[レビュー] coldrain 「20180206 LIVE AT BUDOKAN」
- 2018/09/30
- 18:43
先日、SPACE SHOWER TVのMONSTER ROCKを見ていたら、とあるライブ映像に釘付けになった。それはcoldrainが今年2月に行った、初の日本武道館でのワンマンライブだった。
その模様を収録したBlu-ray、DVDが発売になったので、あれはフルに見ないといけない、ということで購入し、再生。
まるで映画のような、と言うとあまりにありきたりだが、メンバーの出で立ちが本当にそのままハリウッド映画に出てきてもおかしくないようなものなだけに、そうした形容詞しか出てこないオープニング映像。
メンバーの中で最後に武道館のステージに足を踏み入れたMasatoが階段を登る時の様子を至近距離で捉えた臨場感は映像作品ならでは。
「会いたかったぞ、武道館!」
とMasatoが叫んで「ENVY」からスタートすると、武道館の広いステージを目一杯に使った映像とこのバンドのラウドロックは実に相性がいいことが瞬時にわかる。これはこのバンドの音楽が元からこうした大会場で鳴らされるべきスケールを有しており、それが極まったのが昨年リリースされた、この時点での最新作である「FATELESS」であるというくらいに、その収録曲たちはまるでこの日、この場所で演奏されるために作られたとすら思えてくる。
「FIRE IN THE SKY」でのYKCのタッピングと炎が吹き上がる演出、何度も近寄っては目を合わせながらリズムを合わせるR×Y×OとKatsuma、激しく動いたりジャンプしたりというアクションを見せながらもコーラスとしても楽曲の背骨を支えるSugi、メロディとシャウトで歌い方が全く違うのがわかるMasatoと、ステージの上をあらゆる角度から映しているのはもちろん素晴らしいが、それ以上に客席が何度も映し出される。そこにはオールスタンディングのアリーナで己を解放するかのように笑顔でダイブしていく人たち、スタンド席でメンバーの姿を一瞬たりとも目を離さずにしっかり見ている人たち…。
ただのライブ映像ではなくて、この日の日本武道館の全貌がしっかり収められているのが何よりも素晴らしい。
「何かを信じることと、信仰に溺れることは違う。戦争がなくなるようにと思って作りました」
とMasatoが説明してから演奏された「LOST IN FAITH」も、音だけを聴くと暴力的とすら思うくらいにラウドだ。でもその中に込められたメッセージはどこまでも慈悲と優しさに満ちている。それは演奏を見ればすぐにわかる。ただ激しいだけのバンドだったらこの規模までは絶対に来れない。そうした様々な感情を表現できるライブができるからこそ、このバンドはこうしてこのステージに立っている。
しかし音の重さと強さはやはりとんでもないものがあるが、その個々の音が全くバラバラにならず、一つの塊としてしか聞こえてこない。それをもたらしているのは間違いなくメンバー同士の絆であろう。決して順風満帆にここまで来たバンドではないし、様々なトラブルや困難を乗り越えてきたストーリーを持ったバンドであるというのは周知の通りだが、周りのバンドたちがラウドロックに他のジャンルのサウンドを取り入れることでオリジナリティを確立していったのに対し、このバンドはひたすらに正統派と言っていいくらいにラウドロックの芯の部分を研ぎ澄ませてきた。その意識をメンバー全員が完璧に共有できているからこそ宿る音の説得力と人間性。だからこそ中盤の代表曲連発の、激しさが増し続ける場面であっても見ていて感動してしまう。
それはMasatoの
「coldrainのメンバーはみんなcoldrainの大ファンなんだっていうのが「FATELESS」を作っている時に改めてわかった。大好きなバンドの新譜みたいに本当に楽しみにしていたから」
という言葉にも現れている。
そのMCの後に演奏された「FATELESS」収録のバラード曲「STAY」では突如としてストリングサウンドが加わり、何事かと思っていると、スクリーンがステージ上部にスライドし、Katsumaのドラムセットの後ろには総勢12名にも及ぶ、ヴァイオリンやチェロといったストリングス隊の姿が。そのストリングスのサウンドがcoldrainの曲の壮大さをさらに別次元に引き上げているし、Masatoの歌唱力の素晴らしさも引き立つ。
なかなかラウドロックという形態にストリングス隊を入れるようなバンドはいないし、これはYKCとSugiのギタリストにとっては実に難しいながらも貴重な体験になったはずだ。これまでに自身のギターの音を他の弦楽器と合わせることなんてなかったはずだから。
しかもそれがバラード曲だけでなく、「RUNAWAY」というラウドど真ん中な曲でもストリングスとの融合は続いている。ストリングス隊がいるライブでこんなにダイブが起きたことが今まであったのだろうか。この発想力とそれを実現できたのはバンドの技術はもちろん、ひたすらにラウドロックのみを追求してきたバンドの精神あってこそ。
自分はこの場面を見てこの映像作品を買おうと思ったし、それが映像だけでなくてライブCDとしていつでも聴けるというのはバンド側は実にファンの望むことをわかっている。
ストリングス隊がいなくなり、再びバンドだけになると、丁寧に音を紡いでいたパートから再び感情と衝動を爆発させていく。「DIE TOMORROW」ではSugiがセンターに出てくると、Masatoとともに台の上に立ち、MasatoがマイクをSugiの口元に添えてコーラスをさせる。そのフォーメーションの実に見事なこと。Katsumaはその様子を見て自身の後ろにあるカメラに向けて笑顔を見せる。決してわかりやすいパフォーマンスではないが、これは本当に高度な技術と様々な経験を経てきたからこそできることだ。
さらにはMasatoがラウドロックバンドとして先輩たちから受け取ったものについて、亡くなったPay money To my PainのKやLINKIN PARKのチェスターの名前を挙げた後に、彼らの思いを継ぐように演奏された「CONFESSION」、客席でスマホライトが輝く「THE STORY」はギタリスト2人の繊細さと、このバンドの軸にあるのはどれだけ音がラウドであってもメロディと歌であるということを示すアコースティック編成。ストリングスも含め、現状の自分たちができることを全てこの武道館で見せようとしている。
それにしても、だ。本編だけでも余裕で20曲を超えるくらいの大ボリュームにもかかわらず、Masatoの喉は一切辛さを見せないし、なんなら終盤になるにつれてさらに迫力を増している感すらあるし、それはバンドの演奏も同じ。もはや体力という概念を超えたゾーンにバンドが突入しているし、客席もこの段階でもダイブはもちろん、左回りのサークルが発生したりと、一切ダレることがない、終始クライマックス状態。バンドだけでなく、この武道館全体が限界のさらに先の境地に突入しているし、バンドを代表する1曲である「FINAL DESTINATION」が24曲目とは思えないくらいの大合唱と熱量に満ちている。
アンコールでの「THE WAR IS ON」もまたストリングス隊の参加によってさらに壮大さを増し、Masatoが本編最後に語っていた、「バンドのこれからの10年の可能性」をこれまでとは違った角度から感じさせる。
そしてついに最後の28曲目。かつて言われた様々な悔しいことを思い出しながら、
「激しくて叫びまくってて英語だけの曲」
と、それはまさにcoldrainの音楽そのものであるスタイルを貫いてここまで来れたからこそ、
「好きなことをやればいいんだよ!」
という言葉は観客はもちろん、そのままこれからのバンド自身にも、そして10年前の、この会場に立つなんて想像もしていなかったであろう若き日の自分たちにも向けられているかのようだった。
その言葉の後に演奏された「THE REVELATION」。アリーナの様子は完全にライブハウスそのものだった。ロックバンドが日本武道館でライブをやるのがどこよりも特別な理由。それはBOOWY時代に氷室京介が残した
「ライブハウス日本武道館へようこそ」
という言葉が時代を超えても脈々と受け継がれてきたから。そしてその言葉が正しかったというのをこの日のcoldrainのライブは証明していた。
自分はこのバンドの10年の歴史を全て見てきたわけじゃない。でもこの映像や、いたるところでのライブを見れば、このバンドがどんなバンドかということと、なぜ自分が激しい音楽に惹かれ続けるのか、ということの答えが見えるし、どれだけ激しい音楽とバンドであっても、見終わった後に浮かんだ最大の感情は感動だった。それはこのバンドのライブからは何よりも人間らしさを感じることができるからだし、それはこの日会場に訪れていた、ONE OK ROCKやSiM、CrossfaithにHEY-SMITHというバンドたちがまるで自分のことのようにこの日のライブをこの日のライブを喜び、讃えている姿からもわかる。
こうしたバンドが日本武道館の日の丸の下に立ちながら、海外でも受け入れられているということ。もしかしたら我々は、思っている以上にとんでもないバンドと同じ時代を生きているのかもしれない。
一つだけ不満があるとすれば、なぜ自分はこの日この会場にいなかったのか、ということ。それくらいに映像で見ても素晴らしいライブだったということがわかる、素晴らしい映像作品。
その模様を収録したBlu-ray、DVDが発売になったので、あれはフルに見ないといけない、ということで購入し、再生。
まるで映画のような、と言うとあまりにありきたりだが、メンバーの出で立ちが本当にそのままハリウッド映画に出てきてもおかしくないようなものなだけに、そうした形容詞しか出てこないオープニング映像。
メンバーの中で最後に武道館のステージに足を踏み入れたMasatoが階段を登る時の様子を至近距離で捉えた臨場感は映像作品ならでは。
「会いたかったぞ、武道館!」
とMasatoが叫んで「ENVY」からスタートすると、武道館の広いステージを目一杯に使った映像とこのバンドのラウドロックは実に相性がいいことが瞬時にわかる。これはこのバンドの音楽が元からこうした大会場で鳴らされるべきスケールを有しており、それが極まったのが昨年リリースされた、この時点での最新作である「FATELESS」であるというくらいに、その収録曲たちはまるでこの日、この場所で演奏されるために作られたとすら思えてくる。
「FIRE IN THE SKY」でのYKCのタッピングと炎が吹き上がる演出、何度も近寄っては目を合わせながらリズムを合わせるR×Y×OとKatsuma、激しく動いたりジャンプしたりというアクションを見せながらもコーラスとしても楽曲の背骨を支えるSugi、メロディとシャウトで歌い方が全く違うのがわかるMasatoと、ステージの上をあらゆる角度から映しているのはもちろん素晴らしいが、それ以上に客席が何度も映し出される。そこにはオールスタンディングのアリーナで己を解放するかのように笑顔でダイブしていく人たち、スタンド席でメンバーの姿を一瞬たりとも目を離さずにしっかり見ている人たち…。
ただのライブ映像ではなくて、この日の日本武道館の全貌がしっかり収められているのが何よりも素晴らしい。
「何かを信じることと、信仰に溺れることは違う。戦争がなくなるようにと思って作りました」
とMasatoが説明してから演奏された「LOST IN FAITH」も、音だけを聴くと暴力的とすら思うくらいにラウドだ。でもその中に込められたメッセージはどこまでも慈悲と優しさに満ちている。それは演奏を見ればすぐにわかる。ただ激しいだけのバンドだったらこの規模までは絶対に来れない。そうした様々な感情を表現できるライブができるからこそ、このバンドはこうしてこのステージに立っている。
しかし音の重さと強さはやはりとんでもないものがあるが、その個々の音が全くバラバラにならず、一つの塊としてしか聞こえてこない。それをもたらしているのは間違いなくメンバー同士の絆であろう。決して順風満帆にここまで来たバンドではないし、様々なトラブルや困難を乗り越えてきたストーリーを持ったバンドであるというのは周知の通りだが、周りのバンドたちがラウドロックに他のジャンルのサウンドを取り入れることでオリジナリティを確立していったのに対し、このバンドはひたすらに正統派と言っていいくらいにラウドロックの芯の部分を研ぎ澄ませてきた。その意識をメンバー全員が完璧に共有できているからこそ宿る音の説得力と人間性。だからこそ中盤の代表曲連発の、激しさが増し続ける場面であっても見ていて感動してしまう。
それはMasatoの
「coldrainのメンバーはみんなcoldrainの大ファンなんだっていうのが「FATELESS」を作っている時に改めてわかった。大好きなバンドの新譜みたいに本当に楽しみにしていたから」
という言葉にも現れている。
そのMCの後に演奏された「FATELESS」収録のバラード曲「STAY」では突如としてストリングサウンドが加わり、何事かと思っていると、スクリーンがステージ上部にスライドし、Katsumaのドラムセットの後ろには総勢12名にも及ぶ、ヴァイオリンやチェロといったストリングス隊の姿が。そのストリングスのサウンドがcoldrainの曲の壮大さをさらに別次元に引き上げているし、Masatoの歌唱力の素晴らしさも引き立つ。
なかなかラウドロックという形態にストリングス隊を入れるようなバンドはいないし、これはYKCとSugiのギタリストにとっては実に難しいながらも貴重な体験になったはずだ。これまでに自身のギターの音を他の弦楽器と合わせることなんてなかったはずだから。
しかもそれがバラード曲だけでなく、「RUNAWAY」というラウドど真ん中な曲でもストリングスとの融合は続いている。ストリングス隊がいるライブでこんなにダイブが起きたことが今まであったのだろうか。この発想力とそれを実現できたのはバンドの技術はもちろん、ひたすらにラウドロックのみを追求してきたバンドの精神あってこそ。
自分はこの場面を見てこの映像作品を買おうと思ったし、それが映像だけでなくてライブCDとしていつでも聴けるというのはバンド側は実にファンの望むことをわかっている。
ストリングス隊がいなくなり、再びバンドだけになると、丁寧に音を紡いでいたパートから再び感情と衝動を爆発させていく。「DIE TOMORROW」ではSugiがセンターに出てくると、Masatoとともに台の上に立ち、MasatoがマイクをSugiの口元に添えてコーラスをさせる。そのフォーメーションの実に見事なこと。Katsumaはその様子を見て自身の後ろにあるカメラに向けて笑顔を見せる。決してわかりやすいパフォーマンスではないが、これは本当に高度な技術と様々な経験を経てきたからこそできることだ。
さらにはMasatoがラウドロックバンドとして先輩たちから受け取ったものについて、亡くなったPay money To my PainのKやLINKIN PARKのチェスターの名前を挙げた後に、彼らの思いを継ぐように演奏された「CONFESSION」、客席でスマホライトが輝く「THE STORY」はギタリスト2人の繊細さと、このバンドの軸にあるのはどれだけ音がラウドであってもメロディと歌であるということを示すアコースティック編成。ストリングスも含め、現状の自分たちができることを全てこの武道館で見せようとしている。
それにしても、だ。本編だけでも余裕で20曲を超えるくらいの大ボリュームにもかかわらず、Masatoの喉は一切辛さを見せないし、なんなら終盤になるにつれてさらに迫力を増している感すらあるし、それはバンドの演奏も同じ。もはや体力という概念を超えたゾーンにバンドが突入しているし、客席もこの段階でもダイブはもちろん、左回りのサークルが発生したりと、一切ダレることがない、終始クライマックス状態。バンドだけでなく、この武道館全体が限界のさらに先の境地に突入しているし、バンドを代表する1曲である「FINAL DESTINATION」が24曲目とは思えないくらいの大合唱と熱量に満ちている。
アンコールでの「THE WAR IS ON」もまたストリングス隊の参加によってさらに壮大さを増し、Masatoが本編最後に語っていた、「バンドのこれからの10年の可能性」をこれまでとは違った角度から感じさせる。
そしてついに最後の28曲目。かつて言われた様々な悔しいことを思い出しながら、
「激しくて叫びまくってて英語だけの曲」
と、それはまさにcoldrainの音楽そのものであるスタイルを貫いてここまで来れたからこそ、
「好きなことをやればいいんだよ!」
という言葉は観客はもちろん、そのままこれからのバンド自身にも、そして10年前の、この会場に立つなんて想像もしていなかったであろう若き日の自分たちにも向けられているかのようだった。
その言葉の後に演奏された「THE REVELATION」。アリーナの様子は完全にライブハウスそのものだった。ロックバンドが日本武道館でライブをやるのがどこよりも特別な理由。それはBOOWY時代に氷室京介が残した
「ライブハウス日本武道館へようこそ」
という言葉が時代を超えても脈々と受け継がれてきたから。そしてその言葉が正しかったというのをこの日のcoldrainのライブは証明していた。
自分はこのバンドの10年の歴史を全て見てきたわけじゃない。でもこの映像や、いたるところでのライブを見れば、このバンドがどんなバンドかということと、なぜ自分が激しい音楽に惹かれ続けるのか、ということの答えが見えるし、どれだけ激しい音楽とバンドであっても、見終わった後に浮かんだ最大の感情は感動だった。それはこのバンドのライブからは何よりも人間らしさを感じることができるからだし、それはこの日会場に訪れていた、ONE OK ROCKやSiM、CrossfaithにHEY-SMITHというバンドたちがまるで自分のことのようにこの日のライブをこの日のライブを喜び、讃えている姿からもわかる。
こうしたバンドが日本武道館の日の丸の下に立ちながら、海外でも受け入れられているということ。もしかしたら我々は、思っている以上にとんでもないバンドと同じ時代を生きているのかもしれない。
一つだけ不満があるとすれば、なぜ自分はこの日この会場にいなかったのか、ということ。それくらいに映像で見ても素晴らしいライブだったということがわかる、素晴らしい映像作品。
KANA-BOON KANA-BOONのGO! GO! 5周年! シーズン4 ワンマンツアー「Let's go 55 ONE-MAAN!!」 @Zepp Tokyo 10/3 ホーム
9mm Parabellum Bullet presents 「カオスの百年TOUR 2018」 @Zepp Tokyo 9/29