SUPER BEAVER 「歓声前夜」Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~ @豊洲PIT 10/13
- 2018/10/14
- 11:29
「10代で華々しくメジャーデビュー」「メジャーからの脱落」「それでも辞めることなく活動」という長い雌伏の年月を経て、今年の4月には初の日本武道館ワンマンをソールドアウトという状況まで到達した、SUPER BEAVER。
これまでにもフェスやイベントなどでは数え切れないくらいにライブを見ているが、武道館を含めて他のライブが被っていたりして、なかなかタイミングが合わなかったので、ワンマンを見るのはこの日が初。
このワンマンは豊洲PITでの2daysの初日であり、6月にリリースしたアルバム「歓声前夜」のリリースツアーのセミファイナルにあたる。(ファイナルは彼らのホームとも言うべき、渋谷eggman)
18時ちょうどに場内が暗転すると、まずは柳沢、上杉、藤原の3人がステージに登場して楽器を手にし、最後に渋谷がステージに。ソールドアウトで超満員の観客からは当然大歓声が上がると、
「日本全国を一周回って、東京に戻って参りました。レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVERです。本日はよろしくお願いします」
と渋谷のおなじみの前口上から、「歓声前夜」のオープニングナンバーである「ふがいない夜こそ」でスタート。
最初に「歓声前夜」を聴いた時に、自分は「なんでこの曲が1曲目なんだろう?」と思っていた。何方かと言えば内省感が強いこの曲。しかしライブで聴くと、
「ふがいない夜こそ本当は出口だ」
というサビのフレーズは、ここからが始まりであるということを示しており、これが何よりも始まりという感じを与えてくれる。
観客が高く手を掲げて手拍子をする「美しい日」、サビでは渋谷のボーカルに3人のコーラス、さらには観客の大合唱までが乗っかり、ライブでこそさらに真価を発揮するこのバンドの真骨頂を見せてくれる「青い春」と、序盤からライブではおなじみのキラーチューンが続く。
渋谷は随所に独特の語り口のMC(というか曲への前フリ)を挟みながらステージを左右に動き回りながら歌うのだが、渋谷のマイクのコードが絡まって端まで動けなくなるという場面もあった、タイトル通りにポップな「ラヴソング」、「簡単じゃないよ」とはわかっていても「簡単がいいよ」と望むことでタイトル通りにシンプルながらも真理を突く「シンプリー」、4つ打ちやダンサブルなリズムではなく、モータウン的なビートで軽やかに踊らせる「irony」と、「歓声前夜」の曲を軸にしつつ、幅広いタイプの曲を演奏していく。
SUPER BEAVERは「ジャパニーズポップミュージック」を掲げている通りにポップな肌触りの曲が多いが、パンク・ラウド系のバンドともよく一緒になるが故に、そうした重さや強さを感じさせる曲も多い。とかく「エモーショナル」という言葉に集約されていきがちでもあるが、そのエモーショナルのベクトルは様々な方向に向いているというのがこうしてワンマンなどの長い尺で見るとよくわかる。
「我々の決意表明のような曲」
と言って演奏された「人として」は
「人として かっこよく生きていたいじゃないか」
というフレーズが全てを物語るくらいにこのバンドのメンバーがどんな人間として生きていきたいのか?を一言で言い表し、それまでの体を動かしたりして楽しむというよりも、その言葉の端々までをもじっくりと噛みしめるように優しいサウンドとともに受け止めていく。
そして渋谷がこのバンドの14年間の歩みを語り、メジャーから2年で脱落してしまったことに触れると、
「誰が悪かったわけでもない。ただ、当時の我々は「何に向けて音楽をやっているのか?」という意識がなかったんじゃないか。誰に届けたくて音楽をやっていたのか。でも今はわかっている。それは目の前のあなたです。あなたたちじゃなくて、あなた。
でも当時の曲が良くなかったのか、と言われるとそんなことはないんじゃないかと。今だったらあの時の曲をしっかり歌えるんじゃないか?と思った曲を「歓声前夜」で再録しました」
となぜ「歓声前夜」でこの曲を再録したのかをしっかり自分の口で、自分の言葉で語ってから演奏されたのは「シアワセ」。
再録バージョンではストリングスのサウンドも入れていたが、今回のライブではそうしたサウンドの同期もなし。今ステージに立っている4人の音だけで若かりし頃に作った曲を、今この瞬間に鳴らすべき曲に昇華させている。
自分は一応メジャーデビューした時にこのバンドの存在を知っていた。(さすがにメジャーだけあって、当時から様々な媒体でインタビューなどが載っていた)
だがその時は全然インパクトを感じることはなかったし、この曲を当時に聴いていても何も感じることはなかったと思う。でも今、こうして様々な経験を経て、自分たちが何で音楽をやっているのか?ということをしっかり自覚していて、その言葉や音の一つ一つに自分たちの意志を込めるようなライブができるようになったからこそ、ステージで演奏している4人の姿からこの曲に込めたものをしっかり感じることができる。短い持ち時間のライブではなかなか演奏されることはないだろうが、かつてのメジャー期の曲も素晴らしいということ、その素晴らしさを引き出せるのは今のこのバンドだからこそであるということをこの「シアワセ」は感じさせてくれる。間違いなくこの日のハイライトの一つだった。
じっくりと歌詞を聴かせるような2曲の後からは後半戦。キャッチーなメロディの「嬉しい涙」という最新の曲から、渋谷が度々口にする「自分であること」をそのまま曲にした、
「心から心の奥までわかるのは自分しかいない
この目に この顔が 映り込むことはないけれど」
というフレーズの一つ一つがそれを、そしてあなたという目の前にいる人の存在を実感させる「証明」へ。
例えば先日放送されたRADWIMPSの「18祭」であったり、WANIMAのライブであったり。「合唱」という行為には1人で歌う以上の力が宿るのは周知の通り。それはこの曲のサビをはじめとした、このSUPER BEAVERのライブにおいてもそうなのだが、このバンドは「どのフレーズを渋谷だけで歌うのか」「どのフレーズにメンバー全員のコーラスを重ねるのか」「どのフレーズに観客の声を重ねるのか」ということを徹底的に精査し、全てのフレーズを合唱させるのではなく、その出し引きがあるからこそ、より一層合唱するべきフレーズの強さが強調されていくし、このバンドの合唱には声を重ねる1人1人の意志や人生までもがその声に乗っかっている。それがはっきりとわかるからこそ、こうしてライブで聴いていると本当に感動してしまう。
このライブもしかり、楽しい時間や大切な時間こそ「あっという間に終わってしまう」ということを歌った「閃光」ではどうしても、こうして曲を演奏すること=ライブが終わりに近づいていることを意識せざるを得ないし、なかなか他に類を見ないくらいに様々な経験をしてきたこのバンドの14年間という、長さを感じるような人生ですらもあっという間だったのだろうか、と思ってしまう。
この日のライブは余計な装飾や演出の全くない、ライブハウスでロックバンドがライブをする以上のものが全くないくらいにシンプルなものだったのだが、その中にあってステージ両サイドに規則的に並べられた照明が激しく色を切り替えていくのは、バンドの「斬新なことよりも普遍的なものをもってして斬り込んでいく」というスタイルを明確に示した「正攻法」。
この曲、実は自分の母校の大学のCMタイアップ曲としてお茶の間に流れた(なぜ卒業生でもなんでもないこのバンドのこんなにメッセージ性の強い曲を選んだのか全くわからないけど)。
そうした些細なことでも自分の中では特別な1曲になっているし、自分の人生にこのバンドの音楽が重なったのはすごく嬉しいことである。
それまでは全く存在している素ぶりすらもなかったミラーボールが現れて、まさに流星群のように輝き出す「東京流星群」では光とともに観客の大合唱までもが会場に降り注ぐ。
「こんなに最高のなかまたちに出会えました」
と観客のことを「なかま」と評するくらいに信頼しきっている渋谷は自身のボーカル部分すらもなかまに委ねる。
それは続く「秘密」も同じであるが、間奏のメンバーそれぞれのソロ回しも含めたメンバー紹介では
「ボーカル渋谷龍太とあなたでSUPER BEAVERです!あなたがいないと成り立たないんですよ!」
と、SUPER BEAVERが音楽を作って奏でる理由は紛れもなくこうして目の前に聴いてくれる、ライブに来てくれる「あなた」という存在があるからである、ということを示す。その過剰なまでの観客への信頼がまるっきり嘘っぽく聞こえないのは、やはり紆余曲折あった14年間の活動の中でこのバンドが辿り着いた「答え」がそれだからである。
そしてラストはそうして自分たちとあなたで音楽を作る、ライブを作ることこそが自分たちの人生の醍醐味であるということを感じさせる、「歓声前夜」の最後を飾る「全部」で、まさにこの会場に渦巻く様々な感情全部を包み込むようにして、あっという間に本編は終わった。
アンコールでは柳沢がアコースティックギターに持ち替え、本編終盤の熱狂とは全く異なる、温かさや体温を感じさせる形で演奏された「ひとこと」はただがむしゃらに突っ走ってきたのではなく、長い活動歴の中で技術と演奏による説得力も増していることがしっかりと現れている。きっとSUPER BEAVERは全編アコースティックでライブをやっても、普段と同じようでいて普段と全く違う感動を与えてくれるバンドだと思う。
そしてこの日正真正銘最後の曲として演奏されたのは、本編でも渋谷が度々観客のことを形容していた「なかま」。最後にこの曲が演奏されたことによって、我々、いや自分と同じようにこの会場に集まった1人×3000とSUPER BEAVERの4人は本当の意味でなかまになれた。
でもなかまだからこそ馴れ合いは不要、とばかりに演奏が終わるとすぐにステージから去る姿は、これぞロックバンドだ、という意志を感じさせて本当にカッコよかったのだった。
前に渋谷はインタビューで「バンドの歴史はそんなに重要なことじゃない」というようなことを言っていた。だが、文字だけ追えばものすごく青臭くもあり、裏にある意味を読み取ろうとする気さえ起こらないくらいにストレートなSUPER BEAVERの歌詞は、ともすると薄っぺらく感じてしまう人もいるだろう。
しかしそこに説得力と意志を宿しているのが、SUPER BEAVERの辿ってきた歴史であり、経験だ。それを知っているからこそ、このバンドの言葉はたくさんの人の魂を揺さぶり続けているし、日々を生きる力になっている。
もしかしたらそうした経験はない方が良かったかもしれない。でもそれを経たからこそ、SUPER BEAVERは武道館すらも即完するようなバンドになれた。
かつてはアメリカでハードロックへのカウンターとしてグランジが台頭したように。近年は4つ打ちロックへのカウンター的にアーバンなインディーポップバンドがこの国で増えたように、それまでのシーンとは違うバンドが世の中に登場するときには、ただ音楽が良い、ということ以上になんらかの意味がある。
社会や日常の何もかも、ましてや音楽すらもがデジタル化していき、人の体温や意志といったものがスポイルされがちな方向に向かっている今この2010年代の後半だからこそ、「バンドは人間の意志による音楽である」ということをその身をもって示すSUPER BEAVERが今になって浮上してきたのは、それが何よりも大事なものであるということをわかっている人たちによる意志そのものだ。
メジャーにいた時期ではなく、今だからこそ。SUPER BEAVERは今この時代に呼ばれたバンドだ。「お前たちが1番輝くべき、変えるべき時だ」と言われたかのように。そしてそれはこのバンドからその確固たる意志を失わない(それはすなわちこのバンドが終わりを迎えない)限りはさらに大きなものになっていく。「ライブハウスのロックバンド」という存在意義は変わらないままで。
1.ふがいない夜こそ
2.美しい日
3.青い春
4.ラヴソング
5.シンプリー
6.irony
7.人として
8.シアワセ
9.嬉しい涙
10.証明
11.閃光
12.正攻法
13.東京流星群
14.秘密
15.全部
encore
16.ひとこと
17.なかま
閃光
https://youtu.be/CxTtwJ2yG_E
Next→ 10/19 さユり @Zepp DiverCity
これまでにもフェスやイベントなどでは数え切れないくらいにライブを見ているが、武道館を含めて他のライブが被っていたりして、なかなかタイミングが合わなかったので、ワンマンを見るのはこの日が初。
このワンマンは豊洲PITでの2daysの初日であり、6月にリリースしたアルバム「歓声前夜」のリリースツアーのセミファイナルにあたる。(ファイナルは彼らのホームとも言うべき、渋谷eggman)
18時ちょうどに場内が暗転すると、まずは柳沢、上杉、藤原の3人がステージに登場して楽器を手にし、最後に渋谷がステージに。ソールドアウトで超満員の観客からは当然大歓声が上がると、
「日本全国を一周回って、東京に戻って参りました。レペゼンジャパニーズポップミュージック、SUPER BEAVERです。本日はよろしくお願いします」
と渋谷のおなじみの前口上から、「歓声前夜」のオープニングナンバーである「ふがいない夜こそ」でスタート。
最初に「歓声前夜」を聴いた時に、自分は「なんでこの曲が1曲目なんだろう?」と思っていた。何方かと言えば内省感が強いこの曲。しかしライブで聴くと、
「ふがいない夜こそ本当は出口だ」
というサビのフレーズは、ここからが始まりであるということを示しており、これが何よりも始まりという感じを与えてくれる。
観客が高く手を掲げて手拍子をする「美しい日」、サビでは渋谷のボーカルに3人のコーラス、さらには観客の大合唱までが乗っかり、ライブでこそさらに真価を発揮するこのバンドの真骨頂を見せてくれる「青い春」と、序盤からライブではおなじみのキラーチューンが続く。
渋谷は随所に独特の語り口のMC(というか曲への前フリ)を挟みながらステージを左右に動き回りながら歌うのだが、渋谷のマイクのコードが絡まって端まで動けなくなるという場面もあった、タイトル通りにポップな「ラヴソング」、「簡単じゃないよ」とはわかっていても「簡単がいいよ」と望むことでタイトル通りにシンプルながらも真理を突く「シンプリー」、4つ打ちやダンサブルなリズムではなく、モータウン的なビートで軽やかに踊らせる「irony」と、「歓声前夜」の曲を軸にしつつ、幅広いタイプの曲を演奏していく。
SUPER BEAVERは「ジャパニーズポップミュージック」を掲げている通りにポップな肌触りの曲が多いが、パンク・ラウド系のバンドともよく一緒になるが故に、そうした重さや強さを感じさせる曲も多い。とかく「エモーショナル」という言葉に集約されていきがちでもあるが、そのエモーショナルのベクトルは様々な方向に向いているというのがこうしてワンマンなどの長い尺で見るとよくわかる。
「我々の決意表明のような曲」
と言って演奏された「人として」は
「人として かっこよく生きていたいじゃないか」
というフレーズが全てを物語るくらいにこのバンドのメンバーがどんな人間として生きていきたいのか?を一言で言い表し、それまでの体を動かしたりして楽しむというよりも、その言葉の端々までをもじっくりと噛みしめるように優しいサウンドとともに受け止めていく。
そして渋谷がこのバンドの14年間の歩みを語り、メジャーから2年で脱落してしまったことに触れると、
「誰が悪かったわけでもない。ただ、当時の我々は「何に向けて音楽をやっているのか?」という意識がなかったんじゃないか。誰に届けたくて音楽をやっていたのか。でも今はわかっている。それは目の前のあなたです。あなたたちじゃなくて、あなた。
でも当時の曲が良くなかったのか、と言われるとそんなことはないんじゃないかと。今だったらあの時の曲をしっかり歌えるんじゃないか?と思った曲を「歓声前夜」で再録しました」
となぜ「歓声前夜」でこの曲を再録したのかをしっかり自分の口で、自分の言葉で語ってから演奏されたのは「シアワセ」。
再録バージョンではストリングスのサウンドも入れていたが、今回のライブではそうしたサウンドの同期もなし。今ステージに立っている4人の音だけで若かりし頃に作った曲を、今この瞬間に鳴らすべき曲に昇華させている。
自分は一応メジャーデビューした時にこのバンドの存在を知っていた。(さすがにメジャーだけあって、当時から様々な媒体でインタビューなどが載っていた)
だがその時は全然インパクトを感じることはなかったし、この曲を当時に聴いていても何も感じることはなかったと思う。でも今、こうして様々な経験を経て、自分たちが何で音楽をやっているのか?ということをしっかり自覚していて、その言葉や音の一つ一つに自分たちの意志を込めるようなライブができるようになったからこそ、ステージで演奏している4人の姿からこの曲に込めたものをしっかり感じることができる。短い持ち時間のライブではなかなか演奏されることはないだろうが、かつてのメジャー期の曲も素晴らしいということ、その素晴らしさを引き出せるのは今のこのバンドだからこそであるということをこの「シアワセ」は感じさせてくれる。間違いなくこの日のハイライトの一つだった。
じっくりと歌詞を聴かせるような2曲の後からは後半戦。キャッチーなメロディの「嬉しい涙」という最新の曲から、渋谷が度々口にする「自分であること」をそのまま曲にした、
「心から心の奥までわかるのは自分しかいない
この目に この顔が 映り込むことはないけれど」
というフレーズの一つ一つがそれを、そしてあなたという目の前にいる人の存在を実感させる「証明」へ。
例えば先日放送されたRADWIMPSの「18祭」であったり、WANIMAのライブであったり。「合唱」という行為には1人で歌う以上の力が宿るのは周知の通り。それはこの曲のサビをはじめとした、このSUPER BEAVERのライブにおいてもそうなのだが、このバンドは「どのフレーズを渋谷だけで歌うのか」「どのフレーズにメンバー全員のコーラスを重ねるのか」「どのフレーズに観客の声を重ねるのか」ということを徹底的に精査し、全てのフレーズを合唱させるのではなく、その出し引きがあるからこそ、より一層合唱するべきフレーズの強さが強調されていくし、このバンドの合唱には声を重ねる1人1人の意志や人生までもがその声に乗っかっている。それがはっきりとわかるからこそ、こうしてライブで聴いていると本当に感動してしまう。
このライブもしかり、楽しい時間や大切な時間こそ「あっという間に終わってしまう」ということを歌った「閃光」ではどうしても、こうして曲を演奏すること=ライブが終わりに近づいていることを意識せざるを得ないし、なかなか他に類を見ないくらいに様々な経験をしてきたこのバンドの14年間という、長さを感じるような人生ですらもあっという間だったのだろうか、と思ってしまう。
この日のライブは余計な装飾や演出の全くない、ライブハウスでロックバンドがライブをする以上のものが全くないくらいにシンプルなものだったのだが、その中にあってステージ両サイドに規則的に並べられた照明が激しく色を切り替えていくのは、バンドの「斬新なことよりも普遍的なものをもってして斬り込んでいく」というスタイルを明確に示した「正攻法」。
この曲、実は自分の母校の大学のCMタイアップ曲としてお茶の間に流れた(なぜ卒業生でもなんでもないこのバンドのこんなにメッセージ性の強い曲を選んだのか全くわからないけど)。
そうした些細なことでも自分の中では特別な1曲になっているし、自分の人生にこのバンドの音楽が重なったのはすごく嬉しいことである。
それまでは全く存在している素ぶりすらもなかったミラーボールが現れて、まさに流星群のように輝き出す「東京流星群」では光とともに観客の大合唱までもが会場に降り注ぐ。
「こんなに最高のなかまたちに出会えました」
と観客のことを「なかま」と評するくらいに信頼しきっている渋谷は自身のボーカル部分すらもなかまに委ねる。
それは続く「秘密」も同じであるが、間奏のメンバーそれぞれのソロ回しも含めたメンバー紹介では
「ボーカル渋谷龍太とあなたでSUPER BEAVERです!あなたがいないと成り立たないんですよ!」
と、SUPER BEAVERが音楽を作って奏でる理由は紛れもなくこうして目の前に聴いてくれる、ライブに来てくれる「あなた」という存在があるからである、ということを示す。その過剰なまでの観客への信頼がまるっきり嘘っぽく聞こえないのは、やはり紆余曲折あった14年間の活動の中でこのバンドが辿り着いた「答え」がそれだからである。
そしてラストはそうして自分たちとあなたで音楽を作る、ライブを作ることこそが自分たちの人生の醍醐味であるということを感じさせる、「歓声前夜」の最後を飾る「全部」で、まさにこの会場に渦巻く様々な感情全部を包み込むようにして、あっという間に本編は終わった。
アンコールでは柳沢がアコースティックギターに持ち替え、本編終盤の熱狂とは全く異なる、温かさや体温を感じさせる形で演奏された「ひとこと」はただがむしゃらに突っ走ってきたのではなく、長い活動歴の中で技術と演奏による説得力も増していることがしっかりと現れている。きっとSUPER BEAVERは全編アコースティックでライブをやっても、普段と同じようでいて普段と全く違う感動を与えてくれるバンドだと思う。
そしてこの日正真正銘最後の曲として演奏されたのは、本編でも渋谷が度々観客のことを形容していた「なかま」。最後にこの曲が演奏されたことによって、我々、いや自分と同じようにこの会場に集まった1人×3000とSUPER BEAVERの4人は本当の意味でなかまになれた。
でもなかまだからこそ馴れ合いは不要、とばかりに演奏が終わるとすぐにステージから去る姿は、これぞロックバンドだ、という意志を感じさせて本当にカッコよかったのだった。
前に渋谷はインタビューで「バンドの歴史はそんなに重要なことじゃない」というようなことを言っていた。だが、文字だけ追えばものすごく青臭くもあり、裏にある意味を読み取ろうとする気さえ起こらないくらいにストレートなSUPER BEAVERの歌詞は、ともすると薄っぺらく感じてしまう人もいるだろう。
しかしそこに説得力と意志を宿しているのが、SUPER BEAVERの辿ってきた歴史であり、経験だ。それを知っているからこそ、このバンドの言葉はたくさんの人の魂を揺さぶり続けているし、日々を生きる力になっている。
もしかしたらそうした経験はない方が良かったかもしれない。でもそれを経たからこそ、SUPER BEAVERは武道館すらも即完するようなバンドになれた。
かつてはアメリカでハードロックへのカウンターとしてグランジが台頭したように。近年は4つ打ちロックへのカウンター的にアーバンなインディーポップバンドがこの国で増えたように、それまでのシーンとは違うバンドが世の中に登場するときには、ただ音楽が良い、ということ以上になんらかの意味がある。
社会や日常の何もかも、ましてや音楽すらもがデジタル化していき、人の体温や意志といったものがスポイルされがちな方向に向かっている今この2010年代の後半だからこそ、「バンドは人間の意志による音楽である」ということをその身をもって示すSUPER BEAVERが今になって浮上してきたのは、それが何よりも大事なものであるということをわかっている人たちによる意志そのものだ。
メジャーにいた時期ではなく、今だからこそ。SUPER BEAVERは今この時代に呼ばれたバンドだ。「お前たちが1番輝くべき、変えるべき時だ」と言われたかのように。そしてそれはこのバンドからその確固たる意志を失わない(それはすなわちこのバンドが終わりを迎えない)限りはさらに大きなものになっていく。「ライブハウスのロックバンド」という存在意義は変わらないままで。
1.ふがいない夜こそ
2.美しい日
3.青い春
4.ラヴソング
5.シンプリー
6.irony
7.人として
8.シアワセ
9.嬉しい涙
10.証明
11.閃光
12.正攻法
13.東京流星群
14.秘密
15.全部
encore
16.ひとこと
17.なかま
閃光
https://youtu.be/CxTtwJ2yG_E
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