NICO Touches the Walls ”NXA” TOUR -Funny Side- @幕張メッセイベントホール 11/4
- 2018/11/04
- 21:40
6月のZepp Tokyoからスタートし、「Electric Side」「Acoustic Side」という2形態でツアーを行い、7月には「Lake Side」と称した河口湖ステラシアターでの特別編も開催された、NICO Touches the Wallsの「NXA」ツアーもついにファイナル。名古屋、大阪とアリーナを回ってきての最終地はバンドの地元である千葉の幕張メッセイベントホール。
この会場でNICOのワンマンを見るのは「HUMANIA」のリリースツアーのファイナル以来である。
アリーナも含めて全指定席の今回のライブはスタンド席の最上段ブロックやステージ正面の客席は使われておらず、このキャパを最大限に埋めているとは言い難い状態ではある。
17時ちょうどくらいになると場内が暗転してメンバーが登場したのだが、ソウルミュージックのSEに合わせて対馬が踊りまくるのでなかなかドラムセットに行かず、光村と一緒に踊ってからようやく持ち位置に。
しかし、近年おなじみのスーパーサポートメンバーである浅野尚志が定位置である古村の後ろのキーボードの場所におらず、しかもどう見ても坂倉としか見えない男がフライングVのギターを持っている。
あれ?と思っていると、なんと坂倉がギター、浅野がベースという編成で「N極とN極」からスタート。光村、古村に続いて間奏では坂倉もギターソロを弾くという先制攻撃。これは浅野がベースも弾けるというマルチプレイヤーであることはもちろん、坂倉がこうしてワンマンの大舞台で披露できるレベルまでギターを弾けるようになった努力によるもの。最初からこんなの見たら驚かされるしかない。
坂倉がベース、浅野がキーボードの通常編成になると、「Broken Youth」で光村の伸びやかなボーカルがこの広い会場いっぱいに広がっていく。こうした、かつては歌いきれていなかった曲をいともやすやすと歌っているのを見ると、このバンドはこうして広い会場で見ていたいと思う。そのくらいのスケールを光村のボーカルは持っている。
このツアーの起点となった現状の最新作「TWISTER」からも早速「FRITTER」が演奏されたのだが、フェスで演奏されることも多かったし、何よりも5ヶ月にも及ぶツアーを経てきたことによって、曲とバンドの演奏がさらに鍛えられているのがわかる。ツアー開始時よりも曲の良さをさらに引き出せるようになっているというか。
光村からスーパーサポートと紹介された浅野がヴァイオリンを弾くのはおなじみの「THE BUNGY」だが、やはりワンマンとなると観客がみんな裏拍で手拍子をしているのが実にしっくりくるし、この距離がある会場でもそれが乱れないというのはバンドだけでなく、ファン側もさすがである。
「まっすぐなうた」を文字通りまっすぐなアレンジで演奏すると、今回の「Funny Side」の目玉である、メドレー的なセクション「ミステリーゾーン」へ。前の2箇所では30分くらいの尺だったらしいが、ファイナルということでこの日は40分とさらに長尺にすることを予告。
浅野がステージから去り、4人だけの演奏で「夜の果て」からミステリーゾーンに突入すると、サビのみ、ワンフレーズのみ、間奏のみ、数音のみ、繋ぎのみ、さらには「メロディと演奏が別の曲同士」というマッシュアップバージョンに至るまで、様々な形で次々に曲を演奏していく。さらにはその前に演奏した曲に戻ったりと、これはいったいどうやって思いついたのだろうか、と思わざるを得ない。
40分に尺が拡大したからなのか、組曲的に繋げていた演奏を「パンドーラ」で一度止めると、
「まだこれで半分ですよ」
と前後半に分けたことを明かし、後半は暗いステージに幻想的な光が降り注ぐ「プレイヤ」の丸々一曲演奏からスタートしたのだが、この素晴らしい「プレイヤ」の余韻に浸る間も無く、コーラスは「フィロローグ」なのに曲は「image training」というマッシュアップバージョンを皮切りに再び切れ間なく組曲的な演奏が続いていく。
しかしながらファン心理としては、こうしたメドレーバージョンを聴けるのは実に嬉しいけれど、最近ライブでやっていなかった曲ばかりなだけに、全曲フルバージョンで聴きたい、というめちゃくちゃ贅沢なことを思ってしまう。ましてや歌すらない曲だったりすると、演奏だけで通り過ぎていってしまった後になって、せめてサビだけでもいいから演奏してくれないか…と思ってしまう。
浅野がステージに戻ってきて5人編成での「手をたたけ」で手拍子が起こり、イントロからサビまでしっかりと演奏したので、この曲でミステリーゾーンは締めかな?と思っていると、2コーラス目でいきなりテンポがガクンと落ち、リズムが「マシ・マシ」のものに変化。そのまま「マシ・マシ」で終えるのかと思いきや、最後にはまた「手をたたけ」のオリジナルバージョンに戻って終わる。
もうなんなんだこの凄まじさは、というこのミステリーゾーンを光村は
「機械の音を一切入れない、ひたすらに練習しまくることによってこのミステリーゾーンは出来上がりました。メジャーデビューして10年経ちましたが、デビュー当時だったらできなかったどころか、やろうともしなかったでしょう」
と言っていたが、その言葉こそが10年間ひたすら自分たちの音楽に向き合ってきたこのバンドの進化を示しているし、今なお「練習しまくる」という形で進化を続けている。このミステリーゾーンは「もうやらないでしょう(笑)」と言っていたのはもったいなさも感じたが、今回のミステリーゾーンとはまた違う形で、我々をビックリさせるようなことをこのバンドはいつか見せてくれるはず。
(ミステリーゾーンのセトリは公式が発表してくれるのを待つしかないくらいに、完璧なものではないということを明記しておきます。また、ツイッターのフォロワーさんなどにだいぶ追加していただきました)
後半はこの1年間のこのバンドの、「自分たちがやりたいことややりたい音楽をなんの迷いもなくやる」というモードが現れた、「TWISTER」と「OYSTER」を軸にしたもの。
これだけ感動するようなライブを見せてくれているバンドのボーカリストが
「誰も俺の歌で泣かない」
と歌う「SHOW」から、セッション的なイントロが追加され、レーザーが飛び交い、さらにはスモークが噴射されるという、もともとの曲が持つイメージよりも幻想的な演出の中で演奏された「VIBRIO VULNIFICUS」、間奏の手拍子をこの日は最大10回にして演奏された「mujina」と続くのだが、どの曲もライブで毎回演奏されてきた(初見の人が多いはずのフェスでのライブですら代表曲ばかりでなくこれらの曲を欠かさず演奏していたところにこのバンドの意志と今のモードがうかがえる)だけに、曲のロック度がさらに上がってライブ映えするようになってきている。
そもそもこれらの曲はライブでも今のNICOのロックさを感じさせるタイプの曲であったが、それがこのバンドの中でも屈指のソリッドなロックソング「渦と渦」と並んでも遜色ないレベルにまで引き上げられている。このセトリの組み方も実に見事である。
銀テープが発射された「Funny Side Up!!」ではハンドマイクの光村が自由に動き回りながら客席を煽り、さらには投げキッスまでするというサービスも。近年はこうしたパフォーマンスをすることが増えているが、それは光村が自らの見られ方を客観的に理解し、それを受け入れられるようになってきているからだと思う。こうしたことも尖りまくった空気が出ていたメジャーデビュー時には絶対やろうとしなかった。
そしてラストは
「楽しくさよならしましょう!みなさん、また来世で逢いましょう!」
と言ってグループサウンズ風味の「来世で逢いましょう」。古村と対馬もボーカルを務めるフレーズがあるこの曲、かつての「N極とN極」の30歳を超えた視点での曲なのだが、このライブが「N極とN極」で始まってこの曲で終わるというのは、メンバーとバンドが10年の年月を経たことを感じさせた。それは間違いなく意識したというか、この最初と最後の曲を軸にしたライブにしようとしたのだと思う。やはりファンというのは欲深いもので、来世じゃなくて、来月でも来週でも逢いたいって思ってしまうけれど。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて登場すると、今回のツアータイトルである「NXA」の意味をようやく紹介。それは
NICO Touches the Walls
Xth
Anniversary
という意味を持っていたらしいが、名古屋では
N極とN極
X(ミステリーゾーン)
After Life (来世)
という本編の構成であったこと、さらに浅野は
NICO Touches the Walls
×
Asano
という編成のツアーだったことなど、様々な解釈が発生するので、その結果
「なんでもいい」
という身もふたもないものに。内容的には最初の10周年ということで間違いないと思うが。
そしてミステリーゾーン含めて40曲演奏するためにはまだ足りないということでNICOの自由なロックさよりも名曲サイドを突き詰めた「Ginger lily」から、最後の最後である40曲目は「天地ガエシ」で、それだけ曲数を重ねてきたからこそのグルーヴが頂点に達し、間奏の古村のギターの切れ味、そしてアウトロをテンポを上げながら何回も繰り返すというそこにいた誰もが笑顔にならざるを得ないアレンジ。もはやこの曲は単なるリベンジ曲ではないところまで進化していた。
演奏が終わると光村は「さすがにやりすぎじゃない?(笑)」と思うくらいに投げキッスを連発し、最後は5人が肩を組んでステージ前に並んで挨拶。その姿からはこのツアーが実に充実した、バンドをさらに上のレベルまで引き上げるものだったこと、それをしっかり悔いなくやり切ったことを感じさせた。
この規模になるとステージにモニターがあったり、演出もあらゆるものを総動員して…というものになりがちだが、このライブはそうしたものはほとんどなかった。それはあくまでNICOのライブのメインは楽曲であり演奏だから。そしてその演奏だけで観客を心から驚かせたりすることができる。ものすごく複雑なことだったり、初見殺し的な内容ではあれど、NICOの核はそうしたストイックなロックバンドの魂である。
世界ではロックバンドが激減しているというのはよく言われていることであるが、NICOのライブを見ていると、人力で全ての音を生み出すロックバンドにはまだまだやれることや新しい可能性がたくさんあるかもしれない、と思わせられる。
しかしワンマンではこの規模でライブをやっていても、なかなか即完とはならない状況なだけに、よくROCK IN JAPAN FES.やCOUNTDOWN JAPANでは「いつまでNICOはメインステージなのか」と言われることが多い。
確かに勢いという点ではもう若手バンドのような右肩上がりの急上昇は期待できないし、ワンマンやフェスの集客面でも、メインステージに出ていないバンドでNICOよりも上の若手バンドは結構いるかもしれない。
でもそういうバンドの中にはライブを見ても何も感じないというか、バンドをやっている意味が見えないバンドもいる。(決してそういうバンドをディスりたいがゆえではなく)
しかしNICOのライブからは明確に「ロックバンドとして自分たちがどういう音楽をやりたいか」「その音楽で何を表現したいのか」「どんな音楽を愛してきて今の自分たちが作られているのか」というものが伝わってくるし、その意志や情熱は年数を重ねるごとに強く感じるようになってきている。
だからこそ自分はまだNICOを日本最大級のフェスのメインステージで見たいと思うし、今でもそこにいて当たり前のバンドだと思っている。だからそうした意志を感じられないバンドにこの位置を明け渡すわけにはいかないんだ。
止まることも、形が変わることもなかったからこそ、ひたすらに進化のみを続けてきたバンド、NICO Touches the Walls。次のツアーや期待されているアルバムでは果たしてどんな進化を見せてくれるのだろうか。
1.N極とN極
2.Broken Youth
3.FRITTER
4.THE BUNGY
5.まっすぐなうた
6.ミステリーゾーン
夜の果て
武家諸法度
妄想隊員A
衝突
バニーガールとダニーボーイ
ストロベリーガール
GUERNICA
BAD ROBOT
B.C.G
サドンデスゲーム
そのTAXI,160km/h
泥んこドビー
マトリョーシカ
パンドーラ
プレイヤ
フィロローグ
image training
芽
(My Sweet)Eden
エーキューライセンス
ビッグフット
風人
葵
TOKYO Dreamer
手をたたけ
マシ・マシ
7.SHOW
8.VIBRIO VULNIFICUS
9.mujina
10.渦と渦
11.Funny Side Up!!
12.来世で逢いましょう
encore
13.Ginger lily
14.天地ガエシ
Next→ 11/7 銀杏BOYZ × teto @Zepp DiverCity
この会場でNICOのワンマンを見るのは「HUMANIA」のリリースツアーのファイナル以来である。
アリーナも含めて全指定席の今回のライブはスタンド席の最上段ブロックやステージ正面の客席は使われておらず、このキャパを最大限に埋めているとは言い難い状態ではある。
17時ちょうどくらいになると場内が暗転してメンバーが登場したのだが、ソウルミュージックのSEに合わせて対馬が踊りまくるのでなかなかドラムセットに行かず、光村と一緒に踊ってからようやく持ち位置に。
しかし、近年おなじみのスーパーサポートメンバーである浅野尚志が定位置である古村の後ろのキーボードの場所におらず、しかもどう見ても坂倉としか見えない男がフライングVのギターを持っている。
あれ?と思っていると、なんと坂倉がギター、浅野がベースという編成で「N極とN極」からスタート。光村、古村に続いて間奏では坂倉もギターソロを弾くという先制攻撃。これは浅野がベースも弾けるというマルチプレイヤーであることはもちろん、坂倉がこうしてワンマンの大舞台で披露できるレベルまでギターを弾けるようになった努力によるもの。最初からこんなの見たら驚かされるしかない。
坂倉がベース、浅野がキーボードの通常編成になると、「Broken Youth」で光村の伸びやかなボーカルがこの広い会場いっぱいに広がっていく。こうした、かつては歌いきれていなかった曲をいともやすやすと歌っているのを見ると、このバンドはこうして広い会場で見ていたいと思う。そのくらいのスケールを光村のボーカルは持っている。
このツアーの起点となった現状の最新作「TWISTER」からも早速「FRITTER」が演奏されたのだが、フェスで演奏されることも多かったし、何よりも5ヶ月にも及ぶツアーを経てきたことによって、曲とバンドの演奏がさらに鍛えられているのがわかる。ツアー開始時よりも曲の良さをさらに引き出せるようになっているというか。
光村からスーパーサポートと紹介された浅野がヴァイオリンを弾くのはおなじみの「THE BUNGY」だが、やはりワンマンとなると観客がみんな裏拍で手拍子をしているのが実にしっくりくるし、この距離がある会場でもそれが乱れないというのはバンドだけでなく、ファン側もさすがである。
「まっすぐなうた」を文字通りまっすぐなアレンジで演奏すると、今回の「Funny Side」の目玉である、メドレー的なセクション「ミステリーゾーン」へ。前の2箇所では30分くらいの尺だったらしいが、ファイナルということでこの日は40分とさらに長尺にすることを予告。
浅野がステージから去り、4人だけの演奏で「夜の果て」からミステリーゾーンに突入すると、サビのみ、ワンフレーズのみ、間奏のみ、数音のみ、繋ぎのみ、さらには「メロディと演奏が別の曲同士」というマッシュアップバージョンに至るまで、様々な形で次々に曲を演奏していく。さらにはその前に演奏した曲に戻ったりと、これはいったいどうやって思いついたのだろうか、と思わざるを得ない。
40分に尺が拡大したからなのか、組曲的に繋げていた演奏を「パンドーラ」で一度止めると、
「まだこれで半分ですよ」
と前後半に分けたことを明かし、後半は暗いステージに幻想的な光が降り注ぐ「プレイヤ」の丸々一曲演奏からスタートしたのだが、この素晴らしい「プレイヤ」の余韻に浸る間も無く、コーラスは「フィロローグ」なのに曲は「image training」というマッシュアップバージョンを皮切りに再び切れ間なく組曲的な演奏が続いていく。
しかしながらファン心理としては、こうしたメドレーバージョンを聴けるのは実に嬉しいけれど、最近ライブでやっていなかった曲ばかりなだけに、全曲フルバージョンで聴きたい、というめちゃくちゃ贅沢なことを思ってしまう。ましてや歌すらない曲だったりすると、演奏だけで通り過ぎていってしまった後になって、せめてサビだけでもいいから演奏してくれないか…と思ってしまう。
浅野がステージに戻ってきて5人編成での「手をたたけ」で手拍子が起こり、イントロからサビまでしっかりと演奏したので、この曲でミステリーゾーンは締めかな?と思っていると、2コーラス目でいきなりテンポがガクンと落ち、リズムが「マシ・マシ」のものに変化。そのまま「マシ・マシ」で終えるのかと思いきや、最後にはまた「手をたたけ」のオリジナルバージョンに戻って終わる。
もうなんなんだこの凄まじさは、というこのミステリーゾーンを光村は
「機械の音を一切入れない、ひたすらに練習しまくることによってこのミステリーゾーンは出来上がりました。メジャーデビューして10年経ちましたが、デビュー当時だったらできなかったどころか、やろうともしなかったでしょう」
と言っていたが、その言葉こそが10年間ひたすら自分たちの音楽に向き合ってきたこのバンドの進化を示しているし、今なお「練習しまくる」という形で進化を続けている。このミステリーゾーンは「もうやらないでしょう(笑)」と言っていたのはもったいなさも感じたが、今回のミステリーゾーンとはまた違う形で、我々をビックリさせるようなことをこのバンドはいつか見せてくれるはず。
(ミステリーゾーンのセトリは公式が発表してくれるのを待つしかないくらいに、完璧なものではないということを明記しておきます。また、ツイッターのフォロワーさんなどにだいぶ追加していただきました)
後半はこの1年間のこのバンドの、「自分たちがやりたいことややりたい音楽をなんの迷いもなくやる」というモードが現れた、「TWISTER」と「OYSTER」を軸にしたもの。
これだけ感動するようなライブを見せてくれているバンドのボーカリストが
「誰も俺の歌で泣かない」
と歌う「SHOW」から、セッション的なイントロが追加され、レーザーが飛び交い、さらにはスモークが噴射されるという、もともとの曲が持つイメージよりも幻想的な演出の中で演奏された「VIBRIO VULNIFICUS」、間奏の手拍子をこの日は最大10回にして演奏された「mujina」と続くのだが、どの曲もライブで毎回演奏されてきた(初見の人が多いはずのフェスでのライブですら代表曲ばかりでなくこれらの曲を欠かさず演奏していたところにこのバンドの意志と今のモードがうかがえる)だけに、曲のロック度がさらに上がってライブ映えするようになってきている。
そもそもこれらの曲はライブでも今のNICOのロックさを感じさせるタイプの曲であったが、それがこのバンドの中でも屈指のソリッドなロックソング「渦と渦」と並んでも遜色ないレベルにまで引き上げられている。このセトリの組み方も実に見事である。
銀テープが発射された「Funny Side Up!!」ではハンドマイクの光村が自由に動き回りながら客席を煽り、さらには投げキッスまでするというサービスも。近年はこうしたパフォーマンスをすることが増えているが、それは光村が自らの見られ方を客観的に理解し、それを受け入れられるようになってきているからだと思う。こうしたことも尖りまくった空気が出ていたメジャーデビュー時には絶対やろうとしなかった。
そしてラストは
「楽しくさよならしましょう!みなさん、また来世で逢いましょう!」
と言ってグループサウンズ風味の「来世で逢いましょう」。古村と対馬もボーカルを務めるフレーズがあるこの曲、かつての「N極とN極」の30歳を超えた視点での曲なのだが、このライブが「N極とN極」で始まってこの曲で終わるというのは、メンバーとバンドが10年の年月を経たことを感じさせた。それは間違いなく意識したというか、この最初と最後の曲を軸にしたライブにしようとしたのだと思う。やはりファンというのは欲深いもので、来世じゃなくて、来月でも来週でも逢いたいって思ってしまうけれど。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて登場すると、今回のツアータイトルである「NXA」の意味をようやく紹介。それは
NICO Touches the Walls
Xth
Anniversary
という意味を持っていたらしいが、名古屋では
N極とN極
X(ミステリーゾーン)
After Life (来世)
という本編の構成であったこと、さらに浅野は
NICO Touches the Walls
×
Asano
という編成のツアーだったことなど、様々な解釈が発生するので、その結果
「なんでもいい」
という身もふたもないものに。内容的には最初の10周年ということで間違いないと思うが。
そしてミステリーゾーン含めて40曲演奏するためにはまだ足りないということでNICOの自由なロックさよりも名曲サイドを突き詰めた「Ginger lily」から、最後の最後である40曲目は「天地ガエシ」で、それだけ曲数を重ねてきたからこそのグルーヴが頂点に達し、間奏の古村のギターの切れ味、そしてアウトロをテンポを上げながら何回も繰り返すというそこにいた誰もが笑顔にならざるを得ないアレンジ。もはやこの曲は単なるリベンジ曲ではないところまで進化していた。
演奏が終わると光村は「さすがにやりすぎじゃない?(笑)」と思うくらいに投げキッスを連発し、最後は5人が肩を組んでステージ前に並んで挨拶。その姿からはこのツアーが実に充実した、バンドをさらに上のレベルまで引き上げるものだったこと、それをしっかり悔いなくやり切ったことを感じさせた。
この規模になるとステージにモニターがあったり、演出もあらゆるものを総動員して…というものになりがちだが、このライブはそうしたものはほとんどなかった。それはあくまでNICOのライブのメインは楽曲であり演奏だから。そしてその演奏だけで観客を心から驚かせたりすることができる。ものすごく複雑なことだったり、初見殺し的な内容ではあれど、NICOの核はそうしたストイックなロックバンドの魂である。
世界ではロックバンドが激減しているというのはよく言われていることであるが、NICOのライブを見ていると、人力で全ての音を生み出すロックバンドにはまだまだやれることや新しい可能性がたくさんあるかもしれない、と思わせられる。
しかしワンマンではこの規模でライブをやっていても、なかなか即完とはならない状況なだけに、よくROCK IN JAPAN FES.やCOUNTDOWN JAPANでは「いつまでNICOはメインステージなのか」と言われることが多い。
確かに勢いという点ではもう若手バンドのような右肩上がりの急上昇は期待できないし、ワンマンやフェスの集客面でも、メインステージに出ていないバンドでNICOよりも上の若手バンドは結構いるかもしれない。
でもそういうバンドの中にはライブを見ても何も感じないというか、バンドをやっている意味が見えないバンドもいる。(決してそういうバンドをディスりたいがゆえではなく)
しかしNICOのライブからは明確に「ロックバンドとして自分たちがどういう音楽をやりたいか」「その音楽で何を表現したいのか」「どんな音楽を愛してきて今の自分たちが作られているのか」というものが伝わってくるし、その意志や情熱は年数を重ねるごとに強く感じるようになってきている。
だからこそ自分はまだNICOを日本最大級のフェスのメインステージで見たいと思うし、今でもそこにいて当たり前のバンドだと思っている。だからそうした意志を感じられないバンドにこの位置を明け渡すわけにはいかないんだ。
止まることも、形が変わることもなかったからこそ、ひたすらに進化のみを続けてきたバンド、NICO Touches the Walls。次のツアーや期待されているアルバムでは果たしてどんな進化を見せてくれるのだろうか。
1.N極とN極
2.Broken Youth
3.FRITTER
4.THE BUNGY
5.まっすぐなうた
6.ミステリーゾーン
夜の果て
武家諸法度
妄想隊員A
衝突
バニーガールとダニーボーイ
ストロベリーガール
GUERNICA
BAD ROBOT
B.C.G
サドンデスゲーム
そのTAXI,160km/h
泥んこドビー
マトリョーシカ
パンドーラ
プレイヤ
フィロローグ
image training
芽
(My Sweet)Eden
エーキューライセンス
ビッグフット
風人
葵
TOKYO Dreamer
手をたたけ
マシ・マシ
7.SHOW
8.VIBRIO VULNIFICUS
9.mujina
10.渦と渦
11.Funny Side Up!!
12.来世で逢いましょう
encore
13.Ginger lily
14.天地ガエシ
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