中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2018 day2 @中津川公園内特設ステージ 9/23
- 2018/09/24
- 19:57
シアターブルックのボーカルの佐藤タイジが中心となり、太陽光発電で野外フェスを行うという趣旨で開催されている、中津川 THE SOLAR BUDOKAN。自然に溢れた中津川公園で2days開催され、この日は2日目。
中津川駅前では朝早くから地元住民の方々が出店で飲食物を販売したり、シャトルバス乗り場に向かう道の途中にある店にはフェスの幟が立てられていたりと、街をあげてこのフェスを盛り上げていこうという姿勢は京都大作戦に来た時のことを思い出させる。もしかしたらこの街がここまで賑わうのは1年でこの2日間だけなのかもしれない。
ステージは
Revolution STAGE
REDEMPTION STAGE
RESPECT STAGE
REALIZE STAGE
RESILIENCE STAGE
の5つ。他にもラジオの公開録音ブースや、初日の深夜にDJが主体で出るブースなどもあるが、ステージが全て「R」から始まる単語で統一されているのはなんらかのメッセージを含んでいるのだろうか。
前日の朝までは雨が降っていたらしく、ところどころ芝生や土の部分はぬかるみこそあるが、見事に晴れており、太陽光発電日和と言える。会場内にはいたるところにソーラーパネルが設置されており、フリーマーケット的なブース、公園内に設置された遊具(子供は2人まで無料で入場できる)で子供たちが遊べるなど、そこまで広くはない(感覚的にはラブシャの会場の山中湖交流プラザくらいの規模感)会場に様々なインフラを設けており、栗きんとんなどこの地方ならではの食べ物や日本酒なども堪能できる。
10:00~ DJダイノジ [Revolution STAGE] (Morning Dance)
このフェスがこの会場で初開催された2012年から出演し続けている、ダイノジ。先週の氣志團万博同様に朝イチのオープニングアクト的な位置での出演。(この後、夕方にも再びDJで出演するが)
開場が10時で、それと同時にスタートするため、ちょっと出遅れてしまったのだが、sumika「Lovers」で大合唱を巻き起こし、ビートルズ「She Loves You」の歌詞解説をするなど、一見脈絡がないように見えてテンポやテーマなど、様々な面であらゆる時代のあらゆるジャンルの曲を繋いで見せるのはさすが
「あなたの好きを肯定しに来ました!」
と言える大谷の音楽的な知識と趣向の幅広さ。
「DJとして1番やってはいけないことをやります!次に出て来るバンドの曲をかけます!」
とヤバイTシャツ屋さん「あつまれ!パーティーピーポー」の最初の部分だけをループさせて
「エビバーディ!」
の大合唱を連発させると、そのまま定番のTOTALFAT「PARTY PARTY」に繋げるのだが、この違和感の無さはヤバTがパンクであるということを何よりも示している。
そして10-FEET「goes on」で飛び跳ねさせ、肩を組ませてグルグル回らせ、L'Arc~en~Ciel「Ready Steady Go」からラストは小沢健二「強い気持ち・強い愛」。
「これ、戦争と1番遠い景色だよ!」
と大谷は言っていたが、それはこのフェスに漂うピースフルな空気に合わせた選曲だったのかもしれない。
11:00~ ヤバイTシャツ屋さん [Revolution STAGE]
今年はあらゆるフェスに出まくっている、ヤバイTシャツ屋さん。フェスによっては小さいステージだったりするが、2年連続となるこのフェスではメインステージであるこのRevolution STAGEのトップバッターを務める。
おなじみの「はじまるよ〜」という脱力必至のSEで3人が登場すると、1曲目からいきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で
「エビバーディ!」
の大合唱を巻き起こすのだが、これはDJダイノジが先にこの曲を流したから1曲目にしたのだろうか。
さらに最近のフェスでは後半に演奏されることが多い「ヤバみ」も2曲目という早い段階で演奏されたのだが、この位置で演奏されたことによって、テンポがめちゃくちゃ速くなるということはなく、原曲に近いテンポで演奏されている。この辺りのライブの流れのコントロールも順番を入れ替えるだけでだいぶ変わってくる。
朝イチからダイバーが続出した「鬼POP〜」までを一気に駆け抜けると、雑な、というか嘘ばかりのMCを連発し、フェスでは久々のしばたの
「雑、雑ぅ〜!」
のツッコミも入れながら、
「流れ行く中津川〜」
と3人が敬愛する先輩である10-FEETの「RIVER」を口ずさむこやま。これもしばたに
「雑、雑ぅ〜!」
とツッコまれていたが、これは全然雑ではないというか、むしろリスペクトに溢れていると思う。
客席でタオルがグルグル回る「L・O・V・Eタオル」、高速ツービートメロコアサウンドなのにテーマは「USB」というギャップの「Universal Serial Bus」と続くと、
「僕はコンプレックスがあるんです。そのコンプレックスの歌を歌ってもいいでしょうか?」
と言って演奏されたのは、打ち込みのストリングスのサウンドも使った、壮大なバラード「肩have a good day」。
もりもとの口笛タイムも含めて、普通のバラードと呼ぶにはギミックが非常に多い(歌詞も含めて)曲ではあるが、昨今の若手バンドがフェスのセトリになかなかバラードを入れない中でこうして堂々と演奏し、しかもそれが大歓迎されている。ヤバTの曲がパンクであってもポップであってもバラードであっても、どれもが本当に良い曲だからこそそうして受け入れられているというのが実によくわかる瞬間であった。
フェスで演奏されるのは久々な気もする「Tank-top of the world」(最近は「Tank-top in your heart」の方がフェスで演奏される率は高い)を終えると、
「あと2曲ー!…いや、えー!?って言われても、今日は結構やってる方やで(笑)」
と、確かにフェスとしては多めの曲数となったのは持ち時間が長いということもあるが、このバンドが「面白いMCをしまくる」という手法から「ひたすら曲をやる」という戦い方にシフトしたからだし、「無線LANばり便利」「ハッピーウェディング前ソング」というライブ定番曲での大合唱を聴いていると、そうした戦い方になったのはそうするべき曲が生まれてきたからだというのがよくわかるし、8月から夏フェスで見るのは4回目になるのに、この日のヤバTのライブはあまりに良すぎて、少し、いや、かなり感動すらしてしまっていた。
売れるだろうとは思っていたけど、こんなに感情を揺さぶられるような凄いバンドになるなんて、2年前くらいまでは全く想像していなかった。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.ヤバみ
3.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
4.L・O・V・Eタオル
5.Universal Serial Bus
6.肩have a good day
7.Tank-top of the world
8.無線LANばり便利
9.ハッピーウェディング前ソング
ハッピーウェディング前ソング
https://youtu.be/duWW0G-zesY
11:45〜 Base Ball Bear [REDEMPTION STAGE]
去年のこのフェスで初めて3人体制でライブを行なった、Base Ball Bear。1年経って、正式に3人体制となってライブを続け、このフェスに帰ってきた。
おなじみのXTCのSEで登場すると、小出がギターを一閃すると同時に歌い始める「BREEEEZE GIRL」からスタートし、関根がぴょんぴょんと飛び跳ねまくりながらベースを弾く「PERFECT BLUE」で、もう9月末という季節的には完全に秋と言っていい時期であるものの、会場の雰囲気は夏真っ盛りでしかない。
本人たちもそうした自分たちに求められているものをわかっているようで、
「思いっきり夏に媚びたセットリストになってます!」
と、まだバンドにとって夏が終わっていないことを宣言し、「17才」「short hair」と、爽やかだけれども切なさを含んだ夏曲を連発していく。
しかしそれを「真夏の条件」で再び燃え上がらせ、
「ギターロックバンド風情ですけど、ラップしちゃっていいですかー!」
と言うと、小出がRHYMESTERのパートをラップして始まる「The CUT」では小出がラップしながら関根と向かい合うという、スリーピース編成だからこそ絵になる形に。実際、スリーピースとなって最もそのタイトかつスリリングなグルーヴを発揮しているのはこの曲だと思う。
そしてラストは今年のベボベの夏の最後の曲となる「ドラマチック」で、集まったたくさんの人の今年の夏の楽しかったり切なかったりした想い出を想起させた。
ベボベがこうして夏の野外でライブをしている時に、天気が悪かった記憶が全くない。13年連続で出演しているロッキンに顕著だし、この日のこのフェスでもそれは変わらない。だからこそ、この日が9月末とは思えないくらいに暑い日になり、太陽がギラギラと輝いていたのはこのバンドが出演していた日だからなんじゃないか、とすら思えてくる。この日で今年の夏フェス納めとなったが、来年以降もベボベのロック界の太陽神伝説はずっと続いていく。
1.BREEEEZE GIRL
2.PERFECT BLUE
3.17才
4.short hair
5.真夏の条件
6.The CUT
7.ドラマチック
short hair
https://youtu.be/kDc2VebfUdk
12:25〜 LIVE FOR NIPPON 武藤昭平 with ウエノコウジ presents SOLAR JAM [RESPECT STAGE]
もともとは武藤昭平 with ウエノコウジのユニットでのライブであったが、現在武藤昭平が食道ガンの治療で闘病中ということで、ウエノコウジに加えてギターに藤井一彦(THE GROOVERS)、キーボードに堀江博久(ex. the HIATUS)、ドラムに白根賢一(GREAT3)というバンド編成に。さらにはゲストボーカルたちも出演することも発表されており、「SOLAR JAM」という特別なライブへと名前も変化。
まずは藤井一彦がピート・タウンゼントばりに腕をぐるんぐるん回しながらギターを弾く、THE GROOVERSの曲からスタート。ウエノコウジをはじめとしたメンバーたちも藤井へのリスペクトを込めて演奏しているのがよくわかる。
続いてステージに現れたのは、ウエノコウジに「若頭」と紹介された、a flood of circleの佐々木亮介。
佐々木「昨日、ウエノさんが百々さんと名古屋でライブをやってて。堀江さんと一彦さんと俺で飲んでたから、ライブに乱入しようと思ったら、ウエノさんが「2部から出てくれ」と。
すっかり飲み過ぎて、2部の始まる時間過ぎちゃって、慌てて行ったらまだ1部のMCを長々としてた(笑)」
ウエノ「昨日、50分で5曲くらいしかやってないもん(笑)あとはずっと喋ってた(笑)」
佐々木「50分で5曲って、マイルス・デイヴィスのライブみたいになってるじゃないですか(笑)」
と、一緒にライブをやっているだけあって、2人の息はピッタリで武藤昭平 with ウエノコウジの最新作から「ウェイブ」を亮介がハンドマイクで歌うのだが、この曲はまだ武藤昭平もライブで歌ったことがないのに、亮介が歌いなれてきているので、
ウエノ「もうこの曲、亮介にあげるよ(笑)」
となぜかいきなりの曲譲渡宣言。
さらに
ウエノ「亮介はこの中では1番若くて…って言っても32歳とかか。俺にファンタ買ってこいよ、って言われたりして1番大変な年齢だけど、俺も50歳になったらもっと大御所っぽくなるのかと思ったら、怒髪天の増子さんとかに「ファンタ買ってこいよ」ってまだ言われるくらいに上の人たちが元気だから(笑)
「はい、増子さん!グレープですか!?オレンジですか!?」みたいに(笑)」
と、ロック業界の縦社会っぷりを表すエピソードを話したりと、フェスであっても完全にいつものように喋りまくっている。
そして亮介が自身の弾き語りでもウエノを招いて演奏していた「ローリン・サーカス」で、カントリーの要素が入っていても、亮介が歌えばロックンロールになる、ということをしっかり示し、ウエノから譲渡されなくても完全に亮介の歌になっていた。
亮介と入れ替わりでステージに登場したのは、武藤昭平の病気発覚後に武藤昭平の代わりにウエノとともにツアーを回っている、「呑まなければ2枚目、呑むと雑巾以下」にして、「ロック業界で1番使いやすい男」こと、MO'SOME TONEBENDERの百々和宏。ギターを持って登場すると、さらにウエノの近所に住んでいるというサックス奏者の斎藤ケイタも登場し、ステージ上は一層賑やかに。百々はビールを一気飲みしてカップを客席に放り投げながら「コロンブス」を演奏し、斎藤がステージを去ると、昨年亡くなったトム・ペティの「I won't back down」のカバーを演奏。百々はいつもよりもしゃがれたような声でロックンロール色を強めていたが、お代わりしたビールをまたしても一気飲みし、カップを客席に放り投げていた。
「今日は実はもう1人、スペシャルゲストがいます。みんなビックリすると思うよ。武藤昭平!」
とウエノが紹介すると、なんとガン闘病中のはずの武藤昭平が闘病前と全く変わらぬ出で立ちでステージに登場。
ウエノ「武藤さん、どうしたの?」
武藤「ガンに打ち勝って、帰ってきました!」
と復活したことを宣言し、「シンガポール急行」「エブリデイ・イズ・ラッキーデイ」を初めてライブで歌う。最新作のリリース直後に闘病生活に入ったため、武藤はライブでこの曲たちを歌っていなかったのである。
やはりまだボーカル自体は本調子とまでは言えなかったが、武藤の不在を埋めていた亮介と百々は袖で本当に嬉しそうに武藤が歌う姿を見ていたし、武藤もまた2人が自分の曲を歌ってくれているというのが何よりも強い力になっていたはずだ。
そしてラストは亮介、百々、斎藤ケイタの3人も再びステージに登場し、
百々「今日、名古屋駅で武藤さんに会った時、幽霊かと思った(笑)」
ウエノ「俺と百々は病院での姿を見てるからね。点滴打ちながら歩いてる武藤さんの姿を」
武藤「あの時は髪の毛が全部抜けちゃったからね〜」
百々「あの時の写真、ツイッターに載せていい?(笑)」
と、すでに完全に酔っ払っている百々の暴走と一気飲みが止まらない中、全員で「凡人賛歌」を大合唱。本当に武藤が凡人だったら、このステージに帰ってこれていない。誰よりも強い精神力を持っている超人だからこそ、武藤はこうして帰ってこれた。まだ真昼間の時間帯だが、早くも今年のこのフェスの一つのクライマックスを刻んだ瞬間だった。そして百々は最後にまたしてもビールを一気飲みして、カップを空に放った。武藤の代役という自らの役目を果たしたかのように。
ライブ後にはフェスの主催者が
「武藤さん!」「おかえりー!」
のコール&レスポンスを行なった。あの延々と酒を飲みながら話しまくるブルースマンコンビが、ようやくステージに戻ってきたのである。
1.乱気流ガール vo.藤井一彦
2.美しき人よ vo.藤井一彦
3.ウェイブ vo.佐々木亮介
4.ローリン・サーカス vo.佐々木亮介
5.コロンブス vo.百々和宏
6.I won't back down vo.百々和宏
7.シンガポール急行 vo.武藤昭平
8.エブリデイ・イズ・ラッキーデイ vo.武藤昭平
9.凡人賛歌 vo.武藤、佐々木、百々
凡人賛歌
https://youtu.be/gU8e6aBMYlQ
13:30〜 Creepy Nuts [REALIZE STAGE]
すでに時間前のサウンドチェックから2人が登場し、その段階で超満員というこのフェス初出演にして注目度の高さを見せつける、Creepy Nuts。
R-指定の実にスムーズなラップと、観客の盛り上がりを煽る言葉でヒップホップがこのフェスにおいて決してアウェーではないことを証明すると、おなじみの「観客からお題をもらってそれを元にR-指定がフリースタイルをする」という聖徳太子スタイルへ。
「浮気」の後に「入籍」が挙がるという幸福と不幸のコントラストを描きながら、「栗きんとん」という中津川名物のワードではDJ松永が
「来る時に車の中で栗きんとん渡されて食べたんだけど、油断して飲み物持ってなかったから口の中の水分持っていかれて、口の中が砂漠になった(笑)」
と栗きんとんをいきなり食べた感想を語るのだが、それが若干ディスっぽくなってしまうあたりはさすが松永である。
そうして出揃ったのは、普段のフェスでは5つくらいにしているというところを8つという大盤振る舞いにしたワードたち。ワードが多いことにより、当然フリースタイルもおよそ5分に及ぼうかというくらいに長いものになったのだが、そのスキルを存分に見せつけながら、1つも漏らすこともないという満点の出来。ワードにさりげなくつなげてみたりするのはどうやったら思い浮かぶのだろうか。
そして「合法的トビ方ノススメ」で音楽だけでハイになると、
「俺ら、学生時代とかにずっとイケてない、ダサい側の人間やったんです。だからバリバリのヒップホップやるような人には見えないかもしれない俺らがなんでヒップホップを選んだか。
ヒップホップはもともとアメリカで生まれた、黒人の人たちが差別とか社会に対する怒りを言葉にしてぶつけたもので。日本ではそういういきなり街中で銃撃戦が始まったりっていうことはないけど、誰しもが怒りとかを持っていると思う。イケてない奴らにはイケてない奴らなりの怒りだってある。俺だって松永だってあるし。
でもそれを暴力にするんじゃなくて、その怒りとかを音楽と言葉にする。こうしてこのフェスに出てるミュージシャンたちもみんなそうやと思うし、だから俺たちは音楽を選んだんです」
と、ヒップホップで、音楽で生きていこうとする人生に決めた理由を語ると、ラストに「トレンチコート・マフィア」でその生き様をラップにしてみせた。その姿は面白くてラップができる兄ちゃんではない、ヒップホップに人生を賭けた男のプライドがあった。
1.助演男優賞
2.ぬえの鳴く夜は
3.紙様
4.聖徳太子フリースタイル
5.合法的トビ方ノススメ
6.かいこ
7.トレンチコート・マフィア
合法的トビ方ノススメ
https://youtu.be/UVaZf3GliDs
14:40〜 The Birthday [Revolution STAGE]
近年はこうした地方の中規模くらいのフェスでメインステージに出ているというイメージが強い、The Birthday。先ほどウエノコウジが出演しているため、チバとクハラも含めてミッシェル・ガン・エレファントの3人が揃い、さらには藤井一彦とフジイケンジの兄弟も揃うことになった。
いつものように黒いスーツに身を包んで落ち着いて登場すると、チバのギターストロークから「なぜか今日は」でスタートし、いきなりダイバーが続出。「The Birthdayのライブってこんなノリだっけ?」と思ってしまうが、それはバンドの音の強さに観客が反応したものである。とはいえ百戦錬磨のメンバーたちはだからといって何かが変わるわけでもない。
「THE ANSWER」「カレンダーガール」と続くと、チバとフジイケンジのギターリフやカッティング、クハラの乾いたスネアの音、ヒライハルキのうねりながらも土台を支えるベースと、ロックンロールって本当にカッコいい音楽だな、と思わせる説得力に満ちた演奏を繰り広げていく。チバは見た目こそ髭にも白髪が多くなって、年相応になってきているが、バンドの演奏の強さとグルーヴは進化の一途をたどっている。
「毎年このフェスは晴れていて最高ですね」
とクハラが太陽に感謝すると、
「あれ、中日だよな?…中日に見られてるの目立つな」
とチバはPAテントにいる中日ドラゴンズのユニフォームを着た人のことが気になって仕方がないらしく、自らハンドマイクで動き回りながら熱唱する「LOVE SHOT」の後の「涙がこぼれそう」の
「俺さ今どこ?」
の観客の大合唱に対するご当地ネタアンサーは、
「今日は中日と、中津川ソーラーのお前たちと一緒だ!」
とやはり中日を無視できない様子。
そしてメンバーのコーラスが力強く重なっていく「READY STEADY GO」から、ラストはポップな「1977」と駆け抜けた。もはやチバやクハラは大ベテランと言ってもいいくらいの存在だが、全くそんなことを感じさせないくらいに今もロックンロールへの衝動に満ち溢れている。
1.なぜか今日は
2.THE ANSWER
3.カレンダーガール
4.24時
5.LOVE SHOT
6.涙がこぼれそう
7.READY STEADY GO
8.1977
THE ANSWER
https://youtu.be/LfU3P-YdDAE
15:40〜 GRAPEVINE [REDEMPTION STAGE]
サウンドチェックでメンバー全員が出てくると、「MISOGI」を演奏し始めたGRAPEVINE。ちょっと前までは早めに出てきても曲をやるわけではなく、ただひたすらにセッション的に音を合わせるという、まさにサウンドチェックというようなことしかフェスではやっていなかっただけに、こうしたふとした瞬間にファンサービス精神が強くなっていることを感じることができる。
本番では「Arma」という最新にして、革新的というよりはバンドの持つ本質的なポップな部分を押し出してスタートすると、イントロが鳴った瞬間に名曲確定な代表曲「スロウ」と、本当に10年くらい前の、ひたすら新しめのアルバムに入ってるアルバム曲ばっかり演奏するというフェスの戦い方は変わってきたんだな、ということを実感する。それはもはやベテランという立ち位置になって変わったことなんだろうけど、シングル曲は知ってるけどライブは見たことがないというようなフェスで見る人たちにとっては実に嬉しいはずだ。
「夏の終わりをせいぜい楽しんでください」
と田中が天邪鬼的に観客に話し、バンドが21周年に突入したことを告げて歓声を煽ると、
「デビューから21周年ですからね。結成から数えるともう68年ですよ」
とやはり天邪鬼にうそぶいてみせる。
すると田中がアコギに持ち替えた「風待ち」ではその天邪鬼っぷりが祟ったのか、歌詞が飛んでしまう一幕も。すぐに
「感極まってしまった」
と田中は曲中に言っていたが、ライブ中にそういう風に感じるようなタイプではないだけに、誤魔化し方は上手くないようだ。
そしてSWEET LOVE SHOWERの時に5曲のセトリの中に入ってきて驚愕した超レア曲「エレウテリア」(「超える」のカップリング)をここでも披露して自然の空気と相まってゆったりと浸らせたのだが、ここにきてこの曲がライブ定番化してきた意図はいったいなんなんだろうか。
さらに「Sing」とバンドの持つ渋みを存分に味あわせると、一転して「豚の皿」では獰猛なサウンドが火を吹き、田中も声を張り上げるようにして熱唱。このコントラストこそがGRAPEVINEというバンドであるし、瞬時に空気を変えてしまいながらもそれを飄々とやってのけるメンバーの演奏の安定感はやはり素晴らしい。曲終わりには田中は
「中津川が気になりだす 中津川が気になりだす」
と言っていたが、この日初めてここに来た自分はまさにこの中津川がこんなに良いフェスだったということに気づいて、気になりださずにはいられない状態だった。
そして大名曲「光について」で再びガッチリとした演奏よりもポップなメロディをしっかりと響かせると、ラストはライブの最後にこれほど相応しい曲もないんじゃないかというくらいに壮大な「Everyman, everywhere」が陽が落ちてきたこの中津川に見事に溶け合っていた。
GRAPEVINEは割と長い曲が多い。(この日はやってないけど「CORE」や「KINGDOM COME」はかなりの長尺曲だ)
だからフェスで短い持ち時間だと5曲やるのが精一杯、みたいな機会も増えてきているのだが、今回は8曲も演奏できている。それはこのフェスがどのステージであっても40分以上の持ち時間を用意しているからということによるもの。
それだけでも本当に良いフェスだと思うし、かつてはロッキンなどの大型フェスにずっと出続けながらも、近年はそうした場所がアウェーになってしまいつつあるGRAPEVINEにとって、このフェスはずっと生き続けていける場所になっているんじゃないかと思うくらいに、初めて見にきてもこの場所は本当にこのバンドに合っている。
リハ.MISOGI
1.Arma
2.スロウ
3.風待ち
4.エレウテリア
5.Sing
6.豚の皿
7.光について
8.Everyman,everywhere
Arma
https://youtu.be/flTbXMmQ3ZY
16:40〜 ストレイテナー [Revolution STAGE]
こちらは結成20周年イヤーとなる、ストレイテナー。とはいえ、ホリエアツシとナカヤマシンペイの2人で結成されて20年であり、前日にはNothing's Carved In Stoneで出演したひなっち、OJこと大山純が後から加入しているので、かなりいろんなタイミングで周年イヤーが訪れるバンドである。
おなじみのSEが鳴り、手拍子に迎えられて4人がステージに登場すると、太陽が陰ってきたこの会場の空に合わせたかのような「彩雲」からスタートし、じっくりと20年を超えたこのバンドのポップな部分とホリエの歌声を響かせたかと思ったら、OJのギターが鋭利に切り込んでくる、20周年記念のファン投票によるベストアルバムで見事に投票1位に輝いた「REMINDER」でストレートなギターロックバンドとしてのストレイテナーの姿も見せる。
打ち込みのサウンドも取り入れた「冬の太陽」はタイトルだけ見ると季節外れな選曲のように見えるが、徐々に熱を帯びていくそのサウンドは夏フェスと言えなくもないこのフェスでもしっかりとこのバンドの魅力を伝える曲になっている。
「来月、ベストアルバムが出ます!良い曲が多すぎて自分たちでは選べないんで、みんなに選んでもらいました!その中に1曲だけ入っている新曲をやります」
と、ベストアルバムの説明をしてから演奏されたのは、ホリエが立ったままでキーボードを弾きながら歌う「Braver」。どこか浮遊感を感じさせるのはそのホリエの歌唱と演奏スタイルだからであろうが、まだフルアルバムが出たばかりと言ってもいい時期であるのに新曲が生まれてくるくらいにバンドの状態は良いということだろう。
「今日、寒いだろうと思ってこの曲選んだけど、全然寒くなかったね(笑)」
とホリエが苦笑いを浮かべながらキーボードの前に座って歌い始めたのは、秦基博と共作した「灯り」。そのホリエのボーカルを前面に押し出したアレンジはバンドだけでは出てこなかったものだろうが、近年は弾き語りでのライブも精力的に行っているだけに、秦基博不在でも成り立つくらいにホリエのボーカルは憂いに満ちた素晴らしいものになっている。
そしてバンド最大のキラーチューン「Melodic Storm」で合唱という名のメロディの風を巻き起こすと、今年の夏の様々な思い出を脳裏に呼び起こす、完全に新たなバンドの代表曲となった「シーグラス」で、この会場は海の近くではないが、
「夏が終わりを急いでる」
ことを実感して切ない気持ちになる。
そして最後になんの曲を演奏するのだろうか、と思っていたら、
「普通は絶対フェスではやらない曲なんだろうけど(笑)」
と断ってから演奏された、最新アルバム収録の「Our Land」。この日最も激しくホリエとOJがギターをかき鳴らしてバンドの最新形を見せたが、タイトルからして、この日このフェスでこの曲が演奏されたのはバンドからの一つのメッセージなんじゃないかと自分は感じていた。
最後にはいつものように4人で肩を組んで一礼。20年というと大ベテランのように感じてしまうが、今もストレイテナーは自分たちを更新しながら最前線を走っている。まだまだ面白いことをたくさんやってくれそうだ。
1.彩雲
2.REMINDER
3.冬の太陽
4.Braver
5.灯り
6.Melodic Storm
7.シーグラス
8.Our Land
Braver
https://youtu.be/rvNlzyWVbGk
17:40〜 go! go! vanillas [REDEMPTION STAGE]
前日に日比谷野音でのワンマンを終えたばかりでこのフェスに初めて乗り込んできた、go! go! vanillas。そうして自分たちのワンマンも行いながら、今年は様々な夏フェスに出演しまくってきた。
おなじみ「We are go!」のSEでメンバーがステージに登場すると、最後の夏を噛みしめるかのように「SUMMER BREEZE」からスタートするのだが、メンバーたちも平成最後の夏に気合いが漲っている。
観客だけでなくメンバーも飛び跳ねながら演奏し、ジェットセイヤは片腕を高く掲げながら4つ打ちを刻み、頭上に放り投げたスティックを見事にキャッチした「エマ」、プリティを筆頭にメンバーのマイクリレーが行われ、自身のボーカルパートではない部分では牧がステージから飛び降りて客席に突入してギターを弾き、最後には牧、プリティ、柳沢の3人が一本のマイクで歌う「デッドマンズチェイス」と、野音ワンマンを終えたばかりで脂が乗り切った状態であるのが一目でわかるくらいのパフォーマンスの凄まじさ。
「太陽の力とお前たちの力を見せてくれー!」
と牧がこのフェスの趣旨を理解しながら大合唱を巻き起こした「おはようカルチャー」を終えると、フェスでは珍しく柳沢がメインボーカルを務める「ストレンジャー」という選曲も。あえてこのフェスでこのカードを切ってきた理由はわからないが、他のフェスと全く同じライブにはしないというバンドからの意志はしっかり感じることができる。
そして「カウンターアクション」で再び飛び跳ねさせまくり、柳沢と牧の激しいギターソロバトルも展開すると、ラストは平成最後の夏に響かせる「平成ペイン」で客席ではたくさんの人がMVのダンスを踊る中、ロッキンのLAKE STAGE、ラブシャのMt.FUJI STAGE、そしてこの日のREDEMPTION STAGEと、規模の大きなステージを全て満員にしてみせるという、平成生まれのメンバーによるこのバンドが、平成最後の夏にさらに大きく飛躍したことを証明してみせた。
良い曲をリリースして、ライブが良くなれば見てくれる人は必ず増える。そんな当たり前のようでいて、全てのバンドができることではないことを、このバンドはしっかり形にすることができている。
1.SUMMER BREEZE
2.エマ
3.デッドマンズチェイス
4.おはようカルチャー
5.ストレンジャー
6.カウンターアクション
7.平成ペイン
SUMMER BREEZE
https://youtu.be/lTYHDtukfcw
18:40〜 SCOOBIE DO [REALIZE STAGE]
サウンドチェック時におなじみの、というかもはや「サウンドチェック時のこのバンドの曲」と言ってもいいレベルになりつつある山下達郎の「RIDE ON TIME」を演奏していた、SCOOBIE DO。このフェスにおいてはおなじみの存在である。
コヤマシュウがいつもの白、他のメンバーが黒いスーツに身を包んで登場すると、おなじみのコヤマの前口上で観客をファンキーモードに切り替えさせると、「いつ何時いかなる時もアウェイ」という自分たちの置かれた境遇を自虐的に曲にした「アウェイ」でスタートするのだが、
「アウェイ! アウェイ!」
と発される単語こそ確かにアウェイではあれど、その合唱の大きさと一体感には一切のアウェイ感は存在しない。
EXILEのように重なってぐるっと回ったりと、メンバーの演奏のフォーメーションが見事な「真夜中のダンスホール」、このフェスに捧げられた「ミラクルズ」とこのバンドならではの横ノリで揺らしまくると、「What's Goin' On」ではコヤマが
「シアターブルックありがとう!俺たちのありったけの愛で応えるぜ!」
と、同じようにブラックミュージックへの憧憬を自分たちの音楽に落とし込んできた、長い年月近い位置にいた盟友である主催者のシアターブルックへの感謝を告げ、そのままシアターブルック「ありったけの愛を」のカバーに繋げるという粋な計らいも。こうして違和感なくカバーに繋げられるのも、音楽性はもちろん精神の部分でもずっと共闘し続けてきたバンド同士だからなのだろう。
最新作「CRACKLACK」(と言ってももうリリースされてから1年経つけど)からの「Cold Dancer」は打ち込みも使った4つ打ちの曲だが、タイトルに反して
「生かされてるこの命を燃やさないでどうする?」
という、自分たちで全てのバンド活動を回しながら全国のライブハウスやフェスのステージを駆け巡るこのバンドの生き様そのもののような熱い歌詞。だからこそ客席もColdではなくHotに踊りまくる。
そしてメンバーがその場でグルグルと回りながら演奏する鉄板曲「Back On」でさらに熱量を上げると、デビュー曲「夕焼けのメロディー」でコヤマの歌心をしっかりと見せて終了…かと思いきや、最後にこのフェスとシアターブルックへの愛を表明する「Sweet Little Lover」で再びコール&レスポンス連発、客席踊りまくりで熱狂の渦に包まれながらライブを終えると、バンドのマネージャー業も行いながら、最近は自身が大好きなメジャーリーグ中継で解説も務めるというくらいに野球ファンにも知られつつあるドラマーのオカモト”MOBY”タクヤが深々と頭を下げ、コヤマは
「ありがとう中津川!また来年必ずやろう!」
と、来年のこの場所での再会を約束した。
今やこのバンドはRISING SUN ROCK FES.においては欠かせない存在(オファーされていないのに会場に行って自らオープニングアクトを買って出たこともある)となっているが、この日の熱狂はこのフェスにおいてもこのバンドがそうした存在になりつつあるということを証明するような、見事なLIVE CHAMPっぷりだった。
リハ.RIDE ON TIME
1.アウェイ
2.真夜中のダンスホール
3.ミラクルズ
4.What's Goin' On 〜 ありったけの愛を
5.Cold Dancer
6.Back On
7.夕焼けのメロディー
8.Sweet Little Lover
Cold Dancer
https://youtu.be/Gl86AGsdclQ
20:00〜 a flood of circle [REALIZE STAGE]
この小さな街で行われている、夢のような景色も終わりの時間が近づいてきている。この独特の装飾が施されたREALIZE STAGEのトリを務めるのは、ロック界の若頭こと佐々木亮介率いる、a flood of circle。このフェスには開催初年度から出演している。
サウンドチェックの時点で中島みゆき「ファイト!」のカバーを亮介が歌い上げ、さらに「スカイウォーカー」のサウンドチェックとは思えないようなグルーヴが時間前から客席を熱くさせると、おなじみのSEでメンバーがステージに登場。サウンドチェックの時はサングラスをかけていた青木テツは本番ではサングラスを外し、自身がプロデュースした黒いシャツを着ての登場。亮介はいつも通りの革ジャンなのは先にボーカルとして参加した、武藤昭平 with ウエノコウジの時と変わらない。
ライブは「Summertime Blues II」からスタートしたのだが、夏曲ではありながらも最近はフェスではあまり演奏されていないこの曲が演奏されたのは、
「忌野清志郎より婆ちゃんに教わったんだ
「核などいらねー」彼女の心はそれきり変わっちゃいない1945年夏」
という歌詞がある通り、このフェスが原発ではなくて太陽光のエネルギーで開催されているという確かな意志を持ったフェスだからであろう。そして亮介は
「今ここ!中津川!」
と歌詞を変え、70年以上前と今この瞬間を繋いで見せる。今も昔も日本が同じ問題を抱えているのを示すように。
アウトロで演奏だけでなく、HISAYOを皮切りにメンバーそれぞれのソロ回しが追加された「Dancing Zombiez」から「ミッドナイト・クローラー」というライブアンセムの連発でこのフェスの最後の時間を燃え上がらせるが、亮介は2ステージ目ということもあってか、やや声はいつもの勢いと比べるとここまでは大人しめ。
しかしながら
「転がり続ける人に捧げる」
と言って演奏された「Diamond Rocks」あたりからはいつもの凄みがその声に宿っていく。
そもそもはドラムの渡邊一丘のテーマソング的に作ったこの曲を、なぜ一丘ではなくて「転がり続ける人に」向けて演奏されたのか。それは間違いなくこの日ステージに帰ってきた武藤昭平の姿を見たからであろう。生死を彷徨うような重い病気を患ってもなお、ブルースマンとして転がり続けていくことを選んだ武藤の姿から、亮介は大きな力を受け取っているはず。その亮介の意志はこの日、武藤昭平 with ウエノコウジのライブを見てからフラッドのライブを見ていた人はみんなわかっていたはずだ。
さらに普段フェスではほとんど演奏されることがない、というかワンマンでもよほどの理由がないと演奏されることのない「感光」。震災の後にはよく演奏されていたが、この日の亮介の
「生きていて」
の絶唱は震災はもちろん、今も震災の被害から立ち上がろうとしている人々、そして武藤のように重い病から立ち上がろうとしているすべての人に向けられているようだった。こうした曲は他の、まだこのバンドの存在をアピールするためのライブであるフェスのステージではまず演奏されない。このフェスが自分たちの居場所であることをわかっているからこうした曲をステージから鳴らすことができる。
11月にリリースされるシングルに収録される新曲「夏の砂漠」でこれからこのバンドがもっと広い場所へ打って出て行こうとする意志を感じさせると、
「2011年の3月の事故は歴史の教科書に載るようなことになってしまった。そこから新しい歴史を作って教科書に載るのはこのフェスだ!」
と佐藤タイジとこのフェスの意志をしっかりと伝えてから演奏された「NEW TRIBE」はこのフェス、この中津川の地にa flood of circleという名前の旗を打ち立てるような、素晴らしい名演だった。地元ではないし、このフェスのためにしか来ないこの場所が、
「今日ここで変わるのさ」
という歌詞の、「今日ここ」に間違いなくなっている。もう、フラッドという部族が生きていくべき場所はここなんじゃないだろうか、とすら思っていた。
そして爆音ブルース「One Way Blues」では亮介がハンドマイクで客席に突入して、観客に支えられながら歌う。闇夜に浮かび上がる亮介の姿は、完全にこのフェスのラスボス的な存在だった。
そして
「今日がこれだけ最高なんだから、俺たちまだまだ行けるよ!俺たちとあんたらの明日に捧げます!」
と言って演奏された「シーガル」ではマイクスタンドを客席に向けて大合唱を巻き起こし、トリとして文句のない、本当に素晴らしいライブを見せた。
ライブ後には司会者がステージに登場し、フェスが終わったことをアナウンスするのだが、それでもアンコールを求めるのを決して諦めない観客の姿を見て、
「……じゃあ、もう1曲聴きたい?」
と言うと、まさかのメンバー再登場。その司会者とメンバーがガッチリ抱き合うと、最後に演奏された「ベストライド」で大合唱を巻き起こし、これまでのベストを大幅に更新し、最後には司会者と4人が肩を組んで観客に一礼した。こんなにこのバンドが愛されていて、大事にされているフェスが他にあるだろうか。このライブが見れただけでも本当にここまで来て良かったし、信じてついてきて本当に良かった。そして、また来年もここでこのバンドのライブを見たい、と心から思った。
リハ.ファイト!
リハ.スカイウォーカー
1.Summertime Blues II
2.Dancing Zombiez
3.ミッドナイト・クローラー
4.Diamond Rocks
5.感光
6.夏の砂漠
7.NEW TRIBE
8.One Way Blues
9.シーガル
encore
10.ベストライド
NEW TRIBE
https://youtu.be/0Ml5Pi-kDC0
このフェスで最初にヤバTを見て思ったのは、野外フェスとは思えないくらいに音が良いということ。かねてから佐藤タイジやアジカンのゴッチは「太陽光発電は音が良い」と言っていたが、自分は「そんなの素人がわかるのか」と、懐疑的だった。(反原発という姿勢を持ってはいても)
しかしこのフェスに来て、それが本当だとわかった。音についての専門的な知識はないが、各楽器の一音一音が本当にクリアに聞こえる。それはPAの力だけでは絶対にない、と言い切れるのは、PAでどうにかなるんなら他のフェスでもこれくらい音をよくできるからである。
その音の良さがライブをさらに良いものにしている。(音が良ければライブが良く感じるのは当たり前だ)
それは自分だけでなく、the band apartやLEGO BIG MORLのメンバーたちもその音の良さに驚いていたし、他の参加者の方にもそう言っている人が本当に多かった。その音の良さが太陽光発電によるものであるならば、とかく音がライブハウスより良くないと言われる野外フェスの新たな可能性をこのフェスは切り開いている。
そうした音の良さはもちろんだが、会場の空気なども含めて、こんなに終わってしまうのが寂しくなるフェスは本当に久しぶりだった。
10-FEETのTAKUMAが以前、
「人は慣れてくるとちょっとやそっとのことでは感動しなくなる」
と言っていた。我ながら、ライブもフェスも数えきれないくらいに行っていて、慣れてしまっているだけに、そこまで感動することはもうないだろうな、とも思っていた。でもこのフェスに初めて来て、ロッキンやラブシャに初めて来た時のことを思い出した。それくらい、自分はこのフェスのあらゆる部分に感動していた。今まで来なかったのを後悔するくらい、本当に良いフェスだった。
持ち時間が長くて、音が本当に良くて、雰囲気もピースフルで、食べ物も美味しい。何よりも、遠征してここまで来ることができないような、地元に住んでいると思われる10代の人たちが、Dragon AshやヤバTというこの日出演しているバンドのTシャツを買って着ていて、本当に楽しそうに踊っていて、ツアーで今年岐阜に来ることをステージ上のバンドが告げると心から喜んでいる。そのくらいに地元に根付いているフェス。
こんなに良いフェスである条件しかないフェスが他にどのくらいあるんだろうか。毎年行き続けたい、そして帰りたくなくなるような場所が、今年もまた一つ増えてしまった。それは本当に幸せなことだ。
Next→ 9/24 9mm Parabellum Bullet @Zepp Tokyo
中津川駅前では朝早くから地元住民の方々が出店で飲食物を販売したり、シャトルバス乗り場に向かう道の途中にある店にはフェスの幟が立てられていたりと、街をあげてこのフェスを盛り上げていこうという姿勢は京都大作戦に来た時のことを思い出させる。もしかしたらこの街がここまで賑わうのは1年でこの2日間だけなのかもしれない。
ステージは
Revolution STAGE
REDEMPTION STAGE
RESPECT STAGE
REALIZE STAGE
RESILIENCE STAGE
の5つ。他にもラジオの公開録音ブースや、初日の深夜にDJが主体で出るブースなどもあるが、ステージが全て「R」から始まる単語で統一されているのはなんらかのメッセージを含んでいるのだろうか。
前日の朝までは雨が降っていたらしく、ところどころ芝生や土の部分はぬかるみこそあるが、見事に晴れており、太陽光発電日和と言える。会場内にはいたるところにソーラーパネルが設置されており、フリーマーケット的なブース、公園内に設置された遊具(子供は2人まで無料で入場できる)で子供たちが遊べるなど、そこまで広くはない(感覚的にはラブシャの会場の山中湖交流プラザくらいの規模感)会場に様々なインフラを設けており、栗きんとんなどこの地方ならではの食べ物や日本酒なども堪能できる。
10:00~ DJダイノジ [Revolution STAGE] (Morning Dance)
このフェスがこの会場で初開催された2012年から出演し続けている、ダイノジ。先週の氣志團万博同様に朝イチのオープニングアクト的な位置での出演。(この後、夕方にも再びDJで出演するが)
開場が10時で、それと同時にスタートするため、ちょっと出遅れてしまったのだが、sumika「Lovers」で大合唱を巻き起こし、ビートルズ「She Loves You」の歌詞解説をするなど、一見脈絡がないように見えてテンポやテーマなど、様々な面であらゆる時代のあらゆるジャンルの曲を繋いで見せるのはさすが
「あなたの好きを肯定しに来ました!」
と言える大谷の音楽的な知識と趣向の幅広さ。
「DJとして1番やってはいけないことをやります!次に出て来るバンドの曲をかけます!」
とヤバイTシャツ屋さん「あつまれ!パーティーピーポー」の最初の部分だけをループさせて
「エビバーディ!」
の大合唱を連発させると、そのまま定番のTOTALFAT「PARTY PARTY」に繋げるのだが、この違和感の無さはヤバTがパンクであるということを何よりも示している。
そして10-FEET「goes on」で飛び跳ねさせ、肩を組ませてグルグル回らせ、L'Arc~en~Ciel「Ready Steady Go」からラストは小沢健二「強い気持ち・強い愛」。
「これ、戦争と1番遠い景色だよ!」
と大谷は言っていたが、それはこのフェスに漂うピースフルな空気に合わせた選曲だったのかもしれない。
11:00~ ヤバイTシャツ屋さん [Revolution STAGE]
今年はあらゆるフェスに出まくっている、ヤバイTシャツ屋さん。フェスによっては小さいステージだったりするが、2年連続となるこのフェスではメインステージであるこのRevolution STAGEのトップバッターを務める。
おなじみの「はじまるよ〜」という脱力必至のSEで3人が登場すると、1曲目からいきなりの「あつまれ!パーティーピーポー」で
「エビバーディ!」
の大合唱を巻き起こすのだが、これはDJダイノジが先にこの曲を流したから1曲目にしたのだろうか。
さらに最近のフェスでは後半に演奏されることが多い「ヤバみ」も2曲目という早い段階で演奏されたのだが、この位置で演奏されたことによって、テンポがめちゃくちゃ速くなるということはなく、原曲に近いテンポで演奏されている。この辺りのライブの流れのコントロールも順番を入れ替えるだけでだいぶ変わってくる。
朝イチからダイバーが続出した「鬼POP〜」までを一気に駆け抜けると、雑な、というか嘘ばかりのMCを連発し、フェスでは久々のしばたの
「雑、雑ぅ〜!」
のツッコミも入れながら、
「流れ行く中津川〜」
と3人が敬愛する先輩である10-FEETの「RIVER」を口ずさむこやま。これもしばたに
「雑、雑ぅ〜!」
とツッコまれていたが、これは全然雑ではないというか、むしろリスペクトに溢れていると思う。
客席でタオルがグルグル回る「L・O・V・Eタオル」、高速ツービートメロコアサウンドなのにテーマは「USB」というギャップの「Universal Serial Bus」と続くと、
「僕はコンプレックスがあるんです。そのコンプレックスの歌を歌ってもいいでしょうか?」
と言って演奏されたのは、打ち込みのストリングスのサウンドも使った、壮大なバラード「肩have a good day」。
もりもとの口笛タイムも含めて、普通のバラードと呼ぶにはギミックが非常に多い(歌詞も含めて)曲ではあるが、昨今の若手バンドがフェスのセトリになかなかバラードを入れない中でこうして堂々と演奏し、しかもそれが大歓迎されている。ヤバTの曲がパンクであってもポップであってもバラードであっても、どれもが本当に良い曲だからこそそうして受け入れられているというのが実によくわかる瞬間であった。
フェスで演奏されるのは久々な気もする「Tank-top of the world」(最近は「Tank-top in your heart」の方がフェスで演奏される率は高い)を終えると、
「あと2曲ー!…いや、えー!?って言われても、今日は結構やってる方やで(笑)」
と、確かにフェスとしては多めの曲数となったのは持ち時間が長いということもあるが、このバンドが「面白いMCをしまくる」という手法から「ひたすら曲をやる」という戦い方にシフトしたからだし、「無線LANばり便利」「ハッピーウェディング前ソング」というライブ定番曲での大合唱を聴いていると、そうした戦い方になったのはそうするべき曲が生まれてきたからだというのがよくわかるし、8月から夏フェスで見るのは4回目になるのに、この日のヤバTのライブはあまりに良すぎて、少し、いや、かなり感動すらしてしまっていた。
売れるだろうとは思っていたけど、こんなに感情を揺さぶられるような凄いバンドになるなんて、2年前くらいまでは全く想像していなかった。
1.あつまれ!パーティーピーポー
2.ヤバみ
3.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
4.L・O・V・Eタオル
5.Universal Serial Bus
6.肩have a good day
7.Tank-top of the world
8.無線LANばり便利
9.ハッピーウェディング前ソング
ハッピーウェディング前ソング
https://youtu.be/duWW0G-zesY
11:45〜 Base Ball Bear [REDEMPTION STAGE]
去年のこのフェスで初めて3人体制でライブを行なった、Base Ball Bear。1年経って、正式に3人体制となってライブを続け、このフェスに帰ってきた。
おなじみのXTCのSEで登場すると、小出がギターを一閃すると同時に歌い始める「BREEEEZE GIRL」からスタートし、関根がぴょんぴょんと飛び跳ねまくりながらベースを弾く「PERFECT BLUE」で、もう9月末という季節的には完全に秋と言っていい時期であるものの、会場の雰囲気は夏真っ盛りでしかない。
本人たちもそうした自分たちに求められているものをわかっているようで、
「思いっきり夏に媚びたセットリストになってます!」
と、まだバンドにとって夏が終わっていないことを宣言し、「17才」「short hair」と、爽やかだけれども切なさを含んだ夏曲を連発していく。
しかしそれを「真夏の条件」で再び燃え上がらせ、
「ギターロックバンド風情ですけど、ラップしちゃっていいですかー!」
と言うと、小出がRHYMESTERのパートをラップして始まる「The CUT」では小出がラップしながら関根と向かい合うという、スリーピース編成だからこそ絵になる形に。実際、スリーピースとなって最もそのタイトかつスリリングなグルーヴを発揮しているのはこの曲だと思う。
そしてラストは今年のベボベの夏の最後の曲となる「ドラマチック」で、集まったたくさんの人の今年の夏の楽しかったり切なかったりした想い出を想起させた。
ベボベがこうして夏の野外でライブをしている時に、天気が悪かった記憶が全くない。13年連続で出演しているロッキンに顕著だし、この日のこのフェスでもそれは変わらない。だからこそ、この日が9月末とは思えないくらいに暑い日になり、太陽がギラギラと輝いていたのはこのバンドが出演していた日だからなんじゃないか、とすら思えてくる。この日で今年の夏フェス納めとなったが、来年以降もベボベのロック界の太陽神伝説はずっと続いていく。
1.BREEEEZE GIRL
2.PERFECT BLUE
3.17才
4.short hair
5.真夏の条件
6.The CUT
7.ドラマチック
short hair
https://youtu.be/kDc2VebfUdk
12:25〜 LIVE FOR NIPPON 武藤昭平 with ウエノコウジ presents SOLAR JAM [RESPECT STAGE]
もともとは武藤昭平 with ウエノコウジのユニットでのライブであったが、現在武藤昭平が食道ガンの治療で闘病中ということで、ウエノコウジに加えてギターに藤井一彦(THE GROOVERS)、キーボードに堀江博久(ex. the HIATUS)、ドラムに白根賢一(GREAT3)というバンド編成に。さらにはゲストボーカルたちも出演することも発表されており、「SOLAR JAM」という特別なライブへと名前も変化。
まずは藤井一彦がピート・タウンゼントばりに腕をぐるんぐるん回しながらギターを弾く、THE GROOVERSの曲からスタート。ウエノコウジをはじめとしたメンバーたちも藤井へのリスペクトを込めて演奏しているのがよくわかる。
続いてステージに現れたのは、ウエノコウジに「若頭」と紹介された、a flood of circleの佐々木亮介。
佐々木「昨日、ウエノさんが百々さんと名古屋でライブをやってて。堀江さんと一彦さんと俺で飲んでたから、ライブに乱入しようと思ったら、ウエノさんが「2部から出てくれ」と。
すっかり飲み過ぎて、2部の始まる時間過ぎちゃって、慌てて行ったらまだ1部のMCを長々としてた(笑)」
ウエノ「昨日、50分で5曲くらいしかやってないもん(笑)あとはずっと喋ってた(笑)」
佐々木「50分で5曲って、マイルス・デイヴィスのライブみたいになってるじゃないですか(笑)」
と、一緒にライブをやっているだけあって、2人の息はピッタリで武藤昭平 with ウエノコウジの最新作から「ウェイブ」を亮介がハンドマイクで歌うのだが、この曲はまだ武藤昭平もライブで歌ったことがないのに、亮介が歌いなれてきているので、
ウエノ「もうこの曲、亮介にあげるよ(笑)」
となぜかいきなりの曲譲渡宣言。
さらに
ウエノ「亮介はこの中では1番若くて…って言っても32歳とかか。俺にファンタ買ってこいよ、って言われたりして1番大変な年齢だけど、俺も50歳になったらもっと大御所っぽくなるのかと思ったら、怒髪天の増子さんとかに「ファンタ買ってこいよ」ってまだ言われるくらいに上の人たちが元気だから(笑)
「はい、増子さん!グレープですか!?オレンジですか!?」みたいに(笑)」
と、ロック業界の縦社会っぷりを表すエピソードを話したりと、フェスであっても完全にいつものように喋りまくっている。
そして亮介が自身の弾き語りでもウエノを招いて演奏していた「ローリン・サーカス」で、カントリーの要素が入っていても、亮介が歌えばロックンロールになる、ということをしっかり示し、ウエノから譲渡されなくても完全に亮介の歌になっていた。
亮介と入れ替わりでステージに登場したのは、武藤昭平の病気発覚後に武藤昭平の代わりにウエノとともにツアーを回っている、「呑まなければ2枚目、呑むと雑巾以下」にして、「ロック業界で1番使いやすい男」こと、MO'SOME TONEBENDERの百々和宏。ギターを持って登場すると、さらにウエノの近所に住んでいるというサックス奏者の斎藤ケイタも登場し、ステージ上は一層賑やかに。百々はビールを一気飲みしてカップを客席に放り投げながら「コロンブス」を演奏し、斎藤がステージを去ると、昨年亡くなったトム・ペティの「I won't back down」のカバーを演奏。百々はいつもよりもしゃがれたような声でロックンロール色を強めていたが、お代わりしたビールをまたしても一気飲みし、カップを客席に放り投げていた。
「今日は実はもう1人、スペシャルゲストがいます。みんなビックリすると思うよ。武藤昭平!」
とウエノが紹介すると、なんとガン闘病中のはずの武藤昭平が闘病前と全く変わらぬ出で立ちでステージに登場。
ウエノ「武藤さん、どうしたの?」
武藤「ガンに打ち勝って、帰ってきました!」
と復活したことを宣言し、「シンガポール急行」「エブリデイ・イズ・ラッキーデイ」を初めてライブで歌う。最新作のリリース直後に闘病生活に入ったため、武藤はライブでこの曲たちを歌っていなかったのである。
やはりまだボーカル自体は本調子とまでは言えなかったが、武藤の不在を埋めていた亮介と百々は袖で本当に嬉しそうに武藤が歌う姿を見ていたし、武藤もまた2人が自分の曲を歌ってくれているというのが何よりも強い力になっていたはずだ。
そしてラストは亮介、百々、斎藤ケイタの3人も再びステージに登場し、
百々「今日、名古屋駅で武藤さんに会った時、幽霊かと思った(笑)」
ウエノ「俺と百々は病院での姿を見てるからね。点滴打ちながら歩いてる武藤さんの姿を」
武藤「あの時は髪の毛が全部抜けちゃったからね〜」
百々「あの時の写真、ツイッターに載せていい?(笑)」
と、すでに完全に酔っ払っている百々の暴走と一気飲みが止まらない中、全員で「凡人賛歌」を大合唱。本当に武藤が凡人だったら、このステージに帰ってこれていない。誰よりも強い精神力を持っている超人だからこそ、武藤はこうして帰ってこれた。まだ真昼間の時間帯だが、早くも今年のこのフェスの一つのクライマックスを刻んだ瞬間だった。そして百々は最後にまたしてもビールを一気飲みして、カップを空に放った。武藤の代役という自らの役目を果たしたかのように。
ライブ後にはフェスの主催者が
「武藤さん!」「おかえりー!」
のコール&レスポンスを行なった。あの延々と酒を飲みながら話しまくるブルースマンコンビが、ようやくステージに戻ってきたのである。
1.乱気流ガール vo.藤井一彦
2.美しき人よ vo.藤井一彦
3.ウェイブ vo.佐々木亮介
4.ローリン・サーカス vo.佐々木亮介
5.コロンブス vo.百々和宏
6.I won't back down vo.百々和宏
7.シンガポール急行 vo.武藤昭平
8.エブリデイ・イズ・ラッキーデイ vo.武藤昭平
9.凡人賛歌 vo.武藤、佐々木、百々
凡人賛歌
https://youtu.be/gU8e6aBMYlQ
13:30〜 Creepy Nuts [REALIZE STAGE]
すでに時間前のサウンドチェックから2人が登場し、その段階で超満員というこのフェス初出演にして注目度の高さを見せつける、Creepy Nuts。
R-指定の実にスムーズなラップと、観客の盛り上がりを煽る言葉でヒップホップがこのフェスにおいて決してアウェーではないことを証明すると、おなじみの「観客からお題をもらってそれを元にR-指定がフリースタイルをする」という聖徳太子スタイルへ。
「浮気」の後に「入籍」が挙がるという幸福と不幸のコントラストを描きながら、「栗きんとん」という中津川名物のワードではDJ松永が
「来る時に車の中で栗きんとん渡されて食べたんだけど、油断して飲み物持ってなかったから口の中の水分持っていかれて、口の中が砂漠になった(笑)」
と栗きんとんをいきなり食べた感想を語るのだが、それが若干ディスっぽくなってしまうあたりはさすが松永である。
そうして出揃ったのは、普段のフェスでは5つくらいにしているというところを8つという大盤振る舞いにしたワードたち。ワードが多いことにより、当然フリースタイルもおよそ5分に及ぼうかというくらいに長いものになったのだが、そのスキルを存分に見せつけながら、1つも漏らすこともないという満点の出来。ワードにさりげなくつなげてみたりするのはどうやったら思い浮かぶのだろうか。
そして「合法的トビ方ノススメ」で音楽だけでハイになると、
「俺ら、学生時代とかにずっとイケてない、ダサい側の人間やったんです。だからバリバリのヒップホップやるような人には見えないかもしれない俺らがなんでヒップホップを選んだか。
ヒップホップはもともとアメリカで生まれた、黒人の人たちが差別とか社会に対する怒りを言葉にしてぶつけたもので。日本ではそういういきなり街中で銃撃戦が始まったりっていうことはないけど、誰しもが怒りとかを持っていると思う。イケてない奴らにはイケてない奴らなりの怒りだってある。俺だって松永だってあるし。
でもそれを暴力にするんじゃなくて、その怒りとかを音楽と言葉にする。こうしてこのフェスに出てるミュージシャンたちもみんなそうやと思うし、だから俺たちは音楽を選んだんです」
と、ヒップホップで、音楽で生きていこうとする人生に決めた理由を語ると、ラストに「トレンチコート・マフィア」でその生き様をラップにしてみせた。その姿は面白くてラップができる兄ちゃんではない、ヒップホップに人生を賭けた男のプライドがあった。
1.助演男優賞
2.ぬえの鳴く夜は
3.紙様
4.聖徳太子フリースタイル
5.合法的トビ方ノススメ
6.かいこ
7.トレンチコート・マフィア
合法的トビ方ノススメ
https://youtu.be/UVaZf3GliDs
14:40〜 The Birthday [Revolution STAGE]
近年はこうした地方の中規模くらいのフェスでメインステージに出ているというイメージが強い、The Birthday。先ほどウエノコウジが出演しているため、チバとクハラも含めてミッシェル・ガン・エレファントの3人が揃い、さらには藤井一彦とフジイケンジの兄弟も揃うことになった。
いつものように黒いスーツに身を包んで落ち着いて登場すると、チバのギターストロークから「なぜか今日は」でスタートし、いきなりダイバーが続出。「The Birthdayのライブってこんなノリだっけ?」と思ってしまうが、それはバンドの音の強さに観客が反応したものである。とはいえ百戦錬磨のメンバーたちはだからといって何かが変わるわけでもない。
「THE ANSWER」「カレンダーガール」と続くと、チバとフジイケンジのギターリフやカッティング、クハラの乾いたスネアの音、ヒライハルキのうねりながらも土台を支えるベースと、ロックンロールって本当にカッコいい音楽だな、と思わせる説得力に満ちた演奏を繰り広げていく。チバは見た目こそ髭にも白髪が多くなって、年相応になってきているが、バンドの演奏の強さとグルーヴは進化の一途をたどっている。
「毎年このフェスは晴れていて最高ですね」
とクハラが太陽に感謝すると、
「あれ、中日だよな?…中日に見られてるの目立つな」
とチバはPAテントにいる中日ドラゴンズのユニフォームを着た人のことが気になって仕方がないらしく、自らハンドマイクで動き回りながら熱唱する「LOVE SHOT」の後の「涙がこぼれそう」の
「俺さ今どこ?」
の観客の大合唱に対するご当地ネタアンサーは、
「今日は中日と、中津川ソーラーのお前たちと一緒だ!」
とやはり中日を無視できない様子。
そしてメンバーのコーラスが力強く重なっていく「READY STEADY GO」から、ラストはポップな「1977」と駆け抜けた。もはやチバやクハラは大ベテランと言ってもいいくらいの存在だが、全くそんなことを感じさせないくらいに今もロックンロールへの衝動に満ち溢れている。
1.なぜか今日は
2.THE ANSWER
3.カレンダーガール
4.24時
5.LOVE SHOT
6.涙がこぼれそう
7.READY STEADY GO
8.1977
THE ANSWER
https://youtu.be/LfU3P-YdDAE
15:40〜 GRAPEVINE [REDEMPTION STAGE]
サウンドチェックでメンバー全員が出てくると、「MISOGI」を演奏し始めたGRAPEVINE。ちょっと前までは早めに出てきても曲をやるわけではなく、ただひたすらにセッション的に音を合わせるという、まさにサウンドチェックというようなことしかフェスではやっていなかっただけに、こうしたふとした瞬間にファンサービス精神が強くなっていることを感じることができる。
本番では「Arma」という最新にして、革新的というよりはバンドの持つ本質的なポップな部分を押し出してスタートすると、イントロが鳴った瞬間に名曲確定な代表曲「スロウ」と、本当に10年くらい前の、ひたすら新しめのアルバムに入ってるアルバム曲ばっかり演奏するというフェスの戦い方は変わってきたんだな、ということを実感する。それはもはやベテランという立ち位置になって変わったことなんだろうけど、シングル曲は知ってるけどライブは見たことがないというようなフェスで見る人たちにとっては実に嬉しいはずだ。
「夏の終わりをせいぜい楽しんでください」
と田中が天邪鬼的に観客に話し、バンドが21周年に突入したことを告げて歓声を煽ると、
「デビューから21周年ですからね。結成から数えるともう68年ですよ」
とやはり天邪鬼にうそぶいてみせる。
すると田中がアコギに持ち替えた「風待ち」ではその天邪鬼っぷりが祟ったのか、歌詞が飛んでしまう一幕も。すぐに
「感極まってしまった」
と田中は曲中に言っていたが、ライブ中にそういう風に感じるようなタイプではないだけに、誤魔化し方は上手くないようだ。
そしてSWEET LOVE SHOWERの時に5曲のセトリの中に入ってきて驚愕した超レア曲「エレウテリア」(「超える」のカップリング)をここでも披露して自然の空気と相まってゆったりと浸らせたのだが、ここにきてこの曲がライブ定番化してきた意図はいったいなんなんだろうか。
さらに「Sing」とバンドの持つ渋みを存分に味あわせると、一転して「豚の皿」では獰猛なサウンドが火を吹き、田中も声を張り上げるようにして熱唱。このコントラストこそがGRAPEVINEというバンドであるし、瞬時に空気を変えてしまいながらもそれを飄々とやってのけるメンバーの演奏の安定感はやはり素晴らしい。曲終わりには田中は
「中津川が気になりだす 中津川が気になりだす」
と言っていたが、この日初めてここに来た自分はまさにこの中津川がこんなに良いフェスだったということに気づいて、気になりださずにはいられない状態だった。
そして大名曲「光について」で再びガッチリとした演奏よりもポップなメロディをしっかりと響かせると、ラストはライブの最後にこれほど相応しい曲もないんじゃないかというくらいに壮大な「Everyman, everywhere」が陽が落ちてきたこの中津川に見事に溶け合っていた。
GRAPEVINEは割と長い曲が多い。(この日はやってないけど「CORE」や「KINGDOM COME」はかなりの長尺曲だ)
だからフェスで短い持ち時間だと5曲やるのが精一杯、みたいな機会も増えてきているのだが、今回は8曲も演奏できている。それはこのフェスがどのステージであっても40分以上の持ち時間を用意しているからということによるもの。
それだけでも本当に良いフェスだと思うし、かつてはロッキンなどの大型フェスにずっと出続けながらも、近年はそうした場所がアウェーになってしまいつつあるGRAPEVINEにとって、このフェスはずっと生き続けていける場所になっているんじゃないかと思うくらいに、初めて見にきてもこの場所は本当にこのバンドに合っている。
リハ.MISOGI
1.Arma
2.スロウ
3.風待ち
4.エレウテリア
5.Sing
6.豚の皿
7.光について
8.Everyman,everywhere
Arma
https://youtu.be/flTbXMmQ3ZY
16:40〜 ストレイテナー [Revolution STAGE]
こちらは結成20周年イヤーとなる、ストレイテナー。とはいえ、ホリエアツシとナカヤマシンペイの2人で結成されて20年であり、前日にはNothing's Carved In Stoneで出演したひなっち、OJこと大山純が後から加入しているので、かなりいろんなタイミングで周年イヤーが訪れるバンドである。
おなじみのSEが鳴り、手拍子に迎えられて4人がステージに登場すると、太陽が陰ってきたこの会場の空に合わせたかのような「彩雲」からスタートし、じっくりと20年を超えたこのバンドのポップな部分とホリエの歌声を響かせたかと思ったら、OJのギターが鋭利に切り込んでくる、20周年記念のファン投票によるベストアルバムで見事に投票1位に輝いた「REMINDER」でストレートなギターロックバンドとしてのストレイテナーの姿も見せる。
打ち込みのサウンドも取り入れた「冬の太陽」はタイトルだけ見ると季節外れな選曲のように見えるが、徐々に熱を帯びていくそのサウンドは夏フェスと言えなくもないこのフェスでもしっかりとこのバンドの魅力を伝える曲になっている。
「来月、ベストアルバムが出ます!良い曲が多すぎて自分たちでは選べないんで、みんなに選んでもらいました!その中に1曲だけ入っている新曲をやります」
と、ベストアルバムの説明をしてから演奏されたのは、ホリエが立ったままでキーボードを弾きながら歌う「Braver」。どこか浮遊感を感じさせるのはそのホリエの歌唱と演奏スタイルだからであろうが、まだフルアルバムが出たばかりと言ってもいい時期であるのに新曲が生まれてくるくらいにバンドの状態は良いということだろう。
「今日、寒いだろうと思ってこの曲選んだけど、全然寒くなかったね(笑)」
とホリエが苦笑いを浮かべながらキーボードの前に座って歌い始めたのは、秦基博と共作した「灯り」。そのホリエのボーカルを前面に押し出したアレンジはバンドだけでは出てこなかったものだろうが、近年は弾き語りでのライブも精力的に行っているだけに、秦基博不在でも成り立つくらいにホリエのボーカルは憂いに満ちた素晴らしいものになっている。
そしてバンド最大のキラーチューン「Melodic Storm」で合唱という名のメロディの風を巻き起こすと、今年の夏の様々な思い出を脳裏に呼び起こす、完全に新たなバンドの代表曲となった「シーグラス」で、この会場は海の近くではないが、
「夏が終わりを急いでる」
ことを実感して切ない気持ちになる。
そして最後になんの曲を演奏するのだろうか、と思っていたら、
「普通は絶対フェスではやらない曲なんだろうけど(笑)」
と断ってから演奏された、最新アルバム収録の「Our Land」。この日最も激しくホリエとOJがギターをかき鳴らしてバンドの最新形を見せたが、タイトルからして、この日このフェスでこの曲が演奏されたのはバンドからの一つのメッセージなんじゃないかと自分は感じていた。
最後にはいつものように4人で肩を組んで一礼。20年というと大ベテランのように感じてしまうが、今もストレイテナーは自分たちを更新しながら最前線を走っている。まだまだ面白いことをたくさんやってくれそうだ。
1.彩雲
2.REMINDER
3.冬の太陽
4.Braver
5.灯り
6.Melodic Storm
7.シーグラス
8.Our Land
Braver
https://youtu.be/rvNlzyWVbGk
17:40〜 go! go! vanillas [REDEMPTION STAGE]
前日に日比谷野音でのワンマンを終えたばかりでこのフェスに初めて乗り込んできた、go! go! vanillas。そうして自分たちのワンマンも行いながら、今年は様々な夏フェスに出演しまくってきた。
おなじみ「We are go!」のSEでメンバーがステージに登場すると、最後の夏を噛みしめるかのように「SUMMER BREEZE」からスタートするのだが、メンバーたちも平成最後の夏に気合いが漲っている。
観客だけでなくメンバーも飛び跳ねながら演奏し、ジェットセイヤは片腕を高く掲げながら4つ打ちを刻み、頭上に放り投げたスティックを見事にキャッチした「エマ」、プリティを筆頭にメンバーのマイクリレーが行われ、自身のボーカルパートではない部分では牧がステージから飛び降りて客席に突入してギターを弾き、最後には牧、プリティ、柳沢の3人が一本のマイクで歌う「デッドマンズチェイス」と、野音ワンマンを終えたばかりで脂が乗り切った状態であるのが一目でわかるくらいのパフォーマンスの凄まじさ。
「太陽の力とお前たちの力を見せてくれー!」
と牧がこのフェスの趣旨を理解しながら大合唱を巻き起こした「おはようカルチャー」を終えると、フェスでは珍しく柳沢がメインボーカルを務める「ストレンジャー」という選曲も。あえてこのフェスでこのカードを切ってきた理由はわからないが、他のフェスと全く同じライブにはしないというバンドからの意志はしっかり感じることができる。
そして「カウンターアクション」で再び飛び跳ねさせまくり、柳沢と牧の激しいギターソロバトルも展開すると、ラストは平成最後の夏に響かせる「平成ペイン」で客席ではたくさんの人がMVのダンスを踊る中、ロッキンのLAKE STAGE、ラブシャのMt.FUJI STAGE、そしてこの日のREDEMPTION STAGEと、規模の大きなステージを全て満員にしてみせるという、平成生まれのメンバーによるこのバンドが、平成最後の夏にさらに大きく飛躍したことを証明してみせた。
良い曲をリリースして、ライブが良くなれば見てくれる人は必ず増える。そんな当たり前のようでいて、全てのバンドができることではないことを、このバンドはしっかり形にすることができている。
1.SUMMER BREEZE
2.エマ
3.デッドマンズチェイス
4.おはようカルチャー
5.ストレンジャー
6.カウンターアクション
7.平成ペイン
SUMMER BREEZE
https://youtu.be/lTYHDtukfcw
18:40〜 SCOOBIE DO [REALIZE STAGE]
サウンドチェック時におなじみの、というかもはや「サウンドチェック時のこのバンドの曲」と言ってもいいレベルになりつつある山下達郎の「RIDE ON TIME」を演奏していた、SCOOBIE DO。このフェスにおいてはおなじみの存在である。
コヤマシュウがいつもの白、他のメンバーが黒いスーツに身を包んで登場すると、おなじみのコヤマの前口上で観客をファンキーモードに切り替えさせると、「いつ何時いかなる時もアウェイ」という自分たちの置かれた境遇を自虐的に曲にした「アウェイ」でスタートするのだが、
「アウェイ! アウェイ!」
と発される単語こそ確かにアウェイではあれど、その合唱の大きさと一体感には一切のアウェイ感は存在しない。
EXILEのように重なってぐるっと回ったりと、メンバーの演奏のフォーメーションが見事な「真夜中のダンスホール」、このフェスに捧げられた「ミラクルズ」とこのバンドならではの横ノリで揺らしまくると、「What's Goin' On」ではコヤマが
「シアターブルックありがとう!俺たちのありったけの愛で応えるぜ!」
と、同じようにブラックミュージックへの憧憬を自分たちの音楽に落とし込んできた、長い年月近い位置にいた盟友である主催者のシアターブルックへの感謝を告げ、そのままシアターブルック「ありったけの愛を」のカバーに繋げるという粋な計らいも。こうして違和感なくカバーに繋げられるのも、音楽性はもちろん精神の部分でもずっと共闘し続けてきたバンド同士だからなのだろう。
最新作「CRACKLACK」(と言ってももうリリースされてから1年経つけど)からの「Cold Dancer」は打ち込みも使った4つ打ちの曲だが、タイトルに反して
「生かされてるこの命を燃やさないでどうする?」
という、自分たちで全てのバンド活動を回しながら全国のライブハウスやフェスのステージを駆け巡るこのバンドの生き様そのもののような熱い歌詞。だからこそ客席もColdではなくHotに踊りまくる。
そしてメンバーがその場でグルグルと回りながら演奏する鉄板曲「Back On」でさらに熱量を上げると、デビュー曲「夕焼けのメロディー」でコヤマの歌心をしっかりと見せて終了…かと思いきや、最後にこのフェスとシアターブルックへの愛を表明する「Sweet Little Lover」で再びコール&レスポンス連発、客席踊りまくりで熱狂の渦に包まれながらライブを終えると、バンドのマネージャー業も行いながら、最近は自身が大好きなメジャーリーグ中継で解説も務めるというくらいに野球ファンにも知られつつあるドラマーのオカモト”MOBY”タクヤが深々と頭を下げ、コヤマは
「ありがとう中津川!また来年必ずやろう!」
と、来年のこの場所での再会を約束した。
今やこのバンドはRISING SUN ROCK FES.においては欠かせない存在(オファーされていないのに会場に行って自らオープニングアクトを買って出たこともある)となっているが、この日の熱狂はこのフェスにおいてもこのバンドがそうした存在になりつつあるということを証明するような、見事なLIVE CHAMPっぷりだった。
リハ.RIDE ON TIME
1.アウェイ
2.真夜中のダンスホール
3.ミラクルズ
4.What's Goin' On 〜 ありったけの愛を
5.Cold Dancer
6.Back On
7.夕焼けのメロディー
8.Sweet Little Lover
Cold Dancer
https://youtu.be/Gl86AGsdclQ
20:00〜 a flood of circle [REALIZE STAGE]
この小さな街で行われている、夢のような景色も終わりの時間が近づいてきている。この独特の装飾が施されたREALIZE STAGEのトリを務めるのは、ロック界の若頭こと佐々木亮介率いる、a flood of circle。このフェスには開催初年度から出演している。
サウンドチェックの時点で中島みゆき「ファイト!」のカバーを亮介が歌い上げ、さらに「スカイウォーカー」のサウンドチェックとは思えないようなグルーヴが時間前から客席を熱くさせると、おなじみのSEでメンバーがステージに登場。サウンドチェックの時はサングラスをかけていた青木テツは本番ではサングラスを外し、自身がプロデュースした黒いシャツを着ての登場。亮介はいつも通りの革ジャンなのは先にボーカルとして参加した、武藤昭平 with ウエノコウジの時と変わらない。
ライブは「Summertime Blues II」からスタートしたのだが、夏曲ではありながらも最近はフェスではあまり演奏されていないこの曲が演奏されたのは、
「忌野清志郎より婆ちゃんに教わったんだ
「核などいらねー」彼女の心はそれきり変わっちゃいない1945年夏」
という歌詞がある通り、このフェスが原発ではなくて太陽光のエネルギーで開催されているという確かな意志を持ったフェスだからであろう。そして亮介は
「今ここ!中津川!」
と歌詞を変え、70年以上前と今この瞬間を繋いで見せる。今も昔も日本が同じ問題を抱えているのを示すように。
アウトロで演奏だけでなく、HISAYOを皮切りにメンバーそれぞれのソロ回しが追加された「Dancing Zombiez」から「ミッドナイト・クローラー」というライブアンセムの連発でこのフェスの最後の時間を燃え上がらせるが、亮介は2ステージ目ということもあってか、やや声はいつもの勢いと比べるとここまでは大人しめ。
しかしながら
「転がり続ける人に捧げる」
と言って演奏された「Diamond Rocks」あたりからはいつもの凄みがその声に宿っていく。
そもそもはドラムの渡邊一丘のテーマソング的に作ったこの曲を、なぜ一丘ではなくて「転がり続ける人に」向けて演奏されたのか。それは間違いなくこの日ステージに帰ってきた武藤昭平の姿を見たからであろう。生死を彷徨うような重い病気を患ってもなお、ブルースマンとして転がり続けていくことを選んだ武藤の姿から、亮介は大きな力を受け取っているはず。その亮介の意志はこの日、武藤昭平 with ウエノコウジのライブを見てからフラッドのライブを見ていた人はみんなわかっていたはずだ。
さらに普段フェスではほとんど演奏されることがない、というかワンマンでもよほどの理由がないと演奏されることのない「感光」。震災の後にはよく演奏されていたが、この日の亮介の
「生きていて」
の絶唱は震災はもちろん、今も震災の被害から立ち上がろうとしている人々、そして武藤のように重い病から立ち上がろうとしているすべての人に向けられているようだった。こうした曲は他の、まだこのバンドの存在をアピールするためのライブであるフェスのステージではまず演奏されない。このフェスが自分たちの居場所であることをわかっているからこうした曲をステージから鳴らすことができる。
11月にリリースされるシングルに収録される新曲「夏の砂漠」でこれからこのバンドがもっと広い場所へ打って出て行こうとする意志を感じさせると、
「2011年の3月の事故は歴史の教科書に載るようなことになってしまった。そこから新しい歴史を作って教科書に載るのはこのフェスだ!」
と佐藤タイジとこのフェスの意志をしっかりと伝えてから演奏された「NEW TRIBE」はこのフェス、この中津川の地にa flood of circleという名前の旗を打ち立てるような、素晴らしい名演だった。地元ではないし、このフェスのためにしか来ないこの場所が、
「今日ここで変わるのさ」
という歌詞の、「今日ここ」に間違いなくなっている。もう、フラッドという部族が生きていくべき場所はここなんじゃないだろうか、とすら思っていた。
そして爆音ブルース「One Way Blues」では亮介がハンドマイクで客席に突入して、観客に支えられながら歌う。闇夜に浮かび上がる亮介の姿は、完全にこのフェスのラスボス的な存在だった。
そして
「今日がこれだけ最高なんだから、俺たちまだまだ行けるよ!俺たちとあんたらの明日に捧げます!」
と言って演奏された「シーガル」ではマイクスタンドを客席に向けて大合唱を巻き起こし、トリとして文句のない、本当に素晴らしいライブを見せた。
ライブ後には司会者がステージに登場し、フェスが終わったことをアナウンスするのだが、それでもアンコールを求めるのを決して諦めない観客の姿を見て、
「……じゃあ、もう1曲聴きたい?」
と言うと、まさかのメンバー再登場。その司会者とメンバーがガッチリ抱き合うと、最後に演奏された「ベストライド」で大合唱を巻き起こし、これまでのベストを大幅に更新し、最後には司会者と4人が肩を組んで観客に一礼した。こんなにこのバンドが愛されていて、大事にされているフェスが他にあるだろうか。このライブが見れただけでも本当にここまで来て良かったし、信じてついてきて本当に良かった。そして、また来年もここでこのバンドのライブを見たい、と心から思った。
リハ.ファイト!
リハ.スカイウォーカー
1.Summertime Blues II
2.Dancing Zombiez
3.ミッドナイト・クローラー
4.Diamond Rocks
5.感光
6.夏の砂漠
7.NEW TRIBE
8.One Way Blues
9.シーガル
encore
10.ベストライド
NEW TRIBE
https://youtu.be/0Ml5Pi-kDC0
このフェスで最初にヤバTを見て思ったのは、野外フェスとは思えないくらいに音が良いということ。かねてから佐藤タイジやアジカンのゴッチは「太陽光発電は音が良い」と言っていたが、自分は「そんなの素人がわかるのか」と、懐疑的だった。(反原発という姿勢を持ってはいても)
しかしこのフェスに来て、それが本当だとわかった。音についての専門的な知識はないが、各楽器の一音一音が本当にクリアに聞こえる。それはPAの力だけでは絶対にない、と言い切れるのは、PAでどうにかなるんなら他のフェスでもこれくらい音をよくできるからである。
その音の良さがライブをさらに良いものにしている。(音が良ければライブが良く感じるのは当たり前だ)
それは自分だけでなく、the band apartやLEGO BIG MORLのメンバーたちもその音の良さに驚いていたし、他の参加者の方にもそう言っている人が本当に多かった。その音の良さが太陽光発電によるものであるならば、とかく音がライブハウスより良くないと言われる野外フェスの新たな可能性をこのフェスは切り開いている。
そうした音の良さはもちろんだが、会場の空気なども含めて、こんなに終わってしまうのが寂しくなるフェスは本当に久しぶりだった。
10-FEETのTAKUMAが以前、
「人は慣れてくるとちょっとやそっとのことでは感動しなくなる」
と言っていた。我ながら、ライブもフェスも数えきれないくらいに行っていて、慣れてしまっているだけに、そこまで感動することはもうないだろうな、とも思っていた。でもこのフェスに初めて来て、ロッキンやラブシャに初めて来た時のことを思い出した。それくらい、自分はこのフェスのあらゆる部分に感動していた。今まで来なかったのを後悔するくらい、本当に良いフェスだった。
持ち時間が長くて、音が本当に良くて、雰囲気もピースフルで、食べ物も美味しい。何よりも、遠征してここまで来ることができないような、地元に住んでいると思われる10代の人たちが、Dragon AshやヤバTというこの日出演しているバンドのTシャツを買って着ていて、本当に楽しそうに踊っていて、ツアーで今年岐阜に来ることをステージ上のバンドが告げると心から喜んでいる。そのくらいに地元に根付いているフェス。
こんなに良いフェスである条件しかないフェスが他にどのくらいあるんだろうか。毎年行き続けたい、そして帰りたくなくなるような場所が、今年もまた一つ増えてしまった。それは本当に幸せなことだ。
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