KANA-BOON KANA-BOONのGO! GO! 5周年! シーズン4 ワンマンツアー「Let's go 55 ONE-MAAN!!」 @Zepp Tokyo 10/3
- 2018/10/04
- 00:11
今年でメジャーデビュー5周年を迎え、MV集とカップリング集のリリース、そして今月から47都道府県55公演ツアーを開催という、周年イヤーを驀進中のKANA-BOON。
今年の夏も各地のフェスに出演しまくるというライブ三昧の夏を終え、隠しておくにはもったいないくらいの名曲ばかりのカップリング集第2弾のリリース直後というタイミングで開催される今回のツアー。この日のZepp Tokyoでの2daysの初日はツアー2公演目というまだまだ序盤。
実は自分はチケットを取っておらず、当日券を買って中に入ったのだが、客席は半分くらいしか埋まっていない(1番後ろのブロックは封鎖されている)という状況には、夏フェスでの集客っぷりを思うと、多少なりともショックを受けざるを得ない。2ndアルバム「TIME」リリース時は武道館も即完だっただけに。
5周年だからか、郷ひろみの曲がSEでかかると、周年ツアーであってもいつもと全く変わらぬ上下真っ黒な服を着た古賀を先頭に1人ずつメンバーがステージに登場し、それぞれが楽器を手にすると、1stフルアルバム「DOPPEL」の1曲目である「1.2. step to you」でスタートし、早くも手拍子が起こって曲とバンドのスピード感をさらに加速させていく。
周年ツアーということで幅広い楽曲が演奏されるのは予想通りとはいえ、2ndアルバム「TIME」の1曲目である「タイムアウト」、フルアルバムとして最新作となる「NAMiDA」の1曲目を担う「ディストラクションビートミュージック」と、初日の千葉LOOKから一気にキャパが15倍くらいの会場になっているだけに、序盤こそやや緊張した感じもあったが、こうして過去のアルバムの1曲目から最新のアルバムの1曲目に繋いでいくことで、バンドの進化と変化をしっかりと感じさせるような流れを作っている。
曲間には観客から「愛してる!」という野太い叫びが上がり、鮪も「俺も愛してるよ(笑)」と返すという客席とのコミュニケーションを取ると、すぐさま「ウォーリーヒーロー」と、初期のこのバンドの代名詞的な(そして今でもそのイメージが根強い)高速4つ打ちロックで踊らせまくっていく。
タイトル通りにイントロでクラクションの音が鳴ってから演奏が始まった「クラクション」では、鮪の声の伸びやかさと、ハイトーンなだけではない本質的な歌の上手さに改めて驚かされる。一聴すると簡単なような気もするKANA-BOONの曲はカラオケで歌ったりすると実に歌うのが難しい。それをいともたやすく歌いこなしている鮪は(自身が作った曲とはいえ)、さすが東京芸大出身という音楽の専門家集団であるパスピエのメンバーたちが
「鮪さんはめちゃくちゃ歌が上手い」
と評したことはあるし、その歌の力は確実にデビュー当初よりもはるかに進化を果たしている。
ではデビュー時から進化を遂げているのは曲を作って歌う鮪だけなのか?というと、その鮪とともにメンバーそれぞれもしっかり1人のミュージシャンとして進化を遂げているのを示すのが「talking」の間奏でのソロ回し。それまでのギターがイントロから引っ張る曲とは異なり、飯田のベースから始まるという構成からも当時のバンドのそうした個々のプレイヤーとしてのレベルアップの意識は感じられるが、このソロは特に飯田と小泉のリズム隊が実に頼もしい存在になったことをしっかり示している。古賀は最初と最後のソロを担うのだが、最後のギターソロ時に鮪と飯田が向かい合って演奏しているのも実に楽しそうだ。
そんなメンバーたちの頼もしくも楽しそうな姿を心にインプットしたくなるような「MUSIC」を演奏すると、飯田が前日に楽器屋に行ってベースを試奏しようとしたら、店員がテクニックを見せつけてきた、という飯田らしい楽器屋あるあるで笑わせつつ、その楽器屋が渋谷の店だったらしく、
「渋谷に行ったらデビューした時にみんなで遊んでた時を思い出して。もちろん夜な夜なクラブに行ったりするわけじゃなくて(笑)
4人で渋谷のゲーセン行ったりして。電車で帰れるのに、タクシーに乗ってみようぜ!って言ってタクシーで帰ったんだけど、全員タクシーに乗った経験がなかったから、4人も乗れるっていうのを知らなくて、2人ずつ2台に分かれて乗って帰った(笑)」
というデビュー時の4人の無垢さを感じさせる話をしつつ、その頃の曲だけではなく最新の曲も、ということで最新ミニアルバムのタイトル曲である「アスター」へ。
タイトル通りに(同名の高級中華料理屋のイメージが強い)オリエンタルな雰囲気のサウンドはこれまでになかったバンドの新境地とも言えるし、そうして幅は広がっているが、鮪のメロディーメーカーとしてのセンスは全く失われていないというあたりに、今やどんなサウンドやジャンルを取り入れてもKANA-BOONの音楽になるというくらいにバンドの軸が太く強くなっていることをしっかり示すと、そこからはアッパーに踊らせまくるのではなく、音と言葉に浸らせるような曲が続く。
とりわけ「NAMiDA」のタイトル曲である「涙」は聴いている側が涙を流してしまいそうなくらいのエモーションを発し、季節外れとも言えるような曲である「スノーグローブ」に繋げることで、その季節が近づきつつあることに気付かされる。このツアーは55公演ということで3月まで続いていくが、この曲がまさに雪が降る中で聴けるような土地やタイミングも必ず訪れることだろう。
鮪が今度は古賀に「最近何して遊んでるの?」と問いかけると、
「下北沢にボードゲームとかカードゲームしに行ってる」
という意外な答えが返ってきたことにより、観客はややどよめいたので、
「え!?イメージ的にあんまりそういうこと言わない方がいい!?」
となぜかイメージを気にしていた。ちなみに小泉は最近は休みの日は家から出ないでひたすら食べて寝てを繰り返している、鮪いわく「クソニート」な生活を送っているらしい。
そこからの後半はアッパーに攻めまくるモードに。KANA-BOONの中で最もラウドかつシリアスな「Fighter」はそのサウンドとともに
「輝きは刹那 戦場で咲く華のように
美しくあれ戦士よ」
という「花」ではなくあえて「華」を使うところにタイアップアニメの内容に合わせながらも、それを知らなくても全く無理に合わせに行った感じを受けないという、「シルエット」の時と同様に実に鮪の作家性とタイアップの戦い方の上手さは本当に素晴らしい。鮪が愛する全てのアニメや漫画のタイアップをやって欲しいと思えるほど。
そのままアウトロとイントロを繋げるようにしたライブアレンジで突入した「ワールド」、チューニングしながら歌う鮪の早口ボーカルが冴え渡る「盛者必衰の理、お断り」と、一目見ただけでライブの経験を重ねたことでできることが増えているのがよくわかる。
「フルドライブ」でさらにその勢いを加速させると、
「だから今日も君を歌うのだ
そんな日々を救うのはやはり君なのだ」
と、この日何度も「愛してる!」という叫びをくれた観客に対して歌っているように聴こえる「DOPPEL」からの「羽虫と自販機」、BメロにPPPHのリズムを取り入れた「彷徨う日々とファンファーレ」と新旧の曲を違和感なくクライマックスで演奏すると、イントロで大歓声があがった「シルエット」へ。
「大事にしたいもの 持って大人になるんだ
どんな時も離さずに守り続けよう
そしたらいつの日にか
何もかもを笑えるさ」
というフレーズがこの日最大のエモーションを増幅させながら、まだまだ見た目は幼く見える4人が、様々な経験を重ねて大人になった今だからこそ胸に響いてきて、思わず感動してしまった。それだけの説得力を今のこのバンドのライブは持っているということだ。
そして鮪は最近の台風などの自然災害について語り出し、
「今まではそうしたことに関して、音楽でどうこうしたりすることを考えてなかった。でもせっかく音楽をやっているし、音楽をずっと聴いて生きてきたから、今は音楽でそういうことについて歌ったり表現したいって思うようになった。それは5年続けてきたからできるようになったことでもあるけど、僕らはこれからも6年も、10年もずっとこのバンドを続けていくから。みんなにとってこれからも僕らの音楽が生きていく支えになったり、一緒に生きていけたら嬉しいです」
とこれからもバンドを続けていく覚悟を語り、それを示すべく演奏されたのは、リリースされたばかりのカップリング集第2弾に1曲だけ収録された新曲「夜の窓辺から」。
ミドルテンポの曲という意味では大名曲「眠れぬ森の君のため」を彷彿させる部分もあるが、「眠れぬ~」があくまで「僕と君」の2人だけの世界の曲だったのに対し、「夜の窓辺から」は世界全体や社会を歌った曲になっている。鮪の言う通りに、今のKANA-BOONはそうしたことを歌えるバンドになっている。そのことを示すことは最新の自分たちの姿やこれからの覚悟を示すこと。周年ライブというのはとかく総括的なものになりがちだし、実際にそうした側面も強かったこの日のライブだが、最後のこの曲は総括ではなく、バンドのその先を示していたし、それが何よりも頼もしかった。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて現れると、この日の観客がどこから来たのか問いかける鮪。
「我こそは、っていう遠いところから来た人いる?」
と聞くと、
「ドイツ!」
というとんでもない地名が返ってきて(本当に外人の女性の方だった)、
「想像よりもはるかに遠かった(笑)」
とビックリしたのもつかの間、さらに
「エジプト!」
という地名も前方ブロックにいた外人の男性の方から飛び出し、
「今日なんなん!?オリンピックだからみんな早めに来てるんかな?(笑)」
とこの日の客層の広さに驚きながら、
「あとツアーは53本。そう考えるとめちゃくちゃあるな(笑)
みんなが住んでいる街にも行くだろうし、明日もセトリ変えるから、来れる人は明日も来てね」
と翌日の2days2日目の告知をしつつ、「ないものねだり」で大合唱を巻き起こし、ラストは「バトンロード」でバンドがこれからも進んで行くという意志を音楽で示した。
MCもありながらもそれはあくまで最小限。自身の音楽を2時間以内に濃縮した、ひたすらにこれまでと、そしてKANA-BOONの未来を示したツアー2日目だった。
KANA-BOONのパブリックイメージっていうのはやはり高速4つ打ちダンスロックをやる、メンバーがふわふわした感じのバンド、っていうものだろうか。
しかし以前の飯田の騒動以降、自分のこのバンドへのイメージは良い意味で全く変わった。
あの騒動の後のライブで、世間を騒がせたことをバンドはメンバー全員で謝罪していた。正直、わざわざライブのステージで言わなくてもいいんじゃないか、とも思っていたし、実際に「ライブのステージで聞きたくなかった」という人もいたはず。
でもKANA-BOONはそれを自分の口で、自分の言葉でしっかりと伝えた。あの騒動が、自分たちがなぜ音楽をやっているのか、ということと改めて向き合うきっかけになったからだ。もしかしたら音楽を続けられなくなるかもしれない。そんな出来事があったからこその、これからもこのバンドを続けていきたいという意志。それが今のライブからはものすごく強く感じられる。
まだ5年なのか、もう5年なのか。良いこともそうでないこともたくさんあった5年間だったと思うが、少なくともライブの内容だけは良い方向にしか向かっていない。それが揺るがなければ、KANA-BOONはこれからもきっと大丈夫だ。
動員のことなんか途中から全く気にならなくなるくらいの素晴らしいライブだった。セトリも変わるとのことだし、明日も行こうかな。
1.1.2. step to you
2.タイムアウト
3.ディストラクションビートミュージック
4.ウォーリーヒーロー
5.クラクション
6.talking
7.MUSIC
8.アスター
9.結晶星
10.涙
11.スノーグローブ
12.Fighter
13.ワールド
14.盛者必衰の理、お断り
15.フルドライブ
16.羽虫と自販機
17.彷徨う日々とファンファーレ
18.シルエット
19.夜の窓辺から
encore
20.ないものねだり
21.バトンロード
Next→ 10/4 KANA-BOON @Zepp Tokyo (チケット未所持)
今年の夏も各地のフェスに出演しまくるというライブ三昧の夏を終え、隠しておくにはもったいないくらいの名曲ばかりのカップリング集第2弾のリリース直後というタイミングで開催される今回のツアー。この日のZepp Tokyoでの2daysの初日はツアー2公演目というまだまだ序盤。
実は自分はチケットを取っておらず、当日券を買って中に入ったのだが、客席は半分くらいしか埋まっていない(1番後ろのブロックは封鎖されている)という状況には、夏フェスでの集客っぷりを思うと、多少なりともショックを受けざるを得ない。2ndアルバム「TIME」リリース時は武道館も即完だっただけに。
5周年だからか、郷ひろみの曲がSEでかかると、周年ツアーであってもいつもと全く変わらぬ上下真っ黒な服を着た古賀を先頭に1人ずつメンバーがステージに登場し、それぞれが楽器を手にすると、1stフルアルバム「DOPPEL」の1曲目である「1.2. step to you」でスタートし、早くも手拍子が起こって曲とバンドのスピード感をさらに加速させていく。
周年ツアーということで幅広い楽曲が演奏されるのは予想通りとはいえ、2ndアルバム「TIME」の1曲目である「タイムアウト」、フルアルバムとして最新作となる「NAMiDA」の1曲目を担う「ディストラクションビートミュージック」と、初日の千葉LOOKから一気にキャパが15倍くらいの会場になっているだけに、序盤こそやや緊張した感じもあったが、こうして過去のアルバムの1曲目から最新のアルバムの1曲目に繋いでいくことで、バンドの進化と変化をしっかりと感じさせるような流れを作っている。
曲間には観客から「愛してる!」という野太い叫びが上がり、鮪も「俺も愛してるよ(笑)」と返すという客席とのコミュニケーションを取ると、すぐさま「ウォーリーヒーロー」と、初期のこのバンドの代名詞的な(そして今でもそのイメージが根強い)高速4つ打ちロックで踊らせまくっていく。
タイトル通りにイントロでクラクションの音が鳴ってから演奏が始まった「クラクション」では、鮪の声の伸びやかさと、ハイトーンなだけではない本質的な歌の上手さに改めて驚かされる。一聴すると簡単なような気もするKANA-BOONの曲はカラオケで歌ったりすると実に歌うのが難しい。それをいともたやすく歌いこなしている鮪は(自身が作った曲とはいえ)、さすが東京芸大出身という音楽の専門家集団であるパスピエのメンバーたちが
「鮪さんはめちゃくちゃ歌が上手い」
と評したことはあるし、その歌の力は確実にデビュー当初よりもはるかに進化を果たしている。
ではデビュー時から進化を遂げているのは曲を作って歌う鮪だけなのか?というと、その鮪とともにメンバーそれぞれもしっかり1人のミュージシャンとして進化を遂げているのを示すのが「talking」の間奏でのソロ回し。それまでのギターがイントロから引っ張る曲とは異なり、飯田のベースから始まるという構成からも当時のバンドのそうした個々のプレイヤーとしてのレベルアップの意識は感じられるが、このソロは特に飯田と小泉のリズム隊が実に頼もしい存在になったことをしっかり示している。古賀は最初と最後のソロを担うのだが、最後のギターソロ時に鮪と飯田が向かい合って演奏しているのも実に楽しそうだ。
そんなメンバーたちの頼もしくも楽しそうな姿を心にインプットしたくなるような「MUSIC」を演奏すると、飯田が前日に楽器屋に行ってベースを試奏しようとしたら、店員がテクニックを見せつけてきた、という飯田らしい楽器屋あるあるで笑わせつつ、その楽器屋が渋谷の店だったらしく、
「渋谷に行ったらデビューした時にみんなで遊んでた時を思い出して。もちろん夜な夜なクラブに行ったりするわけじゃなくて(笑)
4人で渋谷のゲーセン行ったりして。電車で帰れるのに、タクシーに乗ってみようぜ!って言ってタクシーで帰ったんだけど、全員タクシーに乗った経験がなかったから、4人も乗れるっていうのを知らなくて、2人ずつ2台に分かれて乗って帰った(笑)」
というデビュー時の4人の無垢さを感じさせる話をしつつ、その頃の曲だけではなく最新の曲も、ということで最新ミニアルバムのタイトル曲である「アスター」へ。
タイトル通りに(同名の高級中華料理屋のイメージが強い)オリエンタルな雰囲気のサウンドはこれまでになかったバンドの新境地とも言えるし、そうして幅は広がっているが、鮪のメロディーメーカーとしてのセンスは全く失われていないというあたりに、今やどんなサウンドやジャンルを取り入れてもKANA-BOONの音楽になるというくらいにバンドの軸が太く強くなっていることをしっかり示すと、そこからはアッパーに踊らせまくるのではなく、音と言葉に浸らせるような曲が続く。
とりわけ「NAMiDA」のタイトル曲である「涙」は聴いている側が涙を流してしまいそうなくらいのエモーションを発し、季節外れとも言えるような曲である「スノーグローブ」に繋げることで、その季節が近づきつつあることに気付かされる。このツアーは55公演ということで3月まで続いていくが、この曲がまさに雪が降る中で聴けるような土地やタイミングも必ず訪れることだろう。
鮪が今度は古賀に「最近何して遊んでるの?」と問いかけると、
「下北沢にボードゲームとかカードゲームしに行ってる」
という意外な答えが返ってきたことにより、観客はややどよめいたので、
「え!?イメージ的にあんまりそういうこと言わない方がいい!?」
となぜかイメージを気にしていた。ちなみに小泉は最近は休みの日は家から出ないでひたすら食べて寝てを繰り返している、鮪いわく「クソニート」な生活を送っているらしい。
そこからの後半はアッパーに攻めまくるモードに。KANA-BOONの中で最もラウドかつシリアスな「Fighter」はそのサウンドとともに
「輝きは刹那 戦場で咲く華のように
美しくあれ戦士よ」
という「花」ではなくあえて「華」を使うところにタイアップアニメの内容に合わせながらも、それを知らなくても全く無理に合わせに行った感じを受けないという、「シルエット」の時と同様に実に鮪の作家性とタイアップの戦い方の上手さは本当に素晴らしい。鮪が愛する全てのアニメや漫画のタイアップをやって欲しいと思えるほど。
そのままアウトロとイントロを繋げるようにしたライブアレンジで突入した「ワールド」、チューニングしながら歌う鮪の早口ボーカルが冴え渡る「盛者必衰の理、お断り」と、一目見ただけでライブの経験を重ねたことでできることが増えているのがよくわかる。
「フルドライブ」でさらにその勢いを加速させると、
「だから今日も君を歌うのだ
そんな日々を救うのはやはり君なのだ」
と、この日何度も「愛してる!」という叫びをくれた観客に対して歌っているように聴こえる「DOPPEL」からの「羽虫と自販機」、BメロにPPPHのリズムを取り入れた「彷徨う日々とファンファーレ」と新旧の曲を違和感なくクライマックスで演奏すると、イントロで大歓声があがった「シルエット」へ。
「大事にしたいもの 持って大人になるんだ
どんな時も離さずに守り続けよう
そしたらいつの日にか
何もかもを笑えるさ」
というフレーズがこの日最大のエモーションを増幅させながら、まだまだ見た目は幼く見える4人が、様々な経験を重ねて大人になった今だからこそ胸に響いてきて、思わず感動してしまった。それだけの説得力を今のこのバンドのライブは持っているということだ。
そして鮪は最近の台風などの自然災害について語り出し、
「今まではそうしたことに関して、音楽でどうこうしたりすることを考えてなかった。でもせっかく音楽をやっているし、音楽をずっと聴いて生きてきたから、今は音楽でそういうことについて歌ったり表現したいって思うようになった。それは5年続けてきたからできるようになったことでもあるけど、僕らはこれからも6年も、10年もずっとこのバンドを続けていくから。みんなにとってこれからも僕らの音楽が生きていく支えになったり、一緒に生きていけたら嬉しいです」
とこれからもバンドを続けていく覚悟を語り、それを示すべく演奏されたのは、リリースされたばかりのカップリング集第2弾に1曲だけ収録された新曲「夜の窓辺から」。
ミドルテンポの曲という意味では大名曲「眠れぬ森の君のため」を彷彿させる部分もあるが、「眠れぬ~」があくまで「僕と君」の2人だけの世界の曲だったのに対し、「夜の窓辺から」は世界全体や社会を歌った曲になっている。鮪の言う通りに、今のKANA-BOONはそうしたことを歌えるバンドになっている。そのことを示すことは最新の自分たちの姿やこれからの覚悟を示すこと。周年ライブというのはとかく総括的なものになりがちだし、実際にそうした側面も強かったこの日のライブだが、最後のこの曲は総括ではなく、バンドのその先を示していたし、それが何よりも頼もしかった。
アンコールではメンバーがツアーTシャツに着替えて現れると、この日の観客がどこから来たのか問いかける鮪。
「我こそは、っていう遠いところから来た人いる?」
と聞くと、
「ドイツ!」
というとんでもない地名が返ってきて(本当に外人の女性の方だった)、
「想像よりもはるかに遠かった(笑)」
とビックリしたのもつかの間、さらに
「エジプト!」
という地名も前方ブロックにいた外人の男性の方から飛び出し、
「今日なんなん!?オリンピックだからみんな早めに来てるんかな?(笑)」
とこの日の客層の広さに驚きながら、
「あとツアーは53本。そう考えるとめちゃくちゃあるな(笑)
みんなが住んでいる街にも行くだろうし、明日もセトリ変えるから、来れる人は明日も来てね」
と翌日の2days2日目の告知をしつつ、「ないものねだり」で大合唱を巻き起こし、ラストは「バトンロード」でバンドがこれからも進んで行くという意志を音楽で示した。
MCもありながらもそれはあくまで最小限。自身の音楽を2時間以内に濃縮した、ひたすらにこれまでと、そしてKANA-BOONの未来を示したツアー2日目だった。
KANA-BOONのパブリックイメージっていうのはやはり高速4つ打ちダンスロックをやる、メンバーがふわふわした感じのバンド、っていうものだろうか。
しかし以前の飯田の騒動以降、自分のこのバンドへのイメージは良い意味で全く変わった。
あの騒動の後のライブで、世間を騒がせたことをバンドはメンバー全員で謝罪していた。正直、わざわざライブのステージで言わなくてもいいんじゃないか、とも思っていたし、実際に「ライブのステージで聞きたくなかった」という人もいたはず。
でもKANA-BOONはそれを自分の口で、自分の言葉でしっかりと伝えた。あの騒動が、自分たちがなぜ音楽をやっているのか、ということと改めて向き合うきっかけになったからだ。もしかしたら音楽を続けられなくなるかもしれない。そんな出来事があったからこその、これからもこのバンドを続けていきたいという意志。それが今のライブからはものすごく強く感じられる。
まだ5年なのか、もう5年なのか。良いこともそうでないこともたくさんあった5年間だったと思うが、少なくともライブの内容だけは良い方向にしか向かっていない。それが揺るがなければ、KANA-BOONはこれからもきっと大丈夫だ。
動員のことなんか途中から全く気にならなくなるくらいの素晴らしいライブだった。セトリも変わるとのことだし、明日も行こうかな。
1.1.2. step to you
2.タイムアウト
3.ディストラクションビートミュージック
4.ウォーリーヒーロー
5.クラクション
6.talking
7.MUSIC
8.アスター
9.結晶星
10.涙
11.スノーグローブ
12.Fighter
13.ワールド
14.盛者必衰の理、お断り
15.フルドライブ
16.羽虫と自販機
17.彷徨う日々とファンファーレ
18.シルエット
19.夜の窓辺から
encore
20.ないものねだり
21.バトンロード
Next→ 10/4 KANA-BOON @Zepp Tokyo (チケット未所持)
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[レビュー] coldrain 「20180206 LIVE AT BUDOKAN」