2010年の千葉ロッテマリーンズとフジファブリック「Sugar!!」
- 2018/10/08
- 20:22
今年もプロ野球のレギュラーシーズンが終わろうとしている。この時期になると、様々な選手が現役に別れを告げる。
自ら限界を悟ってユニフォームを脱ぐ選択をする選手、球団から戦力外を言い渡されたのをきっかけにユニフォームを脱ぐ選手、戦力外になってもまだまだ現役を続けようともがく選手…。それぞれの選択にはそれぞれの美学や人生、そして野球への熱意や情熱がある。ただ、引退セレモニーをしてもらって、ファンに見送られながら現役を終えることができる選手というのは本当に数少ない。
この日(10月8日)、千葉ロッテマリーンズの岡田幸文選手が引退セレモニーを行い、10年間の現役生活に幕を下ろした。
岡田と言えば多くの人が思い浮かぶのは背番号にあわせて「エリア66」と呼ばれたほどの広い守備範囲を生かした外野守備と、2010年に「史上最大の下克上」と呼ばれた、ロッテの日本一を決定づけた、日本シリーズ第7戦での決勝タイムリースリーベースだろう。
幼少の頃からずっと野球を見続けてきた自分にとって、野球を見ているのが1番楽しかったのが2010年であり、当時の生活上の都合もあって、2010年は年間100試合以上をリアルタイムで見ていた。
でも楽しかったのは、ロッテが強かったからだけではない。むしろ「レギュラーシーズン最後の4試合で1試合でも負けたらその時点でシーズン終了」というギリギリの状況で3位に滑り込んだロッテは、クライマックスステージを勝ち上がり、日本一にまでなったとはいえ、レギュラーシーズンでの強さは西武とソフトバンクという上位2球団には及ばなかった。
それでも試合を見るのが楽しかったのは、選手たちが本当に楽しそうにプレーしていたからだった。サヨナラの得点でもないような場面であっても、西岡がホームインしたらネクストバッターの大松と抱き合って喜んでいたり(両者とも今年戦力外通告を言い渡され、野球選手としての帰路に立っている)、的場の応援歌を神戸たち若手が歌っていたり…。本当に見ていて楽しいチームだったのだ。
その年に自分が最も多く聴いていた曲は、その年にJ-SPORTSのプロ野球テーマとして流れていた、フジファブリック「Sugar!!」だった。それもそのはずで、年間100試合見てればそれだけで100回は聴いているのだから。
ただ、フジファブリックファンの方はすぐにお気づきになるだろうが、「Sugar!!」はリリースされたのは2009年であり、そもそもはその年に開催された2009年のWBCのテーマソングというタイアップだった。基本的にプロ野球のテーマソングは1年ごとに新しい曲に変わるため、普通なら2010年にもこの曲が使われることはないのだが、2年続けてこの曲を起用するような出来事が起きた。
それは2009年12月の、フジファブリックのボーカルである志村正彦の急逝である。当然、音楽ファンはもちろん、J-SPORTSでWBCを見ていた野球ファンも大きな悲しみに包まれた出来事であった。
地上波の野球中継などでは、なかなか制作者だけの意見でテーマソングを決めることはできない。スポンサーであったり、様々な要素がそこには介在してくるからである。
そんな中で、もともとキャプテンストライダムなど、「タイアップとして起用しても視聴者は絶対増えないけど、見ている人からしたらこんなに野球の試合に似合う曲はない」としか思えない、スカパーだからこその抜群の選曲センスを発揮していたJ-SPORTSは翌年もプロ野球中継のテーマ曲に、リリースから1年経っていた「Sugar!!」を使うことに決めた。そこには間違いなく番組の制作者と、視聴者の意志があった。志村正彦という、素晴らしい音楽を作ったミュージシャンがいたこと、その男が作った「Sugar!!」という曲が、野球ファンからも愛されていたこと。それを証明するために、2010年もJ-SPORTSでは「Sugar!!」が流れ続けた。
そしてその「Sugar!!」が流れる、その試合のハイライトで、
「全力で走れ 全力で走れ」
というサビのフレーズにあわせて西岡や荻野や清田といったロッテの中心選手たちはまさに、滑走路から飛び出すように全力で走り、グラウンドを駆け回り、本当に楽しそうに野球をしていた。だから今でも自分は「Sugar!!」を聴くと、志村が存命中に見たライブはもちろん、あの年の、本当に楽しかったプロ野球のことを思い出す。2010年のレギュラーシーズン最後の試合に勝って、クライマックスステージ進出を決めたロッテの1年間の総集VTRで流れる「Sugar!!」は今でもロッテファンの中では「神映像」として語り継がれている。
今年、ロッテは残念ながらクライマックスステージに出ることはできない。もうあと数試合で今年のシーズンは終わってしまう。でもいつかまたあんな楽しいシーズンを過ごすこと、そこに流れる素晴らしい音楽に出会えることを期待しながら、来年以降も野球を見るのだ。
グラウンドから去った人たちや、もう会えなくなってしまった人たちのことを忘れないようにしながら。
Sugar!!
https://youtu.be/D0P6kOqLboQ
自ら限界を悟ってユニフォームを脱ぐ選択をする選手、球団から戦力外を言い渡されたのをきっかけにユニフォームを脱ぐ選手、戦力外になってもまだまだ現役を続けようともがく選手…。それぞれの選択にはそれぞれの美学や人生、そして野球への熱意や情熱がある。ただ、引退セレモニーをしてもらって、ファンに見送られながら現役を終えることができる選手というのは本当に数少ない。
この日(10月8日)、千葉ロッテマリーンズの岡田幸文選手が引退セレモニーを行い、10年間の現役生活に幕を下ろした。
岡田と言えば多くの人が思い浮かぶのは背番号にあわせて「エリア66」と呼ばれたほどの広い守備範囲を生かした外野守備と、2010年に「史上最大の下克上」と呼ばれた、ロッテの日本一を決定づけた、日本シリーズ第7戦での決勝タイムリースリーベースだろう。
幼少の頃からずっと野球を見続けてきた自分にとって、野球を見ているのが1番楽しかったのが2010年であり、当時の生活上の都合もあって、2010年は年間100試合以上をリアルタイムで見ていた。
でも楽しかったのは、ロッテが強かったからだけではない。むしろ「レギュラーシーズン最後の4試合で1試合でも負けたらその時点でシーズン終了」というギリギリの状況で3位に滑り込んだロッテは、クライマックスステージを勝ち上がり、日本一にまでなったとはいえ、レギュラーシーズンでの強さは西武とソフトバンクという上位2球団には及ばなかった。
それでも試合を見るのが楽しかったのは、選手たちが本当に楽しそうにプレーしていたからだった。サヨナラの得点でもないような場面であっても、西岡がホームインしたらネクストバッターの大松と抱き合って喜んでいたり(両者とも今年戦力外通告を言い渡され、野球選手としての帰路に立っている)、的場の応援歌を神戸たち若手が歌っていたり…。本当に見ていて楽しいチームだったのだ。
その年に自分が最も多く聴いていた曲は、その年にJ-SPORTSのプロ野球テーマとして流れていた、フジファブリック「Sugar!!」だった。それもそのはずで、年間100試合見てればそれだけで100回は聴いているのだから。
ただ、フジファブリックファンの方はすぐにお気づきになるだろうが、「Sugar!!」はリリースされたのは2009年であり、そもそもはその年に開催された2009年のWBCのテーマソングというタイアップだった。基本的にプロ野球のテーマソングは1年ごとに新しい曲に変わるため、普通なら2010年にもこの曲が使われることはないのだが、2年続けてこの曲を起用するような出来事が起きた。
それは2009年12月の、フジファブリックのボーカルである志村正彦の急逝である。当然、音楽ファンはもちろん、J-SPORTSでWBCを見ていた野球ファンも大きな悲しみに包まれた出来事であった。
地上波の野球中継などでは、なかなか制作者だけの意見でテーマソングを決めることはできない。スポンサーであったり、様々な要素がそこには介在してくるからである。
そんな中で、もともとキャプテンストライダムなど、「タイアップとして起用しても視聴者は絶対増えないけど、見ている人からしたらこんなに野球の試合に似合う曲はない」としか思えない、スカパーだからこその抜群の選曲センスを発揮していたJ-SPORTSは翌年もプロ野球中継のテーマ曲に、リリースから1年経っていた「Sugar!!」を使うことに決めた。そこには間違いなく番組の制作者と、視聴者の意志があった。志村正彦という、素晴らしい音楽を作ったミュージシャンがいたこと、その男が作った「Sugar!!」という曲が、野球ファンからも愛されていたこと。それを証明するために、2010年もJ-SPORTSでは「Sugar!!」が流れ続けた。
そしてその「Sugar!!」が流れる、その試合のハイライトで、
「全力で走れ 全力で走れ」
というサビのフレーズにあわせて西岡や荻野や清田といったロッテの中心選手たちはまさに、滑走路から飛び出すように全力で走り、グラウンドを駆け回り、本当に楽しそうに野球をしていた。だから今でも自分は「Sugar!!」を聴くと、志村が存命中に見たライブはもちろん、あの年の、本当に楽しかったプロ野球のことを思い出す。2010年のレギュラーシーズン最後の試合に勝って、クライマックスステージ進出を決めたロッテの1年間の総集VTRで流れる「Sugar!!」は今でもロッテファンの中では「神映像」として語り継がれている。
今年、ロッテは残念ながらクライマックスステージに出ることはできない。もうあと数試合で今年のシーズンは終わってしまう。でもいつかまたあんな楽しいシーズンを過ごすこと、そこに流れる素晴らしい音楽に出会えることを期待しながら、来年以降も野球を見るのだ。
グラウンドから去った人たちや、もう会えなくなってしまった人たちのことを忘れないようにしながら。
Sugar!!
https://youtu.be/D0P6kOqLboQ
SUPER BEAVER 「歓声前夜」Release Tour 2018 ~初めての、ラクダ運転~ @豊洲PIT 10/13 ホーム
パスピエ 野音ワンマンライブ”印象H” @日比谷野外音楽堂 10/6