米津玄師 2018 LIVE 「Flamingo」 @幕張メッセ 10/27
- 2018/10/28
- 10:44
「とんでもなく素晴らしいライブ」というのは10年経っても15年経っても覚えているものであるが、「ライブとしては全然良くなかったけど覚えているライブ」というものもあって、その筆頭は2014年5月8日に渋谷O-Crestで行われたライブに出演していた、YANKEEというバンドのライブである。
(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-41.html)
そのYANKEEというバンドはその年に2ndアルバム「YANKEE」をリリースしたばかりの米津玄師による、人生初ライブとなるシークレットライブだったわけだが、米津玄師が人前に立って音楽を鳴らすという緊張感が本人たちにも、
「0508 YANKEE 18:30 O-Crest」
という所属事務所のツイートの意味を読み取れた、20人くらいしかいなかった観客にも伝わってきて、そういう意味で忘れられないライブになっている。
その時からすでにこの規模まで来るのは誰もが予期していたと思われるが、「Lemon」が国民的ヒット曲となったタイミングでの、初の幕張メッセワンマンは2days。この日はその日の初日。
前回のツアーも武道館やホールという、客席に高低差のある会場だからこそ、そしてイラストやビジュアルというアートにも長けた米津玄師だからこその見せ方を提示したライブだっただけに、今回もただ単に幕張メッセでライブをやりました、というだけの内容にはならないであろうという期待が高まる。
開演前のステージは暗闇に包まれていてその全貌を見ることはできない中、18時を10分ほど過ぎた頃に、まずはおなじみのサポートメンバーである、中島宏(ギター)、須藤優(ベース)、堀正輝(ドラム)の3人がステージに登場し、その後にハロウィンさながらに被り物をしているのかと思うような、パーカーのフードを被った米津玄師がステージに現われると、どよめきにも似た大歓声が湧き上がる。
その出で立ちの米津玄師がハンドマイクを手にして歌い始める「Loser」からライブはスタート。サビ前に
「幕張ー!」
と叫ぶと、米津玄師はステージから伸びた花道を歩きながら歌う。そう、今回のライブはLブロックとRブロックのみに分かれているため、客席中央に花道が作られているのである。そこを歩く米津玄師の姿には、ステージに立つ者としてのサービス精神のようなものをしかと感じた。
続く「砂の惑星」ではステージ両サイドのスクリーンにおなじみの映像が映し出されるのだが、前回のライブが年明け直後の武道館ワンマンであるだけに、
「9ヶ月も間が空いているだけに、果たしてライブの勘であったり、本人の声の出方は大丈夫なのだろうか?」
という自分の懸念は悪い方に当たってしまったというか、明らかに米津玄師は高音、特にファルセットボーカルがキツそうというか、明らかに出ていない。それ故にようやく演奏中のメンバーが映し出された「飛燕」はともかく、米津玄師のギターがカッティングを刻む「メランコリーキッチン」は明らかに声が出ていない。また、客席からも手拍子が起こっていたのだが、それが細かくハイハットを刻む堀のリズムに合っている感じがしないのもまた違和感を感じてしまった。
前回のツアーでは前半におけるハイライト的な位置を担っていた「春雷」など、今回のライブは米津玄師がギターを弾かずにハンドマイクで歌う曲が実に増えているが、それはサウンド自体の変化と決して無関係ではないであろう。
音源では米津玄師のボーカルから始まるが、ライブではおなじみの神聖なイントロが追加されている「アイネクライネ」では客席から大きな歓声が起こったのだが、そんなラブソングの後に演奏されたのは、教会の鐘の音のようなイントロから始まった、米津玄師の曲の中で1番暗い曲とも評される「amen」。演奏する4人の後方には、なんと形容したらいいのかわからないような出で立ちの、まだ若いと思しき異形な被り物をしたダンサーたちが登場。そもそも須藤がベースではなくてシンセを弾く、不穏な空気を持つこの曲にふさわしい演出ではあったが、ある意味ホラーとも言えるような内容ですらあった。
続く「Paper Flower」も「amen」とともに、シングルのカップリング曲。こちらは様々なポーズを取った、米津玄師であろう人影の写真がスクリーン及び、メンバー背後の格子状の背景にまで映し出される。かつての「こころにくだもの」や「Neighbourhood」など、米津玄師は直近リリースのシングル曲のカップリング曲をライブで演奏する機会が多いが、非バンドサウンド的な要素の強いこのカップリング2曲の流れは、米津玄師の消えることのないダークサイドを表す曲として、中盤のアクセントになっていた。
「Bremen」収録の「Undercover」では先ほどのダンサーたちと同じように素顔の見えない出で立ちの格好をした人たちがスネアドラムを肩からかける鼓笛隊的なスタイルで格子状のステージ背面に1段目から最上段まで位置しながら、堀のドラムのリズムに合わせてスネアを叩き、せり上がってきた台の上に全員乗るとステージまで降りてきて、そのまま米津玄師に先導される形で花道まで歩きながらスネアを叩き続ける。こうしたエンターテイメント性の強い演出は実に米津玄師らしいというか、こうした大会場での彼の戦い方を如実に示している。
スネア隊がいなくなり、そのまま花道の先にいる米津玄師の前にマイクスタンドが置かれて演奏されたのはオリエンタルなギターロック曲「爱丽丝」。こうしてバンドメンバーと離れた位置で米津玄師が1人で花道に立って歌う姿というのを前回のツアーまでに誰が想像していただろうか。
曲が終わると米津玄師がギターを持ったまま、ピースサインを作って「ウォーウォーウォーウォーウォー」というコーラスを歌いながらステージに戻っていく。そのコーラスを観客にも促すと大合唱となり、それが青さを感じさせるこの曲のストレートなバンドサウンドをさらに引き立たせていた。この日最もライブらしさを感じたのはこの曲だったし、それを予期していたかのようにこの曲の時に銀テープが射出される以外の演出がなかったのもまた見事だ。
スクリーンに演奏するメンバー4人の様子、それこそ誰も見たことのないMVのような映像が映し出されたのは、「Flamingo」との両A面曲にしてCMタイアップ曲であるということが発表されている「TEENAGE RIOT」。your gold, my pinkの同タイトル曲(https://youtu.be/zFIBaYK-4k8)やthe telephonesの「RIOT!!!」のように、「RIOT」という単語からはやはりパンクな部分を強く感じるのだが、この曲もやはりそうした衝動を感じさせる、「Flamingo」とは全く異なるタイプのギターロック。それもそのはずで、この曲はもともと米津玄師が中学二年生の時に作った曲を引っ張り出してきてリメイクしたものであるという。つまり「TEENAGE RIOT」というタイトルも当時の米津玄師少年の心境をそのまま写したタイトルだったのである。
その「TEENAGE RIOT」の紹介とともに、ここまでMCなしで突っ走ってきただけに(これは実はすごいことなのだが)、初のMCの時間。
自ら
「初期の頃からしたら音楽性もだいぶ変わって、もしかしたら離れてしまった人もいると思うんだけど、俺は変わり続けることが美しいことだと思っていて。その先にこんなにたくさんの人が見に来てくれるっていうのは本当に遠くまで来たもんだな、と思います」
と、音楽性の変遷に伴うファンの入れ替わりを理解していることを語り(だとしても入れ替わってこれだけたくさんの人が来ているのはとんでもないことである)、その心境として、中原中也がランボーの詩を訳した「感動」を朗読する。米津玄師の歌詞に使われる日本語の独特さはこうした日本の文学の影響のもとに生み出されている、というのを実感させてくれる一面。
スクリーンにはまばゆい星空の映像が映し出され、米津玄師は先ほどのダンサーたちが踊っていたステージ後方のせり上がった台に乗って歌った「orion」、ステージ前に花火ならぬ火柱が燃え上がるという大会場ならではの演出があった「打上花火」と、演出も含めて米津玄師のロマンチックさを感じさせる曲が続くと、スクリーンにジャケット写真が映し出されて始まったのは、公開されるなり大反響を呼んだ新曲「Flamingo」。
「Lemon」リリース時に言及していた、歌謡曲からの影響を強く感じさせる歌い回しの曲なだけに、米津玄師のボーカルが完璧な日に聞けたらどんなに素晴らしい景色として記憶されるのだろうか。また、照明が米津玄師の服など、物体に当たることでそこに歌詞が出現するという演出も、ただ単にスクリーンに歌詞を映し出すのではなく、どこか宝探し的に歌詞を探すという気分にさせてくれる。
そしてあっという間の最後の曲は、実は「Flamingo」「TEENAGE RIOT」とともにライブでは初公開となる、大ヒット曲「Lemon」。
「胸に残り離れない 苦いレモンの匂い」
という歌詞を歌う頃には、会場の中に決して苦くはない、むしろ制汗シートのように爽やかなレモンの匂いが漂ってきていた。視覚や聴覚だけでなく、嗅覚すらも演出に使うというアイデアの恐ろしさ。やはり米津玄師の幕張メッセでのワンマンは普通のライブではなかった。
アンコールで再び4人がステージに登場すると、なんの前振りもなしに演奏されたのは新たな新曲。これは歌詞からして、「Flamingo」「TEENAGE RIOT」のカップリングに収録される「ごめんね」であることは間違いないのだが、本編でも登場したスネア隊とダンサーたちも再びステージに現れ、サビは「ウォーウォー」という歌詞がない合唱という、ライブにおけるアンセム性を強く感じる構成になっているというのはタイトルから想起したものとは全く違う。ましてや最近はシングルのカップリングではダークサイドに位置するような曲が多かっただけに。
自身の声が飛んだ場面が多かったことを
「今日はなんか、すいませんね」
と謝っていたあたり、最高のパフォーマンスを見せることができなかったというのは翌日以降のライブにおける課題を残したと言えるだろう。
幼馴染である中島に「最近いい事あった?」と聞くくだりも、中島の回答がわけわからなすぎて失笑。
そして米津玄師が手や指を動かしながら歌う「クランベリーとパンケーキ」をこちらもライブ初披露(「Lemon」のカップリング)すると、さすがにこの曲で終わりっていうことはないだろう、と思っていたら、最後の最後に演奏されたのは「灰色と青」。全て米津玄師が歌うソロバージョンで披露されたが、武道館の時と同じような、翌日への期待を持たざるを得ないラストであった。
ダンサーやスネア隊などの力もあり、「なんだこれ!?」と思わざるを得ないようなエンターテイメント性溢れる、米津玄師だからこそできるライブではあったが、やはり武道館から9ヶ月以上もライブが空いているというブランクを感じてしまう本人のパフォーマンスであった。
ライブはやってダメになるようなことはないだけに、フェスなどにももっと出演して、本人のライブの力をさらにつけていっていただきたい、と思うくらいに、リズム隊の2人と比べるとまだこの巨大な規模にライブ力そのものが追いついていないと思ってしまったのだが、国際フォーラムや武道館でも、米津玄師はなぜか2daysだと2日目の方が圧倒的に良いライブをする、という法則があるだけに、翌日はもっとすごいライブをしてくれる、と期待してしまうし、このエンターテイメント性にライブの肉体性が追いついたら本当に素晴らしいものになると思うのだ。
1.Loser
2.砂の惑星
3.飛燕
4.メランコリーキッチン
5.春雷
6.アイネクライネ
7.amen
8.Paper Flower
9.Undercover
10.爱丽丝
11.ピースサイン
12.TEENAGE RIOT
13.orion
14.打上花火
15.Flamingo
16.Lemon
encore
17.ごめんね
18.クランベリーとパンケーキ
19.灰色と青
Flamingo
https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
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(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-41.html)
そのYANKEEというバンドはその年に2ndアルバム「YANKEE」をリリースしたばかりの米津玄師による、人生初ライブとなるシークレットライブだったわけだが、米津玄師が人前に立って音楽を鳴らすという緊張感が本人たちにも、
「0508 YANKEE 18:30 O-Crest」
という所属事務所のツイートの意味を読み取れた、20人くらいしかいなかった観客にも伝わってきて、そういう意味で忘れられないライブになっている。
その時からすでにこの規模まで来るのは誰もが予期していたと思われるが、「Lemon」が国民的ヒット曲となったタイミングでの、初の幕張メッセワンマンは2days。この日はその日の初日。
前回のツアーも武道館やホールという、客席に高低差のある会場だからこそ、そしてイラストやビジュアルというアートにも長けた米津玄師だからこその見せ方を提示したライブだっただけに、今回もただ単に幕張メッセでライブをやりました、というだけの内容にはならないであろうという期待が高まる。
開演前のステージは暗闇に包まれていてその全貌を見ることはできない中、18時を10分ほど過ぎた頃に、まずはおなじみのサポートメンバーである、中島宏(ギター)、須藤優(ベース)、堀正輝(ドラム)の3人がステージに登場し、その後にハロウィンさながらに被り物をしているのかと思うような、パーカーのフードを被った米津玄師がステージに現われると、どよめきにも似た大歓声が湧き上がる。
その出で立ちの米津玄師がハンドマイクを手にして歌い始める「Loser」からライブはスタート。サビ前に
「幕張ー!」
と叫ぶと、米津玄師はステージから伸びた花道を歩きながら歌う。そう、今回のライブはLブロックとRブロックのみに分かれているため、客席中央に花道が作られているのである。そこを歩く米津玄師の姿には、ステージに立つ者としてのサービス精神のようなものをしかと感じた。
続く「砂の惑星」ではステージ両サイドのスクリーンにおなじみの映像が映し出されるのだが、前回のライブが年明け直後の武道館ワンマンであるだけに、
「9ヶ月も間が空いているだけに、果たしてライブの勘であったり、本人の声の出方は大丈夫なのだろうか?」
という自分の懸念は悪い方に当たってしまったというか、明らかに米津玄師は高音、特にファルセットボーカルがキツそうというか、明らかに出ていない。それ故にようやく演奏中のメンバーが映し出された「飛燕」はともかく、米津玄師のギターがカッティングを刻む「メランコリーキッチン」は明らかに声が出ていない。また、客席からも手拍子が起こっていたのだが、それが細かくハイハットを刻む堀のリズムに合っている感じがしないのもまた違和感を感じてしまった。
前回のツアーでは前半におけるハイライト的な位置を担っていた「春雷」など、今回のライブは米津玄師がギターを弾かずにハンドマイクで歌う曲が実に増えているが、それはサウンド自体の変化と決して無関係ではないであろう。
音源では米津玄師のボーカルから始まるが、ライブではおなじみの神聖なイントロが追加されている「アイネクライネ」では客席から大きな歓声が起こったのだが、そんなラブソングの後に演奏されたのは、教会の鐘の音のようなイントロから始まった、米津玄師の曲の中で1番暗い曲とも評される「amen」。演奏する4人の後方には、なんと形容したらいいのかわからないような出で立ちの、まだ若いと思しき異形な被り物をしたダンサーたちが登場。そもそも須藤がベースではなくてシンセを弾く、不穏な空気を持つこの曲にふさわしい演出ではあったが、ある意味ホラーとも言えるような内容ですらあった。
続く「Paper Flower」も「amen」とともに、シングルのカップリング曲。こちらは様々なポーズを取った、米津玄師であろう人影の写真がスクリーン及び、メンバー背後の格子状の背景にまで映し出される。かつての「こころにくだもの」や「Neighbourhood」など、米津玄師は直近リリースのシングル曲のカップリング曲をライブで演奏する機会が多いが、非バンドサウンド的な要素の強いこのカップリング2曲の流れは、米津玄師の消えることのないダークサイドを表す曲として、中盤のアクセントになっていた。
「Bremen」収録の「Undercover」では先ほどのダンサーたちと同じように素顔の見えない出で立ちの格好をした人たちがスネアドラムを肩からかける鼓笛隊的なスタイルで格子状のステージ背面に1段目から最上段まで位置しながら、堀のドラムのリズムに合わせてスネアを叩き、せり上がってきた台の上に全員乗るとステージまで降りてきて、そのまま米津玄師に先導される形で花道まで歩きながらスネアを叩き続ける。こうしたエンターテイメント性の強い演出は実に米津玄師らしいというか、こうした大会場での彼の戦い方を如実に示している。
スネア隊がいなくなり、そのまま花道の先にいる米津玄師の前にマイクスタンドが置かれて演奏されたのはオリエンタルなギターロック曲「爱丽丝」。こうしてバンドメンバーと離れた位置で米津玄師が1人で花道に立って歌う姿というのを前回のツアーまでに誰が想像していただろうか。
曲が終わると米津玄師がギターを持ったまま、ピースサインを作って「ウォーウォーウォーウォーウォー」というコーラスを歌いながらステージに戻っていく。そのコーラスを観客にも促すと大合唱となり、それが青さを感じさせるこの曲のストレートなバンドサウンドをさらに引き立たせていた。この日最もライブらしさを感じたのはこの曲だったし、それを予期していたかのようにこの曲の時に銀テープが射出される以外の演出がなかったのもまた見事だ。
スクリーンに演奏するメンバー4人の様子、それこそ誰も見たことのないMVのような映像が映し出されたのは、「Flamingo」との両A面曲にしてCMタイアップ曲であるということが発表されている「TEENAGE RIOT」。your gold, my pinkの同タイトル曲(https://youtu.be/zFIBaYK-4k8)やthe telephonesの「RIOT!!!」のように、「RIOT」という単語からはやはりパンクな部分を強く感じるのだが、この曲もやはりそうした衝動を感じさせる、「Flamingo」とは全く異なるタイプのギターロック。それもそのはずで、この曲はもともと米津玄師が中学二年生の時に作った曲を引っ張り出してきてリメイクしたものであるという。つまり「TEENAGE RIOT」というタイトルも当時の米津玄師少年の心境をそのまま写したタイトルだったのである。
その「TEENAGE RIOT」の紹介とともに、ここまでMCなしで突っ走ってきただけに(これは実はすごいことなのだが)、初のMCの時間。
自ら
「初期の頃からしたら音楽性もだいぶ変わって、もしかしたら離れてしまった人もいると思うんだけど、俺は変わり続けることが美しいことだと思っていて。その先にこんなにたくさんの人が見に来てくれるっていうのは本当に遠くまで来たもんだな、と思います」
と、音楽性の変遷に伴うファンの入れ替わりを理解していることを語り(だとしても入れ替わってこれだけたくさんの人が来ているのはとんでもないことである)、その心境として、中原中也がランボーの詩を訳した「感動」を朗読する。米津玄師の歌詞に使われる日本語の独特さはこうした日本の文学の影響のもとに生み出されている、というのを実感させてくれる一面。
スクリーンにはまばゆい星空の映像が映し出され、米津玄師は先ほどのダンサーたちが踊っていたステージ後方のせり上がった台に乗って歌った「orion」、ステージ前に花火ならぬ火柱が燃え上がるという大会場ならではの演出があった「打上花火」と、演出も含めて米津玄師のロマンチックさを感じさせる曲が続くと、スクリーンにジャケット写真が映し出されて始まったのは、公開されるなり大反響を呼んだ新曲「Flamingo」。
「Lemon」リリース時に言及していた、歌謡曲からの影響を強く感じさせる歌い回しの曲なだけに、米津玄師のボーカルが完璧な日に聞けたらどんなに素晴らしい景色として記憶されるのだろうか。また、照明が米津玄師の服など、物体に当たることでそこに歌詞が出現するという演出も、ただ単にスクリーンに歌詞を映し出すのではなく、どこか宝探し的に歌詞を探すという気分にさせてくれる。
そしてあっという間の最後の曲は、実は「Flamingo」「TEENAGE RIOT」とともにライブでは初公開となる、大ヒット曲「Lemon」。
「胸に残り離れない 苦いレモンの匂い」
という歌詞を歌う頃には、会場の中に決して苦くはない、むしろ制汗シートのように爽やかなレモンの匂いが漂ってきていた。視覚や聴覚だけでなく、嗅覚すらも演出に使うというアイデアの恐ろしさ。やはり米津玄師の幕張メッセでのワンマンは普通のライブではなかった。
アンコールで再び4人がステージに登場すると、なんの前振りもなしに演奏されたのは新たな新曲。これは歌詞からして、「Flamingo」「TEENAGE RIOT」のカップリングに収録される「ごめんね」であることは間違いないのだが、本編でも登場したスネア隊とダンサーたちも再びステージに現れ、サビは「ウォーウォー」という歌詞がない合唱という、ライブにおけるアンセム性を強く感じる構成になっているというのはタイトルから想起したものとは全く違う。ましてや最近はシングルのカップリングではダークサイドに位置するような曲が多かっただけに。
自身の声が飛んだ場面が多かったことを
「今日はなんか、すいませんね」
と謝っていたあたり、最高のパフォーマンスを見せることができなかったというのは翌日以降のライブにおける課題を残したと言えるだろう。
幼馴染である中島に「最近いい事あった?」と聞くくだりも、中島の回答がわけわからなすぎて失笑。
そして米津玄師が手や指を動かしながら歌う「クランベリーとパンケーキ」をこちらもライブ初披露(「Lemon」のカップリング)すると、さすがにこの曲で終わりっていうことはないだろう、と思っていたら、最後の最後に演奏されたのは「灰色と青」。全て米津玄師が歌うソロバージョンで披露されたが、武道館の時と同じような、翌日への期待を持たざるを得ないラストであった。
ダンサーやスネア隊などの力もあり、「なんだこれ!?」と思わざるを得ないようなエンターテイメント性溢れる、米津玄師だからこそできるライブではあったが、やはり武道館から9ヶ月以上もライブが空いているというブランクを感じてしまう本人のパフォーマンスであった。
ライブはやってダメになるようなことはないだけに、フェスなどにももっと出演して、本人のライブの力をさらにつけていっていただきたい、と思うくらいに、リズム隊の2人と比べるとまだこの巨大な規模にライブ力そのものが追いついていないと思ってしまったのだが、国際フォーラムや武道館でも、米津玄師はなぜか2daysだと2日目の方が圧倒的に良いライブをする、という法則があるだけに、翌日はもっとすごいライブをしてくれる、と期待してしまうし、このエンターテイメント性にライブの肉体性が追いついたら本当に素晴らしいものになると思うのだ。
1.Loser
2.砂の惑星
3.飛燕
4.メランコリーキッチン
5.春雷
6.アイネクライネ
7.amen
8.Paper Flower
9.Undercover
10.爱丽丝
11.ピースサイン
12.TEENAGE RIOT
13.orion
14.打上花火
15.Flamingo
16.Lemon
encore
17.ごめんね
18.クランベリーとパンケーキ
19.灰色と青
Flamingo
https://youtu.be/Uh6dkL1M9DM
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