9mm Parabellum Bullet presents 「カオスの百年TOUR 2018」 @Zepp Tokyo 9/29
- 2018/09/30
- 00:41
国内のZeppを周る今回の9mm Parabellum Bulletの「カオスの百年TOUR」もいよいよファイナル。本数こそ少ないが、公式アカウントが各種SNSなどに載せている写真からでも今回のツアーの充実っぷりはわかるはずだ。
(初日の札幌が胆振地方の地震の影響によって3月に延期されたので、一応そこまではツアーが残っているとも言えるが)
今回のファイナルはZepp Tokyoでの2daysで今回は2日目。詳細については24日に行われたZepp Nagoyaのものも参照していただきたい(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-545.html?sp)が、今回のツアーでこのファイナルの東京公演のみソールドアウトということで、客席は最後方まで満員。
開演前の会場には「漫画日本昔ばなし」のテーマソングなど、ライブ前の昂ぶるテンションが一気にクールダウンしそうなカオスな曲たちが流れる中、18時を5分ほど過ぎた段階でおなじみの「Digital Hardcore」が流れてメンバーがステージに。卓郎も滝も和彦も出てくるなり腕を高く掲げており、この日のファイナルへの意気込みが強く伝わってくる。この日も含め、今回のツアーはサポートギターにfolcaの為川裕也を加えたトリプルギターでの5人編成。
いきなりそのトリプルギターの爆音サウンドが響き出して始まったのは、3rdアルバム「Revolutionary」の幕開けを鳴らす「Lovecall From The World」。間奏で和彦はベースを置いてドラムに駆け寄り、かみじょうのスティックを持ってシンバルを叩きまくるという爆裂っぷりを見せ、この時点でこの日の大勝利は確定したようなものであった。
今回のツアーは1曲目を各地で変えているらしく、自分が参加した名古屋では「荒地」だったのだが、どうやら各地でこれまでにリリースしたアルバムの1曲目の曲から始めていたらしい。そういう意味では最初の曲が変わるということはライブ自体の流れをまるっきり変えることになるので、全公演観に参加するような人や、複数公演観に行くような人も毎回新鮮な気持ちでライブを見ることができる。
名古屋では「Mr.Suicide」が演奏されていた2曲目はこの日は「インフェルノ」。曲自体は毎公演演奏されているが、これはわずか50秒で終わる「Lovecall From The World」に合わせて90秒のこの曲を演奏したということだろう。
続いては9mmのメジャーデビュー曲であり、代表曲である「Discommunication」で滝が今回のツアーの目玉である、ステージ中央から伸びる花道に駆け出してギターソロを弾きまくる。普段はフェスなどでも毎回演奏されるような曲だが、今回のツアーでは固定化されていないし、何よりもこうした普段とは異なる演出があるために、ともすれば飽きそうなくらいに聴いているこの曲でも実に新鮮に聴こえる。
続く「Sleepwalk」ではイントロのベースを担う和彦が間奏で花道に進み、間奏で再びイントロと同じベースを弾いてから曲終わりまでそこで演奏し続ける。こうして1人でメンバーよりも前に出れるようになった和彦の姿は実に頼もしい。
「曲を演奏すればあっという間にライブが終わってしまう」
という卓郎のMCからは、このツアーが終わってしまうことの寂しさを我々だけではなくメンバーも感じていることがうかがえるが、今回のツアーの来場者がもらえる秘密のCDの告知もすると、そこに収録されている新曲「カルマの花環」を披露。実に9mmらしいサウンドに
「絡まるカルマ」「花は咲くのか」
というサビのフレーズでの卓郎のボーカルに滝のコーラスが重なる韻の踏み具合は実に心地いい。こうしてリリースという形態を取らないのが実にもったいなく感じるくらいの新たな9mmの代表曲感と、この後の9mmの方向性を感じさせる。
滝が花道で暴れまくる(この日は最後には転げ回っていた)「Vampiregirl」では卓郎が
「お前だってとっくに神の十字架に縛られてるんだ、東京!」
と叫び、今回のツアー開催に際して行われた楽曲の人気投票で上位にランクインしたことによって毎公演演奏されている「Wildpitch」の連発でメンバーの暴れっぷりも観客の盛り上がりっぷりもさらに増していく。
個人的に9mmのライブは後ろの方で見ていても、じっと見ることができないというか、どうしてもリズムに合わせて体や頭が激しく動いてしまうのだが、それはかみじょうちひろという超人ドラマーによるものも大きいし、そのドラムのリズムを中心に5人の演奏が完全に一つに溶け合っているからこそそうして体が理性を超えて自然に暴れ出してしまう。
実はメジャーデビューアルバムである「Termination」のリリース時から存在していた曲を今回のツアーでようやく陽の目を見る形で音源化することができた(秘密のCDに収録されている)「21g」は当時の9mmのストレートなサウンドとともに、これまでに様々なタイプの歌詞を書いてきたからこその卓郎による「宇宙」をテーマにした壮大な歌詞が乗る曲。この日は
「いつか2007年バージョンもみんなに聴いてもらえる日が来るかもしれない。その時は俺たちは聴こえないフリをするから(笑)恥ずかしいから(笑)」
と言っていたが、それはこの曲が10年以上の時間を経て現在のバンドの実力に見合う形にブラッシュアップされているだけに、かつての拙さや青さが見えるバージョンを聴くのは自分たちですら恥ずかしいところがあるのだろう。
そしてゆったりとしたイントロから一気に爆音になだれ込むのは、このツアーに参加しているファンが待ち望んでいたであろう「The Silence」。個人的にはこの曲が収録されたアルバム「Dawning」は異色作であった「Movement」を経て、9mmが今一度9mmらしさとは?というものに真正面から向かい合ったものだと思っているのだが、この曲は明確に「Punishment」の位置を担う曲を作ろうとして作った曲なんじゃないかと思っているし(当時はフェスでも最後にこの曲をやることが多かった)、今でもそうした役割を担っていてもおかしくない曲だと思っている。それはみんなそう思っているからこそ、この曲が人気投票で多くの票を集めたのだと思う。
「今日はライブが始まる前に外の天気を見に行ってもらったら、雨が少し降ってたらしくて。今は止んでるかもしれませんが…この会場には光の雨が降るでしょう!」
と言って卓郎が曲につなげたのは、リクエストで1位を獲得した「光の雨が降る夜に」。
この曲をこのZepp Tokyoで聴くと、「Revolutionary」ツアーでここでワンマンをやった時のことを思い出す。あの時も雨が降っていた。それをハッキリと覚えているのは、あの時に雨が降ったことで、客席にはダイバー(まだ当時は9mmはライブでダイブ禁止という方針を打ち出していなかった)が続出する中、観客が持ち込んだ傘すらも客席を飛び交い、ライブ後に「9mmファンのマナーとは?」と、ファン同士が揉めまくっていたからである。
ダイブの是非については様々な意見があるし、9mmはその中でこうしたメタルなどを含んだ激しい音楽性のバンドの中で「禁止」という姿勢を取ったが、それはバンドがファンを守るために取った方針である。あれから10年近く経ち、そうした楽しみ方の制限によって去って行った人もいるだろうし、何よりもバンド自体も様々な変化を経験してまたこの会場に立っている。そしてまたこの会場でこの曲を演奏しているのを聴くことができている。それは本当に幸せなことだ。
和彦がウッドベースに持ち替えるだけで大歓声があがり、ライブアレンジがなされた「キャンドルの灯を」、客席の頭上にあるミラーボールが輝いた、卓郎のファルセットボイスが美しく響き渡る「ホワイトアウト」と続くと、今回のツアーの各会場でのBGMをメンバーそれぞれがセレクトしているということを明かすのだが、
「仙台は楽天イーグルスの中村和彦選手。
大阪は俺。だから大阪で配ったCDは黒と黄色の阪神仕様になっている。
名古屋は中日ドラゴンズのカズ中村選手。(中日じゃないけど、往年の名打者であるカズ山本に合わせたのか?)
昨日はサポートギターの裕也が選びました。
そして今日はCK(かみじょうちひろ)が選びました。本当は大阪がかみじょうくんだったんだけど、忘れてきたので大阪が俺になりました(笑)」
とこの日のカオスな曲をセレクトしたかみじょうがネタばらしをされて舌を出しながら「ごめーん」みたいな表情をすると、ラストスパートに突入。
会場のすぐ横に観覧車があることによって、この会場でもよく演奏される「Termination」では
「ギター、為川裕也!」
と言うと、ここまでにもステージ上手端っこで荒ぶりながらギターを弾きまくっていた為川が1人で花道に突入してギターを弾きまくる。その姿はこのバンドのことを全然知らない人がいきなりこのライブを見たらサポートメンバーとは思えないくらいにもはや9mmの大事なサウンドの一つになっている。
もちろんこうした経験を自身のバンドであるfolcaに持ち帰ることはバンドにとって非常に大きいものになるが、それ以上に9mmファンにとっては、こうしてライブを見ることができているというのは本当に為川やHEREの武田がいてくれるからだ。実際、曲間には為川の名前を呼ぶ人も本当に増えた。この編成でのライブを見れば見るほどそうしたくなるのはよくわかる。もう為川が滝の代わりにギターソロを弾くのがバンドにとっての大きなパフォーマンスの一つになっている。
そして「marvelous」ではもはや卓郎と滝のツインボーカル曲なのか、というくらいに卓郎と滝が交互に叫びまくる。名古屋の時よりも圧倒的に熱い。ファイナル特有の空気によるものなのだろうか。いずれにしてもセトリも違うし、ライブそのものもわずか5日しか経っていないのに丸っきり違う。かつてプロデューサーだった、いしわたり淳治に「生粋のライブ屋」と称されたバンドの凄さと怖ろしさを、出会ってから10年以上経った今でも感じることができる。つまり、9mmは今でも日々進化を遂げている。そしてそれはこれからもバンドが続く限りは続いていく。
名古屋では滝が卓郎のマラカスに合わせてペットボトルを振りまくっていた「talking machine」ではこの日は何も振らなかったものの、明らかに滝の目線は何かを探しているような気がしたので、隙あらば何か振ろうとしていたのかもしれないし、それくらいこの日の滝は絶好調と言っていいくらいの存在感を放っていた。
名古屋では「太陽が欲しいだけ」が演奏されていたところではこの日は「ハートに火をつけて」が演奏されたのだが、演奏中の為川も含めた卓郎、滝、和彦が揃ってステップを踏む姿はこれだけの爆裂っぷりを見せた中にあって実に微笑ましい。
そして本編ラストは「sector」で終了すると、卓郎と和彦は花道まで出てきて観客に深々と頭を下げたりといういつもと変わらぬ丁寧な感謝を表明してステージを後にした。流れはわかってはいても、やはり1時間ちょっとというのはあまりにあっという間だった。
アンコールでは卓郎が来年の結成15周年イヤーに新たなアルバムをリリースすることを発表(まだ詳細については何も明かされていないが、何やら楽しそうなことを企んでいるのは明らか)し、
「この世の果てまで 僕らは道連れ」
という歌詞が9mmのメンバー全員はおろか、こうしてライブを見に来ている人たちがこれからもこのバンドから離れられないということを改めて示す「キャリーオン」から、最後はかみじょう以外のメンバーが全員花道に躍り出て演奏しまくる「Punishment」という、ファンの誰もが望む形でライブを終え、かみじょうはスティックを、卓郎と和彦はピックを客席に投げ入れまくり、やはり丁寧にあらゆる角度にいる観客の歓声に応えてステージを後にした。
本人たちも「まだ初日の札幌があるから」と言っていたので、ツアーが終わったという感覚はないのかもしれないが、この「カオスの百年TOUR」は9mmが9mmとして今までの9mmを更新していくようなツアーだった。
その最大のポイントはやはり滝が全編に渡って参加した久々のツアーだったということ。前回のツアーやリベンジ的な野音ワンマン、さらに夏フェスと、最近は滝がライブでギターを弾く場面も増えてきているが、こうして全編ギターを弾くツアーというのは本当に久しぶりだ。(フルに弾いているわけではないけれど)
その姿からわかるのは、やはり9mmの最大の武器は滝の生み出してきたメロディとあのライブでの暴れっぷりだということ。それを本当に久しぶりに、それが当たり前であるかのように感じることができる。でも、近年はそれが当たり前ではなかった。だがそれが他の3人のさらなる成長を促したし、そこに滝が戻ってきたことによって、ただの5人編成ではなくて、さらに進化した3人+滝+スーパーサポートギタリストという構図になった。それは今の9mmが過去最強の9mmであるということ。その姿を我々はこれからもずっと見ていくことができる。それがどれだけ幸せなことで、嬉しいことであるかというのを、滝不在中のツアーで我々は思い知った。それを経たからこそ、9mmのライブ後の、
「何に勝ったのかはわからないけど、間違いなく今日は勝った」
という得体の知れない爽快感を感じることができる。そしてその感触は日々の生活を力強く後押ししてくれる。
でもバンド側からは決して「頑張れ」みたいな安っぽい言葉は言わない。それを全て演奏から感じさせてくれる。そして我々はその姿から確かな力を貰うことができる。決して演者と観客はイーブンの関係ではないと自分は思っているけれど、今の9mmには限りなくそれに近いものを感じることができる。
このツアーを経た次のアルバムはまた9mmの代表作となるのは間違いないし、何よりも、どれだけライブを見ても飽きないという、ライブ屋としての9mmの真骨頂がまた戻ってきた。これからもいろんな場所で9mmのライブを見たいし、その価値があるバンドであることを再認識させてくれた「カオスの百年TOUR」はやっぱり今回も我々ファンにとって特別なものになった。
1.Lovecall From The World
2.インフェルノ
3.Discommunication
4.Sleepwalk
5.カルマの花環
6.Vampiregirl
7.Wildpitch
8.21g
9.The Silence
10.光の雨が降る夜に
11.キャンドルの灯を
12.ホワイトアウト
13.Termination
14.marvelous
15.talking machine
16.ハートに火をつけて
17.sector
encore
18.キャリーオン
19.Punishment
Next→ 10/6 パスピエ @日比谷野外音楽堂
(初日の札幌が胆振地方の地震の影響によって3月に延期されたので、一応そこまではツアーが残っているとも言えるが)
今回のファイナルはZepp Tokyoでの2daysで今回は2日目。詳細については24日に行われたZepp Nagoyaのものも参照していただきたい(http://rocknrollisnotdead.jp/blog-entry-545.html?sp)が、今回のツアーでこのファイナルの東京公演のみソールドアウトということで、客席は最後方まで満員。
開演前の会場には「漫画日本昔ばなし」のテーマソングなど、ライブ前の昂ぶるテンションが一気にクールダウンしそうなカオスな曲たちが流れる中、18時を5分ほど過ぎた段階でおなじみの「Digital Hardcore」が流れてメンバーがステージに。卓郎も滝も和彦も出てくるなり腕を高く掲げており、この日のファイナルへの意気込みが強く伝わってくる。この日も含め、今回のツアーはサポートギターにfolcaの為川裕也を加えたトリプルギターでの5人編成。
いきなりそのトリプルギターの爆音サウンドが響き出して始まったのは、3rdアルバム「Revolutionary」の幕開けを鳴らす「Lovecall From The World」。間奏で和彦はベースを置いてドラムに駆け寄り、かみじょうのスティックを持ってシンバルを叩きまくるという爆裂っぷりを見せ、この時点でこの日の大勝利は確定したようなものであった。
今回のツアーは1曲目を各地で変えているらしく、自分が参加した名古屋では「荒地」だったのだが、どうやら各地でこれまでにリリースしたアルバムの1曲目の曲から始めていたらしい。そういう意味では最初の曲が変わるということはライブ自体の流れをまるっきり変えることになるので、全公演観に参加するような人や、複数公演観に行くような人も毎回新鮮な気持ちでライブを見ることができる。
名古屋では「Mr.Suicide」が演奏されていた2曲目はこの日は「インフェルノ」。曲自体は毎公演演奏されているが、これはわずか50秒で終わる「Lovecall From The World」に合わせて90秒のこの曲を演奏したということだろう。
続いては9mmのメジャーデビュー曲であり、代表曲である「Discommunication」で滝が今回のツアーの目玉である、ステージ中央から伸びる花道に駆け出してギターソロを弾きまくる。普段はフェスなどでも毎回演奏されるような曲だが、今回のツアーでは固定化されていないし、何よりもこうした普段とは異なる演出があるために、ともすれば飽きそうなくらいに聴いているこの曲でも実に新鮮に聴こえる。
続く「Sleepwalk」ではイントロのベースを担う和彦が間奏で花道に進み、間奏で再びイントロと同じベースを弾いてから曲終わりまでそこで演奏し続ける。こうして1人でメンバーよりも前に出れるようになった和彦の姿は実に頼もしい。
「曲を演奏すればあっという間にライブが終わってしまう」
という卓郎のMCからは、このツアーが終わってしまうことの寂しさを我々だけではなくメンバーも感じていることがうかがえるが、今回のツアーの来場者がもらえる秘密のCDの告知もすると、そこに収録されている新曲「カルマの花環」を披露。実に9mmらしいサウンドに
「絡まるカルマ」「花は咲くのか」
というサビのフレーズでの卓郎のボーカルに滝のコーラスが重なる韻の踏み具合は実に心地いい。こうしてリリースという形態を取らないのが実にもったいなく感じるくらいの新たな9mmの代表曲感と、この後の9mmの方向性を感じさせる。
滝が花道で暴れまくる(この日は最後には転げ回っていた)「Vampiregirl」では卓郎が
「お前だってとっくに神の十字架に縛られてるんだ、東京!」
と叫び、今回のツアー開催に際して行われた楽曲の人気投票で上位にランクインしたことによって毎公演演奏されている「Wildpitch」の連発でメンバーの暴れっぷりも観客の盛り上がりっぷりもさらに増していく。
個人的に9mmのライブは後ろの方で見ていても、じっと見ることができないというか、どうしてもリズムに合わせて体や頭が激しく動いてしまうのだが、それはかみじょうちひろという超人ドラマーによるものも大きいし、そのドラムのリズムを中心に5人の演奏が完全に一つに溶け合っているからこそそうして体が理性を超えて自然に暴れ出してしまう。
実はメジャーデビューアルバムである「Termination」のリリース時から存在していた曲を今回のツアーでようやく陽の目を見る形で音源化することができた(秘密のCDに収録されている)「21g」は当時の9mmのストレートなサウンドとともに、これまでに様々なタイプの歌詞を書いてきたからこその卓郎による「宇宙」をテーマにした壮大な歌詞が乗る曲。この日は
「いつか2007年バージョンもみんなに聴いてもらえる日が来るかもしれない。その時は俺たちは聴こえないフリをするから(笑)恥ずかしいから(笑)」
と言っていたが、それはこの曲が10年以上の時間を経て現在のバンドの実力に見合う形にブラッシュアップされているだけに、かつての拙さや青さが見えるバージョンを聴くのは自分たちですら恥ずかしいところがあるのだろう。
そしてゆったりとしたイントロから一気に爆音になだれ込むのは、このツアーに参加しているファンが待ち望んでいたであろう「The Silence」。個人的にはこの曲が収録されたアルバム「Dawning」は異色作であった「Movement」を経て、9mmが今一度9mmらしさとは?というものに真正面から向かい合ったものだと思っているのだが、この曲は明確に「Punishment」の位置を担う曲を作ろうとして作った曲なんじゃないかと思っているし(当時はフェスでも最後にこの曲をやることが多かった)、今でもそうした役割を担っていてもおかしくない曲だと思っている。それはみんなそう思っているからこそ、この曲が人気投票で多くの票を集めたのだと思う。
「今日はライブが始まる前に外の天気を見に行ってもらったら、雨が少し降ってたらしくて。今は止んでるかもしれませんが…この会場には光の雨が降るでしょう!」
と言って卓郎が曲につなげたのは、リクエストで1位を獲得した「光の雨が降る夜に」。
この曲をこのZepp Tokyoで聴くと、「Revolutionary」ツアーでここでワンマンをやった時のことを思い出す。あの時も雨が降っていた。それをハッキリと覚えているのは、あの時に雨が降ったことで、客席にはダイバー(まだ当時は9mmはライブでダイブ禁止という方針を打ち出していなかった)が続出する中、観客が持ち込んだ傘すらも客席を飛び交い、ライブ後に「9mmファンのマナーとは?」と、ファン同士が揉めまくっていたからである。
ダイブの是非については様々な意見があるし、9mmはその中でこうしたメタルなどを含んだ激しい音楽性のバンドの中で「禁止」という姿勢を取ったが、それはバンドがファンを守るために取った方針である。あれから10年近く経ち、そうした楽しみ方の制限によって去って行った人もいるだろうし、何よりもバンド自体も様々な変化を経験してまたこの会場に立っている。そしてまたこの会場でこの曲を演奏しているのを聴くことができている。それは本当に幸せなことだ。
和彦がウッドベースに持ち替えるだけで大歓声があがり、ライブアレンジがなされた「キャンドルの灯を」、客席の頭上にあるミラーボールが輝いた、卓郎のファルセットボイスが美しく響き渡る「ホワイトアウト」と続くと、今回のツアーの各会場でのBGMをメンバーそれぞれがセレクトしているということを明かすのだが、
「仙台は楽天イーグルスの中村和彦選手。
大阪は俺。だから大阪で配ったCDは黒と黄色の阪神仕様になっている。
名古屋は中日ドラゴンズのカズ中村選手。(中日じゃないけど、往年の名打者であるカズ山本に合わせたのか?)
昨日はサポートギターの裕也が選びました。
そして今日はCK(かみじょうちひろ)が選びました。本当は大阪がかみじょうくんだったんだけど、忘れてきたので大阪が俺になりました(笑)」
とこの日のカオスな曲をセレクトしたかみじょうがネタばらしをされて舌を出しながら「ごめーん」みたいな表情をすると、ラストスパートに突入。
会場のすぐ横に観覧車があることによって、この会場でもよく演奏される「Termination」では
「ギター、為川裕也!」
と言うと、ここまでにもステージ上手端っこで荒ぶりながらギターを弾きまくっていた為川が1人で花道に突入してギターを弾きまくる。その姿はこのバンドのことを全然知らない人がいきなりこのライブを見たらサポートメンバーとは思えないくらいにもはや9mmの大事なサウンドの一つになっている。
もちろんこうした経験を自身のバンドであるfolcaに持ち帰ることはバンドにとって非常に大きいものになるが、それ以上に9mmファンにとっては、こうしてライブを見ることができているというのは本当に為川やHEREの武田がいてくれるからだ。実際、曲間には為川の名前を呼ぶ人も本当に増えた。この編成でのライブを見れば見るほどそうしたくなるのはよくわかる。もう為川が滝の代わりにギターソロを弾くのがバンドにとっての大きなパフォーマンスの一つになっている。
そして「marvelous」ではもはや卓郎と滝のツインボーカル曲なのか、というくらいに卓郎と滝が交互に叫びまくる。名古屋の時よりも圧倒的に熱い。ファイナル特有の空気によるものなのだろうか。いずれにしてもセトリも違うし、ライブそのものもわずか5日しか経っていないのに丸っきり違う。かつてプロデューサーだった、いしわたり淳治に「生粋のライブ屋」と称されたバンドの凄さと怖ろしさを、出会ってから10年以上経った今でも感じることができる。つまり、9mmは今でも日々進化を遂げている。そしてそれはこれからもバンドが続く限りは続いていく。
名古屋では滝が卓郎のマラカスに合わせてペットボトルを振りまくっていた「talking machine」ではこの日は何も振らなかったものの、明らかに滝の目線は何かを探しているような気がしたので、隙あらば何か振ろうとしていたのかもしれないし、それくらいこの日の滝は絶好調と言っていいくらいの存在感を放っていた。
名古屋では「太陽が欲しいだけ」が演奏されていたところではこの日は「ハートに火をつけて」が演奏されたのだが、演奏中の為川も含めた卓郎、滝、和彦が揃ってステップを踏む姿はこれだけの爆裂っぷりを見せた中にあって実に微笑ましい。
そして本編ラストは「sector」で終了すると、卓郎と和彦は花道まで出てきて観客に深々と頭を下げたりといういつもと変わらぬ丁寧な感謝を表明してステージを後にした。流れはわかってはいても、やはり1時間ちょっとというのはあまりにあっという間だった。
アンコールでは卓郎が来年の結成15周年イヤーに新たなアルバムをリリースすることを発表(まだ詳細については何も明かされていないが、何やら楽しそうなことを企んでいるのは明らか)し、
「この世の果てまで 僕らは道連れ」
という歌詞が9mmのメンバー全員はおろか、こうしてライブを見に来ている人たちがこれからもこのバンドから離れられないということを改めて示す「キャリーオン」から、最後はかみじょう以外のメンバーが全員花道に躍り出て演奏しまくる「Punishment」という、ファンの誰もが望む形でライブを終え、かみじょうはスティックを、卓郎と和彦はピックを客席に投げ入れまくり、やはり丁寧にあらゆる角度にいる観客の歓声に応えてステージを後にした。
本人たちも「まだ初日の札幌があるから」と言っていたので、ツアーが終わったという感覚はないのかもしれないが、この「カオスの百年TOUR」は9mmが9mmとして今までの9mmを更新していくようなツアーだった。
その最大のポイントはやはり滝が全編に渡って参加した久々のツアーだったということ。前回のツアーやリベンジ的な野音ワンマン、さらに夏フェスと、最近は滝がライブでギターを弾く場面も増えてきているが、こうして全編ギターを弾くツアーというのは本当に久しぶりだ。(フルに弾いているわけではないけれど)
その姿からわかるのは、やはり9mmの最大の武器は滝の生み出してきたメロディとあのライブでの暴れっぷりだということ。それを本当に久しぶりに、それが当たり前であるかのように感じることができる。でも、近年はそれが当たり前ではなかった。だがそれが他の3人のさらなる成長を促したし、そこに滝が戻ってきたことによって、ただの5人編成ではなくて、さらに進化した3人+滝+スーパーサポートギタリストという構図になった。それは今の9mmが過去最強の9mmであるということ。その姿を我々はこれからもずっと見ていくことができる。それがどれだけ幸せなことで、嬉しいことであるかというのを、滝不在中のツアーで我々は思い知った。それを経たからこそ、9mmのライブ後の、
「何に勝ったのかはわからないけど、間違いなく今日は勝った」
という得体の知れない爽快感を感じることができる。そしてその感触は日々の生活を力強く後押ししてくれる。
でもバンド側からは決して「頑張れ」みたいな安っぽい言葉は言わない。それを全て演奏から感じさせてくれる。そして我々はその姿から確かな力を貰うことができる。決して演者と観客はイーブンの関係ではないと自分は思っているけれど、今の9mmには限りなくそれに近いものを感じることができる。
このツアーを経た次のアルバムはまた9mmの代表作となるのは間違いないし、何よりも、どれだけライブを見ても飽きないという、ライブ屋としての9mmの真骨頂がまた戻ってきた。これからもいろんな場所で9mmのライブを見たいし、その価値があるバンドであることを再認識させてくれた「カオスの百年TOUR」はやっぱり今回も我々ファンにとって特別なものになった。
1.Lovecall From The World
2.インフェルノ
3.Discommunication
4.Sleepwalk
5.カルマの花環
6.Vampiregirl
7.Wildpitch
8.21g
9.The Silence
10.光の雨が降る夜に
11.キャンドルの灯を
12.ホワイトアウト
13.Termination
14.marvelous
15.talking machine
16.ハートに火をつけて
17.sector
encore
18.キャリーオン
19.Punishment
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[レビュー] coldrain 「20180206 LIVE AT BUDOKAN」 ホーム
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