THE PINBALLS unplugged @青山月見ル君想フ 12/1
- 2018/12/01
- 16:33
地下のライブハウスシーンを湧かせてきたロックンロールバンド、THE PINBALLSがメジャーデビュー後初のフルアルバム「時の肋骨」をリリース。その購入者限定の招待アコースティックライブは、普段は弾き語りのライブがよく行われている、青山の月見ル君想フにて昼の12:30から開催。
オシャレな街並みの青山だからこそなのか、会場の月見ル君想フはステージ後ろに満月が飾られている、吹き抜け構造の落ち着いた雰囲気の会場。ライブ会場までオシャレであるというのが青山ならではというか、なんというか。
とはいえロックンロールの荒々しさをブチまけまくってきたTHE PINBALLSのアコースティックライブはどんなものになるのか、始まるまでは全く想像がつかない。
12:30過ぎになると暗転してSEが流れ、4人がステージに登場。黒のスーツ姿というのはいつもと変わらないが、ドラムの石原はカホンの上に座り、古川、中屋、森下の3人は椅子に座るというのがアコースティックライブならでは。
「今日こうやってここに来てくださったみなさんは「時の肋骨」を手に取ってくださったということで、本当に嬉しいです。ありがとうございます。THE PINBALLS初のアコースティックライブ、いろんなことをやってみなさんに楽しんでもらいたいと思ってますんで、よろしくお願いします!」
と挨拶すると、いきなり古川がアコギを弾きながらハーモニカを吹くという形がアコースティックライブだなぁと感じさせる、「時の肋骨」からこの時間にピッタリの曲である「ヤンシュバイクマイエルの午後」からスタートするのだが、中屋はエレキギターをスライドさせながら弾くというスタイル、森下は足を組みながらベースを弾き(立って弾くより疲れるらしい)、石原はいつもよりもシンプルなセッティングのドラムを叩くというよりは奏でるといった感覚。
古川はこうしてアルバムを買ってくれた人たちが来てくれているということが本当に嬉しいようで、何回も感謝の言葉を口にしながら、
「「時の肋骨」の曲だけじゃなくて、いつもライブでやってるような曲をいつもと違う形でやったら楽しんでもらえるんじゃないか、と中屋が言っておりましたので、いつもライブでやってる曲をいつもと違う形で」
と言って演奏されたのはバンドの代表曲の一つと言ってもいい「片目のウィリー」であるが、古川のがなり立てるようなボーカルもどこか柔らかめになり、普段はメロディの裏でギターを弾きまくる中屋はアコギを爪弾き、ロックンロールバンドとしてのこのバンドの重さを支える森下と、ロックンロールの疾走感を担う石原のリズム隊もいつもよりも古川の歌に寄り添うように演奏している印象。初めてのアコースティックライブとはいえ、バンドが練習を重ねてこの日に臨んでいるのがわかる。
THE PINBALLSはこれまでも「四季」「1年」など、アルバムにはコンセプトを持たせて制作を行ってきたが、「時の肋骨」のコンセプトは「1日」。12曲を1曲2時間という設定で作ることによって、1日の流れを作り出している(アルバムの歌詞カードの形なども実にコンセプチュアル)のだが、その中でも同じ「12時」という1日の始まりと真ん中をテーマにした、このアコースティックライブという形に絶対似合うであろうと思うし、やるだろうと思っていた英語歌詞の「BEAUTIFUL DAY」と、アイリッシュパンクのような疾走感を持った「風見鶏の髪飾り」を続けて演奏することによって、コンセプト通りに流れで聴くのとはまた違う曲の連なりを感じさせる。「風見鶏の髪飾り」では最後のキメで石原がドラムを叩き過ぎるという、メンバーが楽しんでいるからこその想定とは異なる事態も起こる。
この会場でのアコースティックライブだからこその選曲となったのは「満月」が歌詞のテーマである「樫の木島の夜の唄」。曲が始まるとそれまでの空気とは異なり、夜をイメージしたかのような薄暗い照明の中、ステージ背面にある月が表面もくっきりと現れる見事な満月に変化していく。古川の綴る固有名詞を多く含んだ独特なセンスの歌詞は否が応でも聴いていると脳内にその情景を浮かび上がらせるが、
「青山月見ル君想フです!」
と歌い終わると同時に口にするが、これはずっと練習していたらしい。そういった生真面目な部分や、MCでのカッコつけたいんだけど、そうしようとすればするほどに不器用な面が出てきてしまうというのはルーズなイメージのロックンロールバンドのボーカル像とは真逆と言っていい。生き方がロックンロールというよりは、その古川の声やメンバーの音楽的な趣向が合わさることによって、THE PINBALLSはロックンロールバンドになるのであろう。
それは
「ちょっとせっかくだから、楽しいことがしたい。普段は手拍子を煽ったりするのは絶対嫌なんだけど、ちょっとやってみてもらってもいいですかね?」
という、「さぁこうしろ!」と強気で押していくのではない控え目な煽りもそうした古川の人間らしさを感じさせる。
そうして手拍子が鳴る中で演奏された「まぬけなドンキー」は普段のひたすらにカッコよさが前面に出ているロックンロールバンドとしてのライブよりもこのバンドの歌としてのメロディの美しさを改めて感じさせるものになっていた。
ロックンロールバンドというスタイルに限って言えば、ライブを観るとほとんどが「カッコいい」と思わせられるようなバンドばかりである。しかしそこからさらに一歩先に行くためには、カッコよさだけではない要素が求められる。その要素のうちで最も大きなものがメロディなのだが、このバンドが地下のライブハウスには数多く存在するロックンロールバンドの中でメジャーという舞台に進出することができたのは紛れもなくそのメロディというものがバンドの武器になっているからだし、こうしたアコースティックというライブではカッコよさというよりもそうした側面を持っていることを示している。
すると古川が昔は路上ライブをよく行っていて、その時によくカバー曲をやっていたという思い出を話す。そしてこういう特別なライブだからこそそのカバー曲をやりたいと思ったのだが、
「俺たちはもうプロで、良い曲がたくさんあるんだからカバー曲なんかやらなくていいだろう!」
という熱さを持った中屋に懇願してやることになったというカバー曲は、今でもテレビのCMなどでよく流れる、The Monkeysの曲を忌野清志郎が日本語で歌った「Day Dream Believer」。
「テレビで聴いたりすると、色々と思い出すことがある」
と言っていた古川は久しぶりにこの曲をライブでやることによって感極まり、思わず泣きそうにすらなっていたのだが、まだ何者でもない、観客なのか通行人なのかわからない人たちを前に歌っていた時代からこうしてCDを出して、それを買って、見に来てくれる人がいるようになった今だからこそ溢れ出るものがあったのだろう。
そしてやはり無料ライブということで尺もそんなに長くない(ただでさえアルバムも12曲で34分くらいという潔さ)だけに、あっという間のラストとなったのは、最後くらいは普段とみたいにロックンロールにいきたい、ということで、思わず立ち上がって演奏してしまうんじゃないか、と思うくらいにアコースティックであることを忘れさせるような激しい演奏となった「毒蛇のロックンロール」で、バンドだけならず観客も普段のライブと変わらないように腕を上げたりするという熱狂を生み出した。
すぐさま出てきたアンコールではなんと石原がドラムセットの前に立ってアコギを弾こうとするもブレまくりの音しか出せず、古川に
「早く返してください(笑)」
と言われる始末。しかし石原はかつてはボーカルをやっていたこともあり、ベースも弾けるというマルチプレイヤーであることが明かされると、そのまま森下と中屋の紹介もしてから、古川は自身を
「世界一のロックンロールシンガー!」
と、ちょっと恥ずかしがりながら紹介して、おそらく自身を除けば世界一のロックンロールシンガーだと思っているであろう、リアム・ギャラガーの歌うOasis「She's Electric」のアコースティックだけれでもロックンロールさがどうしたって滲み出るカバーを披露してステージを去っていった。メンバーがいなくなると「時の肋骨」の収録曲が順番通りに会場に流れていた。
初のアコースティックライブという試みは、結果的には前述の通りにTHE PINBALLSというバンドの持つポップかつキャッチーな部分を改めて感じさせるものになったし、何よりも「時の肋骨」のリリースツアー(毎度のごとくほかのバンドに比べるとリリースからツアーまでの間が結構空いている)がより一層楽しみになったというか、アコースティックライブを見た後だからこそ、このバンドの爆裂ロックンロールなライブを早く浴びまくりたいと思うものになった。
この形のライブも全然アリだと思うので、こうした特別な時くらいはまたやって欲しいと思う。
1.ヤンシュバイクマイエルの午後
2.片目のウィリー
3.BEAUTIFUL DAY
4.風見鶏の髪飾り
5.樫の木島の夜の唄
6.まぬけなドンキー
7.Day Dream Believer (忌野清志郎のカバー)
8.毒蛇のロックンロール
encore
9.She's Electric (Oasisのカバー)
片目のウィリー
https://youtu.be/4qjaz_nH6BM
Next→ 12/7 teto @恵比寿LIQUID ROOM
オシャレな街並みの青山だからこそなのか、会場の月見ル君想フはステージ後ろに満月が飾られている、吹き抜け構造の落ち着いた雰囲気の会場。ライブ会場までオシャレであるというのが青山ならではというか、なんというか。
とはいえロックンロールの荒々しさをブチまけまくってきたTHE PINBALLSのアコースティックライブはどんなものになるのか、始まるまでは全く想像がつかない。
12:30過ぎになると暗転してSEが流れ、4人がステージに登場。黒のスーツ姿というのはいつもと変わらないが、ドラムの石原はカホンの上に座り、古川、中屋、森下の3人は椅子に座るというのがアコースティックライブならでは。
「今日こうやってここに来てくださったみなさんは「時の肋骨」を手に取ってくださったということで、本当に嬉しいです。ありがとうございます。THE PINBALLS初のアコースティックライブ、いろんなことをやってみなさんに楽しんでもらいたいと思ってますんで、よろしくお願いします!」
と挨拶すると、いきなり古川がアコギを弾きながらハーモニカを吹くという形がアコースティックライブだなぁと感じさせる、「時の肋骨」からこの時間にピッタリの曲である「ヤンシュバイクマイエルの午後」からスタートするのだが、中屋はエレキギターをスライドさせながら弾くというスタイル、森下は足を組みながらベースを弾き(立って弾くより疲れるらしい)、石原はいつもよりもシンプルなセッティングのドラムを叩くというよりは奏でるといった感覚。
古川はこうしてアルバムを買ってくれた人たちが来てくれているということが本当に嬉しいようで、何回も感謝の言葉を口にしながら、
「「時の肋骨」の曲だけじゃなくて、いつもライブでやってるような曲をいつもと違う形でやったら楽しんでもらえるんじゃないか、と中屋が言っておりましたので、いつもライブでやってる曲をいつもと違う形で」
と言って演奏されたのはバンドの代表曲の一つと言ってもいい「片目のウィリー」であるが、古川のがなり立てるようなボーカルもどこか柔らかめになり、普段はメロディの裏でギターを弾きまくる中屋はアコギを爪弾き、ロックンロールバンドとしてのこのバンドの重さを支える森下と、ロックンロールの疾走感を担う石原のリズム隊もいつもよりも古川の歌に寄り添うように演奏している印象。初めてのアコースティックライブとはいえ、バンドが練習を重ねてこの日に臨んでいるのがわかる。
THE PINBALLSはこれまでも「四季」「1年」など、アルバムにはコンセプトを持たせて制作を行ってきたが、「時の肋骨」のコンセプトは「1日」。12曲を1曲2時間という設定で作ることによって、1日の流れを作り出している(アルバムの歌詞カードの形なども実にコンセプチュアル)のだが、その中でも同じ「12時」という1日の始まりと真ん中をテーマにした、このアコースティックライブという形に絶対似合うであろうと思うし、やるだろうと思っていた英語歌詞の「BEAUTIFUL DAY」と、アイリッシュパンクのような疾走感を持った「風見鶏の髪飾り」を続けて演奏することによって、コンセプト通りに流れで聴くのとはまた違う曲の連なりを感じさせる。「風見鶏の髪飾り」では最後のキメで石原がドラムを叩き過ぎるという、メンバーが楽しんでいるからこその想定とは異なる事態も起こる。
この会場でのアコースティックライブだからこその選曲となったのは「満月」が歌詞のテーマである「樫の木島の夜の唄」。曲が始まるとそれまでの空気とは異なり、夜をイメージしたかのような薄暗い照明の中、ステージ背面にある月が表面もくっきりと現れる見事な満月に変化していく。古川の綴る固有名詞を多く含んだ独特なセンスの歌詞は否が応でも聴いていると脳内にその情景を浮かび上がらせるが、
「青山月見ル君想フです!」
と歌い終わると同時に口にするが、これはずっと練習していたらしい。そういった生真面目な部分や、MCでのカッコつけたいんだけど、そうしようとすればするほどに不器用な面が出てきてしまうというのはルーズなイメージのロックンロールバンドのボーカル像とは真逆と言っていい。生き方がロックンロールというよりは、その古川の声やメンバーの音楽的な趣向が合わさることによって、THE PINBALLSはロックンロールバンドになるのであろう。
それは
「ちょっとせっかくだから、楽しいことがしたい。普段は手拍子を煽ったりするのは絶対嫌なんだけど、ちょっとやってみてもらってもいいですかね?」
という、「さぁこうしろ!」と強気で押していくのではない控え目な煽りもそうした古川の人間らしさを感じさせる。
そうして手拍子が鳴る中で演奏された「まぬけなドンキー」は普段のひたすらにカッコよさが前面に出ているロックンロールバンドとしてのライブよりもこのバンドの歌としてのメロディの美しさを改めて感じさせるものになっていた。
ロックンロールバンドというスタイルに限って言えば、ライブを観るとほとんどが「カッコいい」と思わせられるようなバンドばかりである。しかしそこからさらに一歩先に行くためには、カッコよさだけではない要素が求められる。その要素のうちで最も大きなものがメロディなのだが、このバンドが地下のライブハウスには数多く存在するロックンロールバンドの中でメジャーという舞台に進出することができたのは紛れもなくそのメロディというものがバンドの武器になっているからだし、こうしたアコースティックというライブではカッコよさというよりもそうした側面を持っていることを示している。
すると古川が昔は路上ライブをよく行っていて、その時によくカバー曲をやっていたという思い出を話す。そしてこういう特別なライブだからこそそのカバー曲をやりたいと思ったのだが、
「俺たちはもうプロで、良い曲がたくさんあるんだからカバー曲なんかやらなくていいだろう!」
という熱さを持った中屋に懇願してやることになったというカバー曲は、今でもテレビのCMなどでよく流れる、The Monkeysの曲を忌野清志郎が日本語で歌った「Day Dream Believer」。
「テレビで聴いたりすると、色々と思い出すことがある」
と言っていた古川は久しぶりにこの曲をライブでやることによって感極まり、思わず泣きそうにすらなっていたのだが、まだ何者でもない、観客なのか通行人なのかわからない人たちを前に歌っていた時代からこうしてCDを出して、それを買って、見に来てくれる人がいるようになった今だからこそ溢れ出るものがあったのだろう。
そしてやはり無料ライブということで尺もそんなに長くない(ただでさえアルバムも12曲で34分くらいという潔さ)だけに、あっという間のラストとなったのは、最後くらいは普段とみたいにロックンロールにいきたい、ということで、思わず立ち上がって演奏してしまうんじゃないか、と思うくらいにアコースティックであることを忘れさせるような激しい演奏となった「毒蛇のロックンロール」で、バンドだけならず観客も普段のライブと変わらないように腕を上げたりするという熱狂を生み出した。
すぐさま出てきたアンコールではなんと石原がドラムセットの前に立ってアコギを弾こうとするもブレまくりの音しか出せず、古川に
「早く返してください(笑)」
と言われる始末。しかし石原はかつてはボーカルをやっていたこともあり、ベースも弾けるというマルチプレイヤーであることが明かされると、そのまま森下と中屋の紹介もしてから、古川は自身を
「世界一のロックンロールシンガー!」
と、ちょっと恥ずかしがりながら紹介して、おそらく自身を除けば世界一のロックンロールシンガーだと思っているであろう、リアム・ギャラガーの歌うOasis「She's Electric」のアコースティックだけれでもロックンロールさがどうしたって滲み出るカバーを披露してステージを去っていった。メンバーがいなくなると「時の肋骨」の収録曲が順番通りに会場に流れていた。
初のアコースティックライブという試みは、結果的には前述の通りにTHE PINBALLSというバンドの持つポップかつキャッチーな部分を改めて感じさせるものになったし、何よりも「時の肋骨」のリリースツアー(毎度のごとくほかのバンドに比べるとリリースからツアーまでの間が結構空いている)がより一層楽しみになったというか、アコースティックライブを見た後だからこそ、このバンドの爆裂ロックンロールなライブを早く浴びまくりたいと思うものになった。
この形のライブも全然アリだと思うので、こうした特別な時くらいはまたやって欲しいと思う。
1.ヤンシュバイクマイエルの午後
2.片目のウィリー
3.BEAUTIFUL DAY
4.風見鶏の髪飾り
5.樫の木島の夜の唄
6.まぬけなドンキー
7.Day Dream Believer (忌野清志郎のカバー)
8.毒蛇のロックンロール
encore
9.She's Electric (Oasisのカバー)
片目のウィリー
https://youtu.be/4qjaz_nH6BM
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