SWEET LOVE SHOWER 2018 day3 @山中湖交流プラザきらら 9/2
- 2018/09/03
- 23:21
いよいよ3日目、最終日。早朝から山中湖には雨が降り続いており、会場も土の地面は泥と化していたのだが、開演前はほとんど雨は降っていないという状態に。
10:25〜 yonige [Mt.FUJI STAGE]
去年はFOREST STAGEに出演していた、yonige。今年はここまでにも全国の様々なフェスに出演している。
サポートのホリエを加えた3人で登場すると、今年の夏フェスの会場でCDが販売されている新曲「リボルバー」からスタート。淡々とした日常を牛丸ありさの独自の視点で描いていくこの曲は個人的な2018年の夏のベストトラック。
「our time city」からはごっきんが大きく体を揺らしながらベースを弾き、何よりも朝10時台とは思えないくらいに牛丸のボーカルがよく伸びていて、このスケールに見合うような歌唱力を手にしている。思えば、去年FOREST STAGEに出た時も牛丸の歌唱力の向上を感じていた。このフェスはもしかしたら牛丸が最も伸び伸びと歌える場所なのかもしれない。
しかしMCではごっきんがこのMt.FUJI STAGEを「Mr.FUJI STAGE」と言い間違えるという天然っぷりを発揮。ロッキンの時は逆に牛丸が去年出たステージの名前を間違えてごっきんが訂正していたが、もしかしたら2人とも天然なんだろうか。
原曲よりもはるかにテンポが上がった「アボカド」の後は曇天の山中湖の自然の中で聴くのが実に心地いい「沙希」で緩急をつけると、牛丸が観客を盛り上げようとするもあまりの下手さにごっきんに変わり、見事に観客を盛り上げて見せたごっきんは
「ちょろいな〜」
と一言。
そして「さよならプリズナー」で時間的にも終わりかな?と思いきや、最後に演奏されたのはauのCMで流れまくっていた「笑おう」。
「一緒に笑おう」
というフレーズを伸びやかに歌う牛丸のボーカルは、この日1日の最高の出だしとなった。
今でこそこうしてフェスの大きなステージに立つようになったし、ホールでワンマンもできるようになっているyonigeだが、ライブの最後には必ず牛丸が
「またライブハウスで会いましょう」
と言う。見た目からはあまりそういう風には見えないが、これまでのライブハウスでの打ち上げでの数々の強烈なエピソードも含め、この2人はずっとライブハウスで生きてきた人間だし、それはこれからも変わらないのだろう。そういう意味でも実に真っ当なロックバンドだと言える。
リハ.さよならバイバイ
リハ.さよならアイデンティティー
1.リボルバー
2.our time city
3.ワンルーム
4.アボカド
5.沙希
6.さよならプリズナー
7.笑おう
リボルバー
https://youtu.be/w_3atGoniPM
11:05〜 My Hair is Bad [LAKESIDE STAGE]
2年前の初出演がFOREST STAGE、去年はMt.FUJI STAGE、そして3年目の今年についにLAKESIDE STAGEに進出した、My Hair is Bad。
サウンドチェックから3人がステージで曲を演奏すると、捌けることなくそのまま本番に突入するという持ち時間を最大限に使うスタイルで
「ドキドキしようぜ!」
と椎木が叫んで「アフターアワー」からスタート。曲終わりには
「絶対晴れさせてやる!」
と曇天の雲に向かって宣言し、「告白」でさらにそのドキドキを加速させていく。
「このSWEET LOVE SHOWERで最も短いラブソング」こと「クリサンセマム」から
「ラブシャの1番デカいステージに立っちゃってるっていう感じどう?」
と元彼女に問いかける「元彼氏として」で踊らせると、この日は2年前を彷彿とさせるくらいに声が枯れ気味だった椎木が、
「さっき、絶対晴れさせてやる!って言ったけど、日比谷野音も大阪城野音も雨、スピッツのイベントも雨で中止。でも俺たちはあんたらの心を晴らしに来たんだ!」
と雨バンドであることを認めながらも力強く宣言して言葉をマシンガンのように乱射しまくった「フロムナウオン」から、
「最後は幸せな歌を」
と言って「いつか結婚しても」。
夏の匂いはしなかったけれど、ギリギリ雨が降らないこの日の天気からは、確かに夏が過ぎてくのを感じた。
リハ.優しさの行方
リハ.復讐
1.アフターアワー
2.告白
3.ドラマみたいだ
4.クリサンセマム
5.元彼氏として
6.フロムナウオン
7.いつか結婚しても
いつか結婚しても
https://youtu.be/xXAJy4OtcZo
11:40〜 石毛輝 with CHAI [INTERNATIONAL FLASH Talk Show]
前日にはクロージングDJを行なった、the telephones、Yap!!!などで活動している石毛輝はスペシャの洋楽情報番組「INTERNATIONAL FLASH」で司会を務めており、過去にはFOO FIGHTERSのデイヴ・グロールにもインタビューをしているのだが、その石毛輝の司会による出演者インタビュー。
この時間はこの日FOREST STAGEのオープニングアクトを務めた、CHAIとのインタビュー。
ステージ衣装ではないCHAIの4人の姿は新鮮ではあるが、「ステージを降りると誰だかわからない」ということはなく、「CHAIだ」って一目でわかるような、独特のNEOカワイイオーラを持っている。
しかし一度石毛が話を振ると、4人全員が同時にしゃべり始めて何を言ってるのか全くわからないというCHAIらしさをフルに発揮し、石毛も最初はかなり困惑していたが、「ちゃんと答える人を指名して話を振る」という方向にシフトしてからはしっかりとインタビューとして成立し始める。
ちなみにCHAIがこの日見たいアーティストは、ONE OK ROCK、cero、きゃりーぱみゅぱみゅ、Yogee New Wavesというあたりだそうだが、Yogeeはこの時間に絶賛ライブ中であり、当然見ることはできず。
観覧者からも質問を募集していたのだが、
「双子のマナとカナはケンカをするのか?」
という問いに対し、一方がハサミを持ち出すくらいまでガチでケンカすることがあるということ。ちなみにメンバーで唯一兄弟がいないドラムのユナは
「兄弟がいないから、自分自身とよく戦っている」
という哲学的な回答で爆笑を巻き起こす。
今年の夏はフェス三昧で、焼肉に行ったくらいしかプライベートで夏を満喫していないというCHAIと、実は先日CHAIと一緒に焼肉を食べに行ったという石毛の5人で、最後に観客をバックに記念撮影。石毛は独特の音作りをしているCHAIの機材にもかなり興味を示していたが、流れがマニアック過ぎるので今回は深掘りはせず。
13:30〜 スガシカオ [Mt.FUJI STAGE]
このフェス初出演となる、スガシカオ。初出演アーティストは基本的にみんなFOREST STAGE(吉井和哉ですらもFORESTだった)に出演することになりがちだが、やはりというかなんというか、スガシカオクラスのベテランとなるとMt.FUJI STAGEである。
ドラム・SATOKO(FUZZY CONTROL)、ベース・坂本竜太(水樹奈々など)、コーラス・mayahatch、ギター・Duran(ex.a flood of circle)というバンドメンバーが先に登場して演奏を開始すると、最後にスガシカオが登場して「赤い実」からスタート。続く「Party People」も含め、実にファンク色が強いサウンドは、「夜空ノムコウ」を作ったというポップアーティストとしてのパブリックイメージを持ったままだとビックリするだろう。
「今日は涼しいけど、みんな今年の夏はめちゃくちゃ暑かったよね?夏が大好きな俺でも生きていけるかどうかギリギリのところだったよ!そんなギリギリで生きてきた平成最後の夏に、俺が作ったギリギリで生きていたい曲を送るぜ!」
と夏男のスガシカオが言って演奏されたのは、自身が提供したKAT-TUN「Real Face」のセルフカバー。原曲を知らないままで聴いたらジャニーズの曲とは思えないくらいにハードロック・ファンク色が強いスガシカオのものに生まれ変わっているが、その核を担うのは続く「19才」でスガシカオに
「こいつの山中湖の自然に似つかわしくない不埒なギターを聴いてくれ〜!」
と言わしめたDuranのギター。a flood of circleに正式加入したと思ったらあっという間に脱退しただけに、今でも複雑な感情を抱いているフラッドのファンもたくさんいるが、そうした出来事の全てが今の青木テツを含めた最強フラッドに至るまでの過程であったことを考えると、全てが悪いことではなかったとも思う。それは今だからこそそう思えることでもあるけれど。
元はkokuaというプロジェクトの曲であったが、非常に強いタイアップ効果もあって今ではスガシカオの代表曲と言える「Progress」からはしっかりみんなの望む名曲を連発するモードに転じて、夏の野外に聴くのがそれまでの濃厚なファンクとのコントラストで非常に爽やかに聞こえる「奇跡」、そしてラストは「コノユビトマレ」というライブ鉄板曲を並べ、わずか35分という短い時間の中で自らのルーツであるファンクな面と、多数のヒット曲を世に放ってきたポップアーティストの面をしっかり両立してくるのはさすがである。
1.赤い実
2.Party People
3.Real Face
4.19才
5.Progress
6.奇跡
7.コノユビトマレ
コノユビトマレ
https://youtu.be/RWI0Pg8SWnI
14:15〜 クリープハイプ [LAKESIDE STAGE]
去年まではMt.FUJI STAGEに出演していたので、てっきりバンドサイドがそっちのステージへの出演を希望しているのかと思っていたが、今年は久しぶりにLAKESIDE STAGEへの出演となった、クリープハイプ。尾崎世界観はもはやスペシャのレギュラーどころか地上波にも出演するようになってきている。
小雨が降る中でいつものようにSEもなくメンバーが登場すると、
「生憎の天気ですが、濡れてる方が都合がいいでしょう」
とこのフェスではよく1曲目にやっている気がする「HE IS MINE」でスタートすると、のっけから
「セックスしよう!」
の大合唱。尾崎はいきなりギターを高く掲げて目を剥くような顔をしたりと、気合いが入っていることがよくわかるし、声もよく出ていて、気持ちだけが先行するのではなく、精神と肉体がいいバランスでライブに臨めていることがわかる。
歌詞を「山中湖の6畳間」とかなり強引に変えて歌った「鬼」から、
「こういう寒い日くらいはみんなで炎上してみませんか?」
と長谷川カオナシが観客に問いかけ、自身のボーカル曲である「火まつり」へ。カオナシの口ぶりからすると、雨が降っていて寒いがゆえにこの曲に変えた、という感じもしたが、だとしたらもともと予定していた曲は「かえるの唄」あたりなのだろうか。
「夏の曲をやります」
と言っての「ラブホテル」では最後のサビ前に尾崎がいったんブレイクを入れると、カオナシに対して
「さっき、こういう日くらいは炎上しましょう、って言ってたけどなぁ、こっちはしょっちゅう炎上してるんだよ!地上波に出れば「テレビ用にキャラを合わせにいった」って言われるし!(笑)」
と炎上という言葉にかなりナーバスになっている尾崎。さらに、
「3年前にこのステージに出た時、前の方にいたおっさん(おそらくPerfume待ちをしていた人だと思われる)がMC中にヤジ飛ばしてきてケンカになったんですけど、今思うとあれは完全に、僕のせいです(笑)」
とかつての自らの短気さを詫びながら、「夏のせい」という歌詞に合わせて話を締めて最後のサビに突入するというあたりは実に見事だし、その時にもライブを見ていた身としては「あー、そんなこともあったけど、本人も覚えてるもんなんだなぁ」とも思う。
いよいよ今月リリースとなったニューアルバムでも核を担う存在の曲だと思われる「イト」から、炎天下の夏というよりも、こうした過ぎていく夏を実感させるような日がよく似合う「憂、燦々」から、ラストはラジオ局FM802とのコラボによって生まれ、あいみょん、GEN(04 Limited Sazabys)、片岡健太(sumika)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、スガシカオという錚々たるメンバーとともに尾崎が歌っていた「栞」のクリープハイプバージョン。802バージョンよりもさらにソリッドなギターロックになっているイメージが強いが、今世に出ている曲を聴く限り、アルバムはかなり期待していい内容になるんじゃないだろうか。
「世界観」もいいアルバムだったが、あれとはまた違う、クリープハイプの正攻法としての名盤が生まれそうな予感がしている。
1.HE IS MINE
2.鬼
3.火まつり
4.ラブホテル
5.イト
6.憂、燦々
7.栞
栞
https://youtu.be/j4XsCJHfplg
14:50〜 GRAPEVINE [FOREST STAGE]
かつてはLAKESIDE STAGEに出演したこともある、GRAPEVINE。3年前に出演した時と同様にFOREST STAGEに出演。
いつもとなんら変わることのない出で立ちでメンバーが登場すると、
「良い天気ですね」
と、小雨が降る中で田中が天邪鬼に言い、バンドを代表する名曲「スロウ」でスタートし、
「こんな天気に似合う曲を!」
とまたしても小雨の中で言い、かつて2011年にはLAKESIDE STAGEで演奏したこともある大名曲「風待ち」を演奏。他のステージに出演している若手バンドと比べると、やはりBPMはものすごく遅いが、田中のボーカルもバンドの演奏も安定感に満ち溢れている。派手さはないが、出れば確実に仕事をこなしてくれる職人タイプの選手のよう。
すると「CORE」ではそれまでの美しいメロディを聴かせる流れから一転してバンドの最も濃い部分を重厚な演奏で見せつけていき、さらには「エレウテリア」(2007年のシングル「超える」のカップリング曲)というとんでもないレア曲をここで演奏。タイプ的には「CORE」の系列に入るような、バンドの演奏力と複雑な展開を見せつけるような曲だが、30分という非常に短い持ち時間の中でこの曲を入れてきた意図はなんなんだろうか?ファンとしては実に嬉しいサプライズであるが。
そうして意外な曲(そもそもかつてのバンドのフェスでの戦い方を考えると「風待ち」も非常に意外な選曲である)を演奏していくとあっという間のラストは「Arma」で、結果的には「かつてのヒットシングル」「バンドの濃い部分」「今のバンドのモード」という三大要素を短い時間の中に全て入れてくるという内容になった。
かつて常連だったROCK IN JAPAN FES.においてのNICO Touches the Wallsの光村との対談において田中は
「フェスは自分たちの1番濃い部分を見せるべき」
と語っていた。(その精神は見事にNICOに受け継がれている)
その頃から考えると、そうした思考も変わってきていることがわかるし、ベテランという立場にいることを感じさせてくれるが、そうして様々な曲を聴けるようになったのは嬉しい。昔は最新アルバムからくらいしかフェスでは演奏していなかったから。
1.スロウ
2.風待ち
3.CORE
4.エレウテリア
5.Arma
Arma
https://youtu.be/flTbXMmQ3ZY
15:50〜 ONE OK ROCK [LAKESIDE STAGE]
この夏、ONE OK ROCKはロックシーンの歴史を大きく動かした。言うまでもなくそれは先月のELLEGARDENの10年ぶりの活動再開を後押ししたからである。そんなONE OK ROCKの2018年の夏の最後のライブ。
緑色のTシャツを着たTakaを筆頭に、1曲目から完全に戦闘態勢で「Taking off」。もうLAKESIDE STAGEですら収まっていないくらいに人が詰め掛けているし、楽曲のスケールとメンバーの演奏のスケール、そして何よりもTakaの歌唱力のスケールがこの規模を遥かに凌駕している。それが1曲聴いただけでわかる。とんでもないバンドである。
「The Beginning」でリズム隊のサウンドが一気に重く、ラウドミュージックというシーンで戦って勝ってきたバンドの力をまざまざと見せつけると、海外照準に振り切った「Ambitions」とはまた違った方向へ進化したことを示してファンを驚かせた最新曲「Change」で新曲とは思えない合唱を巻き起こす。ある意味では「Ambitions」以前と以降のハイブリッドとも言えるが、それだけではない新たな要素を感じさせる。その全貌が見えるのはこれからなのだろうけれど。
Takaのボーカルの力で全てを持っていくのが「Take What You Want」であり、そのボーカルを聴いていると、スタジアムやドームクラスを掌握する規模になると、ただ単に曲が良い、というだけではダメで、やはりステージに立つ人間のフィジカルな力が飛び抜けていないとそこまではいけないんだな、というのが実によくわかる。
そして「Mighty Long Fall」で世界で戦うバンドとしての強さを見せるかのようにゴリッゴリのサウンドに転化し、ToruもRyotaもステージ最前まで出てきて体を目一杯に使って音を鳴らすと、ラストの「完全感覚Dreamer」では明らかにTakaのものではない叫び声が何回も聞こえてくる。最初は誰の声だろう?と思っていたのだが、その声の主はTomoyaで、ドラムを思いっきりぶっ叩きながら、この夏の全てをこのステージに置いてくるかのように叫びまくっている。
そして気がつけば、直前まで小雨が降っていた空が晴れ、太陽が顔を覗かせるという奇跡のような景色が。Takaは晴れ男としても有名らしいのだが、同じようにこのフェスに何度も太陽を連れてきた男といえばDragon Ashのkjである。2人の共通点というと親が有名人であるというのが思い浮かぶが、本質はそこではない。むしろそうした色眼鏡で見られてもおかしくない自らの境遇をひっくり返すような努力を重ねてきて、何を言われても揺らぐことのない強い男になった、というところである。それをこの会場に棲む音楽の神はしっかり見ているから、こうして目に見える形で応えてくれるのだ。
しかし、この日ほぼMCがなかった中でTakaが放った言葉は、
「フェスなんだから、いろんなアーティストのライブ見て帰れよ!」
というものだった。
きっと、Takaは自分たちのファンがフェスに来ても自分たちのライブだけを見て帰ってしまうことに苦言を呈されていることを知っていてそういうことを言っている。他にそんなことを口にするアーティストはいないからだ。
自分たちがそうやってフェスでいろんなアーティストのライブを見て音楽を好きになってきたからこそ(サマソニに出た時にTakaは「少女時代が見たい」と言っていた)、自分たちのファンにももっと音楽を好きになって欲しいし、他のアーティストのファンに悪く言われるような存在にならないで欲しいと思っているんじゃないだろうか。
そうしたTakaの考えが100%全ての人に伝わるのは無理だろう。しかし、今年の8月15日に自分を含めたELLEGARDENをずっと待っていたファンがまたライブを見ることができたのは、間違いなくTakaの、ONE OK ROCKのおかげだ。今年の夏、最も感謝しているバンドなだけに、そんなバンド自身が悪く言われたりすることがないように、と心から思う。
1.Taking off
2.The Beginning
3.Change
4.Take What You Want
5.Mighty Long Fall
6.完全感覚Dreamer
Change
https://youtu.be/z2ed0Tazw0E
16:40〜 あいみょん [FOREST STAGE]
実はあいみょんは初出演ではなく、去年もこのフェスに出演している。それはタイムテーブルにちゃんと載っているステージではなく、トークショーが行われている、SPACE SHOWER STUDIOでの短い弾き語りという位置での出演であり、人もほとんどいなかった。
それが1年後、始まる前からFOREST STAGEは完全にキャパオーバーというくらいにはるか後方まで人で埋め尽くされている状況になるなんて誰が予想しただろうか。
フリッパーズ・ギター(小沢健二とコーネリアスこと小山田圭吾がやっていたユニット)の「Sending to your Heart 恋してるとか好きだとか」のSEでサポートメンバーたちとともにステージに登場すると、あいみょんがアコギを弾きながら、自らを音楽という道に誘った先人たちへの憧憬を歌にした「憧れてきたんだ」でスタート。去年はわからなかったが、あいみょんの歌声はこの規模をしっかり捉えられるくらいによく伸びている。
呟くような歌唱で自殺した少女のことを歌う「生きてきたんだよな」でフェスでの祝祭空間に似つかわしくないようなセンセーショナルな歌詞を響かせると、
「夏の曲」
と紹介された名曲「君はロックを聴かない」へ。
あいみょんは女性であるが、この曲の1人称は「僕」である。だからこそ我々男性は学生時代の時にこの曲を聴きたかった、と思えるし、女性であるあいみょんが
「あんな歌や こんな歌で 恋を乗り越えてきたんだ」
と歌うことで、ロック好きな少女の気持ちを代弁しているようにも感じられる。改めてとんでもないことをいともさらっとやっているように見せるセンスに感嘆してしまう。
タイトル通りに蒸し暑い夏の夜に聴きたくなる、官能的な歌詞の「満月の夜なら」、リリースされたばかりの、今年の夏を彩る新たな名曲「マリーゴールド」、関ジャムでも大絶賛された、現行のUSの最先端であるR&Bの要素を取り入れた「愛を伝えたいだとか」と、もうやる曲やる曲、出す曲出す曲の百発百中っぷり。そしてそうした振れ幅の曲を作れて歌いこなせるあいみょんの基礎体力の高さはライブで見ると本当に凄いと思わざるを得ない。
そしてラストはバンドメンバーの奏でるストレートなバンドサウンドに
「死ね。 私を好きじゃないのならば」
を始め、過激極まりない歌詞があくまで爽やかなサウンドに乗ることでポップになるということを証明した「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」で締め。その姿からは、時代を捉えている人(バンドではなくてあくまで個人)だからこそが持つオーラを発していた。この1年での凄まじい飛び級っぷりを見ていると、来年はどこまで行っているのか予想もつかない。
1.憧れてきたんだ
2.生きていたんだよな
3.君はロックを聴かない
4.満月の夜なら
5.マリーゴールド
6.愛を伝えたいだとか
7.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
マリーゴールド
https://youtu.be/0xSiBpUdW4E
あいみょんに集まったたくさんの人を掻き分けてMt.FUJI STAGEに移動すると、フジファブリックとハナレグミによるハナレフジのライブ中。ハナレグミが入ったことによって、SUPER BUTTER DOGの「FUNKY烏龍茶」などのファンキーな曲も演奏され、最後にはハナレグミと山内総一郎によるツインボーカルでの「若者のすべて」。これまでにも、志村正彦の故郷のすぐ近くであるこの会場で何度となく聴いてきた曲であるが、この時期にこうして聴くと、「真夏のピークが去った」ことを実感する。
18:45〜 KICK THE CAN CREW [Mt.FUJI STAGE]
再集結後は毎年のようにこのフェスに出演している、KICK THE CAN CREW。今年は前日に日本武道館ワンマンを終えたばかりでMt.FUJI STAGEのトリを担う。
DJ熊井吾郎が先にステージに現れると、再集結後に最初に発表された「千%」のトラックが流れてMC3人衆が登場。見事なマイクリレーを展開すると、MCUの
「来年で30です」
が
「来年で46」
というフレーズに変化しているのがこのグループの長い歴史とともに自分も年齢を重ねたことを感じさせる「地球ブルース 〜337〜」、さらには3人バージョンにアレンジされてフレーズも変わった「TRIIIIIICO!」での高速マイクリレーは実に見事である。
さらに「マルシェ」で
「上がってる!!!」
の大合唱を巻き起こし、KREVAが最前で見ていた、前日の武道館ワンマンのグッズを持ってこのライブにも駆けつけてくれた自分たちのファンへ感謝を表明。続くMCUのMCは完全にKREVAの筋書き通りのものだっただけに、ほとんどKREVAが持っていったような形に。
リリースされたばかりの岡村靖幸とのコラボ曲「住所」では岡村靖幸のパートこそ打ち込みだったものの、コーラス部分では男女に分けて練習させ、本番では新曲とは思えないくらいの大合唱になるくらいにこの曲のコーラスパートはわかりやすいし歌いやすい。女性ファンが多いKICKだからこそできることでもあるが。
そして夏がまだ終わってないことを告げる「イツナロウバ」から「sayonara sayonara」とKICKと言えば、な代表曲を続け、ラストはやはり「アンバランス」の切ないサウンドと、リリース当時のメンバーの年齢を超えた今だからこそより染みる歌詞があいまって、今年のこのフェスが終わっていくのを感じていた。
高校生の時、みんなKICK THE CAN CREWとRIP SLYMEを聴いていたし、カラオケに行けば歌っていた。だからヒップホップという歌詞の情報量が多い音楽であっても、当時の曲は今聴いても全て歌詞がちゃんと出てくる。っていうことはこのグループの音楽は死ぬまでそういう付き合い方をしていくんだろうな〜と思う。
1.千%
2.地球ブルース 〜337〜
3.TORIIIIIICO!
4.マルシェ
5.住所
6.イツナロウバ
7.sayonara sayonara
8.アンバランス
住所
https://youtu.be/eCfRRm-yyMY
19:35〜 エレファントカシマシ [LAKESIDE STAGE]
2年連続でこのステージのトリにして、2015年以来のこのフェスの大トリとなる、エレファントカシマシ。結成30年を超えたバンドがこの大きなフェスの大トリというのも実にすごいことである。
おなじみのサポートであるヒラマミキオ(ギター)、村山☆潤(キーボード)を含めたメンバーが登場すると、凄まじい違和感に見舞われる。エレカシは基本的に宮本、高緑、富永の3人は見た目が変わらない(宮本が髪を短く切ったりとかはあったが)のだが、これまで髪型がドラスティックに変貌してきた石森が、髪型はモヒカン(後ろまで長いタイプのモヒカン)、日焼けした肌にサングラス、タンクトップ気味のTシャツにホットパンツという、日焼けサロンにいるおっさんみたいな風貌に大変化を遂げているのである。思わず「石森は休養かなんかしてて違う人がサポートやってるんだっけ?」と自問自答してしまうくらいの衝撃の変化である。
そうして登場の段階で強いインパクトを与えたのもつかの間、いきなりバンド最速レベルのBPMのパンクナンバー「Easy Go」でスタートするという、50代に突入しているバンドとは思えない脅威の攻めっぷりかつトップギアっぷり。宮本は早くも石森のモヒカンを掴んでステージ前まで引っ張り、「奴隷天国」で目をひん剥いて
「おめえだよ おめえだよ」
と歌うと、石森にいきなり
「動きが固いよ!」
とダメ出し。
ある意味ではバンドというか宮本の調子を図る一種のバロメーター的な曲である「RAINBOW」もしっかりと歌い切り(何度聴いてもこれをちゃんと歌えるのがすごい)、絶好調っぷりをアピールすると、宮本がギターを持って「悲しみの果て」を演奏しようとするのだが、ギターの音が出ないというハプニングが発生し、すぐさまギターを置いて(最初は石森のギターを使おうとしていて、石森に「お前もすぐ渡そうとするんじゃないよ」と漫才をしているかのようなツッコミを入れていた)、石森もヒラマミキオにギターを任せて歌唱に専念。こうした予期せぬハプニングにすぐに対応できるのも今のエレカシの編成による強みである。
「風に吹かれて」「俺たちの明日」とエレカシの名曲製造機っぷりを実感させてくれる曲で観客に力を与えてくれると、ど迫力サウンドの「ガストロンジャー」では宮本と石森が並んでガニ股でギターを弾くというビジュアル的にもど迫力のパフォーマンスを見せてくれる。
そしてラストは宮本がアコギを爪引きながら歌う「今宵の月のように」で終了するのだが、宮本はこの曲をやる前から
「どうせアンコールやるんで最後の曲じゃないですから」
的な空気を出していたのだが、持ち時間もあまりなかったためか、メンバーが捌けることなくそのままアンコールに突入。
アンコールでは1stアルバムの1曲目に収録されていた「ファイティングマン」を演奏し、ステージからは銀テープが発射されたが、ステージに向かって風が吹いていたため、ほとんどのテープがステージに落ちるという、ラブシャおなじみの展開となった。
社会人はそもそも翌日の月曜日から普通に仕事だし、学生も翌日から夏休みが終わって学校が始まる。それはとても憂鬱な気分になるものであるが、結成30年、年齢も50歳を超えたエレカシの生命力に溢れたパフォーマンスはそうした憂鬱な翌日を控えた全ての人に何よりも強い力を与えてくれた。ただの「頑張ろうぜ」じゃなくて、長い歴史の中で何度も浮き沈みを経験してきた上で今最大の絶頂期を迎えているバンドの「頑張ろうぜ」が胸に響かないわけがない。
これまでもこのフェスのクライマックスを描いてきたバンドが、過去の自分たちをはるかに更新するようなライブを見せてくれた。それは年齢を重ねることは決して衰えていくこととイコールではないということだ。
1.Easy Go
2.奴隷天国
3.RAINBOW
4.悲しみの果て
5.風に吹かれて
6.俺たちの明日
7.ガストロンジャー
8.今宵の月のように
encore
9.ファイティングマン
今宵の月のように
https://youtu.be/0melyLHqP-s
20:25〜 DJやついいちろう [SPACE SHOWER STUDIO]
この日のクロージングDJにして、今年のこのフェスの最後のアクトとなるのは、おなじみのやついいちろう。誰もが知るようなネタ的な曲から、毎年恒例の自身のオリジナル曲「トロピカル源氏」(レキシとのコラボ曲)が1番盛り上がらないことに不満をあらわにするというおなじみの展開もありつつ、最後はELLEGARDENの「Red Hot」で2018年の夏を締めたのだった。
このフェスに参加して10回目。2008年と2009年以外は全て参加しており、今年で9年連続。それだけ通っていると、やはりこの土地やそこに住む人たちにも愛着が生まれてくる。
自分が毎年泊まっている民宿には幼稚園児くらいの女の子が生まれていて、帰る時に「来年もよろしくお願いします」と言ったら、その子が「またね」って言ってくれた。またここに来続ける理由が増えていく。そうしてより一層このフェスのことが好きになっていく。あの子が自分のことをこの時期に毎年来る人だ、って覚えてくれるようになるくらいまで来続けたい。
今でこそ9月にもたくさんフェスはあるが、このフェスが始まった時はほとんどの出演者が「今日が夏フェスの締め」と口にし、夏の集大成的なライブを見せてくれた。だから記憶に残っているライブがたくさんあるし、それはこの場所だからこそ。今年も本当にありがとう山中湖。また来年!
Next→ 9/8 サンボマスター × My Hair is Bad @新木場STUDIO COAST
10:25〜 yonige [Mt.FUJI STAGE]
去年はFOREST STAGEに出演していた、yonige。今年はここまでにも全国の様々なフェスに出演している。
サポートのホリエを加えた3人で登場すると、今年の夏フェスの会場でCDが販売されている新曲「リボルバー」からスタート。淡々とした日常を牛丸ありさの独自の視点で描いていくこの曲は個人的な2018年の夏のベストトラック。
「our time city」からはごっきんが大きく体を揺らしながらベースを弾き、何よりも朝10時台とは思えないくらいに牛丸のボーカルがよく伸びていて、このスケールに見合うような歌唱力を手にしている。思えば、去年FOREST STAGEに出た時も牛丸の歌唱力の向上を感じていた。このフェスはもしかしたら牛丸が最も伸び伸びと歌える場所なのかもしれない。
しかしMCではごっきんがこのMt.FUJI STAGEを「Mr.FUJI STAGE」と言い間違えるという天然っぷりを発揮。ロッキンの時は逆に牛丸が去年出たステージの名前を間違えてごっきんが訂正していたが、もしかしたら2人とも天然なんだろうか。
原曲よりもはるかにテンポが上がった「アボカド」の後は曇天の山中湖の自然の中で聴くのが実に心地いい「沙希」で緩急をつけると、牛丸が観客を盛り上げようとするもあまりの下手さにごっきんに変わり、見事に観客を盛り上げて見せたごっきんは
「ちょろいな〜」
と一言。
そして「さよならプリズナー」で時間的にも終わりかな?と思いきや、最後に演奏されたのはauのCMで流れまくっていた「笑おう」。
「一緒に笑おう」
というフレーズを伸びやかに歌う牛丸のボーカルは、この日1日の最高の出だしとなった。
今でこそこうしてフェスの大きなステージに立つようになったし、ホールでワンマンもできるようになっているyonigeだが、ライブの最後には必ず牛丸が
「またライブハウスで会いましょう」
と言う。見た目からはあまりそういう風には見えないが、これまでのライブハウスでの打ち上げでの数々の強烈なエピソードも含め、この2人はずっとライブハウスで生きてきた人間だし、それはこれからも変わらないのだろう。そういう意味でも実に真っ当なロックバンドだと言える。
リハ.さよならバイバイ
リハ.さよならアイデンティティー
1.リボルバー
2.our time city
3.ワンルーム
4.アボカド
5.沙希
6.さよならプリズナー
7.笑おう
リボルバー
https://youtu.be/w_3atGoniPM
11:05〜 My Hair is Bad [LAKESIDE STAGE]
2年前の初出演がFOREST STAGE、去年はMt.FUJI STAGE、そして3年目の今年についにLAKESIDE STAGEに進出した、My Hair is Bad。
サウンドチェックから3人がステージで曲を演奏すると、捌けることなくそのまま本番に突入するという持ち時間を最大限に使うスタイルで
「ドキドキしようぜ!」
と椎木が叫んで「アフターアワー」からスタート。曲終わりには
「絶対晴れさせてやる!」
と曇天の雲に向かって宣言し、「告白」でさらにそのドキドキを加速させていく。
「このSWEET LOVE SHOWERで最も短いラブソング」こと「クリサンセマム」から
「ラブシャの1番デカいステージに立っちゃってるっていう感じどう?」
と元彼女に問いかける「元彼氏として」で踊らせると、この日は2年前を彷彿とさせるくらいに声が枯れ気味だった椎木が、
「さっき、絶対晴れさせてやる!って言ったけど、日比谷野音も大阪城野音も雨、スピッツのイベントも雨で中止。でも俺たちはあんたらの心を晴らしに来たんだ!」
と雨バンドであることを認めながらも力強く宣言して言葉をマシンガンのように乱射しまくった「フロムナウオン」から、
「最後は幸せな歌を」
と言って「いつか結婚しても」。
夏の匂いはしなかったけれど、ギリギリ雨が降らないこの日の天気からは、確かに夏が過ぎてくのを感じた。
リハ.優しさの行方
リハ.復讐
1.アフターアワー
2.告白
3.ドラマみたいだ
4.クリサンセマム
5.元彼氏として
6.フロムナウオン
7.いつか結婚しても
いつか結婚しても
https://youtu.be/xXAJy4OtcZo
11:40〜 石毛輝 with CHAI [INTERNATIONAL FLASH Talk Show]
前日にはクロージングDJを行なった、the telephones、Yap!!!などで活動している石毛輝はスペシャの洋楽情報番組「INTERNATIONAL FLASH」で司会を務めており、過去にはFOO FIGHTERSのデイヴ・グロールにもインタビューをしているのだが、その石毛輝の司会による出演者インタビュー。
この時間はこの日FOREST STAGEのオープニングアクトを務めた、CHAIとのインタビュー。
ステージ衣装ではないCHAIの4人の姿は新鮮ではあるが、「ステージを降りると誰だかわからない」ということはなく、「CHAIだ」って一目でわかるような、独特のNEOカワイイオーラを持っている。
しかし一度石毛が話を振ると、4人全員が同時にしゃべり始めて何を言ってるのか全くわからないというCHAIらしさをフルに発揮し、石毛も最初はかなり困惑していたが、「ちゃんと答える人を指名して話を振る」という方向にシフトしてからはしっかりとインタビューとして成立し始める。
ちなみにCHAIがこの日見たいアーティストは、ONE OK ROCK、cero、きゃりーぱみゅぱみゅ、Yogee New Wavesというあたりだそうだが、Yogeeはこの時間に絶賛ライブ中であり、当然見ることはできず。
観覧者からも質問を募集していたのだが、
「双子のマナとカナはケンカをするのか?」
という問いに対し、一方がハサミを持ち出すくらいまでガチでケンカすることがあるということ。ちなみにメンバーで唯一兄弟がいないドラムのユナは
「兄弟がいないから、自分自身とよく戦っている」
という哲学的な回答で爆笑を巻き起こす。
今年の夏はフェス三昧で、焼肉に行ったくらいしかプライベートで夏を満喫していないというCHAIと、実は先日CHAIと一緒に焼肉を食べに行ったという石毛の5人で、最後に観客をバックに記念撮影。石毛は独特の音作りをしているCHAIの機材にもかなり興味を示していたが、流れがマニアック過ぎるので今回は深掘りはせず。
13:30〜 スガシカオ [Mt.FUJI STAGE]
このフェス初出演となる、スガシカオ。初出演アーティストは基本的にみんなFOREST STAGE(吉井和哉ですらもFORESTだった)に出演することになりがちだが、やはりというかなんというか、スガシカオクラスのベテランとなるとMt.FUJI STAGEである。
ドラム・SATOKO(FUZZY CONTROL)、ベース・坂本竜太(水樹奈々など)、コーラス・mayahatch、ギター・Duran(ex.a flood of circle)というバンドメンバーが先に登場して演奏を開始すると、最後にスガシカオが登場して「赤い実」からスタート。続く「Party People」も含め、実にファンク色が強いサウンドは、「夜空ノムコウ」を作ったというポップアーティストとしてのパブリックイメージを持ったままだとビックリするだろう。
「今日は涼しいけど、みんな今年の夏はめちゃくちゃ暑かったよね?夏が大好きな俺でも生きていけるかどうかギリギリのところだったよ!そんなギリギリで生きてきた平成最後の夏に、俺が作ったギリギリで生きていたい曲を送るぜ!」
と夏男のスガシカオが言って演奏されたのは、自身が提供したKAT-TUN「Real Face」のセルフカバー。原曲を知らないままで聴いたらジャニーズの曲とは思えないくらいにハードロック・ファンク色が強いスガシカオのものに生まれ変わっているが、その核を担うのは続く「19才」でスガシカオに
「こいつの山中湖の自然に似つかわしくない不埒なギターを聴いてくれ〜!」
と言わしめたDuranのギター。a flood of circleに正式加入したと思ったらあっという間に脱退しただけに、今でも複雑な感情を抱いているフラッドのファンもたくさんいるが、そうした出来事の全てが今の青木テツを含めた最強フラッドに至るまでの過程であったことを考えると、全てが悪いことではなかったとも思う。それは今だからこそそう思えることでもあるけれど。
元はkokuaというプロジェクトの曲であったが、非常に強いタイアップ効果もあって今ではスガシカオの代表曲と言える「Progress」からはしっかりみんなの望む名曲を連発するモードに転じて、夏の野外に聴くのがそれまでの濃厚なファンクとのコントラストで非常に爽やかに聞こえる「奇跡」、そしてラストは「コノユビトマレ」というライブ鉄板曲を並べ、わずか35分という短い時間の中で自らのルーツであるファンクな面と、多数のヒット曲を世に放ってきたポップアーティストの面をしっかり両立してくるのはさすがである。
1.赤い実
2.Party People
3.Real Face
4.19才
5.Progress
6.奇跡
7.コノユビトマレ
コノユビトマレ
https://youtu.be/RWI0Pg8SWnI
14:15〜 クリープハイプ [LAKESIDE STAGE]
去年まではMt.FUJI STAGEに出演していたので、てっきりバンドサイドがそっちのステージへの出演を希望しているのかと思っていたが、今年は久しぶりにLAKESIDE STAGEへの出演となった、クリープハイプ。尾崎世界観はもはやスペシャのレギュラーどころか地上波にも出演するようになってきている。
小雨が降る中でいつものようにSEもなくメンバーが登場すると、
「生憎の天気ですが、濡れてる方が都合がいいでしょう」
とこのフェスではよく1曲目にやっている気がする「HE IS MINE」でスタートすると、のっけから
「セックスしよう!」
の大合唱。尾崎はいきなりギターを高く掲げて目を剥くような顔をしたりと、気合いが入っていることがよくわかるし、声もよく出ていて、気持ちだけが先行するのではなく、精神と肉体がいいバランスでライブに臨めていることがわかる。
歌詞を「山中湖の6畳間」とかなり強引に変えて歌った「鬼」から、
「こういう寒い日くらいはみんなで炎上してみませんか?」
と長谷川カオナシが観客に問いかけ、自身のボーカル曲である「火まつり」へ。カオナシの口ぶりからすると、雨が降っていて寒いがゆえにこの曲に変えた、という感じもしたが、だとしたらもともと予定していた曲は「かえるの唄」あたりなのだろうか。
「夏の曲をやります」
と言っての「ラブホテル」では最後のサビ前に尾崎がいったんブレイクを入れると、カオナシに対して
「さっき、こういう日くらいは炎上しましょう、って言ってたけどなぁ、こっちはしょっちゅう炎上してるんだよ!地上波に出れば「テレビ用にキャラを合わせにいった」って言われるし!(笑)」
と炎上という言葉にかなりナーバスになっている尾崎。さらに、
「3年前にこのステージに出た時、前の方にいたおっさん(おそらくPerfume待ちをしていた人だと思われる)がMC中にヤジ飛ばしてきてケンカになったんですけど、今思うとあれは完全に、僕のせいです(笑)」
とかつての自らの短気さを詫びながら、「夏のせい」という歌詞に合わせて話を締めて最後のサビに突入するというあたりは実に見事だし、その時にもライブを見ていた身としては「あー、そんなこともあったけど、本人も覚えてるもんなんだなぁ」とも思う。
いよいよ今月リリースとなったニューアルバムでも核を担う存在の曲だと思われる「イト」から、炎天下の夏というよりも、こうした過ぎていく夏を実感させるような日がよく似合う「憂、燦々」から、ラストはラジオ局FM802とのコラボによって生まれ、あいみょん、GEN(04 Limited Sazabys)、片岡健太(sumika)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、スガシカオという錚々たるメンバーとともに尾崎が歌っていた「栞」のクリープハイプバージョン。802バージョンよりもさらにソリッドなギターロックになっているイメージが強いが、今世に出ている曲を聴く限り、アルバムはかなり期待していい内容になるんじゃないだろうか。
「世界観」もいいアルバムだったが、あれとはまた違う、クリープハイプの正攻法としての名盤が生まれそうな予感がしている。
1.HE IS MINE
2.鬼
3.火まつり
4.ラブホテル
5.イト
6.憂、燦々
7.栞
栞
https://youtu.be/j4XsCJHfplg
14:50〜 GRAPEVINE [FOREST STAGE]
かつてはLAKESIDE STAGEに出演したこともある、GRAPEVINE。3年前に出演した時と同様にFOREST STAGEに出演。
いつもとなんら変わることのない出で立ちでメンバーが登場すると、
「良い天気ですね」
と、小雨が降る中で田中が天邪鬼に言い、バンドを代表する名曲「スロウ」でスタートし、
「こんな天気に似合う曲を!」
とまたしても小雨の中で言い、かつて2011年にはLAKESIDE STAGEで演奏したこともある大名曲「風待ち」を演奏。他のステージに出演している若手バンドと比べると、やはりBPMはものすごく遅いが、田中のボーカルもバンドの演奏も安定感に満ち溢れている。派手さはないが、出れば確実に仕事をこなしてくれる職人タイプの選手のよう。
すると「CORE」ではそれまでの美しいメロディを聴かせる流れから一転してバンドの最も濃い部分を重厚な演奏で見せつけていき、さらには「エレウテリア」(2007年のシングル「超える」のカップリング曲)というとんでもないレア曲をここで演奏。タイプ的には「CORE」の系列に入るような、バンドの演奏力と複雑な展開を見せつけるような曲だが、30分という非常に短い持ち時間の中でこの曲を入れてきた意図はなんなんだろうか?ファンとしては実に嬉しいサプライズであるが。
そうして意外な曲(そもそもかつてのバンドのフェスでの戦い方を考えると「風待ち」も非常に意外な選曲である)を演奏していくとあっという間のラストは「Arma」で、結果的には「かつてのヒットシングル」「バンドの濃い部分」「今のバンドのモード」という三大要素を短い時間の中に全て入れてくるという内容になった。
かつて常連だったROCK IN JAPAN FES.においてのNICO Touches the Wallsの光村との対談において田中は
「フェスは自分たちの1番濃い部分を見せるべき」
と語っていた。(その精神は見事にNICOに受け継がれている)
その頃から考えると、そうした思考も変わってきていることがわかるし、ベテランという立場にいることを感じさせてくれるが、そうして様々な曲を聴けるようになったのは嬉しい。昔は最新アルバムからくらいしかフェスでは演奏していなかったから。
1.スロウ
2.風待ち
3.CORE
4.エレウテリア
5.Arma
Arma
https://youtu.be/flTbXMmQ3ZY
15:50〜 ONE OK ROCK [LAKESIDE STAGE]
この夏、ONE OK ROCKはロックシーンの歴史を大きく動かした。言うまでもなくそれは先月のELLEGARDENの10年ぶりの活動再開を後押ししたからである。そんなONE OK ROCKの2018年の夏の最後のライブ。
緑色のTシャツを着たTakaを筆頭に、1曲目から完全に戦闘態勢で「Taking off」。もうLAKESIDE STAGEですら収まっていないくらいに人が詰め掛けているし、楽曲のスケールとメンバーの演奏のスケール、そして何よりもTakaの歌唱力のスケールがこの規模を遥かに凌駕している。それが1曲聴いただけでわかる。とんでもないバンドである。
「The Beginning」でリズム隊のサウンドが一気に重く、ラウドミュージックというシーンで戦って勝ってきたバンドの力をまざまざと見せつけると、海外照準に振り切った「Ambitions」とはまた違った方向へ進化したことを示してファンを驚かせた最新曲「Change」で新曲とは思えない合唱を巻き起こす。ある意味では「Ambitions」以前と以降のハイブリッドとも言えるが、それだけではない新たな要素を感じさせる。その全貌が見えるのはこれからなのだろうけれど。
Takaのボーカルの力で全てを持っていくのが「Take What You Want」であり、そのボーカルを聴いていると、スタジアムやドームクラスを掌握する規模になると、ただ単に曲が良い、というだけではダメで、やはりステージに立つ人間のフィジカルな力が飛び抜けていないとそこまではいけないんだな、というのが実によくわかる。
そして「Mighty Long Fall」で世界で戦うバンドとしての強さを見せるかのようにゴリッゴリのサウンドに転化し、ToruもRyotaもステージ最前まで出てきて体を目一杯に使って音を鳴らすと、ラストの「完全感覚Dreamer」では明らかにTakaのものではない叫び声が何回も聞こえてくる。最初は誰の声だろう?と思っていたのだが、その声の主はTomoyaで、ドラムを思いっきりぶっ叩きながら、この夏の全てをこのステージに置いてくるかのように叫びまくっている。
そして気がつけば、直前まで小雨が降っていた空が晴れ、太陽が顔を覗かせるという奇跡のような景色が。Takaは晴れ男としても有名らしいのだが、同じようにこのフェスに何度も太陽を連れてきた男といえばDragon Ashのkjである。2人の共通点というと親が有名人であるというのが思い浮かぶが、本質はそこではない。むしろそうした色眼鏡で見られてもおかしくない自らの境遇をひっくり返すような努力を重ねてきて、何を言われても揺らぐことのない強い男になった、というところである。それをこの会場に棲む音楽の神はしっかり見ているから、こうして目に見える形で応えてくれるのだ。
しかし、この日ほぼMCがなかった中でTakaが放った言葉は、
「フェスなんだから、いろんなアーティストのライブ見て帰れよ!」
というものだった。
きっと、Takaは自分たちのファンがフェスに来ても自分たちのライブだけを見て帰ってしまうことに苦言を呈されていることを知っていてそういうことを言っている。他にそんなことを口にするアーティストはいないからだ。
自分たちがそうやってフェスでいろんなアーティストのライブを見て音楽を好きになってきたからこそ(サマソニに出た時にTakaは「少女時代が見たい」と言っていた)、自分たちのファンにももっと音楽を好きになって欲しいし、他のアーティストのファンに悪く言われるような存在にならないで欲しいと思っているんじゃないだろうか。
そうしたTakaの考えが100%全ての人に伝わるのは無理だろう。しかし、今年の8月15日に自分を含めたELLEGARDENをずっと待っていたファンがまたライブを見ることができたのは、間違いなくTakaの、ONE OK ROCKのおかげだ。今年の夏、最も感謝しているバンドなだけに、そんなバンド自身が悪く言われたりすることがないように、と心から思う。
1.Taking off
2.The Beginning
3.Change
4.Take What You Want
5.Mighty Long Fall
6.完全感覚Dreamer
Change
https://youtu.be/z2ed0Tazw0E
16:40〜 あいみょん [FOREST STAGE]
実はあいみょんは初出演ではなく、去年もこのフェスに出演している。それはタイムテーブルにちゃんと載っているステージではなく、トークショーが行われている、SPACE SHOWER STUDIOでの短い弾き語りという位置での出演であり、人もほとんどいなかった。
それが1年後、始まる前からFOREST STAGEは完全にキャパオーバーというくらいにはるか後方まで人で埋め尽くされている状況になるなんて誰が予想しただろうか。
フリッパーズ・ギター(小沢健二とコーネリアスこと小山田圭吾がやっていたユニット)の「Sending to your Heart 恋してるとか好きだとか」のSEでサポートメンバーたちとともにステージに登場すると、あいみょんがアコギを弾きながら、自らを音楽という道に誘った先人たちへの憧憬を歌にした「憧れてきたんだ」でスタート。去年はわからなかったが、あいみょんの歌声はこの規模をしっかり捉えられるくらいによく伸びている。
呟くような歌唱で自殺した少女のことを歌う「生きてきたんだよな」でフェスでの祝祭空間に似つかわしくないようなセンセーショナルな歌詞を響かせると、
「夏の曲」
と紹介された名曲「君はロックを聴かない」へ。
あいみょんは女性であるが、この曲の1人称は「僕」である。だからこそ我々男性は学生時代の時にこの曲を聴きたかった、と思えるし、女性であるあいみょんが
「あんな歌や こんな歌で 恋を乗り越えてきたんだ」
と歌うことで、ロック好きな少女の気持ちを代弁しているようにも感じられる。改めてとんでもないことをいともさらっとやっているように見せるセンスに感嘆してしまう。
タイトル通りに蒸し暑い夏の夜に聴きたくなる、官能的な歌詞の「満月の夜なら」、リリースされたばかりの、今年の夏を彩る新たな名曲「マリーゴールド」、関ジャムでも大絶賛された、現行のUSの最先端であるR&Bの要素を取り入れた「愛を伝えたいだとか」と、もうやる曲やる曲、出す曲出す曲の百発百中っぷり。そしてそうした振れ幅の曲を作れて歌いこなせるあいみょんの基礎体力の高さはライブで見ると本当に凄いと思わざるを得ない。
そしてラストはバンドメンバーの奏でるストレートなバンドサウンドに
「死ね。 私を好きじゃないのならば」
を始め、過激極まりない歌詞があくまで爽やかなサウンドに乗ることでポップになるということを証明した「貴方解剖純愛歌 〜死ね〜」で締め。その姿からは、時代を捉えている人(バンドではなくてあくまで個人)だからこそが持つオーラを発していた。この1年での凄まじい飛び級っぷりを見ていると、来年はどこまで行っているのか予想もつかない。
1.憧れてきたんだ
2.生きていたんだよな
3.君はロックを聴かない
4.満月の夜なら
5.マリーゴールド
6.愛を伝えたいだとか
7.貴方解剖純愛歌 〜死ね〜
マリーゴールド
https://youtu.be/0xSiBpUdW4E
あいみょんに集まったたくさんの人を掻き分けてMt.FUJI STAGEに移動すると、フジファブリックとハナレグミによるハナレフジのライブ中。ハナレグミが入ったことによって、SUPER BUTTER DOGの「FUNKY烏龍茶」などのファンキーな曲も演奏され、最後にはハナレグミと山内総一郎によるツインボーカルでの「若者のすべて」。これまでにも、志村正彦の故郷のすぐ近くであるこの会場で何度となく聴いてきた曲であるが、この時期にこうして聴くと、「真夏のピークが去った」ことを実感する。
18:45〜 KICK THE CAN CREW [Mt.FUJI STAGE]
再集結後は毎年のようにこのフェスに出演している、KICK THE CAN CREW。今年は前日に日本武道館ワンマンを終えたばかりでMt.FUJI STAGEのトリを担う。
DJ熊井吾郎が先にステージに現れると、再集結後に最初に発表された「千%」のトラックが流れてMC3人衆が登場。見事なマイクリレーを展開すると、MCUの
「来年で30です」
が
「来年で46」
というフレーズに変化しているのがこのグループの長い歴史とともに自分も年齢を重ねたことを感じさせる「地球ブルース 〜337〜」、さらには3人バージョンにアレンジされてフレーズも変わった「TRIIIIIICO!」での高速マイクリレーは実に見事である。
さらに「マルシェ」で
「上がってる!!!」
の大合唱を巻き起こし、KREVAが最前で見ていた、前日の武道館ワンマンのグッズを持ってこのライブにも駆けつけてくれた自分たちのファンへ感謝を表明。続くMCUのMCは完全にKREVAの筋書き通りのものだっただけに、ほとんどKREVAが持っていったような形に。
リリースされたばかりの岡村靖幸とのコラボ曲「住所」では岡村靖幸のパートこそ打ち込みだったものの、コーラス部分では男女に分けて練習させ、本番では新曲とは思えないくらいの大合唱になるくらいにこの曲のコーラスパートはわかりやすいし歌いやすい。女性ファンが多いKICKだからこそできることでもあるが。
そして夏がまだ終わってないことを告げる「イツナロウバ」から「sayonara sayonara」とKICKと言えば、な代表曲を続け、ラストはやはり「アンバランス」の切ないサウンドと、リリース当時のメンバーの年齢を超えた今だからこそより染みる歌詞があいまって、今年のこのフェスが終わっていくのを感じていた。
高校生の時、みんなKICK THE CAN CREWとRIP SLYMEを聴いていたし、カラオケに行けば歌っていた。だからヒップホップという歌詞の情報量が多い音楽であっても、当時の曲は今聴いても全て歌詞がちゃんと出てくる。っていうことはこのグループの音楽は死ぬまでそういう付き合い方をしていくんだろうな〜と思う。
1.千%
2.地球ブルース 〜337〜
3.TORIIIIIICO!
4.マルシェ
5.住所
6.イツナロウバ
7.sayonara sayonara
8.アンバランス
住所
https://youtu.be/eCfRRm-yyMY
19:35〜 エレファントカシマシ [LAKESIDE STAGE]
2年連続でこのステージのトリにして、2015年以来のこのフェスの大トリとなる、エレファントカシマシ。結成30年を超えたバンドがこの大きなフェスの大トリというのも実にすごいことである。
おなじみのサポートであるヒラマミキオ(ギター)、村山☆潤(キーボード)を含めたメンバーが登場すると、凄まじい違和感に見舞われる。エレカシは基本的に宮本、高緑、富永の3人は見た目が変わらない(宮本が髪を短く切ったりとかはあったが)のだが、これまで髪型がドラスティックに変貌してきた石森が、髪型はモヒカン(後ろまで長いタイプのモヒカン)、日焼けした肌にサングラス、タンクトップ気味のTシャツにホットパンツという、日焼けサロンにいるおっさんみたいな風貌に大変化を遂げているのである。思わず「石森は休養かなんかしてて違う人がサポートやってるんだっけ?」と自問自答してしまうくらいの衝撃の変化である。
そうして登場の段階で強いインパクトを与えたのもつかの間、いきなりバンド最速レベルのBPMのパンクナンバー「Easy Go」でスタートするという、50代に突入しているバンドとは思えない脅威の攻めっぷりかつトップギアっぷり。宮本は早くも石森のモヒカンを掴んでステージ前まで引っ張り、「奴隷天国」で目をひん剥いて
「おめえだよ おめえだよ」
と歌うと、石森にいきなり
「動きが固いよ!」
とダメ出し。
ある意味ではバンドというか宮本の調子を図る一種のバロメーター的な曲である「RAINBOW」もしっかりと歌い切り(何度聴いてもこれをちゃんと歌えるのがすごい)、絶好調っぷりをアピールすると、宮本がギターを持って「悲しみの果て」を演奏しようとするのだが、ギターの音が出ないというハプニングが発生し、すぐさまギターを置いて(最初は石森のギターを使おうとしていて、石森に「お前もすぐ渡そうとするんじゃないよ」と漫才をしているかのようなツッコミを入れていた)、石森もヒラマミキオにギターを任せて歌唱に専念。こうした予期せぬハプニングにすぐに対応できるのも今のエレカシの編成による強みである。
「風に吹かれて」「俺たちの明日」とエレカシの名曲製造機っぷりを実感させてくれる曲で観客に力を与えてくれると、ど迫力サウンドの「ガストロンジャー」では宮本と石森が並んでガニ股でギターを弾くというビジュアル的にもど迫力のパフォーマンスを見せてくれる。
そしてラストは宮本がアコギを爪引きながら歌う「今宵の月のように」で終了するのだが、宮本はこの曲をやる前から
「どうせアンコールやるんで最後の曲じゃないですから」
的な空気を出していたのだが、持ち時間もあまりなかったためか、メンバーが捌けることなくそのままアンコールに突入。
アンコールでは1stアルバムの1曲目に収録されていた「ファイティングマン」を演奏し、ステージからは銀テープが発射されたが、ステージに向かって風が吹いていたため、ほとんどのテープがステージに落ちるという、ラブシャおなじみの展開となった。
社会人はそもそも翌日の月曜日から普通に仕事だし、学生も翌日から夏休みが終わって学校が始まる。それはとても憂鬱な気分になるものであるが、結成30年、年齢も50歳を超えたエレカシの生命力に溢れたパフォーマンスはそうした憂鬱な翌日を控えた全ての人に何よりも強い力を与えてくれた。ただの「頑張ろうぜ」じゃなくて、長い歴史の中で何度も浮き沈みを経験してきた上で今最大の絶頂期を迎えているバンドの「頑張ろうぜ」が胸に響かないわけがない。
これまでもこのフェスのクライマックスを描いてきたバンドが、過去の自分たちをはるかに更新するようなライブを見せてくれた。それは年齢を重ねることは決して衰えていくこととイコールではないということだ。
1.Easy Go
2.奴隷天国
3.RAINBOW
4.悲しみの果て
5.風に吹かれて
6.俺たちの明日
7.ガストロンジャー
8.今宵の月のように
encore
9.ファイティングマン
今宵の月のように
https://youtu.be/0melyLHqP-s
20:25〜 DJやついいちろう [SPACE SHOWER STUDIO]
この日のクロージングDJにして、今年のこのフェスの最後のアクトとなるのは、おなじみのやついいちろう。誰もが知るようなネタ的な曲から、毎年恒例の自身のオリジナル曲「トロピカル源氏」(レキシとのコラボ曲)が1番盛り上がらないことに不満をあらわにするというおなじみの展開もありつつ、最後はELLEGARDENの「Red Hot」で2018年の夏を締めたのだった。
このフェスに参加して10回目。2008年と2009年以外は全て参加しており、今年で9年連続。それだけ通っていると、やはりこの土地やそこに住む人たちにも愛着が生まれてくる。
自分が毎年泊まっている民宿には幼稚園児くらいの女の子が生まれていて、帰る時に「来年もよろしくお願いします」と言ったら、その子が「またね」って言ってくれた。またここに来続ける理由が増えていく。そうしてより一層このフェスのことが好きになっていく。あの子が自分のことをこの時期に毎年来る人だ、って覚えてくれるようになるくらいまで来続けたい。
今でこそ9月にもたくさんフェスはあるが、このフェスが始まった時はほとんどの出演者が「今日が夏フェスの締め」と口にし、夏の集大成的なライブを見せてくれた。だから記憶に残っているライブがたくさんあるし、それはこの場所だからこそ。今年も本当にありがとう山中湖。また来年!
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