という音を響かせ、チャムは着物を着ているからか間奏では腕を組んで首を上下に振るなど、メンバーそれぞれのキャラクターもキャッチーでありながら実に濃い。
「N氏について」では曲中に首の運動として、全員で上を向いて下を向いて左を向いて右を向いて…と実に地味極まりない一体感を醸し出す。フィジカルに訴えかけるようなサウンドのバンドであるにもかかわらず、一切のモッシュもない代わりにこうした動きがあるのは実にシュール。
そしてラストはやはり再生回数300万回を突破している、バンドの代表曲「されど奇術師は賽を振る」でブチあげるようにして終わったのだが、あまりにもバンドの演奏とサウンドが強すぎるだけに、ボーカルが物足りなく感じてしまう。でもそれはメンバーが多大な影響を受けているであろう9mmとかも最初はそうだった。これからさらに場数を踏んで経験と技術が増していけばそれは必ず克服できるはず。その時にはもっと大きな会場でメンバー以上に観客が暴れまくっているような光景を見れるようになっているだろう。
1.百鬼夜行
2.フェイトンに告ぐ
3.JOHN DOE
4.N氏について
5.されど奇術師は賽を振る
されど奇術師は賽を振る
https://youtu.be/lscuxZT45Io
20:30〜 go! go! vanillas [O-EAST]
いよいよこの長い一日も終わりの時を迎えている。今回のこのフェスのメインステージのトリを務めるのは、過去に何度もJAPAN'S NEXTに出演している、go! go! vanillas。ついにラスボス的な存在にまで成長してこのイベントに帰還。
サウンドチェックの段階でメンバー全員が登場して観客を喜ばせると、おなじみ「We are go!」のSEでメンバーが登場し、冬にもかかわらず「SUMMER BREEZE」で決して冷たくないさわやかな風を吹かせてスタート。
打首獄門同好会、yonige、夜の本気ダンス、SUPER BEAVERという、ロッキンならLAKEかPARK、COUNTDOWNならGALAXYに出るようなバンドたちがO-EASTに居並んだ前回とは異なり、そうした巨大なステージに出ているバンドは今回はこのバンドだけ。なのでもはやNEXTという感じでもないし、立ち位置的には反則的な存在であるのだが、やはりライブの爆発力や見せ方、演奏や歌の技術など、小さいライブハウスを主戦場としているバンドたちとは何レベルも違うような強いオーラを感じるくらいにすらなっている。
特に牧がハンドマイクで客席の柵に足をかけながら
「チェ チェ チェ チェンジユアワールド」
と歌う歯切れのいいフレーズが癖になる「チェンジユアワールド」からは圧巻と言ってもいいくらいにロックンロールの魔法にO-EASTが包まれる。
先日のM-1グランプリで話題を呼んだ、ジャルジャルの「国名わけっこ」を使った柳沢進太郎のコール&レスポンスは
「イン!」「ドネシア!」
「アル!」「ゼンチン!」
「JAPAN'S!」「NEXT!」
と続くと、最後に
「カウンター!」「アクション!」
とコール&レスポンスしてから「カウンターアクション」に突入するという、この辺りも実に上手いなぁと感じさせ、貫禄すら感じる。
ベースのプリティが手がけた「デッドマンズチェイス」では牧と柳沢とプリティが1コーラスごとに場所を代わりながら歌い、最後には3人が一本のマイクで歌うという盛り上がらざるを得ない光景に。かと思えばジェットセイヤはスティックを自身の後ろのイベントの幕に向かって投げまくるだけでは飽き足らず、シンバルまでもステージ横に投げまくるという破天荒っぷりを見せる。
そして牧がこのイベントへの感謝と、平成という時代の次の時代へ動いていくこと、平成のNEXTを自分たちが作っていくという決意を込めて最後に演奏されたのは平成生まれのメンバーたちが終わりゆく平成の時代に思いを馳せた「平成ペイン」で、客席ではMVのダンスを踊る人が続出。その姿を見て、このバンドがロッキンオンのフェスを担う存在になっているということを改めて実感したのだった。
アンコールでは牧の誕生日を祝って客席から「ハッピーバースデー」の合唱が起こるのだが、当の牧は
「嬉しいけど、俺の誕生日は明日だから(笑)」
と至って冷静なままでNEXTの新しいカルチャーを切り拓くように大きな合唱が起きた「おはようカルチャー」でこのイベントの未来、日本のロックバンドの未来にまばゆい光を照らしてみせたのだった。
今やロッキンオンのフェスでは2番目に大きなステージですら入場規制がかかるくらいの人気バンドにまで成長したが、ライブを観るとなぜこのバンドがここまで来れたのかがよくわかる。きっと来年は武道館クラスでワンマンをするはず、と思うと、ライブはやはり文句なしに良かったが、他の出演者と同じ土俵で比べられるような存在ではもはやない。それくらいにあらゆる面でもうレベルが違うところまでこのバンドは到達している。しかし、デビューした時はまさかここまで化けるとは全く想像していなかったな…。
1.SUMMER BREEZE
2.エマ
3.チェンジユアワールド
4.マジック
5.デッドマンズチェイス
6.カウンターアクション
7.平成ペイン
encore
8.おはようカルチャー
平成ペイン
https://youtu.be/JsnxgOXXwhA
やはり見たバンドがほとんど入場規制になっていたのを見ると、キャパに対してチケットを出し過ぎなんじゃないかとも思うが、それはこのイベントに出ているアーティストのライブを見てみたいと思っている人がたくさんいるからだし、実際にこうして気になっていたけれど、ライブを見たことがなかったバンドたちをたくさん見れるというのは楽しいし、刺激になる。
でも、同年代の人たちを見ていると、アンテナを張ることをやめてしまうと、すぐに新しいバンドたちについていけなくなってしまう年齢に自分が達してしまっていることを痛感してしまう。
でもまだ自分はそういう風に「最近の若いバンドはもうわからない」みたいな寒いことは絶対に言いたくないし、いつまでもこうして若いバンドがライブハウスで凌ぎを削っている姿を見ていたい。日本のライブハウスにはこんなカッコいいバンドたちがまだまだたくさんいるんだから。
Next→ 12/11 [ALEXANDROS] @Zepp Tokyo
前回はO-EASTにSUPER BEAVERや打首獄門同好会などの日本武道館ワンマン即完レベルの、どこがNEXTなんだ、っていうバンドたちが出ていたが、それによって最大キャパのO-EASTですら入場規制連発だったからか、今回はEASTにもそのレベルのバンドはほとんどおらず、前回入場規制がかかった若手バンドたちがステップアップする格好となった。
しかしながらチケットは今回も即完という、今のライブハウスシーンを沸かせる若手バンドたちの勢いを感じさせる結果なだけに、開演時間の12時ギリギリに到着すると、O-Crestのトップバッターである、reGret Girlはすでに入場規制で入れず、という実に幸先の悪い展開に。
12:30〜 ハンブレッダーズ [O-WEST]
というわけで2番手の時間からスタート。O-WESTに最初に登場するのは、バンドとしての認知度よりも、ボーカル&ギターのムツムロアキラのツイッターでのバズりツイートが話題を呼んでいる「ネバーエンディング思春期」を掲げる4人組バンド、ハンブレッダーズ。
サウンドチェックの段階でメンバーが曲を演奏していたのだが、かなり寒いらしくメンバーは皆上着を着ている。しかし本番ではTシャツ姿で登場し、ムツムロが歌い出すと吉野エクスプロージョン(ギター)とでらし(ベース)がムツムロの至近距離に寄って行って凝視する中、
「今日、ここまでノーミス!」
と豪語して4人の音が重なっていく「スクールマジシャンガール」からスタート。
思春期ならではの衝動を炸裂させるギターロック、というのは実に真っ当かつ王道なものであり、学生視点の歌詞というのもともすると「こういうのいくらでも同じことをほかのバンドが歌ってたじゃん」と思ってしまうものになりがちなのだが、そこはさすがバズりツイッターバンドマンというべきか、そうした学生や学校というテーマを独自の視点や言語で歌詞にする力がすでに備わっている。それはこれから年齢を重ねていろんなことを歌詞にしていく中でも大きな武器になっていくはずだ。
また一聴するとストレートに感じるようなサウンドもギターのフレーズや曲の一部だけスラップになるベースなど、ストレートだけれど単調ではないというツボをしっかり抑えているし、キメではでらしがベースを抱えて大ジャンプをしたりと、技術だけでなく、自分たちの抱えている気持ちを音にして鳴らしたいという衝動が滾っているのがCDを聴くよりもライブを観ると実によくわかる。
「JAPAN'S NEXT、出れて嬉しいです!まぁ僕らが優勝できなかったオーディションのイベントで…(笑)今回は出れましたけど、COUNTDOWN JAPANは出れませんでした(笑)でもROCK IN JAPAN FES.もCOUNTDOWN JAPANもいつか絶対出てやるからな!」
とロッキンのフェスが憧れであることを語ると、リリースされたばかりの2ndミニアルバム「イマジナリー・ノンフィクション」の告知をすると、その収録曲である「CRYING BABY」で
「君が涙を流さなきゃダメなんてクソくらえだ」
と聴かせるようなタイプの曲であっても自分たちが抱える怒りを放出すると、自分たちのような人間のために鳴らすロック「弱者の為の騒音を」から、ラストはロックと出会った高校時代の衝撃を思い起こさせる「DAY DREAM BEAT」で、このバンドの鳴らす弱者の為の騒音がツイッターだけでなくもっと広くて大きい場所で響く可能性を秘めていることを感じさせた。
「ネバーエンディング思春期」を掲げていても、それはいつか必ず終わる。それはそうしたことを歌ってきたバンドたちが証明してきたことでもある。果たしてこのバンドはそうした歴史を覆すことができるだろうか。それともそうしたバンドたちのように違った方向へ進化していくのだろうか。
リハ.口笛を吹くように
リハ.RADIO GIRL
1.スクールマジシャンガール
2.常識の範疇
3.エンドレスヘイト
4.CRYING BABY
5.弱者の為の騒音を
6.DAY DREAM BEAT
弱者の為の騒音を
https://youtu.be/VgBtKdKaEZ4
13:30〜 フレンズ [O-EAST]
club asiaのネクライトーキーも入場規制で全く入れず、そのままO-EASTで待機。今やZeppや日比谷野音でワンマンを行なっているだけに、この日の出演者の中では最大規模の集客力を持つフレンズ。さすがにO-EASTは始まる前から満員。
最近のおなじみである、山本健太(ex.オトナモード)をキーボードに迎えた6人編成で「夜にダンス」からスタートすると、三浦太郎(ギター)、ひろせひろせ(ボーカル)、長島涼平(ベース)の3人が曲中にDA PUMP「U.S.A」ダンスを始め、おかもとえみも歌いながらそれに加わるという思わず笑ってしまうパフォーマンスを見せる。演奏中にいきなりそういうことができてしまうのは凄いけれど。
外の様子がわからないライブハウスの中とはいえ、真昼間のかなり早い時間帯である。それでも続いて「DIVER」「夜明けのメモリー」と夜の曲を演奏するとO-EASTの中だけは夜であるかのよう。それはこのバンドの曲と空気が生み出すものであるが、そんな中でもひろせひろせは
「今日、この時間このステージを選んでくれてありがとう!的なMCをいろんなバンドがすると思いますが、俺が1番そう思ってるからな!(笑)」
と笑わせる。
この日はダウンなどを着たままでライブを見ている人も多いくらいに寒い気候だったのだが、O-EASTの中を昼から夜に変えてしまったように、「常夏ヴァカンス」では季節すらも冬から夏に変えてしまうくらいの暖かい空気に。今年の夏フェスでも毎回演奏されていた曲であるが、そうした場所で聴いた記憶がより一層この会場の中を夏に変えてくれる。
もはやベーシストであったことを忘れてしまうくらいに、この日も美しいボーカルを響かせていたおかもとえみがなぜか
「フレー!フレー!渋谷〜!」
と渋谷の街そのものへエールを送るという観客のみならずひろせすらも困惑してしまう天然っぷりを見せると、年明けに開催されるNHKホールワンマンの告知を、
「紅白歌合戦をやってる場所ですよ!ワンマンをそこでやるから今年の紅白は辞退したんですけど(笑)」
というひろせらしい手法ですると、ラストはバンドがCOUNTDOWN JAPANの29日に出演することを歌詞に含めるという即興性の強さを見せた「Love,ya!」でやはりO-EASTは完全に夏になるとともに、また快晴の夏の空の下でこのバンドのこの曲を聴きたいと思わせた。
もともと実績や経験のあるメンバーたちで構成されているバンドなだけに、若手と言えるかどうかは微妙なところもあるが、やはりそのライブ力というか、自分たちだけの空気を作れるということにおいては一つ飛び抜けたものがある。オシャレなバンドという位置に入れられそうでもあるけれど、そういうバンドたちとも全く違う場所にいる。
リハ.塩と砂糖
1.夜にダンス
2.DIVER
3.夜明けのメモリー
4.常夏ヴァカンス
5.Love,ya!
常夏ヴァカンス
https://youtu.be/bCQP4u6rYek
14:00〜 THE LITTLE BLACK [club asia]
昨年のRO JACK for COUNTDOWN JAPANの覇者としてCOUNTDOWN JAPANに出演、このイベントでは前回に続いてasiaのステージに立つのが、元WHITE ASHののび太(ボーカル&ギター)と彩(ベース)にマット(ドラム)を加えたスリーピースバンド、THE LITTLE BLACKである。
夏の時と同じように下手ののび太と上手の彩が向かい合うような形で間にマットのドラムセットというフォーメーションなのだが、前回の出演から今回に至る間に初の音源となるミニアルバムをリリースしており、ようやく本格的なスタートを切ったと言えるのだが、やはり「どういう感じなんだろうか」と身構えて見ていた前回とは違い、タイトかつソリッドなスリーピースのロックンロールがやりたいバンドというメンバーの意志がハッキリとわかっているだけに、余計な意識を持つことなく、このバンドのロックンロールに浸ることができる。
シンプルであるが故に一つ一つのサウンドはしっかりと聞き取れるのだが、だからこそ改めてのび太のギターを聴いていると、これをスリーピースで、かつ歌いながら弾いているというのはとんでもないことをしているんだな、とWHITE ASH時代から数々のキラーリフを生み出してきたのび太のギタリストとしての技術の高さに改めて驚かされる。
初のミニアルバムが出たばかりだというのに早くも披露された新曲は彩のコーラスがほぼ全編に渡って重なっているという、メロディが際立った曲であり、のび太が「1番気に入っている曲」というのも頷けるだけに、なぜこの曲をミニアルバムに収録しなかったのか、とも思うが、それ故に次の作品が楽しみにもなる。
「もう今年も終わりますけど、2018年は皆さんはどんな年でしたか?よくよく考えたら、まだ大正生まれの人って生きてるだろうから、大正、昭和、平成、来年からの新年号って4つの年号を生きてるんだよね〜。すごいよね〜」
とさすがにキャリアがあるのび太だからか、全くフレッシュさを感じさせない話を始めたと思ったら、
「我々は去年のちょうどこの時期にRO JACKで優勝して、COUNTDOWN JAPANに出させてもらって。また、次は自分たちの力であの場所に立ちたいな。来年からは夏フェスにも出たいです」
と、去年「なんでわざわざのび太の新しいバンドがオーディション枠にいるんだ。優勝するに決まってるだろ」と言われまくっていたのを、自身が
「どうしてもあの場所からスタートしたかった」
と話していた通り、のび太にとってはWHITE ASHとしても優勝してシーンに登場し、実質的に多くの人にとってはWHITE ASHのラストライブの場にもなってしまったCOUNTDOWN JAPANに特別な思い入れがあるのだろう。
WHITE ASHとして出ていた頃に比べるとフェス自体もそれぞれのステージも巨大化しているため、集客力的にはまだ普通に出演できるような状況ではないのだが、そうした目標がちゃんとバンドにあるからか、夏の時よりもはるかにライブが良くなっていた。わずか半年でここまで良くなるということは、このバンドにはまだまだ伸び代があるということ。
実際、夏の時はライブが進むに従って観客の人数がかなり少なくなってしまっていたのだが、この日は最後まで満員と言ってもいい状態で、みんなしっかりこのバンドのロックンロールに向き合っていた。のび太と彩のロックはまだまだ終わっていない。それをこれからこのバンドで証明していくはず。
ドロミズ
https://youtu.be/6pdtKKo6tfY
15:00〜 FINLANDS [club asia]
前回もこのイベントに出演しているのだが、前回は入場規制で入れなかったため、今回ようやくライブを観れる機会が巡ってきた。(入場規制を避けるため、本来予定に入れていたO-WESTのニガミ17才は諦めることに)
FINLANDSは塩入冬湖(ボーカル&ギター)とコシミズカヨ(ベース&コーラス)の女性2人組バンドで、男性のギターとドラムのサポート2人を加えた4人編成。
時間になると、FINLANDSという名前を象徴するような衣装である厚手のコートを着たメンバーたちがステージに登場し、
「FINLANDSです。よろしくお願いします!」
と塩入が挨拶すると、キャッチーなリフ連発のギターが引っ張る疾走感の強いギターロック「ウィークエンド」からスタートするのだが、それよりも塩入の、金切り声と言っていいようなボーカルがやはり凄い。ソロでも活動しているというのもこの声があってこそだが、まるでロックンロールを歌うために生まれてきたかのような声である。好き嫌いは間違いなく分かれるだろうし、歌詞が聞き取りにくい時もたまにあるのだが、サウンドと相まって、可愛さなんか一切ない、ひたすらにカッコ良さしか感じないロックになっている。
塩入が早くもギターを下ろすと、全然バラードではない「バラード」ではasiaのステージの端にある階段のところまで行って、そこでマイクを持って歌うというこの会場だからこそのパフォーマンスも展開し、代表曲と言っていい「ゴードン」「恋の前」という曲では塩入とコシミズがそれぞれステージ前の台に立って演奏し、客席の温度はどんどん上昇していき、コートを着ているのが暑くないのかな?と思うくらいに会場が熱気に満ちていく。
今年リリースの最新アルバム「B II」の初回盤DVDに収録されたライブ映像を見て、自分は一刻も早くこのバンドのライブを観なくてはならないという気持ちを駆り立てられたのだが、そのDVDの時もそうだったように、塩入は歌う時にたまにじっと一点を見つめながら歌う時があって、その一点はカメラだったり客席だったりするのだけれど、その表情が女性の恋愛における怨念の強さを感じさせる歌詞により一層説得力というか、怖さにも似たものを感じさせる。
塩入「渋谷JACKって私は呼んでたんだけど、ジャパネクってみんな呼んでるらしいね」
コシミズ「その方がキャッチーだからじゃない?」
塩入「渋ジャはダメなの?」
コシミズ「…それならジャパネクの方が良くない?(笑)」
というライブ中の緊張感と真逆のガールズトークの延長のようなMCから、ラストは全然エレクトロサウンドじゃない「electro」から、バンドの演奏がさらに力強さを帯びるキラーチューン「クレーター」と、ミドル〜バラードと言ってもいい名曲も多数あるバンドではあるが、30分という短い時間なだけに、駆け抜けるように疾走感のある曲のみを連発したライブとなった。
チャットモンチーが新たな扉を開いた日本のガールズバンドシーンにおいて、こんなにもロックンロールさを強く感じさせるバンドがいただろうか。いや、いたとしてもこのバンドほどそのシーンに風穴を開けてくれるような予感がするバンドはいなかった。何かが変わるような気がひしひしとしているし、それは間違いなくこの国のガールズバンドシーンをさらに強いものにしていくはず。そのカギはやはり可愛さやオシャレさではなく、ロックバンドだからこそのカッコ良さだ。
リハ.カルト
リハ.Hello Tonight
1.ウィークエンド
2.バラード
3.ゴードン
4.恋の前
5.electro
6.クレーター
クレーター
https://youtu.be/Fyh1VyBgFJY
15:30〜 ReVision of Sence [O-EAST]
SNSなどで良くも悪くも何かと話題を振りまいているバンド、ReVision of Sence。すでにROCK IN JAPAN FES.にも出演しており、堂々の最大キャパ・O-EASTに出演。
このバンドの象徴的なデザインのコートを着た河井数馬(ボーカル)が
「頭振れ!」
とヘドバンを促したりと、フロントマンとしてライブを引っ張っていきながら歌うのだが、
「ブスは美人には勝てません!」
という「ヨノナカカオ」など、好き嫌いがハッキリ分かれそうというか、こうした歌詞に嫌悪感を抱くかどうかでこのバンドへの向き合い方は全く変わってくるし、それに加えてファンの「害悪キッズ問題」やメンバーの違法音楽アプリ肯定発言、さらには昨年のBAYCAMPにおける中に人が入っているのに女子トイレの上に乗って歌うというパフォーマンスなど、事あるごとにネット上で炎上しまくってきたバンドであるだけに、なかなかフラットな視点で評価したりライブを見たりするのが難しいバンドではあるのだが、打ち込みのサウンドも取り入れたラウドなロックをキャッチーなものにしてみせるセンス、そうした楽曲をしっかり音の強さと重さを兼ね備えた形で演奏することができるメンバーそれぞれの技術も実に高い。派手な髪色や衣装なども相まって、軽い感じで適当に音楽をやっていると見られても仕方がないが、そうした人だったらこんなライブはできない。この辺りはなんやかんや言われながらもZeppクラスでワンマンができているのも納得である。
「SNSで「いいね」を貰うことに取り憑かれた人」など、やはり曲のテーマや内容はものすごく好き嫌いが分かれるとは思うが、河井の
「俺もバンドを始めた時はONE OK ROCKみたいになれると思ってた。でもなれなかった。現実を知ったし、散々ボロカスに言われまくってきた。それでも俺たちにしかできない音楽があるはずだって思ってここまでやってきたし、こうしてライブをやっている時は俺たちが1番カッコいいと思ってる。俺はクズ人間だけど、一生ステージに立ち続けていたい。こうしてライブをやった次の日にコンビニでバイトなんかもうしたくない。俺はこれしかやりたくないんだ!」
という、ただただバンドをやって生きていきたいという純粋な心の内を曝け出したMCの後に演奏された最後の「負け続けの日々」は良くないイメージがこびりついているこのバンドの曲とは思えないくらいにストレートな、率直に言ってしまえばいい曲。
もしこのバンドがこうしたタイプの曲のみで勝負するようなバンドだったとしたら良くも悪くもイメージや立ち位置は全く違うものになっていただろうと思う。
しかし自分もクズ人間であることを自認しながら日々社会の底辺で生きているような人間であるが、クズ人間というのを免罪符にしてしまうのは良くないと思うのだ。クズ人間と他の人に迷惑をかけたり傷付けたりするのは全く違う。どれだけ自分を卑下してもいいからそこだけは履き違えないでいて欲しい。
このバンドについて回るイメージやアンチな人の多さはバンド自身の行動や発言が招いてしまったものでもある。それだけに河井の
「もっと評価されたい」
という発言は、「それなら奇をてらったことをしなくてもバンドの力のみで勝負すればいいのに」とも思うけれども、そうしていたらキュウソネコカミやヤバイTシャツ屋さん的な位置にも行けた可能性すら感じるポテンシャルはあるバンドだと思うのだが、ある意味では今のやり方こそが自分たちのやり方なんだろう。
そうした自分が好きな、誤解されたりナメられたりしていると未だに思っているバンドの名前を出してしまうくらいに、このバンドのライブからはそうしてナメられたりバカにされまくってきたことに対する悔しさが滲み出ていた。もちろんそれもまたバンド自身が招いてしまったことで…と言うとひたすらに同じことがループしまくってしまうのだが、ライブを見ればこのバンドのそうした人間臭い部分、この人たちがやっているからこういう音楽になるんだな、という人間らしさは確かに感じることができる。それさえちゃんとあれば、いつかこの状況をひっくり返せる日が来る可能性は必ずある。ロックバンドとしてずっと生きていきたいというのが本音ならば、いつかその日は来るはずだ。
1.ダメ、ゼッタイ、現実逃避
2.ヨノナカカオ
3.I'm a クズ人間
4.いいねパラサイト
5.負け続きの日々
ダメ、ゼッタイ、現実逃避
https://youtu.be/Wy_4xQ_3Zso
16:00〜 め組 [duo MUSIC EXCHANGE]
このイベントがサーキットフェスになる前から何度も出演しており、ある意味ではジャパネクの象徴的な存在とも言える、め組。前回はO-WESTに出演したが、今回は一つ大きなduo MUSIC EXCHANGEへ駒を進めた。
「サーキットイベントの常習犯こと、め組です!今日渋谷で1番良いライブをしに来ました!」
とメンバーが登場して菅原達也(ボーカル&ギター)が挨拶すると、いきなり観客に「ちゅるりらら」というフレーズの合唱を促す「悪魔の証明」からスタートし、何回か練習してから本番へ突入すると大きな合唱が起こり、菅原は実に満足そうな笑顔を浮かべていた。
夏の時点では新曲として披露されていた、何かと普通なようでいて全く普通ではないこのバンドの曲の中でも割と普通度が高い「Amenity」はすっかり定番曲化してきているし、リリース前からライブで毎回のようにやってきたからか、新曲とは思えないくらいに完全に馴染んできている。
そうして夏からのわずかな期間でバンドのレベルがさらに上がっているのが一見するだけでよくわかるのだが、それはサポートメンバーであるリズム隊の力強さもあるだろうけれど、ツアーやフェスを経てメンバー各々の力がさらに向上しているというのがデカい。特に元から流麗なピアノの音でこのバンドの持つポップさをさらに引き出していた紅一点メンバー・出嶋早紀はもはや覚醒を迎えたかのように完全にバンドのサウンドを牽引するようになっている。それによってさらにバンドのポップさが前面に出ているし、このバンドにピアノのメンバーがいる意味が明確になっている。
菅原達也が
「みんな辛い恋愛とか色々経験してると思うんだけど、俺も前に付き合ってた彼女とそういうことがあって。浮気されたんですよ。で、浮気されたのが悔しくて彼女に問い詰めたら、
「私は浮気をしているつもりじゃなかった」
って言われて(笑)
こいつ、何言ってんだろうなって思ったんだけど(笑)、きっとそのくらいの本気な恋愛をしていたんだろうな、って思ったら本当に悔しくて。次にやる曲を聴くといつもその時のことを思い出します」
と菅原達也らしい失笑の嵐が沸き起こったMCの後に演奏されたのは「僕らの匙加減」。なかなか一気に突き抜けることはできないが、夏とほとんどやってる曲は変わらないのに、夏よりもはるかに良いライブだった。フェスやサーキットは同じ時間にやっているアーティストによって動員力がダイレクトに反映されるが、このduoのキャパくらいは余裕で埋まってもいいバンドだと思う。
1.悪魔の証明
2.Amenity
3.お化けだぞっておどかして
4.500マイルメートル
5.僕らの匙加減
Amenity
https://youtu.be/DksDMNhWRIw
16:30〜 マカロニえんぴつ [O-EAST]
夏のこのイベントではO-WESTが入場規制。初出演したROCK IN JAPAN FES.でもWING TENTを満員に埋め、今回は最大キャパのO-EASTに出演となる、マカロニえんぴつ。
期待度の高さを表すようにO-EASTの中は超満員。サポートメンバーのドラムセット以外の4人は横一列に並ぶというフォーメーションで、キーボードこそあれど機材が多くないバンドなのでステージがどことなく大きく見える中、音を鳴らし始めると同時にその上にコーラスが重なっていくと、「洗濯機と君とラヂオ」からスタートするのだが、気合いという気負いというか、そういった類のものがあるのか、曲のテンポが本当に速い。それは30分の持ち時間がありながらも25分で7曲を演奏した走りっぷりを見せたロッキンの時もそうだったが、そのスピード感に加え、曲のタイプ的には聴かせるように演奏されてもおかしくないような「girl my friend」にしても、はっとり(ボーカル&ギター)の歌い方がよりロックさを感じさせるようなものになってきている。それは先日まで行われていたツアーの中で得てきたものなんだろうか。
この日各会場の転換中のBGMにも起用されていた最新シングル曲「レモンパイ」はゆったりとしたムードに浸らせる、その前に演奏された曲たちとは全く違う空気を持つ曲だが、そうしたタイプの曲がイントロが鳴らされた時点でたくさんの人が嬉しそうなリアクションを取っていたのが、今のこのバンドの持つ勢いや追い風っぷりを感じさせる。そしてだいぶ寒さを感じるような気候になってきただけに、温かいレモンパイを食べたいな、とすら聞いていて思ってしまう。
このバンドにおけるライブでの大合唱フレーズを含む「ワンドリンク別」からの踊りだしたくなるようなリズムの「ハートロッカー」で初めて立つというこのO-EASTの会場を完全に掌握すると、はっとりは
「ジャパーン!!!」
と叫ぶ。これははっとりが髪型を真似ているという奥田民生(ソロデビュー時の)がロッキンのフェスに出た時に叫ぶフレーズへのオマージュであろう。
「クソナメられた名前のロックバンドですけど、こうしてこのイベントで1番広いステージに立てて、こうして皆さんに集まってもらえて、本当に自信になります。
ロッキンオンには夏のフェスにも出させて貰っていて、COUNTDOWN JAPANでも12/31っていう大事な日を任せてもらって。信頼されてるんだな、とも思うけれど、信頼されてるっていうことはいつか裏切られるかもしれないっていうことでもあって。そうならないように努力し続けたいと思います」
とはっとりは最後に胸のうちを明かしたが、決してカッコいい名前のバンドではないだけに、それが理由でスルーされたり、ナメられたりすることがあって、それによってバンドが悔しい思いをしてきた、ということが滲み出ていた。
だからこそこのバンドはそうした名前だけでナメられるという、ある意味では見た目だけで判断されること以上にキツい経験を何度もしてきているし、それを覆そうとしている。なぜこのバンド名にしたのかはわからないが、曲を聴けば歌詞や言葉にこだわっているバンドだということはすぐに理解できるし、そんなバンドが適当な理由でこの名前を名乗るわけがない。
そうした思いを全て乗せて演奏していたからこそ、ラストの「ミスター・ブルースカイ」は、これまで以上にはるかに、届いていた。
1.洗濯機と君とラヂオ
2.girl my friend
3.レモンパイ
4.ワンドリンク別
5.ハートロッカー
6.ミスター・ブルースカイ
レモンパイ
https://youtu.be/AiFCRd9C_IA
17:00〜 2 [duo MUSIC EXCHANGE]
今や俳優としてもおなじみになりつつある古舘佑太郎と、銀杏BOYZのサポートメンバーでもある加藤綾太らによるバンド、2。こちらも前回に続いての出演で、前回はO-WESTで入場規制がかかっただけに、一つ広いキャパのduoに今回は出演。
赤坂真之介(ベース)が素肌にジャケット、古舘もワークシャツという汗をかきまくる前提のような出で立ちでメンバーが登場。加藤はトレードマークとも言える長い髪がかなりスッキリしている。
ライブ会場限定シングルを先月リリースしたばかりなのだが、いきなりその収録曲「ヤケのダンス」からロック、バンドの衝動を飛び散らせるかのようにしてメンバーは演奏し、古舘は歌っていく。紅一点ドラマーであるyuccoもそれは他のメンバーと同じなのだが、古舘に関してはThe SALOVERS、加藤に関しては銀杏BOYZでのライブと全く変わらず、上手い下手ではなくどれだけ音に熱さや衝動を込められるか、というように音を鳴らしているだけに、見ているこちら側も熱くならずにはいられないし、2人が全く変わらないのは本当に嬉しいし頼もしい。
何よりもThe SALOVERS時代から、ロックが衝動の音楽だとするならば、このバンドほどロックなバンドはいないと思っていた自分にとっては古舘のバンドから今も同じことを感じられるというのは、お互いに変わってないんだな、と再確認できる。
しかしながら凄まじいペースである。30分のうちに曲を演奏している以外の時間が全くない。そこにSFをテーマにしたと思われる「SとF」という新曲も交えていくのだが、曲そのもののテンポも速くなっていることにより、さらに衝動を強く感じさせる。
そんな中でも生活のふとした出来事を歌詞にした「ニヒリズム」、独特の視点による「ロボット」と、かつてThe SALOVERSのプロデューサーであった、いしわたり淳治に歌詞を認められた古舘の作家性はさらに鋭さを増している。
結局一切間をおかずに、キメでは古舘、加藤、赤坂が楽器を抱えてジャンプするという、ひたすら衝動が溢れるギターロックを連発し、古舘は新曲の紹介以外に一切喋らず、30分で10曲というパンクバンド顔負けのテンポで突っ走った。まるでこのバンドの周りだけは時間が流れるスピードが他とは違うかのように。
1.ヤケのダンス
2.Anthem Song
3.PSYCHOLOGIST
4.急行電車
5.SとF
6.ニヒリズム
7.ロボット
8.DEAD HEAT
9.Family
10.ケプラー
ケプラー
https://youtu.be/-wMVbr7AlE8
17:30〜 MOSHIMO [O-WEST]
前回はO-EASTに出演していた、MOSHIMO。今回はO-WESTに出演となったが、やはりライブ開始前から超満員。
見るたびにライブキッズらしさを増す男性メンバーたちに続いて、のっけから超ハイテンションな岩淵紗貴(ボーカル&ギター)が
「命短し恋せよ渋谷!」「命短し恋せよジャパネク!」
とコール&レスポンスを始め、温まったところで「猫かぶる」を歌い始めてスタートする。この段階で完全に空気を自分たちのものに変えてしまっている。
「冬になりましたんで、厚着してる女の子って良いですよね〜」
という一瀬(ギター)と宮原(ベース)の男子トークに岩淵が
「お前らキモいな!」
と誰よりも強いツッコミを入れると、配信リリースされたシングル曲「電光石火ジェラシー」では
「セーフ アウト よよいのよいよい!」
という野球拳のようなサビのフレーズでまたもコール&レスポンスを展開。男性メンバーのみならず観客すらも力技で自分たちの空気に包んでしまう岩淵のバイタリティというか、テンションは凄まじいものがあるというか、ここまで無垢な笑顔で思いっきりコールされるとレスポンスせざるを得ない。
しかし目立つのは岩淵だけかというとそんなことはなく、確かにライブそのものの流れを作っているのは岩淵なのだが、1年くらい前に初めてライブを見た時は岩淵に引っ張られているおとなしい男子たちというイメージだったのが、ライブキッズ的な見た目以上に音が本当にたくましくなっている。メンバーの構成的にもひたすらポップなイメージが強かったが、サウンドはもはやそういう客層のフェスやライブに出たらモッシュやダイブが起こってもおかしくないと感じるくらいのレベルでポップな中にもラウドさを含むようになっている。
そして早くもラストの「命短し恋せよ乙女」では恒例の観客の名前を聞いて「命短し恋せよ○○」とクリスマスに予定のない寂しい観客にエールを送るべく歌うのだが、
「私もキツい恋愛経験をしたことがあって。好きな人から呼ばれて、嬉しくて会いに行ったら、ふとした時に彼の携帯が鳴ったの。見たくなかったんだけど、見ちゃうじゃん?で、見たら明らかに彼女から連絡が来てたの。あ、私は2番手3番手なんだな、って。彼女には勝てないんだな、って。でもいつか絶対彼女に勝てるような女になってやる!ってその時に誓ったの!」
という実体験を若干涙ぐんでるような感じすらしながら話すと、そうした経験の悔しさを全て曲にぶつけるように
「命短し恋せよ乙女!」
と叫び、観客の声もさらに大きくそこに乗っかっていった。
ライブは見るたびにはるかに良くなっている。しかしこの持ち時間でコール&レスポンスや「命短し恋せよ乙女」の観客応援のくだりを入れられると、どうしても4曲しかできない。今のスタイルはMOSHIMOならではのものとも言えるが、せっかく良い曲が他にもたくさんあるだけに、この曲数はもったいないし、物足りなく感じてしまう。何よりも持ち時間が同じだと毎回同じ曲しかできなくなってしまう。果たしてこのままこのスタイルを貫くのか、それともいつかは変わるのか。そこも含めて今後も注目していきたいバンドである。
1.猫かぶる
2.電光石火ジェラシー
3.触らぬキミに祟りなし
4.命短し恋せよ乙女
電光石火ジェラシー
https://youtu.be/jAlK41ICgEw
18:30〜 ズーカラデル [O-WEST]
この前の時間のO-CrestのTrack'sが入場規制になっていたため、そのままO-WESTに残ることに。今年、スピッツの主催ライブにも出演し、そのライブを見たVIVA LA ROCKの主催者である鹿野淳が一目惚れしたバンド、ズーカラデルが初出演。
もう見るからに素朴な、という言葉しか出てこない、まるで北海道の新じゃがのごとき出で立ちの3人が登場すると、「誰も知らない」からじっくりとスタート。その見た目以上にサウンドも実にシンプルで機材も少ないし楽器を変えることもない。
全く激しい音楽ではない、吉田崇展(ボーカル&ギター)の歌を聴かせるような楽曲と奇を衒ったような単語こそないが、情景が浮かんでくるような歌詞は、メンバーの出で立ちも相まって、「さよならストレンジャー」期のくるりを彷彿とさせる。
それくらいシンプルだとサウンドも単調だったりして飽きてしまいがちなのだが、そうならないような音の運びや選びが随所に見られ、それはシンプルなサウンドであるからこそしっかりと聴き取れるのだが、そうしたフックを最も感じる鷲見こうたの、いきなり歪ませたり、予想もしないような音の動きを見せるベースは只者ではないことを予感させる。
激しいサウンドのカッコいいロックというわけでもなければ、オシャレなシティポップというわけでもない、洋楽の影響もあまり感じないという、実に形容しづらいし多分今のシーンには同じようなバンドがいないだけに共闘関係を築けそうなバンドも見当たらないので、実に評価されにくいバンド(これまでにもそういうバンドはたくさんいた)だと思うし、聴き心地としてはポップという一言に尽きるのだが、「アニー」での吉田のギターとウキウキするようなサウンドには間違いなくこのバンドがロックの影響下にあることがわかるし、時折3人が顔を見合ってタイミングを合わせたりする様子には、このバンドがこの3人でないとできないことをやっているということをうかがわせる。
「恋と退屈」では吉田が入りのギターをミスしてやり直すという場面もあったが、その吉田の
「アリガトッ!」
という外人が言うような「ありがとう」の言い方はなんなんだろうか、と思ってるうちに気づいたらラストの「漂流劇団」を演奏していた。
「あなたを笑わせたいのだ ただ抱き合って喜びたいのだ 彷徨う僕らの日々の向こう」
というドラマチックさのかけらもない我々の日常のサウンドトラック。そんな何気ない日常のふとした瞬間こそが幸せであることを教えてくれる音楽。吉田がミスったぶんだけか時間ちょっと押してたけど。
1.誰も知らない
2.ダンサーインザルーム
3.アニー
4.夢の恋人
5.恋と退屈
6.友達の歌
7.漂流劇団
漂流劇団
https://youtu.be/nRhycautvCE
19:00〜 climbgrow [club asia]
滋賀県出身の若きロックンロールバンドclimbgrow、このイベントに襲来。club asiaの客席は開始時点から満員である。
革ジャンや黒シャツなど、黒で統一された衣装のメンバーが「極彩色の夜へ」を演奏し始めると、そのあまりの音圧の強さと、杉野泰誠のひたすらに咆哮するようなボーカルに圧倒されてしまうし、その中でキラリと光るサビのキャッチーさも感じる。
「SCARLET」では杉野が客席の柵に足をかけて歌うという前のめりな姿勢を見せるのだが、あまりに前のめり過ぎて思わず客席に突入してしまわないか心配になる。(ロッキンオン主催のフェスなので、ダイブをしたり煽ったりすると出禁になってしまう)
しかしながらこの若さにしてよくぞこんな濃いロックンロールを選んだな、というくらいに聴く人を選ぶような音楽をやっているのだが、そこに一切の迷いがないことは演奏中の姿を見ていても、杉野の
「俺たちが日本のロックンロール代表!climbgrowだー!」
という強烈なシャウトからもよくわかる。
そしてそのバンドの力に観客もダイレクトに反応して、全ての曲のサビで拳が上がっていた。てっきりみんなどんなバンドか知らないけどとりあえず見てみよう、的な感じで集まっているのかと思っていたけれど、そうではなくてこのバンドのロックンロールを浴びたくてここに集まっていた。その人たちの大半がメンバーと同年代くらいの20歳前後の人たちというあたりに、ここから何かが変わっていきそうな予感を感じる。
「いろんなバンドが出てる中で同じようなことをやってもしょうがない。俺たちは俺たちにしかできないロックンロールをやってやる。今、俺たちはツアー中で、今度、下北沢のワンマンライブでまた東京に来るんで、是非見に来て欲しい。まだチケット余ってるんで」
と杉野は自分たちの覚悟を、歌ってる時の迫力とは違う好青年のような表情で語ったのだが、「チケットまだあります」ではなく「余ってる」と言った。そこには「なんでこのカッコよさがわかんねぇんだ」という状況への苛立ちもあり、チケットを売り切ることのできない自分自身への不甲斐なさも感じさせた。
最新アルバム「CROSS COUNTER」がリリースされたばかりという状況であり、そのツアー真っ只中ということで、後半には「CROSS COUNTER」の収録曲も並んだのだが、とりわけ
「差し込めクロスカウンター 光れ俺たちの時代だ」
とタイトルを交えて宣誓する「未来は俺らの手の中」はこれまでの曲以上に広いところに響く予感がしている。というか「CROSS COUNTER」は間違いなくそれを意識して作ったアルバムだと思う。
そしてラストは杉野のポエトリーリーディングのような言葉が次々にがなり立てるように吐き出されていく「風夜更け」。ロックンロールというスタイルを選んだのはもちろんロックンロールが好きだったからなのは間違いないが、そんなバンドのボーカリストがこんなにもロックンロールバンドでしかないような声を持っていたのは奇跡としか言いようがない。まだ20代前半という若さだが、ライブでの地力という面では、かつてOKAMOTO'Sや黒猫チェルシーというやってる音楽的にもライブの強さ的にも到底10代とは思えなかった「恐るべき子供たち」がシーンに登場してきた時を彷彿とさせる。
ロックンロールというスタイルのバンドがなかなかおなじみの存在になれないロッキンオンのフェスのこれからを背負ってもらいたい存在。
1.極彩色の夜へ
2.RAIN
3.SCARLET
4.ラスガノ
5.LILY
6.未来は俺らの手の中
7.風夜更け
未来は俺らの手の中
https://youtu.be/u4a8Tim8Xa0
19:30〜 嘘とカメレオン [O-WEST]
前回はclub asiaに出演した、嘘とカメレオン。今回はO-WESTに登場。
満員の観客の前に最初に現れたのは、タイムマシーン3号の関太ライクなギタリストの渡辺壮亮。すると冬をテーマにした朗読を始めて観客の意表を突いている間に他のメンバーが登場して音を鳴らし始め、最後に赤と白の着物を着た紅一点ボーカルのチャムが登場し、「百鬼夜行」からスタート。
ピンクと紫が合わさったような独特な髪色のベーシストの渋江アサヒがプロフィールに載せているように、9mm Parabellum Bulletのようなメタリックなギターフレーズと、SiMのような重いラウドなサウンドに和のエッセンスなどを配合した、性急なギターロックを鳴らすバンドである。
それだけに聴いているとモッシュやらツーステやらをするような絵がすぐに浮かぶのだが、若い人がメインであるにもかかわらず客席は非常に大人しいというか、じっくり聴いているような感じだったのが意外。本人たちが出れることを本当に喜んでいたCOUNTDOWN JAPANというフェスの舞台ではそのノリも少しは変わるのだろうか。年明け後のASTRO ARENAという休憩するにはうってつけの時間と場所での出演であるが。
「かごめ かごめ」
のフレーズが和のテイストを強く感じさせながらもキャッチーに響く「フェイトンに告ぐ」、観客に「アン ドゥ トロワ」のカウントを合唱させる「JOHN DOE」と、1stフルアルバム「ヲトシアナ」からの現状のベスト的な内容。
渡辺はMC中にコーラのペットボトルを開けて「プシュ」という音を響かせ、チャムは着物を着ているからか間奏では腕を組んで首を上下に振るなど、メンバーそれぞれのキャラクターもキャッチーでありながら実に濃い。
「N氏について」では曲中に首の運動として、全員で上を向いて下を向いて左を向いて右を向いて…と実に地味極まりない一体感を醸し出す。フィジカルに訴えかけるようなサウンドのバンドであるにもかかわらず、一切のモッシュもない代わりにこうした動きがあるのは実にシュール。
そしてラストはやはり再生回数300万回を突破している、バンドの代表曲「されど奇術師は賽を振る」でブチあげるようにして終わったのだが、あまりにもバンドの演奏とサウンドが強すぎるだけに、ボーカルが物足りなく感じてしまう。でもそれはメンバーが多大な影響を受けているであろう9mmとかも最初はそうだった。これからさらに場数を踏んで経験と技術が増していけばそれは必ず克服できるはず。その時にはもっと大きな会場でメンバー以上に観客が暴れまくっているような光景を見れるようになっているだろう。
1.百鬼夜行
2.フェイトンに告ぐ
3.JOHN DOE
4.N氏について
5.されど奇術師は賽を振る
されど奇術師は賽を振る
https://youtu.be/lscuxZT45Io
20:30〜 go! go! vanillas [O-EAST]
いよいよこの長い一日も終わりの時を迎えている。今回のこのフェスのメインステージのトリを務めるのは、過去に何度もJAPAN'S NEXTに出演している、go! go! vanillas。ついにラスボス的な存在にまで成長してこのイベントに帰還。
サウンドチェックの段階でメンバー全員が登場して観客を喜ばせると、おなじみ「We are go!」のSEでメンバーが登場し、冬にもかかわらず「SUMMER BREEZE」で決して冷たくないさわやかな風を吹かせてスタート。
打首獄門同好会、yonige、夜の本気ダンス、SUPER BEAVERという、ロッキンならLAKEかPARK、COUNTDOWNならGALAXYに出るようなバンドたちがO-EASTに居並んだ前回とは異なり、そうした巨大なステージに出ているバンドは今回はこのバンドだけ。なのでもはやNEXTという感じでもないし、立ち位置的には反則的な存在であるのだが、やはりライブの爆発力や見せ方、演奏や歌の技術など、小さいライブハウスを主戦場としているバンドたちとは何レベルも違うような強いオーラを感じるくらいにすらなっている。
特に牧がハンドマイクで客席の柵に足をかけながら
「チェ チェ チェ チェンジユアワールド」
と歌う歯切れのいいフレーズが癖になる「チェンジユアワールド」からは圧巻と言ってもいいくらいにロックンロールの魔法にO-EASTが包まれる。
先日のM-1グランプリで話題を呼んだ、ジャルジャルの「国名わけっこ」を使った柳沢進太郎のコール&レスポンスは
「イン!」「ドネシア!」
「アル!」「ゼンチン!」
「JAPAN'S!」「NEXT!」
と続くと、最後に
「カウンター!」「アクション!」
とコール&レスポンスしてから「カウンターアクション」に突入するという、この辺りも実に上手いなぁと感じさせ、貫禄すら感じる。
ベースのプリティが手がけた「デッドマンズチェイス」では牧と柳沢とプリティが1コーラスごとに場所を代わりながら歌い、最後には3人が一本のマイクで歌うという盛り上がらざるを得ない光景に。かと思えばジェットセイヤはスティックを自身の後ろのイベントの幕に向かって投げまくるだけでは飽き足らず、シンバルまでもステージ横に投げまくるという破天荒っぷりを見せる。
そして牧がこのイベントへの感謝と、平成という時代の次の時代へ動いていくこと、平成のNEXTを自分たちが作っていくという決意を込めて最後に演奏されたのは平成生まれのメンバーたちが終わりゆく平成の時代に思いを馳せた「平成ペイン」で、客席ではMVのダンスを踊る人が続出。その姿を見て、このバンドがロッキンオンのフェスを担う存在になっているということを改めて実感したのだった。
アンコールでは牧の誕生日を祝って客席から「ハッピーバースデー」の合唱が起こるのだが、当の牧は
「嬉しいけど、俺の誕生日は明日だから(笑)」
と至って冷静なままでNEXTの新しいカルチャーを切り拓くように大きな合唱が起きた「おはようカルチャー」でこのイベントの未来、日本のロックバンドの未来にまばゆい光を照らしてみせたのだった。
今やロッキンオンのフェスでは2番目に大きなステージですら入場規制がかかるくらいの人気バンドにまで成長したが、ライブを観るとなぜこのバンドがここまで来れたのかがよくわかる。きっと来年は武道館クラスでワンマンをするはず、と思うと、ライブはやはり文句なしに良かったが、他の出演者と同じ土俵で比べられるような存在ではもはやない。それくらいにあらゆる面でもうレベルが違うところまでこのバンドは到達している。しかし、デビューした時はまさかここまで化けるとは全く想像していなかったな…。
1.SUMMER BREEZE
2.エマ
3.チェンジユアワールド
4.マジック
5.デッドマンズチェイス
6.カウンターアクション
7.平成ペイン
encore
8.おはようカルチャー
平成ペイン
https://youtu.be/JsnxgOXXwhA
やはり見たバンドがほとんど入場規制になっていたのを見ると、キャパに対してチケットを出し過ぎなんじゃないかとも思うが、それはこのイベントに出ているアーティストのライブを見てみたいと思っている人がたくさんいるからだし、実際にこうして気になっていたけれど、ライブを見たことがなかったバンドたちをたくさん見れるというのは楽しいし、刺激になる。
でも、同年代の人たちを見ていると、アンテナを張ることをやめてしまうと、すぐに新しいバンドたちについていけなくなってしまう年齢に自分が達してしまっていることを痛感してしまう。
でもまだ自分はそういう風に「最近の若いバンドはもうわからない」みたいな寒いことは絶対に言いたくないし、いつまでもこうして若いバンドがライブハウスで凌ぎを削っている姿を見ていたい。日本のライブハウスにはこんなカッコいいバンドたちがまだまだたくさんいるんだから。
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