WANIMA ”Everybody!! Tour Final” @メットライフドーム 8/26
- 2018/08/26
- 23:56
春に行われた幕張メッセでの2days時に発表された、WANIMAのメットライフドーム(西武ドーム)2daysワンマン。紅白歌合戦出演など、今や日本最大規模のバンドと言ってもいい存在になっていることを証明するように、3万人5千人を収容するこの2daysも即日完売。
西武球場前駅を出ると、無数の幟などが観客を出迎え、物販スペースには飲食店など様々なブースが出店しており、WANIMAのフェスというような様相。
しかしこのメットライフドームは元の西武球場に屋根をつけただけという構造上、直射日光は遮られているものの、野外と同じかそれ以上に暑い。それは数々のプロ野球選手も言っていることではあるが。
いつものようにパンクバンドのステージとは思えないくらいに派手な装飾が施されたステージの3面もある巨大ビジョンにメンバーが西武ライオンズのユニフォームを着て(今月この球場で始球式も行った)ステージに向かうまでの映像が流れ、様々な誘惑に負けながらも、ステージ後方にリフトに乗った3人が登場。リフトが降りて来ると、ステージ左右の花道を走ったりしてから、おなじみの
「開催しまーす!」
の宣言とともに「OLE!!」の突き抜けるように爽やかなメロディでスタート。
もう開演前の待ち時間でさえもあまりに暑かったし、特にアリーナの前方で待っていた人たちはかなりキツかったと思う。それでも、
「弾けようオープニング 意地張ってないでピース」
とKENTAが歌い始めて、KO-SHINとFUJIが演奏すれば、ここにいる誰しもが笑顔でピースすることができる。きっとこの日を楽しみにして生きてきた人だってたくさんいるはずである。
今回、メットライフドーム(西武ドーム)史上初のアリーナスタンディングということで、灼熱の状況にもかかわらず早くもダイバーが続出。それとともに凄まじい歌声。それはKENTAのボーカルというよりも、アリーナはもちろんスタンド席まで大合唱する観客によるもの。やはり35000人もいるということで、歌声の大きさは間違いなく過去最大級。
早くも訪れたエロ曲「BIG UP」でKENTAのぶっといベースとKO-SHINのスカの要素の強いギターで踊らせると、夏ということでスイカ割りを行うことに。目隠しをしたKENTAがステージから真っ直ぐに伸びた花道を歩いて見事にスイカを割るのだが、前日にも全く同じことをしているので完全にコツをわかってしまっているのが面白かった。
「Hi-STANDARD」とWANIMAの影響源であるバンド名を入れた歌詞がキャッチーさを与える「Japanese Pride」、CMで大量オンエアされた「やってみよう」、ここまでで最大の大合唱が発生した「THANX」と、暑い中でさらに熱さを増していく曲が続いていくと、汗を流しながら演奏するメンバーが大丈夫なのか、というような感じもするが、KENTAの声もKO-SHINのギターもFUJIのドラムも全く暑さにバテることなく、むしろたくさんの人の盛り上がりと力を得てパワーアップしているかのようですらあるというのが恐ろしい。氣志團の綾小路翔をして、
「WANIMAのライブを見ると、強すぎて誰が勝てるんだ!?って思う」
と言わしめたライブの地力の凄まじい強さはさらに進化しているし、曲はもちろんのこと、これだけの規模でライブができるようになったのはそのライブの強さがあってこそ。
配信限定の最新曲「Drive」でまさに勢いを加速させたかと思いきや(映画のタイアップでもあるからか、この曲での合唱の大きさも本当にすごい)、
「さっきスイカ割りをした時に食べたスイカが喉の奥に詰まってた」
と仕切り直しをしてから「CHEEKY」で再びエロモードに。
そのモードを引き継いだ、「エロい曲なのに超名曲」である「いいから」の前にはおなじみのFUJIの長渕剛モノマネも(なぜか歌うのはDA PUMPの「U.S.A」)しながら、なんとステージが客席中央まで稼働し、センターステージと言ってもいいような状態で「いいから」を演奏。ステージが回転しながら演奏することによって、あらゆる角度からでも見やすい状態になっているというのは幕張メッセでセンターステージでのライブを行った経験が確実に生きている。
さらにそのセンターステージから左右に伸びたミニステージのうち、まずは一塁側に移動して「SLOW」を演奏。KENTAの動きに合わせてスタンド席の人がタオルを揺らす(9割方WANIMAのタオルというのが本当に凄い)と、
「新しい宗教みたい!(笑)」
というくらいに凄まじい景色を生み出す。
真ん中のステージに戻ると、今回のツアーから演奏している新曲「りんどう」を披露。明確にバンドの故郷である熊本のことを歌った、雄大なメロディを持った曲。スクリーンには演奏するメンバーの姿に合わせて歌詞が映し出されていたが、そうした演出からもメンバーがこの曲に込めたものの大きさと強さを感じる。KENTAが言っていたように激しい曲では全くないが、これからのWANIMAにとって大事な曲になっていくのは間違いないだろう。
するとKO-SHINが突如としてトイレに行ったため、FUJIがギターを持って弾きながら(いきなりミスっていたがもともとFUJIはギターをやっていたらしい)3塁側のステージへ移動。KO-SHINがダッシュで戻ってくるとアコギを持ち、FUJIはカホンというアコースティック編成で「ここから」を演奏。KENTAはこれからもアコースティックを続けていきたいと話していたが、曲を作る時に「最初はバラードみたいなテンポで作った曲をだんだん速くアレンジしていく」という手法のバンドなだけに、アコースティックだとそのもともとのメロディの素晴らしさが実によくわかるし、WANIMAの曲がこんなにもみんなで歌えるようなメロディを持っているのもそうした曲作りのスタイルにヒントがあるような気もする。
「みんなと、ともに歌いたい!」
という言葉通りに大合唱を巻き起こした「ともに」では演奏中にステージが徐々に元のバックスクリーンの位置に戻っていく。
待望の「雨上がり」でさらに熱く燃え上がらせると、ドラマ主題歌にもなった「ヒューマン」ではKENTAの歌の表現力の向上のみならず、KO-SHINとFUJIのコーラスがその歌にさらにしっかりと乗るようになった。それは技術よりも精神性のさらなる一致ということの方が大きいと思う。
多分、WANIMAはこれだけの規模になったぶん、外側からイメージをつけられやすい。「ポジティブ過ぎる」「パリピ」「いつも明るい」のような。それはKENTAやKO-SHINの派手な出で立ちによるものも大きいとは思うのだが、WANIMAが本当にそういう人たちなら自分はわざわざCDを聴いたりライブに行ったりしない。そうしたイメージや笑顔の裏には、これまでに数え切れないくらいに経験した悔しいことや悲しいことがあって(「1106」などに悲しい出来事は顕著である)、それを原動力にしてバンドに向かってきた。
だから1stアルバムにも「リベンジ」という曲があったし、この「ヒューマン」でもバンドは
「代わりのいない道のりに 迷いの無い生き方に
また呆れて ただ憧れて見失う前に 教えてくれよ
浮かんで消えた想いが 絶えず増える心のアザが
“シビれるような明日を” 最後に覗きたくて」
とポジティブなだけの人には絶対に描くことができない言葉を綴っている。そこに同じように日々会社や学校で悔しい思いをしたり辛い思いをしている人たちが気持ちを重ねていく。
曲がいいのはもちろん、そうやってWANIMAの音楽は「みんなのうた」になっていった。オリコン1位、紅白出演、ドームワンマン…もう手に入れられるものは他にあるのだろうか?というくらいに自分たちの力でたくさんのものを掴んできたバンドだが、これからもそうして「悔しさ」を原動力にして音楽を作っていくのは決して変わらないと思う。
FUJIの叩き出す強靭なツービートに合わせてダイバーが大量に発生した「Hey Lady」、KENTAが最後のサビを歌う前にタメにタメまくって煽りまくった「オドルヨル」、炎が噴き出しまくる中で、決して上品ではないが、KENTAのダブルミーニングなどを含んだ歌詞がただ単にエロいことを歌っているだけではない歌詞の面白さを見せてくれる「サブマリン」と、今さらだがこのバンドには本当にキラーチューンしかないというか、シングル曲とアルバム曲みたいな格差みたいなものも全く存在しない、すべての曲がライブアンセムになっているというとんでもない状態であることをこの後半の連打で思い知る。何曲かめちゃいい曲がある、というのではなく、全てがめちゃくちゃいい曲でしかないし、これはファンだからそう思うのかもしれないが、似たような曲すらも全くない。だからこうしてワンマンを見ていると、なぜこのバンドがこんな国民的と言っていいような位置までこれたのか、というのがよくわかる。
こうした大規模会場でのお約束的なウェーブを巻き起こすと、「シグナル」から締めはアルバムのタイトルであり最後を担う曲である「Everybody!!」で最後まで合唱の勢いも、メンバーの演奏の勢いも落ちることなく走り抜けた。
アンコール待ち中にはスクリーンにメンバーが足ツボマッサージをされたり、このメットライフドームで1000本ノックを受ける映像が流れる。本当に3人(+1人)で1000本ノックを受け切ったことには大きな拍手が起こったが、KO-SHINは捕球体勢などを見ていると、最もしっかり野球をやってきた人であるのがよくわかる。
映像が終わった瞬間にはメンバーがすでにステージにスタンバイしており、この季節にぴったりの、KENTAが口で花火が上がる音を再現した「花火」ではドームに花火が打ち上がる。と言っても屋根があるドームで花火が実際に打ち上がるわけはなく、屋根にレーザーで花火が形作られていく。ある意味ではこれもこの規模の会場だからこそできることである。
そしてこのツアーではおなじみのリクエストコーナーへ。KENTAが走って客席まで行って、リクエスト曲を決めてもらう人を選定すると、選ばれた男性がリクエストしたのは「TRACE」。「Can Not Behaved!!」で衝撃的なデビューを果たした後にWANIMAがリリースし、当時の所属レーベルのオーナーであるKen Yokoyamaがライブ中に口ずさんだりもしていたくらいの名曲。ある意味ではこの曲が世に出た時に、WANIMAがここまで来るのは決まり切っていたのかもしれない。
そしてラストに最後の大合唱とダイブを続出させた「これだけは」でステージから爆発音とともに、この暑い日にこんなに暑い会場で最後までライブを見てくれた観客たちを祝うようにテープが放たれた。
エンディングSEの「切手のないおくりもの」が流れると、まるでライブと全く変わらないくらいの大合唱が発生し、客席にサインボールを投げ込むメンバーたち。最後に客席中央に移動すると、この日のライブが映像作品として11月にリリースされること、さらには次のツアーが開催されることが発表された。
「JUICE UP!!のテーマ」が流れる中、こんなにも暑かったのにメンバーは最後まで走り回ったりしながら観客の歓声に応えたりしていた。いったいこの3人の体力はどうなっているのだろうか。やっぱり、ここまで来る人は常人とは違うチカラを持っているのだろうか、と思いながら、WANIMAがアリーナからドームまでを制した、バンドにとって記念碑的なツアーになったであろう「Everybody!!」ツアーは幕を閉じた。この暑さと熱さとこの目で見た景色は死ぬまで忘れないだろうな。
自分はWANIMAや04 Limited Sazabysがシーンに登場するまで、もうパンクバンドに心を動かされることはないんだろうな、と思っていた。確かに自分の人生はパンクによって大きく変わったが、青春性の強い音楽であるがゆえに、もうそこを通過してしまった年齢である自分は、パンクバンドを聴いてもときめくことがすっかりなくなってしまっていた。
でもそんな自分を変えたのも、やっぱりパンクだった。WANIMAのパンクはそんな自分を、昔に引き戻すんじゃなくて、今の年齢になってもちゃんと響くということを教えてくれた。ということは、これからも自分はずっとパンクを聴き続けられるということ。
10代の時にパンクに出会って、自分の世界が変わって。でも周りは変わらなかった。みんながパンクを聴いていて、それがドームやスタジアムで鳴らされている。かつて夢想していたがきっと叶うことはないんだろうな、と思っていたその景色を見せてくれたのがWANIMAだったし、この日見ることができた景色を10代の頃の自分に見せることができたら、きっと生きていく何よりの力になっていたと思う。
そんな自分もそうだが、WANIMAのライブは自分よりもさらに年上の人が実は非常に多く来ている。WANIMAはキッズのための音楽だと思われがちだが、かつてTHE BLUE HEARTSやHi-STANDARDのライブを観に行っていた人たちが、WANIMAを聴いてライブに戻ってきている。それはきっと他のバンドじゃなくて、いくつになっても、いつでもどんな人でも受け入れてくれるようなWANIMAだからこそ。
そして子供と一緒に同じWANIMAのTシャツを着ている親子を見ると、それだけで胸が熱くなってくるし、そうやって子供の頃からパンクを原体験にできるのがうらやましくもある。きっと、その子供たちがまたパンクを受け継いでステージで鳴らしてくれるはず。そう思うと、未来には希望しかないように見えてくる。
1.OLE!!
2.BIG UP
3.Japanese Pride
4.やってみよう
5.THANX
6.Drive
7.CHEEKY
8.いいから
9.SLOW
10.りんどう
11.ここから
12.ともに
13.雨上がり
14.ヒューマン
15.Hey Lady
16.オドルヨル
17.サブマリン
18.シグナル
19.Everybody!!
encore
20.花火
21.TRACE
22.これだけは
Drive
https://youtu.be/SqvoW0nMYok
Next→ 8/31〜9/2 SWEET LOVE SHOWER 2018 @山中湖交流プラザきらら
西武球場前駅を出ると、無数の幟などが観客を出迎え、物販スペースには飲食店など様々なブースが出店しており、WANIMAのフェスというような様相。
しかしこのメットライフドームは元の西武球場に屋根をつけただけという構造上、直射日光は遮られているものの、野外と同じかそれ以上に暑い。それは数々のプロ野球選手も言っていることではあるが。
いつものようにパンクバンドのステージとは思えないくらいに派手な装飾が施されたステージの3面もある巨大ビジョンにメンバーが西武ライオンズのユニフォームを着て(今月この球場で始球式も行った)ステージに向かうまでの映像が流れ、様々な誘惑に負けながらも、ステージ後方にリフトに乗った3人が登場。リフトが降りて来ると、ステージ左右の花道を走ったりしてから、おなじみの
「開催しまーす!」
の宣言とともに「OLE!!」の突き抜けるように爽やかなメロディでスタート。
もう開演前の待ち時間でさえもあまりに暑かったし、特にアリーナの前方で待っていた人たちはかなりキツかったと思う。それでも、
「弾けようオープニング 意地張ってないでピース」
とKENTAが歌い始めて、KO-SHINとFUJIが演奏すれば、ここにいる誰しもが笑顔でピースすることができる。きっとこの日を楽しみにして生きてきた人だってたくさんいるはずである。
今回、メットライフドーム(西武ドーム)史上初のアリーナスタンディングということで、灼熱の状況にもかかわらず早くもダイバーが続出。それとともに凄まじい歌声。それはKENTAのボーカルというよりも、アリーナはもちろんスタンド席まで大合唱する観客によるもの。やはり35000人もいるということで、歌声の大きさは間違いなく過去最大級。
早くも訪れたエロ曲「BIG UP」でKENTAのぶっといベースとKO-SHINのスカの要素の強いギターで踊らせると、夏ということでスイカ割りを行うことに。目隠しをしたKENTAがステージから真っ直ぐに伸びた花道を歩いて見事にスイカを割るのだが、前日にも全く同じことをしているので完全にコツをわかってしまっているのが面白かった。
「Hi-STANDARD」とWANIMAの影響源であるバンド名を入れた歌詞がキャッチーさを与える「Japanese Pride」、CMで大量オンエアされた「やってみよう」、ここまでで最大の大合唱が発生した「THANX」と、暑い中でさらに熱さを増していく曲が続いていくと、汗を流しながら演奏するメンバーが大丈夫なのか、というような感じもするが、KENTAの声もKO-SHINのギターもFUJIのドラムも全く暑さにバテることなく、むしろたくさんの人の盛り上がりと力を得てパワーアップしているかのようですらあるというのが恐ろしい。氣志團の綾小路翔をして、
「WANIMAのライブを見ると、強すぎて誰が勝てるんだ!?って思う」
と言わしめたライブの地力の凄まじい強さはさらに進化しているし、曲はもちろんのこと、これだけの規模でライブができるようになったのはそのライブの強さがあってこそ。
配信限定の最新曲「Drive」でまさに勢いを加速させたかと思いきや(映画のタイアップでもあるからか、この曲での合唱の大きさも本当にすごい)、
「さっきスイカ割りをした時に食べたスイカが喉の奥に詰まってた」
と仕切り直しをしてから「CHEEKY」で再びエロモードに。
そのモードを引き継いだ、「エロい曲なのに超名曲」である「いいから」の前にはおなじみのFUJIの長渕剛モノマネも(なぜか歌うのはDA PUMPの「U.S.A」)しながら、なんとステージが客席中央まで稼働し、センターステージと言ってもいいような状態で「いいから」を演奏。ステージが回転しながら演奏することによって、あらゆる角度からでも見やすい状態になっているというのは幕張メッセでセンターステージでのライブを行った経験が確実に生きている。
さらにそのセンターステージから左右に伸びたミニステージのうち、まずは一塁側に移動して「SLOW」を演奏。KENTAの動きに合わせてスタンド席の人がタオルを揺らす(9割方WANIMAのタオルというのが本当に凄い)と、
「新しい宗教みたい!(笑)」
というくらいに凄まじい景色を生み出す。
真ん中のステージに戻ると、今回のツアーから演奏している新曲「りんどう」を披露。明確にバンドの故郷である熊本のことを歌った、雄大なメロディを持った曲。スクリーンには演奏するメンバーの姿に合わせて歌詞が映し出されていたが、そうした演出からもメンバーがこの曲に込めたものの大きさと強さを感じる。KENTAが言っていたように激しい曲では全くないが、これからのWANIMAにとって大事な曲になっていくのは間違いないだろう。
するとKO-SHINが突如としてトイレに行ったため、FUJIがギターを持って弾きながら(いきなりミスっていたがもともとFUJIはギターをやっていたらしい)3塁側のステージへ移動。KO-SHINがダッシュで戻ってくるとアコギを持ち、FUJIはカホンというアコースティック編成で「ここから」を演奏。KENTAはこれからもアコースティックを続けていきたいと話していたが、曲を作る時に「最初はバラードみたいなテンポで作った曲をだんだん速くアレンジしていく」という手法のバンドなだけに、アコースティックだとそのもともとのメロディの素晴らしさが実によくわかるし、WANIMAの曲がこんなにもみんなで歌えるようなメロディを持っているのもそうした曲作りのスタイルにヒントがあるような気もする。
「みんなと、ともに歌いたい!」
という言葉通りに大合唱を巻き起こした「ともに」では演奏中にステージが徐々に元のバックスクリーンの位置に戻っていく。
待望の「雨上がり」でさらに熱く燃え上がらせると、ドラマ主題歌にもなった「ヒューマン」ではKENTAの歌の表現力の向上のみならず、KO-SHINとFUJIのコーラスがその歌にさらにしっかりと乗るようになった。それは技術よりも精神性のさらなる一致ということの方が大きいと思う。
多分、WANIMAはこれだけの規模になったぶん、外側からイメージをつけられやすい。「ポジティブ過ぎる」「パリピ」「いつも明るい」のような。それはKENTAやKO-SHINの派手な出で立ちによるものも大きいとは思うのだが、WANIMAが本当にそういう人たちなら自分はわざわざCDを聴いたりライブに行ったりしない。そうしたイメージや笑顔の裏には、これまでに数え切れないくらいに経験した悔しいことや悲しいことがあって(「1106」などに悲しい出来事は顕著である)、それを原動力にしてバンドに向かってきた。
だから1stアルバムにも「リベンジ」という曲があったし、この「ヒューマン」でもバンドは
「代わりのいない道のりに 迷いの無い生き方に
また呆れて ただ憧れて見失う前に 教えてくれよ
浮かんで消えた想いが 絶えず増える心のアザが
“シビれるような明日を” 最後に覗きたくて」
とポジティブなだけの人には絶対に描くことができない言葉を綴っている。そこに同じように日々会社や学校で悔しい思いをしたり辛い思いをしている人たちが気持ちを重ねていく。
曲がいいのはもちろん、そうやってWANIMAの音楽は「みんなのうた」になっていった。オリコン1位、紅白出演、ドームワンマン…もう手に入れられるものは他にあるのだろうか?というくらいに自分たちの力でたくさんのものを掴んできたバンドだが、これからもそうして「悔しさ」を原動力にして音楽を作っていくのは決して変わらないと思う。
FUJIの叩き出す強靭なツービートに合わせてダイバーが大量に発生した「Hey Lady」、KENTAが最後のサビを歌う前にタメにタメまくって煽りまくった「オドルヨル」、炎が噴き出しまくる中で、決して上品ではないが、KENTAのダブルミーニングなどを含んだ歌詞がただ単にエロいことを歌っているだけではない歌詞の面白さを見せてくれる「サブマリン」と、今さらだがこのバンドには本当にキラーチューンしかないというか、シングル曲とアルバム曲みたいな格差みたいなものも全く存在しない、すべての曲がライブアンセムになっているというとんでもない状態であることをこの後半の連打で思い知る。何曲かめちゃいい曲がある、というのではなく、全てがめちゃくちゃいい曲でしかないし、これはファンだからそう思うのかもしれないが、似たような曲すらも全くない。だからこうしてワンマンを見ていると、なぜこのバンドがこんな国民的と言っていいような位置までこれたのか、というのがよくわかる。
こうした大規模会場でのお約束的なウェーブを巻き起こすと、「シグナル」から締めはアルバムのタイトルであり最後を担う曲である「Everybody!!」で最後まで合唱の勢いも、メンバーの演奏の勢いも落ちることなく走り抜けた。
アンコール待ち中にはスクリーンにメンバーが足ツボマッサージをされたり、このメットライフドームで1000本ノックを受ける映像が流れる。本当に3人(+1人)で1000本ノックを受け切ったことには大きな拍手が起こったが、KO-SHINは捕球体勢などを見ていると、最もしっかり野球をやってきた人であるのがよくわかる。
映像が終わった瞬間にはメンバーがすでにステージにスタンバイしており、この季節にぴったりの、KENTAが口で花火が上がる音を再現した「花火」ではドームに花火が打ち上がる。と言っても屋根があるドームで花火が実際に打ち上がるわけはなく、屋根にレーザーで花火が形作られていく。ある意味ではこれもこの規模の会場だからこそできることである。
そしてこのツアーではおなじみのリクエストコーナーへ。KENTAが走って客席まで行って、リクエスト曲を決めてもらう人を選定すると、選ばれた男性がリクエストしたのは「TRACE」。「Can Not Behaved!!」で衝撃的なデビューを果たした後にWANIMAがリリースし、当時の所属レーベルのオーナーであるKen Yokoyamaがライブ中に口ずさんだりもしていたくらいの名曲。ある意味ではこの曲が世に出た時に、WANIMAがここまで来るのは決まり切っていたのかもしれない。
そしてラストに最後の大合唱とダイブを続出させた「これだけは」でステージから爆発音とともに、この暑い日にこんなに暑い会場で最後までライブを見てくれた観客たちを祝うようにテープが放たれた。
エンディングSEの「切手のないおくりもの」が流れると、まるでライブと全く変わらないくらいの大合唱が発生し、客席にサインボールを投げ込むメンバーたち。最後に客席中央に移動すると、この日のライブが映像作品として11月にリリースされること、さらには次のツアーが開催されることが発表された。
「JUICE UP!!のテーマ」が流れる中、こんなにも暑かったのにメンバーは最後まで走り回ったりしながら観客の歓声に応えたりしていた。いったいこの3人の体力はどうなっているのだろうか。やっぱり、ここまで来る人は常人とは違うチカラを持っているのだろうか、と思いながら、WANIMAがアリーナからドームまでを制した、バンドにとって記念碑的なツアーになったであろう「Everybody!!」ツアーは幕を閉じた。この暑さと熱さとこの目で見た景色は死ぬまで忘れないだろうな。
自分はWANIMAや04 Limited Sazabysがシーンに登場するまで、もうパンクバンドに心を動かされることはないんだろうな、と思っていた。確かに自分の人生はパンクによって大きく変わったが、青春性の強い音楽であるがゆえに、もうそこを通過してしまった年齢である自分は、パンクバンドを聴いてもときめくことがすっかりなくなってしまっていた。
でもそんな自分を変えたのも、やっぱりパンクだった。WANIMAのパンクはそんな自分を、昔に引き戻すんじゃなくて、今の年齢になってもちゃんと響くということを教えてくれた。ということは、これからも自分はずっとパンクを聴き続けられるということ。
10代の時にパンクに出会って、自分の世界が変わって。でも周りは変わらなかった。みんながパンクを聴いていて、それがドームやスタジアムで鳴らされている。かつて夢想していたがきっと叶うことはないんだろうな、と思っていたその景色を見せてくれたのがWANIMAだったし、この日見ることができた景色を10代の頃の自分に見せることができたら、きっと生きていく何よりの力になっていたと思う。
そんな自分もそうだが、WANIMAのライブは自分よりもさらに年上の人が実は非常に多く来ている。WANIMAはキッズのための音楽だと思われがちだが、かつてTHE BLUE HEARTSやHi-STANDARDのライブを観に行っていた人たちが、WANIMAを聴いてライブに戻ってきている。それはきっと他のバンドじゃなくて、いくつになっても、いつでもどんな人でも受け入れてくれるようなWANIMAだからこそ。
そして子供と一緒に同じWANIMAのTシャツを着ている親子を見ると、それだけで胸が熱くなってくるし、そうやって子供の頃からパンクを原体験にできるのがうらやましくもある。きっと、その子供たちがまたパンクを受け継いでステージで鳴らしてくれるはず。そう思うと、未来には希望しかないように見えてくる。
1.OLE!!
2.BIG UP
3.Japanese Pride
4.やってみよう
5.THANX
6.Drive
7.CHEEKY
8.いいから
9.SLOW
10.りんどう
11.ここから
12.ともに
13.雨上がり
14.ヒューマン
15.Hey Lady
16.オドルヨル
17.サブマリン
18.シグナル
19.Everybody!!
encore
20.花火
21.TRACE
22.これだけは
Drive
https://youtu.be/SqvoW0nMYok
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