パスピエ 野音ワンマンライブ”印象H” @日比谷野外音楽堂 10/6
- 2018/10/07
- 12:32
かつては対バンライブのシリーズとして開催されてきた、パスピエの「印象」ライブシリーズ。いったんは幕を閉じたこのシリーズだったが、今回の東京の日比谷野外音楽堂と、大阪の服部緑地公園でのワンマンをもって復活。かつては日本武道館でもワンマンを行なっているが、日比谷野外音楽堂でワンマンを行うのは初めてである。
17時30分という土曜日にしてもかなり早い時間を少し過ぎたあたりで客電が消えると、リーダーである成田ハネダ(キーボード)を先頭に、三澤(ギター)、露崎(ベース)、サポートドラマーの佐藤謙介(踊ってばかりの国、髭)の演奏陣が先にステージに登場。
その4人が先に各々の音を鳴らし始め、セッション的な演奏を始めると、その演奏を一度ブレイクしたタイミングで大胡田なつき(ボーカル)もステージに登場。合わせたのかはわからないが、演奏陣は黒の衣装で統一されており、大胡田も黒のドレスを着ている。
大胡田が登場してから最初にバンドが演奏され始めたのは、1曲目に演奏されたのはまさかの「素顔」。かつてメディアはもちろん、ライブでもスクリーンなどに一切顔を出すことをしなかった(今は普通に顔出しを解禁しているが、当時はフェスの大きなステージのモニターにも演奏している手元や後ろ姿しか写っていなかった)バンドが歌う、
「素直になれない 今の私を愛して
素顔になれずに 誰が為の歌を」
というフレーズ。この曲が収録されているアルバム「娑婆ラバ」がリリースされ、武道館でワンマンをやった時さえバンドは素顔を晒すことはしていなかったが、今は素直に素顔を晒しながらライブをすることを楽しんでいる。メンバーの後ろに並ぶ柱状の照明以外には特に演出のないステージがそのことを物語っている。
「素顔」がバラードと言っていいくらいにじっくりと大胡田の歌に浸らせるような曲なだけに、果たしてこの後の展開は?と思っていると、「ヨアケマエ」からは三澤も露崎もステージを動きながらその演奏力を遺憾なく発揮していく。間奏では大胡田も成田と向かい合うようにしてシンセを弾くのはこの曲ならでは。(よってこの曲が終わったらシンセはすぐ撤収された)
パスピエの曲は「単純なように聞こえる曲も実はかなり複雑」な曲が多いだけに、リズムに合わせて手拍子をしているつもりでもいつの間にかズレていく、ということもあるのだが、光が差しこむような飛びっきりのポップネスに振り切れた「贅沢ないいわけ」ではサビで大胡田に合わせて手拍子をする箇所があるなど、観客がライブに参加できるフックも用意されている。
いつにも増して露崎が低い姿勢でベースをうならせまくった「チャイナタウン」では三澤も前に出てきてギターソロを弾き、早くも最初のピークをこの序盤で迎えると、
成田「ちょっと前までは天気が微妙だったんだけど、みんなのおかげで晴れました!でもこんなに暑くなるとは思わなかったから、衣装選びを間違えた(笑)」
とまだ5曲を終えたばかりのメンバーが早くも大量の汗を拭うのも納得な通りに、この日は夏が再び戻ってきたのだろうか、というような30度を超えるくらいの暑い日となっており、それがこの日の野外会場ならではのライブの開放感につながっている。
夏のような気候ではあったものの、おそらく18時を過ぎた頃にはすっかり暗くなったこのあたりからは夜の野音ならではの神秘さを感じさせる雰囲気に。
最新ミニアルバムのタイトル曲である、あえて規則的なリズムと抑制の効いた大胡田のボーカルがシュールな歌詞を際立たせる「ネオンと虎」からは曲に合わせて様々な色の照明が明滅を繰り返しながら、ポップな「トロイメライ」、成田の美しいピアノの旋律と重厚なサウンドが大胡田のボーカルを際立たせるバラード「花」、最新作では「ネオンと虎」と対になるような複雑な構成で、かつて成田に
「コミュニケーションに難がある」
と言わしめた大胡田が歌うからこそ説得力が宿る「(dis)communication」と様々なタイプの曲を実にスムーズに織り交ぜてくる。
そして成田が久しぶり(武道館以来?)にショルダーキーボードを弾きながらステージを走り回り、三澤、露崎と並んで演奏するという、パスピエの正規メンバー4人がステージ前に居並ぶ形で披露された「脳内戦争」で再びアッパーに振り切れていくのだが、ここまで頭を空っぽにしてメンバーも観客も「楽しい!」と思えるような場面はこの曲以外にはそうそうない。成田は後で
「また3年後くらいにやるわ」
と言っていただけに、本当に大事なところでのみ演奏される曲になっていくのかもしれない。
大胡田が体を揺らしながら独特な踊りを見せるダンスナンバー「とおりゃんせ」、その大胡田が最後にはステージに倒れこむようにして歌い切る、和の要素を強く取り入れた「娑婆ラバ」の象徴的な曲である「蜘蛛の糸」から、フライデーナイトではなくてもフィーバーせざるを得ない「フィーバー」と、曲間も全くなく次々に曲を畳み掛けてくる。
パスピエはそもそもが成田が東京藝大出身だし、メンバーの見た目はどう見ても運動が得意ではないくらいに文系極まりない。しかしこうして10曲にもわたってMCも曲間も設けずにひたすら曲を演奏する姿は音楽アスリートと言ってもいいくらいだ。ただ演奏が上手いというだけではなく、メンバーの演奏する姿やステージでの動きの押し引きによる魅せ方を含めて、パスピエは本当にライブバンドだと思う。
文字どおりに真っ赤な照明がこの会場を燃え上がらせる中、大胡田がサビの最後のフレーズの
「ここがメッカ!」
を叫ぶようにして歌うことで、まさにこの野音がメッカ(憧れの場所)であることを強く示す「マッカメッカ」を演奏すると、成田が今回久しぶりに「印象」シリーズを復活させた理由を
「今回の「印象H」にはいろんな意味を含ませてて。「日比谷」のHだったり、来週の「服部緑地公園」のHだったり…。でも今日、新しい意味が一つ加わりました。それは「晴れ」のHです!」
と語ると、大胡田が
「ハネダのHって言うのかと思った(笑)」
とツッコミを入れ、これにはさすがの成田も
「そこまで言ったらぶん殴っていいよ(笑)」
と返す。この理知的な成田と天然極まりない大胡田の絡みが見れるのもライブならではである。
「東京の街に歌います」
と言って
「今日も東京の街は綺麗で ご覧よ、こんなに輝いて キミの横顔を照らす」
という歌詞が、普段は全く綺麗だと思わない東京の街が輝かせる「ON THE AIR」からはクライマックスへ突入していく。
成田のド派手なシンセのイントロがテンションを昂らせる「裏の裏」では大胡田が
「右か左か」
の歌詞に合わせて右と左を向きながら歌い、「MATATABISTEP」ではゆらゆらと体を動かしながら観客も踊らせていく。
そして成田のピアノによるイントロが終電が行ってしまったかのようなーそれはライブが終わってしまうかのようなー切なさを感じさせる「最終電車」で終了…かと思いきや、さらにトドメにドラマーの佐藤も含めたメンバーそれぞれのソロ回しを挟むことで、改めてこのバンドがとてつもない演奏技術を持った音楽集団であるということを示しながら、原曲よりもさらにテンポアップすることでライブならではの衝動とも両立させた「S.S」で熱気に包まれながら本編は終了した。
アンコールではメンバー全員が今回のライブTシャツに着替えて登場し、露崎、三澤もマイクを持って自らの口で観客への感謝を告げると、初披露となる新曲を演奏。まだタイトルやどんな形態で世に出るのかは発表されなかったが、シングルのタイトル曲としてリリースするんならこうした曲だろうな、というようなパスピエのポップな面を最大限に発揮された曲。そうした意味では「ネオンと虎」に収録された曲たちよりも振り切れた印象を感じた。
そして成田の軽快なピアノの音と、佐藤によるツービートを基調としたリズムが引っ張る「正しいままではいられない」が最後を飾るのだが、この曲を聴いていると、もう佐藤はもしできることなら(もちろん本人には自身のバンドも他の活動もあるのはわかっているが)、このバンドの正規ドラマーとしてメンバーになってくれたらいいのに、と思うくらいにこのバンドのサウンドの一つとして完璧に他のメンバーの音と溶け合い、これ以上ないくらいのグルーヴを生み出している。
正直、やおたくやが脱退した直後はまだそこがしっくりきておらず、若干違和感を感じてしまった時もあったのだが、それからもひたすらにライブを重ねてきたことで、今のパスピエは過去をはるかに凌ぐくらいの力を持つようになった。それをしっかり感じることができるライブだった。
しかしそれでもアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場し、
「何千回だって 何万回だって
もっとリアルに鮮明に描くよ
何千回だって 何万回だって
忘れないようにまた描くよ」
という歌詞が図らずともバンドのこれから先を描いた「ハイパーリアリスト」を演奏し、集大成的なセトリではあったが、バンドがさらにこの先を見据えていることをしっかりと示してみせたのだった。
パスピエは来年で結成10周年を迎える。そこまで続いてきたバンドで、しかもバンドとしての形が変わったバンドとなると、どうしても「バンドを続けていく」ということが目標になりがちだし、そうなるとなかなかクリエイティブに振り切れたものは作りにくくなっていく。
しかしパスピエからはそうした「続けていくのが目標」という感じは一切感じない。当たり前のように続いていくという空気がある。パスピエはそうしたことを口には出さないバンドだけれど、何よりも頼もしく感じるし、これからも我々の想像を飛び越えるようなものを作ってくれるんじゃないか、という期待を抱かせてくれる。
そしてそもそもパスピエは超絶技巧の集団であるだけに難解な演奏も多いし、ともすれば巧さ自慢的な曲になってしまったり、機械のように正確かつ手数が多いと無機質に感じてしまいがちなのだが、その巧さが全てポップかつ人間らしさを感じられる方に向かっている。それはデビュー時から中堅になってもバンドの形が変わっても変わらないし、今も進化の一途を辿っている。かつての武道館よりさらに先へ!というイメージはなくなったが、こうした規模感の会場をずっと埋めながら、長く愛されるバンドになっていく予感がする。
こうやってこのバンドのライブを日比谷野音で見れる。そんな、この世で1番贅沢だって思える時間を過ごしながら生きていたいの。
1.素顔
2.ヨアケマエ
3.贅沢ないいわけ
4.永すぎた春
5.チャイナタウン
6.シネマ
7.ネオンと虎
8.トロイメライ
9.花
10.(dis)communication
11.脳内戦争
12.とおりゃんせ
13.蜘蛛の糸
14.フィーバー
15.マッカメッカ
16.ON THE AIR
17.裏の裏
18.MATATABISTEP
19.最終電車
20.S.S.
encore
21.新曲
22.正しいままではいられない
encore2
23.ハイパーリアリスト
マッカメッカ
https://youtu.be/YrL3t9noMTU
Next→ 10/21 Base Ball Bear @日比谷野外音楽堂
17時30分という土曜日にしてもかなり早い時間を少し過ぎたあたりで客電が消えると、リーダーである成田ハネダ(キーボード)を先頭に、三澤(ギター)、露崎(ベース)、サポートドラマーの佐藤謙介(踊ってばかりの国、髭)の演奏陣が先にステージに登場。
その4人が先に各々の音を鳴らし始め、セッション的な演奏を始めると、その演奏を一度ブレイクしたタイミングで大胡田なつき(ボーカル)もステージに登場。合わせたのかはわからないが、演奏陣は黒の衣装で統一されており、大胡田も黒のドレスを着ている。
大胡田が登場してから最初にバンドが演奏され始めたのは、1曲目に演奏されたのはまさかの「素顔」。かつてメディアはもちろん、ライブでもスクリーンなどに一切顔を出すことをしなかった(今は普通に顔出しを解禁しているが、当時はフェスの大きなステージのモニターにも演奏している手元や後ろ姿しか写っていなかった)バンドが歌う、
「素直になれない 今の私を愛して
素顔になれずに 誰が為の歌を」
というフレーズ。この曲が収録されているアルバム「娑婆ラバ」がリリースされ、武道館でワンマンをやった時さえバンドは素顔を晒すことはしていなかったが、今は素直に素顔を晒しながらライブをすることを楽しんでいる。メンバーの後ろに並ぶ柱状の照明以外には特に演出のないステージがそのことを物語っている。
「素顔」がバラードと言っていいくらいにじっくりと大胡田の歌に浸らせるような曲なだけに、果たしてこの後の展開は?と思っていると、「ヨアケマエ」からは三澤も露崎もステージを動きながらその演奏力を遺憾なく発揮していく。間奏では大胡田も成田と向かい合うようにしてシンセを弾くのはこの曲ならでは。(よってこの曲が終わったらシンセはすぐ撤収された)
パスピエの曲は「単純なように聞こえる曲も実はかなり複雑」な曲が多いだけに、リズムに合わせて手拍子をしているつもりでもいつの間にかズレていく、ということもあるのだが、光が差しこむような飛びっきりのポップネスに振り切れた「贅沢ないいわけ」ではサビで大胡田に合わせて手拍子をする箇所があるなど、観客がライブに参加できるフックも用意されている。
いつにも増して露崎が低い姿勢でベースをうならせまくった「チャイナタウン」では三澤も前に出てきてギターソロを弾き、早くも最初のピークをこの序盤で迎えると、
成田「ちょっと前までは天気が微妙だったんだけど、みんなのおかげで晴れました!でもこんなに暑くなるとは思わなかったから、衣装選びを間違えた(笑)」
とまだ5曲を終えたばかりのメンバーが早くも大量の汗を拭うのも納得な通りに、この日は夏が再び戻ってきたのだろうか、というような30度を超えるくらいの暑い日となっており、それがこの日の野外会場ならではのライブの開放感につながっている。
夏のような気候ではあったものの、おそらく18時を過ぎた頃にはすっかり暗くなったこのあたりからは夜の野音ならではの神秘さを感じさせる雰囲気に。
最新ミニアルバムのタイトル曲である、あえて規則的なリズムと抑制の効いた大胡田のボーカルがシュールな歌詞を際立たせる「ネオンと虎」からは曲に合わせて様々な色の照明が明滅を繰り返しながら、ポップな「トロイメライ」、成田の美しいピアノの旋律と重厚なサウンドが大胡田のボーカルを際立たせるバラード「花」、最新作では「ネオンと虎」と対になるような複雑な構成で、かつて成田に
「コミュニケーションに難がある」
と言わしめた大胡田が歌うからこそ説得力が宿る「(dis)communication」と様々なタイプの曲を実にスムーズに織り交ぜてくる。
そして成田が久しぶり(武道館以来?)にショルダーキーボードを弾きながらステージを走り回り、三澤、露崎と並んで演奏するという、パスピエの正規メンバー4人がステージ前に居並ぶ形で披露された「脳内戦争」で再びアッパーに振り切れていくのだが、ここまで頭を空っぽにしてメンバーも観客も「楽しい!」と思えるような場面はこの曲以外にはそうそうない。成田は後で
「また3年後くらいにやるわ」
と言っていただけに、本当に大事なところでのみ演奏される曲になっていくのかもしれない。
大胡田が体を揺らしながら独特な踊りを見せるダンスナンバー「とおりゃんせ」、その大胡田が最後にはステージに倒れこむようにして歌い切る、和の要素を強く取り入れた「娑婆ラバ」の象徴的な曲である「蜘蛛の糸」から、フライデーナイトではなくてもフィーバーせざるを得ない「フィーバー」と、曲間も全くなく次々に曲を畳み掛けてくる。
パスピエはそもそもが成田が東京藝大出身だし、メンバーの見た目はどう見ても運動が得意ではないくらいに文系極まりない。しかしこうして10曲にもわたってMCも曲間も設けずにひたすら曲を演奏する姿は音楽アスリートと言ってもいいくらいだ。ただ演奏が上手いというだけではなく、メンバーの演奏する姿やステージでの動きの押し引きによる魅せ方を含めて、パスピエは本当にライブバンドだと思う。
文字どおりに真っ赤な照明がこの会場を燃え上がらせる中、大胡田がサビの最後のフレーズの
「ここがメッカ!」
を叫ぶようにして歌うことで、まさにこの野音がメッカ(憧れの場所)であることを強く示す「マッカメッカ」を演奏すると、成田が今回久しぶりに「印象」シリーズを復活させた理由を
「今回の「印象H」にはいろんな意味を含ませてて。「日比谷」のHだったり、来週の「服部緑地公園」のHだったり…。でも今日、新しい意味が一つ加わりました。それは「晴れ」のHです!」
と語ると、大胡田が
「ハネダのHって言うのかと思った(笑)」
とツッコミを入れ、これにはさすがの成田も
「そこまで言ったらぶん殴っていいよ(笑)」
と返す。この理知的な成田と天然極まりない大胡田の絡みが見れるのもライブならではである。
「東京の街に歌います」
と言って
「今日も東京の街は綺麗で ご覧よ、こんなに輝いて キミの横顔を照らす」
という歌詞が、普段は全く綺麗だと思わない東京の街が輝かせる「ON THE AIR」からはクライマックスへ突入していく。
成田のド派手なシンセのイントロがテンションを昂らせる「裏の裏」では大胡田が
「右か左か」
の歌詞に合わせて右と左を向きながら歌い、「MATATABISTEP」ではゆらゆらと体を動かしながら観客も踊らせていく。
そして成田のピアノによるイントロが終電が行ってしまったかのようなーそれはライブが終わってしまうかのようなー切なさを感じさせる「最終電車」で終了…かと思いきや、さらにトドメにドラマーの佐藤も含めたメンバーそれぞれのソロ回しを挟むことで、改めてこのバンドがとてつもない演奏技術を持った音楽集団であるということを示しながら、原曲よりもさらにテンポアップすることでライブならではの衝動とも両立させた「S.S」で熱気に包まれながら本編は終了した。
アンコールではメンバー全員が今回のライブTシャツに着替えて登場し、露崎、三澤もマイクを持って自らの口で観客への感謝を告げると、初披露となる新曲を演奏。まだタイトルやどんな形態で世に出るのかは発表されなかったが、シングルのタイトル曲としてリリースするんならこうした曲だろうな、というようなパスピエのポップな面を最大限に発揮された曲。そうした意味では「ネオンと虎」に収録された曲たちよりも振り切れた印象を感じた。
そして成田の軽快なピアノの音と、佐藤によるツービートを基調としたリズムが引っ張る「正しいままではいられない」が最後を飾るのだが、この曲を聴いていると、もう佐藤はもしできることなら(もちろん本人には自身のバンドも他の活動もあるのはわかっているが)、このバンドの正規ドラマーとしてメンバーになってくれたらいいのに、と思うくらいにこのバンドのサウンドの一つとして完璧に他のメンバーの音と溶け合い、これ以上ないくらいのグルーヴを生み出している。
正直、やおたくやが脱退した直後はまだそこがしっくりきておらず、若干違和感を感じてしまった時もあったのだが、それからもひたすらにライブを重ねてきたことで、今のパスピエは過去をはるかに凌ぐくらいの力を持つようになった。それをしっかり感じることができるライブだった。
しかしそれでもアンコールを求める声は止まず、再びメンバーが登場し、
「何千回だって 何万回だって
もっとリアルに鮮明に描くよ
何千回だって 何万回だって
忘れないようにまた描くよ」
という歌詞が図らずともバンドのこれから先を描いた「ハイパーリアリスト」を演奏し、集大成的なセトリではあったが、バンドがさらにこの先を見据えていることをしっかりと示してみせたのだった。
パスピエは来年で結成10周年を迎える。そこまで続いてきたバンドで、しかもバンドとしての形が変わったバンドとなると、どうしても「バンドを続けていく」ということが目標になりがちだし、そうなるとなかなかクリエイティブに振り切れたものは作りにくくなっていく。
しかしパスピエからはそうした「続けていくのが目標」という感じは一切感じない。当たり前のように続いていくという空気がある。パスピエはそうしたことを口には出さないバンドだけれど、何よりも頼もしく感じるし、これからも我々の想像を飛び越えるようなものを作ってくれるんじゃないか、という期待を抱かせてくれる。
そしてそもそもパスピエは超絶技巧の集団であるだけに難解な演奏も多いし、ともすれば巧さ自慢的な曲になってしまったり、機械のように正確かつ手数が多いと無機質に感じてしまいがちなのだが、その巧さが全てポップかつ人間らしさを感じられる方に向かっている。それはデビュー時から中堅になってもバンドの形が変わっても変わらないし、今も進化の一途を辿っている。かつての武道館よりさらに先へ!というイメージはなくなったが、こうした規模感の会場をずっと埋めながら、長く愛されるバンドになっていく予感がする。
こうやってこのバンドのライブを日比谷野音で見れる。そんな、この世で1番贅沢だって思える時間を過ごしながら生きていたいの。
1.素顔
2.ヨアケマエ
3.贅沢ないいわけ
4.永すぎた春
5.チャイナタウン
6.シネマ
7.ネオンと虎
8.トロイメライ
9.花
10.(dis)communication
11.脳内戦争
12.とおりゃんせ
13.蜘蛛の糸
14.フィーバー
15.マッカメッカ
16.ON THE AIR
17.裏の裏
18.MATATABISTEP
19.最終電車
20.S.S.
encore
21.新曲
22.正しいままではいられない
encore2
23.ハイパーリアリスト
マッカメッカ
https://youtu.be/YrL3t9noMTU
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