UKFC on the Road 2018 @新木場STUDIO COAST 8/22
- 2018/08/23
- 23:06
下北沢に居を構えるインディーレーベルでもありアーティスト所属事務所でもあるUK PROJECT主催の夏の恒例イベント、UKFC on the Road。近年はサーキット形式になったり、所属外バンドをゲストに迎えて開催されてきたが、今年は「原点回帰」をテーマに掲げ、開催初期からこのイベントの核と言える存在である、
[ALEXANDROS]
BIGMAMA
TOTALFAT
THE NOVEMBERS
POLYSICS
に加え、今年のVIVA LA ROCKでまさかの復活を果たした、the telephonesも加わり、まさに原点回帰と呼ぶにふさわしいバンドがメインのFRONTIER STAGEに集結。
(ある意味ではthe telephonesがライブをやると決意したことが今回の「原点回帰」というテーマに繋がったと考えられる)
一方のFUTURE STAGEにはHelsinki Lambda Club、ウソツキというこのステージではおなじみのバンドや、このイベントのオーディションでシーンに登場した若手バンドが並ぶ。
今年はこのFRONTIER STAGEとFUTURE STAGEの2ステージ構成。
会場内には出演アーティストとのコラボドリンクなどでおなじみの「風知空知」など多数の飲食ブースや、休憩&フォトスペースを兼ねたビーチエリアまで開放されるなど、普段の新木場STUDIO COASTが完全に夏フェスの会場になっている。
場内には銀杏BOYZ、Syrup16g、POTSHOTなどのUK PROJECTのレジェンドたちの曲が流れる中、開演前には社長の遠藤幸一が登場して挨拶。このイベントの7年に渡る歩みを振り返りながら、
「長く続けていると、卒業していくバンドもいるし、卒業して帰ってくるバンドもいる。今回、the telephonesが帰ってきて、こうしてライブをやれる場所があるっていうのが何よりも幸せ」
という愛とディスコにあふれたコメントに開演前からちょっとウルっとしてしまう。
13:00~ teto [FRONTIER STAGE]
昨年は小さいステージに出演していた、teto。今の勢いを表すかのように、若手の中で唯一のFRONTIER STAGE出演バンドにして、この日のトップバッターという大役を担う。
石毛輝が作ったイベントジングルの後にSEが流れてメンバーが登場すると、
「拝啓、ここで出会った大人たちへ!」
と「拝啓」からスタートし、早くもステージに膝をつきながらギターをかきむしる小池はギターを抱えたまま客席にダイブし、その溢れる衝動を炸裂させ、「Pain Pain Pain」ではギターを置いて客席に飛び込んでいく。
「結構僕たち、洗脳教育とか、奴隷人間みたいな曲とかあって。さっき話してた遠藤さんっていう酔っ払いのおじさんに、
「こういう曲を出していいんですか?」
って聞いたら「好きなことをやりなよ」って言ってもらえて。
なんでも規制、規制っていう世の中ですけど、全てを規制していたらその中にある美しいものが見れなくなるし、僕はそういうハチャメチャなものの中にこそ美しいものがあると思ってます」
と自分たちがこうして衝動を隠すことなくさらけ出す曲を作ってライブをやる意味、自分たちのそうした姿勢を受け入れてくれるUK PROJECTへの感謝を告げて小池のボーカルを中心にしたサウンドの「溶けた銃口」を演奏すると、
「僕は夏が暑くて嫌いなんですけど、今年は夏フェスばかり出ていて。そこでみんなでうわー!ってなってると、本当に楽しく思えるし、忘れたくないなって思います!」
と告げてから演奏された「忘れた」では客席に手を振りながら歌う小池。その姿は初々しくもあったが、メンバーがステージに立って演奏している姿は、近い将来このバンドが満員のこの会場でワンマンを行うであろうことを予感させた。
基本的に核となるバンドしかFRONTIER STAGEに出演していない今年にtetoがこのステージに立った意味はとてつもなく大きい。バンドにとって大きな影響源であろう銀杏BOYZのツアーのゲストで出演することも発表されているが、このバンドはもはやUK PROJECTの未来を担う存在になっていると言っても過言ではない。
1.拝啓
2.Pain Pain Pain
3.高層ビルと人工衛星
4.溶けた銃口
5.忘れた
拝啓
https://youtu.be/588QHYk7YUA
13:35〜 postman [FUTURE STAGE]
今年4月にUK PROJECTからデビューしたばかりの名古屋の4人組バンド、postmanがサブステージであるFUTURE STAGEのトップバッター。
どことなく金井政人に似たボーカル&ギターの寺本をはじめ、メンバーの出で立ちは実に爽やかであり、サウンドも今では珍しいくらいにストレートで王道感のギターロック。だからこそダンスミュージックのエッセンスはほとんど感じられず、当然ヒップホップやR&Bといった世界の最先端の影響もなく、ライブハウスを揺らすようなラウドなサウンドもない。
ただその王道ギターロックをひたすらに研ぎ澄ませていく、といった感じで、特に1人だけメガネをかけている大人しそうなドラムのいわたんばりんをはじめ、演奏も非常に上手く、曲の中には細かいキメなどがいくつも刻まれている。
寺本のクリアなハイトーンボイスを駆使したそうした王道ギターロック、その中に湿った空気を含んでいるというのが実にUK PROJECTのバンドらしいとも思うし、だからこそこれからもこのイベントなど、いろんなところで長い付き合いを期待したいし、さらなるキラーチューンが生まれたら一気に化けそうな存在である。
1.光を探している
2.Moongaze
3.正夢
4.夢と夢
光を探している
https://youtu.be/9bvPTYquU0M
14:10〜 POLYSICS [FRONTIER STAGE]
ここからはこのイベントの核となるバンドたちが次々に登場する、FRONTIER STAGE。まずは去年このステージでトリを務めた、出演者の中では1番のベテランのPOLYSICS。
黄色いツナギを着た4人がステージに登場すると、近年はライブの最後を飾ることが多い、「今POLYSICSで最もダイバーが出る激しい曲」こと「Sun Electric」でスタートし、さらに「Young OH! OH!」と続けるといういきなりの畳み掛けっぷり。これはハヤシが事前に
「激しいセトリにした」
と予告した通りの内容ではあるが、その中に「That's Fantastic!」「Sea Foo」といった昨年リリースの最新アルバムの曲を交えてくるあたりはさすがに一切立ち止まったりせずにひたすら前に、先に向かい続けて20年以上活動してきたPOLYSICSならではである。
「今日の出演者を見ると、昔のことを思い出しちゃうな〜。このイベントが2回目の時に5バンドでバスを貸し切ってみんなで大阪まで行ったりしたんだよね〜。
THE NOVEMBERSがメンバー1人2シートでバラバラに座ってて、話しかけんなオーラがすごい出てて(笑)
POLYSICSはみんなメンバーで固まってたんだけど、ヤノだけすぐリアド(BIGMAMA)の隣に行って、東京から大阪までずっと2人で喋ってた(笑)」
という思い出話ができるのもこのイベントにずっと出続けてきたバンドだからであるが、そのあとはさらに加速しまくっていく。
「シーラカンス イズ アンドロイド」でハヤシがギターを弾きながら暴れまくると、「Let'sダバダバ」ではサビで手拍子が鳴り響く中、観客の声を求めてハヤシが客席に突入。ハヤシが敬愛するウルトラマンよろしくなポーズで観客に支えながら客席を進んでいくハヤシだったが、あまりにスムーズに運ばれ過ぎて客席の真ん中あたりまで行ってしまい、
「ちょっともうステージに戻して!」「早く戻して!」
と焦り出して反転してステージに運んでもらうも、案の定戻った時は間奏はすでに終わって最後のサビに突入していて間に合わず。これには近年のフェスでは動員に苦戦している姿が嘘のように満員の観客も爆笑。
すると、
「やっぱり今日はこれだよね!」
と言って最後に演奏されたのは、なんとthe telephones「urban disco」のカバー。the telephonesのトリビュートアルバムに収録されていたように、POLYSICSならではのデジタルロックに生まれ変わっているが、この曲をこうしてライブの大事な最後の曲に選んだこと。それはPOLYSICSがthe telephonesの帰還を心から待っていたということ。
POLYSICSはもはや21年目となり、きっとこのイベントの客層を考えると、活動を開始した時には生まれてなかったという人もたくさんいるはず。そんな長い歴史を持つバンドだから、今までに仲間たちが去っていくということも数え切れないくらいに経験しているはず。
それでもやはり、こうしてライブという形で示すというのは、the telephonesが我々だけでなく、POLYSICSにとっても特別なバンドだったということ。同じ事務所に所属し、同じ釜の飯を食べて、同じバスに乗ってツアーを廻って。同じようにダンスミュージックをいかに自分たちらしくロックと融合させるかを悩みながら身にしてきた、兄弟のようなバンド。
だから帰還を待っていたのも当然だし、本家バージョンではノブが客席にダイブするタイミングで、ハヤシが同じパートであるナカムラリョウを引っ張って無理矢理ダイブさせるというリスペクトっぷりを見せたのだ。ナカムラは
「ええっ!?」
みたいな感じで客席に飛ばされていたけど(笑)、ツナギとバイザーという見た目とデジタルな楽曲からロボットやアンドロイド(どちらも楽曲にもなっているけれど)というイメージを持たれがちなバンドだが、実はものすごく人間臭いバンドだし、それがある意味1番のこのバンドの魅力なのかもしれない。
1.Sun Electric
2.Young OH! OH!
3.That's Fantastic!
4.Sea Foo
5.How are you?
6.シーラカンス イズ アンドロイド
7.Let'sダバダバ
8.urban disco
That's Fantastic!
https://youtu.be/M8q1T0mzyCo
14:55〜 polly [FUTURE STAGE]
このイベントにおいても、ライブハウスシーンにおいても存在がじわじわと浸透してきている、polly。
かつてもこのイベントに出演していて、その時もライブを見ているのだが、まだド新人だった当時は実に真っ当な、だけどちょっと陰を含んでいる側面が強い歌を中心にしたギターロックバンド、というイメージだったのだが、キャリアと経験、技術と知識を重ねたことにより、なんと轟音シューゲイザーバンドに変身。
今年リリースのアルバム「Clean Clean Clean」からそれは顕著ではあったが、まさかライブでここまで振り切っているとは、というくらいの大変身っぷり。もはやこの会場の全ての音という音をかき消すレベルの轟音で、その上に越雲龍馬の美しいファルセットボイスが酩酊感を加えていく。
さらには照明までもが全くメンバーを照らさずに明滅するのみという徹底した世界観の構築っぷり。なのでもはやメンバーの顔すら割と近くで見ていてもはっきりと見えないレベルなのだが、それが今のこのバンドの持つ陰の部分を際立たせていく。それはSyrup16gから脈々とUK PROJECTの中で受け継がれてきたものであるが、かつては「曲はいいけれどこれといってインパクトがない」という感想を抱いたこのバンドが、自分たちのアイデンティティと巨大なインパクトを持ったバンドに変化したことをその身と音を以って示していた。こんな真っ当なシューゲイザーバンドがこの日本の宇都宮から現れるなんて!
花束
https://youtu.be/nqTe5bctt8c
15:30〜 THE NOVEMBERS [FRONTIER STAGE]
このイベントにおける核のバンドの一つでありながら、他のバンドとは全く違う独自のスタイルで活動してきた、THE NOVEMBERS。他の出演バンドからもまたこうしてこのバンドとこのイベントに出演できる喜びが語られていたくらいに待たれていた存在である。
全員が黒いシャツを着て暗闇の中でステージに登場。上手に小林祐介(ボーカル&ギター)、下手にケンゴマツモト(ギター)、奥に高松浩史(ベース)と吉木諒祐(ドラム)というかつてこのイベントに出演していた頃とは立ち位置が変わっている。
「Hallelujah」「Misstopia」というケンゴマツモトのギターのサウンドが陶酔感を与え、小林のボーカルが儚いほどに美しく響く、メロディの美しい曲で光が射したかと思ったのも束の間、「Gilmore guilt more」からは凶暴で激しいサウンドと小林の絶唱が響くというコントラスト。この両面性こそがTHE NOVEMBERSというバンドである。
MC一切なし、pollyほどではないがステージを明るく照らすというよりは曲に合わせた色の照明が光る(時には目が眩みそうなくらいに明滅を繰り返していた)という必要最低限でありながら自分たちの音楽に最もふさわしい演出。
UK PROJECTの中でいわゆる「振り切った人間」というのは2パターンあって、それは抱える衝動をひたすらに爆発させる峯田和伸(銀杏BOYZ)タイプと、己の中に深く深く潜っていくダウナーな五十嵐隆(Syrup16g)タイプなのだが、後者の色を最も受け継いで活動してきたのがこのバンドであると言える。
そうしたバンドには、光の中だけにいたのでは気付かない、暗闇の中に一筋の光が見えるからこそ光がより輝いてみえ、その光を頼りに前に、明日に進んでいくという微かな希望があった。
このバンドは紛れもなくそうしたバンドだし、pollyからこのバンドに繋がるというこの日のこのイベントの流れは、そうしたバンドの系譜が今でもしっかり受け継がれているというのをしっかり示していたし、それはUK PROJECTの作ってきた一つの大きな功績である。
1.Hallelujah
2.Misstopia
3.Gilmore guilt more
4.こわれる
5.Xeno
6.黒い虹
こわれる
https://youtu.be/v69M1-sAM60
16:50〜 TOTALFAT [FRONTIER STAGE]
ギターロックというイメージが強いUK PROJECTの中において、パンク・メロコアバンドの火を燃やし続けてきた、TOTALFAT。かつてはトリもやっているが、このイベントにおいても特攻隊長的なイメージが強い。
そのイメージの通りに基本的に全員タンクトップ、Kuboty(ギター)はバンダナのようなものを頭に巻き、夏感全開の出で立ちで「夏のトカゲ」からスタートすると、早くもモッシュとダイブの嵐。このイベントがこうして激しい楽しみ方のイメージが強いのはこのバンドがこうやって描いてきた景色によるものなのかもしれない。
まさにこの日の空模様のことを歌ったかのような「晴天」から、Joseがギターを置いてハンドマイクでステージを歩き回りながら歌う、スカ要素の強い新曲も披露し、曲間ではなんとBuntaを筆頭に、メンバーが「ガソリン補給」という名目で、観客にビールを振る舞う。そのためだけにthe telephonesノブもステージに登場。そうしてガソリン満タンになった客席を「PARTY PARTY」でさらに熱狂させていく。もはやこの曲は日本におけるパンクアンセムの一つと言っていいかもしれない。
そしてShunがこの出演者たちでライブができる喜びを語ると、Joseが
「the telephonesおかえりー!」
と叫び、大合唱を巻き起こした「Place To Try」では曲を捧げられたthe telephonesの石毛輝がステージ袖から走ってきてそのまま客席にダイブする。普段は観客に向けて歌われているこの曲がこの日は確かに観客とthe telephonesに向けて歌われていたし、それはしっかりと届いていた。だからこそ石毛はダイブという抑えきれないものを爆発させる形でその想いに応えたのだ。
最初はこの「Place To Try」で終わる予定だったらしいが、メンバーが何やら集まると、
「時間があるみたいなんで、もう1曲やります!」
と言って急遽演奏された「DA NA NA」でトドメとばかりに巨大な左回りのサークルを出現させ、音源では10-FEETのTAKUMAが担っていたラップパートをShunが歌ってしっかりと締めた。
このバンドのライブ前とライブ後では会場の温度は全く異なる、灼熱っぷりになっていた。涼しいはずのライブハウスの中すらも真夏に変えてしまうという見事な夏の特攻隊長っぷり。
かつてこのイベントで恒例だった涼平のドッキリはなかったが、暑い中で確かにthe telephonesとの絆も感じさせた、体だけでなく心も熱くなるような会心のアクトだった。
1.夏のトカゲ
2.Phoenix
3.晴天
4.新曲
5.PARTY PARTY
6.Place To Try
7.DA NA NA
晴天
https://youtu.be/WrS3BaNGVxo
18:10〜 BIGMAMA [FRONTIER STAGE]
このイベントのオーディションで優勝したバンドのプロデュースをしたり、自身が惚れ込んだバンドをUK PROJECTに招いたりと、このイベントとUK PROJECTを背負ってきたBIGMAMA、メジャーへ引っ越しを果たしてこのイベントに凱旋。
ライブを見るのが今年に入ってから初めてだったのだが、メンバーの立ち位置が変わっていることに少し驚く。これまでの金井を真ん中にしたものではなく、上手サイドに柿沼と安井、下手サイドに金井と東出、中央にリアドというバランスの取れたものになり、
「ご案内しましょう、”シンセカイ”へ」
と金井が告げると、まるで金井と柿沼のツインボーカルバンドのような感覚に。
もはや「荒狂曲”シンセカイ”」の段階でリフトからのダイブの嵐となっていたが、「Strawberry Feels」からの近年の曲でもその勢いは全く衰えない。今回のこのイベントの趣旨である「原点回帰」という言葉に通じるような、パンク・メロコア的なスタイルの曲たちであるが、ただの原点回帰ではなく、進化した形になっているのは、かつては英語詞だったのが金井政人のものでしかない、ダブルミーニングや聴いた時と歌詞カードをしっかり見た時では受ける印象の違う言い回しによる日本語詞であるというものが大きい。
EDMを取り入れた「MUTOPIA」ですら、手拍子だけでなくダイブが頻発するというフロアの渇望感をいったんなだめたのは金井がハンドマイクでボーカルに徹する「ファビュラ・フィビュラ」の重心とリズムを低く落とした重厚なサウンド。リリース時は良くも悪くも実にBIGMAMAらしくないサウンドの曲であったが、今ではすっかりライブでもおなじみの、いいアクセントになっている。
そして「秘密」で再び客席が沸騰すると、最後に演奏された「CPX」でキッズたちはまた次々とステージの方へ転がっていった。
MC一切なしというここ最近のスタイルではあったが、金井は最後に
「おかえり」
と一言だけ呟いた。それは間違いなくthe telephonesに向けられたものであったと思われるが、1年前までならもっと言葉を尽くして、様々な思いでを語りながらtelephonesの帰還を祝っていたはずである。
それすらもできないくらいに、金井は昨年末に露見した、自身にまつわることに囚われているのだろうか。
そうだとしてもそれは本人の行動が招いた結果であり、それが事実だとするならば(事実だとしか思っていないけど)、「音楽にひたすら誠実に」というのをモットーにしてきたバンドなだけに、もう今の状態で自分が何を言っても説得力がないとも思っているかもしれない。
でも我々はそんなBIGMAMAの姿が見たいんじゃない。かつて、バンドも観客も本当に幸せに満ちて、音楽を通して信頼関係を築き上げていたあのライブの空間の素晴らしさを我々は知っている。
だからこそ、もう過ぎたことならば気持ちを切り替えて、またかつてのようなライブを見せて欲しいのだが、金井の性格上、そうはいかないのかもしれない。
金井が川谷絵音のように、それすらも自身の音楽に昇華できる割り切りっぷりや、KANA-BOONのめしだのように、それすらも笑って許されるような愛嬌のあるキャラクターだったらこうはなっていなかっただろう。
でもやっぱり、かつてこのイベントとUK PROJECTを背負うような発言にこの上ない頼もしさを感じていただけに、このイベントではそうしたBIGMAMAの姿を見たい。それがいつになるのかはわからないが、バンドが作ってきた名曲の数々(それは金井自身が自らの手で一度殺そうとしてしまったものでもある)を、今でもたくさんの人が求めている。あれだけたくさんのダイバーが楽しそうな顔を見せていたのは、それが変わっていない証拠である。
1.荒狂曲 ”シンセカイ”
2.Strawberry Feels
3.POPCORN STAR
4.ヒーローインタビュー
5.MUTOPIA
6.ファビュラ・フィビュラ
7.秘密
8.CPX
Strawberry Feels
https://youtu.be/rqeSAb3DrHQ
18:55〜 ウソツキ [FUTURE STAGE]
サウンドチェック時にディズニーロックコンピレーションに収録された「アンダー・ザ・シー」を演奏するというサービスを見せた、「決して嘘はつかないバンド」こと、ウソツキ。もはやこのイベントのこのステージにおいてはおなじみの存在である。
サウンドチェックから捌けずにそのまま竹田昌和が挨拶すると、吉田のギターが汽笛と電車の走行音を表現する「新木場発、銀河鉄道」で、
「新木場発 下北沢へ その列車に揺られてく」
と、何度聞いてもこのイベントで演奏されるために作ったとしか思えない、この会場の新木場とUK PROJECTの会社がある下北沢をつないで見せる。今までは大きめのハットを被っているイメージが強かった竹田が何も被っていない姿も新鮮である。
このイベントの出演者の中でも、毎年最も歌を聴かせるサウンドプロダクションのバンドであるが、浜辺に男女2人がいる姿が目に浮かぶような「ボーイミーツガール」、Tシャツに短パン、サンダルで夜中にコンビニにでも行くような情景を想起させる「夏の亡霊」と、対照的な夏ソングを続けて演奏したが、そうした曲を聴いていてすぐに頭の中にイメージや景色が思い浮かぶのは、やはり歌を前面に押し出していることによって、竹田の描く私小説的な歌詞がしっかりと聴き取れるからだろう。
「みんなが早く[ALEXANDROS]を見たいのはすごくよくわかる(笑)
俺も先週ZOZOマリンスタジアムにワンマン観に行ったから(笑)すごかったよね〜」
と次に控えるUK PROJECTの先輩から大きな刺激をもらっていることを明かしながらも、あくまで自分たちの時間は自分たちの音楽を聴いて欲しいと告げ、
「僕は本物よりも偽物の方が好きなんです。ウソツキだって言葉の意味としては偽物じゃないですか。そんなウソツキが9月26日にリリースする新しいアルバム「ダイヤモンド」のダイヤモンドもやっぱり偽物なんです。
でも偽物にしかないものが確かにあると僕は思っていて。そういうことを歌っていきたいし、偽物が本物たちに並んでメインステージに立ったら面白くないですか?」
とウソツキというバンドの本質を口にしていたが、かつて氣志團の綾小路翔も全く同じことを口にしていた。
「我々は90年代のバンドブームに浮かれてデビューしたバンドたちがみじめになっていくのを見てきているんです。もちろん本物なら生き残っていくんでしょうけど、我々は本物ではないというところから始まっているので」
という、バンドブームの反省を生かして偽物っぷりに磨きをかけてきたのが、今に至るまでの氣志團のしぶとさの原動力である。
その偽物っぷりにウソツキが磨きをかけたであろう「ダイヤモンド」は果たして本物を超える美しさを放てるだろうか。
その「ダイヤモンド」に収録される新曲「名もなき感情」を披露すると、最後は
「何回だって告白をしよう 君が好きだって伝えよう」
とバンドの諦めない姿勢を表した「一生分のラブレター」で最後まで歌をしっかりと聞かせながらも、年々リアクションがよくなる客席の景色を噛み締めていた。
これだけ歌とメロディを前面に出しているバンドなだけに、ロックシーンだけでなく、もっと広いところまで届く可能性を持っているバンドだと思っている。でもなかなかそうはならない。それは自分としてはメレンゲが辿った道を彷彿とさせるのだが、そうした状況にならない理由は
「僕ら異星人だから」
なのだろうか。
1.新木場発、銀河鉄道
2.ボーイミーツガール
3.夏の亡霊
4.名もなき感情
5.一生分のラブレター
夏の亡霊
https://youtu.be/h7qQWaGiB5Q
19:30〜 [ALEXANDROS] [FRONTIER STAGE]
先週にZOZOマリンスタジアムの38000人の前でワンマンを行なった[ALEXANDROS]。その時の景色を考えれば、都内でも大きなキャパを誇るこの新木場STUDIO COASTすらも実に狭い、接近戦と言ってもいいくらいの状況である。
メンバーが登場すると、川上洋平はギターを持たずにハンドマイクでムーディーな情景を歌う、もはやライブにおいては新曲と言えないくらいの存在になってきている「Last Minute」からスタートするという意表をつく始まりだが、やはりスタジアムバンドとなったことによって、ライブハウスの熱さというよりは楽曲と存在感のスケールで勝負なのだろうか、と思っていたが、それは次の「city」であっさりとかき消される。
距離が近いライブハウスだからこそ、仲間でもあり最大のライバルでもあるバンドたちのライブを見た対バンという久々の機会だからこその川上洋平の歌唱とバンドの演奏のアグレッシブさ。それに呼応するかのように次々とステージの方に転がっていく観客たち。そうして、自分たちの音楽と鳴らしている音でここまで観客を熱狂させている自信と喜び。このイベントは客層的にそうした楽しみ方をする人が多いが、このバンドのライブハウスで育ってきたからこその攻撃的な面を久しぶりに感じ取ることができる。
ZOZOマリンスタジアムのワンマンの時にライブ初披露した、川上がアコギを弾きながら歌う「ハナウタ」の雄大かつ美しいメロディに酔いしれると、川上がこの出演者たちとこうして久しぶりに一緒にライブができることの嬉しさを噛み締めながらも、
「この後に出てくるバンドが復活しましたけれども、そんなの関係ねー!fuck up!」
と仲良しクラブではなくライバルたちであるという変わらぬ姿勢を見せると、「I Don't Believe In You」の不穏かつハイパーなサウンドから「Moquite Bite」のライブハウスを超えたスケールの大きさを轟かせて終了かと思いきや、さらに「Kick & Spin」でキッズたちを飛び上がらせ、さらにアウトロからそのまま「Adventure」につないでみせるという短い持ち時間ならではのアレンジを見せると、川上はマイクスタンドごと客席に向けてコーラス部分を歌わせ、最後にはステージにマイクスタンドを投げ捨てた。そのあまりのカッコよさは、このバンドがスタジアムでワンマンをやるべくしてやっているロックスターであることを示していた。
やはりもうこのバンドはありとあらゆる意味でレベルが違う。それはライブそのもののスケールと地力の強さもそうだし、このバンドが最後の出演者として発表された瞬間にチケットが売り切れたという人気もそう。
だからこそ、本来なら別にわざわざスタジアムワンマンの直後にライブハウスでの持ち時間の短いイベントに出る必要はないと言えばない。でもこのバンドがそこまでの存在になってもなお、このイベントに出演し、
「これからもよろしくお願いします!」
と言う意味。それはこのバンドにとって、UK PROJECTもこのイベントも、ずっとしのぎを削ってきた仲間でありライバルなバンドたちも、どれもが今でも絶対に忘れることができないくらいに、本当に大切な存在であるということ。どれだけ巨大な存在になっても変わらないものがあるからこそ、秋に行われるライブハウスツアーも本当に楽しみだ。
1.Last Minute
2.city
3.Starrrrrrr
4.ハナウタ
5.I Don't Believe In You
6.Mosquite Bite
7.Kick & Spin 〜 Adventure
Mosquite Bite
https://youtu.be/hNHbnRVolPo
20:20〜 Helsinki Lambda Club [FUTURE STAGE]
かつてこのイベントのオーディションで優勝してこのイベントに出演してシーンに登場した、Helsinki Lambda Club。(当時は名前がちょっとだけ違っていた)
新人から若手という立ち位置に変わり、ついにこのFUTURE STAGEのトリを務めるほどの存在に。
あくまで飄々とした橋本薫(ボーカル&ギター)が軽く挨拶すると、「Skin」の性急なギターロックからスタートし、初出演時にも
「ジョン・レノンもジム・モリソンもブライアン・ジョーンズも皆死んで
気付いたら21世紀 テレキャスターで変拍子」
という歌詞がこのバンドの音楽性を示していた「ユアンと踊れ」の変わらない切れ味と雰囲気で一気にこのバンドの空気に引き込むと、そこからはUK PROJECTでありながらもUKというよりは2000年代後半のUSインディーロックの影響を強く感じさせるような曲を矢継ぎ早に演奏していく。
最新曲「Jokebox」も実にタイトルも気が利いているが、初出演時からこの日に至るまでの歴史や思い出、もうかなり長い付き合いとなった先輩バンドたちとの交流など、語ろうと思えば語れることはいくらでもある気がするのだが、MCらしいMCは一切なし。ひたすらに自分たちの曲を演奏することによって、自分たちがこのイベントから出発してどんなバンドになってこの場所に立っているのかを見せるようなライブ。
メンバー全員が完全に音楽マニアでしかないバンドだからこその、音楽至上主義的な内容のライブは、言葉よりもはるかにこのバンドの成長を示していた。初出演時からその挙動不審なステージアクションを見せていたベースの稲葉は髪が伸びすぎてイタコのようになっていたが。
1.Skin
2.ユアンと踊れ
3.King Of The White Chip
4.PIZZASHAKE
5.Jokebox
6.Lost In The Supermarket
7.素敵な負け犬
8.This is a pen.
Jokebox
https://youtu.be/3AOmLfXTdjc
21:00〜 the telephones [FRONTIER STAGE]
そしていよいよ今年のこのイベントのトリ。3年ぶりに帰ってきたthe telephonesが仲間たちのつないできたバトンを手にトリとしてステージに立つ。
かつてと全く同じように「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでカラフルなアフロのカツラを被った4人が登場すると、
「UKFC、3年ぶりに帰ってきたぜー!俺たちはみんなを踊らせることしかできないから、みんな思う存分、踊ろうぜー!」
と言うと、ライブのオープニングとしておなじみだった「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」からスタート。曲中での涼平の「D.A.N.C.E」に合わせた人文字も健在だが、久しぶり過ぎたからか、向きがややぎこちない。
イントロの段階から飛び跳ねさせまくった「Yeah Yeah Yeah」ではサビでさらに高く飛び跳ねさせ、
「UKFCだから、初期の曲をやります!」
と石毛が宣言すると、その石毛がかつてと変わらぬ身体能力の高さで見事な側転をしてみせる(久しぶりだったからか、若干歌い出しに間に合っていなかったのが面白い)「DA DA DA」、ノブがタイトル通りに暴れまくる「RIOT!!!」と当時の海外のダンスロックバンドと共振していたtelephoneのディスコパンクを炸裂させ、踊らせまくると言いたいところだが、あまりに人が多過ぎて踊るスペースすらない。
ここまではひたすらアッパーな曲を連発していたが、初期の中でも浮遊感の強いサウンドの「Homunculus」で一気に変わる。ただ激しいだけでも、ただ楽しいだけでもなかった、the telephonesの原点とでも言えるような、石毛の持つロマンチックさと根に抱える孤独と内省を感じさせるが、こうして初期の曲をライブで聴いていると、かつていろんな場所(それはthe telephonesのライブだからこそ行けた場所もいくつもある)で何度となく聴いた時のことを思い出してしまう。どれもが本当に楽しかった、いい思い出でしかない。
そんな初期の曲をメンバー自身が振り返るように、メンバーの中で唯一活動休止後にこのイベントに出演していなかったドラムの誠治が
「いやー、素晴らしかったですね〜」
と実に軽い感じで心境を述べ、会場は爆笑。演奏中の熱さに対してMCのユルさもかつてと全く変わらないが、活動休止を経ての心境を述べることに対して
「え?逆に何を言えばいいの?」
と観客に尋ねる涼平のスタンスは活動休止前は見れなかった斬新な返し方である。
そしていよいよここからはディスコシリーズへ突入。一口にディスコと言っても「A.B.C.DISCO」を聴くと、the telephonesの持っているサウンドの幅の広さに改めて驚かされる。それはかつてよりも今の方が強く感じることかもしれない。
さらに誠治の不思議なコーラスが聞ける「KEEP YOUR DISCO!!!」では、石毛が曲の最後に
「世界は変わったかー!?」
と叫んだ。かつて石毛はこの部分で
「世界を変えようぜー!」
と叫んでいた。この変化は、もう自分たちはそうした力を持ったバンドではないという諦念のようでもあったが、the telephonesは自分たちが思い描いていたように世界や音楽シーンを変えることはできなかった。
でも、the telephonesはたくさんの人の人生を変えた。自分のような人間が、平日に会社を休んでこうして昼からライブハウスに来てしまうように。それはかつて世界や音楽シーンそのものを根底から変えようとしていた、the telephonesの思想や理念に強く共鳴していたから。
この人たちが思い描くような世界や音楽シーンになれば、自分のような人間がもっと生きやすくなるはず。そう信じて、自分は社会人になって、学生時代のように一緒にライブハウスに行ったりするような友人がライブに足を運ばなくなっても、ライブハウスに行き続ける人生を選んだ。そうしたら、音楽がもっと好きになった。人生がもっと楽しくなった。間違いなく自分の人生は変わったのである。
そんなことを思い返しながら体だけでなく胸や心も暑くなると、
「ここにいる1人1人がディスコだって叫ぼうぜー!」
と巨大なディスコのコール&レスポンスが交わされ、最後に演奏されたのはこの日POLYSICSがカバーした「urban disco」の本家バージョン。と思いきや、石毛がイントロのギターを弾く時にギターをミュートしてしまっており、音が鳴らずにまさかのやり直しという決まらなさ。それもまたthe telephonesらしいのだが、このミスとノブが観客を先導するブーイングによって、「urban disco」はさらに熱さを増し、やはりノブは客席にダイブしていき、会場中に
「I am disco!!!」
の大合唱が轟いた。
アンコールでは石毛が来年でthe telephonesはメジャーデビュー10周年であるということ(もうそんなに経ったのかと思わずにはいられない)を告げ、10周年イヤーを祝うべく、来年は今年以上にthe telephonesとして精力的に活動すること、2月にこれまでthe telephonesで行ったことのない、佐賀・島根・奈良・和歌山でワンマンライブを行うことを発表。
「みんな一緒に歳を取ってるんだから、お金も昔よりはあるし、有給も使えるようになってるだろ?(笑)」
とのことで、地方公演ではあれど、関東から参加しにいくことに抵抗はない様子どころか、むしろウェルカムな空気である。
その発表を行った時に起こった歓声に対して、
「TOKYO DOME CITY HALLで活動休止をするって発表した時、すごい空気になってしまった。だからこうして活動するって発表した時にみんなが喜んでくれるのが本当に嬉しい」
と石毛は言っていたが、あの時の空気は実際に会場に足を運んでいた人は忘れられないだろう。最後の「Love & DISCO」で全く踊る人がおらず、みんな茫然と立ち尽くすしかなかったのだから。石毛同様に、我々もそれを経験しているからこそ、the telephonesが活動をすることを発表してくれたのが本当に嬉しいのだ。
だからこそ、「Monkey Discoooooo」でフロアを燃え上がらせてからの「Love & DISCO」は本当に愛とディスコと感謝に満ちていた。これまでにも何度となくこのイベントで奇跡の瞬間を生み出してきたこの曲の途中で、サブステージにはTOTALFATやPOLYSICSという仲間が現れ、巨大な風船を客席に投げ込んでいた。その中にはHelsinki Lambda Clubという後輩の姿や、こうしてみんなでワイワイするような場所にいるようなイメージが一切ないTHE NOVEMBERSの姿まで。みんな、この瞬間を本当に待っていたのだ。我々と同じように、ステージ上で刺激し合ってきた仲間たちもまた、the telephonesがこのイベントに帰ってきたことを心から喜んでいる。この曲はthe telephonesからの愛とディスコを送る曲だったが、今はもうこの場所にいる全ての人が愛とディスコを送り合う曲になっていた。あの時の立ち尽くしていた瞬間を忘れてしまうほどに。
自分にとって、なぜthe telephonesが特別なのか。それは、銀杏BOYZやELLEGARDENのライブがあくまでバンドと己の「個と個」で向き合う場所だったのに対し、the telephonesのライブはそこにいるみんなで好きなバンドの音楽を楽しむのがどれだけ楽しいことかというのを教えてくれたから。だから自分はthe telephonesのライブに行くようになって、ライブハウスで周りにいる人のことをよく見るようになったし、顔を覚えるようになった人も何人もいた。名前も、どこで何をしているかも全く知らない、ただ好きなバンドが同じというだけで顔を見るようになった人たち。それはこの日ここにいた人たちもまた同じ。そういう人たちがみんなthe telephonesの曲を今でも完ぺきに覚えている。VIVA LA ROCKでもライブをやったけれど、休止していたというよりも、ちょっとだけライブをお休みしていだけであるかのような。
だって、これからまた何度もthe telephonesのライブを見ることができるのがわかったのだから。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.Yeah Yeah Yeah
3.DA DA DA
4.RIOT!!!
5.Homunculus
6.A.B.C.DISCO
7.KEEP YOUR DISCO!!!
8.urban disco
encore
9.Monkey Discooooooo!!!
10.Love & DISCO
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
ライブが終わると、遠藤社長の締めの挨拶から、恒例の出演者勢揃いでの写真撮影。
「原点回帰」というテーマであったが、終わってみるとやはり、the telephonesがこのイベントに帰ってきたことを祝福するような1日だった。
8月とはいえ、ど平日の昼間からの開催。やはり社会人としてはかなりハードルが高いイベントだし、学生のためのイベントなのかもしれない。でも、こうしてthe telephonesのライブが見れるなら、毎年どうにかして休んででも来るのもアリだよなぁ。
Next→ 8/26 WANIMA @メットライフドーム
[ALEXANDROS]
BIGMAMA
TOTALFAT
THE NOVEMBERS
POLYSICS
に加え、今年のVIVA LA ROCKでまさかの復活を果たした、the telephonesも加わり、まさに原点回帰と呼ぶにふさわしいバンドがメインのFRONTIER STAGEに集結。
(ある意味ではthe telephonesがライブをやると決意したことが今回の「原点回帰」というテーマに繋がったと考えられる)
一方のFUTURE STAGEにはHelsinki Lambda Club、ウソツキというこのステージではおなじみのバンドや、このイベントのオーディションでシーンに登場した若手バンドが並ぶ。
今年はこのFRONTIER STAGEとFUTURE STAGEの2ステージ構成。
会場内には出演アーティストとのコラボドリンクなどでおなじみの「風知空知」など多数の飲食ブースや、休憩&フォトスペースを兼ねたビーチエリアまで開放されるなど、普段の新木場STUDIO COASTが完全に夏フェスの会場になっている。
場内には銀杏BOYZ、Syrup16g、POTSHOTなどのUK PROJECTのレジェンドたちの曲が流れる中、開演前には社長の遠藤幸一が登場して挨拶。このイベントの7年に渡る歩みを振り返りながら、
「長く続けていると、卒業していくバンドもいるし、卒業して帰ってくるバンドもいる。今回、the telephonesが帰ってきて、こうしてライブをやれる場所があるっていうのが何よりも幸せ」
という愛とディスコにあふれたコメントに開演前からちょっとウルっとしてしまう。
13:00~ teto [FRONTIER STAGE]
昨年は小さいステージに出演していた、teto。今の勢いを表すかのように、若手の中で唯一のFRONTIER STAGE出演バンドにして、この日のトップバッターという大役を担う。
石毛輝が作ったイベントジングルの後にSEが流れてメンバーが登場すると、
「拝啓、ここで出会った大人たちへ!」
と「拝啓」からスタートし、早くもステージに膝をつきながらギターをかきむしる小池はギターを抱えたまま客席にダイブし、その溢れる衝動を炸裂させ、「Pain Pain Pain」ではギターを置いて客席に飛び込んでいく。
「結構僕たち、洗脳教育とか、奴隷人間みたいな曲とかあって。さっき話してた遠藤さんっていう酔っ払いのおじさんに、
「こういう曲を出していいんですか?」
って聞いたら「好きなことをやりなよ」って言ってもらえて。
なんでも規制、規制っていう世の中ですけど、全てを規制していたらその中にある美しいものが見れなくなるし、僕はそういうハチャメチャなものの中にこそ美しいものがあると思ってます」
と自分たちがこうして衝動を隠すことなくさらけ出す曲を作ってライブをやる意味、自分たちのそうした姿勢を受け入れてくれるUK PROJECTへの感謝を告げて小池のボーカルを中心にしたサウンドの「溶けた銃口」を演奏すると、
「僕は夏が暑くて嫌いなんですけど、今年は夏フェスばかり出ていて。そこでみんなでうわー!ってなってると、本当に楽しく思えるし、忘れたくないなって思います!」
と告げてから演奏された「忘れた」では客席に手を振りながら歌う小池。その姿は初々しくもあったが、メンバーがステージに立って演奏している姿は、近い将来このバンドが満員のこの会場でワンマンを行うであろうことを予感させた。
基本的に核となるバンドしかFRONTIER STAGEに出演していない今年にtetoがこのステージに立った意味はとてつもなく大きい。バンドにとって大きな影響源であろう銀杏BOYZのツアーのゲストで出演することも発表されているが、このバンドはもはやUK PROJECTの未来を担う存在になっていると言っても過言ではない。
1.拝啓
2.Pain Pain Pain
3.高層ビルと人工衛星
4.溶けた銃口
5.忘れた
拝啓
https://youtu.be/588QHYk7YUA
13:35〜 postman [FUTURE STAGE]
今年4月にUK PROJECTからデビューしたばかりの名古屋の4人組バンド、postmanがサブステージであるFUTURE STAGEのトップバッター。
どことなく金井政人に似たボーカル&ギターの寺本をはじめ、メンバーの出で立ちは実に爽やかであり、サウンドも今では珍しいくらいにストレートで王道感のギターロック。だからこそダンスミュージックのエッセンスはほとんど感じられず、当然ヒップホップやR&Bといった世界の最先端の影響もなく、ライブハウスを揺らすようなラウドなサウンドもない。
ただその王道ギターロックをひたすらに研ぎ澄ませていく、といった感じで、特に1人だけメガネをかけている大人しそうなドラムのいわたんばりんをはじめ、演奏も非常に上手く、曲の中には細かいキメなどがいくつも刻まれている。
寺本のクリアなハイトーンボイスを駆使したそうした王道ギターロック、その中に湿った空気を含んでいるというのが実にUK PROJECTのバンドらしいとも思うし、だからこそこれからもこのイベントなど、いろんなところで長い付き合いを期待したいし、さらなるキラーチューンが生まれたら一気に化けそうな存在である。
1.光を探している
2.Moongaze
3.正夢
4.夢と夢
光を探している
https://youtu.be/9bvPTYquU0M
14:10〜 POLYSICS [FRONTIER STAGE]
ここからはこのイベントの核となるバンドたちが次々に登場する、FRONTIER STAGE。まずは去年このステージでトリを務めた、出演者の中では1番のベテランのPOLYSICS。
黄色いツナギを着た4人がステージに登場すると、近年はライブの最後を飾ることが多い、「今POLYSICSで最もダイバーが出る激しい曲」こと「Sun Electric」でスタートし、さらに「Young OH! OH!」と続けるといういきなりの畳み掛けっぷり。これはハヤシが事前に
「激しいセトリにした」
と予告した通りの内容ではあるが、その中に「That's Fantastic!」「Sea Foo」といった昨年リリースの最新アルバムの曲を交えてくるあたりはさすがに一切立ち止まったりせずにひたすら前に、先に向かい続けて20年以上活動してきたPOLYSICSならではである。
「今日の出演者を見ると、昔のことを思い出しちゃうな〜。このイベントが2回目の時に5バンドでバスを貸し切ってみんなで大阪まで行ったりしたんだよね〜。
THE NOVEMBERSがメンバー1人2シートでバラバラに座ってて、話しかけんなオーラがすごい出てて(笑)
POLYSICSはみんなメンバーで固まってたんだけど、ヤノだけすぐリアド(BIGMAMA)の隣に行って、東京から大阪までずっと2人で喋ってた(笑)」
という思い出話ができるのもこのイベントにずっと出続けてきたバンドだからであるが、そのあとはさらに加速しまくっていく。
「シーラカンス イズ アンドロイド」でハヤシがギターを弾きながら暴れまくると、「Let'sダバダバ」ではサビで手拍子が鳴り響く中、観客の声を求めてハヤシが客席に突入。ハヤシが敬愛するウルトラマンよろしくなポーズで観客に支えながら客席を進んでいくハヤシだったが、あまりにスムーズに運ばれ過ぎて客席の真ん中あたりまで行ってしまい、
「ちょっともうステージに戻して!」「早く戻して!」
と焦り出して反転してステージに運んでもらうも、案の定戻った時は間奏はすでに終わって最後のサビに突入していて間に合わず。これには近年のフェスでは動員に苦戦している姿が嘘のように満員の観客も爆笑。
すると、
「やっぱり今日はこれだよね!」
と言って最後に演奏されたのは、なんとthe telephones「urban disco」のカバー。the telephonesのトリビュートアルバムに収録されていたように、POLYSICSならではのデジタルロックに生まれ変わっているが、この曲をこうしてライブの大事な最後の曲に選んだこと。それはPOLYSICSがthe telephonesの帰還を心から待っていたということ。
POLYSICSはもはや21年目となり、きっとこのイベントの客層を考えると、活動を開始した時には生まれてなかったという人もたくさんいるはず。そんな長い歴史を持つバンドだから、今までに仲間たちが去っていくということも数え切れないくらいに経験しているはず。
それでもやはり、こうしてライブという形で示すというのは、the telephonesが我々だけでなく、POLYSICSにとっても特別なバンドだったということ。同じ事務所に所属し、同じ釜の飯を食べて、同じバスに乗ってツアーを廻って。同じようにダンスミュージックをいかに自分たちらしくロックと融合させるかを悩みながら身にしてきた、兄弟のようなバンド。
だから帰還を待っていたのも当然だし、本家バージョンではノブが客席にダイブするタイミングで、ハヤシが同じパートであるナカムラリョウを引っ張って無理矢理ダイブさせるというリスペクトっぷりを見せたのだ。ナカムラは
「ええっ!?」
みたいな感じで客席に飛ばされていたけど(笑)、ツナギとバイザーという見た目とデジタルな楽曲からロボットやアンドロイド(どちらも楽曲にもなっているけれど)というイメージを持たれがちなバンドだが、実はものすごく人間臭いバンドだし、それがある意味1番のこのバンドの魅力なのかもしれない。
1.Sun Electric
2.Young OH! OH!
3.That's Fantastic!
4.Sea Foo
5.How are you?
6.シーラカンス イズ アンドロイド
7.Let'sダバダバ
8.urban disco
That's Fantastic!
https://youtu.be/M8q1T0mzyCo
14:55〜 polly [FUTURE STAGE]
このイベントにおいても、ライブハウスシーンにおいても存在がじわじわと浸透してきている、polly。
かつてもこのイベントに出演していて、その時もライブを見ているのだが、まだド新人だった当時は実に真っ当な、だけどちょっと陰を含んでいる側面が強い歌を中心にしたギターロックバンド、というイメージだったのだが、キャリアと経験、技術と知識を重ねたことにより、なんと轟音シューゲイザーバンドに変身。
今年リリースのアルバム「Clean Clean Clean」からそれは顕著ではあったが、まさかライブでここまで振り切っているとは、というくらいの大変身っぷり。もはやこの会場の全ての音という音をかき消すレベルの轟音で、その上に越雲龍馬の美しいファルセットボイスが酩酊感を加えていく。
さらには照明までもが全くメンバーを照らさずに明滅するのみという徹底した世界観の構築っぷり。なのでもはやメンバーの顔すら割と近くで見ていてもはっきりと見えないレベルなのだが、それが今のこのバンドの持つ陰の部分を際立たせていく。それはSyrup16gから脈々とUK PROJECTの中で受け継がれてきたものであるが、かつては「曲はいいけれどこれといってインパクトがない」という感想を抱いたこのバンドが、自分たちのアイデンティティと巨大なインパクトを持ったバンドに変化したことをその身と音を以って示していた。こんな真っ当なシューゲイザーバンドがこの日本の宇都宮から現れるなんて!
花束
https://youtu.be/nqTe5bctt8c
15:30〜 THE NOVEMBERS [FRONTIER STAGE]
このイベントにおける核のバンドの一つでありながら、他のバンドとは全く違う独自のスタイルで活動してきた、THE NOVEMBERS。他の出演バンドからもまたこうしてこのバンドとこのイベントに出演できる喜びが語られていたくらいに待たれていた存在である。
全員が黒いシャツを着て暗闇の中でステージに登場。上手に小林祐介(ボーカル&ギター)、下手にケンゴマツモト(ギター)、奥に高松浩史(ベース)と吉木諒祐(ドラム)というかつてこのイベントに出演していた頃とは立ち位置が変わっている。
「Hallelujah」「Misstopia」というケンゴマツモトのギターのサウンドが陶酔感を与え、小林のボーカルが儚いほどに美しく響く、メロディの美しい曲で光が射したかと思ったのも束の間、「Gilmore guilt more」からは凶暴で激しいサウンドと小林の絶唱が響くというコントラスト。この両面性こそがTHE NOVEMBERSというバンドである。
MC一切なし、pollyほどではないがステージを明るく照らすというよりは曲に合わせた色の照明が光る(時には目が眩みそうなくらいに明滅を繰り返していた)という必要最低限でありながら自分たちの音楽に最もふさわしい演出。
UK PROJECTの中でいわゆる「振り切った人間」というのは2パターンあって、それは抱える衝動をひたすらに爆発させる峯田和伸(銀杏BOYZ)タイプと、己の中に深く深く潜っていくダウナーな五十嵐隆(Syrup16g)タイプなのだが、後者の色を最も受け継いで活動してきたのがこのバンドであると言える。
そうしたバンドには、光の中だけにいたのでは気付かない、暗闇の中に一筋の光が見えるからこそ光がより輝いてみえ、その光を頼りに前に、明日に進んでいくという微かな希望があった。
このバンドは紛れもなくそうしたバンドだし、pollyからこのバンドに繋がるというこの日のこのイベントの流れは、そうしたバンドの系譜が今でもしっかり受け継がれているというのをしっかり示していたし、それはUK PROJECTの作ってきた一つの大きな功績である。
1.Hallelujah
2.Misstopia
3.Gilmore guilt more
4.こわれる
5.Xeno
6.黒い虹
こわれる
https://youtu.be/v69M1-sAM60
16:50〜 TOTALFAT [FRONTIER STAGE]
ギターロックというイメージが強いUK PROJECTの中において、パンク・メロコアバンドの火を燃やし続けてきた、TOTALFAT。かつてはトリもやっているが、このイベントにおいても特攻隊長的なイメージが強い。
そのイメージの通りに基本的に全員タンクトップ、Kuboty(ギター)はバンダナのようなものを頭に巻き、夏感全開の出で立ちで「夏のトカゲ」からスタートすると、早くもモッシュとダイブの嵐。このイベントがこうして激しい楽しみ方のイメージが強いのはこのバンドがこうやって描いてきた景色によるものなのかもしれない。
まさにこの日の空模様のことを歌ったかのような「晴天」から、Joseがギターを置いてハンドマイクでステージを歩き回りながら歌う、スカ要素の強い新曲も披露し、曲間ではなんとBuntaを筆頭に、メンバーが「ガソリン補給」という名目で、観客にビールを振る舞う。そのためだけにthe telephonesノブもステージに登場。そうしてガソリン満タンになった客席を「PARTY PARTY」でさらに熱狂させていく。もはやこの曲は日本におけるパンクアンセムの一つと言っていいかもしれない。
そしてShunがこの出演者たちでライブができる喜びを語ると、Joseが
「the telephonesおかえりー!」
と叫び、大合唱を巻き起こした「Place To Try」では曲を捧げられたthe telephonesの石毛輝がステージ袖から走ってきてそのまま客席にダイブする。普段は観客に向けて歌われているこの曲がこの日は確かに観客とthe telephonesに向けて歌われていたし、それはしっかりと届いていた。だからこそ石毛はダイブという抑えきれないものを爆発させる形でその想いに応えたのだ。
最初はこの「Place To Try」で終わる予定だったらしいが、メンバーが何やら集まると、
「時間があるみたいなんで、もう1曲やります!」
と言って急遽演奏された「DA NA NA」でトドメとばかりに巨大な左回りのサークルを出現させ、音源では10-FEETのTAKUMAが担っていたラップパートをShunが歌ってしっかりと締めた。
このバンドのライブ前とライブ後では会場の温度は全く異なる、灼熱っぷりになっていた。涼しいはずのライブハウスの中すらも真夏に変えてしまうという見事な夏の特攻隊長っぷり。
かつてこのイベントで恒例だった涼平のドッキリはなかったが、暑い中で確かにthe telephonesとの絆も感じさせた、体だけでなく心も熱くなるような会心のアクトだった。
1.夏のトカゲ
2.Phoenix
3.晴天
4.新曲
5.PARTY PARTY
6.Place To Try
7.DA NA NA
晴天
https://youtu.be/WrS3BaNGVxo
18:10〜 BIGMAMA [FRONTIER STAGE]
このイベントのオーディションで優勝したバンドのプロデュースをしたり、自身が惚れ込んだバンドをUK PROJECTに招いたりと、このイベントとUK PROJECTを背負ってきたBIGMAMA、メジャーへ引っ越しを果たしてこのイベントに凱旋。
ライブを見るのが今年に入ってから初めてだったのだが、メンバーの立ち位置が変わっていることに少し驚く。これまでの金井を真ん中にしたものではなく、上手サイドに柿沼と安井、下手サイドに金井と東出、中央にリアドというバランスの取れたものになり、
「ご案内しましょう、”シンセカイ”へ」
と金井が告げると、まるで金井と柿沼のツインボーカルバンドのような感覚に。
もはや「荒狂曲”シンセカイ”」の段階でリフトからのダイブの嵐となっていたが、「Strawberry Feels」からの近年の曲でもその勢いは全く衰えない。今回のこのイベントの趣旨である「原点回帰」という言葉に通じるような、パンク・メロコア的なスタイルの曲たちであるが、ただの原点回帰ではなく、進化した形になっているのは、かつては英語詞だったのが金井政人のものでしかない、ダブルミーニングや聴いた時と歌詞カードをしっかり見た時では受ける印象の違う言い回しによる日本語詞であるというものが大きい。
EDMを取り入れた「MUTOPIA」ですら、手拍子だけでなくダイブが頻発するというフロアの渇望感をいったんなだめたのは金井がハンドマイクでボーカルに徹する「ファビュラ・フィビュラ」の重心とリズムを低く落とした重厚なサウンド。リリース時は良くも悪くも実にBIGMAMAらしくないサウンドの曲であったが、今ではすっかりライブでもおなじみの、いいアクセントになっている。
そして「秘密」で再び客席が沸騰すると、最後に演奏された「CPX」でキッズたちはまた次々とステージの方へ転がっていった。
MC一切なしというここ最近のスタイルではあったが、金井は最後に
「おかえり」
と一言だけ呟いた。それは間違いなくthe telephonesに向けられたものであったと思われるが、1年前までならもっと言葉を尽くして、様々な思いでを語りながらtelephonesの帰還を祝っていたはずである。
それすらもできないくらいに、金井は昨年末に露見した、自身にまつわることに囚われているのだろうか。
そうだとしてもそれは本人の行動が招いた結果であり、それが事実だとするならば(事実だとしか思っていないけど)、「音楽にひたすら誠実に」というのをモットーにしてきたバンドなだけに、もう今の状態で自分が何を言っても説得力がないとも思っているかもしれない。
でも我々はそんなBIGMAMAの姿が見たいんじゃない。かつて、バンドも観客も本当に幸せに満ちて、音楽を通して信頼関係を築き上げていたあのライブの空間の素晴らしさを我々は知っている。
だからこそ、もう過ぎたことならば気持ちを切り替えて、またかつてのようなライブを見せて欲しいのだが、金井の性格上、そうはいかないのかもしれない。
金井が川谷絵音のように、それすらも自身の音楽に昇華できる割り切りっぷりや、KANA-BOONのめしだのように、それすらも笑って許されるような愛嬌のあるキャラクターだったらこうはなっていなかっただろう。
でもやっぱり、かつてこのイベントとUK PROJECTを背負うような発言にこの上ない頼もしさを感じていただけに、このイベントではそうしたBIGMAMAの姿を見たい。それがいつになるのかはわからないが、バンドが作ってきた名曲の数々(それは金井自身が自らの手で一度殺そうとしてしまったものでもある)を、今でもたくさんの人が求めている。あれだけたくさんのダイバーが楽しそうな顔を見せていたのは、それが変わっていない証拠である。
1.荒狂曲 ”シンセカイ”
2.Strawberry Feels
3.POPCORN STAR
4.ヒーローインタビュー
5.MUTOPIA
6.ファビュラ・フィビュラ
7.秘密
8.CPX
Strawberry Feels
https://youtu.be/rqeSAb3DrHQ
18:55〜 ウソツキ [FUTURE STAGE]
サウンドチェック時にディズニーロックコンピレーションに収録された「アンダー・ザ・シー」を演奏するというサービスを見せた、「決して嘘はつかないバンド」こと、ウソツキ。もはやこのイベントのこのステージにおいてはおなじみの存在である。
サウンドチェックから捌けずにそのまま竹田昌和が挨拶すると、吉田のギターが汽笛と電車の走行音を表現する「新木場発、銀河鉄道」で、
「新木場発 下北沢へ その列車に揺られてく」
と、何度聞いてもこのイベントで演奏されるために作ったとしか思えない、この会場の新木場とUK PROJECTの会社がある下北沢をつないで見せる。今までは大きめのハットを被っているイメージが強かった竹田が何も被っていない姿も新鮮である。
このイベントの出演者の中でも、毎年最も歌を聴かせるサウンドプロダクションのバンドであるが、浜辺に男女2人がいる姿が目に浮かぶような「ボーイミーツガール」、Tシャツに短パン、サンダルで夜中にコンビニにでも行くような情景を想起させる「夏の亡霊」と、対照的な夏ソングを続けて演奏したが、そうした曲を聴いていてすぐに頭の中にイメージや景色が思い浮かぶのは、やはり歌を前面に押し出していることによって、竹田の描く私小説的な歌詞がしっかりと聴き取れるからだろう。
「みんなが早く[ALEXANDROS]を見たいのはすごくよくわかる(笑)
俺も先週ZOZOマリンスタジアムにワンマン観に行ったから(笑)すごかったよね〜」
と次に控えるUK PROJECTの先輩から大きな刺激をもらっていることを明かしながらも、あくまで自分たちの時間は自分たちの音楽を聴いて欲しいと告げ、
「僕は本物よりも偽物の方が好きなんです。ウソツキだって言葉の意味としては偽物じゃないですか。そんなウソツキが9月26日にリリースする新しいアルバム「ダイヤモンド」のダイヤモンドもやっぱり偽物なんです。
でも偽物にしかないものが確かにあると僕は思っていて。そういうことを歌っていきたいし、偽物が本物たちに並んでメインステージに立ったら面白くないですか?」
とウソツキというバンドの本質を口にしていたが、かつて氣志團の綾小路翔も全く同じことを口にしていた。
「我々は90年代のバンドブームに浮かれてデビューしたバンドたちがみじめになっていくのを見てきているんです。もちろん本物なら生き残っていくんでしょうけど、我々は本物ではないというところから始まっているので」
という、バンドブームの反省を生かして偽物っぷりに磨きをかけてきたのが、今に至るまでの氣志團のしぶとさの原動力である。
その偽物っぷりにウソツキが磨きをかけたであろう「ダイヤモンド」は果たして本物を超える美しさを放てるだろうか。
その「ダイヤモンド」に収録される新曲「名もなき感情」を披露すると、最後は
「何回だって告白をしよう 君が好きだって伝えよう」
とバンドの諦めない姿勢を表した「一生分のラブレター」で最後まで歌をしっかりと聞かせながらも、年々リアクションがよくなる客席の景色を噛み締めていた。
これだけ歌とメロディを前面に出しているバンドなだけに、ロックシーンだけでなく、もっと広いところまで届く可能性を持っているバンドだと思っている。でもなかなかそうはならない。それは自分としてはメレンゲが辿った道を彷彿とさせるのだが、そうした状況にならない理由は
「僕ら異星人だから」
なのだろうか。
1.新木場発、銀河鉄道
2.ボーイミーツガール
3.夏の亡霊
4.名もなき感情
5.一生分のラブレター
夏の亡霊
https://youtu.be/h7qQWaGiB5Q
19:30〜 [ALEXANDROS] [FRONTIER STAGE]
先週にZOZOマリンスタジアムの38000人の前でワンマンを行なった[ALEXANDROS]。その時の景色を考えれば、都内でも大きなキャパを誇るこの新木場STUDIO COASTすらも実に狭い、接近戦と言ってもいいくらいの状況である。
メンバーが登場すると、川上洋平はギターを持たずにハンドマイクでムーディーな情景を歌う、もはやライブにおいては新曲と言えないくらいの存在になってきている「Last Minute」からスタートするという意表をつく始まりだが、やはりスタジアムバンドとなったことによって、ライブハウスの熱さというよりは楽曲と存在感のスケールで勝負なのだろうか、と思っていたが、それは次の「city」であっさりとかき消される。
距離が近いライブハウスだからこそ、仲間でもあり最大のライバルでもあるバンドたちのライブを見た対バンという久々の機会だからこその川上洋平の歌唱とバンドの演奏のアグレッシブさ。それに呼応するかのように次々とステージの方に転がっていく観客たち。そうして、自分たちの音楽と鳴らしている音でここまで観客を熱狂させている自信と喜び。このイベントは客層的にそうした楽しみ方をする人が多いが、このバンドのライブハウスで育ってきたからこその攻撃的な面を久しぶりに感じ取ることができる。
ZOZOマリンスタジアムのワンマンの時にライブ初披露した、川上がアコギを弾きながら歌う「ハナウタ」の雄大かつ美しいメロディに酔いしれると、川上がこの出演者たちとこうして久しぶりに一緒にライブができることの嬉しさを噛み締めながらも、
「この後に出てくるバンドが復活しましたけれども、そんなの関係ねー!fuck up!」
と仲良しクラブではなくライバルたちであるという変わらぬ姿勢を見せると、「I Don't Believe In You」の不穏かつハイパーなサウンドから「Moquite Bite」のライブハウスを超えたスケールの大きさを轟かせて終了かと思いきや、さらに「Kick & Spin」でキッズたちを飛び上がらせ、さらにアウトロからそのまま「Adventure」につないでみせるという短い持ち時間ならではのアレンジを見せると、川上はマイクスタンドごと客席に向けてコーラス部分を歌わせ、最後にはステージにマイクスタンドを投げ捨てた。そのあまりのカッコよさは、このバンドがスタジアムでワンマンをやるべくしてやっているロックスターであることを示していた。
やはりもうこのバンドはありとあらゆる意味でレベルが違う。それはライブそのもののスケールと地力の強さもそうだし、このバンドが最後の出演者として発表された瞬間にチケットが売り切れたという人気もそう。
だからこそ、本来なら別にわざわざスタジアムワンマンの直後にライブハウスでの持ち時間の短いイベントに出る必要はないと言えばない。でもこのバンドがそこまでの存在になってもなお、このイベントに出演し、
「これからもよろしくお願いします!」
と言う意味。それはこのバンドにとって、UK PROJECTもこのイベントも、ずっとしのぎを削ってきた仲間でありライバルなバンドたちも、どれもが今でも絶対に忘れることができないくらいに、本当に大切な存在であるということ。どれだけ巨大な存在になっても変わらないものがあるからこそ、秋に行われるライブハウスツアーも本当に楽しみだ。
1.Last Minute
2.city
3.Starrrrrrr
4.ハナウタ
5.I Don't Believe In You
6.Mosquite Bite
7.Kick & Spin 〜 Adventure
Mosquite Bite
https://youtu.be/hNHbnRVolPo
20:20〜 Helsinki Lambda Club [FUTURE STAGE]
かつてこのイベントのオーディションで優勝してこのイベントに出演してシーンに登場した、Helsinki Lambda Club。(当時は名前がちょっとだけ違っていた)
新人から若手という立ち位置に変わり、ついにこのFUTURE STAGEのトリを務めるほどの存在に。
あくまで飄々とした橋本薫(ボーカル&ギター)が軽く挨拶すると、「Skin」の性急なギターロックからスタートし、初出演時にも
「ジョン・レノンもジム・モリソンもブライアン・ジョーンズも皆死んで
気付いたら21世紀 テレキャスターで変拍子」
という歌詞がこのバンドの音楽性を示していた「ユアンと踊れ」の変わらない切れ味と雰囲気で一気にこのバンドの空気に引き込むと、そこからはUK PROJECTでありながらもUKというよりは2000年代後半のUSインディーロックの影響を強く感じさせるような曲を矢継ぎ早に演奏していく。
最新曲「Jokebox」も実にタイトルも気が利いているが、初出演時からこの日に至るまでの歴史や思い出、もうかなり長い付き合いとなった先輩バンドたちとの交流など、語ろうと思えば語れることはいくらでもある気がするのだが、MCらしいMCは一切なし。ひたすらに自分たちの曲を演奏することによって、自分たちがこのイベントから出発してどんなバンドになってこの場所に立っているのかを見せるようなライブ。
メンバー全員が完全に音楽マニアでしかないバンドだからこその、音楽至上主義的な内容のライブは、言葉よりもはるかにこのバンドの成長を示していた。初出演時からその挙動不審なステージアクションを見せていたベースの稲葉は髪が伸びすぎてイタコのようになっていたが。
1.Skin
2.ユアンと踊れ
3.King Of The White Chip
4.PIZZASHAKE
5.Jokebox
6.Lost In The Supermarket
7.素敵な負け犬
8.This is a pen.
Jokebox
https://youtu.be/3AOmLfXTdjc
21:00〜 the telephones [FRONTIER STAGE]
そしていよいよ今年のこのイベントのトリ。3年ぶりに帰ってきたthe telephonesが仲間たちのつないできたバトンを手にトリとしてステージに立つ。
かつてと全く同じように「Happiness,Happiness,Happiness」のSEでカラフルなアフロのカツラを被った4人が登場すると、
「UKFC、3年ぶりに帰ってきたぜー!俺たちはみんなを踊らせることしかできないから、みんな思う存分、踊ろうぜー!」
と言うと、ライブのオープニングとしておなじみだった「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」からスタート。曲中での涼平の「D.A.N.C.E」に合わせた人文字も健在だが、久しぶり過ぎたからか、向きがややぎこちない。
イントロの段階から飛び跳ねさせまくった「Yeah Yeah Yeah」ではサビでさらに高く飛び跳ねさせ、
「UKFCだから、初期の曲をやります!」
と石毛が宣言すると、その石毛がかつてと変わらぬ身体能力の高さで見事な側転をしてみせる(久しぶりだったからか、若干歌い出しに間に合っていなかったのが面白い)「DA DA DA」、ノブがタイトル通りに暴れまくる「RIOT!!!」と当時の海外のダンスロックバンドと共振していたtelephoneのディスコパンクを炸裂させ、踊らせまくると言いたいところだが、あまりに人が多過ぎて踊るスペースすらない。
ここまではひたすらアッパーな曲を連発していたが、初期の中でも浮遊感の強いサウンドの「Homunculus」で一気に変わる。ただ激しいだけでも、ただ楽しいだけでもなかった、the telephonesの原点とでも言えるような、石毛の持つロマンチックさと根に抱える孤独と内省を感じさせるが、こうして初期の曲をライブで聴いていると、かつていろんな場所(それはthe telephonesのライブだからこそ行けた場所もいくつもある)で何度となく聴いた時のことを思い出してしまう。どれもが本当に楽しかった、いい思い出でしかない。
そんな初期の曲をメンバー自身が振り返るように、メンバーの中で唯一活動休止後にこのイベントに出演していなかったドラムの誠治が
「いやー、素晴らしかったですね〜」
と実に軽い感じで心境を述べ、会場は爆笑。演奏中の熱さに対してMCのユルさもかつてと全く変わらないが、活動休止を経ての心境を述べることに対して
「え?逆に何を言えばいいの?」
と観客に尋ねる涼平のスタンスは活動休止前は見れなかった斬新な返し方である。
そしていよいよここからはディスコシリーズへ突入。一口にディスコと言っても「A.B.C.DISCO」を聴くと、the telephonesの持っているサウンドの幅の広さに改めて驚かされる。それはかつてよりも今の方が強く感じることかもしれない。
さらに誠治の不思議なコーラスが聞ける「KEEP YOUR DISCO!!!」では、石毛が曲の最後に
「世界は変わったかー!?」
と叫んだ。かつて石毛はこの部分で
「世界を変えようぜー!」
と叫んでいた。この変化は、もう自分たちはそうした力を持ったバンドではないという諦念のようでもあったが、the telephonesは自分たちが思い描いていたように世界や音楽シーンを変えることはできなかった。
でも、the telephonesはたくさんの人の人生を変えた。自分のような人間が、平日に会社を休んでこうして昼からライブハウスに来てしまうように。それはかつて世界や音楽シーンそのものを根底から変えようとしていた、the telephonesの思想や理念に強く共鳴していたから。
この人たちが思い描くような世界や音楽シーンになれば、自分のような人間がもっと生きやすくなるはず。そう信じて、自分は社会人になって、学生時代のように一緒にライブハウスに行ったりするような友人がライブに足を運ばなくなっても、ライブハウスに行き続ける人生を選んだ。そうしたら、音楽がもっと好きになった。人生がもっと楽しくなった。間違いなく自分の人生は変わったのである。
そんなことを思い返しながら体だけでなく胸や心も暑くなると、
「ここにいる1人1人がディスコだって叫ぼうぜー!」
と巨大なディスコのコール&レスポンスが交わされ、最後に演奏されたのはこの日POLYSICSがカバーした「urban disco」の本家バージョン。と思いきや、石毛がイントロのギターを弾く時にギターをミュートしてしまっており、音が鳴らずにまさかのやり直しという決まらなさ。それもまたthe telephonesらしいのだが、このミスとノブが観客を先導するブーイングによって、「urban disco」はさらに熱さを増し、やはりノブは客席にダイブしていき、会場中に
「I am disco!!!」
の大合唱が轟いた。
アンコールでは石毛が来年でthe telephonesはメジャーデビュー10周年であるということ(もうそんなに経ったのかと思わずにはいられない)を告げ、10周年イヤーを祝うべく、来年は今年以上にthe telephonesとして精力的に活動すること、2月にこれまでthe telephonesで行ったことのない、佐賀・島根・奈良・和歌山でワンマンライブを行うことを発表。
「みんな一緒に歳を取ってるんだから、お金も昔よりはあるし、有給も使えるようになってるだろ?(笑)」
とのことで、地方公演ではあれど、関東から参加しにいくことに抵抗はない様子どころか、むしろウェルカムな空気である。
その発表を行った時に起こった歓声に対して、
「TOKYO DOME CITY HALLで活動休止をするって発表した時、すごい空気になってしまった。だからこうして活動するって発表した時にみんなが喜んでくれるのが本当に嬉しい」
と石毛は言っていたが、あの時の空気は実際に会場に足を運んでいた人は忘れられないだろう。最後の「Love & DISCO」で全く踊る人がおらず、みんな茫然と立ち尽くすしかなかったのだから。石毛同様に、我々もそれを経験しているからこそ、the telephonesが活動をすることを発表してくれたのが本当に嬉しいのだ。
だからこそ、「Monkey Discoooooo」でフロアを燃え上がらせてからの「Love & DISCO」は本当に愛とディスコと感謝に満ちていた。これまでにも何度となくこのイベントで奇跡の瞬間を生み出してきたこの曲の途中で、サブステージにはTOTALFATやPOLYSICSという仲間が現れ、巨大な風船を客席に投げ込んでいた。その中にはHelsinki Lambda Clubという後輩の姿や、こうしてみんなでワイワイするような場所にいるようなイメージが一切ないTHE NOVEMBERSの姿まで。みんな、この瞬間を本当に待っていたのだ。我々と同じように、ステージ上で刺激し合ってきた仲間たちもまた、the telephonesがこのイベントに帰ってきたことを心から喜んでいる。この曲はthe telephonesからの愛とディスコを送る曲だったが、今はもうこの場所にいる全ての人が愛とディスコを送り合う曲になっていた。あの時の立ち尽くしていた瞬間を忘れてしまうほどに。
自分にとって、なぜthe telephonesが特別なのか。それは、銀杏BOYZやELLEGARDENのライブがあくまでバンドと己の「個と個」で向き合う場所だったのに対し、the telephonesのライブはそこにいるみんなで好きなバンドの音楽を楽しむのがどれだけ楽しいことかというのを教えてくれたから。だから自分はthe telephonesのライブに行くようになって、ライブハウスで周りにいる人のことをよく見るようになったし、顔を覚えるようになった人も何人もいた。名前も、どこで何をしているかも全く知らない、ただ好きなバンドが同じというだけで顔を見るようになった人たち。それはこの日ここにいた人たちもまた同じ。そういう人たちがみんなthe telephonesの曲を今でも完ぺきに覚えている。VIVA LA ROCKでもライブをやったけれど、休止していたというよりも、ちょっとだけライブをお休みしていだけであるかのような。
だって、これからまた何度もthe telephonesのライブを見ることができるのがわかったのだから。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.Yeah Yeah Yeah
3.DA DA DA
4.RIOT!!!
5.Homunculus
6.A.B.C.DISCO
7.KEEP YOUR DISCO!!!
8.urban disco
encore
9.Monkey Discooooooo!!!
10.Love & DISCO
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
ライブが終わると、遠藤社長の締めの挨拶から、恒例の出演者勢揃いでの写真撮影。
「原点回帰」というテーマであったが、終わってみるとやはり、the telephonesがこのイベントに帰ってきたことを祝福するような1日だった。
8月とはいえ、ど平日の昼間からの開催。やはり社会人としてはかなりハードルが高いイベントだし、学生のためのイベントなのかもしれない。でも、こうしてthe telephonesのライブが見れるなら、毎年どうにかして休んででも来るのもアリだよなぁ。
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